説明

ガス器具判断システム及びガス器具判断方法

【課題】使用ガス器具の判断精度を向上させることが可能なガス器具判断システム及びガス器具判断方法を提供する。
【解決手段】ガス器具判断システム1は、積算電力計40、水道メータ50及びガスメータ60からなっている。ガスメータ60は、流路内のガス圧力に応じた信号を出力する圧力センサ、及び、流路内のガス流量に応じた信号を出力する流量センサを備えている。また、積算電力計40及び水道メータ50は、電気及び水道の使用を検出する。さらに、ガスメータ60は、圧力センサ及び流量センサから出力された信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形、及び、積算電力計40及び水道メータ50により検出された電気及び水道の使用タイミングから、使用ガス器具10を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス器具判断システム及びガス器具判断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用されているガス器具を判断するガス器具判断システムが提案されている。このガス器具判断システムでは、流路内を流れるガスの流量値をある程度長時間監視し、ガスの流量値の推移である流量値パターンを認識して、流量値パターンからガス器具を判断する(例えば特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−148728号公報
【特許文献2】特開2008−107262号公報
【特許文献3】特開2008−107301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のガス器具判断システムでは、流路内を流れるガスの流量値をある程度長時間監視しなければならず、短時間でガス器具を判断することができない。このため、短時間におけるガスの流量値から使用ガス器具を判断できることが望まれるが、異なるガス器具であっても、短時間における流量値だけを見れば、ほぼ同じ流量値を示すものもあり、使用ガス器具の判断に誤りが生じる可能性が高まる。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その発明の目的とするところは、使用ガス器具の判断精度を向上させることが可能なガス器具判断システム及びガス器具判断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス器具判断システムは、流路内のガス圧力に応じた信号を出力する圧力センサ、及び、流路内のガス流量に応じた信号を出力する流量センサの少なくとも一方からなる第1センサと、電気及び水道の少なくとも一方のライフエネルギについて使用を検出する第2センサと、第1センサから出力された信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形、及び、第2センサにより検出されたライフエネルギの使用タイミングから、使用ガス器具を判断する使用器具判断手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このガス器具判断システムによれば、第1センサから出力された信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形から使用ガス器具を判断する。ここで、本件発明者らは、ガス器具の使用開始時や終了時において所定以上の変化を示してから微小時間中に得られる波形が、ガス器具毎に固有の振動を示すことを見出した。よって、微少時間中の振動波形から、使用ガス器具を判断することができる。また、第2センサにより検出されたライフエネルギの使用タイミングから、使用ガス器具を判断する。ここで、ガス器具によっては微小時間中に得られる振動波形が似ているものもあり、このような似ている振動波形により使用ガス器具を誤判断してしまう可能性がある。しかし、似ている振動波形であっても、ライフエネルギの使用タイミングを参照することで、振動波形が似ているガス器具であっても区別を付けることができる。例えば、ガス給湯器とガス食器洗い乾燥器とでは、微少時間中の振動波形が似る傾向があるが、ガス給湯器は使用中常時電気や水道が使用されるのに対し、ガス食器洗い乾燥器は特定のタイミングのみ電気や水道が使用される。このようなライフエネルギの使用タイミングにより、両者を区別することができる。従って、使用ガス器具の判断精度を向上させることができる。
【0008】
また、本発明のガス器具判断システムにおいて、使用器具判断手段は、振動波形のみから使用ガス器具を判断できる場合、ライフエネルギの使用タイミングに基づくことなく、使用ガス器具を判断することが好ましい。
【0009】
このガス器具判断システムによれば、振動波形のみから使用ガス器具を判断できる場合、ライフエネルギの使用タイミングに基づくことなく、使用ガス器具を判断する。このため、振動波形が特徴的で似ているガス器具が存在しない場合、振動波形のみから使用ガス器具を判断できるため、処理を簡略化することができる。
【0010】
また、本発明のガス器具判断システムにおいて、第1センサから出力された信号に基づく振動波形と所定の振動波形との類似度推移を算出する類似度推移算出手段をさらに備え、使用器具判断手段は、類似度推移算出手段により算出された類似度推移に基づいて、使用ガス器具を判断することが好ましい。
【0011】
このガス器具判断システムによれば、振動波形と所定の振動波形との類似度推移を算出し、算出された類似度推移に基づいて、使用ガス器具を判断する。ここで、所定の振動波形が特定のガス器具の振動波形であるとする。そして、第1センサから出力された信号に基づく振動波形が特定のガス器具の振動波形である場合、算出される類似度は高くなる傾向にあり、類似度推移についても全体的に高い値を示す傾向にある。また、第1センサから得られた信号に基づく振動波形が他のガス器具の振動波形である場合には、類似度は高くならず、類似度推移についても高くならないが、類似度推移はそのガス器具特有の推移を示す。従って、上記のように類似度推移に基づいて判断を実行することで、振動波形の特徴をとらえて、使用ガス器具を判断することができる。
【0012】
また、本発明のガス器具判断システムにおいて、ガス器具毎の類似度推移を記憶した類似度推移記憶手段をさらに備え、使用器具判断手段は、類似度推移記憶手段により記憶されたガス器具毎の類似度推移のうち、類似度推移算出手段により算出された類似度推移と類似するものが1つである場合、振動波形のみから使用ガス器具を判断できると判断して、ライフエネルギの使用タイミングに基づくことなく、使用ガス器具を判断することが好ましい。
【0013】
このガス器具判断システムによれば、記憶されたガス器具毎の類似度推移のうち、算出された類似度推移と類似するものが1つである場合、振動波形のみから使用ガス器具を判断できると判断して、ライフエネルギの使用タイミングに基づくことなく、使用ガス器具を判断する。このように、記憶内容との対比により判断することで、簡易にライフエネルギの使用タイミングに基づくことなく、使用ガス器具を判断することができる。
【0014】
また、本発明のガス器具判断システムにおいて、第1センサから出力された信号に基づく振動波形を解析して、周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを算出する解析手段をさらに備え、使用器具判断手段は、解析手段により算出されたスペクトルデータに基づいて、使用ガス器具を判断することが好ましい。
【0015】
このガス器具判断システムによれば、第1センサから出力された信号に基づく振動波形を解析して、周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを算出し、算出されたスペクトルデータに基づいて、判断を実行する。ここで、ガス器具使用時及び終了時における振動波形それぞれには、圧力や流量の波形の周波数及び振幅に特徴があらわれる。よって、波形を解析して周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを得ると共に、このスペクトルデータに基づいて判断を実行することで、使用ガス器具を判断することができる。
【0016】
また、本発明のガス器具判断システムにおいて、ガス器具毎のスペクトルデータを記憶したスペクトルデータ記憶手段をさらに備え、使用器具判断手段は、スペクトルデータ記憶手段により記憶されたガス器具毎のスペクトルデータのうち、解析手段により算出されたスペクトルデータと類似するものが1つである場合、振動波形のみから使用ガス器具を判断できると判断して、ライフエネルギの使用タイミングに基づくことなく、使用ガス器具を判断することが好ましい。
【0017】
このガス器具判断システムによれば、記憶されたガス器具毎の類似度推移のうち、算出された類似度推移と類似するものが1つである場合、振動波形のみから使用ガス器具を判断できると判断して、ライフエネルギの使用タイミングに基づくことなく、使用ガス器具を判断する。このように、記憶内容との対比により判断することで、簡易にライフエネルギの使用タイミングに基づくことなく、使用ガス器具を判断することができる。
【0018】
また、本発明のガス器具判断方法は、流路内のガス圧力に応じた信号を出力する圧力センサ、及び、流路内のガス流量に応じた信号を出力する流量センサの少なくとも一方からなる第1センサから出力された信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形、及び、電気及び水道の少なくとも一方のライフエネルギについて使用を検出する第2センサにより検出されたライフエネルギの使用タイミングから、使用ガス器具を判断する使用器具判断工程を有することを特徴とする。
【0019】
このガス器具判断方法によれば、第1センサから出力された信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形から使用ガス器具を判断する。ここで、本件発明者らは、ガス器具の使用開始時や終了時において所定以上の変化を示してから微小時間中に得られる波形が、ガス器具毎に固有の振動を示すことを見出した。よって、微少時間中の振動波形から、使用ガス器具を判断することができる。また、第2センサにより検出されたライフエネルギの使用タイミングから、使用ガス器具を判断する。ここで、ガス器具によっては微小時間中に得られる振動波形が似ているものもあり、このような似ている振動波形により使用ガス器具を誤判断してしまう可能性がある。しかし、似ている振動波形であっても、ライフエネルギの使用タイミングを参照することで、振動波形が似ているガス器具であっても区別を付けることができる。例えば、ガス給湯器とガス食器洗い乾燥器とでは、微少時間中の振動波形が似る傾向があるが、ガス給湯器は使用中常時電気や水道が使用されるのに対し、ガス食器洗い乾燥器は特定のタイミングのみ電気や水道が使用される。このようなライフエネルギの使用タイミングにより、両者を区別することができる。従って、使用ガス器具の判断精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、使用ガス器具の判断精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るガス器具判断システムの構成図である。
【図2】図1に示したガスメータの詳細を示す構成図である。
【図3】ガス器具の使用過程における流量推移の一例を示す図である。
【図4】図2に示した生成部により生成されるガス漏れ振動波形の概略を示す図である。
【図5】ガス器具使用開始時における圧力変化を示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時における圧力変化を示し、(b)は小型湯沸器使用開始時における圧力変化を示し、(c)はガス給湯器使用開始時における圧力変化を示している。
【図6】図2に示した類似度推移算出部により算出される連続NCCを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時における連続NCCを示し、(b)は小型湯沸器使用開始時における連続NCCを示し、(c)はガス給湯器使用開始時における連続NCCを示している。
【図7】ガス器具使用終了時における圧力変化を示すグラフであって、(a)はガステーブル使用終了時における圧力変化を示し、(b)は小型湯沸器使用終了時における圧力変化を示し、(c)はガス給湯器使用終了時における圧力変化を示している。
【図8】図2に示した類似度推移算出部により算出される連続NCCを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用終了時における連続NCCを示し、(b)は小型湯沸器使用終了時における連続NCCを示し、(c)はガス給湯器使用終了時における連続NCCを示している。
【図9】ガス漏れ時に、図2に示した類似度推移算出部により算出される連続NCCを示すグラフである。
【図10】圧力波形の一例を示す図である。
【図11】、ガス給湯器使用時における電気、ガス及び水道の使用タイミングを示す図であり、(a)は電気の使用タイミングを示し、(b)はガスの使用タイミングを示し、(c)は水道の使用タイミングを示している。
【図12】ガス食器洗い乾燥器使用時における電気、ガス及び水道の使用タイミングを示す図であり、(a)は電気の使用タイミングを示し、(b)はガスの使用タイミングを示し、(c)は水道の使用タイミングを示している。
【図13】本実施形態に係るガスメータによるガス器具判断方法を示すメインフローチャートである。
【図14】図11に示した終了ガス器具判断処理(S3)の詳細を示すフローチャートである。
【図15】図13に示したガス漏れ/開始ガス器具判断処理(S4)の詳細を示すフローチャートである。
【図16】第2実施形態に係るガスメータの詳細を示す構成図である。
【図17】図16に示した解析部により算出されるスペクトルデータを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時におけるスペクトルデータを示し、(b)は小型湯沸器使用開始時におけるスペクトルデータを示し、(c)はガス給湯器使用開始時におけるスペクトルデータを示している。
【図18】図16に示した解析部により算出されるスペクトルデータを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用終了時におけるスペクトルデータを示し、(b)は小型湯沸器使用終了時におけるスペクトルデータを示し、(c)はガス給湯器使用終了時におけるスペクトルデータを示している。
【図19】ガス漏れが発生したときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフである。
【図20】図13に示した終了ガス器具判断処理(S3)の詳細を示すフローチャートである。
【図21】図13に示したガス漏れ/開始ガス器具判断処理(S4)の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るガス器具判断システムの構成図である。ガス器具判断システム1は、ガスストーブ、ファンヒータ、ガス給湯器、床暖房及びガステーブルなどの複数のガス器具10と、ガス供給元の調整器20と、配管31,32と、電力積算計(第2センサ)40と、水道メータ(第2センサ)50と、ガスメータ60とを備えている。
【0023】
調整器20は上流からの燃料ガスを所定圧力に調整して第1配管31に流すものである。第1配管31は、調整器20とガスメータ60とを接続するものである。第2配管32はガスメータ60とガス器具10とを接続する配管である。ガスメータ60は、燃料ガスの流量を測定して積算流量を表示するものである。このようなガス供給システム1では、ガスメータ60内に第1配管31及び第2配管32とつながる流路が形成されており、調整器20を通じて流れてきた燃料ガスは第1配管31からガスメータ60、及び第2配管32を通じてガス器具10に到達し、ガス器具10において燃焼されることとなる。
【0024】
電力積算計40及び水道メータ50は、電気及び水道の双方のライフエネルギについて使用を検出するものである。このうち電力積算計40は、各電気機器に供給される電力量を積算計測するものである。本実施形態において電力積算計40はガスメータ60と接続され、計測した電力量信号をガスメータ60に送信するようになっている。また、水道メータ50は、各水道器具に供給される水量を積算計測するものである。本実施形態において水道メータ50はガスメータ60と接続され、計測した水道量信号をガスメータ60に送信するようになっている。
【0025】
図2は、図1に示したガスメータ60の詳細を示す構成図である。図2に示すようにガスメータ60は、圧力センサ(第1センサ)61と、流量センサ(第1センサ)62と、制御部63とを有している。圧力センサ61は、ガスメータ60の流路内におけるガス圧力に応じた計測値の信号を出力するものであって、ピエゾ抵抗式や静電容量式などのセンサによって構成される。流量センサ62は、ガスメータ60の流路内におけるガス流量に応じた計測値の信号を出力するものであって、超音波センサやフローセンサなどで構成される。
【0026】
制御部63は、使用器具判断部(使用器具判断手段)63aを備え、使用器具判断部63aによって使用が開始及び終了したガス器具10を判断するものである。なお、この制御部63はマイコンによって構成することができる。なお、以下において使用が開始したガス器具10、及び使用が終了したガス器具10の一方又は双方を使用ガス器具10という。
【0027】
図3は、ガス器具10の使用過程における流量推移の一例を示す図である。図3に示すように、時刻t1において第1のガス器具10(例えばガステーブル)が使用開始されたとする。このとき、流量値はF1を示す。そして、時刻t2において第2のガス器具10(例えばガス給湯器)が使用開始されたとすると、流量値はF3(=F1+F2)を示す。
【0028】
その後、時刻t3において第1のガス器具10の使用が終了したとすると、流量値は第2のガス器具10のみの流量であるF2を示す。次いで、時刻t4において第2のガス器具10についても使用が終了したとすると、流量値は「0」を示す。
【0029】
本実施形態において制御部63は、時刻t1や時刻t2のように、ガス器具10の使用が開始したときにおけるセンサ61,62からの信号の波形に基づいて、使用ガス器具10を判断する。すなわち、本実施形態に係る制御部63は、時刻t1における波形から第1のガス器具10の使用が開始したことを判断し、時刻t2における波形から第2のガス器具10の使用が開始したことを判断する。
【0030】
さらに、本実施形態において制御部63は、時刻t3や時刻t4のように、ガス器具10の使用が終了したときにおけるセンサ61,62からの信号の波形に基づいて、使用ガス器具10を判断する。すなわち、本実施形態に係る制御部63は、時刻t3における波形から第1のガス器具10の使用が終了したことを判断し、時刻t4における波形から第2のガス器具10の使用が終了したことを判断する。
【0031】
特に、本実施形態に係る制御部63は、時刻t1から微小時間(例えば最大で2秒)経過するまでの波形や、時刻t2から微小時間経過するまでの波形から、使用が開始したガス器具10を特定する。同様に、制御部63は、時刻t3から微小時間経過するまでの波形や、時刻t4から微小時間経過するまでの波形から、使用が終了したガス器具10を特定する。ここで、本件発明者らは、ガス器具10の使用開始時及び終了時における圧力波形や流量波形が、ガス器具10毎に固有の振動を示すことを見出した。また、本件発明者らは、この振動がガス器具10の使用開始時及び終了時から微小時間経過するまでの間に発生することを見出した。よって、制御部63は、微小時間における振動波形から、使用ガス器具10を判断することができる。
【0032】
なお、振動は微小時間中に発生するが、制御部63は微小時間よりも長い時間の圧力波形や流量波形を観測し、その波形内に含まれる振動波形から使用が終了したガス器具10を判断するようにしてもよい。
【0033】
次に、制御部63について詳細に説明する。制御部63は、使用器具判断部63aに加えて、変動判断部(変動判断手段)63b、生成部63c、類似度推移算出部(類似度推移算出手段)63d、記憶部(類似度推移記憶手段)63e、及び、サンプリング時間調整部63fを備えている。
【0034】
変動判断部63bは、センサ61,62からの信号の所定以上の変化を判断するものである。ここで、ガス器具10の使用開始時には、ガス圧力値の立ち下がりやガス流量値の立ち上がりが検出される。同様に、ガス器具10の使用終了時には、ガス圧力値の立ち上がりやガス流量値の立ち下がりが検出される。すなわち、変動判断部63bは、図3に示すところの時刻t1,t2,t3,t4のタイミングを検出することとなる。なお、この変動判断部63bは、例えば微分回路を含んで構成され、微分回路により変動を検出してもよいし、マイコンによる演算によって変動を検出してもよい。
【0035】
生成部63cは、所定の振動波形を生成するものである。この生成部63cによって生成される所定の振動波形は、後の処理において、微小時間中にセンサ61,62で計測された振動波形と比較される。
【0036】
類似度推移算出部63dは、センサ61,62によって計測された微小時間中の振動波形と、生成部63cによって生成された所定の振動波形との類似度推移を算出するものである。使用器具判断部63aは、類似度推移算出部63dによって算出された類似度推移に基づいて、使用ガス器具10を判断する。
【0037】
判断の概略を説明すると、例えば生成された所定の振動波形がガス給湯器の使用開始と仮定されたときの振動波形であって、実際にガス給湯器の使用が開始したとする。この場合、実際にセンサ61,62によって計測される振動波形と生成された振動波形とは、類似度が高くなり、類似度推移についても高くなる。このため、使用器具判断部63aは、ガス給湯器の使用が開始したと判断できる。なお、類似度推移とは、類似度を連続的に求めて得られるものである。
【0038】
また、生成された所定の振動波形がガス給湯器の使用開始と仮定されたときの振動波形であって、実際にガステーブルの使用が開始したとする。この場合、実際にセンサ61,62によって計測される振動波形と生成された振動波形とは、類似度が高くならず、類似度推移についても高くならない。このため、使用器具判断部63aは、ガス給湯器の使用が開始したと判断しない。この際、類似度推移には、ガス給湯器とガステーブルとの相違が生じる。この相違は、ガス器具10毎に異なる。例えば、ガス給湯器とガステーブルとの相違と、ガス給湯器と小型湯沸器との相違とは異なっており、使用器具判断部63aは、相違の状態からガステーブルの使用が開始したと判断できる。
【0039】
なお、上記は、生成部63cが所定の振動波形として1つのガス器具10の振動波形を生成した場合における、使用器具判断部63aのガス器具判断である。しかし、これに限らず、生成部63cが全ガス器具10の振動波形(複数の振動波形)を生成し、類似度推移算出部63dは、生成された全ガス器具10の振動波形と、センサ61,62によって計測された振動波形との類似度推移を算出して、類似度推移が高いガス器具10の使用が開始又は終了したと判断してもよい。さらに、生成部63cが所定の振動波形を1つしか生成しない場合には、ガス漏れ発生と仮定されたときの振動波形を生成するようにしてもよい。すなわち、生成部63cは、振動波形を1つしか生成しない場合、基準となる振動波形を生成すればよく、その振動波形は何の振動波形であってもよい。
【0040】
次に、使用が開始したガス器具10の判断についてより詳細に説明する。また、以下の実施形態において生成部63cは、基準となる所定の振動波形として、ガス漏れ時における振動波形を生成する場合を例に説明する。さらに、以下の実施形態では、ガス圧力の振動波形に基づいて使用が開始したガス器具10を判断する手法について説明する。
【0041】
図4は、図2に示した生成部63cにより生成されるガス漏れ振動波形の概略を示す図である。図4に示すように、生成部63cは、圧力が時間の経過と共に低下しながら振動するガス漏れ振動波形を生成する。このガス漏れ振動波形は、減衰振動の周波数、ゲイン、及び減衰比を含む2次遅れのステップ応答の式に基づいて生成された波形である。ここで、本件発明者らは、ガス漏れ発生直後の微小時間において圧力や流量の計測値に振動が発生することについても見出した。このため、生成部63cは、2次遅れのステップ応答の式に基づいてガス漏れ振動波形を生成する。
【0042】
再度、図2を参照する。類似度推移算出部63dは、センサ61,62からの信号の振動波形と、生成部63cに生成されたガス漏れ振動波形との類似度推移を算出するものである。なお、類似度推移とは、本実施形態において連続的な正規相互相関(NCC:Normalized Cross Correlation)をいう。より具体的には、以下の式(1)により類似度RNCCが求められる。類似度推移算出部63dは、この式(1)による類似度RNCCの算出を連続的に行うことにより、類似度推移(以下、連続NCCという)を求める。
【数1】

【0043】
図5は、ガス器具使用開始時における圧力変化を示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時における圧力変化を示し、(b)は小型湯沸器使用開始時における圧力変化を示し、(c)はガス給湯器使用開始時における圧力変化を示している。
【0044】
図5(a)に示すように、ガステーブルの使用開始時には圧力が2.9kPa程度で滑らかに振動する圧力波形が得られる。また、図5(b)に示すように、小型湯沸器の使用終了時には圧力が2.93kPaを基準にして0.1kPa強振動する圧力波形が得られる。さらに、図5(c)に示すように、ガス給湯器の使用終了時には圧力が2.93kPaを基準にして小型湯沸器よりもやや粗い振動を示す圧力波形が得られる。
【0045】
図6は、図2に示した類似度推移算出部63dにより算出される連続NCCを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時における連続NCCを示し、(b)は小型湯沸器使用開始時における連続NCCを示し、(c)はガス給湯器使用開始時における連続NCCを示している。
【0046】
ガステーブルの使用が開始した場合、図5(a)の振動波形が得られ、類似度推移算出部63dにより算出される連続NCCは図6(a)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「1.0」程度を示し、その後「0.2」を下回り、約0.04秒において「0.95」まで復帰する。そして、連続NCCは、約0.1秒において「0.5」程度となり、その後「0.65」付近までゆっくりと上昇する。
【0047】
また、小型湯沸器の使用が開始した場合、図5(b)の振動波形が得られ、類似度推移算出部63dにより算出される連続NCCは図6(b)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「1.0」程度を示し、その後「0.2」を下回り、約0.04秒において「0.9」まで復帰する。そして、連続NCCは、再度「0.4」程度まで低下し、その後、「0.7」付近までゆっくりと上昇する。
【0048】
また、ガス給湯器の使用が開始した場合、図5(c)の振動波形が得られ、類似度推移算出部63dにより算出される連続NCCは図6(c)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「0.8」弱を示し、その後「0.2」を下回り、約0.02秒において「0.7」まで復帰する。そして、連続NCCは、「0.6」程度まで低下し、次いで「0.7」程度まで復帰する。その後、連続NCCは再び「0.5」程度まで低下した後に、約0.1秒において「0.6」弱となる。以後、連続NCCは「0.65」付近までゆっくりと上昇していく。
【0049】
このように連続NCCはガス器具10毎に異なり、使用器具判断部63aは、このような連続NCCのパターンから使用が開始したガス器具10を判断する。具体的には図2に示す記憶部63eに、各ガス器具10の連続NCCのパターンを記憶させておく。すなわち、記憶部63eは、ガステーブルについて図6(a)に示したような連続NCCのパターンを記憶し、小型湯沸器について図6(b)に示したような連続NCCのパターンを記憶し、ガス給湯器について図6(c)に示したような連続NCCのパターンを記憶している。そして、使用器具判断部63aは、記憶部63eにより記憶された連続NCCデータのうち、算出された連続NCCと類似する連続NCCデータが示すガス器具10の使用が開始したと判断する。
【0050】
図7は、ガス器具使用終了時における圧力変化を示すグラフであって、(a)はガステーブル使用終了時における圧力変化を示し、(b)は小型湯沸器使用終了時における圧力変化を示し、(c)はガス給湯器使用終了時における圧力変化を示している。
【0051】
図7(a)に示すように、ガステーブルの使用終了時には圧力が2.85kPa程度で滑らかに振動する圧力波形が得られる。また、図7(b)に示すように、小型湯沸器の使用終了時には圧力が2.85kPaを基準にして±0.1kPa程度振動する圧力波形が得られる。さらに、図7(c)に示すように、ガス給湯器の使用終了時には圧力が2.88kPaを基準にしてガステーブルよりもやや粗い振動を示す圧力波形が得られる。
【0052】
図8は、図2に示した類似度推移算出部63dにより算出される連続NCCを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用終了時における連続NCCを示し、(b)は小型湯沸器使用終了時における連続NCCを示し、(c)はガス給湯器使用終了時における連続NCCを示している。
【0053】
ガステーブルの使用が終了した場合、図7(a)の振動波形が得られ、類似度推移算出部63dにより算出される連続NCCは図8(a)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「0.9」程度を示し、その後「0.2」を下回り、約0.03秒において「0.8」まで復帰する。そして、連続NCCは、約0.1秒において「0.6」弱となり、その後「0.6」付近を維持する。
【0054】
また、小型湯沸器の使用が終了した場合、図7(b)の振動波形が得られ、類似度推移算出部63dにより算出される連続NCCは図8(b)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「0.9」程度を示し、その後「0.4」を下回り、約0.01秒において「0.8」まで復帰する。そして、連続NCCは、「0.3」程度まで低下し、次いで「0.6」強まで復帰する。次に、連続NCCは小さな振動を繰り返しながら約0.1秒において「0.6」程度となる。以後、連続NCCは「0.7」付近までゆっくりと上昇する。
【0055】
また、ガス給湯器の使用が終了した場合、図7(c)の振動波形が得られ、類似度推移算出部63dにより算出される連続NCCは図8(c)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「0.9」弱を示し、その後「0.2」を下回り、約0.02秒において「0.6」まで復帰する。そして、連続NCCは、再度「0.45」程度まで低下し、次いで「0.6」程度まで復帰する。その後、連続NCCは再び「0.45」程度まで低下した後に、約0.1秒において「0.6」程度となる。以後、連続NCCは「0.7」付近までゆっくりと上昇いていく。
【0056】
このようにガス器具10の使用終了時においても、連続NCCはガス器具10毎に異なり、使用器具判断部63aは、このような連続NCCのパターンから使用が終了したガス器具10を判断する。具体的には図2に示す記憶部63eに、各ガス器具10の連続NCCのパターンを記憶させておく。すなわち、記憶部63eは、ガステーブルについて図8(a)に示したような連続NCCのパターンを記憶し、小型湯沸器について図8(b)に示したような連続NCCのパターンを記憶し、ガス給湯器について図8(c)に示したような連続NCCのパターンを記憶している。そして、使用器具判断部63aは、記憶部63eにより記憶された連続NCCデータのうち、算出された連続NCCと類似する連続NCCデータが示すガス器具10の使用が終了したと判断する。
【0057】
さらに、本実施形態に係るガスメータ60では、ガス漏れについても判断する。この場合、使用が開始されたガス器具10の判断時に同時的にガス漏れが判断される。すなわち、変動判断部63bは、センサ61,62からの信号に基づいて、ガスの圧力値が立ち下がったこと、及び、ガスの流量値が立ち上がったことの少なくとも一方の使用開始時の変動を判断する。そして、類似度推移算出部63dは、ガス漏れ振動波形と、センサ61,62によって計測された微小時間中の振動波形との類似度推移を式(1)に従って算出する。
【0058】
図9は、ガス漏れ時に、図2に示した類似度推移算出部63dにより算出される連続NCCを示すグラフである。なお、図9において実線と破線は、各家庭における配管状態の相違、ガス漏れ箇所の相違、及び、ガス漏れ流量の相違などの条件が異なる場合の連続NCCを示している。
【0059】
図9に示すように、ガス漏れ時において連続NCCは、初期的に「1.0」を示し、その後「0.8」弱に低下する。しかし、時刻0.025秒以降について連続NCCは「0.9」以上の値を示す。従って、使用器具判断部63aは、このような連続NCCのパターンからガス漏れを判断する。具体的には図2に示す記憶部63eに、ガス漏れ時の連続NCCのパターンを記憶させておく。すなわち、記憶部63eは、図9に示したような連続NCCのパターンを記憶している。そして、使用器具判断部63aは、記憶部63eにより記憶された連続NCCのパターンと、算出された連続NCCとを比較し、両者が近い場合にガス漏れと判断する。
【0060】
なお、ガス漏れ時において連続NCCは、NCCが全体に亘って「0.9」以上を示す。このため、ガス漏れ判断部43a2は、類似度推移算出部63dにより算出された類似度推移の代表値が閾値(例えば「0.9」)以上である場合に、ガス漏れが発生していると判断してもよい。ここで、代表値とは、類似度全体又は類似度全体のうち特定期間の平均値であってもよいし、圧力や流量の変化が発生してから、ある特定の時刻における類似度であってもよいし、他の値であってもよい。
【0061】
次に、生成部63cによって生成される所定の振動波形の生成手法について説明する。生成部63cは、以下のようにしてガス漏れ振動波形を生成する。まず、生成部63cは以下の式(2)を記憶している。
【数2】

【0062】
ここで、y(t)は圧力の変化量を示し、Kはゲインを示し、ωは減衰振動の周波数を示し、ζは減衰比を示している。特に、ゲインK、減衰振動の周波数ω、及び減衰比ζは、圧力センサ61によって実際に計測された波形から求められるものである。次に、これらの算出方法について図10を参照して説明する。図10は、圧力波形の一例を示す図である。
【0063】
生成部63cは、以下の式(3)から、減衰振動の周波数ωを算出する。
【数3】

【0064】
ここで、Tpは行き過ぎ時間であり、図10で示すように、圧力変化発生時から最初の極値V1(極小値V1)までの時間をいう。生成部63cは、圧力センサ61の信号から最初の極値V1が確認されると、行き過ぎ時間Tpを求め、式(3)から減衰振動の周波数ωを算出する。
【0065】
なお、減衰振動の周波数ωは、式(3)から求める場合に限らず、圧力変化発生時から2つ目の極値M(極大点M)や、3つ目の極値V2(極小点V2)に基づいて算出してもよい。
【0066】
次に、生成部63cは、以下の式(4)から、ゲインKを算出する。
【数4】

【0067】
このような式であるため、生成部63cは、圧力センサ61の信号から極値V1,M,V2が確認されると、式(4)からゲインKを算出する。
【0068】
なお、図10から明らかなように、ゲインKは圧力変化発生前の圧力値と圧力変化発生後の圧力値との差分によっても求めることができる。従って、生成部63cは、圧力変化が発生して圧力値が略一定値となったとき(図10では時刻0.4秒)に、差分からゲインKを求めてもよい。さらに、類似度推移算出部43cは、圧力変化発生時から4つ目以降の極値を加味してゲインKを算出してもよい。
【0069】
次いで、生成部63cは、以下の式(5)から、減衰比ζを算出する。
【数5】

【0070】
ここで、δは対数減衰率であり、mは周期数である。式(5)の場合、周期数mは「0.5」となる。
【0071】
このような式であるため、生成部63cは、圧力センサ61の信号から極値V1,Mが確認されると、式(5)から減衰比ζを算出する。
【0072】
以上のように、生成部63cは、ゲインK、減衰振動の周波数ω、及び減衰比ζを算出し、式(2)より振動波形の式を求める。そして、類似度推移算出部43cは、求めた式と、圧力センサ61の信号に基づく圧力波形とから、式(1)に従って連続NCCを求めることとなる。
【0073】
ここで、生成部63cは、減衰振動の周波数ω、及び減衰比ζを以下のようにして算出するようにしてもよい。すなわち、図10に示す振動波形は、ガス漏れ時の流量に依存する傾向にある。このため、生成部63cは、流量値のみを変数に含む式を予め記憶し、この式に流量センサ62によって計測された流量値を代入して、減衰振動の周波数ω、及び減衰比ζを求めるようにしてもよい。
【0074】
具体的に生成部63cは、以下の式(6)から減衰振動の周波数ω、及び減衰比ζを求める。
【数6】

【0075】
ここで、Lは流量値であり、a,a,b,bは定数である。このように、式(6)から求めることで演算量を減らして、算出処理の簡素化を図るようにしてもよい。なお、流量と圧力には一定の相関がある。このため、式(6)に代えて圧力値のみを変数に含む式を記憶し、この式から減衰振動の周波数ω、及び減衰比ζを求めるようにしてもよい。
【0076】
さらに、この場合、生成部63cは、ゲインKについて式(4)から算出することなく、圧力変化発生前の圧力値と圧力変化発生後の圧力値との差分によっても求めることが望ましい。これにより、一層演算量を減らすことができるからである。
【0077】
再度、図2を参照する。制御部63は、は、使用器具判断部63aにより使用が判断されたガス器具10について、使用開始から終了までの期間において、そのガス器具10について連続使用時間を監視したり、ガス使用量について割引をしたりする。
【0078】
サンプリング時間調整部63fは、圧力センサ61及び流量センサ62のサンプリング時間を調整するものである。本実施形態に係るガスメータ60では、微小時間において詳細に計測値を計測する必要がある。一般的に圧力センサ61は通常のサンプリング時間が10秒であり、流量センサ62は通常のサンプリング時間が2秒である。このため、サンプリング時間調整部63fは、この間隔を短縮する。具体的には変動判断部63bによって変動が判断された場合に、サンプリング時間を通常のサンプリング時間よりも短縮して、例えば1マイクロ秒程度とする。これにより、微小時間における詳細な計測を可能とする。
【0079】
以上構成により、ガスメータ60は使用ガス器具10を判断する。しかし、ガス器具10によっては微小時間中に得られる振動波形が似ているものもあり、このような似ている振動波形により使用ガス器具10を誤判断してしまう可能性がある。例えばガス給湯器とガス食器洗い乾燥器との振動波形は似ており、これらのガス器具10の一方が使用された場合、他方が使用されたと誤判断してしまう可能性がある。
【0080】
そこで、本実施形態において使用器具判断部63aは、上記微小時間中に得られる振動波形、及び、積算電力計40及び水道メータ50により検出されたライフエネルギの使用タイミングから、使用ガス器具10を判断する。
【0081】
図11は、ガス給湯器使用時における電気、ガス及び水道の使用タイミングを示す図であり、(a)は電気の使用タイミングを示し、(b)はガスの使用タイミングを示し、(c)は水道の使用タイミングを示している。
【0082】
図11(a)に示すように、まず、時刻T1においてガス給湯器の使用が開始されたとする。この場合、点火のための点火放電により電流が発生し、その後時刻T2に至るまでファン電流が発生する。
【0083】
また、ガス給湯器にて使用される水量及び温度が一定である場合、図11(b)に示すように、ガス流量は時刻T1から時刻T2に至るまで略一定となると共に、図11(b)に示すように、水量についても時刻T1から時刻T2に至るまで略一定となる。
【0084】
図12は、ガス食器洗い乾燥器使用時における電気、ガス及び水道の使用タイミングを示す図であり、(a)は電気の使用タイミングを示し、(b)はガスの使用タイミングを示し、(c)は水道の使用タイミングを示している。
【0085】
図12(a)に示すように、まず、時刻T3においてガス食器洗い乾燥器の使用が開始されたとする。この場合、時刻T3において水道バルブが開けられる。このため、時刻T3においてバルブ開のためのパルス電流が発生する。そして、時刻T4において水道バルブが閉じられる。これにより、時刻T4においてバルブ閉のためのパルス電流が発生する。
【0086】
また、図12(b)及び図12(c)に示すように、洗浄用のお湯を温めるために時刻T3から時刻T4に至るまで一定量のガス流量が発生すると共に、洗浄用のお湯を注入するために時刻T3から時刻T4に至るまで一定量の水量が発生する。
【0087】
そして、時刻T4直後から時刻T5に至るまで洗浄が行われる。このため、図12(a)に示すように、洗浄のためのモータ電流が発生する。
【0088】
次に、図12(a)に示すように、時刻T6において水道バルブが開けられる。このため、時刻T6においてバルブ開のためのパルス電流が発生する。そして、時刻T7において水道バルブが閉じられる。これにより、時刻T7においてバルブ閉のためのパルス電流が発生する。
【0089】
また、図12(b)及び図12(c)に示すように、すすぎ用のお湯を温めるために時刻T6から時刻T7に至るまで一定量のガス流量が発生すると共に、すすぎ用のお湯を注入するために時刻T6から時刻T7に至るまで一定量の水量が発生する。
【0090】
そして、時刻T7直後から時刻T8に至るまで洗浄が行われる。このため、図12(a)に示すように、すすぎのためのモータ電流が発生する。
【0091】
その後、時刻T9から時刻T10に至るまで食器乾燥が行われる。このため、図12(a)に示すように、乾燥のためにファンが駆動されてファン電流が発生する。また、図12(b)に示すように、時刻T9から時刻T10に至るまで乾燥のためにガス流量が発生する。
【0092】
以上、図11及び図12から明らかなように、積算電力計40及び水道メータ50により検出されたライフエネルギの使用タイミングは、ガス給湯器とガス食器洗い乾燥器とで大きく異なっている。このため、使用器具判断部63aは、上記微小時間中に得られる振動波形のみならず、積算電力計40及び水道メータ50により検出されたライフエネルギの使用タイミングから、使用ガス器具10を判断することで、より使用ガス器具10の判断精度を向上させることができる。
【0093】
なお、使用器具判断部63aは、ライフエネルギの使用タイミングを予め記憶部63eに記憶しておくことで、ライフエネルギの使用タイミングに基づいて使用ガス器具10を判断することができる。
【0094】
ここで、使用器具判断部63aは、振動波形のみから使用ガス器具10を判断できる場合、ライフエネルギの使用タイミングに基づくことなく、使用ガス器具10を判断することが望ましい。振動波形が特徴的で似ているガス器具10が存在しない場合、振動波形のみから使用ガス器具10を判断でき、処理を簡略化することができるからである。
【0095】
また、振動波形のみから使用ガス器具10を判断できる場合とは、記憶部63eにより記憶されたガス器具10毎の連続NCCデータのうち、類似度推移算出部63dにより算出された連続NCCと類似するものが1つである場合である。このように、記憶内容との対比により判断することで、簡易にライフエネルギの使用タイミングに基づくことなく、使用ガス器具を判断することができるからである。
【0096】
さらに、類似するものが1つである場合とは、例えば、記憶されたガス器具10毎の全連続NCCデータと算出された連続NCCとの類似度のうち、特定値以上となるものが1つであるときである。また、この他に、記憶されたガス器具10毎の全連続NCCデータと算出された連続NCCとの類似度のうち、1つの類似度だけが他の類似度よりも既定値以上高い場合なども該当する。
【0097】
次に、本実施形態に係るガス器具判断方法について説明する。図13は、本実施形態に係るガスメータ60によるガス器具判断方法を示すメインフローチャートである。
【0098】
まず、変動判断部63bは、センサ61,62からの信号に基づいて、所定以上の変化があったか否かを判断する(S1)。所定以上の変化がなかったと判断した場合(S1:NO)、所定以上の変化があったと判断するまで、この処理が繰り返される。また、所定以上の変化があったと判断した場合(S1:YES)、変動判断部63bは、ステップS1における変化が使用終了時の変化であるか否かを判断する(S2)。
【0099】
使用終了時の変化であると判断した場合(S2:YES)、終了ガス器具判断処理が実行され(S3)、使用が終了したガス器具10が判断される。その後、図13に示す処理は終了する。一方、使用終了時の変化でないと判断した場合(S2:NO)、ガス漏れ/開始ガス器具判断処理が実行され(S4)、ガス漏れ及び使用が開始したガス器具10が判断される。その後、図13に示す処理は終了する。
【0100】
図14は、図11に示した終了ガス器具判断処理(S3)の詳細を示すフローチャートである。図14に示すように、まず、サンプリング時間調整部63fは、サンプリング時間を通常のサンプリング時間よりも短縮し、短縮されたサンプリング時間で圧力を計測する(S11)。このとき、サンプリング時間調整部63fはサンプリング時間を約1msとする。
【0101】
その後、制御部63は、微小時間経過したか否かを判断する(S12)。微小時間経過していないと判断した場合(S12:NO)、処理はステップS11に移行する。なお、ステップS11では、圧力のサンプリング時間を短縮しているが、圧力のサンプリング時間に代えて、流量のサンプリング時間を短縮するようにしてもよい。
【0102】
微小時間経過したと判断した場合(S12:YES)、生成部63cは、微小時間中に得られた振動波形から、減衰振動の周波数ω、ゲインK、及び減衰比ζを決定する(S13)。このとき、生成部63cは、減衰振動の周波数ω、ゲインK、及び減衰比ζを式(3)〜式(5)に基づいて算出してもよいし、式(6)から求めてもよい。
【0103】
次に、生成部63cは、ステップS13により決定された減衰振動の周波数ω、ゲインK、及び減衰比ζから、2次遅れのステップ応答の式に基づいてガス漏れ振動波形を生成する(S14)。このとき、生成部63cは、ステップS13により決定された減衰振動の周波数ω、ゲインK、及び減衰比ζを式(2)に代入することにより、ガス漏れ振動波形を生成する。
【0104】
そして、使用器具判断部63aは、ステップS14により決定されたガス漏れ振動波形と、ステップS11において計測された計測値からなる振動波形とに基づいて、式(1)から連続NCCを算出する(S15)。
【0105】
次いで、使用器具判断部63aは、記憶部63eからガス器具10毎の連続NCCデータを読み出す(S16)。その後、使用器具判断部63aは、ステップS16において読み出したガス器具10毎の連続NCCデータと、ステップS15において算出した連続NCCとを対比させ、類似するものが1つであるかを判断する(S17)。
【0106】
ここで、類似するものが1つである場合とは、例えば、記憶されたガス器具10毎の全連続NCCデータと算出された連続NCCとの類似度のうち、特定値以上となるものが1つであるときである。また、この他に、記憶されたガス器具10毎の全連続NCCデータと算出された連続NCCとの類似度のうち、1つの類似度だけが他の類似度よりも既定値以上高い場合なども該当する。
【0107】
類似するものが1つであると判断した場合(S17:YES)、使用器具判断部63aは、類似する1つの連続NCCデータが示すガス器具10の使用が終了したと判断する(S18)。そして、図14に示す処理は終了する。
【0108】
一方、類似するものが1つでないと判断した場合(S17:NO)、使用器具判断部63aは、積算電力計40及び水道メータ50からの信号に基づいて、電気及び水道の使用タイミングを判断する(S19)。そして、使用器具判断部63aは、類似する複数の連続NCCデータが示すガス器具10のうち、最も使用タイミングに適合するものを選択し、選択されたガス器具10の使用が終了したと判断する(S18)。そして、図14に示す処理は終了する。
【0109】
図15は、図13に示したガス漏れ/開始ガス器具判断処理(S4)の詳細を示すフローチャートである。まず、図15に示すステップS21〜S25では、図14に示したステップS11〜S15と同様の処理が実行される。
【0110】
その後、使用器具判断部63aは、連続NCCの代表値を決定し、代表値が閾値以上であるか否かを判断する(S26)。代表値が閾値以上であると判断した場合(S26:YES)、使用器具判断部63aは、ガス漏れが発生していると判断する(S27)。その後、図15に示す処理は終了する。
【0111】
一方、代表値が閾値以上でないと判断した場合(S26:NO)、ステップS28からステップS30において、図14に示したステップS17からステップS19と同様の処理が実行され、図15に示す処理は終了する。なお、図15に示す処理では、使用が開始したガス器具10を判断するのに先立って、ガス漏れを判断することにより、迅速性を必要とするガス漏れの判断を優先し、安全性の向上を図っている。
【0112】
なお、上記実施形態では圧力センサ61からの信号によって得られる振動波形から連続NCCを求めて、使用ガス器具10及びガス漏れを判断している。しかし、圧力と流量とには一定の相関があるため、流量センサ62からの信号によって得られる振動波形から連続NCCを求めて、使用ガス器具10及びガス漏れを判断するようにしてもよい。
【0113】
このようにして、本実施形態に係るガス器具判断システム1及びガス器具判断方法によれば、センサ61,62から出力された信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形から使用ガス器具10を判断する。ここで、本件発明者らは、ガス器具10の使用開始時や終了時において所定以上の変化を示してから微小時間中に得られる波形が、ガス器具10毎に固有の振動を示すことを見出した。よって、微少時間中の振動波形から、使用ガス器具10を判断することができる。また、積算電力計40や水道メータ50により検出されたライフエネルギの使用タイミングから、使用ガス器具10を判断する。ここで、ガス器具10によっては微小時間中に得られる振動波形が似ているものもあり、このような似ている振動波形により使用ガス器具10を誤判断してしまう可能性がある。しかし、似ている振動波形であっても、ライフエネルギの使用タイミングを参照することで、振動波形が似ているガス器具10であっても区別を付けることができる。例えば、ガス給湯器とガス食器洗い乾燥器とでは、微少時間中の振動波形が似る傾向があるが、ガス給湯器は使用中常時電気や水道が使用されるのに対し、ガス食器洗い乾燥器は特定のタイミングのみ電気や水道が使用される。このようなライフエネルギの使用タイミングにより、両者を区別することができる。従って、使用ガス器具10の判断精度を向上させることができる。
【0114】
また、振動波形のみから使用ガス器具10を判断できる場合、ライフエネルギの使用タイミングに基づくことなく、使用ガス器具10を判断する。このため、振動波形が特徴的で似ているガス器具10が存在しない場合、振動波形のみから使用ガス器具10を判断できるため、処理を簡略化することができる。
【0115】
また、振動波形と所定の振動波形との類似度推移を算出し、算出された類似度推移に基づいて、使用ガス器具10を判断する。ここで、所定の振動波形が特定のガス器具10の振動波形であるとする。そして、センサ61,62から出力された信号に基づく振動波形が特定のガス器具10の振動波形である場合、算出される類似度は高くなる傾向にあり、類似度推移についても全体的に高い値を示す傾向にある。また、センサ61,62から得られた信号に基づく振動波形が他のガス器具10の振動波形である場合には、類似度は高くならず、類似度推移についても高くならないが、類似度推移はそのガス器具10特有の推移を示す。従って、上記のように類似度推移に基づいて判断を実行することで、振動波形の特徴をとらえて、使用ガス器具10を判断することができる。
【0116】
また、記憶されたガス器具10毎の類似度推移のうち、算出された類似度推移と類似するものが1つである場合、振動波形のみから使用ガス器具10を判断できると判断して、ライフエネルギの使用タイミングに基づくことなく、使用ガス器具10を判断する。このように、記憶内容との対比により判断することで、簡易にライフエネルギの使用タイミングに基づくことなく、使用ガス器具10を判断することができる。
【0117】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係るガスメータ60及びガス器具判断方法は、第1実施形態のものと同様であるが、構成及び処理内容が一部異なっている。以下、第1実施形態との相違点を説明する。
【0118】
図16は、第2実施形態に係るガスメータ60の詳細を示す構成図である。図16に示すように、第2実施形態に係るガスメータ60は、生成部63c及び類似度推移算出部63dに代えて、解析部(解析手段)63gを備えている。
【0119】
解析部63gは、センサ61,62から出力された信号に基づく振動波形を解析して、周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを算出するものである。具体的に本実施形態に係る解析部63gは、振動波形をフーリエ変換することにより、スペクトルデータを算出する。なお、解析部63gはフーリエ変換によりスペクトルデータを算出する場合に限らず、他の方法によってスペクトルデータを算出するようにしてもよい。
【0120】
また、解析部63gを備えるため、記憶部63eの記憶内容、及び、使用器具判断部63aの判断手法が第1実施形態と異なっている。
【0121】
図17は、図16に示した解析部63gにより算出されるスペクトルデータを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時におけるスペクトルデータを示し、(b)は小型湯沸器使用開始時におけるスペクトルデータを示し、(c)はガス給湯器使用開始時におけるスペクトルデータを示している。
【0122】
図17(a)に示すように、ガステーブルの使用が終了した場合、得られる圧力波形には30Hz以下の周波数成分が多く、特に10〜20Hz付近において比較的大きな振幅を示す傾向がある。また、図17(b)に示すように、小型湯沸器の使用が開始した場合、圧力波形は150Hzまでの圧力成分を含んでおり、特に30Hz程度では非常に大きな振幅を示す傾向がある。さらに、図17(c)に示すように、ガス給湯器の使用が開始した場合、圧力波形は200Hzまでの圧力成分を含んでおり、特に20Hz程度では非常に大きな振幅を示す傾向がある。
【0123】
図18は、図16に示した解析部63gにより算出されるスペクトルデータを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用終了時におけるスペクトルデータを示し、(b)は小型湯沸器使用終了時におけるスペクトルデータを示し、(c)はガス給湯器使用終了時におけるスペクトルデータを示している。
【0124】
図18(a)に示すように、ガステーブルの使用が終了した場合、得られる圧力波形には30Hz以下の周波数成分が多く、特に10〜20Hz付近において比較的大きな振幅を示す傾向がある。また、図18(b)に示すように、小型湯沸器の使用が終了した場合、圧力波形は200Hz付近までの圧力成分を含んでおり、特に90Hz程度で大きな振幅を示す傾向がある。さらに、図18(c)に示すように、ガス給湯器の使用が終了した場合、30Hz程度でやや大きな振幅を示す程度であり、その他の周波数成分を殆ど含まない傾向がある、なお、50Hz付近において存在するピークは、商用電源によるノイズであると考えられる。
【0125】
図19は、ガス漏れが発生したときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフである。図19に示すように、ガス漏れが発生した場合、得られる圧力波形には20Hz以上の周波数成分が殆ど含まれていない。なお、60Hz付近において存在するピークは、商用電源によるノイズであると考えられる。
【0126】
再度、図16を参照する。記憶部63eは、図17〜図19に示したようなスペクトルデータを記憶している。そして、使用器具判断部63aは、このスペクトルデータに基づいて、使用ガス器具10及びガス漏れを判断する。
【0127】
すなわち、ガス器具10の使用開始時及び終了時、並びにガス漏れ時の所定上の変化が確認されると、解析部63gは変化後の微小時間において得られた信号に基づく圧力波形をフーリエ変換してスペクトルデータを算出する。使用器具判断部63aは、解析部63gにより算出されたスペクトルデータと、記憶部63eにより記憶されたガス器具10毎のスペクトルデータとを比較し、類似するものについて使用ガス器具10やガス漏れを判断する。
【0128】
さらに、第2実施形態では第1実施形態と同様に類似するスペクトルデータが1つである場合、ライフエネルギの使用タイミングに基づくことなく、振動波形のみから使用ガス器具10やガス漏れを判断する。
【0129】
次に、フローチャートを参照して、第2実施形態に係るガスメータ60の動作を説明する。なお、第2実施形態においてメインフローは第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0130】
図20は、図13に示した終了ガス器具判断処理(S3)の詳細を示すフローチャートである。まず、図20に示すステップS31,S32では、図14に示したステップS11,S12と同様の処理が実行される。
【0131】
次に、解析部63gは、微少時間中に得られた振動波形をフーリエ変換し、スペクトルデータを算出する(S33)。その後、使用器具判断部63aは、ガス器具10毎のスペクトルデータを読み出し(S34)、読み出したガス器具10毎のスペクトルデータと、ステップS33にて算出したスペクトルデータとの類似度を算出する(S35)。
【0132】
その後、使用器具判断部63aは、ステップS34において読み出したガス器具10毎のスペクトルデータと、ステップS33において算出したスペクトルデータとを対比させ、類似するものが1つであるかを判断する(S36)。
【0133】
ここで、類似するものが1つである場合とは、例えば、記憶されたガス器具10毎の全スペクトルデータと算出されたスペクトルデータとの類似度のうち、特定値以上となるものが1つであるときである。また、この他に、記憶されたガス器具10毎の全スペクトルデータと算出されたスペクトルデータとの類似度のうち、1つの類似度だけが他の類似度よりも既定値以上高い場合なども該当する。
【0134】
類似するものが1つであると判断した場合(S36:YES)、使用器具判断部63aは、類似する1つのスペクトルデータが示すガス器具10の使用が終了したと判断する(S37)。そして、図20に示す処理は終了する。
【0135】
一方、類似するものが1つでないと判断した場合(S36:NO)、使用器具判断部63aは、積算電力計40及び水道メータ50からの信号に基づいて、電気及び水道の使用タイミングを判断する(S38)。そして、使用器具判断部63aは、類似する複数のスペクトルデータが示すガス器具10のうち、最も使用タイミングに適合するものを選択し、選択されたガス器具10の使用が終了したと判断する(S37)。そして、図20に示す処理は終了する。
【0136】
図21は、図13に示したガス漏れ/開始ガス器具判断処理(S4)の詳細を示すフローチャートである。まず、図21に示すステップS41〜S43では、図18に示したステップS31〜S33と同様の処理が実行される。
【0137】
その後、使用器具判断部63aは、ガス漏れのスペクトルデータを読み出し(S44)、読み出したガス漏れのスペクトルデータと、ステップS43にて算出したスペクトルデータとの類似度を算出する(S45)。
【0138】
次に、使用器具判断部63aは、ステップS45にて算出した類似度が特定値以上であるか否かを判断する(S46)。ステップS45にて算出した類似度が特定値以上であると判断した場合(S46:YES)、使用器具判断部63aは、ガス漏れが発生したと判断する(S47)。そして、図21に示す処理は終了する。
【0139】
ところで、ステップS45にて算出した類似度が特定値以上でないと判断した場合(S46:NO)、ステップS48〜S52において図20に示したステップS34〜S38と同様の処理が実行され、図21に示す処理は終了する。
【0140】
なお、第2実施形態では圧力センサ61からの信号によって得られる振動波形をフーリエ変換して、使用ガス器具10やガス漏れを判断している。しかし、圧力と流量とには一定の相関があるため、流量センサ62からの信号によって得られる振動波形をフーリエ変換して、使用ガス器具10やガス漏れを判断するようにしてもよい。
【0141】
このようにして、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、使用ガス器具10の判断精度を向上させることができ、処理を簡略化することができる。
【0142】
さらに、第2実施形態によれば、センサ61,62から出力された信号に基づく振動波形を解析して、周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを算出し、算出されたスペクトルデータに基づいて、判断を実行する。ここで、ガス器具使用時及び終了時における振動波形それぞれには、圧力や流量の波形の周波数及び振幅に特徴があらわれる。よって、波形を解析して周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを得ると共に、このスペクトルデータに基づいて判断を実行することで、使用ガス器具10を判断することができる。
【0143】
また、記憶されたガス器具10毎の類似度推移のうち、算出された類似度推移と類似するものが1つである場合、振動波形のみから使用ガス器具10を判断できると判断して、ライフエネルギの使用タイミングに基づくことなく、使用ガス器具10を判断する。このように、記憶内容との対比により判断することで、簡易にライフエネルギの使用タイミングに基づくことなく、使用ガス器具10を判断することができる。
【0144】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0145】
例えば、第1実施形態において類似度推移を式(1)により算出しているが、これに限らず、他の方法で類似度推移を算出するようにしてもよい。
【0146】
また、第1実施形態において使用器具判断部63aは、記憶部63eに記憶された連続NCCデータのうち、使用器具判断部63aにより算出された連続NCCと類似するものが存在しない場合、記憶部63eに記憶された連続NCCデータが示すガス器具10に不足があると判断してもよい。
【0147】
また、本実施形態では燃料ガスをLPガスとする場合の例について説明したが、これに限らず、都市ガスの場合にも適用可能である。
【0148】
また、本実施形態では最大で2秒の微小時間におけるガス漏れ振動波形に基づいて、ガス漏れ及び使用ガス器具10を判断している。特に、本実施形態では、圧力や流量を計測する時間は2秒以内(望ましくは1秒以内)で充分であるが、予備的に2秒よりも長い時間の計測を行ってもよい。
【0149】
また、本実施形態において記憶部63eは、ガス器具10毎の連続NCCデータを記憶している。この連続NCCデータは、1つのガス器具10に対して1つだけ記憶されていてもよいし、1つのガス器具10に対して複数記憶されていてもよい。例えば、ガス給湯器ではガス給湯器内の水温によって連続NCCが異なってくる。この場合、記憶部63eに記憶される連続NCCデータが1つだけであると、ガス給湯器の水温に応じて使用ガス器具10の判断を誤ってしまう可能性がある。そこで、このようなガス器具10に対しては複数の連続NCCデータを記憶しておくことが望ましい。これにより、より精度良く使用ガス器具10を判断することができるからである。同様に、第2実施形態において1つのガス器具10に対し、複数のスペクトルデータを記憶していてもよい。
【0150】
また、第2実施形態において解析部63gは、スペクトルデータの全周波数域で類似度を算出しているが、これに限らず一部の周波数域のみで類似度を算出してもよい。例えば、ガス給湯器の使用終了時では100Hz以上の周波数域においてもスペクトルデータに大きな振幅が得られるという特徴があるため、100Hz以上の周波数域についてスペクトルデータの類似度を算出することによっても使用が終了したガス器具10を特定することができる。このように、一部の周波数域のみで類似度を算出して演算量を減らすこともできる。
【0151】
さらに、上記実施形態では、使用が終了したガス器具10、使用が開始したガス器具10、及び、ガス漏れについて、連続NCCを求めたり、スペクトルデータを求めたりすることで、判断している。しかし、これに限らず、例えば、図5や図7に示すような微小時間における波形を直接記憶しておき、波形同士の類似度などから、使用が終了したガス器具10、使用が開始したガス器具10、及び、ガス漏れを判断するようにしてもよい。さらには、波形の特定点など波形の直接の特徴から使用が終了したガス器具10、使用が開始したガス器具10、及び、ガス漏れを判断するようにしてもよい。
【0152】
また、上記実施形態では、積算電力計40及び水道メータ50の双方により検出されたライフエネルギの使用タイミングから使用ガス器具10を判断しているが、これに限らず、いずれか一方のライフエネルギの使用タイミングから使用ガス器具10を判断してもよい。
【0153】
さらに、ガスメータ60は所定以上の流量変化や圧力変化があった場合に、電力積算計40及び水道メータ50に信号の送信要求を行い、電力積算計40及び水道メータ50は送信要求があった場合のみに、電力量信号や水道量信号を送信するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0154】
1…ガス器具判断システム
10…ガス器具
20…調整器
31…第1配管
32…第2配管
40…積算電力計(第2センサ)
50…水道メータ(第2センサ)
60…ガスメータ
61…圧力センサ(第1センサ)
62…流量センサ(第1センサ)
63…制御部
63a…使用器具判断部(使用器具判断手段)
63b…変動判断部
63c…生成部
63d…類似度推移算出部(類似度推移算出手段)
63e…記憶部
43f…サンプリング時間調整部
43g…解析部(解析手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路内のガス圧力に応じた信号を出力する圧力センサ、及び、流路内のガス流量に応じた信号を出力する流量センサの少なくとも一方からなる第1センサと、
電気及び水道の少なくとも一方のライフエネルギについて使用を検出する第2センサと、
前記第1センサから出力された信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形、及び、前記第2センサにより検出されたライフエネルギの使用タイミングから、使用ガス器具を判断する使用器具判断手段と、
を備えることを特徴とするガス器具判断システム。
【請求項2】
前記第1センサから出力された信号に基づく振動波形と所定の振動波形との類似度推移を算出する類似度推移算出手段をさらに備え、
前記使用器具判断手段は、前記類似度推移算出手段により算出された類似度推移に基づいて、使用ガス器具を判断する
ことを特徴とする請求項1に記載のガス器具判断システム。
【請求項3】
前記第1センサから出力された信号に基づく振動波形を解析して、周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを算出する解析手段をさらに備え、
前記使用器具判断手段は、前記解析手段により算出されたスペクトルデータに基づいて、使用ガス器具を判断する
ことを特徴とする請求項1に記載のガス器具判断システム。
【請求項4】
流路内のガス圧力に応じた信号を出力する圧力センサ、及び、流路内のガス流量に応じた信号を出力する流量センサの少なくとも一方からなる第1センサから出力された信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形、及び、電気及び水道の少なくとも一方のライフエネルギについて使用を検出する第2センサにより検出されたライフエネルギの使用タイミングから、使用ガス器具を判断する使用器具判断工程を有する
ことを特徴とするガス器具判断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−13370(P2012−13370A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151934(P2010−151934)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】