説明

ガス圧式アクチュエータ

【課題】個々の構成部に特殊な構造を施す必要がなく、構造自体の簡素化を図ると共に、部品点数を少なくして安価にする。
【解決手段】シリンダ(21)とピストン(22)と火薬が装填されたガス発生器(25)とを備えてアクチュエータ本体(26)が構成され、ガス発生器(25)がシリンダ(21)の端部に設けられている。そして、火薬の燃焼によりガス発生器(25)がシリンダ(21)内に高圧ガスを噴出してピストン(22)を移動させる。アクチュエータ本体(26)は、アクチュエータ本体(26)を全体に外側から覆う被膜(30)が施されている。被膜(30)は、電気的絶縁性、防水性及び防塵性を有する樹脂被膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス圧式アクチュエータに関し、特に、アクチュエータ本体の被覆対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス圧式アクチュエータである火薬式アクチュエータには、特許文献1に開示されているように、各種の車両に適用されているものがある。上記火薬式アクチュエータは、シリンダとピストンとガス発生器とを備えている。そして、例えば、衝突検知センサが衝突を検知すると、ガス発生器に装填された火薬が燃焼し、該ガス発生器がシリンダ(21)内に高圧ガスを噴出してピストンを移動させる。この移動によりエンジンフードを持ち上げ、歩行者の衝突時におけるフードの大きな変形量を確保している。
【特許文献1】特開2004−330912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の火薬式アクチュエータは、単にシリンダ内にピストンを装着すると共に、該シリンダにガス発生器を装着してアクチュエータ本体を構成しているに過ぎなかった。
【0004】
したがって、上記シリンダとピストンとの間のシール部に異物が入らないようにシール構造を構成する必要がある。また、上記ガス発生器の電気端子には防水性を有する特別なコネクタを採用する必要があった。
【0005】
しかしながら、これでは、上記シール部や電気端子など個々の構成部に特殊な構造を施す必要があり、構造自体が複雑になると共に、部品点数が多くなって高価になるという問題があった。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、個々の構成部に特殊な構造を施す必要がなく、構造自体の簡素化を図ると共に、部品点数を少なくして安価にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アクチュエータ本体(26)の少なくとも一部を覆う構成とした。
【0008】
第1の発明は、シリンダ(21)とピストン(22)とガス発生剤が装填されたガス発生器(25)とを備えてアクチュエータ本体(26)が構成され、上記ガス発生剤の反応により上記ガス発生器(25)がシリンダ(21)内に高圧ガスを噴出してピストン(22)を移動させるガス圧式アクチュエータを対象としている。そして、上記アクチュエータ本体(26)は、少なくとも上記シリンダ(21)の端部を外側から覆う被膜(30)が施されている。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記被膜(30)が、アクチュエータ本体(26)の全体を外側から覆うように施されている。
【0010】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記被膜(30)が、防水性を有する樹脂被膜である。
【0011】
第4の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記被膜(30)が、防塵性を有する樹脂被膜である。
【0012】
第5の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記被膜(30)が、電気的絶縁性を有する樹脂被膜である。
【0013】
第6の発明は、上記第1〜第5の発明の何れかにおいて、上記被膜(30)に、アクチュエータ本体(26)の外周面におけるシリンダ(21)とピストン(22)との連続部に薄肉部(31)が形成されている。
【0014】
第7の発明は、上記第1〜第6の発明の何れかにおいて、上記ガス発生器(25)が、シリンダ(21)の端部に設けられている。
【0015】
第8の発明は、上記第1〜第6の発明の何れかにおいて、上記ガス発生器(25)が、シリンダ(21)の内部におけるピストン(22)の端部に設けられている。
【0016】
したがって、上記第1の発明では、上記アクチュエータ本体(26)の少なくとも一部が被膜(30)によって覆われているので、シリンダ(21)とピストン(22)との間のシール部への異物の侵入が被膜(30)によって阻止される。また、上記ガス発生器(25)の電気端子の防水が被膜(30)によって施される。
【0017】
特に、上記第2の発明では、上記被膜(30)がアクチュエータ本体(26)の全体が被膜(30)によって覆われているので、異物の侵入等が確実に阻止される。
【0018】
また、上記第3の発明では、上記被膜(30)が防水性を有するので、電気端子などの防水が確実に確保される。
【0019】
また、上記第4の発明では、上記被膜(30)が防塵性を有するので、シール部への異物の侵入阻止が確実に確保される。
【0020】
また、上記第5の発明では、上記被膜(30)が電気的絶縁性を有するので、電気的絶縁性が確保され、安全性が向上する。つまり、上記ガス発生器(25)は電気信号によって作動する。そのため、静電気や迷走電流によって誤作動を起こす可能性がある。上記第4の発明では、アクチュエータ本体(26)が電気的絶縁性の被膜(30)によって覆われているので、ガス発生器(25)の誤作動が確実に防止される。この電気的絶縁性の被膜(30)は、例えば、フッ素樹脂などが用いられる。
【0021】
また、上記第6の発明では、被膜(30)に薄肉部(31)を形成しているので、アクチュエータ本体(26)の作動時に、被膜(30)が薄肉部(31)で破断し、被膜(30)が作動負荷となることがない。
【0022】
また、上記第7の発明では、ガス発生器(25)がアクチュエータ本体(26)の外部に位置するものの、防水が確実に施されることになる。
【0023】
また、上記第8の発明では、ガス発生器(25)がシリンダ(21)の内部におけるピストン(22)に設けられるものの、より確実に防水等が施されることになる。
【発明の効果】
【0024】
上記本発明によれば、上記アクチュエータ本体(26)を被膜(30)によって覆うようにしたために、各構成部品間のシール及び防水などを1つの被膜(30)によって行うことができる。したがって、上記1つの被膜(30)によって個々の構成部に特殊な構造を施す必要がなくなる。この結果、上記アクチュエータ本体(26)の構造自体の簡素化を図ることができると共に、部品点数の低減を図ることができ、安価にすることができる。
【0025】
また、上記アクチュエータ本体(26)を被膜(30)によって覆うので、クッション性を有するように構成することができる。この結果、取り扱い時の耐衝撃性を確保することができる。特に、ガス発生器(25)が火薬等のガス発生剤を有するので、衝撃性の確保により、安全性の向上を図ることができる。
【0026】
また、上記被膜(30)を滑り難い材質で構成することができる。この結果、取り扱い時の安全性の向上を図ることができる。
【0027】
特に、上記第2の発明によれば、上記アクチュエータ本体(26)の全体を被膜(30)によって覆うようにしたために、防水などを確実に行うことができる。
【0028】
また、上記第3の発明によれば、上記被膜(30)が防水性を有するようにしたために、上記ガス発生器(25)も被膜(30)によって覆われるので、電気端子などの防水を確実に行うことができる。
【0029】
また、上記第4の発明によれば、上記被膜(30)が防塵性を有するようにしたために、シリンダ(21)とピストン(22)との間のシール部への異物の侵入を被膜(30)によって確実に阻止することができる。
【0030】
また、上記第5の発明によれば、上記被膜(30)が電気的絶縁性を有するようにしたために、静電気や迷走電流によってガス発生器(25)が誤作動を起こすことを確実に防止することができる。この結果、上記アクチュエータ本体(26)の電気的絶縁性が確保され、安全性を向上させることができる。
【0031】
また、上記第6の発明によれば、被膜(30)に薄肉部(31)を形成するようにしたために、アクチュエータ本体(26)の作動時に被膜(30)を薄肉部(31)で確実に破断させることができる。この結果、被膜(30)による作動負荷の増大を確実に防止することができる。
【0032】
また、上記第7の発明によれば、では、上記ガス発生器(25)の防水が確実に施されることになるので、ガス発生器(25)をアクチュエータ本体(26)の外側に配置することができ、ガス発生器(25)の配置の自由度を拡大することができる。
【0033】
また、上記第8の発明によれば、ガス発生器(25)がシリンダ(21)の内部におけるピストン(22)に設けられるものの、より確実に防水等が施され、より安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0035】
〈実施形態1〉
図1に示すように、本実施形態のガス圧式アクチュエータは火薬式アクチュエータ(20)で構成されている。該火薬式アクチュエータ(20)は、自動車(1)に搭載された安全装置の要素機器を構成している。上記安全装置は、自動車(1)の前端部に衝突した歩行者の二次衝突の衝撃を緩和するためのものである。
【0036】
上記安全装置は、衝突検知センサ(11)とコントローラ(12)と上記火薬式アクチュエータ(20)とが電気配線で接続されて構成されている。上記衝突検知センサ(11)は、自動車(1)の前端部に設けられている。上記衝突検知センサ(11)は、前端部への歩行者の衝突を感知すると、コントローラ(12)へ衝突感知信号を出力するように構成されている。また、上記コントローラ(12)は、自動車(1)のエンジンルーム(2)に設けられている。上記コントローラ(12)は、衝突検知センサ(11)から衝突感知信号が入力されると、直ちに作動信号を上記火薬式アクチュエータ(20)に出力するように構成されている。
【0037】
上記火薬式アクチュエータ(20)は、自動車(1)のエンジンルーム(2)の上方に開閉自在に設けられたエンジンフード(3)の下方に設けられている。上記火薬式アクチュエータ(20)は、コントローラ(12)から作動信号が入力されると、図3に示すように、上記エンジンフード(3)を強制的に持ち上げるものである。以下、上記火薬式アクチュエータ(20)について、詳細に説明する。
【0038】
上記火薬式アクチュエータ(20)は、図2に示すように、シリンダ(21)と、該シリンダ(21)内に設けられたピストン(22)と、上記シリンダ(21)内に区画形成されたガス室(23)に高圧ガスを噴出するガス発生器(25)とを備えている。
【0039】
上記シリンダ(21)は、円筒状に形成され、該シリンダ(21)の一端(上端部)が開口されると共に、他端(下端部)が閉塞されている。そして、上記シリンダ(21)の上端部の開口部分にはブッシュ(24)が取り付けられている。該ブッシュ(24)の中心部には、ブッシュ(24)をシリンダ(21)の軸方向に貫通するブッシュ孔が設けられている。
【0040】
上記ピストン(22)は、円盤状のピストン部(2a)とロッド部(2b)と円盤状のヘッド部(2c)とを備えている。上記ピストン部(2a)は、シリンダ(21)に挿入され、シリンダ(21)の内部をシリンダ(21)の軸方向に摺動自在に設けられている。そして、上記ピストン部(2a)とシリンダ(21)の閉塞端との間がガス室(23)に構成されている。
【0041】
上記ロッド部(2b)の一端(下端)はピストン部(2a)に連結される一方、他端(上端)はヘッド部(2c)に連結されている。更に、上記ロッド部(2b)は、ブッシュ孔を貫通して設けられ、上端がシリンダ(21)の外部に露出している。
【0042】
上記ヘッド部(2c)は、火薬式アクチュエータ(20)の作動時に、エンジンフード(3)に接触して該エンジンフード(3)を持ち上げるように構成されている。
【0043】
上記ガス発生器(25)は、シリンダ(21)の閉塞端部に取り付けられている。該ガス発生器(25)は、図示しないが、破裂可能に形成された密閉容器と、該密閉容器に収納されたガス発生剤(例えば、火薬)と、該ガス発生剤を着火燃焼させるための着火装置とを備えている。そして、上記着火装置は、コントローラ(12)から延びる電気配線が電気端子を介して接続されている。
【0044】
そして、上記シリンダ(21)とピストン(22)とガス発生器(25)とがアクチュエータ本体(26)を構成している。
【0045】
更に、本願発明の特徴として上記アクチュエータ本体(26)は被膜(30)が施されている。該被膜(30)は、上記アクチュエータ本体(26)を全体に外側から覆うように形成され、上記被膜(30)は、防水性及び防塵性を有する樹脂被膜で構成されている。
【0046】
つまり、上記被膜(30)は、ピストン(22)のロッド部(2b)がシリンダ(21)に完全に収納された非作動状態において、ヘッド部(2c)の外側からシリンダ(21)の外側を経てガス発生器(25)の外側に至るまで施されている。そして、上記被膜(30)は、ヘッド部(2c)とシリンダ(21)の間やガス発生器(25)の電気端子などを覆い、水分や異物の侵入を阻止するように構成されている。
【0047】
また、上記被膜(30)は、電気的絶縁性、防水性及び防塵性を有する樹脂被膜で構成するようにしてもよい。例えば、上記被膜(30)は、フッ素樹脂等の帯電防止コーティング等で構成するようにしてもよい。
【0048】
つまり、上記ガス発生器(25)は電気信号によって作動する。そのため、静電気や迷走電流によって誤作動を起こす可能性がある。そこで、上記アクチュエータ本体(26)を電気的絶縁性の被膜(30)によって覆うことにより、ガス発生器(25)の誤作動が確実に防止される。
【0049】
また、上記被膜(30)は、アクチュエータ本体(26)の外周面におけるシリンダ(21)とピストン(22)との連続部に薄肉部(31)が形成されている。具体的に、上記被膜(30)は、上記シリンダ(21)の開口端面と上記ピストン(22)のヘッド部(2c)の端部との間の段差部における角部に対応する部分が薄肉部(31)が形成されている。該薄肉部(31)は、アクチュエータ本体(26)が作動し、ピストン(22)がシリンダ(21)より突出する際、被膜(30)が破断するように構成されている。
【0050】
−運転動作−
次に、上記火薬式アクチュエータ(20)の動作について説明する。
【0051】
先ず、上記衝突検知センサ(11)が歩行者の衝突を感知すると、上記コントローラ(12)から上記火薬式アクチュエータ(20)へ作動信号が入力される。尚、該作動信号は、上記ガス発生器(25)の着火装置に入力される着火信号である。
【0052】
上記火薬式アクチュエータ(20)において、上記着火装置に着火信号が入力すると、該着火装置が作動して火薬が燃焼を開始し、つまり、ガス発生剤が反応を開始する。該ガス発生剤が反応すると、密閉容器内に高圧ガスが充満し、密閉容器内の圧力が上昇して該密閉容器が破裂し、高圧ガスがガス室(23)に向かって噴出する。
【0053】
この時、この高圧ガスの噴出力における反動で、ピストン(22)に推進力が発生して、図4に示すように、シリンダ(21)の前端部からピストン(22)が突出する。そして、このピストン(22)の突出により、図3に示すように、上記ヘッド部(2c)が接触して、自動車(1)のエンジンフード(3)が持ち上げる。
【0054】
上記火薬式アクチュエータ(20)において、非作動状態ではピストン(22)のロッド部(2b)がシリンダ(21)に完全に収納された状態となっている。この非作動状態ではアクチュエータ本体(26)が全体に外側から被膜(30)によって覆われている。そして、上記着火装置に着火信号が入力すると、ロッド部(2b)がシリンダ(21)より吐出するので、被膜(30)は、図4に示すように、薄肉部(31)で破断することになる。
【0055】
−実施形態1の効果−
上記本発明によれば、上記アクチュエータ本体(26)を被膜(30)によって覆うようにしたために、各構成部品間のシール及び防水などを1つの被膜(30)によって行うことができる。したがって、上記1つの被膜(30)によって個々の構成部に特殊な構造を施す必要がなくなる。この結果、上記アクチュエータ本体(26)の構造自体の簡素化を図ることができると共に、部品点数の低減を図ることができ、安価にすることができる。
【0056】
特に、上記火薬式アクチュエータ(20)は、衝突時に1回限り使用されるものであり、被膜(30)も1回破断するのみでることから、組成及び構造に限定事項が少なく、簡素な被覆構造を採用することができる。
【0057】
また、上記アクチュエータ本体(26)の全体を被膜(30)によって覆うようにしたために、防水などを確実に行うことができる。
【0058】
また、上記被膜(30)が防水性を有するようにしたために、上記ガス発生器(25)も被膜(30)によって覆われるので、電気端子などの防水を確実に行うことができる。
【0059】
また、上記被膜(30)が防塵性を有するようにしたために、シリンダ(21)とピストン(22)との間のシール部への異物の侵入を被膜(30)によって確実に阻止することができる。
【0060】
また、上記被膜(30)が電気的絶縁性を有するようにしたために、静電気や迷走電流によってガス発生器(25)が誤作動を起こすことを確実に防止することができる。この結果、上記アクチュエータ本体(26)の電気的絶縁性が確保され、安全性を向上させることができる。
【0061】
また、被膜(30)に薄肉部(31)を形成するようにしたために、アクチュエータ本体(26)の作動時に被膜(30)を薄肉部(31)で確実に破断させることができる。この結果、被膜(30)による作動負荷の増大を確実に防止することができる。
【0062】
また、上記ガス発生器(25)の防水が確実に施されることになるので、ガス発生器(25)をアクチュエータ本体(26)の外側に配置することができ、ガス発生器(25)の配置の自由度を拡大することができる。
【0063】
また、上記アクチュエータ本体(26)を被膜(30)によって覆うので、クッション性を有するように構成することができる。この結果、取り扱い時の耐衝撃性を確保することができる。特に、ガス発生器(25)が火薬等のガス発生剤を有するので、衝撃性の確保により、安全性の向上を図ることができる。
【0064】
また、上記被膜(30)を滑り難い材質で構成することができる。この結果、取り扱い時の安全性の向上を図ることができる。
【0065】
〈実施形態2〉
本実施形態は、図5及び図6に示すように、上記実施形態1がガス発生器(25)をシリンダ(21)の閉塞端部に取り付けたのに代わり、ガス発生器(25)をピストン(22)に取り付けるようにしたものである。
【0066】
具体的に、上記ガス発生器(25)は、ピストン(22)のピストン部(2a)におけるガス室(23)側の端面に開口する凹部に取り付けられている。つまり、上記ガス発生器(25)は、シリンダ(21)の内部に配置され、ガス室(23)に面するように設けられている。その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0067】
上記火薬式アクチュエータ(20)において、非作動状態では、図5に示すように、ピストン(22)のロッド部(2b)がシリンダ(21)に完全に収納された状態となっている。この非作動状態ではアクチュエータ本体(26)が全体に外側から被膜(30)によって覆われている。そして、上記着火装置に着火信号が入力すると、ロッド部(2b)がシリンダ(21)より吐出するので、被膜(30)は、図6に示すように、薄肉部(31)で破断することになる。
【0068】
したがって、本実施形態によれば、上記ガス発生器(25)がシリンダ(21)の内部におけるピストン(22)に設けられるものの、アクチュエータ本体(26)が全体に外側から被膜(30)によって覆われているので、より確実に防水等が施され、より安全性を向上させることができる。その他の作用及び効果は実施形態1と同様である。
【0069】
〈実施形態3〉
本実施形態は、図7に示すように、上記実施形態1がアクチュエータ本体(26)の全体を被膜(30)によって覆うようにしたのに代えて、アクチュエータ本体(26)の端部のみを被膜(30)によって覆うようにしたものである。
【0070】
具体的に、上記被膜(30)は、シリンダ(21)の開口端部と閉塞端部の外側を覆うように設けられ、シリンダ(21)の中央部の外側は露出している。つまり、上記被膜(30)は、ガス発生器(25)の周りのシリンダ(21)の閉塞端部の外側を覆うと共に、ピストン(22)の突出部の周りのシリンダ(21)の開口端部の外側を覆うように設けられている。その他の構成、作用及び効果は実施形態1と同様である。
【0071】
〈実施形態4〉
本実施形態は、図8に示すように、上記実施形態2がアクチュエータ本体(26)の全体を被膜(30)によって覆うようにしたのに代えて、アクチュエータ本体(26)の端部のみを被膜(30)によって覆うようにしたものである。
【0072】
具体的に、上記被膜(30)は、シリンダ(21)の開口端部の外側を覆うように設けられ、シリンダ(21)の閉塞端部から中央部の外側は露出している。つまり、上記被膜(30)は、ガス発生器(25)がシリンダ(21)の内部に設けられているので、ピストン(22)の突出部の周りのシリンダ(21)の開口端部のみの外側を覆うように設けられている。その他の構成、作用及び効果は実施形態2と同様である。
【0073】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記各実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0074】
上記実施形態の火薬式アクチュエータ(20)は、エンジンフード(3)の開放に用いたが、本発明は、衝突時のエンジンを落下させるものに用いてもよく、また、車両に適用されるものに限定されない。要するに、本発明は、火薬によってピストン(22)を移動させる火薬式アクチュエータであれば適用することができる。
【0075】
また、上記被膜(30)は、第1の発明においては樹脂に限定されるものではない。
【0076】
また、上記被膜(30)は、電気的絶縁性と防水性と防塵性とを有する樹脂被膜で構成したが、次の被膜であってもよいことは当然である。上記被膜(30)は、電気的絶縁性のみを有する被膜、防水性のみを有する被膜及び防塵性のみを有する被膜の何れかであってもよい。更に、上記被膜(30)は、電気的絶縁性と防水性とのみを有する被膜、電気的絶縁性と防塵性とのみを有する被膜又は防水性と防塵性とのみを有する被膜であってもよい。更にまた、上記被膜(30)は、耐油性又は耐薬剤性を有する被膜であってもよく、その上、上記防水性などの機能を全て有する被膜であってもよい。
【0077】
また、上記被膜(30)は、ピストン(22)の突出によって破断するようにしたが、破断することなく延びる可撓性を有するものであってもよい。
【0078】
また、上記被膜(30)は、薄肉部(31)を有するもので構成したが、全体に亘ってほぼ均一な厚さに形成するようにしてもよい。
【0079】
また、上記ピストン(22)は、1つのロッド部(2b)が突出するように構成したが、ロッド部(2b)が多段にテレスコープ状に伸張するものであってもよい。
【0080】
本実施形態では、上記ガス発生器(3)において、ガス発生剤として火薬を用いたが、これに限定されず、反応によりガスを発生するものであればよい。
【0081】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上説明したように、本発明は、ガス発生剤の反応により高圧ガスを発生させてピストンを移動させるガス圧式アクチュエータについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、実施形態1の火薬式アクチュエータを適用した車両の前部側面図である。
【図2】図2は、実施形態1の火薬式アクチュエータの縦断面図である。
【図3】図3は、実施形態1の火薬式アクチュエータが作動した後の車両の前部側面図である。
【図4】図4は、実施形態1の火薬式アクチュエータが作動した後の火薬式アクチュエータの縦断面図である。
【図5】図5は、実施形態2の火薬式アクチュエータの縦断面図である。
【図6】図6は、実施形態2の火薬式アクチュエータが作動した後の火薬式アクチュエータの縦断面図である。
【図7】図7は、実施形態3の火薬式アクチュエータの縦断面図である。
【図8】図8は、実施形態4の火薬式アクチュエータの縦断面図である。
【符号の説明】
【0084】
3 エンジンフード
20 火薬式アクチュエータ
21 シリンダ
22 ピストン
25 ガス発生器
26 アクチュエータ本体
30 被膜
31 薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ(21)とピストン(22)とガス発生剤が装填されたガス発生器(25)とを備えてアクチュエータ本体(26)が構成され、上記ガス発生剤の反応により上記ガス発生器(25)がシリンダ(21)内に高圧ガスを噴出してピストン(22)を移動させるガス圧式アクチュエータであって、
上記アクチュエータ本体(26)は、少なくとも上記シリンダ(21)の端部を外側から覆う被膜(30)が施されている
ことを特徴とするガス圧式アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1において、
上記被膜(30)は、アクチュエータ本体(26)の全体を外側から覆うように施されている
ことを特徴とするガス圧式アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記被膜(30)は、防水性を有する樹脂被膜である
ことを特徴とするガス圧式アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1又は2において、
上記被膜(30)は、防塵性を有する樹脂被膜である
ことを特徴とするガス圧式アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1又は2において、
上記被膜(30)は、電気的絶縁性を有する樹脂被膜である
ことを特徴とするガス圧式アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項において、
上記被膜(30)は、アクチュエータ本体(26)の外周面におけるシリンダ(21)とピストン(22)との連続部に薄肉部(31)が形成されている
ことを特徴とするガス圧式アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項において、
上記ガス発生器(25)は、シリンダ(21)の端部に設けられている
ことを特徴とするガス圧式アクチュエータ。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか1項において、
上記ガス発生器(25)は、シリンダ(21)の内部におけるピストン(22)の端部に設けられている
ことを特徴とするガス圧式アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−79761(P2009−79761A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226693(P2008−226693)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】