説明

ガス成分計測装置及びガス成分分析方法

【課題】ガス組成以外に、煤塵濃度、炭化水素濃度を一度の計測で同時に測定することができるガス成分計測装置及びガス成分分析方法を提供する。
【解決手段】第1のレーザ入射部14Aでレーザ分析している際には、第2のレーザ入射部14B及び第2の出力計20Bは、第2及び第4のゲートバルブ18B、18Dを用いて遮断し、第1のレーザ入射部14Aからのレーザ光30の出力感度(測定チャンバ13内のレーザ光の計測パワー強度:I1)/(レーザ装置12から発振された際のレーザ光の基本パワー強度:I0)を、連続して求め、求めたレーザ光のパワー感度が閾値以下となった際に、遮断していた第2及び第4のゲートバルブ18B、18Dを開放し、第2のレーザ入射部14Bからレーザ光30を照射して、引き続き被計測ガスGをレーザ分析する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ計測において被測定ガス中のガス組成以外に、煤塵濃度、炭化水素濃度を一度の計測で同時に測定することができるガス成分計測装置及びガス成分分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料ガス中のガス成分やダスト(煤塵)成分の濃度をレーザ照射によるラマン散乱光により計測することが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
図8は、従来のラマン散乱光を用いてガス成分を分析するガス測定装置である。図8に示すように、従来のガス測定装置100は、ガス化炉101からガスタービン102に送給される配管103内を通過する測定試料であるガス(測定ガス)104に対してレーザ光105を測定領域106に照射し、測定ガス104からのラマン散乱光(散乱光)107を分光し、測定データとして取り出すようにしたものである。従来のガス測定装置100では、レーザ照射装置110からレーザ発振によりレーザ光105を出力し、レーザ光105は石英窓111、112、電磁弁113を通過して測定ガス104へ照射する。レーザ光105が測定ガス104に照射されることで散乱光107が発生する。この測定ガス104からの散乱光107が、レンズ114、115、偏光素子116、ミラー117、フィルタ118、レンズ119、分光器120を通過して散乱光107を分光し、ICCD(Intensified Charge Coupled Device)カメラ121により測定する。ICCDカメラ121で測定された測定データは測定部122で計測される。
【0004】
このように、レーザラマン法を用い散乱光107から測定データとして取り出すことで、燃料ガスのガス成分を数秒など短時間で分析することが可能となるため、燃料ガスの発熱量制御が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3842982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のレーザ装置では、測定チャンバ内に被計測ガスである燃焼ガスを導入し、そこにレーザ光を照射するようにしており、レーザ光を照射する際の計測側に設置される石英窓112にガス中の汚れ物質による汚染が生じ、検出感度の低下が起き、ガス成分や煤塵濃度を正確に求めることができない、という問題がある。
このため、検出感度の低下があった場合には、従来では、石英窓112の掃除のために、レーザ光分析を停止しているのが現状であり、その間の計測ができない、という問題がある。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑み、レーザ光分析を停止することなく、安定してガス成分や濃度を測定することができるガス成分計測装置及びガス成分分析方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、被計測ガスにレーザ装置からのレーザ光を照射する測定チャンバと、ガス導入方向と直交する方向にレーザ光を入射する一対の第1及び第2のレーザ入射部を有し、前記測定チャンバから着脱自在の第1及び第2のレーザ入射ユニットと、前記被計測ガス中の組成をレーザ分析するレーザ受光部と、前記測定チャンバ内と第1及び第2のレーザ入射ユニットとを遮断する第1及び第2のゲートバルブとを具備し、第1のレーザ入射ユニットでレーザ分析している際には、第1のゲートバルブ及び第3のゲートバルブを開放し、第1のレーザ入射部でラマン散乱光を計測すると共に、第2のレーザ入射ユニットの第2のゲートバルブを遮断し、所定ガス成分のピーク感度(所定ガス成分ピーク強度:I2)/(レーザ光の基本パワー強度:I0)を、連続して求め、所定ガス成分のピーク感度が閾値以下となった際に、遮断していた第2のゲートバルブを開放し、第2のレーザ入射部からレーザ光を照射して、引き続き被計測ガスをレーザ分析する制御を行う制御手段を有することを特徴とするガス成分計測装置にある。
【0009】
第2の発明は、被計測ガスにレーザ装置からのレーザ光を照射する測定チャンバと、ガス導入方向と直交する方向にレーザ光を入射する一対の第1及び第2のレーザ入射部を有し、前記測定チャンバから着脱自在の第1及び第2のレーザ入射ユニットと、前記被計測ガス中の組成をレーザ分析するレーザ受光部と、第1及び第2のレーザ入射部と各々相対向して設けられ、レーザ光の出力感度を計測する第1又は第2の出力計を有し、前記測定チャンバから着脱自在の第1及び第2の出力計ユニットと、前記測定チャンバ内と第1及び第2のレーザ入射ユニットとを遮断する第1及び第2のゲートバルブと、前記測定チャンバ内と第1及び第2の出力計ユニットとを遮断する第3及び第4のゲートバルブとを具備し、第1のレーザ入射ユニットでレーザ分析している際には、第1のゲートバルブ及び第3のゲートバルブを開放し、第1の出力計ユニットでレーザ光の出力を計測すると共に、第2のレーザ入射ユニットの第2のゲートバルブ及び第2の出力計ユニットの第4のゲートバルブを遮断し、第1のレーザ入射部からのレーザ光の出力感度(測定チャンバ内のレーザ光の計測パワー強度:I1)/(レーザ装置から発振された際のレーザ光の基本パワー強度:I0)を、連続して求め、求めたレーザ光のパワー感度が閾値以下となった際に、遮断していた第2のゲートバルブ及び第4のゲートバルブを開放し、第2のレーザ入射部からレーザ光を照射して、引き続き被計測ガスをレーザ分析する制御を行う制御手段を有することを特徴とするガス成分計測装置にある。
【0010】
第3の発明は、第1の発明において、レーザ光のパワー感度で閾値を判断する代わりに、所定ガス成分のピーク感度(所定ガス成分ピーク強度:I2)/(レーザ光の基本パワー強度:I0)を、連続して求め、所定ガス成分のピーク感度が閾値以下となった際に、遮断していた第2のゲートバルブを開放し、第2のレーザ入射部で引き続き被計測ガスのガス組成をレーザ分析する制御を行う制御手段を有することを特徴とするガス成分計測装置にある。
【0011】
第4の発明は、第2の発明において、求めたレーザ光のパワー感度又は所定ガス成分のピーク感度が閾値以下となった際に、第1のレーザ入射ユニットの第1のゲートバルブを遮断し、その後第2のレーザ入射ユニットの第2のゲートバルブを開放し、続き第2のレーザ入射ユニットからレーザ光を照射して被計測ガスのガス組成をレーザ分析する制御を行う制御手段を有することを特徴とするガス成分計測装置にある。
【0012】
第5の発明は、レーザ装置からのレーザ光を測定チャンバ内の被計測ガスに照射し、ガス組成をレーザ分析する方法において、レーザ入射部でレーザ分析している際には、他のレーザ入射部は、ゲートバルブを用いて遮断し、所定ガス成分のピーク感度(所定ガス成分ピーク強度:I2)/(レーザ光の基本パワー強度:I0)を、連続して求め、所定ガス成分ピーク感度が閾値以下となった際に、遮断していたゲートバルブを開放し、他のレーザ入射部からレーザ光を照射して、引き続き被計測ガスをレーザ分析することを特徴とするガス成分分析方法にある。
【0013】
第6の発明は、相対向するレーザ入射部と出力計を2系統用いて、被計測ガスにレーザ装置からのレーザ光を測定チャンバ内に照射し、ガス組成をレーザ分析する方法において、レーザ入射部でレーザ分析している際には、他のレーザ入射部及び出力計は、ゲートバルブを用いて遮断し、レーザ入射部からのレーザ光の出力感度(測定チャンバ内のレーザ光の計測パワー強度:I1)/(レーザ装置から発振された際のレーザ光の基本パワー強度:I0)を、連続して求め、求めたレーザ光のパワー感度が閾値以下となった際に、遮断していたゲートバルブを開放し、他のレーザ入射部からレーザ光を照射して、引き続き被計測ガスをレーザ分析することを特徴とするガス成分分析方法にある。
【0014】
第7の発明は、第6の発明において、レーザ光のパワー感度で閾値を判断する代わりに、所定ガス成分のピーク感度(所定ガス成分ピーク強度:I2)/(レーザ光の基本パワー強度:I0)を、連続して求め、所定ガス成分ピーク感度が閾値以下となった際に、遮断していたゲートバルブを開放し、他のレーザ入射部で引き続き被計測ガスのガス組成をレーザ分析することを特徴とするガス成分分析方法にある。
【0015】
第8の発明は、第7の発明において、求めたレーザ光のパワー感度又は所定ガス成分ピーク感度が閾値以下となった際に、計測しているレーザ入射部のゲートバルブを遮断し、その後他のレーザ入射部のゲートバルブを開放し、引き続き他のレーザ入射部からレーザ光を照射して被計測ガスのガス組成をレーザ分析することを特徴とするガス成分分析方法にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、二つの入射ユニットを設けているので、所定の感度の低下を確認したら、交互に使用することで、ガス成分や濃度の検出、煤塵濃度の検出を停止することなく、連続して精度の高い被計測ガスのガス成分や濃度の検出、煤塵濃度の検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例1に係るガス成分計測装置の概略図である。
【図2】図2は、実施例1に係る他のガス成分計測装置の概略図である。
【図3】図3は、実施例2に係るガス成分計測装置の概略図である。
【図4】図4は、実施例3に係るガス成分計測装置の概略図である。
【図5】図5は、計測時間と、レーザ光の出力感度(測定チャンバ内のレーザ光の計測パワー強度:I1)/(レーザ装置12から発振された際のレーザ光の基本パワー強度:I0)との関係図である。
【図6】図6は、バイオマスガス化ガスのラマン散乱光計測結果のチャートである。
【図7】図7は、計測時間と、所定ガス成分(例えばN2)ピーク感度(所定ガス成分(N2)ピーク強度:I2)/(レーザ光の基本パワー強度:I0)との関係図である。
【図8】図8は、従来のラマン散乱光を用いてガス成分を分析するガス測定装置である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0019】
本発明による実施例に係るガス成分計測装置及び方法について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例1に係るガス成分計測装置の概略図である。
図1に示すように、ガス成分計測装置10Aは、被計測ガス(図示せず)にレーザ装置12からのレーザ光30を照射する測定チャンバ13と、ガス導入方向と直交する方向にレーザ光30を入射する一対の第1及び第2のレーザ入射部14A、14Bを有する第1及び第2のレーザ入射ユニット15A、15Bと、前記被計測ガス中の組成をレーザ分析(ラマン散乱、ミー散乱等)するレーザ受光手段16と、第1及び第2のレーザ入射部14A、14Bと各々対向して設けられ、レーザ光30の出力感度を計測する第1又は第2の出力計20A、20Bを有する第1及び第2の出力計ユニット21A、21Bと、前記第1及び第2のレーザ入射ユニット15A、15Bを測定チャンバ13から脱着可能する第1及び第2のレーザ入射ユニット用脱着手段17A、17Bと、前記測定チャンバ13内と第1及び第2のレーザ入射ユニット15A、15Bとを遮断する第1及び第2のゲートバルブ18A、18Bと、第1及び第2のゲートバルブ18A、18Bのいずれか一方が開いた際に、第1及び第2のレーザ入射部12A、12Bの窓部12a近傍を不活性ガス雰囲気とする不活性ガス導入手段19と、前記第1及び第2の出力計ユニット21A、21Bを測定チャンバ13から脱着可能する第1及び第2の出力計ユニット用脱着手段17C、17Dと、前記測定チャンバ13内と第1及び第2の出力計ユニット21A、21Bとを遮断する第3及び第4のゲートバルブ18C、18Dと、第3及び第4のゲートバルブ18C、18Dのいずれか一方が開いた際に、第1及び第2の出力計ユニット21A、21Bの窓部21a近傍を不活性ガス雰囲気とする不活性ガス導入手段19と、を具備し、第1のレーザ入射ユニット15Aでレーザ分析している際には、第1のゲートバルブ18A及び第3のゲートバルブ18Cを開放して、第1の出力計ユニット21Aでレーザ光の出力を計測すると共に、第2のレーザ入射ユニット15Bの第2のゲートバルブ18B及び第2の出力計ユニット21Bの第4のゲートバルブ18Dを遮断し、第1のレーザ入射部14Aからのレーザ光の出力感度(測定チャンバ13内のレーザ光の計測パワー強度:I1)/(レーザ装置12から発振された際のレーザ光の基本パワー強度:I0)を、連続して求め、求めたレーザ光のパワー感度が閾値以下となった際に、遮断していた第2のゲートバルブ18B及び第4のゲートバルブ18Dを開放し、第2のレーザ入射部14Bからレーザ光を照射して、引き続き被計測ガスGをレーザ分析する制御を行う制御手段を有するものである。
【0020】
本発明では、相対向する第1のレーザ入射部14A(第2のレーザ入射部14B)と第1の出力計20A(第2の出力計20B)を2系統用いて、被計測ガスGにレーザ装置12からのレーザ光30を測定チャンバ13内に照射し、ガス組成をレーザ分析する方法において、第1のレーザ入射部14Aでレーザ分析している際には、第2のレーザ入射部14B及び第2の出力計20Bは、第2及び第4のゲートバルブ18B、18Dを用いて遮断し、第1のレーザ入射部14Aからのレーザ光30の出力感度(測定チャンバ13内のレーザ光の計測パワー強度:I1)/(レーザ装置12から発振された際のレーザ光の基本パワー強度:I0)を、連続して求め、求めたレーザ光のパワー感度が閾値以下となった際に、遮断していた第2及び第4のゲートバルブ18B、18Dを開放し、第2のレーザ入射部14Bからレーザ光30を照射して、引き続き被計測ガスGをレーザ分析するようにしている。
このように、2系統の一対の入射ユニットと出力ユニットと設けているので、所定の感度の低下を確認したら、交互に使用することで、ガス成分や濃度の検出、煤塵濃度の検出を停止することなく、連続して精度の高い被計測ガスのガス成分や濃度の検出、煤塵濃度の検出が可能となる。
【0021】
図1に示すように、測定チャンバ13には、被計測ガスの導入方向(図中、紙面に垂直方向)と直交する方向にレーザ光30を入射する一対の第1及び第2のレーザ入射部14A、14Bを有する第1及び第2のレーザ入射ユニット15A、15Bが、レーザ入射ユニット用脱着手段17A、17Bにより着脱自在に設けられている。
【0022】
この第1及び第2のレーザ入射ユニット用脱着手段17A、17Bは、測定チャンバ13のポート13aの内向きフランジ13bと、第1の入射ユニット15Aの外向きフランジ15aとを着脱自在とする着脱ボルト15bとから構成されており、例えば石英製の窓部12aが汚れた際に、外して清掃を行うことができる。
第1及び第2のゲートバルブ18A、18Bは、測定チャンバ13内と第1及び第2のレーザ入射ユニット15A、15Bとの空間を遮断するものであり、図示しない制御装置の指令により開閉自在としている。
【0023】
また、測定チャンバ13には、第1及び第2のレーザ入射部14A、14Bと各々対向して設けられ、レーザ光の出力感度を計測する第1又は第2の出力計20A、20Bを有する第1及び第2の出力計ユニット21A、21Bが設けられている。
この第1及び第2の出力計ユニット21A、21Bも同様に出力計のユニット用脱着手段17C、17Dにより着脱自在に設けられている。
【0024】
この第1及び第2の出力計ユニット用脱着手段17C、17Dは、第1及び第2のレーザ入射ユニット用脱着手段17Aと同様の構成であり、窓部12aが汚れた際に、外して清掃を行うことができる。
なお、測定チャンバ13から第1及び第2のレーザ入射ユニット15A、15B又は第1及び第2の出力計ユニット21A、21Bを着脱可能となる手段であれば、本実施例に限定されず、いずれのものでもよい。
【0025】
第1及び第2のゲートバルブ18A、18B内には不活性ガス(N2)が不活性ガス導入手段19により供給され、第1及び第2のレーザ入射部14A、14Bの窓部12a近傍の清浄化を維持するようにしている。
同様に、第3及び第4のゲートバルブ18C、18Dにも、不活性ガス(N2)が不活性ガス導入手段19により供給され、第1及びのレーザ入射部14A、14Bの窓部12a、12b近傍の清浄化を維持するようにしている。
【0026】
次に、被測定ガスを計測して、窓部12aの劣化が生じた際の、交換の手順について説明する。
図5は、計測時間と、レーザ光の出力感度(測定チャンバ内のレーザ光の計測パワー強度:I1)/(レーザ装置から発振された際のレーザ光の基本パワー強度:I0)との関係図である。図5に示すように、計測を行うにつれて、徐々にレーザ光の測定チャンバ13内の出力感度の低下が確認される。
ここで、レーザ光の出力感度が例えば0.7を閾値とし、例えば石英製の窓部12aの汚れ又は劣化と判断することとして、レーザ光の切り替えの手順を説明する。
1)先ず、第1のレーザ入射部14Aからのレーザ光30を用いて、測定領域Xを通過させ、レーザ光分析を行う(工程1)。
この第1のレーザ入射ユニット15Aでレーザ分析している際には、第1のゲートバルブ18A及び第3のゲートバルブ18Cを開放し、第1の出力計ユニット21Aでレーザ光の出力を計測すると共に、第2のレーザ入射ユニット15Bの第2のゲートバルブ18B及び第2の出力計ユニット21Bの第4のゲートバルブ18Dを遮断しておく。
2)このレーザ光分析の際に、第1の出力計20Aでレーザ光のパワー感度(測定チャンバ内のレーザ光の出力強度I1)/(レーザ装置から発振された際のレーザ光の基本パワー強度I2)を、連続して求めておく(工程2)。
3)この計測は、例えば図5に示すようなチャートとなる。
4)計測を行い、閾値(0.7)以下となった際に、遮断していた第2のゲートバルブ18B及び第4のゲートバルブ18Dを開放し、第2のレーザ入射部14Bからレーザ光を照射して、引き続き被計測ガスGをレーザ分析する指令を図示しない制御手段から行う(工程3)。
5)次いで、第1のレーザ入射ユニット用脱着手段17A及び第1の出力計ユニット21Aを開放して、窓部12aを清掃し、取り付ける。
この清掃の際には、不活性ガス供給手段19により不活性ガス(N2)を供給して、内部に外部からの空気が浸入しないようにしている。
【0027】
また、レーザ光の計測を一時停止して良い場合には、前述の工程3において、計測を行い、閾値(0.7)以下となった際に、第1のレーザ入射部14Aからレーザ光30の照射を停止する。
次いで、遮断していた第2のゲートバルブ18B及び第4のゲートバルブ18Dを開放し、第2のレーザ入射部14Bからレーザ光を照射して、引き続き被計測ガスGをレーザ分析する指令を図示しない制御手段から行うようにしてもよい。
【0028】
また、レーザ光30の出力感度で閾値を判断する代わりに、所定ガス成分(例えばN2)ピーク感度(所定ガス成分(N2)ピーク強度:I2)/(レーザ光の基本パワー強度:I0)を、連続して求め、所定ガス成分(N2)ピーク感度が閾値以下となった際に、遮断していた第2のゲートバルブ18Bを開放し、第2のレーザ入射部14Bで引き続き被計測ガスのガス組成をレーザ分析する制御を行うようにしてもよい。
【0029】
図6は、バイオマスガス化ガスのラマン散乱光計測結果のチャートである。図6に示すように、水素(H2)が8%、水(H2O)が62%、二酸化炭素(CO2)が12%、一酸化炭素(CO)が6%、メタン(CH4)が1%、窒素(N2)が12%である。なお割合はチャートからの計算による。
本実施例では、この窒素のピークを指標として、所定ガス成分(例えばN2)ピーク感度を求めた。
ここで、窒素ガスをピークとする理由は、燃料ガスのバランスガスとして適用されることが多く、その組成が安定しているためである。なお、窒素ガス以外にもガス種によって適宜選定することができる。
【0030】
図7は、計測時間と、所定ガス成分(例えばN2)ピーク感度(所定ガス成分(N2)ピーク強度:I2)/(レーザ光の基本パワー強度:I0)との関係図である。図7に示すように、計測を行うにつれて、除除にレーザ光の出力感度の低下が確認される。
【0031】
ここで、本実施例では、レーザ受光部16は、発生するラマン散乱光15Aを計測する受光部16aと、受光部16aから光ファイバ16bを介して送られた散乱光を分光する分光部16cとICCD(Intensified Charge Coupled Device)カメラ16dから構成されている。受光された信号はデータ処理手段(CPU)で処理され、ガス組成のスペクトルピーク強度が求められる。
【0032】
ここで、レーザ装置12からのレーザ光30は、測定チャンバ13内でのレーザ光の出力を計測する第1及び第2の出力計20A、20Bと、第1及び第2の出力計20A、20Bが各々相対向して設置されている。
【0033】
測定チャンバ13は被測定ガスを内部に導入、保持又は排出させる機能を有するものであり、この導入は、生成ガスを送給する送給管の一部を又は送給管から分枝させて導入するようにしてもよい。
【0034】
また、測定領域Xの中心部から散乱光されたラマン散乱光31は、例えば偏光子、集光レンズ及びフィルタ等の光学群(図示せず)を介して分光部16cで分光され、該分光部16cに接続されたICCDカメラ16dにより各波長の光の強度を計測する。前記ICCDカメラ16dからの計測データは、データ処理手段(CPU)に送られ、ここで計測データの処理がなされる。
【0035】
なお、受光部における窓の汚れは、レーザ光が直接照射されるものではないので、ユニットを交換した後、所定の出力感度が得られない場合には、受光部の窓部16eの汚れと判断し、計測を停止して、レーザ受光手段の窓部16eの清掃をすることとなる。なお、窒素(N2)を導入して、窒素雰囲気として窓部16eへの汚れの付着を回避するようにしている。なお、受光用の窓部16eにおいても必要に応じて、本発明のようなゲートバルブを設けるようにしてもよい。
【0036】
図2は、実施例1に係る他のガス成分計測装置の概略図である。図2に示すように、実施例1に係る他のガス成分計測装置10Bは、受光手段においても第5及び第6のゲートバルブ18E、18Fを設けた一例を示す。
そして、第1及び第2のレーザ受光ユニット用脱着手段17E、17Fは、第1及び第2のレーザ入射ユニット用脱着手段17A、17Bと同様であり、説明は省略する。そして、例えば石英製の窓部16eが汚れた際に、外して清掃を行うことができるようにしている。
この受光部の窓部16eの劣化の判断は、(所定ガス成分(N2)ピーク濃度:I2)/(測定チャンバ13内のレーザ光の計測パワー強度:I1)により求めたレーザ光のパワー感度が閾値以下となった際に、遮断していた第6のゲートバルブ18Fを開放し、ラマン散乱光31を第の受光ユニット25Bで受光して、引き続き被計測ガスGをレーザ分析するようにしている。
これにより、受光部の交換においても計測を停止することなく、実施することができる。
【0037】
以下に、レーザ装置12を用いたガス組成を計測できるガス成分計測装置の各構成部材について説明する。
【0038】
レーザ装置12からのレーザ光30は、光ファイバ12bを介して、第1及び第2のレーザ入射ユニット15A、15B内の第1及び第2のレーザ入射部14A、14Bに送られ、その後窓部12aを透過して、チャンバ13内に出射される。
【0039】
なお、測定チャンバ13内に設けられる第1及び第2の出力計20A,20Bは、レーザ光30の進行方向上に設けられており、レーザ光30の出力を正確に計測することが出来る計算機器である。この数値をフィードバックし、レーザ装置13の出力状態と窓部の汚れ状態を確認する。
【0040】
次に、レーザ光30が照射できるような形で被測定ガスを保持又は流通させる機能を有する測定チャンバ13について説明する。
測定チャンバ13は、計測される被測定ガスが内部に存在しており、それを外部(レーザ部や分光器を含む)にリークさせないような構造をしている。
【0041】
窓部12aは、被測定ガスを外部へ流出させないための石英ガラス製の窓である。石英ガラス製にしているのは、その窓をレーザ光30が透過できるようにするためである。なお、この窓は二重にしており、石英ガラス1枚が破損しても、ガスがリークしないようにしている。
【0042】
また、測定チャンバ13のレーザ光30の通路には、電磁弁である第1乃至第4のゲートバルブ18A〜18Dが設けられており、通常は、閉じている。これは、長期間に亙って測定チャンバ13側の窓部12aを被測定ガスGに曝しておくと、該被測定ガスG中の不純物により、汚れてしまい、その汚れの為にレーザによる測定が困難となるからである。なお、前記電磁弁は測定時には開口される。
【実施例2】
【0043】
本発明による実施例に係るガス成分計測装置及び方法について、図面を参照して説明する。図3は、実施例2に係るガス成分計測装置の概略図である。なお、実施例1の装置と同一の構成については、同一符号を付してその説明は省略する。
図3に示すように、ガス成分計測装置10Cは、実施例1の装置の測定チャンバ13に設けた第1の出力計20Aを有する第1の出力計ユニット21Aと、第2の出力計20Bを有する第2の出力計ユニット21bとを削除したものである。
なお、符号40A、40Bはレーザ光を吸収するビームダンパである。
【0044】
そして、所定ガス成分(例えばN2)ピーク感度(所定ガス成分(N2)ピーク強度:I2)/(レーザ光の基本パワー強度:I0)を、連続して求め、所定ガス成分(N2)ピーク感度が閾値以下となった際に、遮断していた第2のゲートバルブ18Bを開放し、第2のレーザ入射部14Bで引き続き被計測ガスのガス組成をレーザ分析する制御を行うようにしている。
本実施例によれば、測定チャンバ13内に2つの出力計を有することがなくなり、装置構成を簡略化することができる。
【実施例3】
【0045】
本発明による実施例に係るガス成分計測装置及び方法について、図面を参照して説明する。図4は、実施例3に係るガス成分計測装置の概略図である。なお、実施例1の装置と同一の構成については、同一符号を付してその説明は省略する。
図4に示すように、ガス成分計測装置10Cは、第1のレーザ入射部14Aの周囲に第1のレーザ受光部16Aを配置し、これを一体として第1のレーザ入射ユニット15A内に設けている。同様に、第2のレーザ入射部14Bの周囲に第2のレーザ受光部16Bを配置し、これを一体として第2のレーザ入射ユニット15B内に設けている。
例えば、第1のレーザ入射部14Aの周囲に第1の受光部16Aを同心円状に複数配置するように設け、この複数の受光部により散乱光を受光するようにしている。これにより、受光部の光学調整も不要となる。
受光された散乱光情報は、光ファイバ16bを介して、レーザ受光手段16に送られ、ここでデータ処理される。
【0046】
また、レーザ入射部以外に受光部もゲートバルブで閉鎖するようにしているので、実施例1のような受光部用の窓部16eの汚れも解消される。
【0047】
本発明にかかるガス成分計測装置は、例えば加圧流動床ボイラ、ガス化炉、コークス炉等からの生成ガスの煤塵濃度の計測や、例えばタービンやガスエンジン、各種ボイラに供給される導入ガスのガス中の煤塵濃度を計測する際において、レーザ光の光軸を常に監視することで長期間に亙って安定してガス成分計測を行うことができることとなる。
また、発電プラントのみならず、化学プラントから得られる有用ガス(例えばGTL)のガス組成を計測することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明に係るガス成分計測装置及び方法によれば、係る長期間に亙って安定してガス成分の計測をすることができると共に、被測定ガス中の煤塵濃度を同時に得られる。
【符号の説明】
【0049】
10A〜10D ガス成分計測装置
12 レーザ装置
12a、16 窓部
13 測定チャンバ
14A 第1のレーザ入射部
14B 第2のレーザ入射部
15A 第1のレーザ入射ユニット
15B 第2のレーザ入射ユニット
16 レーザ受光手段
20A、20B 第1又は第2の出力計
21A、21B 第1及び第2の出力計ユニット
17A、17B 第1及び第2のレーザ入射ユニット用脱着手段
18A〜18D 第1〜第4のゲートバルブ
19 不活性ガス導入手段
21A、21B 第1及び第2の出力計ユニット
17C、17D 第1及び第2の出力計ユニット用脱着手段
30 レーザ光
31 ラマン散乱光
X 測定領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測ガスにレーザ装置からのレーザ光を照射する測定チャンバと、
ガス導入方向と直交する方向にレーザ光を入射する一対の第1及び第2のレーザ入射部を有し、前記測定チャンバから着脱自在の第1及び第2のレーザ入射ユニットと、
前記被計測ガス中の組成をレーザ分析するレーザ受光部と、
前記測定チャンバ内と第1及び第2のレーザ入射ユニットとを遮断する第1及び第2のゲートバルブとを具備し、
第1のレーザ入射ユニットでレーザ分析している際には、第1のゲートバルブ及び第3のゲートバルブを開放し、第1のレーザ入射部でラマン散乱光を計測すると共に、
第2のレーザ入射ユニットの第2のゲートバルブを遮断し、
所定ガス成分のピーク感度(所定ガス成分ピーク強度:I2)/(レーザ光の基本パワー強度:I0)を、連続して求め、
所定ガス成分のピーク感度が閾値以下となった際に、
遮断していた第2のゲートバルブを開放し、第2のレーザ入射部からレーザ光を照射して、引き続き被計測ガスをレーザ分析する制御を行う制御手段を有することを特徴とするガス成分計測装置。
【請求項2】
被計測ガスにレーザ装置からのレーザ光を照射する測定チャンバと、
ガス導入方向と直交する方向にレーザ光を入射する一対の第1及び第2のレーザ入射部を有し、前記測定チャンバから着脱自在の第1及び第2のレーザ入射ユニットと、
前記被計測ガス中の組成をレーザ分析するレーザ受光部と、
第1及び第2のレーザ入射部と各々相対向して設けられ、レーザ光の出力感度を計測する第1又は第2の出力計を有し、前記測定チャンバから着脱自在の第1及び第2の出力計ユニットと、
前記測定チャンバ内と第1及び第2のレーザ入射ユニットとを遮断する第1及び第2のゲートバルブと、
前記測定チャンバ内と第1及び第2の出力計ユニットとを遮断する第3及び第4のゲートバルブとを具備し、
第1のレーザ入射ユニットでレーザ分析している際には、第1のゲートバルブ及び第3のゲートバルブを開放し、第1の出力計ユニットでレーザ光の出力を計測すると共に、
第2のレーザ入射ユニットの第2のゲートバルブ及び第2の出力計ユニットの第4のゲートバルブを遮断し、
第1のレーザ入射部からのレーザ光の出力感度(測定チャンバ内のレーザ光の計測パワー強度:I1)/(レーザ装置から発振された際のレーザ光の基本パワー強度:I0)を、連続して求め、
求めたレーザ光のパワー感度が閾値以下となった際に、
遮断していた第2のゲートバルブ及び第4のゲートバルブを開放し、第2のレーザ入射部からレーザ光を照射して、引き続き被計測ガスをレーザ分析する制御を行う制御手段を有することを特徴とするガス成分計測装置。
【請求項3】
請求項1において、
レーザ光のパワー感度で閾値を判断する代わりに、
所定ガス成分のピーク感度(所定ガス成分ピーク強度:I2)/(レーザ光の基本パワー強度:I0)を、連続して求め、
所定ガス成分のピーク感度が閾値以下となった際に、
遮断していた第2のゲートバルブを開放し、第2のレーザ入射部で引き続き被計測ガスのガス組成をレーザ分析する制御を行う制御手段を有することを特徴とするガス成分計測装置。
【請求項4】
請求項2において、
求めたレーザ光のパワー感度又は所定ガス成分のピーク感度が閾値以下となった際に、
第1のレーザ入射ユニットの第1のゲートバルブを遮断し、その後第2のレーザ入射ユニットの第2のゲートバルブを開放し、引き続き第2のレーザ入射ユニットからレーザ光を照射して被計測ガスのガス組成をレーザ分析する制御を行う制御手段を有することを特徴とするガス成分計測装置。
【請求項5】
レーザ装置からのレーザ光を測定チャンバ内の被計測ガスに照射し、ガス組成をレーザ分析する方法において、
レーザ入射部でレーザ分析している際には、他のレーザ入射部は、ゲートバルブを用いて遮断し、
所定ガス成分のピーク感度(所定ガス成分ピーク強度:I2)/(レーザ光の基本パワー強度:I0)を、連続して求め、
所定ガス成分ピーク感度が閾値以下となった際に、
遮断していたゲートバルブを開放し、他のレーザ入射部からレーザ光を照射して、引き続き被計測ガスをレーザ分析することを特徴とするガス成分分析方法。
【請求項6】
相対向するレーザ入射部と出力計を2系統用いて、被計測ガスにレーザ装置からのレーザ光を測定チャンバ内に照射し、ガス組成をレーザ分析する方法において、
レーザ入射部でレーザ分析している際には、他のレーザ入射部及び出力計は、ゲートバルブを用いて遮断し、
レーザ入射部からのレーザ光の出力感度(測定チャンバ内のレーザ光の計測パワー強度:I1)/(レーザ装置から発振された際のレーザ光の基本パワー強度:I0)を、連続して求め、
求めたレーザ光のパワー感度が閾値以下となった際に、
遮断していたゲートバルブを開放し、他のレーザ入射部からレーザ光を照射して、引き続き被計測ガスをレーザ分析することを特徴とするガス成分分析方法。
【請求項7】
請求項6において、
レーザ光のパワー感度で閾値を判断する代わりに、
所定ガス成分のピーク感度(所定ガス成分ピーク強度:I2)/(レーザ光の基本パワー強度:I0)を、連続して求め、
所定ガス成分ピーク感度が閾値以下となった際に、
遮断していたゲートバルブを開放し、他のレーザ入射部で引き続き被計測ガスのガス組成をレーザ分析することを特徴とするガス成分分析方法。
【請求項8】
請求項7において、
求めたレーザ光のパワー感度又は所定ガス成分ピーク感度が閾値以下となった際に、
計測しているレーザ入射部のゲートバルブを遮断し、その後他のレーザ入射部のゲートバルブを開放し、引き続き他のレーザ入射部からレーザ光を照射して被計測ガスのガス組成をレーザ分析することを特徴とするガス成分分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−137758(P2011−137758A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298893(P2009−298893)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】