説明

ガス検出装置を構成する素子の製造方法

【課題】表面形状が均質な塊をヒータに固着させたガス検出装置に用いる素子の製造方法を提案すること。
【解決手段】塊状物を構成する材からなる粉末を液に混合した溶液を、表面が撥水性を有する板状体2に滴下して液粒3を形成する工程と、中央部にコイル部1aを有するヒータ1のコイル部1aを3液粒に浸漬する工程と、ヒータ1のコイル部1aに液粒3を付着させた状態で板状体2から引き上げる工程と、コイル部1aの液粒の液分を揮散させてコイル部1aに粉末の塊を形成させる工程と、塊を焼成する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガスに感応する検知素子と、環境温度を補正するための補償素子と組み合わせてガス検出装置を構成するそれぞれの素子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス検出装置は、検知素子と補償素子とをブリッジ接続などで組み合わせて環境温度の変化を補正しつつ検知素子の抵抗変化を検出してガス濃度を測定するように構成されている。
このような素子の製造方法としては、活性アルミナ粉末に水性無機バインダと純水を混合してペースト状にし、これを白金コイルの周囲に塗布したのち500〜800℃に加熱して担体をコイルに固着するのが一般的であるが、センサ素子の大きさの精密な制御が困難で、製造歩留りの低下を招いていた。その結果、熱容量や表面積(熱放出の大きさ)等に関わり、センサ温度(センサのブリッジ出力のゼロ点)等の特性のばらつきに影響するという問題がある。
【0003】
このような問題を解消するために、特許文献1に見られるように球状凹面を有する容器に予め白金コイルを設置し、次いでペースト状物を注入して球状に形成する工程を含む検知素子の製造方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、ペースト状の塊をヒータに押し付けて形成する関係上、ヒータに形成すべき塊の形状がヒータに対して断面形状で半球状となり、塊の表面に平面部と球面部との異なる形状が存在し、表面温度に大きなばらつきが生じやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-132984
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは表面形状が均質な塊をヒータに形成できるガス検出装置用素子の製造方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を達成するために本発明においては、塊状物を構成する材からなる粉末を液に混合した溶液を、表面が撥水性を有する板状体に滴下して液粒を形成する工程と、中央部にコイル部を有するヒータの前記コイル部を前記液粒に浸漬する工程と、前記ヒータのコイル部に前記液粒を付着させた状態で前記板状体から引き上げる工程と、前記コイル部の液粒の液分を揮散させて前記コイル部に前記粉末の塊を形成させる工程と、前記塊を焼成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表面形状が均質で、体積が一定な塊をヒータに容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図(a)〜(c)は、それぞれ本発明の製造方法の一実施例を説明する図である。
【図2】図(a)、(b)は、それぞれ本発明の製造方法の他の実施例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
基材となる粉末、例えば電気絶縁性を有する活性アルミナ粉末と、可燃性ガスを酸化させるための触媒となる酸化触媒用の粉末、例えば白金黒の粉末とを水に分散させて水溶液を調製する。
一方、白金線を所要の形状、例えば中央部にコイル部1aを有し、その両端に直線部1b、1bを有する形状に形成したヒータ1を用意する。
【0011】
次に表面に疎水処理が施された板状体2を用意し、板状体2の表面に所定量、つまり1つの液粒となる程度の規定量の溶液を滴下して液粒3を形成させる。
【0012】
板状体の液粒3にヒータ1のコイル部1aを押し付けてコイル部1aを液粒中に埋没させ、コイル部1aに溶液を十分に馴染ませる。
【0013】
ついでヒータ1の直線部1b、1bを持ち、板状体から離すように上げると、コイル部1aに液粒3が付着した状態で板状体2から放れる。なお、引き上げた時点でヒータ1に微小な振動をを加えると、液粒3がコイル部1aの側にスムーズに移動して確実にコイル部1aを包み込む。
【0014】
もとより板状体2よりもコイル部1aの親水性が高いため、液は表面張力により球状となってコイル部1aを包みこむように液粒3’となる。
【0015】
この状態で液粒3’の水分を揮散させると、液粒中の活性アルミナと白金黒との混合体がコイル部1aを包み込むように断面円形の塊となる。
【0016】
なお、好ましくは、ヒータ1の両端の直線部1bを水平に維持してコイル部1aの中心線を中心とし、液粒に無理な遠心力が作用しない程度の速度で回転させると、基材や触媒を構成する粉末が均質にコイル部を中心とするように固まる。
【0017】
最後にこの塊をヒータ1とともに焼成に適した温度で焼成すると、コイル部1aに酸化触媒を含有した断面円形状の塊、つまり感応部が完成する。
【0018】
なお、上述の実施例においては板状体の表面に液粒を形成させているが、図2に示したように所定の容積、つまりヒータ1のコイル部1aを包皮できる程度の容積を備えた凹所2aを板状体2に形成し、少なくともこの凹所2aの表面を撥水加工する。
【0019】
この凹所2aに上述した溶液を規定量滴下し、この凹所2aにヒータ1のコイル部1a浸漬させ、十分に馴染んだ状態でコイルを引き上げると、コイル部1aに付着した溶液は、表面張力によりコイル部1aに球状に付着する。
【0020】
また、上述の実施例では粉体に含まれる酸化触媒により可燃性ガスを酸化触媒により酸化させてヒータ1の温度上昇に伴う抵抗変化を検出するガス検知素子を対象として説明したが、可燃性ガスの有無に関係なく周囲の温度をヒータの抵抗として検出するための補償素子の製造にも同様に適用できることはいうまでもない。
すなわち、可燃性ガスに対する酸化触媒作用を有しない粉末を水に分散させて水溶液を調製し、この水溶液を上述の工程によりヒータ1のコイル部1aに焼成すればよい。
【0021】
これにより、可燃性ガスに反応する素子と同一形状の補償用素子を容易に製作することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 ヒータ
1a コイル部
2 板状体
3 液粒


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塊状物を構成する材からなる粉末を液に混合した溶液を、表面が撥水性を有する板状体に滴下して液粒を形成する工程と、中央部にコイル部を有するヒータの前記コイル部を前記液粒に浸漬する工程と、前記ヒータのコイル部に前記液粒を付着させた状態で前記板状体から引き上げる工程と、前記コイル部の液粒の液分を揮散させて前記コイル部に前記粉末の塊を形成させる工程と、前記塊を焼成する工程と、
からなるガス検出装置を構成する素子の製造方法。
【請求項2】
前記粉末が、電気絶縁性を有する材料の粉末と、可燃性ガスの酸化触媒の粉末との混合物により構成されている請求項1に記載のガス検出装置を構成する素子の製造方法。
【請求項3】
前記粉末が、電気絶縁性を有する材料の粉末により構成されている請求項1に記載のガス検出装置を構成する素子の製造方法。
【請求項4】
前記コイル部の液粒の液分を揮散させて前記コイル部に基材となる粉末からなる塊を形成させる工程において、前記コイル部を中心とするように回転させることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のガス検出装置を構成する素子の製造方法。
【請求項5】
前記板状体に表面が撥水加工された所定容積の凹所が形成されている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のガス検出装置を構成する素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−243226(P2010−243226A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89705(P2009−89705)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】