説明

ガス検出装置及びその回路故障判断方法

【課題】回路故障を判断することが可能なガス検出装置及びその回路故障判断方法を提供する。
【解決手段】ガス検出装置1は、接触燃焼式ガスセンサ10と、増幅回路20と、入力電圧変化回路40とを備えている。増幅回路20は、反転入力端子に、センサ抵抗Snsとリファレンス抵抗Refとの分圧Vsenを入力すると共に、非反転入力端子に、固定抵抗R1,R2間の分圧Vrefを入力するオペアンプOPを含み、オペアンプOPの両端子に入力された分圧の差分を増幅して出力する。また、入力電圧変化回路40は、非反転入力端子に入力される電圧値を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検出装置及びその回路故障判断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサ抵抗とリファレンス抵抗と有してブリッジ回路を構成した接触燃焼式ガスセンサと、接触燃焼式ガスセンサからの出力を増幅する増幅回路とを有したガス検出装置が提案されている。このガス検出装置では、被検出対象となるガスの濃度に応じてセンサ抵抗の抵抗値が変化する。このため、ブリッジ回路のバランスが崩れることとなり、これが増幅回路により増幅されて出力とされる。マイコン等は、この出力から被検出対象となるガスの濃度を検出することとなる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−22008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のガス検出装置では、増幅回路の増幅度を設定する回路が何らかの故障で断線や短絡してしまった場合には、被検出対象のガス濃度を検出できなくなってしまう。よって、このような回路故障を判断できることが望ましい。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、回路故障を判断することが可能なガス検出装置及びその回路故障判断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス検出装置は、センサ抵抗とリファレンス抵抗と固定抵抗とを含んでブリッジ回路を構成した接触燃焼式ガスセンサと、反転入力端子と非反転入力端子との一方に、センサ抵抗の抵抗値の変化によって変動するブリッジ回路の一方の分圧を入力すると共に、反転入力端子と非反転入力端子との他方に、センサ抵抗の抵抗値の変化によって変動しないブリッジ回路の他方の分圧を入力するオペアンプを含み、当該オペアンプの両端子に入力された分圧の差分を増幅して出力する増幅回路と、反転入力端子と非反転入力端子との他方に入力される電圧値を変化させる入力電圧変化回路と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このガス検出装置によれば、反転入力端子と非反転入力端子との他方に入力される電圧値を変化させるため、増幅回路からの出力も変化することとなる。この増幅回路の出力変化は回路故障時には正常時と異なる変化を示す。よって、増幅回路の出力変化を参照することで、回路故障を判断することができる。
【0008】
また、本発明のガス検出装置において、増幅回路の回路故障を判断する回路故障判断手段をさらに備え、増幅回路は、一方の分圧をオペアンプに導く接続線上に設けられた入力抵抗と、オペアンプの出力を反転入力端子に帰還させる接続線上に設けられた帰還抵抗とを有し、回路故障判断手段は、入力電圧変化回路によって他方に入力される電圧値が変化させられる前に増幅回路から出力される変化前電圧値と、変化させられた後に増幅回路から出力される変化後電圧値との差が所定値未満である場合に、入力抵抗が設けられる接続線の断線、又は、帰還抵抗が設けられる接続線の短絡と判断することが好ましい。
【0009】
このガス検出装置によれば、変化後電圧値と変化前電圧値と差分が所定値以上である場合に、入力抵抗が設けられる接続線の断線、又は、帰還抵抗が設けられる接続線の短絡と判断する。ここで、回路が正常である場合に、反転入力端子と非反転入力端子との他方に入力される電圧値を変化させると、増幅回路の増幅効果により変化後電圧値と変化前電圧値との差は入力電圧の変化分に対して大きくなる。よって、差分は所定値以上となる。これに対して、入力抵抗が設けられる接続線が断線した場合、入力抵抗を介さない側の端子に入力された電圧値がそのまま出力されることから、入力電圧の変化分しかオペアンプの出力に表れない。このため、反転入力端子と非反転入力端子との他方に入力される電圧値を変化させると、変化後電圧値と変化前電圧値との差は小さくなる。同様に、帰還抵抗が設けられる接続線が短絡した場合、同接続線の抵抗値が略零になることから理論上増幅効果を得られないこととなり、変化後電圧値と変化前電圧値との差は小さくなる。以上より、変化後電圧値と変化前電圧値と差が所定値未満である場合には、入力抵抗が設けられる接続線の断線、又は、帰還抵抗が設けられる接続線の短絡と判断することができる。
【0010】
また、本発明のガス検出装置において、回路故障判断手段は、オペアンプの出力が当該オペアンプの電源電圧付近の値となっている場合、入力抵抗が設けられる接続線の短絡、又は、帰還抵抗が設けられる接続線の断線と判断することが好ましい。
【0011】
このガス検出装置によれば、オペアンプの出力が当該オペアンプの電源電圧付近の値となっている場合、入力抵抗が設けられる接続線の短絡、又は、帰還抵抗が設けられる接続線の断線と判断する。ここで、入力抵抗が設けられる接続線の短絡した場合、ゲインが非常に大きくなってしまうことから、オペアンプの出力がオペアンプの電源電圧付近となってしまう。また、帰還抵抗が設けられる接続線が断線した場合、オペアンプ自体の裸電圧利得が10万倍から1000万倍程度であることから、オペアンプの出力がオペアンプの電源電圧付近となってしまう。従って、オペアンプの出力が電源電圧付近の値となっている場合、入力抵抗が設けられる接続線の短絡、又は、帰還抵抗が設けられる接続線の断線と判断することができる。
【0012】
また、本発明のガス検出装置の回路故障判断方法は、センサ抵抗とリファレンス抵抗と固定抵抗とを含んでブリッジ回路を構成した接触燃焼式ガスセンサと、反転入力端子と非反転入力端子との一方に、センサ抵抗の抵抗値の変化によって変動するブリッジ回路の一方の分圧を入力すると共に、反転入力端子と非反転入力端子との他方に、センサ抵抗の抵抗値の変化によって変動しないブリッジ回路の他方の分圧を入力するオペアンプを含み、当該オペアンプの両端子に入力された分圧の差分を増幅して出力する増幅回路と、を備えるガス検出装置の回路故障判断方法であって、増幅回路からの出力を記憶する第1工程と、非反転入力端子に入力される電圧値を変化させる第2工程と、第1工程において記憶された出力と、第2工程において非反転入力端子に入力される電圧値を変化させられた後の増幅回路の出力との差を算出する第3工程と、第3工程において得られた差に基づいて、増幅回路の故障を判断する第4工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
このガス検出装置の回路故障判断方法によれば、反転入力端子と非反転入力端子との他方に入力される電圧値を変化させるため、増幅回路からの出力も変化することとなる。この増幅回路の出力変化は回路故障時には正常時と異なる変化を示す。よって、増幅回路の出力変化を参照することで、回路故障を判断することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回路故障を判断することが可能なガス検出装置及びその回路故障判断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係るガス装置の構成図である。
【図2】図1に示した接触燃焼式ガスセンサの詳細を示す外観図であり、(a)は上面図を示し、(b)は断面図を示している。
【図3】本実施形態に係るガス検出装置の詳細動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本実施形態に係るガス検出装置を説明する。図1は、本実施形態に係るガス装置の構成図である。図1に示すように、ガス検出装置1は、接触燃焼式ガスセンサ10と、増幅回路20と、マイコン30とを備えている。
【0017】
接触燃焼式ガスセンサ10は、被検出対象となるガスの濃度に応じた出力をするものである。この接触燃焼式ガスセンサ10は、センサ抵抗Snsと、リファレンス抵抗Refと、固定抵抗R1,R2とを備え、これら抵抗Sns,Ref,R1,R2によりブリッジ回路を構成している。
【0018】
具体的にセンサ抵抗Snsは、一端が電源電圧側に接続され、他端が接続点Aにつながっている。リファレンス抵抗Refは、一端が接続点Aにつながっており、他端がグランド接続されている。固定抵抗R1は、一端が電源電圧側に接続され、他端が接続点Bにつながっている。固定抵抗R2は、一端が接続点Bにつながっており、他端がグランド接続されている。なお、ブリッジ回路の各抵抗Sns,Ref,R1,R2の配置は、上記に限らず、他の配置関係であってもよい。
【0019】
図2は、図1に示した接触燃焼式ガスセンサ10の詳細を示す外観図であり、(a)は上面図を示し、(b)は断面図を示している。なお、図2(b)は図2(a)のA−A断面を示している。
【0020】
図2(a)及び図2(b)に示す接触燃焼式ガスセンサ10は、半導体製造プロセス技術を用いて製造された超小型センサである。この接触燃焼式ガスセンサ10は、シリコンウェハ11上に、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、及び酸化ハフニウム膜等からなる絶縁膜12が形成されており、絶縁膜12上にセンサ抵抗Snsとリファレンス抵抗Refとが設けられている。
【0021】
センサ抵抗Snsは、白金からなる抵抗体であって、この抵抗体を包むように触媒層13が設けられている。触媒層13は、例えばパラジウムを担持したアルミナからなるPd/Alによって構成されている。また、リファレンス抵抗Refは、センサ抵抗Snsと同様に白金からなる抵抗体であって、この抵抗体を包むようにアルミナ層14が設けられている。
【0022】
また、シリコンウェハ11上には3つのボンディングパッド15〜17が形成されている。第1ボンディングパッド15は電源側に接続され、第2ボンディングパッド16は接続点Aとされる。また、第3ボンディングパッド17は、グランド接続される。
【0023】
さらに、シリコンウェハ11は、センサ抵抗Sns及びリファレンス抵抗Refに対応する位置に、裏面から異方性エッチングによって凹部18,19が形成されている。接触燃焼式ガスセンサ10は、これらの凹部18,19によって熱容量が小さくなっている。
【0024】
再度、図1を参照する。増幅回路20は、接触燃焼式ガスセンサ10からの信号を増幅して出力して出力するものであって、オペアンプOPと、入力抵抗R3と、帰還抵抗R4とを備えている。
【0025】
詳細に、接触燃焼式ガスセンサ10の接続点Aは、接続線L1を介してオペアンプOPの反転入力端子に接続されている。このため、反転入力端子は、センサ抵抗Snsとリファレンス抵抗Refとの分圧Vsenを入力することとなる。入力抵抗R3は、抵抗値を固定とする固定抵抗であって、接続線L1上に設けられている。また、接触燃焼式ガスセンサ10の接続点Bは、接続線L2を介してオペアンプOPの非反転入力端子に接続されている。このため、非反転入力端子は、固定抵抗R1,R2間の分圧Vrefを入力することとなる。
【0026】
さらに、オペアンプOPの出力は、接続線L3を介してオペアンプOPの反転入力端子に帰還接続されている。帰還抵抗R4は、抵抗値を固定とする固定抵抗であって、接続線L3上に設けられている。
【0027】
このような構成であるため、増幅回路20は、センサ抵抗Snsとリファレンス抵抗Refとの分圧を反転入力端子に入力すると共に、固定抵抗R1,R2間の分圧を入力し、両端子に入力される差分を増幅して出力することとなる。
【0028】
加えて、ガス検出回路1は、固定抵抗R5とコンデンサCとを備えており、増幅回路20の出力は、固定抵抗R5を介してマイコン30に入力される。また、コンデンサCは、一端が固定抵抗R5とマイコン30との間に接続され、他端がグランド接続されている。
【0029】
マイコン30は、増幅回路20からの出力信号に基づいて、被検出対象となるガスの濃度を算出するものである。例えばマイコン30は、増幅回路20の出力からガス濃度を求める演算式等を記憶しており、増幅回路20からの出力信号を入力すると演算式等に基づいてガス濃度を求めることとなる。
【0030】
また、ガス検出装置1は、不図示の音声出力部等を備えており、算出したガス濃度に応じて警報動作を実施する機能についても備えている。
【0031】
このようなガス検出装置1において、例えば接続線L1が断線したり、帰還抵抗R4が設けられる接続線L3が短絡して帰還抵抗R4を含む接続線L3の抵抗値が略零となったりしたとする。この場合、固定抵抗R1,R2の分圧値が例えば1.5Vだとすると、オペアンプOPからの出力は1.5Vに固定されてしまい、ガス濃度を検出できなくなってしまう。
【0032】
そこで、本実施形態に係るガス検出装置1は、入力電圧変化回路40を備えている。入力電圧変化回路40は、マイコン30からの制御信号を入力すると、これに応じてオペアンプOPの非反転入力端子に入力される電圧値を変化させるものである。なお、本実施形態において入力電圧変化回路40は、オペアンプOPの非反転入力端子に入力される電圧値を降下させるものであるが、特にこれに限らず、電圧値を上昇させるものであってもよい。
【0033】
具体的に入力電圧変化回路40は、固定抵抗R6〜R8と、NPNトランジスタTRとにより構成されている。NPNトランジスタTRは、コレクタが接続点BとオペアンプOPの非反転入力端子との間に位置する接続点Cに接続されている。また、ベースはマイコン30に接続され、エミッタはグランド接続されている。
【0034】
固定抵抗R6は、NPNトランジスタTRのベースとマイコン30とを接続する接続線上に設置されており、固定抵抗R7は、トランジスタTRのベースとエミッタとを接続する接続線上に設置されている。また、固定抵抗R8は、NPNトランジスタTRのコレクタと接続点Cとの間に介在されている。
【0035】
このような入力電圧変化回路40では、マイコン30から制御信号が入力されると、NPNトランジスタTRがオンする。これにより、接続点Cの電位が下がり、オペアンプOPの非反転入力端子に入力される電圧の値が降下することとなる。
【0036】
また、マイコン30は、内部に回路故障判断機能(回路故障判断手段)を備えている。この回路故障判断機能は、入力電圧変化回路40によって非反転入力端子に入力される電圧値が変化させられる前に増幅回路20から出力される変化前電圧値と、変化させられた後に増幅回路20から出力される変化後電圧値とを比較することで、増幅回路20の回路故障を判断する。
【0037】
次に、本実施形態に係るガス検出装置1の故障検出原理について説明する。なお、以下の説明において接触燃焼式ガスセンサ10が被検出対象となるガス雰囲気に曝されていないものとする。
【0038】
まず、増幅回路20の故障が発生しておらず、例えばオペアンプOPの非反転入力端子に入力される電圧Vrefが1.5Vであり、反転入力端子に入力される電圧Vsenが1.45Vであったとする。
【0039】
ここで、入力抵抗R3と帰還抵抗R4とから求められるゲインが30であったとすると、増幅回路20の出力電圧Voは、Vo=Vref−30(Vsen−Vref)=3Vとなる。
【0040】
また、マイコン30から制御信号が出力されると接続点Cの電位が降下し、例えばオペアンプOPの非反転入力端子に入力される電圧Vrefが1.46Vとなったとする。この場合、増幅回路20の出力電圧Voは、Vo=Vref−30(Vsen−Vref)=1.76Vとなる。よって、両者電圧値の差(変化量)は、1.24Vである。
【0041】
次に、接続線L1が断線したり、帰還抵抗R4が設けられる接続線L3が短絡して帰還抵抗R4を含む接続線L3の抵抗値が略零となったりしたとする。この場合、例えばオペアンプOPの非反転入力端子に入力される電圧Vrefが1.5Vであったとすると、増幅回路20の出力Voはそのまま1.5Vとなる。
【0042】
また、マイコン30から制御信号が出力されると接続点Cの電位が降下し、例えばオペアンプOPの非反転入力端子に入力される電圧Vrefが1.46Vとなったとする。この場合、増幅回路20の出力電圧Voは電圧Vrefと同じ1.46Vとなる。よって、両者電圧値の差(変化量)は、0.04Vである。
【0043】
このように、接続線L1が断線したり、帰還抵抗R4が設けられる接続線L3が短絡して帰還抵抗R4を含む接続線L3の抵抗値が略零となったりすると、マイコン30の制御信号出力前と後とで電圧の変化が小さくなる傾向にある。このため、マイコン30の回路故障判断機能は、予め所定の閾値を設定しておき、制御信号出力前と後との電圧変化が所定値(例えば0.5V)以上である場合に、増幅回路20が正常であると判断する。一方、回路故障判断機能は、制御信号出力前と後との電圧変化が所定値未満である場合に、増幅回路20が故障したと判断する。
【0044】
次に、本実施形態に係るガス検出装置1の詳細動作をフローチャートを参照して説明する。図3は、本実施形態に係るガス検出装置1の詳細動作を示すフローチャートである。
【0045】
図3に示すように、まずマイコン30は、増幅回路20の出力Voが安定しているか否かを判断する(S1)。ここで、増幅回路20の出力Voが安定していないということは、接触燃焼式ガスセンサ10が被検出対象となるガス雰囲気に曝されている可能性が高い。このような場合、上記原理に示したように、増幅回路20の出力Voについて電圧変化を求めたとしても、その変化量が安定しないため、故障検知に適したタイミングとはいえない。従って、増幅回路20の出力が安定していないと判断した場合(S1:NO)、安定したと判断されるまで、この処理が繰り返される。
【0046】
一方、増幅回路20の出力が安定したと判断した場合(S1:YES)、ステップS2以降の処理において故障検知が実行される。ステップS2においてマイコン30は、増幅回路20の出力VoがオペアンプOPの電源電圧付近であるか否かを判断する(S2)。
【0047】
ここで、入力抵抗R3が設けられる接続線L1が短絡して接続線L1の実質の抵抗値が略零となった場合、ゲインが非常に大きくなってしまうことから、増幅回路20の出力Voがオペアンプの電源電圧付近となってしまう。さらに、オペアンプOPの裸電圧利得は10万倍から1000万倍であることから、帰還抵抗R4が設けられる接続線L3が断線した場合、増幅回路20の出力VoがオペアンプOPの電源電圧付近となってしまう。
【0048】
よって、増幅回路20の出力VoがオペアンプOPの電源電圧付近であると判断した場合(S2:YES)、マイコン30の回路故障判断機能は、接続線L1の短絡又は接続線L3の断線であると判断する(S3)。そして、マイコン30は、不図示の警報部にその旨の信号を出力し、警報部は回路故障を報知する警報を実施することとなる(S4)。その後、図3に示す処理は終了する。
【0049】
ところで、増幅回路20の出力がオペアンプOPの電源電圧付近でないと判断した場合(S2:NO)、マイコン30の回路故障判断機能は、そのときの増幅回路20からの出力を一時記憶する(S5)。そして、回路故障判断機能は、入力電圧変化回路40に対して制御信号を出力する(S6)。
【0050】
次に、回路故障判断機能は、ステップS6における制御信号出力後の増幅回路20からの出力電圧Voと、ステップS5において一時記憶した増幅回路20からの出力電圧Voとの差を算出する(S7)。すなわち、回路故障判断機能は、制御信号の出力前後における電圧変化量を算出することとなる。
【0051】
次いで、回路故障判断機能は、ステップS7において算出した差が所定値未満であるか否かを判断する(S8)。差が所定値未満であると判断した場合(S8:YES)、回路故障判断機能は、上記原理に説明したように接続線L1の断線、又は、接続線L3が短絡したと判断する(S9)。そして、処理はステップS4に移行し、図3に示す処理は終了する。
【0052】
一方、差が所定値未満でないと判断した場合(S8:NO)、回路故障判断機能は、増幅回路20に故障がなく正常であると判断する(S10)。その後、図3に示す処理は終了する。
【0053】
このようにして、本実施形態に係るガス検出装置1及びその回路故障判断方法によれば、非反転入力端子に入力される電圧値を変化させるため、増幅回路20からの出力も変化することとなる。この増幅回路20の出力変化は回路故障時には正常時と異なる変化を示す。よって、増幅回路20の出力変化を参照することで、回路故障を判断することができる。
【0054】
また、変化後電圧値と変化前電圧値と差分が所定値以上である場合に、入力抵抗R3が設けられる接続線L1の断線、又は、帰還抵抗R4が設けられる接続線L3の短絡と判断する。ここで、回路が正常である場合に、非反転入力端子に入力される電圧値を変化させると、増幅回路20の増幅効果により変化後電圧値と変化前電圧値との差は入力電圧の変化分に対して大きくなる。よって、差分は所定値以上となる。これに対して、入力抵抗R3が設けられる接続線L1が断線した場合、非反転入力端子に入力された電圧値がそのまま出力されることから、入力電圧の変化分しかオペアンプOPの出力に表れない。このため、非反転入力端子に入力される電圧値を変化させると、変化後電圧値と変化前電圧値との差は小さくなる。同様に、帰還抵抗R4が設けられる接続線L3が短絡した場合、同接続線L3の抵抗値が略零になることから理論上増幅効果を得られないこととなり、変化後電圧値と変化前電圧値との差は小さくなる。以上より、変化後電圧値と変化前電圧値と差が所定値未満である場合には、入力抵抗R3が設けられる接続線L1の断線、又は、帰還抵抗R4が設けられる接続線L3の短絡と判断することができる。
【0055】
また、オペアンプOPの出力が当該オペアンプOPの電源電圧付近の値となっている場合、入力抵抗R3が設けられる接続線L1の短絡、又は、帰還抵抗R4が設けられる接続線L3の断線と判断する。ここで、入力抵抗R3が設けられる接続線L1の短絡した場合、ゲインが非常に大きくなってしまうことから、オペアンプOPの出力がオペアンプOPの電源電圧付近となってしまう。また、帰還抵抗R4が設けられる接続線L3が断線した場合、オペアンプOP自体の裸電圧利得が10万倍から1000万倍程度であることから、オペアンプOPの出力がオペアンプOPの電源電圧付近となってしまう。従って、オペアンプOPの出力が電源電圧付近の値となっている場合、入力抵抗R3が設けられる接続線L1の短絡、又は、帰還抵抗R4が設けられる接続線L3の断線と判断することができる。
【0056】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0057】
例えば、本実施形態では、図2を参照して接触燃焼式ガスセンサ10を説明したが、これに限らず、接触燃焼式ガスセンサ10の構成は図2に示す構成に限られるものではない。また、接触燃焼式ガスセンサ10のブリッジの組み方は図1に示すものに限らず、例えばセンサ抵抗Snsと固定抵抗R1とが直列接続されると共に、リファレンス抵抗Refと固定抵抗R2とが直列接続される構成であってもよい。
【0058】
また、本実施形態において入力電圧変化回路40は、オペアンプOPの非反転入力端子に入力される電圧値を降下させるものであるが、これに限らず、電圧値を上昇させるものであってもよい。また、増幅回路20の回路構成についても適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 ガス検出装置
10 接触燃焼式ガスセンサ
11 シリコンウェハ
12 絶縁膜
13 触媒層
14 アルミナ層
15〜17 ボンディングパッド
18,19 凹部
20 増幅回路
30 マイコン
40 入力電圧変化回路(入力電圧変化手段)
C コンデンサ
L1〜L3 接続線
OP オペアンプ
R1,R2,R5〜R8 固定抵抗
R3 入力抵抗
R4 帰還抵抗
Sns センサ抵抗
Ref リファレンス抵抗
TR NPNトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ抵抗とリファレンス抵抗と固定抵抗とを含んでブリッジ回路を構成した接触燃焼式ガスセンサと、
反転入力端子と非反転入力端子との一方に、前記センサ抵抗の抵抗値の変化によって変動する前記ブリッジ回路の一方の分圧を入力すると共に、反転入力端子と非反転入力端子との他方に、前記センサ抵抗の抵抗値の変化によって変動しない前記ブリッジ回路の他方の分圧を入力するオペアンプを含み、当該オペアンプの両端子に入力された分圧の差分を増幅して出力する増幅回路と、
前記反転入力端子と前記非反転入力端子との他方に入力される電圧値を変化させる入力電圧変化回路と、
を備えることを特徴とするガス検出装置。
【請求項2】
前記増幅回路の回路故障を判断する回路故障判断手段をさらに備え、
前記増幅回路は、前記一方の分圧を前記オペアンプに導く接続線上に設けられた入力抵抗と、前記オペアンプの出力を前記反転入力端子に帰還させる接続線上に設けられた帰還抵抗とを有し、
前記回路故障判断手段は、前記入力電圧変化回路によって前記他方に入力される電圧値が変化させられる前に前記増幅回路から出力される変化前電圧値と、変化させられた後に前記増幅回路から出力される変化後電圧値との差が所定値未満である場合に、前記入力抵抗が設けられる接続線の断線、又は、前記帰還抵抗が設けられる接続線の短絡と判断する
ことを特徴とする請求項1に記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記回路故障判断手段は、前記オペアンプの出力が当該オペアンプの電源電圧付近の値となっている場合、前記入力抵抗が設けられる接続線の短絡、又は、前記帰還抵抗が設けられる接続線の断線と判断する
ことを特徴とする請求項2に記載のガス検出装置。
【請求項4】
センサ抵抗とリファレンス抵抗と固定抵抗とを含んでブリッジ回路を構成した接触燃焼式ガスセンサと、反転入力端子と非反転入力端子との一方に、前記センサ抵抗の抵抗値の変化によって変動する前記ブリッジ回路の一方の分圧を入力すると共に、反転入力端子と非反転入力端子との他方に、前記センサ抵抗の抵抗値の変化によって変動しない前記ブリッジ回路の他方の分圧を入力するオペアンプを含み、当該オペアンプの両端子に入力された分圧の差分を増幅して出力する増幅回路と、を備えるガス検出装置の回路故障判断方法であって、
前記増幅回路からの出力を記憶する第1工程と、
前記非反転入力端子に入力される電圧値を変化させる第2工程と、
前記第1工程において記憶された出力と、前記第2工程において前記非反転入力端子に入力される電圧値を変化させられた後の増幅回路の出力との差を算出する第3工程と、
前記第3工程において得られた差に基づいて、増幅回路の故障を判断する第4工程と、
を備えることを特徴とするガス検出装置の回路故障判断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−242154(P2012−242154A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110254(P2011−110254)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】