ガス検知素子
【課題】基準ガスを使用しなくても、被検知ガスの濃度を正確に検知することができるガス検知素子を提供する。
【解決手段】被検知ガスに対して活性を有する検知極4と、参照極5と、イオンを伝導する固体電解質3とを備え、検知極4と参照極5との間の起電力に基づき、被検知ガスの濃度を検知するガス検知素子1であって、参照極5は、酸化マンガンと固体電解質3の一部とを接触させながら焼成して形成してある。
【解決手段】被検知ガスに対して活性を有する検知極4と、参照極5と、イオンを伝導する固体電解質3とを備え、検知極4と参照極5との間の起電力に基づき、被検知ガスの濃度を検知するガス検知素子1であって、参照極5は、酸化マンガンと固体電解質3の一部とを接触させながら焼成して形成してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検知ガスに対して活性を有する検知極と、参照極と、イオンを伝導する固体電解質とを備え、検知極と前記参照極との間の起電力に基づき、被検知ガスの濃度を検知するガス検知素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス検知素子の一種として、イオンを伝導する電解質に、被検知ガスに対して活性を有する導電性材料を検知極及び参照極として配置した濃淡電池式ガス検知素子が知られている。濃淡電池式ガス検知素子は、検知極に被検知ガスを含む測定の対象となるガス(以下、「測定ガス」と称する)を接触させ、参照極に被検知ガスを一定の濃度で含む基準となるガス(以下、「基準ガス」と称する)を接触させることにより、検出極と参照極の間に発生する起電力に基づき、測定ガス中の被検知ガスの濃度を検知することができる。なお、実際には、下記(I)式に示すネルンストの式により、測定ガス中の被検知ガスの分圧として算出する。
【0003】
[数1]
E=(RT/nF)ln(P1/P2) (I)
(但し、式中、E:起電力、R:気体定数、T:絶対温度、F:ファラデー定数、n:イオン価数、P1:基準ガス中の被検知ガスの分圧、P2:測定ガス中の被検知ガスの分圧、である。)
【0004】
この種の濃淡電池式ガス検知素子として、電解質に酸化物イオン伝導性を有する安定化ジルコニアを使用して有底チューブ状に形成し、その内側と外側に酸素に対して活性を有する白金を電極として設けた酸素ガス検知素子(例えば、特許文献1参照)が提案されている。このような酸素ガス検知素子は、例えば、内燃機関の燃焼状態を制御するための空燃比センサに使用されており、外側の電極を検知極として排気ガスに接触させ、内側の電極を参照極として大気に接触させて、排気ガス中の酸素濃度を検知している。
【0005】
また、濃淡電池式ガス検知素子は、電解質にアルカリ土類金属の酸化物がドープされたα−アルミナを用い、検出極及び参照極にニッケル、白金、金、パラジウム等を用いることにより、測定ガス中の水素ガス濃度を検知する水素ガス検知素子(例えば、特許文献2参照)として使用できることも知られている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−265515号公報
【特許文献2】国際公開第02/82068号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記従来の濃淡電池式ガス検知素子は、参照極を測定ガスから隔離して、大気等の基準ガスに接触させる必要があるため、ガス検知素子における参照極の配置位置は限られ、ガス検知素子は大型化されていた。
また、基準ガスを参照極に導入する必要があるため、ガス検知素子を取り付ける場合には、基準ガスが導入できる位置に限定されるという問題もあった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基準ガスを使用しなくても、被検知ガスの濃度を正確に検知することができるガス検知素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るガス検知素子の第1特徴構成は、被検知ガスに対して活性を有する検知極と、参照極と、イオンを伝導する固体電解質とを備え、前記検知極と前記参照極との間の起電力に基づき、前記被検知ガスの濃度を検知するガス検知素子であって、前記参照極は、酸化マンガンと前記固体電解質の一部とを接触させながら焼成して形成してある点にある。
【0010】
つまり、この構成によれば、参照極は、酸化マンガンと固体電解質の一部とを接触させながら焼成して形成することにより、種々のガスに対して不活性となる。このため、基準ガスを使用しなくても、被検知ガスの濃度を正確に検知することができる。
したがって、本発明に係るガス検知素子によれば、検知極に対し、参照極を任意の位置に配置することができるため、小型化することができる。また、基準ガスを参照極に導入する必要がないため、基準ガスを導入し難い位置にも取り付けることができる。
【0011】
本発明に係るガス検知素子の第2特徴構成は、前記参照極は、前記固体電解質の一部にマンガンが固溶している点にある。
【0012】
つまり、この構成によれば、参照極は種々のガスに対してより不活性となる。
【0013】
本発明に係るガス検知素子の第3特徴構成は、前記酸化マンガンは、Mn2O3を最も多く含む点にある。
【0014】
つまり、この構成によれば、Mn2O3を最も多く含む酸化マンガンを用いて形成した参照極は、酸素ガスに対する活性が低いため、良好な酸素ガス検知素子として適用することができる。
【0015】
本発明に係るガス検知素子の第4特徴構成は、前記固体電解質が、安定化ジルコニアを主成分として構成してある点にある。
【0016】
つまり、この構成によれば、安定化ジルコニアは、良好な酸化物イオン伝導性を有するため、これを主成分として固体電解質を構成することにより、酸素ガス検知素子として適用することができる。
【0017】
本発明に係るガス検知素子の第5特徴構成は、前記検知極と前記参照極とが、前記被検知ガスに晒されるように設けてある点にある。
【0018】
つまり、この構成によれば、被検知ガスの濃度測定が容易なガス検知素子として好適な実施形態が得られる。
【0019】
本発明に係るガス検知素子の第6特徴構成は、前記検知極と前記参照極とが、前記固体電解質の同一面に設けてある点にある。
【0020】
つまり、この構成によれば、検知極と参照極とを固体電解質の同一面に設けて、参照極を被検知ガス中に開放できる構成とすることにより、ガス検知素子としての形態のバリエーションが広がり、参照極を基準ガスに接触させて検知するガス検知素子に比べて小型化することもできる。
【0021】
本発明に係るガス検知素子の第7特徴構成は、前記固体電解質が、絶縁基板の一方の面に設けてあり、当該絶縁基板の他方の面に加熱手段を設けてある点にある。
【0022】
つまり、この構成によれば、検知極、参照極、固体電解質を備える絶縁基板に、加熱手段を一体化して設けることにより、ガス検知素子を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係るガス検知素子は、被検知ガスに対して活性を有する検知極と、参照極と、イオンを伝導する固体電解質とを備え、前記検知極と前記参照極との間の起電力に基づき、前記被検知ガスの濃度を検知するガス検知素子であって、前記参照極は、酸化マンガンと前記固体電解質の一部とを接触させながら焼成して形成してあるものである。これにより、参照極は種々のガスに対して不活性となるため、基準ガスを使用しなくても、被検知ガスの濃度を正確に検知することができる。したがって、本発明に係るガス検知素子によれば、基準ガスを参照極に導入する必要がなくなるため、基準ガスを導入し難い位置にも取り付け可能であり、また、検知極に対し、参照極を任意の位置に配置することができるため、小型化することも可能となる。
【0024】
また、本発明に係るガス検知素子は、参照極を、酸化マンガンと固体電解質の一部とを接触させながら焼成して形成した際に、マンガンが固体電解質の一部に固溶していることが好ましい。参照極は、固体電解質の一部にマンガンが固溶することにより、マンガンが参照極界面での電気化学反応に影響を与え、種々のガスに対して不活性となる。
【0025】
以下、本発明に係るガス検知素子の一実施形態について、図面を参照して説明する。ここでは、絶縁基板の上に固体電解質を設けた基板型のガス検知素子を例示するが、これに限られるものではない。その他のガス検知素子としては、チューブ型のガス検知素子等、従来公知の形態のガス検知素子が挙げられる。
【0026】
本実施形態に係る基板型のガス検知素子1は、図1に示すように、絶縁基板2の一方の面に固体電解質3、検知極4、参照極5が設けてあり、絶縁基板2の他方の面には、ガス検知素子1を一定の温度に維持するため、薄膜ヒータ6が設けてある。また、検知極4と参照極5とは、被検知ガスに晒されるように、固体電解質3の同一面に設けてあり、このような基板型のガス検知素子1とすることにより、従来の参照極を基準ガスに接触させて検知するガス検知素子に比べて小型化が可能となる。
【0027】
絶縁基板2は、従来の基板型のガス検知素子に用いられるものが好ましく適用でき、その大きさ、形状等は特に限定されない。また、絶縁基板2の材質は、絶縁体であればよく、例えば、アルミナ、シリカ等のセラミックス材料を適用することができる。
【0028】
固体電解質3は、イオンを伝導するものであれば、特に限定することなく適用することができる。例えば、安定化ジルコニアを主成分として構成してあれば、良好な酸化物イオン伝導性を有するため、酸素ガス検知素子等に好ましく適用することができる。安定化ジルコニアとしては、イットリア安定化ジルコニア、カルシア安定化ジルコニア等が例示される。また、例えば、水素ガス検知素子を作製する場合には、固体電解質3に水素イオン伝導性を有するものを使用すればよい。
【0029】
検知極4は、被検知ガスに対して活性を有する導電性材料であれば、特に制限はなく、金属や金属酸化物等、任意に選択することができる。中でも、Pt、Au、Rhのうちのいずれかを主成分とするものは、酸素に対して活性を有するため、特に酸素ガス検知素子に好ましく適用することができる。
【0030】
参照極5は、上述の通り、酸化マンガンと前記固体電解質の一部とを接触させながら焼成して形成してあるものであれば、種々のガスに対して不活性であるため、特に限定することなく適用することができる。酸化マンガンとしては、Mn2O3,MnO,MnO2,Mn3O4等が例示され、いずれの組成の酸化マンガンも好ましく適用することができ、また、複数の組成の酸化マンガンを含んでいてもよい。本実施形態に係るガス検知素子1を酸素ガス検知素子として使用する場合には、後述する実施例で示すように、特に、Mn2O3を用いて形成した参照極は、酸素に対する活性が低いため、Mn2O3を最も多く含む酸化マンガンを使用することが好ましい。
【0031】
このような検知極4と参照極5とは、例えば、これらの材料をペースト状にして固体電解質3に塗布した後、1000〜1600℃で1〜10時間焼成することによって設けることができる。この際、マンガンが固体電解質3の一部に固溶する場合には、マンガンが参照極5の界面での電気化学反応に影響を与え、参照極の種々のガスに対する活性をより低くすることができる。
【0032】
薄膜ヒータ6は、本発明における加熱手段の一例であり、例えば、白金、金、白金パラジウム合金等を蒸着等によって設けることができる。このように、絶縁基板2に、加熱手段を一体化して設けることにより、ガス検知素子1を小型化することができる。なお、加熱手段は、薄膜ヒータ6の他、従来公知の加熱手段を適用することができる。
【0033】
尚、その他のガス検知素子の構成、機能については、従来公知のガス検知素子と同様である。そして、本発明に係るガス検知素子は、既知のガス検知回路等に組み込むことにより、ガスセンサ等として、適用することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明に係るガス検知素子を用いた実施例について説明する。
(実施例1)
酸化マンガンを用いて形成した電極の各種ガスに対する特性を調べるため、図2に示すような有底チューブ型のガス検知素子を作製した。
固体電解質として、市販のイットリア安定化ジルコニア(以下「YSZ」と称する)の管(8mol%Y2O3,NKT社製,内径5mm,外径8mm,長さ300mm)を使用し、その外面に、Mn2O3,MnO,MnO2,Mn3O4のそれぞれと、α−テルピネオールとを重量比1:2となるように混合してペースト状にしたものを、図2に示すように帯状に塗布した。さらに、市販の白金ペーストを、YSZの管の外面と内面に塗布した。この後、このYSZの管を乾燥機にて130℃で1時間乾燥させ、次いで、1400℃で2時間焼成して、ガス検知素子を作製した。
このように作製したガス検知素子を用いて、外面のMn3O4,Mn2O3,MnO,MnO2をそれぞれ焼成したものを検知極とし、内面の白金を参照極として、それぞれの酸化マンガンを用いた場合について、各種ガスに対する応答特性を調べた。
【0035】
(酸素ガスに対する応答特性)
ガス検知素子の検知極に、水蒸気非共存で、窒素ガスをベースとし、酸素ガスの濃度を体積比で20%,10%,5%,2%,1%,0.5%,0.2%,0.1%と変えたそれぞれの測定ガスを流量100cm3/分で接触させ、参照極に大気を接触させて、測定温度600℃で、それぞれの酸素ガス濃度における起電力(EMF)をデジタルエレクトロメータ(ADVANTEST R8240)で測定した。
その結果、図3に示す通り、いずれの酸化マンガンを用いた場合も、全ての濃度の酸素ガスに対してほとんど応答を示さないことが分かり、中でもMn2O3及びMnO2を焼成したものが優れていることが分かった。なお、本実施例においては、Mn2O3及びMnO2は、1400℃で焼成するといずれの場合も主にMn3O4となることを確認している。
図3では、酸素濃度が20%の時のEMFを0として、それぞれの酸素ガスの濃度におけるEMFを比較した。一般に、酸素ガス0.1%の時のΔEMFが1.5mV以下であれば、誤差の範囲ということができる。
【0036】
(各種ガスに対する応答特性)
ガス検知素子の検知極に、水蒸気非共存で、空気をベースとし、ガスの種類をC3H8,CO,CH4,H2,NO,NO2と変えたそれぞれの測定ガスを、流量100cm3/分で接触させ、参照極に大気を接触させて、測定温度600℃で、それぞれの種類のガスに対するEMFを測定した。なお、測定ガス中のガス濃度は、400ppmとした。
その結果、図4〜7に示す通り、いずれの酸化マンガンを用いた場合も、各種ガスに対してほとんど応答を示さないことが分かった。
【0037】
このように、酸化マンガンを用いて形成したものは、種々のガスに対して不活性であり、参照極として使用できることが分かった。
【0038】
(実施例2)
実施例1で使用したチューブ型のガスセンサ素子を用いて、外面の白金を検知極とし、外面のMn3O4,Mn2O3,MnO,MnO2を焼成したもの及び内面の白金のそれぞれを参照極として、酸素ガス検知素子を作製し、それぞれの酸化マンガン及び白金の酸素に対する応答特性を調べた。
すなわち、水蒸気非共存で、窒素ガスをベースとし、プロパンガスと酸素ガスとを混合した混合ガスを、空燃比を変化させながら酸化触媒により燃焼させた。そして、この燃焼ガスを測定ガスとして、流量100cm3/分で、ガス検知素子の外面に接触させ、内面には大気を接触させて、測定温度600℃で、それぞれの空燃比におけるEMFを測定した。この場合、参照極としてのMn3O4,Mn2O3,MnO,MnO2を焼成したものは、検知極としての白金と同様に、測定ガスに晒されていた。空燃比は、プロパンガスの濃度を4720ppmとし、酸素ガス濃度を変えて、(5×酸素ガス濃度)/(プロパンガス濃度)とした。なお、酸化触媒には、MnO2を700℃で1時間焼成したものを使用した。
その結果、図8〜11に示すように、燃料過剰状態から空気過剰状態への変化により、起電力が急激に上昇することが確認できた。これは、図12に示す参照極にYSZの管の内部の白金を用いたものと、同様の挙動を示しており、空燃比センサに適用できることが分かった。
【0039】
(実施例3)
実施例1において良好な結果を示したMn2O3を用いて形成したものを参照極5として、図1に示すような酸素ガス検知素子としての基板型構成のガス検知素子1を作製し、それぞれの応答特性を調べた。なお、検知極4には白金を用い、固体電解質3にはYSZを用いた。
【0040】
(酸素ガスに対する応答特性)
ガス検知素子1の検知極4及び参照極5に、実施例1と同様の方法により、水蒸気非共存で、窒素ガスをベースとし、酸素ガスの体積濃度を20%,10%,5%,2%,1%,0.5%,0.2%,0.1%,0.2%,0.5%,1%,2%,5%,10%,20%と変えたそれぞれの測定ガスを流量100cm3/分で接触させて、それぞれの酸素ガス濃度におけるEMFを測定した。
その結果、図13に示す通り、それぞれの酸素濃度に対して、良好な応答を示すことが分かった。また、1回目の濃度20%の酸素ガスに対する起電力と2回目の濃度20%の酸素ガスに対する起電力との差が、0.79mVと小さく、再現性に優れていることが分かった。このことから測定環境中の酸素濃度を連続的に測定可能であることが確認できた。
【0041】
(各種ガスに対する応答特性)
ガス検知素子1の検知極4及び参照極5に、実施例1と同様の方法により、各種ガスを接触させて、それぞれの種類のガスに対するEMFを測定した。
その結果、図14に示す通り、各種ガスに対してほとんど応答を示さないことが分かり、酸素ガスに対して応答する酸素ガス検知素子として使用できることが確認できた。
【0042】
(空燃比に対する応答特性)
ガス検知素子1の検知極4及び参照極5に、実施例2と同様の方法により、燃焼ガスを接触させ、それぞれの空燃比におけるEMFを測定した。
その結果、図15に示すように、燃料過剰状態から空気過剰状態への変化により、起電力が急激に上昇することが確認でき、基板型のガス検知素子を空燃比センサに適用できることが分かった。
【0043】
(実施例4)
固体電解質3の参照極5との界面の状態を調べるために、Mn2O3とYSZとの混合粉末を1400℃で2時間焼成し、焼成前後における粉末をX線回折法(XRD)によって測定した。その結果、図16に示すように、焼成前に存在していたMn2O3のピークが焼成後には消失すると共に、Mn3O4のピークが確認された。また、50°付近のYSZのピークは焼成後に高角度側へシフトしていた。このことにより、YSZの中へマンガンが固溶していることが分かった。したがって、参照極5を形成する参照極材料としてMn2O3を用い、固体電解質3としてYSZを用いて焼成し、ガス検知素子1を作製した場合にも、固体電解質3の参照極5との界面には、マンガンがYSZに固溶している可能性が高く、このことが、本発明における参照極の効果に寄与しているものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係るガス検知素子は、空燃比センサ等の酸素ガスセンサ、水素ガスセンサ、窒素酸化物センサ等、各種ガスセンサに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態に係る基板型のガス検知素子の概略図
【図2】本実施例で使用したチューブ型のガス検知素子を説明する図
【図3】ガス検知素子の酸素ガスに対する応答特性を示すグラフ
【図4】ガス検知素子の各種ガスに対する応答特性を示すグラフ
【図5】ガス検知素子の各種ガスに対する応答特性を示すグラフ
【図6】ガス検知素子の各種ガスに対する応答特性を示すグラフ
【図7】ガス検知素子の各種ガスに対する応答特性を示すグラフ
【図8】ガス検知素子の空燃比に対する応答特性を示すグラフ
【図9】ガス検知素子の空燃比に対する応答特性を示すグラフ
【図10】ガス検知素子の空燃比に対する応答特性を示すグラフ
【図11】ガス検知素子の空燃比に対する応答特性を示すグラフ
【図12】ガス検知素子の空燃比に対する応答特性を示すグラフ
【図13】ガス検知素子の酸素ガスに対する応答特性を示すグラフ
【図14】ガス検知素子の各種ガスに対する応答特性を示すグラフ
【図15】ガス検知素子の空燃比に対する応答特性を示すグラフ
【図16】Mn2O3とYSZとの混合粉末の焼成前後のX線回折スペクトル
【符号の説明】
【0046】
1 ガス検知素子
2 絶縁基板
3 固体電解質
4 検知極
5 参照極
6 薄膜ヒータ(加熱手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検知ガスに対して活性を有する検知極と、参照極と、イオンを伝導する固体電解質とを備え、検知極と前記参照極との間の起電力に基づき、被検知ガスの濃度を検知するガス検知素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス検知素子の一種として、イオンを伝導する電解質に、被検知ガスに対して活性を有する導電性材料を検知極及び参照極として配置した濃淡電池式ガス検知素子が知られている。濃淡電池式ガス検知素子は、検知極に被検知ガスを含む測定の対象となるガス(以下、「測定ガス」と称する)を接触させ、参照極に被検知ガスを一定の濃度で含む基準となるガス(以下、「基準ガス」と称する)を接触させることにより、検出極と参照極の間に発生する起電力に基づき、測定ガス中の被検知ガスの濃度を検知することができる。なお、実際には、下記(I)式に示すネルンストの式により、測定ガス中の被検知ガスの分圧として算出する。
【0003】
[数1]
E=(RT/nF)ln(P1/P2) (I)
(但し、式中、E:起電力、R:気体定数、T:絶対温度、F:ファラデー定数、n:イオン価数、P1:基準ガス中の被検知ガスの分圧、P2:測定ガス中の被検知ガスの分圧、である。)
【0004】
この種の濃淡電池式ガス検知素子として、電解質に酸化物イオン伝導性を有する安定化ジルコニアを使用して有底チューブ状に形成し、その内側と外側に酸素に対して活性を有する白金を電極として設けた酸素ガス検知素子(例えば、特許文献1参照)が提案されている。このような酸素ガス検知素子は、例えば、内燃機関の燃焼状態を制御するための空燃比センサに使用されており、外側の電極を検知極として排気ガスに接触させ、内側の電極を参照極として大気に接触させて、排気ガス中の酸素濃度を検知している。
【0005】
また、濃淡電池式ガス検知素子は、電解質にアルカリ土類金属の酸化物がドープされたα−アルミナを用い、検出極及び参照極にニッケル、白金、金、パラジウム等を用いることにより、測定ガス中の水素ガス濃度を検知する水素ガス検知素子(例えば、特許文献2参照)として使用できることも知られている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−265515号公報
【特許文献2】国際公開第02/82068号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記従来の濃淡電池式ガス検知素子は、参照極を測定ガスから隔離して、大気等の基準ガスに接触させる必要があるため、ガス検知素子における参照極の配置位置は限られ、ガス検知素子は大型化されていた。
また、基準ガスを参照極に導入する必要があるため、ガス検知素子を取り付ける場合には、基準ガスが導入できる位置に限定されるという問題もあった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基準ガスを使用しなくても、被検知ガスの濃度を正確に検知することができるガス検知素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るガス検知素子の第1特徴構成は、被検知ガスに対して活性を有する検知極と、参照極と、イオンを伝導する固体電解質とを備え、前記検知極と前記参照極との間の起電力に基づき、前記被検知ガスの濃度を検知するガス検知素子であって、前記参照極は、酸化マンガンと前記固体電解質の一部とを接触させながら焼成して形成してある点にある。
【0010】
つまり、この構成によれば、参照極は、酸化マンガンと固体電解質の一部とを接触させながら焼成して形成することにより、種々のガスに対して不活性となる。このため、基準ガスを使用しなくても、被検知ガスの濃度を正確に検知することができる。
したがって、本発明に係るガス検知素子によれば、検知極に対し、参照極を任意の位置に配置することができるため、小型化することができる。また、基準ガスを参照極に導入する必要がないため、基準ガスを導入し難い位置にも取り付けることができる。
【0011】
本発明に係るガス検知素子の第2特徴構成は、前記参照極は、前記固体電解質の一部にマンガンが固溶している点にある。
【0012】
つまり、この構成によれば、参照極は種々のガスに対してより不活性となる。
【0013】
本発明に係るガス検知素子の第3特徴構成は、前記酸化マンガンは、Mn2O3を最も多く含む点にある。
【0014】
つまり、この構成によれば、Mn2O3を最も多く含む酸化マンガンを用いて形成した参照極は、酸素ガスに対する活性が低いため、良好な酸素ガス検知素子として適用することができる。
【0015】
本発明に係るガス検知素子の第4特徴構成は、前記固体電解質が、安定化ジルコニアを主成分として構成してある点にある。
【0016】
つまり、この構成によれば、安定化ジルコニアは、良好な酸化物イオン伝導性を有するため、これを主成分として固体電解質を構成することにより、酸素ガス検知素子として適用することができる。
【0017】
本発明に係るガス検知素子の第5特徴構成は、前記検知極と前記参照極とが、前記被検知ガスに晒されるように設けてある点にある。
【0018】
つまり、この構成によれば、被検知ガスの濃度測定が容易なガス検知素子として好適な実施形態が得られる。
【0019】
本発明に係るガス検知素子の第6特徴構成は、前記検知極と前記参照極とが、前記固体電解質の同一面に設けてある点にある。
【0020】
つまり、この構成によれば、検知極と参照極とを固体電解質の同一面に設けて、参照極を被検知ガス中に開放できる構成とすることにより、ガス検知素子としての形態のバリエーションが広がり、参照極を基準ガスに接触させて検知するガス検知素子に比べて小型化することもできる。
【0021】
本発明に係るガス検知素子の第7特徴構成は、前記固体電解質が、絶縁基板の一方の面に設けてあり、当該絶縁基板の他方の面に加熱手段を設けてある点にある。
【0022】
つまり、この構成によれば、検知極、参照極、固体電解質を備える絶縁基板に、加熱手段を一体化して設けることにより、ガス検知素子を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係るガス検知素子は、被検知ガスに対して活性を有する検知極と、参照極と、イオンを伝導する固体電解質とを備え、前記検知極と前記参照極との間の起電力に基づき、前記被検知ガスの濃度を検知するガス検知素子であって、前記参照極は、酸化マンガンと前記固体電解質の一部とを接触させながら焼成して形成してあるものである。これにより、参照極は種々のガスに対して不活性となるため、基準ガスを使用しなくても、被検知ガスの濃度を正確に検知することができる。したがって、本発明に係るガス検知素子によれば、基準ガスを参照極に導入する必要がなくなるため、基準ガスを導入し難い位置にも取り付け可能であり、また、検知極に対し、参照極を任意の位置に配置することができるため、小型化することも可能となる。
【0024】
また、本発明に係るガス検知素子は、参照極を、酸化マンガンと固体電解質の一部とを接触させながら焼成して形成した際に、マンガンが固体電解質の一部に固溶していることが好ましい。参照極は、固体電解質の一部にマンガンが固溶することにより、マンガンが参照極界面での電気化学反応に影響を与え、種々のガスに対して不活性となる。
【0025】
以下、本発明に係るガス検知素子の一実施形態について、図面を参照して説明する。ここでは、絶縁基板の上に固体電解質を設けた基板型のガス検知素子を例示するが、これに限られるものではない。その他のガス検知素子としては、チューブ型のガス検知素子等、従来公知の形態のガス検知素子が挙げられる。
【0026】
本実施形態に係る基板型のガス検知素子1は、図1に示すように、絶縁基板2の一方の面に固体電解質3、検知極4、参照極5が設けてあり、絶縁基板2の他方の面には、ガス検知素子1を一定の温度に維持するため、薄膜ヒータ6が設けてある。また、検知極4と参照極5とは、被検知ガスに晒されるように、固体電解質3の同一面に設けてあり、このような基板型のガス検知素子1とすることにより、従来の参照極を基準ガスに接触させて検知するガス検知素子に比べて小型化が可能となる。
【0027】
絶縁基板2は、従来の基板型のガス検知素子に用いられるものが好ましく適用でき、その大きさ、形状等は特に限定されない。また、絶縁基板2の材質は、絶縁体であればよく、例えば、アルミナ、シリカ等のセラミックス材料を適用することができる。
【0028】
固体電解質3は、イオンを伝導するものであれば、特に限定することなく適用することができる。例えば、安定化ジルコニアを主成分として構成してあれば、良好な酸化物イオン伝導性を有するため、酸素ガス検知素子等に好ましく適用することができる。安定化ジルコニアとしては、イットリア安定化ジルコニア、カルシア安定化ジルコニア等が例示される。また、例えば、水素ガス検知素子を作製する場合には、固体電解質3に水素イオン伝導性を有するものを使用すればよい。
【0029】
検知極4は、被検知ガスに対して活性を有する導電性材料であれば、特に制限はなく、金属や金属酸化物等、任意に選択することができる。中でも、Pt、Au、Rhのうちのいずれかを主成分とするものは、酸素に対して活性を有するため、特に酸素ガス検知素子に好ましく適用することができる。
【0030】
参照極5は、上述の通り、酸化マンガンと前記固体電解質の一部とを接触させながら焼成して形成してあるものであれば、種々のガスに対して不活性であるため、特に限定することなく適用することができる。酸化マンガンとしては、Mn2O3,MnO,MnO2,Mn3O4等が例示され、いずれの組成の酸化マンガンも好ましく適用することができ、また、複数の組成の酸化マンガンを含んでいてもよい。本実施形態に係るガス検知素子1を酸素ガス検知素子として使用する場合には、後述する実施例で示すように、特に、Mn2O3を用いて形成した参照極は、酸素に対する活性が低いため、Mn2O3を最も多く含む酸化マンガンを使用することが好ましい。
【0031】
このような検知極4と参照極5とは、例えば、これらの材料をペースト状にして固体電解質3に塗布した後、1000〜1600℃で1〜10時間焼成することによって設けることができる。この際、マンガンが固体電解質3の一部に固溶する場合には、マンガンが参照極5の界面での電気化学反応に影響を与え、参照極の種々のガスに対する活性をより低くすることができる。
【0032】
薄膜ヒータ6は、本発明における加熱手段の一例であり、例えば、白金、金、白金パラジウム合金等を蒸着等によって設けることができる。このように、絶縁基板2に、加熱手段を一体化して設けることにより、ガス検知素子1を小型化することができる。なお、加熱手段は、薄膜ヒータ6の他、従来公知の加熱手段を適用することができる。
【0033】
尚、その他のガス検知素子の構成、機能については、従来公知のガス検知素子と同様である。そして、本発明に係るガス検知素子は、既知のガス検知回路等に組み込むことにより、ガスセンサ等として、適用することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明に係るガス検知素子を用いた実施例について説明する。
(実施例1)
酸化マンガンを用いて形成した電極の各種ガスに対する特性を調べるため、図2に示すような有底チューブ型のガス検知素子を作製した。
固体電解質として、市販のイットリア安定化ジルコニア(以下「YSZ」と称する)の管(8mol%Y2O3,NKT社製,内径5mm,外径8mm,長さ300mm)を使用し、その外面に、Mn2O3,MnO,MnO2,Mn3O4のそれぞれと、α−テルピネオールとを重量比1:2となるように混合してペースト状にしたものを、図2に示すように帯状に塗布した。さらに、市販の白金ペーストを、YSZの管の外面と内面に塗布した。この後、このYSZの管を乾燥機にて130℃で1時間乾燥させ、次いで、1400℃で2時間焼成して、ガス検知素子を作製した。
このように作製したガス検知素子を用いて、外面のMn3O4,Mn2O3,MnO,MnO2をそれぞれ焼成したものを検知極とし、内面の白金を参照極として、それぞれの酸化マンガンを用いた場合について、各種ガスに対する応答特性を調べた。
【0035】
(酸素ガスに対する応答特性)
ガス検知素子の検知極に、水蒸気非共存で、窒素ガスをベースとし、酸素ガスの濃度を体積比で20%,10%,5%,2%,1%,0.5%,0.2%,0.1%と変えたそれぞれの測定ガスを流量100cm3/分で接触させ、参照極に大気を接触させて、測定温度600℃で、それぞれの酸素ガス濃度における起電力(EMF)をデジタルエレクトロメータ(ADVANTEST R8240)で測定した。
その結果、図3に示す通り、いずれの酸化マンガンを用いた場合も、全ての濃度の酸素ガスに対してほとんど応答を示さないことが分かり、中でもMn2O3及びMnO2を焼成したものが優れていることが分かった。なお、本実施例においては、Mn2O3及びMnO2は、1400℃で焼成するといずれの場合も主にMn3O4となることを確認している。
図3では、酸素濃度が20%の時のEMFを0として、それぞれの酸素ガスの濃度におけるEMFを比較した。一般に、酸素ガス0.1%の時のΔEMFが1.5mV以下であれば、誤差の範囲ということができる。
【0036】
(各種ガスに対する応答特性)
ガス検知素子の検知極に、水蒸気非共存で、空気をベースとし、ガスの種類をC3H8,CO,CH4,H2,NO,NO2と変えたそれぞれの測定ガスを、流量100cm3/分で接触させ、参照極に大気を接触させて、測定温度600℃で、それぞれの種類のガスに対するEMFを測定した。なお、測定ガス中のガス濃度は、400ppmとした。
その結果、図4〜7に示す通り、いずれの酸化マンガンを用いた場合も、各種ガスに対してほとんど応答を示さないことが分かった。
【0037】
このように、酸化マンガンを用いて形成したものは、種々のガスに対して不活性であり、参照極として使用できることが分かった。
【0038】
(実施例2)
実施例1で使用したチューブ型のガスセンサ素子を用いて、外面の白金を検知極とし、外面のMn3O4,Mn2O3,MnO,MnO2を焼成したもの及び内面の白金のそれぞれを参照極として、酸素ガス検知素子を作製し、それぞれの酸化マンガン及び白金の酸素に対する応答特性を調べた。
すなわち、水蒸気非共存で、窒素ガスをベースとし、プロパンガスと酸素ガスとを混合した混合ガスを、空燃比を変化させながら酸化触媒により燃焼させた。そして、この燃焼ガスを測定ガスとして、流量100cm3/分で、ガス検知素子の外面に接触させ、内面には大気を接触させて、測定温度600℃で、それぞれの空燃比におけるEMFを測定した。この場合、参照極としてのMn3O4,Mn2O3,MnO,MnO2を焼成したものは、検知極としての白金と同様に、測定ガスに晒されていた。空燃比は、プロパンガスの濃度を4720ppmとし、酸素ガス濃度を変えて、(5×酸素ガス濃度)/(プロパンガス濃度)とした。なお、酸化触媒には、MnO2を700℃で1時間焼成したものを使用した。
その結果、図8〜11に示すように、燃料過剰状態から空気過剰状態への変化により、起電力が急激に上昇することが確認できた。これは、図12に示す参照極にYSZの管の内部の白金を用いたものと、同様の挙動を示しており、空燃比センサに適用できることが分かった。
【0039】
(実施例3)
実施例1において良好な結果を示したMn2O3を用いて形成したものを参照極5として、図1に示すような酸素ガス検知素子としての基板型構成のガス検知素子1を作製し、それぞれの応答特性を調べた。なお、検知極4には白金を用い、固体電解質3にはYSZを用いた。
【0040】
(酸素ガスに対する応答特性)
ガス検知素子1の検知極4及び参照極5に、実施例1と同様の方法により、水蒸気非共存で、窒素ガスをベースとし、酸素ガスの体積濃度を20%,10%,5%,2%,1%,0.5%,0.2%,0.1%,0.2%,0.5%,1%,2%,5%,10%,20%と変えたそれぞれの測定ガスを流量100cm3/分で接触させて、それぞれの酸素ガス濃度におけるEMFを測定した。
その結果、図13に示す通り、それぞれの酸素濃度に対して、良好な応答を示すことが分かった。また、1回目の濃度20%の酸素ガスに対する起電力と2回目の濃度20%の酸素ガスに対する起電力との差が、0.79mVと小さく、再現性に優れていることが分かった。このことから測定環境中の酸素濃度を連続的に測定可能であることが確認できた。
【0041】
(各種ガスに対する応答特性)
ガス検知素子1の検知極4及び参照極5に、実施例1と同様の方法により、各種ガスを接触させて、それぞれの種類のガスに対するEMFを測定した。
その結果、図14に示す通り、各種ガスに対してほとんど応答を示さないことが分かり、酸素ガスに対して応答する酸素ガス検知素子として使用できることが確認できた。
【0042】
(空燃比に対する応答特性)
ガス検知素子1の検知極4及び参照極5に、実施例2と同様の方法により、燃焼ガスを接触させ、それぞれの空燃比におけるEMFを測定した。
その結果、図15に示すように、燃料過剰状態から空気過剰状態への変化により、起電力が急激に上昇することが確認でき、基板型のガス検知素子を空燃比センサに適用できることが分かった。
【0043】
(実施例4)
固体電解質3の参照極5との界面の状態を調べるために、Mn2O3とYSZとの混合粉末を1400℃で2時間焼成し、焼成前後における粉末をX線回折法(XRD)によって測定した。その結果、図16に示すように、焼成前に存在していたMn2O3のピークが焼成後には消失すると共に、Mn3O4のピークが確認された。また、50°付近のYSZのピークは焼成後に高角度側へシフトしていた。このことにより、YSZの中へマンガンが固溶していることが分かった。したがって、参照極5を形成する参照極材料としてMn2O3を用い、固体電解質3としてYSZを用いて焼成し、ガス検知素子1を作製した場合にも、固体電解質3の参照極5との界面には、マンガンがYSZに固溶している可能性が高く、このことが、本発明における参照極の効果に寄与しているものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係るガス検知素子は、空燃比センサ等の酸素ガスセンサ、水素ガスセンサ、窒素酸化物センサ等、各種ガスセンサに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態に係る基板型のガス検知素子の概略図
【図2】本実施例で使用したチューブ型のガス検知素子を説明する図
【図3】ガス検知素子の酸素ガスに対する応答特性を示すグラフ
【図4】ガス検知素子の各種ガスに対する応答特性を示すグラフ
【図5】ガス検知素子の各種ガスに対する応答特性を示すグラフ
【図6】ガス検知素子の各種ガスに対する応答特性を示すグラフ
【図7】ガス検知素子の各種ガスに対する応答特性を示すグラフ
【図8】ガス検知素子の空燃比に対する応答特性を示すグラフ
【図9】ガス検知素子の空燃比に対する応答特性を示すグラフ
【図10】ガス検知素子の空燃比に対する応答特性を示すグラフ
【図11】ガス検知素子の空燃比に対する応答特性を示すグラフ
【図12】ガス検知素子の空燃比に対する応答特性を示すグラフ
【図13】ガス検知素子の酸素ガスに対する応答特性を示すグラフ
【図14】ガス検知素子の各種ガスに対する応答特性を示すグラフ
【図15】ガス検知素子の空燃比に対する応答特性を示すグラフ
【図16】Mn2O3とYSZとの混合粉末の焼成前後のX線回折スペクトル
【符号の説明】
【0046】
1 ガス検知素子
2 絶縁基板
3 固体電解質
4 検知極
5 参照極
6 薄膜ヒータ(加熱手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検知ガスに対して活性を有する検知極と、参照極と、イオンを伝導する固体電解質とを備え、前記検知極と前記参照極との間の起電力に基づき、前記被検知ガスの濃度を検知するガス検知素子であって、
前記参照極は、酸化マンガンと前記固体電解質の一部とを接触させながら焼成して形成してあるガス検知素子。
【請求項2】
前記参照極は、前記固体電解質の一部にマンガンが固溶している請求項1に記載のガス検知素子。
【請求項3】
前記酸化マンガンは、Mn2O3を最も多く含む請求項1または2に記載のガス検知素子。
【請求項4】
前記固体電解質が、安定化ジルコニアを主成分として構成してある請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス検知素子。
【請求項5】
前記検知極と前記参照極とが、前記被検知ガスに晒されるように設けてある請求項1〜4のいずれか一項に記載のガス検知素子。
【請求項6】
前記検知極と前記参照極とが、前記固体電解質の同一面に設けてある請求項1〜5のいずれか一項に記載のガス検知素子。
【請求項7】
前記固体電解質が、絶縁基板の一方の面に設けてあり、当該絶縁基板の他方の面に加熱手段を設けてある請求項6に記載のガス検知素子。
【請求項1】
被検知ガスに対して活性を有する検知極と、参照極と、イオンを伝導する固体電解質とを備え、前記検知極と前記参照極との間の起電力に基づき、前記被検知ガスの濃度を検知するガス検知素子であって、
前記参照極は、酸化マンガンと前記固体電解質の一部とを接触させながら焼成して形成してあるガス検知素子。
【請求項2】
前記参照極は、前記固体電解質の一部にマンガンが固溶している請求項1に記載のガス検知素子。
【請求項3】
前記酸化マンガンは、Mn2O3を最も多く含む請求項1または2に記載のガス検知素子。
【請求項4】
前記固体電解質が、安定化ジルコニアを主成分として構成してある請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス検知素子。
【請求項5】
前記検知極と前記参照極とが、前記被検知ガスに晒されるように設けてある請求項1〜4のいずれか一項に記載のガス検知素子。
【請求項6】
前記検知極と前記参照極とが、前記固体電解質の同一面に設けてある請求項1〜5のいずれか一項に記載のガス検知素子。
【請求項7】
前記固体電解質が、絶縁基板の一方の面に設けてあり、当該絶縁基板の他方の面に加熱手段を設けてある請求項6に記載のガス検知素子。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1】
【図2】
【公開番号】特開2007−225313(P2007−225313A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43929(P2006−43929)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(595113314)
【出願人】(000190301)新コスモス電機株式会社 (112)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(595113314)
【出願人】(000190301)新コスモス電機株式会社 (112)
【Fターム(参考)】
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