説明

ガス溶解水製造装置、ガス溶解水、エアゾール式製品、洗浄装置およびガス溶解水製造方法、洗浄方法

【課題】ガスの溶解の持続性を有するガス溶解水を作成することができるガス溶解水製造装置を提供する。
【解決手段】ガス溶解水を作成することができるガス溶解水製造装置は、無電解質かつ水不溶解性の光電極体7を有する光電極体部1に水を接触させて水分解反応により酸性分解水を作成する水分解手段2と、酸性分解水に酸性水溶解性のガスを溶解してガス溶解水を作成する溶解手段3と、水分解手段2に水として純水を作成して供給する純水供給手段4とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水へのガスの溶解を容易に行うことができる、ガス溶解水製造装置、ガス溶解水、エアゾール式製品、洗浄装置およびガス溶解水製造方法、洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のガス溶解水製造方法は、処理原水に被溶解ガスを混入させた微細気泡含有水を気液接触手段に送る給水工程と、気液接触手段にて被溶解ガスと微細気泡含有水とを散水接触させる気液接触工程と、気液接触手段を通過した処理水の全部または一部を再度給水工程へと送る循環工程とを有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−263641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のガス溶解水製造方法は、ガスを微細気泡にて含有させて溶解しているため、ガスが水中から容易に気化し、ガスを長時間溶解させておくことができないという問題点があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、水へのガスの溶解持続性を向上するガス溶解水製造装置、ガス溶解水、エアゾール式製品、洗浄装置およびガス溶解水製造方法、洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、無電解質かつ水不溶解性の光電極体を有する光電極体部に水を接触させて水分解反応により酸性分解水を作成する水分解手段と、
酸性分解水に酸性水溶解性のガスを溶解してガス溶解水を作成する溶解手段とを備えたものである。
【0007】
また、この発明は、無電解質かつ水不溶解性の光電極体を有する光電極体部に水を接触させて水分解反応により酸性分解水を作成する水分解手段と、
酸性分解水に酸性水溶解性のガスを溶解してガス溶解水を作成する溶解手段とを備えたガス溶解水製造装置において、ガス溶解水を被洗浄物に噴射または浸漬して洗浄を行う洗浄手段を備えたものである。
【0008】
また、この発明は、無電解質系かつ水不溶解性の光電極体に水を接触させて水分解反応により酸性分解水を作成し、酸性分解水に酸性水溶解性のガスを溶解してガス溶解水を作成するものである。
【0009】
また、この発明は、無電解質系かつ水不溶解性の光電極体に水を接触させて水分解反応により酸性分解水を作成し、酸性分解水に酸性水溶解性のガスを溶解して作成されたガス溶解水を被洗浄物に噴射または浸漬して洗浄を行うものである。
【0010】
また、この発明は、無電解質系かつ水不溶解性の光電極体に水を接触させて水分解反応により酸性分解水を作成し、酸性分解水に酸性水溶解性のガスを溶解して作成されたガス溶解水である。
【0011】
また、この発明は、無電解質系かつ水不溶解性の光電極体に水を接触させて水分解反応により酸性分解水を作成し、酸性分解水に酸性水溶解性のガスを溶解して作成されたガス溶解水をエアゾール容器に活性または不活性ガスとともに充填したものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明のガス溶解水製造装置は、無電解質かつ水不溶解性の光電極体を有する光電極体部に水を接触させて水分解反応により酸性分解水を作成する水分解手段と、
酸性分解水に酸性水溶解性のガスを溶解してガス溶解水を作成する溶解手段とを備えたので、
ガスの溶解の持続性を有するガス溶解水を作成することができる。
【0013】
また、この発明の洗浄装置は、無電解質かつ水不溶解性の光電極体を有する光電極体部に水を接触させて水分解反応により酸性分解水を作成する水分解手段と、
酸性分解水に酸性水溶解性のガスを溶解してガス溶解水を作成する溶解手段とを備えたガス溶解水製造装置において、ガス溶解水を被洗浄物に噴射または浸漬して洗浄を行う洗浄手段を備えたもので、
ガスの溶解が保持された状態のガス溶解水にて洗浄することができる。
【0014】
また、この発明のガス溶解水製造方法は、無電解質系かつ水不溶解性の光電極体に水を接触させて水分解反応により酸性分解水を作成し、酸性分解水に酸性水溶解性のガスを溶解してガス溶解水を作成するので、
ガスの溶解の持続性を有するガス溶解水を作成することができる。
【0015】
また、この発明の洗浄方法は、無電解質系かつ水不溶解性の光電極体に水を接触させて水分解反応により酸性分解水を作成し、酸性分解水に酸性水溶解性のガスを溶解して作成されたガス溶解水を被洗浄物に噴射または浸漬して洗浄を行うもので、
ガスの溶解が保持された状態のガス溶解水にて洗浄することができる。
【0016】
また、この発明のガス溶解水は、無電解質系かつ水不溶解性の光電極体に水を接触させて水分解反応により酸性分解水を作成し、酸性分解水に酸性水溶解性のガスを溶解して作成されたガス溶解水なので、
ガスの溶解の持続性を有するガス溶解水を得ることができる。
【0017】
また、この発明のエアゾール式製品は、無電解質系かつ水不溶解性の光電極体に水を接触させて水分解反応により酸性分解水を作成し、酸性分解水に酸性水溶解性のガスを溶解して作成されたガス溶解水をエアゾール容器に活性または不活性ガスとともに充填したので、ガス溶解水の性質を長期間保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態1のガス溶解水製造装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示したガス溶解水製造装置の光電極体の構成を示す図である。
【図3】この発明の水におけるガス溶解の原理を説明するための図である。
【図4】この発明の水におけるガス溶解の原理を説明するための図である。
【図5】図1に示したガス溶解水製造装置にて作成されたガス溶解水の性質を説明するための図である。
【図6】図1に示したガス溶解水製造装置にて作成されたガス溶解水の性質を説明するための図である。
【図7】この発明の実施の形態2における洗浄装置の構成を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態2における洗浄能力を検証するための実験方法を説明するための図である。
【図9】図8における実験結果を説明するための図である。
【図10】図8における実験結果を説明するための図である。
【図11】この発明の実施の形態2における洗浄方法の原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
以下、本願発明の実施の形態について説明する。図1はこの発明の実施の形態1におけるガス溶解水製造装置の構成を示す図、図2は図1に示したガス溶解水製造装置の光電極体の構成を示す図、図3および図4はこの発明の水におけるガス溶解の原理を説明するための図、図5ないし図7は図1に示したガス溶解水製造装置にて作成されたガス溶解水の性質を説明するための図である。図において、無電解質かつ水不溶解性の光電極体部1に水を接触させて水分解反応により酸性分解水を作成する水分解手段2を備える。この水分解手段2は、純水を貯留して循環するための循環タンク5からポンプ6を稼働させ、水を光電極体部1に接触させ再び循環タンク5に戻すことを繰り返すことにより、水を循環させて光電極体部1に接触させている。ここでは、循環タンク5としてその容量が500Lのものを例に説明する。
【0020】
そして、水分解手段2は、酸性分解水のpHを5.5以下にて作成することができるものである。そして、光電極体部1は、光電極体7が筒状の容器内に収納されその一端から水が導入され他端から水が排出され、このことにより水分解反応を起こさせるものである。ここでは、光電極体部1が直列に2列で並列に5個の合計10個が用いられる。そして具体的に光電極体部1は、例えば、図2(a)に示すように、光電極体7と、この光電極体7に紫外線を照射する光源8とにて構成されている。大きさとしては、径t1が150mm、長さt2を1200mmにて構成されている。
さらに、図2(b)の光学顕微鏡による拡大した写真を示す図のように、光電極体7は、遷移系触媒金属にて形成される例えば白金、ニッケル、ステンレス、または、ニッケルおよび銀の混合物にてなる円柱筒状の多孔体9と、多孔体9の孔を略塞ぐことなく担持された例えば酸化チタンにてなる光触媒10とにて構成される。
【0021】
さらに詳細には、多孔体9の微細孔は、例えば口径が200〜3000μm程度のものであり、また、この多孔体9に担持されている光触媒10の厚さは850nm〜1μm程度である。ここに、多孔体9の材料としては、光触媒10との間でショットキー接合する性質を有する遷移金属の単体、またはこれら複数組み合わせた混合物から形成することができる。光触媒10と多孔体9とがショットキー接合して両者間で一種の電極構造(多孔体7が陰極側、光触媒10が陽極側)となっている。
【0022】
次に、光電極体7の製造方法の具体例を説明する。まず、スラリー法によって多孔体9を作成する。すなわち、まず、NiとAgとの微細粉(例えば粒径1〜5μmで、Niに対してAgを8〜10重量%混合するのが好適)を準備する。そして、このNiとAgとの微細粉を有機系溶媒からなるバインダと一定比率で混合、撹拌してスラリーを作成する。次に、ウレタン発泡体を準備し、このウレタン発泡体を上記のスラリーを溜めた浴槽中に浸漬して、ウレタン発泡体にスラリーを含浸させる。次いで、このスラリーが含浸されたウレタン発泡体を浴槽から引き上げて転圧ローラを通過させ、これによってスラリーを微細孔の内部まで十分に移行させて定着させる。その際、同時に余分なスラリーは除去される。続いて、スラリーが定着されたウレタン発泡体を、まず、酸化雰囲気の加熱炉中で焼成する。これにより、ウレタン発泡体とバインダが飛散されて除去される。次いで、還元雰囲気の加熱炉中で焼成する。これにより、上記工程にて酸化されたニッケルおよび銀が還元されて内外部に多数の微細孔が形成された多孔体9が作成される。
【0023】
次に、ゾルゲル法によって上記のようにして作成された多孔体9の微細孔内の表面に光触媒10を担持させる。まず、アナターゼの結晶核を有するペルオキソチタン酸液を準備する。次に、上記の多孔体9を洗浄するとともに、表面を荒らしてさらに小さなピットホールを作る。そして、ペルオキソチタン酸液を溜めた浴槽中に多孔体9を浸漬して、ペルオキソチタン酸液を多孔体9の微細孔やピットホール内に含浸させる。次いで、このペルオキソチタン酸液が含浸された多孔体9を浴槽から引き上げて遠心分離を行って余分な酸液を除く。この含浸および取り除く工程を複数回繰り返して多孔体9に均一な膜厚を定着させた後、焼成する。これにより、多孔体9の微細孔は光触媒10によって塞がれることはなく、この微細孔内に均一な膜厚を有する結晶化されたアナターゼ膜、すなわち金属酸化物(TiO2)からなる光触媒10が担持された状態となり光電極体7が形成される。
【0024】
そして、酸性分解水に酸性水溶解性のガス、例えば二酸化炭素ガスをガスボンベ11から第1のバルブ12を介して水分解手段2にて混合して溶解してガス溶解水を作成する溶解手段3と、水分解手段2に水として純水を作成して供給する純水供給手段4とを備える。酸性水溶解性のガスとして、二酸化炭素ガスを例に示しているが、これに限ることはなく、酸性水に溶解性を有するガスであれば良く、例えば、ペルオキソを有するガスであれば適当であると考えられる。
【0025】
そして、純水供給手段4は、水道水などの原水を供給して貯留する原水タンク13と、原水タンク13に接続され活性炭濾過および逆浸透膜処理を行う活性炭濾過・逆浸透膜手段14と、活性炭濾過・逆浸透膜手段14に接続され処理した水を貯留する処理水タンク15と、処理水タンク15に接続され貯留されている水のイオン交換を行うイオン交換樹脂手段16と、イオン交換樹脂手段16を介した水を循環タンク5に供給を調整する第2のバルブ17とを備えている。
【0026】
次に上記のように構成された実施の形態1のガス溶解水製造装置におけるガス溶解水製造方法について説明する。まず、循環タンク5に純水を供給するために、水道水などの原水を原水タンク13に貯留する。次に、貯留された原水を活性炭濾過・逆浸透膜手段14にて活性炭濾過および逆浸透膜処理を行う。次に、処理された水を処理水タンク15に貯留する。次に、水のイオン交換を行い第2のバルブ17を開いて純水供給手段4から循環タンク5に純水を供給する。尚、純水を作成する工程はこれに限られることはなく、他の方法でも良いことは言うまでもない。ここでは、純水のレベルとして、0.2μジーメンス程度のものを用いている。そして、循環タンク5に所定量の純水が供給されると、第2のバルブ17を閉める。
【0027】
次に、水分解手段2はポンプ6を駆動させて、純水を光電極体部1に循環タンク5を介して循環させ接触させる。この際の流速は、2.5〜3.5m/secにて循環されている。この際、水は、図3に示すように光電極体部1にてラジカル−イオン解離の反応による水分解が連続して行われている。そしてこの反応が行われた水は、H3O+がリッチな(溶存水素の多い)水、すなわち、酸性分解水が形成されることとなる。そしてこの循環を2時間程度連続して行うと、pH5.5以下の酸性分解水が作成される。尚、この循環はpHを測定して所定のpHを有す酸性分解水として形成されることを基準に作成を行う。
【0028】
次に、この循環状態を保ちながら、溶解手段3は第1のバルブ12を開放して、ガスボンベ11から二酸化炭素ガスを例えば、25g〜100g/分程度にて流して、酸性分解水に供給していく。そして、二酸化炭素ガスの総量が2.5kgとなるように供給していく。そして、酸性分解水中にガスを溶解させガス溶解水を作成する。この際の、酸性分解水中に二酸化炭素ガスが溶解されている現象は図4に示すような二酸化炭素と水との反応による固定が発生していると考えられる。このように、二酸化炭素ガスがH3O+と反応することにより、分子状二酸化炭素(H2CO3)として酸性分解水に溶解して、分子状炭酸水(H2CO3)のガス溶解水が作成される。このよう作成されたガス溶解水のpHは、pH4.0以下にて作成することができる。
【0029】
このようにして形成されたガス溶解水の性質について検証した。図5および図6はその検証結果を示す図である。検証方法としては、本願発明の酸性分解水に二酸化炭素を溶解されたガス溶解水と、純水に二酸化炭素を溶解させた比較例とについて、pHの時系列変化を測定したものである。まず、二酸化炭素を溶解させた直後のpHは、本願発明のガス溶解水はpH3.95で、比較例はpH4.05であった。それから、12時間経過した後、比較例はpH5.28となり、本願発明はpH4.05となった。そして、比較例は1日後にはpH6を超えた。しかしながら、本願発明は90日の経過においてもpHの変化はほぼない。このことから、比較例はCO2の溶解が持続されず、本願発明はCO2に溶解が持続されていると考えられる。
【0030】
一般的な二酸化炭素ガスの水への溶解では、例えば、炭酸水などのように二酸化炭素ガスがただ単にCO2の状態のまま水中に溶解している場合には、密閉状態の容器から開放されると直ちに大気中に二酸化炭素ガスは放出し、溶解を継続することができない。このことから明らかなように、本願発明は、二酸化炭素ガスを分子状二酸化炭素としての水中への溶解させているため、長時間その溶解状態を持続させておくことができる。このように長時間持続されているため、医療、理美容、CO2溶解の原材料や被洗浄物の洗浄などに利用することができる。また、浸透性に優れているため、保湿を行うことにも利用することができる。
【0031】
上記のように構成された実施の形態1によれば、無電解質かつ水不溶解性の光電極部を有する光電極体部に水を接触させて水分解反応により酸性分解水を作成する水分解手段と、酸性分解水に酸性水溶解性のガスを溶解してガス溶解水を作成する溶解手段とを備えたので、また、無電解質系かつ水不溶解性の光電極部に水を接触させて水分解反応により酸性分解水を作成し、酸性分解水に酸性水溶解性のガスを溶解してガス溶解水を作成するので、容易にガス溶解水を得ることができ、さらに、ガス溶解の持続性を向上することができる。
【0032】
また、水分解手段に水として純水を作成して供給する純水供給手段を備えたので、水分解反応を確実に行うことができ、ひいては、水中に確実にガスを溶解してガス溶解水を得ることができる。
【0033】
また、水分解手段は、水を光電極体部に循環させ接触させるため、酸性分解水を確実に作成することができ、ひいては、水中に確実にガスを溶解してガス溶解水を得ることができる。
【0034】
また、水分解手段は、酸性分解水のpHを5.5以下にて作成するため、酸性分解水を確実に作成することができ、ひいては、水中に確実にガスを溶解してガス溶解水を得ることができる。
【0035】
また、光電極体部は、光電極体と、光電極体に紫外線を照射する光源とを備えているので、水分解反応を確実に行うことができ、ひいては、酸性分解水を確実に作成することができる。
【0036】
また、光電極体は、遷移系触媒金属にて形成される多孔体と、多孔体の孔を略塞ぐことなく担持された光触媒とを備えたので、水分解反応を確実にかつ効率よく行うことができ、ひいては、酸性分解水を確実にかつ効率よく作成することができる。
【0037】
また、遷移系触媒金属は、白金、ニッケル、ステンレス、または、ニッケルおよび銀の混合物にて形成され、光触媒は酸化チタンにて形成されているので、水分解反応を確実にかつ効率よく行うことができ、ひいては、酸性分解水を確実にかつ効率よく作成することができる。
【0038】
また、溶解手段は、ガスとして二酸化炭素ガスを溶解するため、分子状炭酸水を作成して酸性分解水にガスを確実に溶解することできる。
【0039】
また、溶解手段は、ガス溶解水のpHを4.0以下の酸性分解水を確実に作成することができる。
【0040】
尚、上記実施の形態1では、溶解手段は水分解手段の水の循環を用いて、酸性分解水にガスを溶解する手段を例に示したがこれに限られることはなく、新たな撹拌部などにより溶解しても良いことは言うまでもない。また、溶解手段と水分解手段とは別々の手段にて形成しても良い。また、水分解部は光電極体と光源とにて構成する例を示したがこれに限られることはなく、無電解質かつ水不溶解性で、図3に示すような水分解反応を行うことができるものであれば、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0041】
実施の形態2.
図7はこの発明の実施の形態2における洗浄装置の構成を示す図、図8はこの発明の実施の形態2における洗浄能力を検証するための実験方法を説明するための図、図9および図10は図8における実験結果を説明するための図、図11はこの発明の実施の形態2における洗浄方法の原理を説明するための図である。図において、上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。本実施の形態2においては上記実施の形態1にて示したガス溶解水製造装置を洗浄プロセスにおいて利用するものである。洗浄プロセスにおいて、被洗浄物のすすぐためのリンス1槽18と、リンス1槽18にてすすがれた後の被洗浄物を洗浄するための洗浄2槽19と、被洗浄物の最終的な洗浄を行うための洗浄3槽50とを備えている。そして、本実施の形態2においては、この洗浄3槽50を上記に示した実施の形態1における循環タンク5に換えて行うものである。
【0042】
上記のように構成された実施の形態2の洗浄装置の洗浄方法について説明する。まず、処理の終了した被洗浄物をリンス1槽18にてすすぐ。次に、すすぎの終了した被洗浄物を洗浄2槽19で洗浄する。次に、被洗浄物の最終的な洗浄を洗浄3槽50にて行う。この際、上記実施の形態1と同様に、まず、洗浄3槽50に純水を供給するために、第2のバルブ17を開いて純水供給手段4から純水を供給する。そして、洗浄3槽50に所定量の純水が供給されると、第2のバルブ17を閉める。
【0043】
次に、水分解手段2はポンプ6を駆動させて、純水を光電極体部1に循環タンク5を介して循環させ接触させる。そしてこの循環を連続して行い、pH5.5以下の酸性分解水を作成する。次に、この循環状態を保ちながら、溶解手段3は第1のバルブ12を開放して、ガスボンベ11から二酸化炭素ガスを流して、酸性分解水に混合(供給)していく。そして、酸性分解水中にガスを溶解させガス溶解水を作成する。そして、この状態になると、洗浄3槽50に被洗浄物を投入してガス溶解水にて洗浄を行う。尚、この洗浄を行う工程においては、洗浄する状況に応じて、ガスの供給を継続しても良いし、また、ガスの供給を一旦停止しても良い。但し、被洗浄物を多量に洗浄する場合、または、洗浄の効率を向上させたい場合、洗浄の精度を向上させたい場合などは、ガスの供給を断続的に行いながら洗浄する方が良い。
【0044】
このようにして本願発明のガス溶解水にて洗浄を行う場合の洗浄能力について検証するための実験を図8に示すような方法にて行った。まず、ビーカーに”本願発明のガス溶解水”または”純水”を入れて、その中にセラミックスピンを入れる。そして、超音波洗浄にてセラミックスピンの洗浄を行う。次に、セラミックスピンを取り出し、リンスを”本願発明のガス溶解水”または”純水”にて、9リットル程度流して行う。次に、ビーカーに純水を入れて、その中にセラミックスピンを入れる。次に、セラミックスピンの近傍の位置の純水を吸い取りパーティクルカウンターにてパーティクル数をカウントする。尚、パーティクル数のカウントはそのカウント数が安定するまで、最低10回程度の測定を行う。そして、この測定を超音波洗浄の時間を変更してそれぞれ測定した。
【0045】
このようにして行った、”純水”洗浄および”純水”すすぎにおける結果を図9に、”本願発明のガス溶解水”洗浄および”本願発明のガス溶解水”すすぎにおける結果を図10に示す。図9および図10を比較して明らかなように、本願発明におけるガス溶解水での洗浄およびすすぎでは、純水での洗浄およびすすぎに比較して、パーティクル数が極めて少なく、洗浄に優れていることが確認できる。また、ガス溶解水での洗浄は、超音波洗浄の時間が1.5分ないし15分であってもほぼ同様のパーティクル数の値であり、短い時間であっても優れた洗浄能力を有していることが確認できる。
【0046】
また、この実施の形態2における洗浄方法の原理を図11に基づいて説明する。被洗浄物(ガラス板)上に存在する汚れ(油)に”本願発明のガス溶解水”をミスト状にて噴霧する(図11(a))。すると、”本願発明のガス溶解水”の分子状二酸化炭素が汚れに浸透し、汚れを体積膨張させる。また、同時に擬似ミセルを形成する。そして、汚れの表面張力と界面張力とを低下させる(図11(b))。次に、汚れの乳化が促進させ、被洗浄物と汚れとの界面に”本願発明のガス溶解水”が滑り込み、親水性の高い状態となる。これにより容易に被洗浄物上から汚れが除去できるものと考えられる。
【0047】
上記のように構成された実施の形態2の洗浄装置によれば、ガス溶解水を被洗浄物に噴射または浸漬して洗浄を行う洗浄手段を備えたので、また、ガス溶解水を被洗浄物に噴射または浸漬して洗浄を行うので、被洗浄物を精度良く洗浄を行うことができる。
【0048】
実施の形態3.
また、上記実施の形態1のようにして作成されたガス溶解水はエアゾール容器に活性または不活性ガスとともに充填してエアゾール式製品として使用することも考えられる。
エアゾール式製品の製造方法としては、例えば、エアゾール容器に、ガス溶解水を所定量入れる。次に、エアゾール容器にバルブを挿入し、バルブをエアゾール容器にクリンプする。次に、エアゾール容器内に所定量の活性または不活性ガスを充填する。このようにして、エアゾール式製品を製造することができる。
【0049】
このように、ガス溶解水をエアゾール式製品とすることにより、ガス溶解水の性質の可変をほとんど生じることなく、使用時までガス溶解水の性質を確保したままにすることができる。このように性質が確保されるため、医療、理美容、被洗浄物の洗浄などに利用することができる。また、浸透性に優れているため、保湿を行うことにも利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 光電極体部、2 水分解手段、3 溶解手段、4 純水供給手段、
7 光電極体、8 光源、9 多孔体、10 光触媒、50 洗浄3槽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解質かつ水不溶解性の光電極体を有する光電極体部に水を接触させて水分解反応により酸性分解水を作成する水分解手段と、
上記酸性分解水に酸性水溶解性のガスを溶解してガス溶解水を作成する溶解手段とを備えたことを特徴とするガス溶解水製造装置。
【請求項2】
上記水分解手段に水として純水を作成して供給する純水供給手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のガス溶解水製造装置。
【請求項3】
上記水分解手段は、水を上記光電極体部に循環させ接触させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス溶解水製造装置。
【請求項4】
上記水分解手段は、上記酸性分解水のpHを5.5以下にて作成することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のガス溶解水製造装置。
【請求項5】
上記光電極体部は、上記光電極体に紫外線を照射する光源を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のガス溶解水製造装置。
【請求項6】
上記光電極体は、遷移系触媒金属にて形成される多孔体と、上記多孔体の孔を略塞ぐことなく担持された光触媒とを備えたことを特徴とする請求項5に記載のガス溶解水製造装置。
【請求項7】
上記遷移系触媒金属は、白金、ニッケル、ステンレス、または、ニッケル及び銀の混合物にて形成され、上記光触媒は酸化チタンにて形成されていることを特徴とする請求項6に記載のガス溶解水製造装置。
【請求項8】
上記溶解手段は、上記ガスとして二酸化炭素ガスを溶解し、上記ガス溶解水として分子状炭酸水(H2CO3)を作成することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のガス溶解水製造装置。
【請求項9】
上記溶解手段は、上記ガス溶解水のpHを4.0以下にて作成することを特徴とする請求項8に記載のガス溶解水製造装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに1項に記載のガス溶解水製造装置において、上記ガス溶解水を被洗浄物に噴射または浸漬して洗浄を行う洗浄手段を備えたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項11】
無電解質系かつ水不溶解性の光電極体に水を接触させて水分解反応により酸性分解水を作成する工程と、上記酸性分解水に酸性水溶解性のガスを溶解してガス溶解水を作成する工程とを備えたことを特徴とするガス溶解水製造方法。
【請求項12】
上記ガスとして二酸化炭素ガスを溶解することを特徴とする請求項11に記載のガス溶解水製造方法。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載のガス溶解水製造方法にて作成された上記ガス溶解水を被洗浄物に噴射または浸漬して洗浄を行う工程を備えたことを特徴とする洗浄方法。
【請求項14】
請求項11または請求項12に記載のガス溶解水製造方法にて作成されたことを特徴とするガス溶解水。
【請求項15】
請求項14に記載の上記ガス溶解水をエアゾール容器に活性または不活性ガスとともに充填したことを特徴とするエアゾール式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−31189(P2011−31189A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180686(P2009−180686)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(597002139)NDE株式会社 (2)
【出願人】(503219053)株式会社トルネス (1)
【Fターム(参考)】