説明

ガス発生器およびガス発生器用ホルダ

【課題】高耐圧でかつ車両等への搭載性に優れたガス発生器を提供する。
【解決手段】ガス発生器1Aは、カップ30と、点火器20と、ホルダ10Aとを備える。ホルダ10Aは、カップ30に面する側の軸方向端面に設けられ、点火器20を受け入れ保持する第1凹部12と、カップ30に面しない側の軸方向端面に設けられ、点火器20の外部接続のためのコネクタを受け入れ保持するための第2凹部13と、第1凹部12と第2凹部13とを仕切る隔壁部14と、外周面11に設けられ、軸方向に沿って挿入されたカップ30の開口縁を受け入れ保持する環状溝部15とを有する。環状溝部15の底面は、ホルダ10Aの隔壁部14を径方向に取り囲む部分に設けられる。第2凹部13の角部13dは、隣接する面のいずれにも連続する湾曲面にて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生器および当該ガス発生器に具備されるガス発生器用ホルダ(以下、単に「ホルダ」とも称する)に関し、特に、シートベルトプリテンショナ装置に組み込まれるガス発生器およびこれに具備されるガス発生器用ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の乗員の保護の観点からシートベルト装置やエアバッグ装置が普及している。このうち、シートベルト装置は、車両等衝突時に生じる衝撃により乗員が車内または車外に投げ出されることを防止する目的で装備されるものであり、乗員の身体にベルトを巻き付けることによって乗員を座席に拘束して固定するものである。
【0003】
近年においては、乗員保護機能の向上のためにプリテンショナ機能を備えたシートベルト装置が急速に普及している。このプリテンショナ機能とは、衣服の厚み等によって生じるシートベルトの弛みを衝突時において瞬時に巻き上げるものであり、乗員の拘束効果を高めるものである。このプリテンショナ機能は、マイクロガスジェネレータ(MGG)と称されるガス発生器から出力するガスの圧力によってシートベルトが強く引き込まれることによって実現される。
【0004】
この種のガス発生器としては、たとえば特開2008−37389号公報(特許文献1)に開示のものや、特開2001−88653号公報(特許文献2)に開示のものがある。上記特許文献1および2に開示のガス発生器は、燃焼することでガスを発生するガス発生剤が装填された有底略円筒状のカップと、ガス発生剤を燃焼させるための点火器と、カップの開口端を閉塞するように同軸上にカップに組付けられるとともに、ガス発生剤に面するように点火器を保持してなる略円柱状のホルダとを備えている。
【0005】
ここで、ホルダは、上述したように点火器を保持するとともにカップが組付けられて使用されるものであるため、当該ホルダの一方の軸方向端面には、点火器を受け入れ保持するための第1凹部と、カップの開口縁を受け入れ保持するための環状溝部が設けられる。また、ホルダには、点火器を外部に接続するためのコネクタが挿抜可能に取付けられる必要があるため、当該ホルダの他方の軸方向端面には、上記コネクタを受け入れ保持するための第2凹部が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−37389号公報
【特許文献2】特開2001−88653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したガス発生器においては、車両等への搭載性の改善要求が強く、その小型軽量化が重要な課題となっている。ここで、金属材料からなる上記ホルダは、ガス発生器を構成する部品のうちで総重量に対する重量の占める割合が高い部品であるため、材質や形状、肉厚等を変更することでその小型軽量化を図る試みがなされている。
【0008】
しかしながら、ホルダは、ガス発生器の作動時において高い圧力を受ける部品でもあるため、その機械的強度(すなわち耐圧性能)が高く確保されている必要がある。たとえば、ガス発生器が作動した場合には、シートベルト装置に組み込まれるプリテンショナモジュールの作動空間に当該ガス発生器にて発生したガスが導入されることになるが、その際に作動空間の内圧は非常に高圧となり、ホルダに当該高圧が加わることになる。ここで、ホルダに機械的強度不足が生じていれば、当該高圧に耐えることができず、ホルダに破損が生じてしまい、結果として当該破損部分からガスが漏れ出てしまうといった不具合が生じてしまうことになる。
【0009】
このように、上述したガス発生器においては、安定した動作を実現するために耐圧性能を高く確保しつつ、車両等への搭載性を向上させるために小型軽量化を図ることが必要不可欠となっている。
【0010】
したがって、本発明は、上述した問題点を解決すべくなされたものであり、高耐圧でかつ車両等への搭載性に優れたガス発生器およびこれに具備されるガス発生器用ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に基づくガス発生器は、燃焼することでガスを発生するガス発生剤が装填された有底略円筒状のカップと、作動時において着火することで上記ガス発生剤を燃焼させる点火薬が収容された点火部および上記点火薬を着火させるために上記点火部に接続された端子ピンを含む点火器と、上記カップの開口端を閉塞するように同軸上に上記カップに組付けられるとともに、上記点火部が上記ガス発生剤に面するように上記点火器を保持してなる略円柱状のホルダとを備える。上記ホルダは、上記カップに面する側の軸方向端面に設けられ、上記点火器を受け入れ保持する第1凹部と、上記カップに面しない側の軸方向端面に設けられ、上記端子ピンが配置されるとともに当該端子ピンを介した上記点火器の外部接続のためのコネクタを受け入れ保持するための第2凹部と、上記第1凹部の底面と上記第2凹部の底面とを規定することで上記第1凹部と上記第2凹部とを仕切る隔壁部と、外周面に設けられ、軸方向に沿って挿入された上記カップの開口縁を受け入れ保持する環状溝部とを有する。上記環状溝部の底面は、上記ホルダの上記隔壁部を径方向に取り囲む部分に設けられる。上記第2凹部の底面と上記第2凹部の周面との間に位置する角部は、隣接するこれら面のいずれにも連続する湾曲面にて構成される。
【0012】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、軸線を含む平面に沿って上記ホルダを切断した場合の切断面に沿った上記湾曲面の曲率半径が、0.5mm以上であることが好ましい。
【0013】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記第2凹部の周面が、径方向において上記環状溝部の内周面よりも内側に位置していることが好ましい。
【0014】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記環状溝部の底面と上記環状溝部の内周面との間に位置する角部が、隣接するこれら面のいずれにも連続する湾曲面にて構成されていることが好ましい。
【0015】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記カップの開口縁に外側に向かって延びるフランジ部が設けられていることが好ましい。その場合には、上記環状溝部の外周面を規定する部分である環状鍔部が上記フランジ部を覆うように内側に向けてかしめられることにより、上記カップの開口縁が、上記環状溝部によって受け入れ保持されていることが好ましい。
【0016】
本発明に基づくガス発生器用ホルダは、ガス発生剤を燃焼させるための点火器を保持するとともにガス発生剤が装填された有底略円筒状のカップが組付けられて使用される略円柱状のものであって、カップが組付けられる側の軸方向端面に設けられ、点火器を受け入れ保持するための第1凹部と、カップが組付けられない側の軸方向端面に設けられ、点火器の端子ピンが配置されるとともに端子ピンを介した点火器の外部接続のためのコネクタを受け入れ保持するための第2凹部と、上記第1凹部の底面と上記第2凹部の底面とを規定することで上記第1凹部と上記第2凹部とを仕切る隔壁部と、外周面に設けられ、軸方向に沿って挿入されるカップの開口縁を受け入れ保持するための環状溝部とを有する。上記環状溝部の底面は、上記隔壁部を径方向に取り囲む部分に設けられる。上記第2凹部の底面と上記第2凹部の周面との間に位置する角部は、隣接するこれら面のいずれにも連続する湾曲面にて構成される。
【0017】
上記本発明に基づくガス発生器用ホルダにあっては、軸線を含む平面に沿って切断した場合の切断面に沿った上記湾曲面の曲率半径が、0.5mm以上であることが好ましい。
【0018】
上記本発明に基づくガス発生器用ホルダにあっては、上記第2凹部の周面が、径方向において上記環状溝部の内周面よりも内側に位置していることが好ましい。
【0019】
上記本発明に基づくガス発生器用ホルダにあっては、上記環状溝部の底面と上記環状溝部の内周面との間に位置する角部が、隣接するこれら面のいずれにも連続する湾曲面にて構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高耐圧でかつ車両等への搭載性に優れたガス発生器およびこれに具備されるガス発生器用ホルダとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態におけるガス発生器の模式断面図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるガス発生器用ホルダの組付け前の模式断面図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるガス発生器の図1に示す領域IIIの拡大模式断面図である。
【図4】比較例に係るガス発生器の要部拡大模式断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に基づいた変形例に係るガス発生器の要部拡大模式断面図である。
【図6】比較例および実施例1,2に係るガス発生器の耐圧性能を検証した検証試験の結果を示す表である。
【図7】比較例に係るガス発生器用ホルダの剪断破壊後の断面写真である。
【図8】実施例1に係るガス発生器用ホルダの剪断破壊後の断面写真である。
【図9】実施例2に係るガス発生器用ホルダの剪断破壊後の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態におけるガス発生器は、シートベルト装置に組み込まれるプリテンショナモジュールに組付けられて使用されるマイクロガスジェネレータである。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態におけるガス発生器の模式断面図であり、図2は、本実施の形態におけるガス発生器用ホルダの組付け前の模式断面図である。まず、これら図1および図2を参照して、本実施の形態におけるガス発生器およびこれに具備されるガス発生器用ホルダの構成について説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Aは、主として、ホルダ10Aと、点火器20と、カップ30と、ガス発生剤35とを備えている。ここで、点火器20は、ホルダ10Aによって保持されており、カップ30は、当該点火器20を覆うようにホルダ10Aに組付けられている。ホルダ10Aおよびカップ30は、これらが組み合わされることでガス発生器1Aの外殻となるハウジングを構成している。また、カップ30に装填されたガス発生剤35は、組付け後において、ホルダ10A、点火器20およびカップ30によって規定される空間に収容される。なお、点火器20は、スクイブとも称される。
【0025】
図1に示すように、点火器20は、火炎を発生させるための装置であり、作動時において着火することでガス発生剤35を燃焼させる点火薬が収容された点火部21と、点火薬を着火させるために点火部21に接続された一対の端子ピン22と、一対の端子ピン22を保持する基部(ヘッダ)23とを含んでいる。より詳細には、点火部21は、点火薬に接触するように設けられた電橋線(ブリッジワイヤ)と、点火薬および電橋線を内部に収容すべく基部23に取付けられたスクイブカップとを有しており、電橋線の両端は、基部23によって保持された一対の端子ピン22の先端にスクイブカップの内部においてそれぞれ接続されている。
【0026】
電橋線としては、一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては、一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)等が利用される。また、スクイブカップとしては、一般に金属製またはプラスチック製の部材が使用される。なお、点火部21内には、点火薬に加えて伝火薬が装填されていてもよい。
【0027】
衝突を検知した際には、端子ピン22を介して電橋線に所定量の電流が流れる。電橋線に所定量の電流が流れることにより、電橋線においてジュール熱が発生し、これにより点火薬が着火されて燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎(ガスおよび熱粒子)は、点火薬を収容しているスクイブカップを破裂させ、ガス発生剤35を点火する。電橋線に電流が流れてから点火器20が作動するまでの時間は、電橋線にニクロム線を利用した場合には、一般に3ミリ秒以下である。
【0028】
図1に示すように、カップ30は、軸方向の一端が開口した有底略円筒状の部材からなり、内部にガス発生剤35が装填されている。カップ30は、ハウジングの一部を構成する部材でもあり、たとえばアルミニウムやアルミニウム合金等の金属材料からなる成形品にて構成される。なお、カップ30の成形には、一般に金型を用いたプレス加工等が利用される。
【0029】
より詳細には、カップ30は、側壁部31と底壁部32とを有しており、これら側壁部31および底壁部32によって規定される収容空間34にガス発生剤35が収容されている。カップ30の底壁部32には、その表面に切り欠き(スコア)等が形成されることによって脆弱部が設けられており、ガス発生器1Aの作動時において当該脆弱部が開口可能に構成されている。また、カップ30の開口縁には、側壁部31の先端から連続して外側に向かって延びるフランジ部33が設けられている。当該フランジ部33を含むカップ30の開口縁は、当該カップ30をホルダ10Aに固定するための部位である。
【0030】
ガス発生剤35は、点火器20によって着火されて燃焼することで多量のガスを発生するものである。ガス発生剤35としては、無煙火薬(ニトロセルロース)の成形体や、有機窒素化合物と酸化剤とからなる非アジ化系組成物の成形体等が利用される。なお、近年においては、ガス発生剤35として、一酸化炭素等の有害物質の生成量が極めて少ない非ニトロセルロース系ガス発生剤を利用することが注目されている。
【0031】
ガス発生剤35の成形体としては、顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状のものが利用できる。また、貫通孔を有する有孔状(たとえばマカロニ状や蓮根状等)のものもガス発生剤35の成形体として利用できる。これらの形状は、ガス発生器1Aが組付けられるプリテンショナモジュールの仕様に応じて最適のものが選択される。また、形状の他にも、線燃焼速度、圧力指数等を考慮に入れてガス発生剤35の成形体のサイズ等が選択される。なお、ガス発生剤35の充填量は、組付けられるプリテンショナモジュールの仕様に応じて適宜変更され得るが、無煙火薬を使用した場合には、概ね0.2g〜2.0g程度とされることが一般的である。
【0032】
図1に示すように、ホルダ10Aは、点火器20およびカップ30を保持するための部材であり、略円柱状の外形を有している。ホルダ10Aは、ハウジングの一部を構成する部材でもあり、たとえばアルミニウムやアルミニウム合金、ステンレス鋼を含む鉄系材料等の金属材料からなる成形品にて構成される。なお、ホルダ10Aの成形には、一般に切削加工や金型を用いた鍛造加工、絞り加工、プレス加工等の組み合わせが利用され、ホルダ10Aは、これら加工による加圧流動の繰り返しによって所望の形状に成形される。
【0033】
図1および図2に示すように、ホルダ10Aは、カップ30に面する側の軸方向端面に設けられた第1凹部12と、カップ30に面しない側の軸方向端面に設けられた第2凹部13と、外周面11aに設けられた環状溝部15とを主として備えている。なお、第1凹部12と第2凹部13との間には、これら第1凹部12と第2凹部13とを仕切る隔壁部14が位置しており、当該隔壁部14は、その径方向の端部において外周面11aを規定する筒状部11に連続している。また、隔壁部14には、第1凹部12と第2凹部13とを連通する一対の貫通孔14aが設けられている。
【0034】
第1凹部12は、点火器20を受け入れ保持するための部位であり、底面12aと周面12bとを有している。このうち、第1凹部12の底面12aは、上述した隔壁部14によって規定され、第1凹部12の周面12bは、筒状部11のうちの点火器20をかしめ固定するための部位である環状突部17によって規定されている。
【0035】
第2凹部13は、点火器20の端子ピン22が配置されるとともに当該端子ピン22を介した点火器20の外部接続のためのコネクタ(不図示)を受け入れ保持するための部位であり、底面13aと周面13bとを有している。このうち、第2凹部13の底面13aは、上述した隔壁部14によって規定され、第2凹部13の周面13bは、筒状部11によって規定されている。また、第2凹部の周面13bの所定位置には、周方向に沿って環状に延びる係合溝13fが設けられている。当該係合溝13fは、第2凹部13に挿入されたコネクタに設けられている突起に係合することにより、当該コネクタを第2凹部13内において保持するための部位である。
【0036】
環状溝部15は、軸方向に沿って挿入されるカップ30の開口縁を受け入れ保持するための部位であり、底面15aと内周面15bと外周面15cとを有している。これら底面15a、内周面15bおよび外周面15cは、いずれも筒状部11によって規定され、このうちの外周面15cを規定する部位である環状鍔部16は、カップ30の開口縁をかしめ固定するための部位でもある。
【0037】
また、ホルダ10Aの外周面11aには、筒状部11の軸方向の一部を径方向外側に向かって張り出させることで形成された被固定部18が設けられている。当該被固定部18は、ガス発生器1Aをプリテンショナモジュールに組付ける際に使用される部位であり、プリテンショナモジュールに設けられた固定部によってこの被固定部18が軸方向に挟持されることにより、ガス発生器1Aがプリテンショナモジュールに組付けられる。なお、当該被固定部18のカップ30側の端部は、上述した環状鍔部16によって構成されている。
【0038】
図1に示すように、点火器20は、端子ピン22が隔壁部14に設けられた貫通孔14aを挿通するように、ホルダ10Aの第1凹部12が設けられた側の軸方向端面から当該第1凹部12内に挿入される。これにより、点火器20の基部23が第1凹部12内に収容されるとともに、端子ピン22が第2凹部13内に配置される。この状態において、ホルダ10Aの環状突部17の先端が点火器20の基部23側に向けてかしめられることにより、点火器20がホルダ10Aにかしめ固定される。
【0039】
ここで、ホルダ10Aの第1凹部12内には、予めOリング等からなるシール部材28が収容されており、当該シール部材28によってホルダ10Aと点火器20との間に生じる隙間が封止されている。より詳細には、シール部材28は、ホルダ10Aの筒状部11および隔壁部14と点火器20の基部23との間に介在しており、このシール部材28によって当該部分においてガス発生器1Aの内部が気密に封止されることになる。なお、シール部材28としては、十分な耐熱性および耐久性を有する部材を使用することが好ましく、たとえばエチレンプロピレンゴムの一種であるEPDM製の部材が好適に利用される。
【0040】
また、点火器20の点火部21と基部23の上部部分とには、予め有底略円筒状のカバー部材25が被せられており、ホルダ10Aの環状突部17は、このカバー部材25ごと点火器20をかしめ固定している。カバー部材25の底壁部25aには、点火器20の点火部21に収容された点火薬が燃焼することによって生じる高温の火炎をガス発生剤35に向けて噴出するための導火孔26が設けられている。なお、カバー部材25は、たとえばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼を含む鉄系材料等の金属材料からなる成形品にて構成される。
【0041】
カバー部材25は、点火器20の作動時において、スクイブカップの内圧が十分に高まる前にスクイブカップが破裂してしまうことを防止するためのものである。したがって、カバー部材25を設けることにより、点火薬を確実に高圧力下において燃焼させることが可能となり、その結果、点火薬の燃焼速度を速めてガス発生剤35の着火遅れを防止することが可能になる。
【0042】
一方、カップ30は、内部にガス発生剤35が装填された状態において、その開口縁がホルダ10Aの環状溝部15に軸方向に沿って挿入される。これによりカップ30の開口縁に設けられたフランジ部33が環状溝部15内に配置され、この状態においてホルダ10Aの環状鍔部16の先端がフランジ部33を覆うように内側に向けてかしめられることにより、カップ30がホルダ10Aにかしめ固定される。このかしめにより、ホルダ10Aとカップ30との間に生じる隙間が封止され、当該部分においてガス発生器1Aの内部が気密に封止されることになる。
【0043】
次に、図1を参照して、本実施の形態におけるガス発生器の作動時の動作について説明する。
【0044】
本実施の形態におけるガス発生器1Aが搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて点火器20が作動する。点火器20が作動することにより、点火部21に収容された点火薬が着火されて燃焼し、これによってスクイブカップが破裂する。
【0045】
点火薬が燃焼することで生じた火炎は、スクイブカップが破裂することによってカバー部材25の導火孔26を介してガス発生剤35が収容された収容空間34に向けて噴出する。この火炎により、ガス発生剤35が着火されて燃焼し、収容空間34において多量のガスが発生する。このガス発生剤35の燃焼により、収容空間34の内圧が急速に上昇し、これによりカップ30の底壁部32に設けられた脆弱部が開口し、発生した多量のガスがガス発生器1Aの外部へと導出されることになる。
【0046】
その後、ガス発生器1Aから導出された多量のガスは、プリテンショナモジュールの作動空間へと導かれることでプリテンショナモジュールを駆動し、これによりシートベルトが強く引き込まれることになる。
【0047】
図1および図2に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Aおよびこれに具備されるホルダ10Aにおいては、ホルダ10Aに設けられた環状溝部15が、ホルダ10Aのカップ30に面する側の軸方向端面(すなわち環状突部17の先端面)からカップ30に面しない側の軸方向端面に向けて軸方向に沿って所定の距離だけ後退した位置に設けられている。より詳細には、環状溝部15の底面15aが、ホルダ10Aの第1凹部12と第2凹部13とを仕切る隔壁部14を径方向に取り囲む部分にまで後退して設けられている。
【0048】
このように構成することにより、本実施の形態におけるガス発生器1Aおよびこれに具備されるホルダ10Aにおいては、ホルダ10Aの、環状溝部15が設けられた位置よりもカップ30に面する側の軸方向端面寄りの部分を無くすことにより、ホルダ10Aの小型軽量化が図られている。ここで、従来のガス発生器においては、上記特許文献1に開示される如く、環状溝部が軸方向に沿って隔壁部よりも上記軸方向端面側に配置されており、十分な小型軽量化が図られていない構成となっていた。
【0049】
また、上述したように、上記環状溝部15の外周面15cを規定する環状鍔部16は、ホルダ10Aの被固定部18の上端を規定する部分でもあるため、当該環状溝部15の配設位置を上記の位置にまで後退させることは、被固定部18の軸方向長さを短小化させることにもつながる。ここで、被固定部18の軸方向長さの短小化は、プリテンショナモジュールの小型軽量化にも寄与するため、被固定部18の軸方向長さは、その機械的強度が確保される範囲内においてより短いことが好ましい。したがって、本実施の形態におけるガス発生器1Aおよびこれに具備されるホルダ10Aの上述した構成は、ガス発生器の小型軽量化の観点のみならず、プリテンショナモジュールの小型軽量化の観点からも好ましいものである。
【0050】
しかしながら、上記構成を採用した場合には、従来のガス発生器に比べて、環状溝部15と第2凹部13との間の距離を狭める結果となり、当該部分におけるホルダ10Aの機械的強度の低下につながるおそれがある。ここで、従来のガス発生器においては、環状溝部と第2凹部との間の距離よりも第1凹部と第2凹部との間の距離が狭く、この第1凹部と第2凹部との間に位置する隔壁部の機械的強度がホルダの耐圧性能を決定していたが、上記構成を採用した場合には、ホルダ10Aの、環状溝部15と第2凹部13との間に位置する部分の機械的強度がホルダ10Aの耐圧性能を決定することになる。
【0051】
ここで、何ら耐圧性能の向上を図らずに、環状溝部の配設位置を上記の如くの位置に後退させた場合には、ガス発生器の作動時において耐圧性能の低下に伴ってホルダがより低い圧力で破損してしまうことになり、当該破損部分からガスが漏れ出してしまうといった問題や、さらにはホルダが破断することでホルダの破断部分がガスの圧力によってガス発生器から離脱してしまうおそれが生じる。
【0052】
そこで、本実施の形態におけるガス発生器1Aおよびこれに具備されるガス発生器用ホルダ10Aにおいては、以下において示す構成を採用することで上述した問題の解決を図っている。図3は、本実施の形態におけるガス発生器の図1に示す領域IIIの拡大模式断面図であり、(A)は、破断が生じていない状態を示す図であり、(B)は、破断が生じた直後の状態を示す図である。また、図4は、比較例に係るガス発生器の上記領域IIIに対応する部分の要部拡大模式断面図であり、(A)は、破断が生じていない状態を示す図であり、(B)は、破断が生じた直後の状態を示す図である。以下においては、これら図3および図4を参照して、その解決策について説明する。なお、図4に示す比較例に係るガス発生器は、上述した、何らの耐圧性能の向上を図らずに、環状溝部の配設位置を上記の如くの位置にまで後退させた構成のガス発生器である。
【0053】
図3(A)に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Aにおいては、ホルダ10Aに設けられた第2凹部13の底面13aと周面13bとの間に位置する角部13dが、隣接するこれら底面13aおよび周面13bのいずれにも連続する湾曲面13eにて構成されるとともに、ホルダ10Aに設けられた環状溝部15の底面15aと内周面15bとの間に位置する角部15dが、略直角に構成されている。
【0054】
これに対し、図4(A)に示すように、比較例に係るガス発生器1Xにおいては、ホルダ10Xに設けられた第2凹部13の底面13aと周面13bとの間に位置する角部13dおよびホルダ10Xに設けられた環状溝部15の底面15aと内周面15bとの間に位置する角部15dが、いずれも略直角に構成されている。
【0055】
その結果、本実施の形態におけるガス発生器1Aにおいては、これら角部13dおよび角部15dを結ぶ部分の最短経路における距離A(すなわち、当該部分におけるホルダ10Aの最小肉厚)が、比較例に係るガス発生器1Xのそれに比べて大きくなることになり、これにより当該部分における機械的強度が増すとともに、角部13dが曲成されることで応力の集中が緩和されて機械的強度が増すことになる。
【0056】
ここで、この角部13dを構成する湾曲面13eの形状としては、軸線を含む平面に沿ってホルダ10Aを切断した場合の切断面に沿ったこの湾曲面13eの曲率半径が、0.5mm以上となる形状とすることが好ましい。なお、従来のガス発生器においても、当該角部の上記切断面に沿った曲率半径が、加工上の理由から0.1mm〜0.3mm程度とされていたものが知られているが、本実施の形態における上記角部13dの湾曲形状は、これとは明確に区別される大きさのものである。
【0057】
したがって、上述した本実施の形態におけるガス発生器1Aおよびこれに具備されるホルダ10Aとすることにより、十分な小型化が図られることで車両等への搭載性に優れるとともに、十分な機械的強度を有することで高い耐圧性能とされたガス発生器およびこれに具備されるガス発生器用ホルダとすることができる。
【0058】
また、図3(B)に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Aにおいては、ホルダ10Aに破断が生じた場合に、破断面Bの第2凹部13側の起点B1が、第2凹部13を規定する周面13bよりも径方向において内側の位置に生じることになり、破断面Bの環状溝部15側の起点B2が、環状溝部15を規定する内周面15bに合致した位置に生じることになる。これは、角部13dが湾曲面13eにて構成されるとともに、角部15dが略直角に構成されていることに起因するものであり、破断面Bが上述した最短経路に沿って生じるためである。
【0059】
これに対し、図4(B)に示すように、比較例に係るガス発生器1Xにおいては、ホルダ10Xに破断が生じた場合に、破断面Bの起点B1が、第2凹部13を規定する周面13bと径方向において合致した位置に生じることになり、破断面Bの環状溝部15側の起点B2が、環状溝部15を規定する内周面15bに合致した位置に生じることになる。これは、角部13dおよび角部15dが、いずれも略直角に構成されていることに起因するものであり、破断面Bが上述した最短経路に沿って生じるためである。
【0060】
ホルダ10A,10Xが破断した後のガス発生器1A,1Xにおいては、ホルダ10A,10Xの破断部分(当該破断部分には、主として隔壁部14および環状突部17が含まれる)にガスの圧力が加わることになり、当該破断部分が図中矢印C方向に向かって押し出され、ガス発生器1A,1Xから離脱することになる。その際、破断面において剪断が生じることになるが、ホルダ10A,10Xの破断部分の進行方向(すなわち上記矢印C方向)における先端部の形状が先細り形状であり、当該破断部分の先端部に面する部分の非破断部分(当該非破断部分には、主として筒状部11および環状鍔部16が含まれる)の形状が上記矢印C方向に沿って絞られた形状であるため、破断部分と非破断部分とに相互に変形が生じながら破断部分が非破断部分から離脱する剪断破壊が生じることになる。
【0061】
ここで、上述したように、本実施の形態におけるガス発生器1Aにあっては、破断面Bの起点B1が第2凹部13の周面13bよりも内側に位置しているため、破断面Bの径方向に沿った長さEが、比較例に係るガス発生器1Xのそれと比較してより長くなることになり、破断部分が非破断部分から離脱する際の抵抗が増加することになる。換言すれば、本実施の形態におけるガス発生器1Aにあっては、図3(B)中において領域D1として示す部分が非破断部分に含まれることとなるため、比較例に係るガス発生器1Xと比較した場合に、当該領域D1が存在する分だけ、破断部分が非破断部分から離脱する際の抵抗が増加することになる。
【0062】
したがって、上述した本実施の形態におけるガス発生器1Aおよびこれに具備されるホルダ10Aとすることにより、十分な小型化が図られることで車両等への搭載性に優れるとともに、剪断破壊に対する高い耐圧性能を備えたガス発生器およびこれに具備されるガス発生器用ホルダとすることができる。
【0063】
なお、上述した破断面Bの径方向に沿った長さEは、可能な限り長いことが耐圧性能を向上させる上で好ましく、そのため、第2凹部13の周面13bは、少なくとも径方向において環状溝部15の内周面15bよりも内側に位置していることが好ましい。
【0064】
図5は、本実施の形態に基づいた変形例に係るガス発生器の上記領域IIIに対応する部分の要部拡大模式断面図であり、(A)は、破断が生じていない状態を示す図であり、(B)は、破断が生じた直後の状態を示す図である。次に、この図5を参照して、変形例に係るガス発生器およびこれに具備されるガス発生器用ホルダについて説明する。
【0065】
図5(A)に示すように、変形例に係るガス発生器1Bおよびガス発生器用ホルダ10Bは、上述した本実施の形態におけるガス発生器1Aおよびガス発生器用ホルダ10Aと、ホルダの環状溝部15の角部15dの形状においてのみ相違している。すなわち、変形例に係るガス発生器1Bおよびガス発生器用ホルダ10Bにおいては、ホルダ10Bに設けられた第2凹部13の底面13aと周面13bとの間に位置する角部13dが、隣接するこれら底面13aおよび周面13bのいずれにも連続する湾曲面13eにて構成されているのみならず、ホルダ10Bに設けられた環状溝部15の底面15aと内周面15bとの間に位置する角部15dが、隣接するこれら底面15aおよび内周面15bのいずれにも連続する湾曲面15eにて構成されている。
【0066】
そのため、本変形例に係るガス発生器1Bにおいては、これら角部13dおよび角部15dを結ぶ部分の最短経路における距離A(すなわち、当該部分におけるホルダ10Bの最小肉厚)が、上述した本実施の形態におけるガス発生器10Aのそれに比べてさらに大きくなることになり、これにより当該部分における機械的強度がさらに増すとともに、角部13dのみならず角部15dが曲成されることで応力の集中がさらに緩和されて機械的強度がさらに増すことになる。
【0067】
ここで、この角部15dを構成する湾曲面15eの形状としては、軸線を含む平面に沿ってホルダ10Bを切断した場合の切断面に沿ったこの湾曲面15eの曲率半径が、0.5mm以上となる形状とすることが好ましい。なお、従来のガス発生器においても、当該角部の上記切断面に沿った曲率半径が、加工上の理由から0.1mm〜0.3mm程度とされていたものが知られているが、本変形例における上記角部15dの湾曲形状は、これとは明確に区別される大きさのものである。
【0068】
したがって、上述した本変形例に係るガス発生器1Bおよびこれに具備されるホルダ10Bとすることにより、十分な小型化が図られることで車両等への搭載性に優れるとともに、十分な機械的強度を有することで高い耐圧性能とされたガス発生器およびこれに具備されるガス発生器用ホルダとすることができる。
【0069】
また、図5(B)に示すように、本変形例に係るガス発生器1Bにおいては、ホルダ10Aに破断が生じた場合に、破断面Bの第2凹部13側の起点B1が、第2凹部13を規定する周面13bよりも径方向において内側の位置に生じることになり、破断面Bの環状溝部15側の起点B2が、環状溝部15を規定する内周面15bよりも径方向において外側の位置に生じることになる。これは、角部13dが湾曲面13eにて構成されるとともに、角部15dが湾曲面15eに構成されていることに起因するものであり、破断面Bが上述した最短経路に沿って生じるためである。
【0070】
したがって、本変形例に係るガス発生器1Bにあっては、破断面Bの径方向に沿った長さEが、上述した本実施の形態におけるガス発生器1Aのそれと比較してより長くなることになり、破断部分が非破断部分から離脱する際の抵抗がさらに増加することになる。換言すれば、本変形例に係るガス発生器1Bにあっては、図5(B)中において領域D1として示す部分のみならず領域D2として示す部分が非破断部分に含まれることとなるため、上述した本実施の形態におけるガス発生器1Aと比較した場合に、当該領域D2が存在する分だけ、破断部分が非破断部分から離脱する際の抵抗が増加することになる。
【0071】
したがって、上述した本変形例に係るガス発生器1Bおよびこれに具備されるホルダ10Bとすることにより、十分な小型化が図られることで車両等への搭載性に優れるとともに、剪断破壊に対する高い耐圧性能を備えたガス発生器およびこれに具備されるガス発生器用ホルダとすることができる。
【0072】
以下においては、上述した比較例に係るガス発生器を実際に製作するとともに、上述した本発明の実施の形態におけるガス発生器および変形例に係るガス発生器をそれぞれ実施例1および実施例2として実際に製作し、これらを作動させることで意図的にホルダを剪断破壊させてその破壊圧を実測することで、本発明の効果を検証した検証試験について説明する。図6は、比較例および実施例1,2に係るガス発生器の耐圧性能を検証した検証試験の結果を示す表である。また、図7ないし図9は、それぞれ比較例および実施例1,2に係るガス発生器用ホルダの剪断破壊後の写真である。
【0073】
比較例においては、アルミニウム合金を材料として図4に示す形状のホルダ10Xを製作し、これを用いてガス発生器1Xを5サンプル製作した。ここで、図4に示す角部13dおよび角部15dの形状は、基本的には図示するように略直角であるが、これら角部13dおよび角部15dは、加工上の理由により、厳密な意味において曲率半径がR=0.15mmの湾曲面を含んでいる。
【0074】
実施例1においては、アルミニウム合金を材料として図2および図3に示す形状のホルダ10Aを製作し、これを用いて図1および図3に示す構造のガス発生器1Aを5サンプル製作した。ここで、図1および図3に示す角部13dを構成する湾曲面13eの曲率半径は、R=0.65mmとした。なお、図1および図3に示す角部15dの形状は、基本的には図示するように略直角であるが、当該角部15dは、加工上の理由により、厳密な意味において曲率半径がR=0.15mmの湾曲面を含んでいる。
【0075】
実施例2においては、アルミニウム合金を材料として図5に示す形状のホルダ10Bを製作し、これを用いてガス発生器1Bを5サンプル製作した。ここで、図5に示す角部13dおよび角部15dを構成する湾曲面13eおよび湾曲面15eの曲率半径は、いずれもR=0.65mmとした。
【0076】
なお、比較例および実施例1,2に係るガス発生器の構造上の相違点は、上述した2つの角部13d,15dの形状のみであり、他の部分の構造は、すべて共通のものとした。
【0077】
これら比較例および実施例1,2に係るガス発生器のカップの内部に無煙火薬を主成分としたガス発生剤を1500mg充填し、これらガス発生器を3.5ccの内容量を有する気密タンクにセットした。なお、気密タンクには、内圧(気密タンク内の圧力)を測定可能な圧力センサを設置した。そして、点火器を作動させることで比較例および実施例1,2に係るガス発生器を作動させ、その際の気密タンクの内圧の最大値を圧力センサにて計測することにより、ホルダが剪断破壊する破壊圧を確認した。
【0078】
図6に示すように、比較例においては、ホルダが剪断破壊した破壊圧の平均値が177.9MPaであったのに対し、実施例1においては、ホルダが剪断破壊した破壊圧の平均値が188.7MPaに向上し、実施例2においては、ホルダが剪断破壊した破壊圧の平均値が199.1MPaにさらに向上した。当該結果に基づけば、比較例における耐圧性能を基準とした場合に、実施例1において耐圧性能が約6%向上したことになり、実施例2において約12%向上したことになる。
【0079】
これらの結果から、本発明によれば、確実に耐圧性能を従来に比して向上させることができることが確認された。
【0080】
なお、図7ないし図9に示すように、剪断破壊後のホルダ10A〜10Cを観察した結果、比較例および実施例1,2のいずれにおいても、第2凹部13の上記角部13dと環状溝部15の角部15dとの間において破断が生じていることが確認されるとともに、破断面と第2凹部13の周面13bとが連続する部分の近傍において、剪断による変形の痕跡Fが生じていることが確認された。ここで、剪断による変形の痕跡Fが生じている範囲は、比較例に比べて実施例1において、また実施例1に比べて実施例2において、それぞれその軸方向長さが長くなっており、比較例および実施例1,2のうち、実施例2において第2凹部13の底面13aがあった位置から最も遠い位置にまで痕跡Fが生じていることが確認された。このことは、比較例に比べて実施例1において、また実施例1に比べて実施例2において、破断部分が非破断部分から離脱するためにより大きな力が必要となった(すなわち、より大きな抵抗が生じていた)ことを示している。
【0081】
今回開示した上記一実施の形態およびその変形例ならびに実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0082】
1A,1B,1X ガス発生器、10A,10B,10X ホルダ、11 筒状部、11a 外周面、12 第1凹部、12a 底面、12b 周面、13 第2凹部、13a 底面、13b 周面、13d 角部、13e 湾曲面、13f 係合溝、14 隔壁部、14a 貫通孔、15 環状溝部、15a 底面、15b 内周面、15c 外周面、15d 角部、15e 湾曲面、16 環状鍔部、17 環状突部、18 被固定部、20 点火器、21 点火部、22 端子ピン、23 基部、25 カバー部材、25a 底壁部、26 導火孔、28 シール部材、30 カップ、31 側壁部、32 底壁部、33 フランジ部、34 収容空間、35 ガス発生剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼することでガスを発生するガス発生剤が装填された有底略円筒状のカップと、
作動時において着火することで前記ガス発生剤を燃焼させる点火薬が収容された点火部および前記点火薬を着火させるために前記点火部に接続された端子ピンを含む点火器と、
前記カップの開口端を閉塞するように同軸上に前記カップに組付けられるとともに、前記点火部が前記ガス発生剤に面するように前記点火器を保持してなる略円柱状のホルダとを備え、
前記ホルダは、前記カップに面する側の軸方向端面に設けられ、前記点火器を受け入れ保持する第1凹部と、前記カップに面しない側の軸方向端面に設けられ、前記端子ピンが配置されるとともに当該端子ピンを介した前記点火器の外部接続のためのコネクタを受け入れ保持するための第2凹部と、前記第1凹部の底面と前記第2凹部の底面とを規定することで前記第1凹部と前記第2凹部とを仕切る隔壁部と、外周面に設けられ、軸方向に沿って挿入された前記カップの開口縁を受け入れ保持する環状溝部とを有し、
前記環状溝部の底面は、前記ホルダの前記隔壁部を径方向に取り囲む部分に設けられ、
前記第2凹部の底面と前記第2凹部の周面との間に位置する角部が、隣接するこれら面のいずれにも連続する湾曲面にて構成されている、ガス発生器。
【請求項2】
軸線を含む平面に沿って前記ホルダを切断した場合の切断面に沿った前記湾曲面の曲率半径が、0.5mm以上である、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記第2凹部の周面が、径方向において前記環状溝部の内周面よりも内側に位置している、請求項1または2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記環状溝部の底面と前記環状溝部の内周面との間に位置する角部が、隣接するこれら面のいずれにも連続する湾曲面にて構成されている、請求項1から3のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項5】
前記カップの開口縁には、外側に向かって延びるフランジ部が設けられ、
前記環状溝部の外周面を規定する部分である環状鍔部が前記フランジ部を覆うように内側に向けてかしめられることにより、前記カップの開口縁が、前記環状溝部によって受け入れ保持されている、請求項1から4のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項6】
ガス発生剤を燃焼させるための点火器を保持するとともにガス発生剤が装填された有底略円筒状のカップが組付けられて使用される略円柱状のガス発生器用ホルダであって、
カップが組付けられる側の軸方向端面に設けられ、点火器を受け入れ保持するための第1凹部と、
カップが組付けられない側の軸方向端面に設けられ、点火器の端子ピンが配置されるとともに端子ピンを介した点火器の外部接続のためのコネクタを受け入れ保持するための第2凹部と、
前記第1凹部の底面と前記第2凹部の底面とを規定することで前記第1凹部と前記第2凹部とを仕切る隔壁部と、
外周面に設けられ、軸方向に沿って挿入されるカップの開口縁を受け入れ保持するための環状溝部とを有し、
前記環状溝部の底面は、前記隔壁部を径方向に取り囲む部分に設けられ、
前記第2凹部の底面と前記第2凹部の周面との間に位置する角部が、隣接するこれら面のいずれにも連続する湾曲面にて構成されている、ガス発生器用ホルダ。
【請求項7】
軸線を含む平面に沿って切断した場合の切断面に沿った前記湾曲面の曲率半径が、0.5mm以上である、請求項6に記載のガス発生器用ホルダ。
【請求項8】
前記第2凹部の周面が、径方向において前記環状溝部の内周面よりも内側に位置している、請求項6または7に記載のガス発生器用ホルダ。
【請求項9】
前記環状溝部の底面と前記環状溝部の内周面との間に位置する角部が、隣接するこれら面のいずれにも連続する湾曲面にて構成されている、請求項6から8のいずれかに記載のガス発生器用ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−91110(P2012−91110A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240481(P2010−240481)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】