説明

ガス発生器用フィルター及びガス発生器

【課題】製造工程が容易で製造コストを抑えることができ、十分なガス冷却性能及びスラグ捕集性能を確実に有するとともに発生ガスの圧力調整性能を有するガス発生器用フィルター及びガス発生器を得る。
【解決手段】ガス発生器用フィルター10は、筒状の第1のフィルター層11と、第1のフィルター層11の外周に、第1のフィルター層11と同心となるように設けられている筒状の第2のフィルター層12とを備えている。そして、第1のフィルター層11の一端部と第2のフィルター層12の一端部とが、一体化しているとともに、第1のフィルター層11と第2のフィルター層12との間に、第1のフィルター層11と同心の筒形状の空間層13が形成されている。本発明のガス発生器は、ガス発生器用フィルター10と同構成のガス発生器用フィルターを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ等を膨張させるガス発生器に使用されるガス発生器用フィルター及びガス発生器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス発生器は、自動車の衝突を検知すると、ガス発生剤を点火し爆発的に燃焼して高温ガスを発生し、エアバッグを膨らませるもので、このガス発生器に備えられたフィルターは、発生した高温ガスを冷却し、高温ガスからスラグを除去するために使用されるものである。このガス発生器用フィルターとして、例えば、下記特許文献に開示されているものが知られている。特許文献1に開示されているフィルターは、螺旋状に巻かれた線材の断面積が0.03〜0.8mmからなり、径方向上下に重なる線材同士のピッチ角が相互に対称である第1層と、この第1層の径方向外側に存在し、第1層を形成する線材よりも細い線材を用いて、濾過粒度が第1層より細かく形成された第2層とを含んで構成されたものである。特許文献2に開示されているフィルターは、一本の線材を芯金に巻き付けながら形成するもので、一本の線材から形成されているため、製造工程が煩雑でなく製造コストを抑えることができるとともに、各種車両の特性に応じたフィルターに作成して、エアバッグの展開速度を調節することができる。また、特許文献3に開示されているフィルターは、内層材と、外層材とを同軸状に組み合わせたものであり、2層によって優れた冷却性能を有する。
【特許文献1】特開2005−193762号公報
【特許文献2】特開2001−171472号公報
【特許文献3】特開2001−301561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1、3のフィルターにおける2層のそれぞれは、異なるものを用いているため、一体形成ができず、製造コストを抑えにくい場合があった。また、上記特許文献2のフィルターは、全層同じ張力を負荷しながら巻き付けた同一層からなっているので、十分なガス冷却性能およびスラグ捕集効果と、発生ガスの圧力調整性能とを全て十分に満たすことは困難な場合があった。
【0004】
そこで、本発明は、製造工程が容易で製造コストを抑えることができ、十分なガス冷却性能及びスラグ捕集性能を確実に有するとともに発生ガスの圧力調整性能を有するガス発生器用フィルター及びガス発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0005】
(1) 本発明のガス発生器用フィルターは、筒状の第1のフィルター層と、前記第1のフィルター層の外周に、前記第1のフィルター層と同心となるように設けられている筒状の第2のフィルター層とを備え、前記第1のフィルター層の一端部と前記第2のフィルター層の一端部とが、一体化しているとともに、前記第1のフィルター層と前記第2のフィルター層との間に、前記第1のフィルター層と同心の筒形状の空間層が形成されているものである。
【0006】
上記(1)のガス発生器用フィルターをガス発生器の部品として用い、該ガス発生器を作動させた際には、空間層においてガスの流れが変わり、一旦、前記空間層においてガスを混合することができるので、前記空間層外側の第2のフィルター層においてガス中のスラグをより捉えることができる。その結果として、十分なガス冷却性能及びスラグ捕集性能を確実に有するとともに発生ガスの圧力調整性能を有するガス発生器用フィルターを提供できる。
【0007】
(2) 上記(1)のガス発生器用フィルターにおいては、前記第1のフィルター層と前記第2のフィルター層とが、1本の金属線材を巻き回して形成されたものであることが好ましい。
【0008】
(3) 別の観点として、上記(1)のガス発生器用フィルターにおいては、前記第1のフィルター層と前記第2のフィルター層とが、メッシュ状金属材料で形成されたものであってもよい。
【0009】
上記(2)又は(3)の構成によれば、簡易な構成で、確実に上記(1)のガス発生器用フィルターの効果を奏することができる。
【0010】
(4) 上記(2)又は(3)のガス発生器用フィルターにおいては、前記第1のフィルター層の密度が2.0×10−3kg/cm〜4.0×10−3kg/cmであり、前記第2のフィルター層の密度が0.5×10−3kg/cm〜3.0×10−3kg/cmであり、前記第1のフィルター層の密度が、前記第2のフィルター層の密度よりも高いものであることが好ましい。
【0011】
(5) 別の観点として、上記(2)のガス発生器用フィルターは、前記第1のフィルター層において、前記金属線材を巻き回す張力が29〜50Nであり、前記第2のフィルター層において、前記金属線材を巻き回す張力が9〜40Nとなっているものであってもよい。
【0012】
上記(4)又は(5)の構成によれば、エアバッグ用のガス発生器の部品として用いられ、ガス発生器が作動した際には、第2層よりも密度の高い第1層において、十分なスラグ捕集効果が得られるとともに、初期において、フィルター内室で熱がこもりやすくなり、フィルター内側において短時間でより高い圧力を発生させやすいものとすることができる。そして、第1層よりも密度の低い第2層において、その後、フィルター外側へ放出される発生ガスの冷却効果をさらに向上させることができるとともに、フィルター内部で発生したガスの圧力を調整して、ガス速度を緩やかにすることができるので、エアバッグを適正な速度で展開させることができる。また、上記のようにフィルターの層密度が異なるので、スラグ捕集の際に粒子サイズ等の異なる種類のスラグを効率良く回収することができ、フィルター内での燃焼ガス圧力幅をより広げやすいものとすることができる。さらに、一本の金属線材を巻き回して形成されているため、製造が容易で製造コストを抑えることができる。以上より、一定の容積内において十分なスラグ捕集性能及びガス冷却性能を有するとともに発生ガス圧力調整性能を有する、製造容易なガス発生器用フィルターを提供することができる。
【0013】
(7) 本発明のガス発生器用フィルターにおいては、前記空間層に、筒状部材が嵌入されていることが好ましい。ここで、前記筒状部材は、孔を複数有したものであってもよい。
【0014】
上記(7)の構成によれば、筒状部材の高さを適宜選択することで、発生したガスの圧力制御を行うことが可能である。また、筒状部材が孔を複数有したものであれば、フィルター内部側で発生したガス中の塵を衝突させることができるとともに、孔の大きさを選択することで所望する量のガスを通過させることもできるので、集塵機能及び発生したガスの圧力制御機能を同時に向上できる。
【0015】
(8) 本発明のガス発生器は、ガス放出孔を有するハウジングと、前記ハウジング内に形成され、燃焼により高温ガスを発生するガス発生剤が装填されている燃焼室と、点火薬を内包しており、前記ハウジング内に装着され、前記燃焼室内のガス発生剤を着火燃焼させるガス発生剤点火手段とを備えたガス発生器であって、前記ハウジングの内周に周方向にわたって、(1)〜(7)のいずれか1に記載のフィルターをさらに備えているものである。
【0016】
上記(8)の構成によれば、一定の容積内において、十分なスラグ捕集性能及びガス冷却性能を有するとともに発生ガス圧力調整性能を有するガス発生器用フィルターを備えているので、十分なスラグ捕集性能及びガス冷却性能を有するとともにエアバッグを適正な速度で展開させることができるガス発生器を提供することができる。また、製造が容易なフィルターを備えているため、ガス発生器の製造自体も容易となり製造コストを抑えることができる。
【0017】
(9) 本発明のガス発生器においては、前記ハウジング内壁に沿って形成されているとともに、前記空間層に少なくとも一部が嵌入され、前記ガス発生器用フィルターを保持する保持部材を備えていることが好ましい。ここで、前記保持部材においては、前記空間層に嵌入された部分が、孔を有しているものであってもよい。
【0018】
上記(9)の構成によれば、ハウジング内において、ガス発生器用フィルターを容易且つ確実に保持することができる。また、前記保持部材のうち前記空間層に嵌入された部分が、孔を有しているものである場合には、フィルター内部側で発生したガス中の塵を衝突させることができるとともに、孔の大きさを選択することで所望する量のガスを通過させることもできるので、集塵機能及び発生したガスの圧力制御機能を同時に向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係るガス発生器用フィルターについて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るガス発生器用フィルターの断面図である。
【0020】
図1において、ガス発生器用フィルター10は、筒状の第1のフィルター層11と、第1のフィルター層11の外周に、第1のフィルター層11と同心となるように設けられている筒状の第2のフィルター層12とを備えている。そして、第1のフィルター層11の一端部と第2のフィルター層12の一端部とが、一体化しているとともに、第1のフィルター層11と第2のフィルター層12との間に、筒形状の空間層13が形成されている。
【0021】
第1のフィルター層11及び第2のフィルター層12は、1本の金属線材を筒状に巻き回して形成された中空円筒状のものである。なお、第1のフィルター層11の内部空間には、ガス発生器用フィルター10が図示しないガス発生器の部品として用いられた際、ガス発生剤等が装填される。また、上述の金属線材には、例えば鉄又は銅などが用いられる。これら第1のフィルター層11及び第2のフィルター層12の製造方法としては、以下の例が挙げられる。すなわち、一本の心材に金属線材を巻きつけ第1のフィルター層11を形成す。その後、第1のフィルター層11における一端の所定部分を残して、内壁に第1のフィルター層11表面が接触するように円筒部材を装着する。そして、第1のフィルター層11における一端の所定部分に前記金属線材を巻き続けた後、円筒部材の外周部にさらに前記金属線材を巻き続ける。そして、前記心材及び前記円筒部材を抜いた後に焼結処理を行い、形状を固定する。なお、前記心材及び前記円筒部材を抜く前に焼結処理を行ってもよい。
【0022】
第1のフィルター層11は、第1のフィルター層11は金属線材を29N〜50Nの張力で巻き回して形成されたものであり、密度が2.0×10−3kg/cm〜4.0×10−3kg/cmとなっているものである。ここで、張力は、29N〜50Nの範囲で、一定でも、適宜変化してもよい。
【0023】
第2のフィルター層12は、金属線材を9N〜40Nの張力で巻き回して形成されたものであり、密度が0.5×10−3kg/cm〜3.0×10−3kg/cmとなっているものである。ここで、張力は、9N〜40Nの範囲で、一定でも、適宜変化してもよい。
【0024】
ここで、第1のフィルター層11及び第2のフィルター層12の一変形例として、それぞれの密度が、2.0×10−3kg/cm〜4.0×10−3kg/cm、0.5×10−3kg/cm〜3.0×10−3kg/cmのメッシュ状金属材料で形成されたものが挙げられる。
【0025】
本実施形態によれば、ガス発生器用フィルター10をガス発生器の部品として用い、該ガス発生器を作動させた際には、筒状の空間層13において、ガス発生器用フィルター10内部で発生したガスの流れを持たせることができるので、第2のフィルター層12においてガス中のスラグをより捉えることができる。その結果として、スラグ回収量を向上させることができる。また、エアバッグ用のガス発生器の部品として用いられ、ガス発生器が作動した際には、第1のフィルター層11において十分なスラグ捕集効果が得られ、さらに、第2のフィルター層12においてガス発生器用フィルター10内部で発生したガスの圧力を調整し、エアバッグを適正な速度で展開させることができる。また、一本の金属線材を巻き回して形成されていることから、製造が容易で製造コストを抑えることができる。従って、一定の容積内において十分なスラグ捕集性能及びガス冷却性能を有するとともに発生ガス圧力調整性能を有する、製造容易なガス発生器用フィルター10を提供することができる。
【0026】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るガス発生器用フィルターについて説明する。図2は、本発明の第2実施形態に係るガス発生器用フィルターの空間層に嵌入される筒状部材の斜視図である。
【0027】
本実施形態に係るガス発生器用フィルターは、上記第1実施形態と同様のガス発生器用フィルター(図示せず)の空間層に、該空間層と孔を複数有する筒状部材21が嵌入されているものである(図2参照)。筒状部材21は、銅、鉄などの金属材料で形成されている。ここで、筒状部材21の変形例としては、(1)孔がないもので適宜高さが調整されているもの(例えば、空間層の半分の高さに調整されているもの)、(2)空間層全体を埋めているようなものであって、高さ方向に半分の高さの位置までだけ、複数の孔が形成されているもの、など様々な形態のものが挙げられる。また、孔径を適宜変化させても良いし、孔数を適宜変化させてもよい。
【0028】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果と同様の効果を奏するだけでなく、筒状部材の高さを適宜選択することで、発生したガスの圧力制御を行うことが可能である。また、筒状部材が孔を複数有したものであれば、フィルター内部側で発生したガス中の塵を衝突させることができるとともに、孔の大きさを選択することで所望する量のガスを通過させることもできるので、集塵機能及び発生したガスの圧力制御機能を同時に向上できる。
【0029】
<第3実施形態>
次に、本発明の第1実施形態に係るガス発生器用フィルターと同様の構成のガス発生器用フィルターを用いたガス発生器の実施形態について説明する。図3は、本発明の第3実施形態に係るガス発生器の断面図である。なお、第1実施形態のガス発生器用フィルター10における符号11〜13がふられている各部と、本実施形態のガス発生器用フィルター40における符号41〜43がふられている各部は、順に同様のものであるので、説明を省略することがある。
【0030】
図3において、ガス発生器100は、短円筒状のハウジング31と、燃焼により高温ガスを発生するガス発生剤32の外周部に長手方向に沿って配設された円筒状のガス発生器用フィルター40と、ガス発生剤32を着火燃焼させるもととなる火炎を発生する点火器34と、点火器34で発生した火炎のエネルギーを増幅する伝火剤35を収容する収容容器36と、フィルターを保持するための保持部材37、38と、クッション材39とを有している。そして、点火器34と、伝火剤35と、収容容器36との構成で、ガス発生剤32の点火手段としての機能を有している。
【0031】
ハウジング31は、点火器34及び収容容器36をそれぞれ所定箇所においてかしめ固定している有底部材31aと、有底部材31aの蓋となっている蓋部材31bとを有している。
【0032】
蓋部材31bは、ガス放出孔44を複数有する筒状部と、この筒状部の一端に設けられた底状部とを有し、その開口部側において拡径し、フランジ形状を成している。また、有底部材31aは、同じく筒状部と底状部とを有するものであり、底状部中心には、点火器34が嵌合配置されるためのホルダ部31cが設けられている。また、有底部材31aと蓋部材31bとは、有底部材31aの開口部が蓋部材31bの開口部の入り口付近でかみ合って、溶接などの手段によって固定部48において互いに固定されている。ここで、有底部材31a及び蓋部材31bの材質としては、鉄、ステンレス、アルミニウム、鋼材等の金属製のものが挙げられる。
【0033】
上述したように、蓋部材31bの筒状部には、ガス発生剤32の燃焼により発生したガスを放出するためのガス放出孔44が複数個設けられている。これらのような複数のガス放出孔44を設けることによって、ガス発生器100内部から放出される高温ガスを安定してエアバッグ内等の目的の箇所へ供給することができる。ガス放出孔44は、切削、あるいはプレス成型等の工程で作製される。ガス放出孔44の形状は製造のしやすさの観点から、円形であることが好ましい。また、このガス放出孔44の内部側には、シール部材49が貼付されている。ここで、一変形例として、シール部材49は、ガス放出孔44の外側に貼付されていてもよい。
【0034】
保持部材37、38は、ガス発生器用フィルター40の両端に設けられている。詳細に説明すると、保持部材37は、ガス発生器用フィルター40をその内周から保持しており、保持部材38においては、リング状端縁部をガス発生器用フィルター40の空間層43に嵌入することにより、ガス発生器用フィルター40を保持している。ここで、保持部材38の変形例としては、前記リング状端縁部を、(1)全体にわたって複数の孔を形成した筒状部とする、(2)孔がないもので適宜高さが調整されている筒状部(例えば、空間層の半分の高さに調整されているもの)とする、(3)空間層全体を埋めているようなものであって、高さ方向に半分の高さの位置までだけ、複数の孔を形成したものとする、など様々なものが挙げられる。また、孔径を適宜変化させても良いし、孔数を適宜変化させてもよい。
【0035】
クッション材39は、保持部材37の内側に設けられており、ガス発生剤32が装填された燃焼室45の一端を閉塞しているものである。また、クッション材39は、ガス発生剤32を保持するように配設され、ガス発生剤32の振動による粉状化を抑止するものである。
【0036】
収容容器36は、側筒部に複数の孔36aを有するとともに、開口部にフランジ36bを有している。孔36aの外側にはシール部材46が貼付されている。ここで、一変形例として、シール部材46は、孔36aの内側に貼付されていてもよい。また、収容容器36においては、フランジ36bが有底部材31aに形成されている突起部31dによってかしめ固定されている。この収容容器36には、鉄などの比較的固く、熱に強いとされる金属材料が用いられている。
【0037】
点火器34は、ゴム等の材料で構成されるOリング47を介して、有底部材31aにカシメ等の方法により固定される。この時、点火器34と有底部材31aとの界面は、Oリング47によりシール性を有する構造となる。ここで、点火器34は、その内部にセンサからの通電による電気エネルギーを、内部に含まれる火薬の燃焼エネルギーに変換する役割を持つものであるが、その外部の大半はモールドにより熱可塑性樹脂等で覆われ、電気的に絶縁されている。
【0038】
次に、ガス発生器100の作動を説明する。衝突センサが自動車の衝突を検出すると、ガス発生器100の点火器34に信号を送り、点火器34内で点火薬(図示せず)を発火させることによって、ガス及び火炎を発生させる。点火器34のガス及び火炎は収容容器36内に噴出し、伝火剤35を効率よく着火燃焼させる。そして、着火した伝火剤35から発生する火炎が、シール部材46を破り、孔36aを介して、ガス発生剤32に向けて噴出され、ガス発生剤32を着火燃焼させることで、高温ガスを効率よく発生させる。
【0039】
発生した高温高圧のガスはガス発生器用フィルター40内に流入し、スラグ捕集及びガス冷却がされる。特に、第1のフィルター層41においてスラグが捕集されるとともに、第2のフィルター層42の空間層43側においてさらにスラグが捕集されるるとともに、ガス速度が適正に調整され、ガス発生器用フィルター40を通過する。そして、ガス発生剤32の燃焼が進み、ハウジング31内全体が所定圧力に達すると、各ガス放出孔44を閉塞しているシール部材49が破裂し、各ガス放出孔44からエアバッグ(図示しない)に放出され、エアバッグを急速に膨張展開させる。
【0040】
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同構成のガス発生器用フィルター40を備えているので、十分なスラグ捕集性能、ガス冷却性能、及び、ガス圧力調整機能を向上できるとともにエアバッグを適正な速度で展開させることができるガス発生器100を提供できる。また、製造が容易なガス発生器用フィルター40を備えているため、ガス発生器100の製造自体も容易となり製造コストを抑えることができる。また、保持部材38のうち空間層43に嵌入された部分が、孔を有しているものである場合には、ガス発生器用フィルター40内部側で発生したガス中の塵を衝突させることができるとともに、孔の大きさを選択することで所望する量のガスを通過させることもできるので、集塵機能及び発生したガスの圧力制御機能を同時に向上できる。
【0041】
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第1実施形態の一変形例として、図4に示すようなガス発生器用フィルター50とすることもできる。すなわち、第2のフィルター層52の外周に、筒状の第3のフィルター層54が設けられていてもよい。この第3のフィルター層54も、第1実施形態と同様に、一本の金属線材を巻き回して形成されたものであってもよいし、メッシュ状金属材料で形成されたものであってもよい。このとき、第3のフィルター層54は、第1のフィルター層51及び第2のフィルター層52と異なる密度とすることによって、スラグ濾過性能及びガス圧力調整機能を向上できる。なお、第1実施形態におけるガス発生器用フィルター10における符号11〜13がふられている各部と、本実施形態において符号51〜53がふられている各部は、順に同様のものであるので、説明を省略する。
【0042】
他の変形例として、上記変形例のガス発生器用フィルター50における第1のフィルター層51の内周にも、上記変形例と同様の方法で形成された筒状のフィルター層が設けられていてもよいし、第1のフィルター層51の内周にのみ筒状のフィルター層(図示せず)が設けられていてもよい。これらによっても、ガス発生器用フィルターのスラグ濾過性能及びガス圧力調整機能を向上できる。
【0043】
また、第3実施形態のガス発生器用フィルター40の代わりに、上記第2実施形態のガス発生器用フィルターを用いてもよいし、図4に示したガス発生器用フィルター50を用いてもよい。
【0044】
また、各実施形態のガス発生器用フィルターは、(1)第2のフィルター層のどちらか一方の端部同士で一体化されており、第2のフィルターの外周側に連なって形成された3つ目以上のフィルター層、(2)第1実施形態の空間層13と同様に、各フィルター層間に形成された第1のフィルター層と同心の複数の筒形状空間層、を備えているものであってもよい。また、各筒形状空間層のサイズに合わせた図2に示す筒状部材21と同様の部材が、必要に応じて、各筒形状空間層に嵌入されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガス発生器用フィルターの断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るガス発生器用フィルターの空間層に嵌入される筒状部材の斜視図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係るガス発生器の断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の変形例に係るガス発生器用フィルターの断面図である。
【符号の説明】
【0046】
10、40、50 ガス発生器用フィルター
11、41、51 第1のフィルター層
12、42、52 第2のフィルター層
13、43、53 空間層
21 筒状部材
31 ハウジング
31a 有底部材
31b 蓋部材
31c ホルダ部
31d 突起部
32 ガス発生剤
34 点火器
35 伝火剤
36 収容容器
36a 孔
36b フランジ
37、38 保持部材
39 クッション材
44 ガス放出孔
45 燃焼室
46、49 シール部材
47 O−リング
48 固定部
54 第3のフィルター層
100 ガス発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の第1のフィルター層と、
前記第1のフィルター層の外周に、前記第1のフィルター層と同心となるように設けられている筒状の第2のフィルター層とを備え、
前記第1のフィルター層の一端部と前記第2のフィルター層の一端部とが、一体化しているとともに、
前記第1のフィルター層と前記第2のフィルター層との間に、前記第1のフィルター層と同心の筒形状の空間層が形成されていることを特徴とするガス発生器用フィルター。
【請求項2】
前記第1のフィルター層と前記第2のフィルター層とが、1本の金属線材を巻き回して形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のガス発生器用フィルター。
【請求項3】
前記第1のフィルター層と前記第2のフィルター層とが、メッシュ状金属材料で形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のガス発生器用フィルター。
【請求項4】
前記第1のフィルター層の密度が2.0×10−3kg/cm〜4.0×10−3kg/cmであり、前記第2のフィルター層の密度が0.5×10−3kg/cm〜3.0×10−3kg/cmであり、
前記第1のフィルター層の密度が、前記第2のフィルター層の密度よりも高いものであることを特徴とする請求項2又は3に記載のガス発生器用フィルター。
【請求項5】
前記第1のフィルター層において、前記金属線材を巻き回す張力が29〜50Nであり、
前記第2のフィルター層において、前記金属線材を巻き回す張力が9〜40Nであることを特徴とする請求項2に記載のガス発生器用フィルター。
【請求項6】
前記空間層に、筒状部材が嵌入されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス発生器用フィルター。
【請求項7】
前記筒状部材が、孔を複数有したものであることを特徴とする請求項6に記載のガス発生器用フィルター。
【請求項8】
ガス放出孔を有するハウジングと、
前記ハウジング内に形成され、燃焼により高温ガスを発生するガス発生剤が装填されている燃焼室と、
点火薬を内包しており、前記ハウジング内に装着され、前記燃焼室内のガス発生剤を着火燃焼させるガス発生剤点火手段とを備えたガス発生器であって、
前記ハウジングの内周に周方向にわたって、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガス発生器用フィルターをさらに備えていることを特徴とするガス発生器。
【請求項9】
前記ハウジング内壁に沿って形成されているとともに、前記空間層に少なくとも一部が嵌入され、前記ガス発生器用フィルターを保持する保持部材を備えていることを特徴とする請求項8に記載のガス発生器。
【請求項10】
前記保持部材のうち前記空間層に嵌入された部分が、孔を有していることを特徴とする請求項9に記載のガス発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−101751(P2009−101751A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273333(P2007−273333)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】