説明

ガス絶縁遮断器

【課題】簡単な構造で、絶縁ガスを放出する排気絶縁筒を筒状端部金具の端部に押圧固定でき、遮断性能を低下させる恐れのないガス絶縁遮断器を提供する。
【解決手段】絶縁ガス4を充填する容器1内に遮断部3を配置して構成するガス絶縁遮断器であり、遮断部3は固定及び可動主接触子5、6と、固定及び可動側のアーク接触子7、8と、絶縁ガスを吹き付けるノズル6とを有している。固定主接触子5や固定のアーク接触子7を支持する筒状端部金具13に排気絶縁筒14を設けている。排気絶縁筒14は、筒状端部金具13の絶縁ガス排気側の端部に挿入して支持させ、しかも筒状端部金具13の内面の複数個所に着脱自在に配置する保持部材15にて押圧固定してり、絶縁ガスは筒状端部金具13と排気絶縁筒14を経て容器1内の所定個所に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス絶縁遮断器に係り、特に電流遮断時に消弧性ガスを遮断部へ吹き付けによって発生する高温ガスを排出するのに好適な排気絶縁筒を備えるガス絶縁遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁遮断器は、金属製の容器内に固定及び可動主接触子やその他の部品にて構成する遮断部を配置すると共に、絶縁性能や消弧性能の良好なSF6等の絶縁ガスが充填しており、遮断部で電流遮断の際に発生するアークを、絶縁ガスで消弧するようにしている。
【0003】
例えばパッファ形のガス絶縁遮断器の場合には、絶縁ガスを充填する容器内に配置する遮断部は、良く知られているように通電導体に連なる固定及び可動主接触子と、固定側及び可動側のアーク接触子と、遮断時に動作して絶縁ガスを圧縮するパッファシリンダ及びピストンと、圧縮された絶縁ガスをアーク接触子部分に吹き付けてアークを消弧する絶縁ノズルとを含んで構成している。
【0004】
操作器の動作で可動主接触子や可動側のアーク接触子と共に動く絶縁ノズルは、ポリテトラフルオルエチレン(以下「PTFE」と略称する。)等の耐アーク性の絶縁材で形成したものが使用される。この絶縁ノズルからアーク接触子に吹き付けた絶縁ガスは、アークによって高温になるため、常温の状態に比較するとガス密度も低くなって絶縁性能も低下するので、高温となった絶縁ガスは固定側の通電導体に接続する筒状端部金具や排気絶縁筒を経て、速やかに容器内の所定個所に排出するように構成している(特許文献1参照)。
【0005】
排気絶縁筒は、高温となった絶縁ガスが通過するから、一般に絶縁ノズルと同様にPTFEやエポキシ樹脂等の耐アーク性の絶縁物を用いて製作し、特許文献1に記載のように排気側に行くに従い断面積を大きく成形、或いは容器内の定めた個所に排気できるように排気方向に傾けて形成等種々の形状に成形して使用される。
【0006】
この種の排気絶縁筒は、一般には筒状端部金具の端面部分や中空部分に挿入して取り付けるか、取付金具等を用いて固定して使用されている。ガス絶縁遮断器は、送変電所に設置して長期間に亘って使用されるものであるから、筒状端部金具の端部に設ける排気絶縁筒の取り付け固定も重要視されている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−231885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ガス絶縁遮断器は、特に温度差の大きな設置場所、例えば寒冷地に設置して使用する場合、筒状端部金具と排気絶縁筒との連結部の固定が不十分であると、一般的に金属と絶縁物との線膨張係数が大きく異なることから、排気絶縁筒が筒状端部金具から外れ、極端な場合には脱落してしまう恐れがある。このように、排気絶縁筒の固定が不十分になると、アークへの吹き付けで高温になった絶縁ガスの排出が、ガス絶縁遮断器の製作当初に設定したように良好に行うことができず、ガス絶縁遮断器の遮断性能に大きく影響を及ぼしてしまう問題を引き起こすことになる。
【0009】
本発明の目的は、複数の保持部材を設ける簡単な構造で、絶縁ガスを放出する排気絶縁筒を筒状端部金具の端部に押圧固定でき、遮断性能に影響を与える恐れのないガス絶縁遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のガス絶縁遮断器は、絶縁ガスを充填する容器内に遮断部を配置し、前記遮断部は少なくとも固定及び可動主接触子と、固定及び可動側のアーク接触子と、前記アーク接触子に絶縁ガスを吹き付けるノズルとを有し、前記固定主接触子や固定側のアーク接触子を取り付ける筒状端部金具に排気絶縁筒を設け、前記アーク接触子に吹き付けた絶縁ガスを筒状端部金具と排気絶縁筒とを経て容器内の所定個所に排出する構造とするとき、前記排気絶縁筒は筒状端部金具の絶縁ガス排出側の端部に挿入して支持させると共に、前記筒状端部金具の内面の複数個所に着脱自在に配置する保持部材にて押圧固定して構成したことを特徴としている。
【0011】
また、前記保持部材は、一端を前記固定端部金具の内面に着脱自在に固定し、他端を前記排気絶縁筒と係合させて押圧固定するように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のようにガス絶縁遮断器を構成すれば、排気絶縁筒を簡単な構造の保持部材を用いて、固定端部金具の端部に着脱自在に強固に固定することができ、絶縁ガスの排出を支障もなく行え、遮断性能に影響を与える恐れもなくなる。それ故、使用温度差の大きな場所で使用するガス絶縁遮断器であっても、排気絶縁筒部分で何ら問題を生ずることなく使用できるし、固定構造が簡素化できるため、経済的に製作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のガス絶縁遮断器は、絶縁ガスを充填する容器内に遮断部を配置し、この遮断部は固定及び可動主接触子と、固定及び可動側のアーク接触子と、前記アーク接触子に絶縁ガスを吹き付けるノズルとを少なくとも有している。そして、固定主接触子や固定側のアーク接触子を取り付ける筒状端部金具の絶縁ガス排出側端に、排気絶縁筒を保持部材で押圧固定して設けたものである。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明を適用する図1に示すパッファ形のガス絶縁遮断器を用いて説明する。この図1のガス絶縁遮断器は、容器1内に、通電導体2に連なっており操作器(図示せず)にて動作する遮断部3を配置し、容器1内部には絶縁ガス4を充填している。遮断部3は、従来と同様に通電導体2と接続する固定主接触子5及び可動主接触子6と、遮断動作の際にアークを発生する固定側のアーク接触子7及び可動側のアーク接触子8と、遮断動作時に絶縁ガスを圧縮するパッファシリンダ9及びピストン10と、圧縮された絶縁ガスをアーク接触子7、8部分に吹き付けてアークを消弧する絶縁ノズル11と、各主接触子5、6及びアーク接触子7、8を取り囲み可動側から支持される円筒絶縁支持材12等を含んで構成している。
【0015】
そして、操作器が動作すると、可動主接触子6、可動側のアーク接触子8、パッファシリンダ9、絶縁ノズル11が図中の右方向に動くことができる構成としている。遮断部3の開極終了状態を図1に示しており、開極動作途中にパッファシリンダ9とピストン10で圧縮された絶縁ガスを、絶縁ノズル11からアーク接触子7、8部分間に発生しているアークに向けて吹き付けて消弧する。
【0016】
固定主接触子5や固定側のアーク接触子7は、通電導体2の接続端子部を兼ねる筒状端部金具13の一端に取り付けて支持され、またアルミニウム鋳物製の筒状端部金具13の他端側、即ち絶縁ガスの放出側端には排気絶縁筒14を設けている。絶縁ノズル11から吹き付けて高温となった絶縁ガスは、筒状端部金具13の中空部を通り、これに続く排気絶縁筒14に案内されて、容器1内の指定方向に放出される。
【0017】
PTFE等の耐アーク性の絶縁物を用いて所定形状に製作する排気絶縁筒14は、図2で本発明の詳細を示すように、排気絶縁筒14の一部を、筒状端部金具13の絶縁ガス放出側の端部に挿入して係合させている。その上、筒状端部金具13の内面の複数箇所に配置する保持部材15により、筒状端部金具13の所定位置に丸頭状のボルト16等の固定材を使用して着脱自在に取り付け固定し、絶縁ガスを容器1内の指定方向に放出できるようにしている。
【0018】
筒状端部金具13の内面の複数箇所に配置する保持部材15は、排気絶縁筒14の押圧固定が十分に行える個数を使用するものである。例えば、排気絶縁筒14の直径が大きいときには、例えば左右2個ずつの4個を使用することが望ましく、排気絶縁筒14の寸法に応じて、適宜個数を調節して使用することができる。
【0019】
排気絶縁筒14を取り付けるため、図3及び図4に示す例では筒状端部金具13の絶縁ガスの放出側となる端部内面の複数箇所に、小孔13Aを形成しており、これらの小孔13Aに別に作ったナット17を埋め込み配置している。各ナット17には、保持部材15の一端に配置するボルト16を螺着し、保持部材15の他端で排気絶縁筒14を押圧固定する構造としている。なお、排気絶縁筒14を押圧固定する際に機械強度上問題がなければ、埋め込み配置するナット17に代えて、筒状端部金具13の端部内面に直接ねじ切りし、ボルト16を螺着することもできる。
【0020】
筒状端部金具13の内面に配置する保持部材15やボルト16及びナット17は、耐アーク性の金属材料例えばステンレススチールを用い、しかも保持部材15やボルト16は、絶縁ガスの流れを妨げない形状に作成する。また、保持部材15やボルト16は、絶縁物製であっても良いものである。この保持部材15は、ボルト16を配置する側と反対の自由端には、排気絶縁筒14を筒状端部金具13に押圧して固定するための押圧突起部20を形成している。
【0021】
また、筒状端部金具13の端部には、この例では小孔13A以外に、排気絶縁筒14の外面の係止ねじ22に螺着する係止ねじ18と、排気絶縁筒14の外面に設ける凹部23に係止する突起19とを設けて、排気絶縁筒14の係合支持部としている。この係合支持部の活用で、以下に説明するように筒状端部金具13の端部への排気絶縁筒14の取り付け固定が、容易に行えるようにしている。
【0022】
即ち、図4に示すように排気絶縁筒14を筒状端部金具13の端部に挿入して取り付ける際には、まず排気絶縁筒14の係止ねじ22を、筒状端部金具13に設けた係止ねじ18にねじ込んでいき、排気絶縁筒14の凹部23を筒状端部金具13の突起19と嵌め合わせて、これらによって筒状端部金具13と排気絶縁筒14を係合支持させる。
【0023】
その後、排気絶縁筒14に設けた係合孔21に、保持部材15の押圧突起部20を嵌め合わせてから、ボルト16をナット17に螺着すれば、排気絶縁筒14は筒状端部金具13の内面に押圧され、所定位置に強固に固定できる。したがって、筒状端部金具13の端部に、排気絶縁筒14を保持部材15で効果的に固定することができ、遮断部の動作時にアークに吹き付けた高温の絶縁ガスは、何ら問題なく排出できるため、ガス絶縁遮断器の遮断性能に影響を及ぼす恐れがなくなる。
【0024】
なお、筒状端部金具13に設ける係止ねじ18や突起19及び、排気絶縁筒14の係止ねじ22と凹部23の組み合せである係止支持部は、排気絶縁筒14の取り付けの際に、一時的に所定状態に仮止めして保持することのできる構造であれば良く、上記した組み合わせ構造に限られないことは明らかである。突起19と凹部23の嵌め合せ結合は、これを省略して係止ねじ18と22による係止支持部構成とし、筒状端部金具13と排気絶縁筒14とを仮止めすることも可能である。
【0025】
また、保持部材15に設ける押圧突起部20も、排気絶縁筒14の押圧固定が十分に行えるなら不要なものであり、押圧突起部20を省略するときには当然排気絶縁筒14の係合孔21も全く不要にするか、或いは単なる位置規制用の凹部としても、筒状端部金具13の端部に排気絶縁筒14を、保持部材15により押圧固定することができ、上記した例と同様な効果を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用するガス絶縁遮断器の一例を示す概略縦断面図である。
【図2】本発明の一実施例を示すガス絶縁遮断器の要部の縦断面図である。
【図3】図2のA−A線部における排気絶縁筒の取付前の部分縦断面図である。
【図4】図2のA−A線部における排気絶縁筒の取付後の部分縦断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1…容器、3…遮断部、4…絶縁ガス、5…固定主接触子、6…可動主接触子、7、8…アーク接触子、11…ノズル、13…筒状端部金具、13A…小孔、14…排気絶縁筒、15…保持部材、16…ボルト、17…ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ガスを充填する容器内に遮断部を配置し、前記遮断部は少なくとも固定及び可動主接触子と、固定及び可動側のアーク接触子と、前記アーク接触子に絶縁ガスを吹き付けるノズルとを有し、前記固定主接触子や固定側のアーク接触子を取り付ける筒状端部金具に排気絶縁筒を設け、前記アーク接触子に吹き付けた絶縁ガスを筒状端部金具と排気絶縁筒とを経て容器内の所定個所に排出するガス絶縁遮断器において、前記排気絶縁筒は筒状端部金具の絶縁ガス排気側の端部に挿入して支持させると共に、前記筒状端部金具の内面の複数個所に着脱自在に配置する保持部材にて押圧固定して構成したことを特徴とするガス絶縁遮断器。
【請求項2】
請求項1において、前記保持部材は、一端を前記固定端部金具の内面に着脱自在に固定し、他端を前記排気絶縁筒と係合させて押圧固定するように構成したことを特徴とするガス絶縁遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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