ガス遮断器
【課題】アーク接触子の開極直後では電界緩和シールドによる電界緩和効果を抑えて通電接触子間における再発弧を回避することができ、アーク接触子の開極が進むと電界緩和シールドが軸方向に沿って移動することで電界緩和効果を発揮することが可能であり、これにより、アーク接触子における開極速度向上を抑制しつつ、良好な進み小電流遮断性能を確保したガス遮断器を提供する。
【解決手段】電界シールド41は、浮動であって、中心軸方向に動作可能であり、基端部に結合されたコイルバネ42により付勢され、遮断動作時にはコイルバネ42が放勢されるに伴って中心軸方向において可動接触子部20側へ動作するように構成されている。
【解決手段】電界シールド41は、浮動であって、中心軸方向に動作可能であり、基端部に結合されたコイルバネ42により付勢され、遮断動作時にはコイルバネ42が放勢されるに伴って中心軸方向において可動接触子部20側へ動作するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電界シールドを備えたガス遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガス遮断器では、遮断時の再点弧を回避して絶縁破壊を防ぐことが重要である。再点弧とは、商用周波電圧において電流零点後4分の1周期以上の時間が経過した後に生じる絶縁破壊現象である。この再点弧が起きると、大きな過電圧が発生するため、ガス遮断器には速やかな絶縁回復特性が要求されている。なお、電流零点後4分の1周期未満の時間で生じる絶縁破壊現象のことを再発弧と呼んでいる。この再発弧は過電圧レベルが低いので、ガス流が存在する限りにおいて発生が許容されるのが一般的である。
【0003】
ところで、ガス遮断器では再点弧を回避すべく、アーク接触子間の速やかな絶縁回復特性を備えることが要求される。このため、アーク接触子の開極速度の向上が図られるが、操作エネルギーの省力化を図ることも重要であり、アーク接触子の開極速度を抑制することが要請されている。そこで、電界緩和用の電界シールドを設置したガス遮断器が提案されている。
【0004】
[ガス遮断器の概略]
以下、電界シールドを設置した従来のガス遮断器について述べるが、その前に、ガス遮断器の概略に関して、図17、図18の断面図を用いて説明する。図17はガス遮断器の遮断状態、図18はガス遮断器の投入状態をそれぞれ示している。これら図17、図18に示すように、ガス遮断器は、対向接触子部10及び可動接触子部20が互いに対向配置して構成されている。可動接触子部20の位置関係は、対向接触子部10側の方向を前方(図17の左方)、その反対側を後方(図17の右方)と定義して説明する。
【0005】
[対向接触子部10の構成]
対向接触子部10は、対向アーク接触子11、対向通電接触子12、支持部13、サポート14から構成される。サポート14は、消弧性のガスが充填された容器(図示せず)の内壁部に固定されており、サポート14内部に支持部13が鉛直に伸びて取り付けられる。対向アーク接触子11は、支持部13の先端に固定され、容器の中心軸上に配置されている。対向通電接触子12は、サポート14の可動接触子部20側の先端部に形成されており、且つ対向アーク接触子11の周囲に配置されている。
【0006】
[可動接触子部20の構成]
可動接触子部20には、中空の操作ロッド25が配置されている。操作ロッド25は、駆動装置(図示せず)に連結され、この駆動装置によって、軸方向(図17の左右方向)に往復動するように構成されている。
【0007】
操作ロッド25の周囲にはシリンダ24が配置されている。シリンダ24は前端部で操作ロッド25に連結され、シリンダ24前方には中空且つ指状の可動アーク接触子21が連結されている。この可動アーク接触子21を包囲するように所定の間隔を持って絶縁ノズル23が配置されている。さらに、絶縁ノズル23の外周部には可動通電接触子22が配置されている。なお、図17中の符号23aは絶縁ノズル23のスロート部における最小断面積部を示している。
【0008】
シリンダ24内部には円形平板状の固定ピストン31が摺動自在に挿入されている。固定ピストン31には後方に延びるピストン支持部31aが一体的に設けられている。固定ピストン31は、ピストン支持部31aを介して図示していない容器内に固定されている。操作ロッド25と共にシリンダ24が往復動する時、固定ピストン31は、その内周面で操作ロッド25の外周面に対して摺動し、その外周面でシリンダ24の内周面に対して摺動するように構成されている。この時、固定ピストン31により圧縮されるシリンダ24内部の空間を、機械的圧縮空間と呼んでいる。
【0009】
[ガス遮断器の動作]
以上の構成を有するガス遮断器が投入動作または遮断動作を実施する場合、駆動装置(図示せず)からの駆動力を受けて操作ロッド25が容器の中心軸上を移動する。操作ロッド25の移動に伴って、可動アーク接触子21、可動通電接触子22、絶縁ノズル23及びシリンダ24が、操作ロッド25と一体的に往復移動する。
【0010】
ガス遮断器の遮断時には、容器側に固定された固定ピストン31に対し、操作ロッド25とシリンダ24が一体的に後退する。ここで、シリンダ24の内周面と固定ピストン31の外周面が摺動しながら、両者が相対的に移動するため、固定ピストン31がシリンダ24内部の機械的圧縮空間を圧縮する。これにより、シリンダ24内部には、十分な吹きつけ圧力が蓄圧される。
【0011】
ガス遮断器の遮断動作が進行して、接触導通状態にあった対向アーク接触子11と可動アーク接触子21が開離すると、両アーク接触子11、21間の空間として定義されるアーク空間にアークが発生する。さらに遮断動作が進行すると、両アーク接触子11、21間の距離が十分に開いて適切な流路を形成する。
【0012】
前述したようにシリンダ24内部には十分な吹きつけ圧力を蓄圧しているため、この状態で電流零点を迎えると、シリンダ24内部からのガス流が、可動アーク接触子21と絶縁ノズル23との間を通ってアーク空間に流れ込む。その結果、アーク空間に生じたアークは消弧に至り、事故電流遮断が完了する。
【0013】
以上のようにしてガス遮断器が遮断動作を行うが、その際、遮断する電流が大きな事故電流であれば、アーク接触子11、21間には数kAオーダーの大電流アークが発生する。ただし、アーク接触子11、21間の距離が大きく開いて適切なガス流路が形成され、かつシリンダ24内部に高い吹きつけ圧力が蓄圧された後でなければ、たとえ電流零点を迎えても、大電流アークが消弧されることはない。つまり、アーク接触子11、21間の十分な距離と、シリンダ24内部の十分な蓄圧が、大電流アークを消弧するための成立条件となる。
【0014】
これに対して、ガス遮断器が遅れ負荷電流や極めて小さな事故電流を遮断する場合、あるいは進み小電流等の小電流を遮断する場合は、消弧の成立条件が、上記大電流遮断の場合とは異なっている。小電流等を遮断する場合は、両アーク接触子11、21間には数百A以下の小電流アークが発生するに過ぎない。このため、アーク接触子11、21の開離直後であっても、微弱なガス流が存在すれば、十分な吹きつけ圧力を持たなくとも電流零点を迎えるだけで、簡単に小電流アークは消弧されることになる。
【0015】
電流位相によっては、アーク時間(アーク接触子11、21間のアークが継続する時間)は、限りなくゼロに近くなる。したがって、両アーク接触子11、21の開離直後にアークが消弧されるということは、両アーク接触子11、21間の距離が極めて小さい状態で、両アーク接触子11、21間に回復電圧が印加されることに他ならない。
【0016】
[再発弧]
このとき、両アーク接触子11、21間における回復電圧の大きさは、遮断対象となる電流の大きさに依存する。すなわち、ガス遮断器が、遅れ負荷電流や極めて小さな事故電流を遮断する場合は、数kHzの高い周波数の過渡回復電圧が、アーク接触子11、21間に印加されることが多い。
【0017】
つまり、開極直後のアーク接触子11、21間の距離が小さい状態で、瞬時に過渡回復電圧が立ち上がる。したがって、この時に発生する再発弧(電流零点後4分の1周期未満の時間で生じる絶縁破壊現象)については許容せざるを得ない。ただし、この再発弧は、ガス流の存在しない通電接触子12、22で発生すると遮断不能になる可能性があるので、アーク接触子11、21間で発生させる必要がある。
【0018】
[再点弧]
一方、ガス遮断器が、進み小電流等の小電流を遮断する場合は、系統からの高い回復電圧(商用周波数)が、アーク接触子11、21間に印加されることが多い。この回復電圧により、アーク接触子11、21間に再点弧(電流零点後4分の1周期以上の時間経過後に生じる絶縁破壊現象)が起きる可能性がある。
【0019】
中でも、対向アーク接触子11の先端が絶縁ノズル23の最小断面積部23a(図17に図示)を通過する領域では、再点弧が発生し易いトラベル領域となっている。過電圧レベルの低い再発弧と違い、アーク接触子11、21間に再点弧が起きると、過渡的な過電圧が発生する場合があり、系統機器の信頼性を脅かすおそれがあった。
【0020】
そこでガス遮断器では、十分な速さの絶縁回復特性を備え、アーク接触子間の速やかな絶縁回復を確保することにより、進み小電流遮断時における再点弧の回避が求められている。再点弧を回避する技術としては、アーク接触子の開極速度を向上させることが有効である。例えば特許文献1、2では、リンク機構などを用いて、特に速やかな絶縁回復が要求されるアーク接触子の開離直後における開極速度を大きく向上させている。
【0021】
ところが、近年のガス遮断器は小型化が進められているので、小型化に伴ってアーク接触子の径も小さくなり、電界が厳しくなる傾向にある。その結果、アーク接触子の開極速度を一層速める必要がある。このような開極速度のさらなる向上は、操作エネルギーの増大を招くことになり、所望の機械的信頼性を確保することが困難となっていた。
【0022】
したがってガス遮断器においては、操作エネルギーの低減化を図るべく、アーク接触子の開極速度向上の抑制が望まれており、これを実現しつつ、アーク接触子間の速やかな絶縁回復を確保することが要求されている。このような要求に応える従来技術として、特許文献3〜8等に記載されたガス遮断器が提案されている。
【0023】
特許文献3、4に記載のガス遮断器では、遮断動作時に可動接触子部側を動かすだけではなく、対向接触子部もまた可動接触子部と反対向きに駆動させている(いわゆるデュアルモーション機構)。このようなガス遮断器によれば、各接触子部の絶対的な移動速度を抑制しつつ、両アーク接触子の相対的な開極速度を高めることが可能となり、操作エネルギーの省力化と良好な絶縁回復特性を両立させている。しかし、これらの従来技術には、部品点数が増加するといったコスト的な問題があり、また、機械的・絶縁的な信頼性を確保することも課題となっている。
【0024】
さらに、特許文献5〜8のガス遮断器では、絶縁ノズルの形状を改良することで、ガス流に起因するアーク接触子先端近傍での圧力・密度低下を防止し、速やかな絶縁回復を実現している。しかし、最近のガス遮断器では、機械的圧縮による蓄圧依存度が低下し、アークエネルギーを用いた蓄圧の寄与が増加している。このため、進み小電流等の小電流遮断時には、蓄圧室の圧力上昇が弱く、もともと、ガス流に起因するアーク接触子先端近傍での圧力・密度低下の問題は無視できる程度である。したがって、これらの技術の有効性は必ずしも高いわけではない。
【0025】
以上のような技術的な背景のもと、アーク接触子の開極速度を抑えつつ、アーク接触子間の速やかな絶縁回復を実現するガス遮断器として、アーク接触子の電界緩和を図ったものが広く採用されている。例えば、対向通電接触子12を可動接触子部20側に寄せて配置することで、対向アーク接触子11と対向通電接触子12の先端同士を結ぶ接線と中心軸のなす角度θを90度よりも小さくしたガス遮断器が提案されている(ちなみに図17に示したガス遮断器ではθは90度である)。このようなガス遮断器によれば、対向アーク接触子11の電界を緩和することが可能となる。
【0026】
さらには、図19や図20に示すように、対向通電接触子12の外周部分に、電界シールド15、16を設けたガス遮断器も提案されている。電界シールド15、16の先端部は、対向通電接触子12の先端部よりも可動接触子部20側に位置している。電界シールド15は、その先端部が内側方向に円弧に描いて構成され、対向通電接触子12の先端部を覆うように配置されている。また、電界シールド16は、その先端部が外側方向に円弧に描いて構成されている。これらの電界シールド15、16を対向通電接触子12の外周部分に設置することで、対向アーク接触子11の電界を緩和することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開2003−217408号公報
【特許文献2】特開2004−55420号公報
【特許文献3】特開2003−109476号公報
【特許文献4】特開平5−250967号公報
【特許文献5】特開平8−203395号公報
【特許文献6】特開平7−320612号公報
【特許文献7】特開平5−135668号公報
【特許文献8】特開平5−74286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
上述したように、アーク接触子間の速やかな絶縁回復を確保して再点弧を回避するガス遮断器では、操作エネルギーの省力化を図るためにアーク接触子の開極速度向上を抑制したいという要求がある。この要求に応えるガス遮断器として、対向アーク接触子11の電界を緩和する電界シールド15、16を設置したものが提案されていた。
【0029】
しかしながら、電界シールド15、16を設置したガス遮断器においては、次のような課題が指摘されていた。すなわち、電界シールド15、16を設置したことで、これに隣接する対向通電接触子12の電界が大きくなることは否めない。その結果、ガス遮断器が、遅れ負荷電流や極めて小さな事故電流を遮断する場合に、アーク接触子11、21間に再発弧が起きるのではなく、通電接触子12、22間にて再発弧が起きてしまうといった問題が生じた。
【0030】
既に述べたように遅れ負荷電流遮断時などに起きる再発弧は許容されているものの、それはあくまでも、ガス流が存在するアーク接触子11、21間で発生することを前提としている。すなわち、ガス流が存在しない通電接触子12、22間に再発弧が発生すれば、遮断不能になるおそれがある。このため、通電接触子12、22間での再発弧は、回避する必要がある。
【0031】
したがって、アーク接触子11、21の開極直後は、対向通電接触子12の電界増大を抑えることが要請されており、電界シールド15、16による対向アーク接触子11の電界緩和には限界があった。具体的には、対向アーク接触子11とシールド15、16の先端を結ぶ接線と中心軸のなす角度をシールド角度θとするとき、シールド角度θは直角に近い角度であって、小さくても80度を超える程度に構成されることが多かった。
【0032】
なお、電界シールド15、16による対向アーク接触子11の電界緩和を制約したいのは、通電接触子12、22間での再発弧の発生を回避するためである。したがって、アーク接触子11、21の開極が進んだ後は、シールド15、16が電界緩和効果を発揮することが望ましく、確実な再点弧の回避が望まれる状況に変わりはない。
【0033】
実施形態のガス遮断器は、以上のような従来技術の課題を解決するために提案されたものであり、アーク接触子の開極直後では電界シールドによる電界緩和効果を抑えて通電接触子間における再発弧を回避することができ、アーク接触子の開極が進むと電界シールドが軸方向に沿って移動することで電界緩和効果を発揮することが可能であり、これにより、アーク接触子における開極速度向上を抑制しつつ、良好な進み小電流遮断性能を確保したガス遮断器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0034】
前記目的を達成するために、実施形態のガス遮断器では、消弧性ガスが充填された密閉容器内の中心軸上に、第1通電接触子および第1アーク接触子を有する第1接触子部と、第2通電接触子および第2アーク接触子を有する第2接触子部とが対向して配置され、第2通電接触子近傍には第2通電接触子と同心の電界シールドが設けられたガス遮断器において、次のような特徴がある。
【0035】
すなわち、電界シールドには、ガス遮断器の投入状態では蓄勢状態となり、ガス遮断器の遮断状態では放勢状態となる弾性体が取り付けられている。また、電界シールドは、浮動で、中心軸方向に動作可能であり、かつ前記弾性体により付勢されており、遮断動作時には弾性体が放勢されるに伴って中心軸方向において第1接触子側へ動作するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1の実施形態のガス遮断器にて遮断状態を示す断面図。
【図2】第1の実施形態にて投入動作時のプレアーク発生状態を示す断面図。
【図3】第1の実施形態にて投入動作の進んだ状態を示す断面図。
【図4】第1の実施形態にて投入状態を示す断面図。
【図5】第1の実施形態にて遮断動作の初期の状態を示す断面図。
【図6】第1の実施形態にて遮断動作時のアーク発生状態を示す断面図。
【図7】第1の実施形態にて遮断動作の進んだ状態を示す断面図。
【図8】角度θの遮断動作時の変化の例を示したグラフ。
【図9】第2の実施形態のガス遮断器にて遮断状態を示す断面図。
【図10】第2の実施形態にて投入状態を示す断面図。
【図11】第3の実施形態のガス遮断器にて遮断状態を示す断面図。
【図12】第3の実施形態にて投入状態を示す断面図。
【図13】第4の実施形態のガス遮断器にて遮断状態を示す断面図。
【図14】第4の実施形態にて投入状態を示す断面図。
【図15】第5の実施形態のガス遮断器にて遮断状態を示す断面図。
【図16】第5の実施形態にて投入状態を示す断面図。
【図17】従来のガス遮断器の遮断状態を示す断面図。
【図18】従来のガス遮断器の投入状態を示す断面図。
【図19】電界シールドを設けた従来のガス遮断器の断面図。
【図20】電界シールドを設けた従来のガス遮断器の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、実施形態であるガス遮断器について、図面を参照して具体的に説明する。なお、下記の実施形態における基本的な構成は図17〜図20に示した従来のガス遮断器と同様であり、同一部材に関しては同一符号を付して説明は省略する。また、可動接触子部20の位置関係についても、図17と同様である。
【0038】
[1]第1の実施形態
[1−1]構成
図1〜図7は、第1の実施形態の断面図であって、図1は遮断状態、図2は投入動作時のプレアーク発生状態、図3は投入動作の進んだ状態、図4は投入状態、図5は遮断動作の初期の状態、図6は遮断動作時のアーク発生状態、図7は遮断動作の進んだ状態を示している。
【0039】
第1の実施形態は、図1〜図7に示すように、対向通電接触子12の外側には、電界シールド41が同心状に設けられている。電界シールド41の先端部は外側方向に円弧に描いて構成されている。電界シールド41の先端形状は、図20に示した電界シールド16のそれと、ほぼ同一の形状である。電界シールド41の基端部には、引っ張りばねであるコイルバネ42が結合されている。
【0040】
また、電界シールド41の基端部は、同じく同心に設けられたガイド43に収納されており、ガイド43の内壁部に沿って中心軸方向に移動するように規定されている。ガイド43には電界シールド41基端部に結合されたコイルバネ42が収納されている。コイルバネ42の弾性力によって電界シールド41は可動接触子部20側に付勢されている。
【0041】
すなわち、電界シールド41は、浮動であって、中心軸方向に動作可能であり、コイルバネ42により付勢され、遮断動作時にはコイルバネ42が放勢されるに伴って中心軸方向において可動接触子部20側へ動作するように構成されている。さらに、可動接触子部20の可動通電接触子22の外側には、同心の突起部44が取り付けられている。突起部44は電界シールド41と対向する位置に配置されており、リング状の部材から構成されている。
【0042】
ところで、電界シールド41および対向アーク接触子11の可動接触子部20側の先端を結ぶ接線と中心軸の成す角度をシールド角度θとしたとき、このシールド角度θは次のように設定されている。図1の遮断状態において、コイルバネ42は自由長にあり、シールド角度θは70度〜90度の範囲に設定されるのが好適である。また、図4に示す投入状態では、シールド角度θは90度〜110度となるように設定されるのが好適である。第1の実施形態では、遮断状態でのシールド角度θが85度、投入状態でのシールド角度θが105度に設定されている。
【0043】
[1−2]作用
以上の構成を有する第1の実施形態の投入動作および遮断動作について説明する。ガス遮断器が投入動作を開始すると、操作ロッド25が前方に移動し、この操作ロッド25を含む可動接触子部20が一体的に前進する。図2に示すように対向アーク接触子11と可動アーク接触子21の距離が小さくなると、絶縁破壊に至り、アーク接触子11、21間にプレアーク51が発生する。
【0044】
さらに、投入動作が進行して図3に示した段階では、電界シールド41と突起部44の先端が係合する。電界シールド41は突起部44により図3中の左方向に押し込まれていき、同時にコイルバネ42は引っ張りの向きに蓄勢される。図4に示した投入完了状態に至ると、シールド角度θは105度程度となる。
【0045】
次に、ガス遮断器が遮断動作を開始すると、操作ロッド25が後方に移動していき、操作ロッド25を含む可動接触子部20が一体的に後退する。これにより、固定された固定ピストン31に対し、操作ロッド25とシリンダ24が一体的に移動することになり、シリンダ24と固定ピストン31が相対移動し、シリンダ24内部に形成される機械的圧縮空間が圧縮される。
【0046】
図5に示すように、遮断動作初期の段階では、突起部44は電界シールド41から開離する。電界シールド41は蓄勢されたコイルバネ42により付勢されているため、可動接触子部20方向(図中の右方向)に移動を開始する。ここで、電界シールド41の移動に際しての加速度は、電界シールド41およびコイルバネ42の質量、コイルバネ42の荷重、電界シールド41およびガイド43の間の摺動摩擦力で決まる。
【0047】
図6に示したように、アーク接触子11、21間の開離直後のギャップが短い状態では、電界シールド41の変位はわずかであり、シールド角度θは未だ大きい状態にある。さらに遮断動作が進行し、図7の状態に至ると、電界シールド41の移動も大きく進み、シールド角度θも小さくなっていく。その後、図1に示した完全遮断状態に至ると、コイルバネ42は完全に放勢された状態となる。
【0048】
図8は、電界シールド41の移動によるシールド角度θの遮断動作時の変化の例を示したグラフである。投入状態において、シールド角度θは105度程度であり、遮断動作開始後、突起部44が電界シールド41から開離すると、シールド角度θは変化を開始し、アーク接触子11、21間の開離直後ではシールド角度θは未だ大きいものの、電界シールド41の移動に連れて小さくなり、完全遮断状態では85度程度となる。
【0049】
特に、第1の実施形態では、進み小電流遮断時に再点弧の発生しやすいトラベル領域(図8のグラフにおいて可動部トラベル30%を超えた付近)で、シールド角度θが90度を下回るようになっている。これは、図7に示す如く、対向アーク接触子11の先端が絶縁ノズル23の最小断面積部23aを通過する領域において、電界シールド41の動作が進行し、シールド角度θが90度を下回ることを表している。
【0050】
[1−3]効果
上記第1の実施形態によれば、次のような効果が得られる。すなわち、ガス遮断器において小電流を遮断する時、両アーク接触子11、21の開離直後に電流零点を迎えると、アークが消弧される。
【0051】
小電流遮断が、リアクトル遮断のような遅れ負荷電流遮断や、極めて小さな事故電流遮断であれば、数kHzの高周波の過渡回復電圧がアーク接触子11、21に印加される。この時、アーク接触子11、21の開極直後の段階では、電界シールド41の変位は殆どなく、シールド角度θは105度程度と大きい。したがって、電界シールド41の電界を抑制することができ、対向通電接触子12の電界が大きくならない。その結果、再発弧はアーク接触子11、21間で確実に発生し、通電接触子12、22間や電界シールド41付近にて、再発弧が発生する心配がない。これにより、次の電流零点を迎えれば、ガス流の存在により再び消弧される。
【0052】
また、第1の実施形態における小電流遮断において、進み小電流遮断のように商用周波数の回復電圧が印加された場合には、電界シールド41が移動した後なので、電界緩和効果を発揮する。すなわち、遮断動作が進み、対向アーク接触子11が絶縁ノズル23の最小断面積23aにさしかかると、高い電圧が印加された状態に至った頃には、コイルバネ42の付勢力を受けた電界シールド41が、アーク接触子11、21間の開離から時間遅れを持って移動し、シールド角度θは85度程度と小さくなる。
【0053】
このため、電界シールド41は十分な電界緩和効果を発揮することができる。したがって、対向アーク接触子11の電界を緩和させることができ、アーク接触子11、21間の再点弧を確実に回避することが可能となる。これにより、第1の実施形態では、アーク接触子11、21の開極速度を抑えて操作エネルギーを増大させることなく、アーク接触子11、21間の速やかな絶縁回復を実現することができる。
【0054】
以上のように第1の実施形態によれば、アーク接触子11、21の開極速度を抑制しても、速やかな絶縁回復が得られ、良好な進み小電流遮断性能が得られる。と同時に、周波数の高い過渡回復電圧が印加される小電流遮断においては、通電接触子12、22や電界シールド41における再発弧を回避することができる。したがって、遮断不能に陥る心配が無く、優れた信頼性を獲得することができる。
【0055】
[2]第2の実施形態
[2−1]構成
図9、図10は、第2の実施形態の断面図であって、図9は遮断状態、図10は投入状態を示している。第2の実施形態の基本構成は、前記第1の実施形態と同様である。
【0056】
第2の実施形態の構成上の特徴は、次の2点である。すなわち、突起部44の先端に、対向接触子部10方向に延びる先端絶縁物45が設けられる。また、遮断状態において電界シールド41の設置位置を可動接触子部20寄りに設けることにより、上記第1の実施形態よりもシールド角度θを小さく設定されている。
【0057】
シールド角度θに関しては、図9に示した遮断状態では、第2の実施形態ではシールド角度θが75度程度となるように構成されている。また、図10に示す投入状態に至る時、第2の実施形態では電界シールド41と先端絶縁物45とが係合状態にあり、これにより電界シールド41の位置が規定され、シールド角度θが95度程度となるように構成されている(図8のグラフ参照)。
【0058】
[2−2]作用及び効果
以上のような第2実施の形態においては、第1の実施形態の作用効果に加えて、以下のような独自の作用効果が得られる。すなわち、第2の実施形態によれば、シールド角度θを小さくしたことで、対向アーク接触子11の電界緩和効果をいっそう高めることができる。
【0059】
また、第2の実施形態の電界シールド41は、可動接触子部20寄りに位置しているが、ガス遮断器の投入動作に際して、先端絶縁物45が電界シールド41に係合することで、電界シールド41は早い段階で図10中の左方向に押し込むことができる。したがって、投入動作時に、電界シールド41と突起部44の間で、絶縁破壊してプレアーク51が発生することがなく、電界シールド41をいためる心配がない。
【0060】
[3]第3の実施形態
[3−1]構成
図11、図12は、第3の実施形態の断面図であって、図11は遮断状態、図12は投入状態を示している。第3の実施形態の基本構成は、上記第1および第2の実施形態と同様である。第3の実施形態は、引っ張り方向に蓄勢されるコイルバネ42に代えて、圧縮ばねからなるコイルバネ46が、ガイド43に収納された点に特徴がある。コイルバネ46は電界シールド41の移動により圧縮方向に蓄勢されるように構成されている。
【0061】
[3−2]作用及び効果
以上のような第3実施の形態においては、第1および第2の実施の形態の作用効果に加えて、コイルバネ46が圧縮ばねである分、引っ張りばねに比べてコンパクトであり、設置スペースを小さくすることができる。したがって、機器のコンパクト化に寄与することが可能である。
【0062】
[4]第4の実施形態
[4−1]構成
図13、図14は、第4の実施形態の断面図であって、図13は遮断状態、図14は投入状態を示している。第4の実施形態の基本構成は、前記第1〜第3の実施形態と同様である。第4の実施形態の構成上の特徴は、小径の複数のコイルバネ47が円周上にガイド43内に配置された点にある。
【0063】
[4−2]作用及び効果
第4の実施形態においては、第1〜第3の実施形態の作用効果に加え、次のような独自の作用効果が得られる。すなわち、分割して構成したコイルバネ47を用いることにより、よりコンパクト化を進めることができ、組立性も向上する。しかも、コイルバネ47の自重を軽くすることができるので、応答速度を速くすることができる。
【0064】
[5]第5の実施形態
[5−1]構成
図15、図16は、第5の実施形態の断面図であって、図15は遮断状態、図16は投入状態を示している。第5の実施形態の基本構成は、上記第4の実施形態と同様である。
【0065】
第5の実施形態は、次のような構成を持つ電界シールド48を備えた点に特徴がある。電界シールド48は、その先端が内側に丸まり対向通電接触子12先端を覆うようにして設けられている。つまり、電界シールド48の先端形状は、図19に示した電界シールド15のそれと、ほぼ同一の形状となっている。
【0066】
[5−2]作用及び効果
第5の実施形態においては、第1〜第4の実施形態の作用効果に加えて、次のような独自の作用効果が得られる。すなわち、電界シールド48は先端部が内側に丸まっている分だけ、電界シールド48と対向アーク接触子11の距離は近くなる。したがって、電界シールド48による対向アーク接触子11の電界緩和効果が高まる。また、電界シールド48の先端部が対向通電接触子12を覆うため、対向通電接触子12が通電により痛んだ状態にあったとしても、通電接触子12、22間の絶縁破壊を回避することができる。
【0067】
[6]その他の実施形態
本発明の実施形態は、上記の実施形態に限定されるものではなく、電界シールドの形状やシールド角度θ、電界シールドの移動加速度等は適宜変更可能である。また、対向接触子部を可動接触子部と反対側へ駆動して相対的な開極速度を向上させるデュアルモーション機構を備えたガス遮断器や、アークエネルギーを用いて上流の蓄圧を得るいわゆる自力効果を用いたタイプのガス遮断器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
10…対向接触子部
11…対向アーク接触子
12…対向通電接触子
13…支持部
14…サポート
15、16、41、48…電界シールド
20…可動接触子部
21…可動アーク接触子
22…可動通電接触子
23…絶縁ノズル
24…シリンダ
25…操作ロッド
31…ピストン
42、46、47…コイルバネ
43…ガイド
44…突起部
45…先端絶縁物
51…プレアーク
θ…シールド角度
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電界シールドを備えたガス遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガス遮断器では、遮断時の再点弧を回避して絶縁破壊を防ぐことが重要である。再点弧とは、商用周波電圧において電流零点後4分の1周期以上の時間が経過した後に生じる絶縁破壊現象である。この再点弧が起きると、大きな過電圧が発生するため、ガス遮断器には速やかな絶縁回復特性が要求されている。なお、電流零点後4分の1周期未満の時間で生じる絶縁破壊現象のことを再発弧と呼んでいる。この再発弧は過電圧レベルが低いので、ガス流が存在する限りにおいて発生が許容されるのが一般的である。
【0003】
ところで、ガス遮断器では再点弧を回避すべく、アーク接触子間の速やかな絶縁回復特性を備えることが要求される。このため、アーク接触子の開極速度の向上が図られるが、操作エネルギーの省力化を図ることも重要であり、アーク接触子の開極速度を抑制することが要請されている。そこで、電界緩和用の電界シールドを設置したガス遮断器が提案されている。
【0004】
[ガス遮断器の概略]
以下、電界シールドを設置した従来のガス遮断器について述べるが、その前に、ガス遮断器の概略に関して、図17、図18の断面図を用いて説明する。図17はガス遮断器の遮断状態、図18はガス遮断器の投入状態をそれぞれ示している。これら図17、図18に示すように、ガス遮断器は、対向接触子部10及び可動接触子部20が互いに対向配置して構成されている。可動接触子部20の位置関係は、対向接触子部10側の方向を前方(図17の左方)、その反対側を後方(図17の右方)と定義して説明する。
【0005】
[対向接触子部10の構成]
対向接触子部10は、対向アーク接触子11、対向通電接触子12、支持部13、サポート14から構成される。サポート14は、消弧性のガスが充填された容器(図示せず)の内壁部に固定されており、サポート14内部に支持部13が鉛直に伸びて取り付けられる。対向アーク接触子11は、支持部13の先端に固定され、容器の中心軸上に配置されている。対向通電接触子12は、サポート14の可動接触子部20側の先端部に形成されており、且つ対向アーク接触子11の周囲に配置されている。
【0006】
[可動接触子部20の構成]
可動接触子部20には、中空の操作ロッド25が配置されている。操作ロッド25は、駆動装置(図示せず)に連結され、この駆動装置によって、軸方向(図17の左右方向)に往復動するように構成されている。
【0007】
操作ロッド25の周囲にはシリンダ24が配置されている。シリンダ24は前端部で操作ロッド25に連結され、シリンダ24前方には中空且つ指状の可動アーク接触子21が連結されている。この可動アーク接触子21を包囲するように所定の間隔を持って絶縁ノズル23が配置されている。さらに、絶縁ノズル23の外周部には可動通電接触子22が配置されている。なお、図17中の符号23aは絶縁ノズル23のスロート部における最小断面積部を示している。
【0008】
シリンダ24内部には円形平板状の固定ピストン31が摺動自在に挿入されている。固定ピストン31には後方に延びるピストン支持部31aが一体的に設けられている。固定ピストン31は、ピストン支持部31aを介して図示していない容器内に固定されている。操作ロッド25と共にシリンダ24が往復動する時、固定ピストン31は、その内周面で操作ロッド25の外周面に対して摺動し、その外周面でシリンダ24の内周面に対して摺動するように構成されている。この時、固定ピストン31により圧縮されるシリンダ24内部の空間を、機械的圧縮空間と呼んでいる。
【0009】
[ガス遮断器の動作]
以上の構成を有するガス遮断器が投入動作または遮断動作を実施する場合、駆動装置(図示せず)からの駆動力を受けて操作ロッド25が容器の中心軸上を移動する。操作ロッド25の移動に伴って、可動アーク接触子21、可動通電接触子22、絶縁ノズル23及びシリンダ24が、操作ロッド25と一体的に往復移動する。
【0010】
ガス遮断器の遮断時には、容器側に固定された固定ピストン31に対し、操作ロッド25とシリンダ24が一体的に後退する。ここで、シリンダ24の内周面と固定ピストン31の外周面が摺動しながら、両者が相対的に移動するため、固定ピストン31がシリンダ24内部の機械的圧縮空間を圧縮する。これにより、シリンダ24内部には、十分な吹きつけ圧力が蓄圧される。
【0011】
ガス遮断器の遮断動作が進行して、接触導通状態にあった対向アーク接触子11と可動アーク接触子21が開離すると、両アーク接触子11、21間の空間として定義されるアーク空間にアークが発生する。さらに遮断動作が進行すると、両アーク接触子11、21間の距離が十分に開いて適切な流路を形成する。
【0012】
前述したようにシリンダ24内部には十分な吹きつけ圧力を蓄圧しているため、この状態で電流零点を迎えると、シリンダ24内部からのガス流が、可動アーク接触子21と絶縁ノズル23との間を通ってアーク空間に流れ込む。その結果、アーク空間に生じたアークは消弧に至り、事故電流遮断が完了する。
【0013】
以上のようにしてガス遮断器が遮断動作を行うが、その際、遮断する電流が大きな事故電流であれば、アーク接触子11、21間には数kAオーダーの大電流アークが発生する。ただし、アーク接触子11、21間の距離が大きく開いて適切なガス流路が形成され、かつシリンダ24内部に高い吹きつけ圧力が蓄圧された後でなければ、たとえ電流零点を迎えても、大電流アークが消弧されることはない。つまり、アーク接触子11、21間の十分な距離と、シリンダ24内部の十分な蓄圧が、大電流アークを消弧するための成立条件となる。
【0014】
これに対して、ガス遮断器が遅れ負荷電流や極めて小さな事故電流を遮断する場合、あるいは進み小電流等の小電流を遮断する場合は、消弧の成立条件が、上記大電流遮断の場合とは異なっている。小電流等を遮断する場合は、両アーク接触子11、21間には数百A以下の小電流アークが発生するに過ぎない。このため、アーク接触子11、21の開離直後であっても、微弱なガス流が存在すれば、十分な吹きつけ圧力を持たなくとも電流零点を迎えるだけで、簡単に小電流アークは消弧されることになる。
【0015】
電流位相によっては、アーク時間(アーク接触子11、21間のアークが継続する時間)は、限りなくゼロに近くなる。したがって、両アーク接触子11、21の開離直後にアークが消弧されるということは、両アーク接触子11、21間の距離が極めて小さい状態で、両アーク接触子11、21間に回復電圧が印加されることに他ならない。
【0016】
[再発弧]
このとき、両アーク接触子11、21間における回復電圧の大きさは、遮断対象となる電流の大きさに依存する。すなわち、ガス遮断器が、遅れ負荷電流や極めて小さな事故電流を遮断する場合は、数kHzの高い周波数の過渡回復電圧が、アーク接触子11、21間に印加されることが多い。
【0017】
つまり、開極直後のアーク接触子11、21間の距離が小さい状態で、瞬時に過渡回復電圧が立ち上がる。したがって、この時に発生する再発弧(電流零点後4分の1周期未満の時間で生じる絶縁破壊現象)については許容せざるを得ない。ただし、この再発弧は、ガス流の存在しない通電接触子12、22で発生すると遮断不能になる可能性があるので、アーク接触子11、21間で発生させる必要がある。
【0018】
[再点弧]
一方、ガス遮断器が、進み小電流等の小電流を遮断する場合は、系統からの高い回復電圧(商用周波数)が、アーク接触子11、21間に印加されることが多い。この回復電圧により、アーク接触子11、21間に再点弧(電流零点後4分の1周期以上の時間経過後に生じる絶縁破壊現象)が起きる可能性がある。
【0019】
中でも、対向アーク接触子11の先端が絶縁ノズル23の最小断面積部23a(図17に図示)を通過する領域では、再点弧が発生し易いトラベル領域となっている。過電圧レベルの低い再発弧と違い、アーク接触子11、21間に再点弧が起きると、過渡的な過電圧が発生する場合があり、系統機器の信頼性を脅かすおそれがあった。
【0020】
そこでガス遮断器では、十分な速さの絶縁回復特性を備え、アーク接触子間の速やかな絶縁回復を確保することにより、進み小電流遮断時における再点弧の回避が求められている。再点弧を回避する技術としては、アーク接触子の開極速度を向上させることが有効である。例えば特許文献1、2では、リンク機構などを用いて、特に速やかな絶縁回復が要求されるアーク接触子の開離直後における開極速度を大きく向上させている。
【0021】
ところが、近年のガス遮断器は小型化が進められているので、小型化に伴ってアーク接触子の径も小さくなり、電界が厳しくなる傾向にある。その結果、アーク接触子の開極速度を一層速める必要がある。このような開極速度のさらなる向上は、操作エネルギーの増大を招くことになり、所望の機械的信頼性を確保することが困難となっていた。
【0022】
したがってガス遮断器においては、操作エネルギーの低減化を図るべく、アーク接触子の開極速度向上の抑制が望まれており、これを実現しつつ、アーク接触子間の速やかな絶縁回復を確保することが要求されている。このような要求に応える従来技術として、特許文献3〜8等に記載されたガス遮断器が提案されている。
【0023】
特許文献3、4に記載のガス遮断器では、遮断動作時に可動接触子部側を動かすだけではなく、対向接触子部もまた可動接触子部と反対向きに駆動させている(いわゆるデュアルモーション機構)。このようなガス遮断器によれば、各接触子部の絶対的な移動速度を抑制しつつ、両アーク接触子の相対的な開極速度を高めることが可能となり、操作エネルギーの省力化と良好な絶縁回復特性を両立させている。しかし、これらの従来技術には、部品点数が増加するといったコスト的な問題があり、また、機械的・絶縁的な信頼性を確保することも課題となっている。
【0024】
さらに、特許文献5〜8のガス遮断器では、絶縁ノズルの形状を改良することで、ガス流に起因するアーク接触子先端近傍での圧力・密度低下を防止し、速やかな絶縁回復を実現している。しかし、最近のガス遮断器では、機械的圧縮による蓄圧依存度が低下し、アークエネルギーを用いた蓄圧の寄与が増加している。このため、進み小電流等の小電流遮断時には、蓄圧室の圧力上昇が弱く、もともと、ガス流に起因するアーク接触子先端近傍での圧力・密度低下の問題は無視できる程度である。したがって、これらの技術の有効性は必ずしも高いわけではない。
【0025】
以上のような技術的な背景のもと、アーク接触子の開極速度を抑えつつ、アーク接触子間の速やかな絶縁回復を実現するガス遮断器として、アーク接触子の電界緩和を図ったものが広く採用されている。例えば、対向通電接触子12を可動接触子部20側に寄せて配置することで、対向アーク接触子11と対向通電接触子12の先端同士を結ぶ接線と中心軸のなす角度θを90度よりも小さくしたガス遮断器が提案されている(ちなみに図17に示したガス遮断器ではθは90度である)。このようなガス遮断器によれば、対向アーク接触子11の電界を緩和することが可能となる。
【0026】
さらには、図19や図20に示すように、対向通電接触子12の外周部分に、電界シールド15、16を設けたガス遮断器も提案されている。電界シールド15、16の先端部は、対向通電接触子12の先端部よりも可動接触子部20側に位置している。電界シールド15は、その先端部が内側方向に円弧に描いて構成され、対向通電接触子12の先端部を覆うように配置されている。また、電界シールド16は、その先端部が外側方向に円弧に描いて構成されている。これらの電界シールド15、16を対向通電接触子12の外周部分に設置することで、対向アーク接触子11の電界を緩和することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開2003−217408号公報
【特許文献2】特開2004−55420号公報
【特許文献3】特開2003−109476号公報
【特許文献4】特開平5−250967号公報
【特許文献5】特開平8−203395号公報
【特許文献6】特開平7−320612号公報
【特許文献7】特開平5−135668号公報
【特許文献8】特開平5−74286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
上述したように、アーク接触子間の速やかな絶縁回復を確保して再点弧を回避するガス遮断器では、操作エネルギーの省力化を図るためにアーク接触子の開極速度向上を抑制したいという要求がある。この要求に応えるガス遮断器として、対向アーク接触子11の電界を緩和する電界シールド15、16を設置したものが提案されていた。
【0029】
しかしながら、電界シールド15、16を設置したガス遮断器においては、次のような課題が指摘されていた。すなわち、電界シールド15、16を設置したことで、これに隣接する対向通電接触子12の電界が大きくなることは否めない。その結果、ガス遮断器が、遅れ負荷電流や極めて小さな事故電流を遮断する場合に、アーク接触子11、21間に再発弧が起きるのではなく、通電接触子12、22間にて再発弧が起きてしまうといった問題が生じた。
【0030】
既に述べたように遅れ負荷電流遮断時などに起きる再発弧は許容されているものの、それはあくまでも、ガス流が存在するアーク接触子11、21間で発生することを前提としている。すなわち、ガス流が存在しない通電接触子12、22間に再発弧が発生すれば、遮断不能になるおそれがある。このため、通電接触子12、22間での再発弧は、回避する必要がある。
【0031】
したがって、アーク接触子11、21の開極直後は、対向通電接触子12の電界増大を抑えることが要請されており、電界シールド15、16による対向アーク接触子11の電界緩和には限界があった。具体的には、対向アーク接触子11とシールド15、16の先端を結ぶ接線と中心軸のなす角度をシールド角度θとするとき、シールド角度θは直角に近い角度であって、小さくても80度を超える程度に構成されることが多かった。
【0032】
なお、電界シールド15、16による対向アーク接触子11の電界緩和を制約したいのは、通電接触子12、22間での再発弧の発生を回避するためである。したがって、アーク接触子11、21の開極が進んだ後は、シールド15、16が電界緩和効果を発揮することが望ましく、確実な再点弧の回避が望まれる状況に変わりはない。
【0033】
実施形態のガス遮断器は、以上のような従来技術の課題を解決するために提案されたものであり、アーク接触子の開極直後では電界シールドによる電界緩和効果を抑えて通電接触子間における再発弧を回避することができ、アーク接触子の開極が進むと電界シールドが軸方向に沿って移動することで電界緩和効果を発揮することが可能であり、これにより、アーク接触子における開極速度向上を抑制しつつ、良好な進み小電流遮断性能を確保したガス遮断器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0034】
前記目的を達成するために、実施形態のガス遮断器では、消弧性ガスが充填された密閉容器内の中心軸上に、第1通電接触子および第1アーク接触子を有する第1接触子部と、第2通電接触子および第2アーク接触子を有する第2接触子部とが対向して配置され、第2通電接触子近傍には第2通電接触子と同心の電界シールドが設けられたガス遮断器において、次のような特徴がある。
【0035】
すなわち、電界シールドには、ガス遮断器の投入状態では蓄勢状態となり、ガス遮断器の遮断状態では放勢状態となる弾性体が取り付けられている。また、電界シールドは、浮動で、中心軸方向に動作可能であり、かつ前記弾性体により付勢されており、遮断動作時には弾性体が放勢されるに伴って中心軸方向において第1接触子側へ動作するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1の実施形態のガス遮断器にて遮断状態を示す断面図。
【図2】第1の実施形態にて投入動作時のプレアーク発生状態を示す断面図。
【図3】第1の実施形態にて投入動作の進んだ状態を示す断面図。
【図4】第1の実施形態にて投入状態を示す断面図。
【図5】第1の実施形態にて遮断動作の初期の状態を示す断面図。
【図6】第1の実施形態にて遮断動作時のアーク発生状態を示す断面図。
【図7】第1の実施形態にて遮断動作の進んだ状態を示す断面図。
【図8】角度θの遮断動作時の変化の例を示したグラフ。
【図9】第2の実施形態のガス遮断器にて遮断状態を示す断面図。
【図10】第2の実施形態にて投入状態を示す断面図。
【図11】第3の実施形態のガス遮断器にて遮断状態を示す断面図。
【図12】第3の実施形態にて投入状態を示す断面図。
【図13】第4の実施形態のガス遮断器にて遮断状態を示す断面図。
【図14】第4の実施形態にて投入状態を示す断面図。
【図15】第5の実施形態のガス遮断器にて遮断状態を示す断面図。
【図16】第5の実施形態にて投入状態を示す断面図。
【図17】従来のガス遮断器の遮断状態を示す断面図。
【図18】従来のガス遮断器の投入状態を示す断面図。
【図19】電界シールドを設けた従来のガス遮断器の断面図。
【図20】電界シールドを設けた従来のガス遮断器の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、実施形態であるガス遮断器について、図面を参照して具体的に説明する。なお、下記の実施形態における基本的な構成は図17〜図20に示した従来のガス遮断器と同様であり、同一部材に関しては同一符号を付して説明は省略する。また、可動接触子部20の位置関係についても、図17と同様である。
【0038】
[1]第1の実施形態
[1−1]構成
図1〜図7は、第1の実施形態の断面図であって、図1は遮断状態、図2は投入動作時のプレアーク発生状態、図3は投入動作の進んだ状態、図4は投入状態、図5は遮断動作の初期の状態、図6は遮断動作時のアーク発生状態、図7は遮断動作の進んだ状態を示している。
【0039】
第1の実施形態は、図1〜図7に示すように、対向通電接触子12の外側には、電界シールド41が同心状に設けられている。電界シールド41の先端部は外側方向に円弧に描いて構成されている。電界シールド41の先端形状は、図20に示した電界シールド16のそれと、ほぼ同一の形状である。電界シールド41の基端部には、引っ張りばねであるコイルバネ42が結合されている。
【0040】
また、電界シールド41の基端部は、同じく同心に設けられたガイド43に収納されており、ガイド43の内壁部に沿って中心軸方向に移動するように規定されている。ガイド43には電界シールド41基端部に結合されたコイルバネ42が収納されている。コイルバネ42の弾性力によって電界シールド41は可動接触子部20側に付勢されている。
【0041】
すなわち、電界シールド41は、浮動であって、中心軸方向に動作可能であり、コイルバネ42により付勢され、遮断動作時にはコイルバネ42が放勢されるに伴って中心軸方向において可動接触子部20側へ動作するように構成されている。さらに、可動接触子部20の可動通電接触子22の外側には、同心の突起部44が取り付けられている。突起部44は電界シールド41と対向する位置に配置されており、リング状の部材から構成されている。
【0042】
ところで、電界シールド41および対向アーク接触子11の可動接触子部20側の先端を結ぶ接線と中心軸の成す角度をシールド角度θとしたとき、このシールド角度θは次のように設定されている。図1の遮断状態において、コイルバネ42は自由長にあり、シールド角度θは70度〜90度の範囲に設定されるのが好適である。また、図4に示す投入状態では、シールド角度θは90度〜110度となるように設定されるのが好適である。第1の実施形態では、遮断状態でのシールド角度θが85度、投入状態でのシールド角度θが105度に設定されている。
【0043】
[1−2]作用
以上の構成を有する第1の実施形態の投入動作および遮断動作について説明する。ガス遮断器が投入動作を開始すると、操作ロッド25が前方に移動し、この操作ロッド25を含む可動接触子部20が一体的に前進する。図2に示すように対向アーク接触子11と可動アーク接触子21の距離が小さくなると、絶縁破壊に至り、アーク接触子11、21間にプレアーク51が発生する。
【0044】
さらに、投入動作が進行して図3に示した段階では、電界シールド41と突起部44の先端が係合する。電界シールド41は突起部44により図3中の左方向に押し込まれていき、同時にコイルバネ42は引っ張りの向きに蓄勢される。図4に示した投入完了状態に至ると、シールド角度θは105度程度となる。
【0045】
次に、ガス遮断器が遮断動作を開始すると、操作ロッド25が後方に移動していき、操作ロッド25を含む可動接触子部20が一体的に後退する。これにより、固定された固定ピストン31に対し、操作ロッド25とシリンダ24が一体的に移動することになり、シリンダ24と固定ピストン31が相対移動し、シリンダ24内部に形成される機械的圧縮空間が圧縮される。
【0046】
図5に示すように、遮断動作初期の段階では、突起部44は電界シールド41から開離する。電界シールド41は蓄勢されたコイルバネ42により付勢されているため、可動接触子部20方向(図中の右方向)に移動を開始する。ここで、電界シールド41の移動に際しての加速度は、電界シールド41およびコイルバネ42の質量、コイルバネ42の荷重、電界シールド41およびガイド43の間の摺動摩擦力で決まる。
【0047】
図6に示したように、アーク接触子11、21間の開離直後のギャップが短い状態では、電界シールド41の変位はわずかであり、シールド角度θは未だ大きい状態にある。さらに遮断動作が進行し、図7の状態に至ると、電界シールド41の移動も大きく進み、シールド角度θも小さくなっていく。その後、図1に示した完全遮断状態に至ると、コイルバネ42は完全に放勢された状態となる。
【0048】
図8は、電界シールド41の移動によるシールド角度θの遮断動作時の変化の例を示したグラフである。投入状態において、シールド角度θは105度程度であり、遮断動作開始後、突起部44が電界シールド41から開離すると、シールド角度θは変化を開始し、アーク接触子11、21間の開離直後ではシールド角度θは未だ大きいものの、電界シールド41の移動に連れて小さくなり、完全遮断状態では85度程度となる。
【0049】
特に、第1の実施形態では、進み小電流遮断時に再点弧の発生しやすいトラベル領域(図8のグラフにおいて可動部トラベル30%を超えた付近)で、シールド角度θが90度を下回るようになっている。これは、図7に示す如く、対向アーク接触子11の先端が絶縁ノズル23の最小断面積部23aを通過する領域において、電界シールド41の動作が進行し、シールド角度θが90度を下回ることを表している。
【0050】
[1−3]効果
上記第1の実施形態によれば、次のような効果が得られる。すなわち、ガス遮断器において小電流を遮断する時、両アーク接触子11、21の開離直後に電流零点を迎えると、アークが消弧される。
【0051】
小電流遮断が、リアクトル遮断のような遅れ負荷電流遮断や、極めて小さな事故電流遮断であれば、数kHzの高周波の過渡回復電圧がアーク接触子11、21に印加される。この時、アーク接触子11、21の開極直後の段階では、電界シールド41の変位は殆どなく、シールド角度θは105度程度と大きい。したがって、電界シールド41の電界を抑制することができ、対向通電接触子12の電界が大きくならない。その結果、再発弧はアーク接触子11、21間で確実に発生し、通電接触子12、22間や電界シールド41付近にて、再発弧が発生する心配がない。これにより、次の電流零点を迎えれば、ガス流の存在により再び消弧される。
【0052】
また、第1の実施形態における小電流遮断において、進み小電流遮断のように商用周波数の回復電圧が印加された場合には、電界シールド41が移動した後なので、電界緩和効果を発揮する。すなわち、遮断動作が進み、対向アーク接触子11が絶縁ノズル23の最小断面積23aにさしかかると、高い電圧が印加された状態に至った頃には、コイルバネ42の付勢力を受けた電界シールド41が、アーク接触子11、21間の開離から時間遅れを持って移動し、シールド角度θは85度程度と小さくなる。
【0053】
このため、電界シールド41は十分な電界緩和効果を発揮することができる。したがって、対向アーク接触子11の電界を緩和させることができ、アーク接触子11、21間の再点弧を確実に回避することが可能となる。これにより、第1の実施形態では、アーク接触子11、21の開極速度を抑えて操作エネルギーを増大させることなく、アーク接触子11、21間の速やかな絶縁回復を実現することができる。
【0054】
以上のように第1の実施形態によれば、アーク接触子11、21の開極速度を抑制しても、速やかな絶縁回復が得られ、良好な進み小電流遮断性能が得られる。と同時に、周波数の高い過渡回復電圧が印加される小電流遮断においては、通電接触子12、22や電界シールド41における再発弧を回避することができる。したがって、遮断不能に陥る心配が無く、優れた信頼性を獲得することができる。
【0055】
[2]第2の実施形態
[2−1]構成
図9、図10は、第2の実施形態の断面図であって、図9は遮断状態、図10は投入状態を示している。第2の実施形態の基本構成は、前記第1の実施形態と同様である。
【0056】
第2の実施形態の構成上の特徴は、次の2点である。すなわち、突起部44の先端に、対向接触子部10方向に延びる先端絶縁物45が設けられる。また、遮断状態において電界シールド41の設置位置を可動接触子部20寄りに設けることにより、上記第1の実施形態よりもシールド角度θを小さく設定されている。
【0057】
シールド角度θに関しては、図9に示した遮断状態では、第2の実施形態ではシールド角度θが75度程度となるように構成されている。また、図10に示す投入状態に至る時、第2の実施形態では電界シールド41と先端絶縁物45とが係合状態にあり、これにより電界シールド41の位置が規定され、シールド角度θが95度程度となるように構成されている(図8のグラフ参照)。
【0058】
[2−2]作用及び効果
以上のような第2実施の形態においては、第1の実施形態の作用効果に加えて、以下のような独自の作用効果が得られる。すなわち、第2の実施形態によれば、シールド角度θを小さくしたことで、対向アーク接触子11の電界緩和効果をいっそう高めることができる。
【0059】
また、第2の実施形態の電界シールド41は、可動接触子部20寄りに位置しているが、ガス遮断器の投入動作に際して、先端絶縁物45が電界シールド41に係合することで、電界シールド41は早い段階で図10中の左方向に押し込むことができる。したがって、投入動作時に、電界シールド41と突起部44の間で、絶縁破壊してプレアーク51が発生することがなく、電界シールド41をいためる心配がない。
【0060】
[3]第3の実施形態
[3−1]構成
図11、図12は、第3の実施形態の断面図であって、図11は遮断状態、図12は投入状態を示している。第3の実施形態の基本構成は、上記第1および第2の実施形態と同様である。第3の実施形態は、引っ張り方向に蓄勢されるコイルバネ42に代えて、圧縮ばねからなるコイルバネ46が、ガイド43に収納された点に特徴がある。コイルバネ46は電界シールド41の移動により圧縮方向に蓄勢されるように構成されている。
【0061】
[3−2]作用及び効果
以上のような第3実施の形態においては、第1および第2の実施の形態の作用効果に加えて、コイルバネ46が圧縮ばねである分、引っ張りばねに比べてコンパクトであり、設置スペースを小さくすることができる。したがって、機器のコンパクト化に寄与することが可能である。
【0062】
[4]第4の実施形態
[4−1]構成
図13、図14は、第4の実施形態の断面図であって、図13は遮断状態、図14は投入状態を示している。第4の実施形態の基本構成は、前記第1〜第3の実施形態と同様である。第4の実施形態の構成上の特徴は、小径の複数のコイルバネ47が円周上にガイド43内に配置された点にある。
【0063】
[4−2]作用及び効果
第4の実施形態においては、第1〜第3の実施形態の作用効果に加え、次のような独自の作用効果が得られる。すなわち、分割して構成したコイルバネ47を用いることにより、よりコンパクト化を進めることができ、組立性も向上する。しかも、コイルバネ47の自重を軽くすることができるので、応答速度を速くすることができる。
【0064】
[5]第5の実施形態
[5−1]構成
図15、図16は、第5の実施形態の断面図であって、図15は遮断状態、図16は投入状態を示している。第5の実施形態の基本構成は、上記第4の実施形態と同様である。
【0065】
第5の実施形態は、次のような構成を持つ電界シールド48を備えた点に特徴がある。電界シールド48は、その先端が内側に丸まり対向通電接触子12先端を覆うようにして設けられている。つまり、電界シールド48の先端形状は、図19に示した電界シールド15のそれと、ほぼ同一の形状となっている。
【0066】
[5−2]作用及び効果
第5の実施形態においては、第1〜第4の実施形態の作用効果に加えて、次のような独自の作用効果が得られる。すなわち、電界シールド48は先端部が内側に丸まっている分だけ、電界シールド48と対向アーク接触子11の距離は近くなる。したがって、電界シールド48による対向アーク接触子11の電界緩和効果が高まる。また、電界シールド48の先端部が対向通電接触子12を覆うため、対向通電接触子12が通電により痛んだ状態にあったとしても、通電接触子12、22間の絶縁破壊を回避することができる。
【0067】
[6]その他の実施形態
本発明の実施形態は、上記の実施形態に限定されるものではなく、電界シールドの形状やシールド角度θ、電界シールドの移動加速度等は適宜変更可能である。また、対向接触子部を可動接触子部と反対側へ駆動して相対的な開極速度を向上させるデュアルモーション機構を備えたガス遮断器や、アークエネルギーを用いて上流の蓄圧を得るいわゆる自力効果を用いたタイプのガス遮断器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
10…対向接触子部
11…対向アーク接触子
12…対向通電接触子
13…支持部
14…サポート
15、16、41、48…電界シールド
20…可動接触子部
21…可動アーク接触子
22…可動通電接触子
23…絶縁ノズル
24…シリンダ
25…操作ロッド
31…ピストン
42、46、47…コイルバネ
43…ガイド
44…突起部
45…先端絶縁物
51…プレアーク
θ…シールド角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消弧性ガスが充填された密閉容器内の中心軸上に、第1接触子部および第2接触子部が対向して配置され、前記第1接触子部には第1通電接触子および第1アーク接触子が、前記第2接触子部には第2通電接触子および第2アーク接触子が、それぞれ設けられ、少なくとも前記第1接触子部は、連結された駆動装置により遮断動作時及び投入動作時に動作するように構成され、さらに、前記第1アーク接触子および第2アーク接触子は、通常運転時は接触導通状態にあり、遮断動作時は開離するとともに、両接触子間の空間として定義されるアーク空間にアークを発生するように構成されたガス遮断器において、
前記第2通電接触子近傍には、前記第2通電接触子と同心に、浮動で、中心軸方向に動作可能な電界シールドが設けられ、
前記電界シールドには弾性体が取り付けられ、
前記弾性体はガス遮断器の投入状態では蓄勢状態、ガス遮断器の遮断状態では放勢状態となるよう構成され、
前記電界シールドは、前記弾性体により付勢され、遮断動作時に前記弾性体が放勢されるに伴って中心軸方向において前記第1接触子側へ動作するように構成されたことを特徴とするガス遮断器。
【請求項2】
前記第1アーク接触子および前記電界シールドの前記第2接触子部側の先端を結ぶ接線と中心軸の成す角度をθとしたとき、投入状態におけるθは、90度〜110度であり、遮断状態におけるθは70度〜90度であるように構成されたことを特徴とする請求項1記載のガス遮断器。
【請求項3】
前記アーク接触子間に消弧性ガスを供給するための絶縁ノズルが配置され、
前記第1アーク接触子の前記第2接触子部側の先端部が、前記絶縁ノズルの最小断面積部を通過する時の前記角度θは70度〜90度であるように構成されたことを特徴とする請求項2記載のガス遮断器。
【請求項4】
前記第2接触子部には、前記第1接触子部に対向して、先端部に絶縁物を備えた突起部が設けられ、
投入動作時、前記突起部の絶縁物と前記電界シールドは係合され、前記弾性体が蓄勢されるように構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項5】
前記弾性体は、コイルバネで構成され、圧縮方向に蓄勢されるように構成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項6】
前記弾性体は、小径の複数のコイルバネで構成され、前記コイルバネは円周上に配置されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項7】
前記電界シールドは、前記第1通電接触子の前記第2接触子部側の先端を覆うように構成されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項1】
消弧性ガスが充填された密閉容器内の中心軸上に、第1接触子部および第2接触子部が対向して配置され、前記第1接触子部には第1通電接触子および第1アーク接触子が、前記第2接触子部には第2通電接触子および第2アーク接触子が、それぞれ設けられ、少なくとも前記第1接触子部は、連結された駆動装置により遮断動作時及び投入動作時に動作するように構成され、さらに、前記第1アーク接触子および第2アーク接触子は、通常運転時は接触導通状態にあり、遮断動作時は開離するとともに、両接触子間の空間として定義されるアーク空間にアークを発生するように構成されたガス遮断器において、
前記第2通電接触子近傍には、前記第2通電接触子と同心に、浮動で、中心軸方向に動作可能な電界シールドが設けられ、
前記電界シールドには弾性体が取り付けられ、
前記弾性体はガス遮断器の投入状態では蓄勢状態、ガス遮断器の遮断状態では放勢状態となるよう構成され、
前記電界シールドは、前記弾性体により付勢され、遮断動作時に前記弾性体が放勢されるに伴って中心軸方向において前記第1接触子側へ動作するように構成されたことを特徴とするガス遮断器。
【請求項2】
前記第1アーク接触子および前記電界シールドの前記第2接触子部側の先端を結ぶ接線と中心軸の成す角度をθとしたとき、投入状態におけるθは、90度〜110度であり、遮断状態におけるθは70度〜90度であるように構成されたことを特徴とする請求項1記載のガス遮断器。
【請求項3】
前記アーク接触子間に消弧性ガスを供給するための絶縁ノズルが配置され、
前記第1アーク接触子の前記第2接触子部側の先端部が、前記絶縁ノズルの最小断面積部を通過する時の前記角度θは70度〜90度であるように構成されたことを特徴とする請求項2記載のガス遮断器。
【請求項4】
前記第2接触子部には、前記第1接触子部に対向して、先端部に絶縁物を備えた突起部が設けられ、
投入動作時、前記突起部の絶縁物と前記電界シールドは係合され、前記弾性体が蓄勢されるように構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項5】
前記弾性体は、コイルバネで構成され、圧縮方向に蓄勢されるように構成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項6】
前記弾性体は、小径の複数のコイルバネで構成され、前記コイルバネは円周上に配置されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項7】
前記電界シールドは、前記第1通電接触子の前記第2接触子部側の先端を覆うように構成されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−146405(P2012−146405A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1832(P2011−1832)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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