説明

ガス遮断器

【課題】本発明の実施形態が解決しようとする課題は、アーク時間が長い場合にもアークプラズマへのガス流の吹き付け力を高めたガス遮断器を提供することとする。
【解決手段】本発明の実施形態のガス遮断器は、消弧性ガスが充填されたタンク内に設置された第1のアーク接触子と、前記第1のアーク接触子と対向して設置され、遮断動作時および投入動作時に前記第1のアーク接触子と接離する第2のアーク接触子と、前記第1のアーク接触子と前記第2のアーク接触子との接触部に連結し、遮断動作時に容積が圧縮されるパッファ室容器と、前記パッファ室容器と貫通孔を介して連結する畜圧室容器と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガス遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
電流遮断機能を有する開閉装置として一般的に使用されているものとしてガス絶縁開閉器がある。このガス絶縁開閉器には,その使用目的,必要とされる機能に応じて,負荷開閉器,断路器,遮断器など様々なものが存在する。その多くは六フッ化硫黄ガス(以下、SF6ガスという。)等の消弧性ガス中に一対の接点を配置し、通電時には両者を接触状態に保つことで通電を行い,電流遮断時には接点を開離させて前記ガス中にアークプラズマ放電を発生させ,そのアークプラズマを消弧することで電流を遮断する方式のものである。
【0003】
ここでは,72kV以上の高電圧送電系統の保護用開閉器として広く使用されているパッファ形ガス遮断器を例にとり,従来の技術を説明する。
【0004】
図16はこのようなガス遮断器の断面構造図の一例であり、図16(a)は遮断動作初期の開極直後、図16(b)は遮断動作後期における断面図を示している。また、図16の各部品は中心軸を中心として円筒形状であるため、断面図の半分を図示している。図16に示すように、接地された金属あるいは碍子等からなる密閉容器15内には、消弧性ガス16が充填されている。
【0005】
近年普及しているガス遮断器においては、消弧性ガス16として、SF6ガスが使用されることが多い。SF6ガスは、アークプラズマを消滅させる性能(消弧性能)、および電気絶縁性能に優れており、特に高電圧送電系統に用いられる電流の開閉装置においては広く使用されている。
【0006】
密閉容器15内には可動アーク接触子1および固定アーク接触子2が対向して配置されている。可動アーク接触子1および固定アーク接触子2は通常運転時では接触導通状態にあり、遮断動作時は相対移動により開離すると共に可動アーク接触子1および固定アーク接触子2間の空間にアークプラズマ17が発生される。さらに、破線矢印で示す遮断方向13にパッファ室容器4等が移動してパッファ室5の圧力が高くなり、アークプラズマ17に向かってガス流12aが発生する。
【0007】
以上を含む構成を有するガス遮断器の遮断過程において、パッファ室5の圧力は2つの方法により上昇される。ひとつの方法は固定アーク接触子2と可動アーク接触子1の間に発生する非常に高温なアークプラズマ17のエネルギーによるもの、もうひとつの方法はパッファ室5が機械的に圧縮されることによるものである。これによりパッファ室5内に存在する消弧性ガス16が高圧力のガス流12aとなってノズル3および可動アーク接触子1の間を通過してアークプラズマ17へ高速に吹き付けられる。
【0008】
アークプラズマ17は、消弧性ガス16がガス流12aとして吹き付けられることにより消滅され、電流が遮断できるようになる。一般的に、パッファ室5の圧力が高いほど、消弧性ガス16が強力にアークプラズマ17へと吹付けられるため、より高い電流遮断性能が得られることが知られている。なお、高温のアークプラズマ17に吹付けられた消弧性ガス16は高温状態となり、可動アーク接触子1内および固定アーク接触子2とノズル3の間を通過して、最終的には密閉容器15内へ放散される。
【0009】
また、パッファ室5を中心軸方向に2分割し、アークプラズマ17に近い方のパッファ室の容積を限定することで、特に大電流遮断時にアークプラズマ17への高い吹付け圧力を獲得する方式などが提案されている。
【0010】
この方式によると、パッファ室の圧力上昇にアークプラズマの熱エネルギーを積極的に活用することで、より高い吹付け圧力が得られ、遮断性能を向上させることができる。このため遮断器を小形化することができ、固定アーク接触子の駆動に必要なエネルギーが低減されることにより、駆動装置は小形、低コストとなり、機械的な信頼性も向上する。
【0011】
ガス遮断器ではアーク時間が長いときに電流遮断する際、電流零点付近でアークプラズマに吹き付ける必要があるが、上述のような消弧方式では、電流零点付近の時間帯はパッファ室の容積が小さく、機械的圧縮による吹き付け力は弱くなる。そのため、遮断に失敗するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭62−276717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、アーク時間が長い場合にもアークプラズマへのガス流の吹き付け力を高めたガス遮断器を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施形態のガス遮断器は、消弧性ガスが充填されたタンク内に設置された第1のアーク接触子と、前記第1のアーク接触子と対向して設置され、遮断動作時および投入動作時に前記第1のアーク接触子と接離する第2のアーク接触子と、前記第1のアーク接触子と前記第2のアーク接触子との接触部に連結し、遮断動作時に容積が圧縮されるパッファ室容器と、前記パッファ室容器と貫通孔を介して連結する畜圧室容器と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態におけるガス遮断器の遮断動作初期の状態を示す断面図。
【図2】第1の実施形態におけるガス遮断器のX−X’断面図。
【図3】第1の実施形態におけるガス遮断器の遮断動作中期の状態を示す断面図。
【図4】第1の実施形態におけるガス遮断器の遮断動作後期の状態を示す断面図。
【図5】第1の実施形態におけるガス遮断器の畜圧室容器25を円筒形状とした場合のX−X’断面図。
【図6】第2の実施形態におけるガス遮断器の遮断動作初期の状態を示す断面図。
【図7】第2の実施形態におけるガス遮断器のX−X’断面図。
【図8】第2の実施形態におけるガス遮断器の遮断動作中期の状態を示す断面図。
【図9】第2の実施形態におけるガス遮断器の遮断動作後期の状態を示す断面図。
【図10】第2の実施形態におけるガス遮断器の畜圧室容器25を複数備えた場合のX−X’断面図。
【図11】第3の実施形態におけるガス遮断器の遮断動作初期の状態を示す断面図。
【図12】第3の実施形態におけるガス遮断器のX−X’断面図。
【図13】第3の実施形態におけるガス遮断器の遮断動作中期の状態を示す断面図。
【図14】第3の実施形態におけるガス遮断器の遮断動作後期の状態を示す断面図。
【図15】第3の実施形態におけるガス遮断器の畜圧室容器25を複数備えた場合のX−X’断面図。
【図16】(a)従来のガス遮断器の遮断動作初期の状態を示す断面図。(b)従来のガス遮断器の遮断動作後期の状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態におけるガス遮断器について図面を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
第1の実施形態にけるガス遮断器の構成について図1および図2を用いて説明する。図1は、ガス遮断器の遮断動作初期の開極直後の状態を示す断面図である。図1のガス遮断器は、中心軸を中心として円筒形状であるため、断面図の半分を示している。
【0018】
ガス遮断器は、可動アーク接触子1、固定アーク接触子2、ノズル3、パッファ室容器4、密閉容器15、ピストン19、畜圧室容器25を備えている。
【0019】
接地された金属あるいは碍子等からなる密閉容器15内には、消弧性ガス16が充填されている。密閉容器15内には可動アーク接触子1および固定アーク接触子2が対向して配置されている。可動アーク接触子1および固定アーク接触子2は通常運転時では接触導通状態にあり、遮断動作時は可動アーク接触子1が破線矢印で示す遮断方向13に移動し、可動アーク接触子1と固定アーク接触子2との間の空間にアークプラズマ17を発生させる。
【0020】
ノズル3は、固定アーク接触子2に隣接しており、パッファ室容器4と接続している。このパッファ室容器4は、可動アーク接触子1とピストン19によりパッファ室5を形成する。パッファ室5には消弧性ガス16が充填されている。また、ノズル3とパッファ室容器4とは、ガス遮断器の遮断動作時には破線矢印で示す遮断方向13に移動する。
【0021】
ピストン19は、可動アーク接触子1と隣接しているが、ガス遮断器の遮断動作時にも移動しない。そのため、遮断動作時にはピストン19は、パッファ室容器4および可動アーク接触子1と摺動する。
【0022】
また、ピストン19のパッファ室5との境界壁には貫通孔19aが設けられており、この貫通孔19aのピストン19側に畜圧室容器25が設置されている。この畜圧室容器25は、例えばベローズ等により容積可変に構成され、内部に畜圧室18を形成する。この畜圧室18は、消弧性ガス16が充填されており、貫通孔を介してパッファ室5と連結している。
【0023】
また、図2は図1におけるX−X’断面図である。
【0024】
可動アーク接触子1、パッファ室容器4、ピストン19、および密閉容器15はいずれも同心円状に形成されており、密閉容器15の内側には消弧性ガス16が充填されている。
【0025】
さらに、畜圧室容器25はピストン19内に複数備えられている。
【0026】

(作用)
上述した構成を備えるガス遮断器の動作について図1、図3および図4を用いて説明する。図1は、ガス遮断器の遮断動作初期の開極直後の状態を示している。図3は、ガス遮断器の遮断動作中期の状態を示している。図4は、ガス遮断器の遮断動作後期の状態を示している。
【0027】
図1に示す遮断動作初期では、可動アーク接触子1、ノズル3、およびパッファ室容器4は、遮断方向13に移動しているが、ピストン19は固定されている。そのため、パッファ室5の容積が減少し、パッファ室5内の消弧性ガス16の圧力(以下、ガス圧力とする)が上昇するため、パッファ室5からアークプラズマ17へ向かうガス流12aが発生する。また同様に、パッファ室5内のガス圧力が上昇しているため、パッファ室5から畜圧室18に向かうガス流12cが発生し、畜圧室18の容積を増加させる。
【0028】
また、図3に示す遮断動作中期でも、可動アーク接触子1、ノズル3、およびパッファ室容器4は、遮断方向13に移動しているが、ピストン19は固定されている。しかし、高温のアークプラズマ17によるエネルギーにより、アークプラズマ17付近のガス圧力がパッファ室5のガス圧力より大きくなるため、アークプラズマ17からパッファ室5に向かうガス流12bが発生する。そのため、パッファ室5内のガス圧力が上昇を続け、パッファ室5から畜圧室18に向かうガス流12cも継続するため、さらに畜圧室18の容積を増加させる。ここで、実際にアークプラズマ17からパッファ室5に向かうガス流12bが発生するタイミングは、遮断時の電流値(以下、遮断電流とする)、アークプラズマ17が継続する時間(以下、アーク時間とする)、等に依存する。
【0029】
また、図4に示す遮断動作後期では、可動アーク接触子1、ノズル3、およびパッファ室容器4の移動は完了し、固定されている。この時、パッファ室5へのアークプラズマ17からのエネルギーの流入は減少するため、パッファ室5内のガス圧力が減少する。そして、パッファ室5内のガス圧力が、畜圧室18内のガス圧力より小さくなると、畜圧室18からパッファ室5に向かうガス流12dが発生し、そのガス流12dによりパッファ室5から押し出された消弧性ガス16が、アークプラズマ17に向かうガス流12aとなる。
【0030】
(効果)
このような上記の動作により、遮断動作後期においても、パッファ室5の圧力が低下すると蓄圧室18の圧力の方が高くなり、蓄圧室18からパッファ室5へ向かうガス流12dによって、パッファ室5からアークプラズマ17へ向かうガス流12aが発生し、アークプラズマ17への消弧性ガス16の吹き付けが強くなる。そのため、アークプラズマ17が遮断動作後期まで継続する場合にも、アークプラズマ17を消弧し、遮断を完了させることが可能である。
【0031】

なお、畜圧室18の容積、畜圧室18を構成するベローズのバネ強度、畜圧室18とパッファ室5を連結する貫通孔19aの大きさ、パッファ室5の容積、等は、任意に設定可能であり、ガス流12a、12b、12cの強さ、タイミングを変更することが可能である。
【0032】
また、図2に示す本実施形態のガス遮断器のX−X’断面図では、畜圧室容器25を複数設置していたが、図5に示すように、円筒形状の畜圧室容器25をピストン19内に設置しても良い。
【0033】

(第2の実施形態)
(構成)
第2の実施形態にけるガス遮断器の構成について図6および図7を用いて説明する。図6は、ガス遮断器の遮断動作初期の開極直後の状態を示す断面図である。図6のガス遮断器は、中心軸を中心として円筒形状であるため、断面図の半分を示している。第1の実施形態の図1と同一の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0034】
第1の実施形態と異なる点は、畜圧室容器25の容積を固定とし、パッファ室5と畜圧室18との境界壁に逆止弁27a、27bを備えた点である。
【0035】
逆止弁27aは、パッファ室5と畜圧室18との境界壁に設けられた貫通孔に設置され、パッファ室5から畜圧室18への消弧性ガス16の移動を可能とし、畜圧室18からパッファ室5への消弧性ガスの移動を防止している。また、逆止弁27aは、バネ等の弾性体により付勢されて貫通孔を閉塞している。
【0036】

逆止弁27bも同様に、パッファ室5と畜圧室18との境界壁に設けられた貫通孔に設置され、畜圧室18からパッファ室5への消弧性ガスの移動を可能とし、パッファ室5から畜圧室18への消弧性ガスの移動を防止している。また、逆止弁27bは、バネ等の弾性体により付勢されて貫通孔を閉塞している。
【0037】
また、図7は図6におけるX−X’断面図である。
【0038】
可動アーク接触子1、パッファ室容器4、ピストン19、密閉容器15、および畜圧室容器25はいずれも同心円状に形成されており、密閉容器15の内側には消弧性ガス16が充填されている。
【0039】
(作用)
上述した構成を備えるガス遮断器の動作について図6、図8、および図9を用いて説明する。図6は、ガス遮断器の遮断動作初期の開極直後の状態を示している。図8は、ガス遮断器の遮断動作中期の状態を示している。図9は、ガス遮断器の遮断動作後期の状態を示している。
【0040】
図6に示す遮断動作初期では、可動アーク接触子1、ノズル3、およびパッファ室容器4は、遮断方向13に移動しているが、ピストン19は固定されている。そのため、パッファ室5の容積が減少し、パッファ室5内の消弧性ガス16の圧力(以下、ガス圧力とする)が上昇するため、パッファ室5からアークプラズマ17へ向かうガス流12aが発生する。また同様に、パッファ室5内のガス圧力が上昇しているため、パッファ室5から逆止弁27aを通って畜圧室18に向かうガス流12cが発生する。
【0041】
また、図8に示す遮断動作中期でも、可動アーク接触子1、ノズル3、およびパッファ室容器4は、遮断方向13に移動しているが、ピストン19は固定されている。しかし、高温のアークプラズマ17によるエネルギーにより、アークプラズマ17付近のガス圧力がパッファ室5のガス圧力より大きくなるため、アークプラズマ17からパッファ室5に向かうガス流12bが発生する。そのため、パッファ室5内のガス圧力が上昇を続け、パッファ室5から逆止弁27aを通って畜圧室18に向かうガス流12cも継続する。ここで、実際にアークプラズマ17からパッファ室5に向かうガス流12bが発生するタイミングは、遮断時の電流値(以下、遮断電流とする)、アークプラズマ17が継続する時間(以下、アーク時間とする)、等に依存する。
【0042】
また、図9に示す遮断動作後期では、可動アーク接触子1、ノズル3、およびパッファ室容器4の移動は完了し、固定されている。この時、パッファ室5へのアークプラズマ17からのエネルギーの流入は減少するため、パッファ室5内のガス圧力が減少する。そして、パッファ室5内のガス圧力が、畜圧室18内のガス圧力より小さくなると、畜圧室18から逆止弁27bを通ってパッファ室5に向かうガス流12dが発生し、そのガス流12dによりパッファ室5から押し出された消弧性ガス16が、アークプラズマ17に向かうガス流12aとなる。
【0043】
(効果)
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加え、畜圧室容器25の容積を固定とすることができ、畜圧室容器25の強度を増加させることが可能である。
【0044】
また、逆止弁27a、27bが設置される貫通孔の大きさ等を任意に設定することで、ガス流12a、12b、12cの強さ、タイミングをさらに変更することが可能である。
【0045】

なお、図7に示す本実施形態のガス遮断器のX−X’断面図では、円筒形状の畜圧室容器25を設置していたが、図10に示すように、複数の畜圧室容器25をピストン19内に設置しても良い。
【0046】


(第3の実施形態)
(構成)
第3の実施形態にけるガス遮断器の構成について図11および図12を用いて説明する。図11は、ガス遮断器の遮断動作初期の開極直後の状態を示す断面図である。図11のガス遮断器は、中心軸を中心として円筒形状であるため、断面図の半分を示している。第2の実施形態の図4と同一の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0047】
第2の実施形態と異なる点は、畜圧室18内に仕切り板28を設けた点である。
【0048】
仕切り板28は、パッファ室5と畜圧室18との境界壁に設けられ、逆止弁27aから流れ込んだ消弧性ガス16が逆止弁27bから流れ出すまでに通過する経路を長くするように構成されている。
【0049】
また、図12は図11におけるX−X’断面図である。
【0050】
可動アーク接触子1、パッファ室容器4、ピストン19、密閉容器15、畜圧室容器25、および仕切り板28はいずれも同心円状に形成されており、密閉容器15の内側には消弧性ガス16が充填されている。
【0051】

(作用)
上述した構成を備えるガス遮断器の動作について図11、図13、および図14を用いて説明する。図11は、ガス遮断器の遮断動作初期の開極直後の状態を示している。図13は、ガス遮断器の遮断動作中期の状態を示している。図14は、ガス遮断器の遮断動作後期の状態を示している。
【0052】
図11に示す遮断動作初期では、可動アーク接触子1、ノズル3、およびパッファ室容器4は、遮断方向13に移動しているが、ピストン19は固定されている。そのため、パッファ室5の容積が減少し、パッファ室5内の消弧性ガス16の圧力(以下、ガス圧力とする)が上昇するため、パッファ室5からアークプラズマ17へ向かうガス流12aが発生する。また同様に、パッファ室5内のガス圧力が上昇しているため、パッファ室5から逆止弁27aを通って畜圧室18に向かうガス流12cが発生する。
【0053】
また、図13に示す遮断動作中期でも、可動アーク接触子1、ノズル3、およびパッファ室容器4は、遮断方向13に移動しているが、ピストン19は固定されている。しかし、高温のアークプラズマ17によるエネルギーにより、アークプラズマ17付近のガス圧力がパッファ室5のガス圧力より大きくなるため、アークプラズマ17からパッファ室5に向かうガス流12bが発生する。そのため、パッファ室5内のガス圧力が上昇を続け、パッファ室5から逆止弁27aを通って畜圧室18に向かうガス流12cも継続する。ここで、実際にアークプラズマ17からパッファ室5に向かうガス流12bが発生するタイミングは、遮断時の電流値(以下、遮断電流とする)、アークプラズマ17が継続する時間(以下、アーク時間とする)、等に依存する。
【0054】
また、図14に示す遮断動作後期では、可動アーク接触子1、ノズル3、およびパッファ室容器4の移動は完了し、固定されている。この時、パッファ室5へのアークプラズマ17からのエネルギーの流入は減少するため、パッファ室5内のガス圧力が減少する。そして、パッファ室5内のガス圧力が、畜圧室18内のガス圧力より小さくなると、畜圧室18から逆止弁27bを通ってパッファ室5に向かうガス流12dが発生する。この時発生するガス流12dは、逆止弁27aから流れ込んだ消弧性ガス16がガス経路29を通ってパッファ室5に放出される。そして、ガス流12dによりパッファ室5から押し出された消弧性ガス16が、アークプラズマ17に向かうガス流12aとなる。
【0055】
(効果)
本実施形態によれば、第2の実施形態の効果に加え、逆止弁27aから流れ込んだ消弧性ガス16が逆止弁27bから流れ出すまでに通過する経路を長くできる。すなわち、消弧性ガス16が通過する経路を長くすることによって、この経路を通過中には消弧性ガス16が冷やされるため、遮断動作後期に発生するパッファ室5からアークプラズマ17へ向かうガス流12aの温度を低下にすることができる。アークプラズマ17へ吹き付けるガス流12aの温度を低下させることによって、吹き付けられる消弧性ガス16の絶縁性能を向上させることが可能である。
【0056】

なお、図12に示す本実施形態のガス遮断器のX−X’断面図では、円筒形状の畜圧室容器25を設置していたが、図15に示すように、複数の畜圧室容器25をピストン19内に設置しても良い。
【0057】

本発明に係る実施形態によれば、アーク時間が長い場合にもアークプラズマへのガス流の吹き付け力を高めたガス遮断器を提供することが可能となる。
【0058】

以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1…可動アーク接触子
2…固定アーク接触子
3…ノズル
4…パッファ室容器
5…パッファ室
12a、12b、12c、12d…ガス流
13…遮断方向
15…密閉容器
16…消弧性ガス
17…アークプラズマ
18…畜圧室
19…ピストン
25…畜圧室容器
27a、27b…逆止弁
28…仕切り板
29…ガス経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消弧性ガスが充填されたタンク内に設置された第1のアーク接触子と、
前記第1のアーク接触子と対向して設置され、遮断動作時および投入動作時に前記第1のアーク接触子と接離する第2のアーク接触子と、
前記第1のアーク接触子と前記第2のアーク接触子との接触部に連結し、遮断動作時に容積が圧縮されるパッファ室容器と、
前記パッファ室容器と貫通孔を介して連結する畜圧室容器と、を備えるガス遮断器。
【請求項2】
前記パッファ室容器内の消弧性ガス圧力が、前記畜圧室容器より大きくなった場合に、前記パッファ室容器から前記畜圧室容器に消弧性ガスが流出し、
前記パッファ室容器内の消弧性ガス圧力が、前記畜圧室容器より小さくなった場合に、前記畜圧室容器から前記パッファ室容器に消弧性ガスが流出する
請求項1記載のガス遮断器。
【請求項3】
前記畜圧室容器は、弾性体により容積可変に形成された請求項1または2記載のガス遮断器。
【請求項4】
前記パッファ室と前記畜圧室容器は2つの貫通孔を介して連結しており、
前記貫通孔の一方は、前記パッファ室容器から前記畜圧室容器へ流出する消弧性ガスを抑制する逆止弁を備え、
前記貫通孔のもう一方は、前記畜圧室容器から前記パッファ室容器へ流出する消弧性ガスを抑制する逆止弁を備えた、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項5】
前記貫通孔に備えられた前記逆止弁は、弾性体により付勢されて前記貫通孔を閉塞する、
請求項4に記載のガス遮断器。
【請求項6】
前記畜圧室容器に設けられた仕切り板を備え、
前記仕切り板は、前記貫通孔の一方から前記貫通孔のもう一方に流れる消弧性ガスの流路長を長くする
請求項4または5のいずれか1項に記載のガス遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−151000(P2012−151000A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8986(P2011−8986)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】