説明

ガス遮断器

【課題】駆動エネルギーを低減するとともに、進み小電流遮断において開極速度を向上させるための駆動方法を適用したガス遮断器を提供する。
【解決手段】密閉容器80内に、中心軸cl上にそれぞれ第1アーク接触子21、第2アーク接触子11を設けた第1接触子部20および第2接触子部10を対向配置し、第1接触子部を操作機構部により遮断動作時及び投入動作時に駆動するように構成したガス遮断器において、第1接触子部20と操作機構部との間に、曲線状のガイド溝40aを形成した固定カム板40と、ガイド溝40aと直交する方向の所定位置に支点ピン60によって一端部が揺動可能に支持され他端部に長穴50aを形成した回動レバー50と、第1接触子部20の端部にピン61を固定し、このピン61を長穴50aおよびガイド溝40aの双方に遊嵌させて絶縁ロッド27の端部と回動レバー50の端部とを連結させ、回動レバー50の中間部にピン62を介して操作機構部に繋がる駆動ロッド51とから構成されたアーム比制御機能を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、可動接触子部を駆動する駆動エネルギーの低減を図ったガス遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小電流から大電流まで遮断可能な大容量ガス遮断器として、パッファ形ガス遮断器がある。図4はパッファ形ガス遮断器の遮断動作前の投入状態から遮断動作が完了した状態を示す図であり、図4aは遮断動作前の投入状態を示す断面図、図4bは遮断動作が開始しアーク接触子の開離直後の状態を示す断面図、図4cはさらに遮断動作が進んだ状態を示す断面図、図4dはさらに遮断動作が完了した状態を示す断面図である。
【0003】
図4aにおいて、消弧性ガスが充填された密閉容器(図示せず)内には、固定側に設けられた固定側接触子部10と、これに対向して可動接触子部20を配置している。なお、以下の説明では、可動接触子部20の位置関係について、固定側接触子部10側の方向を「前方」、その反対側を「後方」と定義する。また、ここで消弧性ガスの種類はSF、炭酸ガス、窒素ガス、あるいはこれらの混合ガス等の任意のガスである。
【0004】
可動接触子部20は、揺動可能な絶縁ロッド27にピン28を介して接続された中空の操作ロッド26と、この操作ロッド26の周囲に配置されて前端部で操作ロッド26に連結されたシリンダ25と、このシリンダ25の内部に挿入された後述する環状(中心部に穴を有する円板状)の固定ピストン29と、シリンダ25の前方に連結された中空かつ指状(フィンガー状)の可動アーク接触子21と、この可動アーク接触子21を包囲するように設けた絶縁ガイド22と、この絶縁ガイド22の外周に環状の通路を隔てて配置された絶縁ノズル23と、さらにこの絶縁ノズル23の外側に同心状に配置されるとともにシリンダ25の前方に接続された可動通電接触子24とから構成されている。
【0005】
一方、固定側接触子部10は、前記可動通電接触子24の外周部に接触する筒状のサポート部14と、このサポート部14に固定された支持部13によって固定された固定アーク接触子11と、この固定アーク接触子11を包囲するように配置されたサポート部14に固定された固定通電接触子12から構成されている。14aはサポート部14の開口部である。
【0006】
なお、固定アーク接触子11および可動アーク接触子21間の空間をアーク空間、このアーク空間と連通するアーク接触子11周囲の空間部を下流空間、シリンダ25と固定ピストン29間の空間を蓄圧空間とそれぞれ呼称する。
【0007】
以上のように構成された可動接触子部20のうち、操作ロッド26は、絶縁ロッド27を介して図示していない駆動装置4によって、その軸方向に往復運動するように構成されており、その中程に、その中空部と充填ガス雰囲気空間とを連通する複数の開口部26aを有している。
【0008】
また、絶縁ガイド22と絶縁ノズル23との間の環状の空間は、シリンダ25内で形成された圧縮ガスをガス流として、アーク空間に導くための上流側ガス流路として機能するようになっている。
【0009】
さらに、固定ピストン29は、前述したように中心部に穴を有する円形平板状に形成されており、その内周面で操作ロッド26の外周面に対して摺動すると共に、その外周面でシリンダ25の内周面に対して摺動するように構成されている。この場合、固定ピストン29は、その後方に一体的に設けられて軸方向に伸びるピストン支持部29aがサポート部29bによって図示していない容器内に固定されるようになっている。
【0010】
ここで、図4aの状態においてガス遮断器の遮断動作が開始すると、後方の絶縁ロッド27が図示矢印方向に移動するので、この絶縁ロッド27を含む可動接触子部20が一体的に移動する。これにより、容器内に固定された固定ピストン29に対し、操作ロッド26とシリンダ25が一体的に移動することになり、シリンダ25と固定ピストン29とが相対移動し、シリンダ25と固定ピストン29との間に形成される空間部が圧縮されるようになる。
【0011】
次に、図4bから図4cで示すように遮断動作が進行し、固定アーク接触子11と可動アーク接触子21が開離すなわち開極すると、両アーク接触子11、21間のアーク空間にはアーク30が発生する。さらに遮断動作が進行し電流零点を迎えると、シリンダ25からアーク30にガス流が供給され、最終的に図4dのように消弧に至り電流遮断する。
【0012】
以上説明した従来技術のガス遮断器には次に述べる問題点がある。
事故電流遮断時のように数kAオーダーの大電流アークの場合には、両アーク接触子間距離が十分開いて適切な流路が形成され、かつ、シリンダ25内部に十分な吹きつけ圧力が蓄圧された後でなければ、電流零点を迎えてもアークが消弧されることはない。
【0013】
しかしながら、進み小電流遮断のような数百A以下の小電流アークの場合には、両アーク接触子の開離(開極)直後であっても、電流零点を迎えれば簡単にアークが消弧される。電流位相によっては、アーク時間(アーク接触子間のアークが継続する時間)は限りなくゼロに近くなり、アーク接触子開離直後にアークが消弧し、アーク接触子間距離が極めて小さい状態で系統からの回復電圧が印加される。この回復電圧により、アーク接触子11、21間に絶縁破壊(再点弧)を引き起こすと、過電圧が発生する場合があり、系統機器の信頼性を脅かすため、一般には、遮断器は再点弧を回避するに十分な速やかな絶縁回復特性を要求される。
【0014】
アーク接触子11、21間の絶縁破壊を回避するためには、一般にはアーク接触子11、21先端の電界を緩和するか、もしくは両アーク接触子11、21が開離する時点での速度、すなわち開極速度を向上させ、アーク接触子11、21間の速やかな絶縁回復を確保する必要がある。
【0015】
しかしながら、駆動力を増加させることで高速化に対応すると、駆動装置が大型となるか、あるいは機械的強度を上げるため可動接触子部の重量が増加し、さらに駆動エネルギーを増加しなければならないという問題があった。
【0016】
このような問題点への対処法の一例として、遮断器の可動接触子部20と開閉駆動機構とを固定されたカム機構を介して接続するようにした発明1が開示されている。この発明1によれば、カム溝の形に沿って可動接触子部に連結したリンクを駆動させることにより、開極後の速度を向上させることができる。
【0017】
また、上記問題点への別の対処法として、回転溝カムと接続ロッドを用いる発明2も開示されている。この発明2は回転溝カムを駆動装置と可動接触子部の間に設置することも可能で、開極速度を向上させることができる。この発明2の方式を用いれば、さらに駆動装置側の可動部と可動接触部の移動距離を変化させることが可能であり、可動接触子部の移動距離よりも駆動装置側の可動部の移動距離を小さくすることで、効率的に駆動エネルギーを低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2002−208336号公報
【特許文献2】特開2004−55420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、遮断器の可動接触部と開閉駆動機構とを固定されたカム機構を介して接続するようにした対処法では、カム溝から駆動装置側の可動部も可動接触子部と同じだけ動かさなければならず、駆動エネルギーを小さくするという視点からは効率的ではない。さらに近年の市場ではメンテナンスの容易性からバネ駆動機構が指向されている。従来から使用されている油圧駆動装置よりもバネ駆動機構はその構造から可動部の重量が増加する傾向にあるため、駆動装置側の可動部を同じだけ動かすのは効率的でない。
【0020】
また、回転溝カムと接続ロッドを用いる対処法の場合、必要速度が大きいと溝カムの機械的強度を上げなければならず、溝カム自体を動かすこの方式では、場合によっては操作エネルギーを効率的に低減することができない。さらに、回転溝カムの回転運動に対するダンパーおよびストッパーが必要となり、構造が複雑となる場合もある。
【0021】
そこで、本発明は、以上述べた従来技術の課題に鑑み、駆動エネルギーを低減するとともに、進み小電流遮断において開極速度を向上させるための駆動方法を適用したガス遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の目的を達成するために、本発明の実施形態は、消弧性ガスが充填された密閉容器内に、中心軸上に第1接触子部および第2接触子部を対向配置するとともに、少なくとも第1接触子部は操作機構部により遮断動作時及び投入動作時に駆動するように構成され、前記第1接触子部および第2接触子部にそれぞれ第1アーク接触子および第2アーク接触子を設け、前記第1アーク接触子および第2アーク接触子は通常運転時は接触導通状態にあり、遮断動作時は開離して両接触子間の空間にアークを発生するアーク空間を構成し、前記第1接触子部は遮断動作過程において前記アーク空間からの熱的昇圧作用もしくは機械的圧縮作用により蓄圧され、前記アークを消弧せしめるガス流を発生する蓄圧空間を有し、前記蓄圧空間は開口部を有するとともに上流側ガス流路に対して前記開口部を経て直接または間接に連通され、前記上流側ガス流路は、前記アーク空間と連通され、前記アーク空間と密閉容器内の充填圧と同圧力の空間として定義される下流空間を結ぶ下流側ガス流路を有するガス遮断器において、前記第1接触子部と操作機構部との間に、当該第1接触子部の端部に固定したピンが当該第1接触子部の移動方向にガイドするガイド溝を形成した固定カム板と、前記ガイド溝と直交する方向に適宜距離を隔てた位置で一端部を支点として揺動可能に支持されるとともに他端部に前記第1接触子部の端部に固定したピンを遊嵌させる長穴を形成し、中間部が前記操作機構部に連結する回動レバーとから成るアーム比制御機能を設け、前記回動レバーの支点から前記長穴までのアーム長をL1、前記回動レバーの支点から中間部までのアーム長をL2、L1/L2をアーム比Xとしたとき、遮断動作においてアーム比Xを可変にしたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1a】本発明の実施形態1に係るガス遮断器の投入状態を示す断面図。
【図1b】本発明の実施形態1に係るガス遮断器の遮断動作の進んだ状態を示す断面図。
【図1c】本発明の実施形態1に係るガス遮断器の遮断動作の完了した状態を示す断面図。
【図1d】本発明の実施形態1に係るガス遮断器に採用した固定ガイド板の平面図。
【図2】本発明の実施形態1に係るガス遮断器と従来技術との動作性能を比較する図であり、(a)は投入状態から遮断状態に至る移動距離の比較例図、(b)は移動距離を波形で示した比較例図。
【図3】本発明の実施形態2に係るガス遮断器の一部を示す軸方向断面図。
【図4a】従来技術に係るガス遮断器の投入状態を示す断面図。
【図4b】従来技術に係るガス遮断器の遮断動作の進んだ状態を示す断面図。
【図4c】従来技術に係るガス遮断器の遮断動作の更に進んだ状態を示す断面図。
【図4d】従来技術に係るガス遮断器の遮断動作の完了した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のガス遮断器に係る実施形態について、図面を参照して説明する。なお、従来技術の図を含め、各図に共通する部品には同一または関連する符号を付けることにより、重複する説明は適宜省略する。
【0025】
[実施形態1]
図1a乃至図1cは本発明の実施形態1に係るガス遮断器の状態を示す断面図であり、図1aは遮断動作前の投入状態を示す断面図、図1bは遮断動作が開始しアーク接触子の開離直後の状態を示す断面図、図1cは遮断動作が完了した状態を示す断面図である。また、図1dは固定ガイド板の平面図である。
【0026】
(構成)
図1a乃至図1dにおいて、本実施形態1係るガス遮断器の基本的な構成は図4で示した従来技術と同様であるが、異なる点は可動接触子部20の絶縁ロッド27と図示しない操作機構部との間に「アーム比制御機能」を設けたことにある。
【0027】
ここで、アーム比制御機能は次のような部品によって構成されている。
すなわち、可動接触子部20の絶縁ロッド27と図示しない操作機構部との間に、操作ロッド26の牽引方向に伸びる曲線状のガイド溝40aを有する固定カム板40と、この固定カム板40のガイド溝40aと直交する方向に所定距離を隔てて支点ピン60によって一端部が揺動可能に支持されるとともに他端部に長穴50aを有する回動レバー50と、前記絶縁ロッド27の端部にピン61を固定し、このピン61を前記長穴50aおよびガイド溝40aの双方に遊嵌させて絶縁ロッド27の端部と回動レバー50の端部とを連結させるとともに、前記回動レバー50の中間部にピン62を介して図示しない操作機構部に繋がる駆動ロッド51とからアーム比制御機能が構成されている。
【0028】
なお、前記固定カム板40と前記支点ピン60は、それぞれ図示しない密閉容器の適当な部位に固定されている。
【0029】
そして、前述した曲線状のガイド溝40aは、詳細を図1dに示すように可動接触部20の中心軸である操作ロッド26の中心線clとほぼ平行する大円弧(半径がR2)状溝と、この大円弧状溝の両端にそれぞれ連続して滑らかに繋がる2つの小円弧(半径がR1、R3)状溝とから構成されている。ここで、大円弧溝の半径R2と小円弧溝の半径R1およびR3との間には、R1<R2、R3<R2、R1=R3の関係が成立するようにしておく。そして、前記ガイド溝40aの両端を結ぶ線は、操作ロッド26の軸方向中心線cl上に配置され、また、大円弧状溝の中央部と前記回動レバー50の支点ピン60を結ぶ線vlは前記軸方向中心線clと直交する関係にある。すなわち、ガイド溝40aは垂直な線vlに対して左右対称に形成されている。
なお、大円弧(半径R2)状溝の代わりに、操作ロッド26の軸方向の中心線clとほぼ平行する直線状溝を設けるようにしてもよい。
【0030】
ここで、前記回動レバー50について、可動接触子部20側のアーム長L1は支点ピン60から端部ピン61の中心までの長さであり、これに対して操作機構4側のアーム長L2は回動レバー50の支点ピン60から駆動ロッド51との接続部のピン62の中心までの長さであり、しかも、遮断動作においてL1≧L2となるように構成されている。なお、L1/L2をアーム比Xと呼ぶ。
【0031】
本実施形態1では、遮断動作過程で回動レバー50の回動に伴ってピン61が長穴50aおよびガイド溝40a内を移動することにより、可動接触子部1側のアーム長L1が変わり、これに伴いアーム比X(=L1/L2)が可変となる。
【0032】
また、本実施形態1では、遮断動作初期のアーム比XをXとし、可動アーク接触子21および固定アーク接触子11の開離する時点のアーム比をXとしたとき、X<Xとなるように、長穴50aの寸法およびガイド溝40aの形状を予め考慮している。
【0033】
(作用)
以下、本実施形態1の作用を説明する。
図1aに示すガス遮断器の投入状態において、進み小電流遮断動作が開始すると、図示しない操作機構部に連結された駆動ロッド51が回動レバー50の中間部を図示右側に牽引されるので、この回動レバー50の端部にピン61を介して連結された絶縁ロッド27も牽引される。この結果、絶縁ロッド27に接続された中空の操作ロッド26を介して可動接触子部20が一体的に矢印方向に移動する。
【0034】
可動接触子部20の移動により、固定されている固定ピストン29に対して、操作ロッド26とシリンダ25が一体的に移動するので、シリンダ25と固定ピストン29との間に相対移動が起こり、シリンダ25内部に形成される環状空間部の機械的圧縮が行なわれる。
【0035】
図1bの遮断動作中、絶縁ロッド27と回動レバー50とを長穴50aを介して連結するピン61は、その長穴50a内を上方に移動しながら固定カム板40の円弧状のガイド溝40a内を誘導される。図示しない操作駆動部に連結される駆動ロッド51のピン61と支点ピン60との間のアーム長L2は、可動接触子部1側のアーム長L1よりも短く選定してあるため、図示しない駆動装置側の可動部の移動距離は、可動接触子部20の移動距離よりは短くなる。従って、可動接触子部20の投入から遮断までに必要な移動距離よりも駆動装置側の移動距離を短くできるため、駆動エネルギーを低減することが可能になる。
【0036】
また、図1bにおける可動アーク接触子21および固定アーク接触子11の開離する時点のアーム比Xを図1aの投入状態のアーム比Xよりも大きくすることにより、遮断動作初期では、可動接触子部20を駆動する力を大きくすることができる。
【0037】
この結果、可動接触子部20は速やかに加速し、可動アーク接触子21および固定アーク接触子11の開離する時点では駆動する力を落とし移動距離を増やすことで高速に制御することが可能になる。
【0038】
また、ガイド溝40a中間部に位置する半径R2の大円弧溝は牽引方向とほぼ平行であるため、可動接触子部20の動作を高速のまま維持する。そして、ガイド溝40aは垂直な線vlに対して左右対称になっているため、図1cの遮断状態に至るときには、アーム比Xが次第に小さくなり、速度も低減する。
【0039】
次に、図2を参照して本実施形態1に係るガス遮断器と従来のガス遮断器との性能について比較する。
図2(a)は、投入状態から遮断状態に至る移動距離について、本実施形態1による回動レバー50およびガイド溝40aを有する固定カム板40を備えた場合と、従来技術のように回動レバーのみを備えた場合との遮断動作を比較したものである。
【0040】
絶縁ロッド27の上半分の実線で示す部分は投入状態、下半分の点線で示す部分は遮断状態であることを意味している。また、固定カム板40およびガイド溝40aは図示していないが、絶縁ロッド27と回動レバー50の接続部のピン61の中心点が、ガイド溝40aに沿って移動するときの軌跡70を回転角度θごとに示し、軌跡70にそれぞれ対応して可動接触子部20は投入状態から遮断状態へと移動距離71のように回転角度θに対応して移動する。
【0041】
また、軌跡73は図示しない駆動装置側の移動距離である。移動距離71は操作ロッド26と絶縁ロッド27の連結部のピン28の中心を基点としている。また移動距離72は従来の駆動方法での可動接触子部1の移動距離となる。
【0042】
図2(b)はそれぞれの移動距離を時間との関係で示した波形図である。
従来技術のように、回動レバーのみを備えた場合は、符号75で示すように速度はほぼ一定である。一方、本実施形態1にように回動レバー50とガイド溝40a付き固定カム板40を設置した場合は符号74のように、前述したように開極点までとストローク終盤で移動距離は小さく、速度が遅くなる。しかし進み小電流遮断に影響する開極点後では移動距離が大きく、開極速度を向上させることが可能である。
【0043】
(効果)
以上述べたように、本実施形態1のガス遮断器は、可動接触子部20と操作機構部との間に、ガイド溝40aを有する固定カム板40と回動レバー50とを設置してアーム比制御機能を設けるようにしたので、駆動エネルギーを低減できるだけでなく、可動接触子部20が動き出す当初は大きな荷重で速やかに加速し、可動アーク接触子21および固定アーク接触子11の開離する時点は高速に駆動することができる。したがって、駆動装置を大型化したり、あるいは機械的強度を上げたりして駆動エネルギーを大きくしなくても、速やかな絶縁回復が得られ、良好な進み小電流遮断性能が得ることが可能である遮断器を実現することができる。
【0044】
[実施形態2]
次に、本発明の実施形態2に係るガス遮断器について図3を参照して説明する。
(構成)
図3は、本実施形態2に係るガス遮断器を軸方向に回動レバー50およびその周辺部品を見たときの断面図である。
【0045】
前述した実施形態1の場合、1つの回動レバー50の端部と中間部とを用いてアーム長L1、L2を構成するようにしたが、本実施形態2は、回動レバーをアーム長L2の第1回動レバー50Aとアーム長L1の第2回動レバー50Bとに分け、かつ、両回動レバー50A、50B間を回動軸50Cで一体的に結合するようにしたものである。しかも、本実施形態2では、回動軸50Cがガスシール81を介してガス充填容器80を貫通するように構成したので、第1回動レバー50Aをガス充填容器80の外部から回動操作することによってガス空間内部に配置された第2回動レバー50Bを回動操作することができる。
【0046】
なお、本実施形態2の場合も、可動側接触子部20側のアーム長L1および駆動機構側のアーム長L2、アーム比Xは実施形態1と同様であり、その他の部品も図1a〜図1dで示すものと同様であるので図示を省略する。
【0047】
本実施形態2の場合、回動軸50Cの中心線が前述した実施形態1の支点ピン60による支点の位置に対応する。そして、ガス充填容器80の外部では第1回動レバー50Aの回動中心線からアーム長L2の位置にピン62を介して駆動ロッド51を連結させる。一方、ガス充填容器80の内部では第2回動レバー50Bの回動中心線からアーム長L1の位置にピン61を介して操作ロッド26を連結させる。
【0048】
(作用及び効果)
本実施形態2のガス遮断器は、可動接触子部20と操作機構部との間に、ガイド溝40aを有する固定カム板40と、第1回動レバー50A、第2回動レバー50Bおよび両回動レバーを一体的に結合する回動軸50Cからアーム比制御機能を構成するようにしたので、実施形態1と同様の作用効果を奏することに加えて、回動軸50Cのガス充填容器80を貫通する部分にガスシール81を施すことにより、可動接触子部20の動作軸に垂直な荷重が発生したときのシール部の摩擦を低減することができ、遮断動作速度(開極速度)を向上させることが可能である。したがって、本実施形態2の場合も、駆動エネルギーを大きくしなくても、速やかな絶縁回復が得られ、良好な進み小電流遮断性能が得ることが可能である遮断器を実現することができる。
【0049】
[その他の実施形態]
以上述べた実施形態ではパッファ形ガス遮断器を説明したが、本発明は、パッファ形ガス遮断器に限定されるものではなく、アークエネルギーを用いて上流の蓄圧を得るいわゆる自力効果を用いたタイプのガス遮断器にも適用可能である。
【0050】
また、以上述べた実施形態では固定側接触子部10は密閉容器に固定するように説明したが、操作機構部により固定側接触子部10および可動接触子部20の双方を逆方向に移動させるようにしてもよい。
【0051】
さらに、以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
10…固定側接触子部(第2接触子部)、11…固定アーク接触子、12…固定通電接触子、13…支え、14…サポート部、14a…開口部、20…可動接触子部(第1接触子部)、21…可動アーク接触子、22…可動通電接触子、23…絶縁ノズル、24…可動通電接触子、25…シリンダ、25a…開口部、26…操作ロッド、26a…開口部、27…絶縁ロッド、28…ピン、29…固定ピストン、29a…ピストン支持部、29b…サポート部、30…アーク、40…固定カム板、40a…ガイド溝、50…回動レバー、50a…長穴、50A…第1回動レバー、50B…第2回動レバー、50C…回動軸、51…駆動ロッド、60…回動レバー支点ピン、cl…可動接触部中心軸、61…ピン、62…ピン、70…軌跡、71…回動レバーによる可動接触子部移動距離、72…従来の可動接触子部移動距離、73…軌跡、74…回動レバーによる可動接触子部移動距離(時間との関係)、75…従来の可動接触子部移動距離(時間との関係)、80…ガス充填容器、81…ガスシール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消弧性ガスが充填された密閉容器内に、中心軸上に第1接触子部および第2接触子部を対向配置するとともに、少なくとも第1接触子部は操作機構部により遮断動作時及び投入動作時に駆動するように構成され、前記第1接触子部および第2接触子部にそれぞれ第1アーク接触子および第2アーク接触子を設け、前記第1アーク接触子および第2アーク接触子は通常運転時は接触導通状態にあり、遮断動作時は開離して両接触子間の空間にアークを発生するアーク空間を構成し、前記第1接触子部は遮断動作過程において前記アーク空間からの熱的昇圧作用もしくは機械的圧縮作用により蓄圧され、前記アークを消弧せしめるガス流を発生する蓄圧空間を有し、前記蓄圧空間は開口部を有するとともに上流側ガス流路に対して前記開口部を経て直接または間接に連通され、前記上流側ガス流路は、前記アーク空間と連通され、前記アーク空間と密閉容器内の充填圧と同圧力の空間として定義される下流空間を結ぶ下流側ガス流路を有するガス遮断器において、
前記第1接触子部と操作機構部との間に、当該第1接触子部の端部に固定したピンが当該第1接触子部の移動方向にガイドするガイド溝を形成した固定カム板と、前記ガイド溝と直交する方向に適宜距離を隔てた位置で一端部を支点として揺動可能に支持されるとともに他端部に前記第1接触子部の端部に固定したピンを遊嵌させる長穴を形成し、中間部が前記操作機構部に連結する回動レバーとから成るアーム比制御機能を設け、前記回動レバーの支点から前記長穴までのアーム長をL1、前記回動レバーの支点から中間部までのアーム長をL2、L1/L2をアーム比Xとしたとき、遮断動作においてアーム比Xを可変にしたことを特徴とするガス遮断器。
【請求項2】
前記回動レバーのアーム比Xに関し、遮断動作初期のアーム比XをXとし、前記第1アーク接触子および第2アーク接触子の開離する時点のアーム比Xとしたとき、X<Xの関係が成立するようにしたことを特徴とする請求項1記載のガス遮断器。
【請求項3】
前記ガイド溝の始端および終端を結ぶ線はガス遮断器の第1接触子部の中心軸上にあり、かつ、ガイド溝の始端から終端までの中間点と前記回動レバーの支点とを結ぶ線に対して直交していることを特徴とする請求項1または2記載のガス遮断器。
【請求項4】
前記回動レバーを前記密閉容器内に設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項5】
前記回動レバーをアーム長L2の第1回動レバーと、アーム長L1の第2回動レバーとに分けて両回動レバー間を回動軸で一体的に結合し、前記第2回動レバーを前記密閉容器内に収納し、前記第2回動レバーを大気中に配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガス遮断器。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【公開番号】特開2013−93129(P2013−93129A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232934(P2011−232934)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】