説明

ガソリン留分の強脱硫のためのセシウム交換されたホージャサイト型ゼオライトの使用

【課題】燃料中の硫黄分の量に関する規制の変更に対応するため、芳香族およびオレフィンの共存下におけるガソリン中の硫黄分を吸着脱硫する新規な強脱硫法を提供する。
【解決手段】本発明は原料油中に存在するオレフィンおよび芳香族化合物の同時吸着を制限しながらチオフェン化合物の吸着を可能にするセシウム交換X、YまたはLSX型ホージャサイトゼオライトの調製方法、および該ゼオライトのFCCガソリンの強脱硫への適用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素の混合物、典型的には、25〜300℃の沸点を有するガソリンの強脱硫を行うための部分的にセシウム(Cs)交換されたホージャサイト型ゼオライトの使用に関連する。
【0002】
当該型のゼオライトの使用は、接触分解法、特には、流動接触分解、コーキング、ビスブレーキングまたは高温分解からのガソリンの吸着による脱硫法において特に適用される。前記吸着脱硫法は、固定床または疑似移動床(CCS)の形態で操作され得、吸着は、液相および気相の双方、好ましくは液相で行われ得る。
【0003】
さらに、自動車燃料に関する規制は、特に、ガソリンにおいて硫黄含有量の大きな低減を要求するだろう。このような低減は、主として、自動車排気ガス中の硫黄および窒素の酸化物の量を制限することを意図する。
【0004】
欧州の法律は燃料ガソリンに対する規制を規定しており、2000年には、硫黄が150ppm、ベンゼンが1%、芳香族が42%、オレフィンが18%に規制され、2005年には、硫黄が50ppm、芳香族が35%に規制される。類似の基準変更は、米国においてすでになされており、そこでは、2004年以降、ガソリンが硫黄30ppmで製造されることが要求される。
【0005】
したがって、燃料中の硫黄の量に関する規制の変更は、ガソリンを強く脱硫する新規な方法の開発を要求する。
【0006】
ガソリンベースは、主として、分解ガソリン(主に、粗油からの常圧または真空蒸留残渣を接触分解する方法(通常FCC(fluid catalytic cracking:流動接触分解)と呼ばれる方法)からのガソリンフラクション)によって構成されている。
【0007】
ガソリンベースの平均40%を示す接触分解からのガソリンのフラクションは、前記ガソリンの硫黄の90%超の原因となっている。
【0008】
結果として、低硫黄ガソリンの製造は、接触分解ガソリンを脱硫する工程を必要とする。挙げられてよい他の硫黄高含有のガソリンは、コーキングガソリン(コーキングは、真空残渣タイプの原料油に適用される熱処理法であるが、高硫黄含有量を有する芳香族ガソリンを生じさせる)、より少ない程度ではあるが、常圧蒸留から直接的に誘導されたガソリンまたはスチームクラッキングガソリンである。
【0009】
本発明は、好ましくは、25〜300℃のカットポイントを有するあらゆるガソリン留分に適用される。
【背景技術】
【0010】
現在、ガソリンは、都合良くは、前記ガソリンに含まれる硫黄含有化合物を水素を豊富に含むガスと接触させる(水素化脱硫と呼ばれる処理)1以上の工程で脱硫され、該工程では、有機硫黄は、硫化水素(HS)に変換され、これは、次いで、脱気により脱硫ガソリンから分離される。他の知られたガソリン脱硫経路は、硫黄含有化合物の選択的吸着剤上への吸着によってガソリンを精製する方法である。
【0011】
例えば、特許文献1では、吸着により液状炭化水素を脱硫するためにX、Y、Lまたはオメガ型ゼオライトの使用が推奨されている。
【0012】
特許文献2には、FCCガソリンまたは軽油を脱硫するために、シリカ、アルミナおよび酸化亜鉛をベースとし、カルシウムが補給され、その原子価が2価以下に低下したニッケルを含む促進物質を含有する特定の固体との接触が記載されている。
【特許文献1】米国特許第3620969号明細書
【特許文献2】米国特許第6428685号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
我々の知るところでは、部分的にセシウムにより交換されたホージャサイト型ゼオライトの、強度のガソリン脱硫を行うための固体吸着剤としての使用は、従来技術に記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様では、本発明は、一般式Mx/n[(AlO][(SiO]・zHO(カチオンMは、部分的にセシウムと交換される)を有するX、YまたはLSX型ホージャサイトゼオライトに関連する。
【0015】
本発明はまた、前記部分的にセシウム交換したゼオライトを固体吸着剤として用いて25〜300℃の沸点を有するガソリン留分を脱硫する方法に関連する。
【0016】
最後に、本発明は、X、YまたはLSX型ホージャサイトゼオライトから前記ゼオライトを調製する方法に関する。
【0017】
本発明により、我々は、ホージャサイト型ゼオライトであって、一般式Mx/n[(AlO][(SiO]・zHOを有し、Si/Al比が1〜10、好ましくは1〜3であり、カチオンMは、部分的にセシウムと交換され、交換度は、2〜98%、好ましくは20〜80%、より好ましくは30〜70%であり、0.25〜0.40cm/gのメソおよびマクロ多孔度容積を有し、0.12〜0.35cm/gのミクロ多孔度容積を有し、3ミクロン未満、好ましくは2ミクロン未満の結晶サイズを有するものを記載する。
【0018】
本発明の部分的にセシウム交換されたホージャサイトゼオライトが用いられることになっている脱硫法は、前記の一般式Mx/n[(AlO][(SiO]・zHOを有するX、YまたはY型ホージャサイトゼオライト上での吸着を利用する、25〜300℃の沸点を有するガソリン留分または前記ガソリン留分から抽出されたあらゆる留分の強脱硫法である。
【0019】
本発明の部分的にセシウム交換されたホージャサイトゼオライトが用いられることになっている方法は、FR−A−2 785 196に記載されたような固定床法または移動床法または疑似移動床法であってよい。本発明の部分的にセシウム交換されたホージャサイトゼオライトを調製する方法は、「本発明を実施するための最良の形態」に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
FCCガソリンの脱硫は、本質的に、チオフェンおよびベンゾチオフェン(これらの化合物は、アルキル化されていてもよい)の形態で存在する硫黄含有化合物を除去することを目的とする。
【0021】
処理されるべき原料油中のオレフィンおよび芳香族の存在は、硫黄含有誘導体との競争的吸着を生じさせ、この結果、硫黄含有誘導体に関する吸着容量が低減する。
【0022】
ホージャサイトゼオライトを固体吸着剤として用いる本発明の利点は、原料油からのオレフィンおよび芳香族分子の同時吸着の効果を制限することおよび処理されるべき原料油中に存在する硫黄含有誘導体、特にチオフェン誘導体に対する吸着選択性を増加させることである。
【0023】
強脱硫は、好ましくは、25〜300℃の沸点を有する化合物を含むガソリン(25℃−300℃留分とも称される)の全体またはその一部のみ、特に軽質留分、例えば25℃−100℃留分について行われ得る。
【0024】
考慮中のFCCガソリンのカットポイントに応じて、種々の化学種、特に硫黄含有化合物の概算量は、下記表に示されるように広く変わる(下記表は、例として与えられただけであり、決して範囲を制限するものではない)。
【0025】
【表1A】

【0026】
カットポイントを選択することによって、芳香族化合物の量を制限しながら、ガソリンの軽質フラクション中のチオフェンおよびメチルチオフェン化合物の大部分を、オレフィン化合物の大部分と共に回収することが可能である。
【0027】
これらの後者のものは、吸着タイプの分離方法において用いられる従来のゼオライト上に強く吸着される化合物であると知られている。このため、それらは、吸着法における硫黄含有化合物の競争相手である
当業者は、前記ガソリンに含まれる芳香族化合物の割合を最少にする仕方で処理されるべきガソリンのカットポイントを容易に選択し得る。
【0028】
このため、本発明は、硫黄含有化合物の大部分が見出されるガソリン留分の全体またはそのガソリン留分の一部のいずれかに適用されてよい。
【0029】
部分的にセシウムと交換された特定のホージャサイト型ゼオライトの使用は、処理されるべき原料油中に存在するオレフィンおよび芳香族化合物の同時吸着を制限しながら、前記チオフェン化合物の吸着を可能にし得る。
【0030】
ホージャサイト種からのゼオライトは、一般式Mx/n[(AlO][(SiO]・zHOを有する。
【0031】
ここで、xおよびyは整数であり、nはカチオンMの価数、zは単位格子(unit cell)当たりの水の分子数である。
【0032】
分子比Si/Al(y/x)が1.15未満であるホージャサイト型ゼオライトは、伝統的に、用語Xホージャサイトによって指定される;Si/Alモル比が1.15超であるものは、用語Yホージャサイトによって指定される;Si/Al比が1であるものは、LSXと称される。
【0033】
Si/Al比(モル)は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜3である。
【0034】
ゼオライト構造の電気中立性(electroneutrality)を確保するカチオンMは、一般的に、アルカリおよび/またはアルカリ土類族に属する。一般に、採用される最も通常のカチオンは、ナトリウム、カルシウムおよびバリウムである。
【0035】
驚くべきことに、ホージャサイト型ゼオライトについてセシウムを交換カチオンとして用いると、ガソリン、特にFCCガソリンに含まれるチオフェン誘導体の吸着選択性を、前記ガソリン中に含まれる芳香族化合物(特にBTX型)およびオレフィンの吸着と比較して大きく増加させることができることが発見された。
【0036】
元のカチオンMをセシウムに変更し得るホージャサイト型ゼオライトを交換する方法は、以下の本明細書に記載される。この方法は、元のカチオンMとセシウムとの間にあらゆる交換度を生じさせるために用いられ得る。
【0037】
交換度は、元のカチオンMの質量に対するセシウムの重量百分率である。
【0038】
本発明によると、交換度は、2〜98%のあらゆるレベルに固定されてよいが、好ましくは20〜80%、より好ましくは30〜70%の値である。
【0039】
カチオン交換は、例えば、NaLSX、NaX(従来の13Xを示す)またはNaY型ホージャサイトゼオライトをセシウム塩水溶液に接触させることによって行われる。前記塩は、好ましくは、塩化物塩、臭化物塩、フッ化物塩、ヨウ化物塩、硝酸塩および硫酸塩によって構成される群から選択される。
【0040】
本明細書の残りにおいて、ホージャサイト型ゼオライトが、さらにことわることなく言及される場合、これは、NaLSX、NaXまたはNaY型のいずれかを意味する。
【0041】
好ましくは、セシウム塩は塩化セシウムであり、これは、室温で水への良好な溶解性(典型的には、10mol/kg程度)を有する。
【0042】
交換は、最初は粉体の形態であるゼオライト、または例えば、ビーズ状または押出物状に既に成形されたものを用いて行われてよい。好ましくは、交換は、例えばビーズ状または押出物の形状に既に成形されたNaLSX、NaXまたはNaYゼオライトを用いて行われる。
【0043】
交換に必要な接触期間は、典型的には、24時間未満、好ましくは12時間未満、より好ましくは4時間未満である。
【0044】
交換温度は、好ましくは室温〜90℃、より好ましくは室温〜60℃である。
【0045】
イオン交換は、静的態様(バッチ)または動的態様(例えばパーコレーション技術を用いる)で行われ得る。
【0046】
静的および/または動的態様において、複数の連続的な交換が、高い交換度(典型的には50%超)を達成するのに必要であり得る。
【0047】
温度条件、セシウム塩濃度、アニオンの性質およびゼオライト質量の交換溶液の容積に対する比率に応じて、ゼオライトの初期カチオン、例えばナトリウムのセシウムカチオンとの交換度を変動させることが可能である。
【0048】
交換後、交換されたゼオライトは、水により洗浄され、次いで、穏やかな温度(典型的には100℃未満)で、好ましくは、不活性ガス(例えば窒素)の流れの中で乾燥させられる。
【0049】
次いで、交換カチオンの最終的な位置決めを助長するために高温焼成工程が行われる。この焼成工程の温度は、好ましくは500℃超である。この焼成工程は、不活性ガス(例えば窒素)の流れまたは空気(場合によっては減圧される)中で行われる。
【0050】
ゼオライトは、セシウム交換の前または後に成形され得る。
【0051】
最初粉体の形態であるゼオライトを用いて交換が行われた場合、それは、セシウム交換後に、バインダおよび当業者に知られている通常の技術、例えば、押出または造粒を用いて成形され得る。
【0052】
一般的に当業者に周知の技術を用いる押出または造粒による成形はまた、セシウム交換前のゼオライトの粉体を用いて行われてよい。
【0053】
成形が行われるのがセシウム交換の前または後のいずれであったとしても、成形を行うために用いられるバインダの量は、好ましくは40重量%未満、より好ましくは20重量%未満である。用語「バインダ」は、一般的には、ゼオライトに転換され得る(これは、続く工程において、バインダをゼオライトに変換することが可能であることを意味する)クレー(例えば、カオリンタイプのもの)を意味する。
【0054】
好ましくは、較正篩による篩がけまたはレーザ粒度測定技術(granulometric technique)によって測定された固体吸着剤の平均最高直径は、好ましくは5mm未満、好ましくは2mm未満、好ましくは0.45〜0.95mmである。
【0055】
ゼオライト結晶の平均直径は、好ましくは3ミクロン未満、好ましくは2ミクロン未満である(例えば、走査型電子顕微鏡法によって測定される)。
【0056】
このパラメータは、最初のNaLSX、NaXまたはNaYゼオライトの選択によって規定される。
【0057】
通常の水銀多孔度測定技術によって測定される固体吸着剤のメソおよびマクロ多孔度は、用いられるバインダの量に応じて、好ましくは0.25〜0.40cm/gである。
【0058】
77Kでの窒素多孔度測定法の通常の技術によって測定される固体吸着剤のミクロ多孔度は、カチオン交換度に応じて、典型的には0.12〜0.35cm/gである。
【0059】
FCCガソリンの脱硫法での使用前に、セシウム交換型ゼオライトは、5重量%未満、より好ましくは2重量%未満のセシウム交換型ゼオライト中の残留水含有量(「強熱減量(loss on ignition)」とも呼ばれる)を得るために、好ましくは250℃より低い温度で、空気(好ましくは不活性ガス)の流れの中で活性化される。
【0060】
(実施例:本発明による)
下記の実施例1、2、3および4は、NaXおよびNaYゼオライトの吸着選択性を、セシウムにより置換されたその誘導体(それぞれCsXおよびCsY)の吸着選択性と比較する。
【0061】
a)は、セシウムゼオライトを調製する方法に関する。
【0062】
b)には、吸着選択性を測定するために用いられた分析方法が記載される。前記a)およびb)は、実施例1、2、3および4で共通である。
【0063】
a)CsXおよびCsYゼオライトの調製
ゼオライトは、1mm未満の直径を有するビーズ状に成形されたNaXゼオライト(Cecaにより製造)またはNaYゼオライト(Zeolystにより製造)から、0.5mol/Lの濃度の塩化セシウム(CsCl)水溶液を用いるカチオン交換により調製された。
【0064】
NaXまたはNaYゼオライトのグラム当たりCsCl溶液の10mLの容積が、全ての交換のために用いられた。交換は、室温で攪拌しながら2時間にわたり行われた。
【0065】
交換されたゼオライトは、水により洗浄され、次いで、ろ過により回収され、80℃で18時間にわたり乾燥させられた。1時間にわたり500℃で空気の流れの中で焼成工程が行われた。
【0066】
使用の前に、NaXまたはNaYゼオライトは、水銀10−3mの真空中、350℃で活性化され、次いで、室温に冷却され、2重量%未満の残留水含有量が得られた。
【0067】
得られたゼオライトは、次の分析特徴を有していた:
・ゼオライトのミクロ孔容積および比表面積は、従来の77K窒素物理吸着法によって測定された;
・元素分析(Al、Si、Na、Cs)は、原子吸着技術を用いて行われた;
・走査型電子顕微鏡法によって測定されたゼオライトの平均結晶サイズは、2.5ミクロンであった。
【0068】
【表1B】

【0069】
b)動的条件下での吸着
硫黄含有誘導体の吸着は、「階層」態様の従来のパーコレーションプロット技術を用いて連続的に行われた。用いられた装置は、
・4.6mmの内径および150mmの長さを有し、カラム内に均一な流れを促進するために入口に粒状カーボランダム(carborundum)を含み、研究対象のゼオライト(約1グラム)により充填されるスチールカラム;
・原料油の一定流を1ミリリットル/分でカラムに注入するための液体クロマトグラフィータイプのポンプ(Gilson 307モデル);
・カラム中の原料油流量を測定するための流量測定器;
・研究される溶液を含み、注入ポンプに接続された原料油タンク;
・時間の関数として回収された流出物の分析を行うためのカラム出口に配置されたフラクションコレクタ
によって構成された。
【0070】
回収された流出物は、Lichrospher RP18タイプのカラムを使用し、流量を1mL/分とした液体クロマトグラフィーを用いて、UV−可視検出(Varian Prostar 340モデル)により、下記条件を用いて分析された;
・チオフェン/ヘプタン溶液:メタノール1mL中に希釈された100μL(1μL=1マイクロリットル、すなわち10−6リットル)の溶液;波長を231nm(1nm=1ナノメートル、すなわち10−9メートル)とした;
・トルエンの存在下の溶液:希釈は、水/メタノール混合液(70容積%/30溶液%)中で行われ、波長は同一とした。
【0071】
吸着された量は、種々の化合物の平均パーコレーション時間から計算された。
【0072】
(実施例1)
本実施例では、我々は、室温で、あらゆる他の競争化合物(オレフィンおよび芳香族)が存在しない中での、25mmol/Lのチオフェン濃度(1174重量ppmのSに等価)でn−ヘプタン中に溶解したチオフェンの吸着についてのXまたはYゼオライトにおけるNaおよびCsカチオンの影響を比較した。NaXおよびCsXゼオライトまたはNaYおよびCsYゼオライトについてのチオフェンの吸着容量の結果が表2に示される。
【0073】
【表2】

【0074】
非常に高いモル質量のCsカチオンから生じたCsXおよびCsYゼオライトについての吸着容量およびその体積の低下がナトリウムカチオンと比較された。吸着容量自体は増加しなかったが、次の実施例において示されるように、競争剤の存在下にそれは増加し、セシウムとの交換に起因する選択性における利得のアップを示したたことが留意されるべきである。
【0075】
(実施例2)
本実施例では、我々は、室温で、競争剤と等モル量のトルエンの存在下に、25mmol/Lのチオフェン濃度でn−ヘプタン中に溶解したチオフェンの吸着についてのXまたはYゼオライト中のNaおよびCsカチオンの影響を比較する。
【0076】
NaXおよびCsXゼオライトまたはNaYおよびCsYゼオライトについてのチオフェンの吸着容量の結果が表3に示される。
【0077】
【表3】

【0078】
これらの結果は、トルエンに対するチオフェンの吸着選択性についてのセシウム交換の非常に有益な効果を示す。
【0079】
(実施例3)
本実施例では、我々は、室温で、25mmol/Lのチオフェン濃度でのn−ヘプタン/1−ヘキセンの等モル混合液(1mol/1mol)中に溶解したチオフェンの吸着についてのXまたはY族ゼオライト中のNaおよびCsカチオンの影響を比較する。
【0080】
NaXおよびCsXゼオライトまたはNaYおよびCsYゼオライトについてのチオフェンの吸着容量の結果が表4に示される。
【0081】
【表4】

【0082】
これらの結果は、1−ヘキセンに富む混合物中のチオフェンの吸着についてのセシウムの有益な効果を示し、容量の降下は、これらの交換されたゼオライトによりはるかに制限されている。
【0083】
(実施例4)
本実施例では、我々は、室温、25mmol/Lのチオフェン濃度での、1−ヘキセンおよびトルエン(それぞれ、0.188mol/Lおよび4.0mol/L、すなわち、2.6重量%および49.8重量%)の存在下のn−ヘプタン中に溶解したチオフェンの吸着についてのXまたはY族ゼオライト中のNaおよびCsカチオンの影響を比較する。NaXおよびCsXゼオライトまたはNaYおよびCsYゼオライトについてのチオフェンの吸着容量の結果が表5に示される。
【0084】
【表5】

【0085】
オレフィンおよび芳香族の量を損ねて、吸着されたチオフェンの量がセシウム交換されたゼオライトについて増加したので、これらの結果は、軽質FCCガソリンに対応する混合液中に溶解したチオフェンの吸着についてのセシウム交換の有益な効果を明確に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホージャサイト型であって、一般式Mx/n[(AlO][(SiO]・zHOを有し、Si/Al比が1〜10であり、カチオンMが部分的にセシウムと交換され、交換度が2〜98%であり、メソおよびマクロ多孔度容積が0.25〜0.40cm/gであり、ミクロ多孔度容積が、0.12〜0.35cm/gであり、3ミクロン未満の結晶サイズを有するゼオライト上での吸着を利用するガソリン留分の強脱硫法。
【請求項2】
Si/Alモル比が1〜3である、請求項1に記載の脱硫法。
【請求項3】
交換度が20〜80%である、請求項1または2に記載の脱硫法。
【請求項4】
結晶サイズが2ミクロン未満である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の脱硫法。
【請求項5】
利用される吸着剤の粒子サイズが5mm未満である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の脱硫法。
【請求項6】
前記ガソリン留分は、25〜300℃の沸点を有する化合物を含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載の脱硫法。
【請求項7】
1)ホージャサイトゼオライト(好ましくはナトリウム型である)をセシウム塩の水溶液と24時間未満の一定の時間にわたり室温〜90℃の範囲の温度で接触させる工程と、
2)水で洗浄し、次いで、不活性ガスの流れの中100℃未満の温度で乾燥させる工程と、
3)高温で焼成する工程(該焼成工程の温度は好ましくは500℃未満)と
によって、部分的にセシウム交換されたホージャサイトゼオライトが調製される、請求項1〜6のいずれか1つに記載の脱硫法。
【請求項8】
セシウム塩は、塩化セシウム、臭化セシウム、フッ化セシウム、ヨウ化セシウム、硝酸セシウムおよび硫酸セシウムによって構成される群から選択される、請求項7に記載の脱硫法。
【請求項9】
ゼオライトは最初粉体状であり、セシウムと交換され、次いで、セシウム交換後に押出または造粒によって成形され、押出または造粒を行うために用いられるバインダの量は40重量%未満である、請求項7に記載の脱硫法。
【請求項10】
ゼオライトは最初粉体状であり、次いで、押出または造粒によって成形され、その後にセシウム交換され、押出または造粒を行うために用いられるバインダの量は40重量%未満である、請求項7に記載の脱硫法。
【請求項11】
使用前に、強熱減量が5重量%未満であるようにゼオライトは活性化される、請求項7に記載の脱硫法。
【請求項12】
水溶液中のセシウム塩が塩化セシウムである、請求項7に記載の脱硫法。


【公開番号】特開2006−342349(P2006−342349A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−154115(P2006−154115)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(591007826)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (261)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT FRANCAIS DU PETROL
【Fターム(参考)】