説明

ガラスの製造装置及びそれを用いたガラス製造方法

【課題】本発明の技術的課題は、コスト高を招来させることなく、白金容器近傍のガラス領域で泡の発生を防止し得るガラス製造装置及びガラス製造方法を創案することである。
【解決手段】本発明のガラス製造装置は、溶解工程、清澄工程、供給工程、均質化工程、及び成形工程中の少なくとも一部に使用されるガラス製造装置において、白金又は白金合金からなる白金容器の外側に、多孔質セラミックスボールを含むガラス層を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス製造装置及びそれを用いたガラス製造方法に関し、例えば電子デバイス用ガラス、特に高品質が要求される液晶ディスプレイ用ガラス板、有機ELディスプレイ用ガラス板の製造に好適なガラス製造装置及びそれを用いたガラス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスを工業的に生産する場合、ガラス原料を溶解、清澄、均質化した後、得られた溶融ガラスを成形装置に供給して所望の形状に成形する方法が一般的に用いられる。また、ディスプレイ用ガラス板のように高品質が要求される場合、清澄工程、供給工程等の製造工程では、表示欠陥(異物、泡等)が発生しないように、白金又は白金合金からなる白金容器が一般的に用いられる。
【0003】
ところで、特許文献1には、白金容器と溶融ガラスの接触に起因して泡が発生するという問題が記載されている。特許文献1によると、白金容器の外側の水素濃度より溶融ガラス中の水素濃度が高いと、溶融ガラス中の水素が白金容器を透過し、白金容器の外側に拡散し易くなり、結果として白金容器近傍のガラス領域で酸素が飽和状態に達して、酸素泡が発生し易くなる。
【0004】
白金容器近傍のガラス領域で泡の発生を防止するために、特許文献1では、泡の原因となるガラス中の水分量を低下させる方法が提案されている。また、特許文献2では、白金容器の外側の雰囲気に水素又は水蒸気を導入する方法が提案されている。更に、特許文献3〜5では、白金容器の外表面に被膜を形成する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001−500098号公報
【特許文献2】特表2001−503008号公報
【特許文献3】特表2004−523449号公報
【特許文献4】特表2006−522001号公報
【特許文献5】特開2006−76871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法は、ガラス中の水分量をβ−OHで表し、このβ−OH値を0.5/mm未満に調整することにより、白金容器と溶融ガラスとの界面における泡の発生を防止する方法である。そして、同文献では、ハロゲン等の乾燥剤をガラス原料に添加することにより、β−OH値を0.5/mm未満に調整している。しかし、この方法は、下記の課題を有している。
【0007】
近年、溶解槽を大型化することにより、ガラスを大量生産し、液晶ディスプレイ用ガラス板の急激な需要拡大に対応することが検討されている。溶解槽が大型化すると、溶融ガラスが溶解槽内に長時間滞在するようになる。この場合、溶融雰囲気中から溶融ガラス中に拡散する水分量が増加し易くなるため、β−OH値を0.5/mm未満に調整し難くなる。また、近年、環境的観点から、清澄剤であるAs、Sb等の使用が制限されつつある。これらの清澄剤の使用が制限される場合には、溶解槽内における溶融ガラスの滞在時間を長くする手法が採用される場合があり、この場合も、上記と同様にして、溶融ガラス中の水分量が増加し易くなる。従って、ガラス原料の選択により、β−OH値を0.5/mm未満に低下させる方法は、生産効率の上で問題がある。
【0008】
また、特許文献2に記載の方法は、白金容器の外側の雰囲気に水素又は水蒸気を導入することにより、白金容器近傍のガラス領域で泡の発生を防止する方法である。しかし、この方法は、水素濃度を常時、厳密に管理する必要があるため、コスト高の要因となる。具体的には、水素ガス濃度が高過ぎると、白金容器の壁を通じて、白金容器の外側から溶融ガラスに水素が過剰に供給されて、その過剰な水素がガラス成分の一部を還元して、結果として、その還元成分が白金容器と合金を形成するおそれがある(特許文献2参照)。一方、水素ガス濃度が低過ぎると、発泡防止効果が乏しくなる(特許文献2参照)。
【0009】
また、特許文献3〜5に記載の方法は、白金容器の外表面に被膜を形成して、白金容器近傍のガラス領域で泡の発生を防止する方法である。この方法によれば、工程管理しなくても、発泡防止効果を享受することができる。一方、この方法の場合、無欠陥の被膜が要求される。つまり被膜に亀裂等の欠陥があると、その部分に対応する白金容器近傍のガラス領域で泡の発生を防止し難くなる。しかし、実際の施工において、白金容器の外表面に無欠陥の被膜を効率的に形成することは困難である。また、高温雰囲気、操業温度の変動等の影響により、操業中に被膜が劣化したり、破損したりする可能性もある。しかも被膜の欠陥が微小である場合は、その欠陥の発見が困難になり、欠陥の補修を行う際には操業を中断する必要がある。従って、特許文献3〜5に記載の方法は、コスト高の要因となる。
【0010】
そこで、本発明は、コスト高を招来させることなく、白金容器近傍のガラス領域で泡の発生を防止し得るガラス製造装置及びガラス製造方法を創案することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、鋭意検討の結果、白金容器の外側に、多孔質セラミックスボールを分散させたガラス層を形成することにより、上記技術的課題を解決できることを見出し、本発明として提案するものである。すなわち、本発明のガラス製造装置は、溶解工程、清澄工程、供給工程、均質化工程、及び成形工程中の少なくとも一部に使用されるガラス製造装置において、白金又は白金合金からなる白金容器の外側に、多孔質セラミックスボールを含むガラス層を備えることを特徴とする。ここで、「白金容器」は、溶融ガラスを収容し得る限り、その形状が限定されず、ポット形状、パイプ形状等が含まれる。更に、「白金容器」は、白金又は白金合金のみで形成された容器のみならず、溶融ガラスとの接触部分が白金または白金合金で内張りされた容器も含む。「白金又は白金合金」は、白金族元素又は白金族元素を主成分として含む合金を指すが、耐熱性の観点から、白金又は白金を主成分として含む合金が好ましい。「ガラス層」は、ガラスを含む限り特に限定されず、アルミナ等のセラミックとガラスの混合物、結晶化ガラス等を含む。
【0012】
本願発明のガラス製造装置は、白金容器の外側に多孔質セラミックスボールを含むガラス層を有する。このようにすれば、ガラス製造装置の使用時に、ガラス層中で多孔質セラミックスボールの気孔内にガラス成分が浸透する。そして、多孔質セラミックスボールの気孔内にガラス成分が浸透すると、ガラス成分の流動性が低下して、ガラス層が脱落し難くなる。更に、このようにすれば、ガラス層中で多孔質セラミックスボールとガラス成分の接触面積が大きくなり、多孔質セラミックスボールの表面から結晶が析出し易くなる。そして、多孔質セラミックスボールの表面から結晶が析出すると、析出した結晶がガラス層を保持する機能を発揮して、ガラス層が脱落し難くなる。
【0013】
また、白金容器の外側にガラス層を形成すると、工程管理しなくても、白金容器近傍のガラス領域で泡の発生を防止することができる。更に、ガラス層中に多孔質セラミックスボールを添加すると、多孔質セラミックスボールがスペーサーとして機能して、白金容器の変形等を防止することも可能になる。
【0014】
第二に、本発明のガラス製造装置は、前記多孔質セラミックスボールの気孔率が10体積%以上であることが好ましい。
【0015】
第三に、本発明のガラス製造装置は、前記多孔質セラミックスボールの材質が、アルミナ、ムライト、シリカの何れかであることが好ましい。
【0016】
第四に、本発明のガラス製造装置は、前記多孔質セラミックスボールの直径が2mm以上であることが好ましい。
【0017】
第五に、本発明のガラス製造装置は、前記多孔質セラミックスボールの表面から結晶が析出していることが好ましい。
【0018】
第六に、本発明のガラス製造装置は、前記結晶がムライトであることが好ましい。
【0019】
第七に、本発明のガラス製造装置は、前記ガラス層中のガラス成分が、実質的にアルカリ金属酸化物を含まないことが好ましい。ここで、「実質的にアルカリ金属酸化物を含まない」とは、アルカリ金属酸化物(LiO、NaO、及びKO)の含有量が2000ppm(質量)以下の場合を指す。
【0020】
第八に、本発明のガラス製造方法は、上記のガラス製造装置を、溶解工程、清澄工程、供給工程、均質化工程、及び成形工程中の少なくとも一部に用い、前記ガラス製造装置中に溶融ガラスを流すことを特徴とする。
【0021】
第九に、本発明のガラス製造方法は、前記溶融ガラスが、実質的にアルカリ金属酸化物を含まないことが好ましい。
【0022】
第十に、本発明のガラス製造方法は、前記溶融ガラスの温度が1400℃以上であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るガラス製造装置及びガラス製造方法を説明するための模式的側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る均質化槽を説明するための略図的断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る供給容器を説明するための略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のガラス製造装置は、溶解工程、清澄工程、供給工程、均質化工程、及び成形工程中の少なくとも一部に使用される。一般に、連続生産されるガラスの製造工程は、溶解工程、清澄工程、均質化工程、及び成形工程を含んでいる。溶解工程は、ガラス原料を溶解し、ガラス化する工程である。清澄工程は、溶解工程で得られたガラス融液を清澄剤等の働きによって清澄する工程である。供給工程は、各工程間にガラス融液を移送する工程である。均質化工程は、ガラス融液を攪拌し、均質化する工程である。成形工程は、ガラス融液を所望の形状に成形する工程である。なお、必要に応じて、上記以外の工程、例えばガラス融液を成形に適した状態に調節する状態調節工程を均質化工程後に取り入れてもよい。
【0025】
本発明のガラス製造装置は、清澄工程以降の工程に適用することが好ましく、特に供給工程に適用することが好ましい。清澄工程以降の工程でガラス融液中に泡が発生した場合は、その泡を除去することが困難である。よって、本発明のガラス製造装置は、これらの工程に適用する意義が大きい。
【0026】
成形工程は、特に限定されないが、高品質が要求されるガラス板の成形工程であることが好ましい。また、ディスプレイ用ガラス板等の場合、ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法でガラス板を成形することが望ましい。ダウンドロー法でガラス板を成形する場合、通常、清澄工程以降で白金容器が使用される。よって、本発明のガラス製造装置は、ダウンドロー法でガラス板を成形する場合に、特に有効である。
【0027】
本発明のガラス製造装置は、白金容器の外側に、多孔質セラミックスボールを含むガラス層を備えている。多孔質セラミックスボールをガラス層に分散させる方法として、種々の方法を採用することができる。例えば、白金容器と耐火物の間に隙間を設け、その隙間に予め多孔質セラミックスボールを充填した後、ガラスカレットを充填し、ガラスカレットの軟化温度まで白金容器を加熱して、ガラス層を形成する方法を採用することができる。この場合、白金容器と耐火物の間の隙間は1mm〜30mm、5〜20mm、特に5mm〜10mmが好ましい。隙間が1mmより小さいと、隙間全域にガラス層を形成することが困難になる。一方、隙間が30mmより大きいと、白金容器の位置固定が不十分になり、白金容器が変形し易くなる。
【0028】
本発明のガラス製造装置において、多孔質セラミックスボールの気孔率は10体積%以上、10〜70体積%、20〜65体積%、特に30〜60体積%が好ましい。多孔質セラミックスボールの気孔率が10体積%未満であると、ガラス層中のガラス成分が多孔質セラミックスボールの気孔内に浸透し難くなる。一方、多孔質セラミックスボールの気孔率が70体積%より大きいと、多孔質セラミックスボールがガラス層に含まれるガラス成分により浸食され過ぎて、白金容器の位置固定が困難になる。
【0029】
多孔質セラミックスボールの材質は、アルミナ、ムライト、シリカの何れかが好ましい。このようにすれば、コスト面で有利になり、また多孔質セラミックスの表面から結晶が析出し易くなる。特に、ガラス層中のガラス成分(特に、実質的にアルカリ金属酸化物を含有しないガラス成分)を多孔質アルミナボールの気孔内に浸透させて、両成分を反応させると、多孔質アルミナボールの表面から針状のムライト結晶が析出し易くなる。このムライト結晶は、ガラス層中のガラス成分を保持し易い性質を有している。なお、針状のムライト結晶は、融点が高いため、白金容器の温度が高くても、溶解し難い性質を有する。
【0030】
多孔質セラミックスボールの直径は2mm以上、特に2.5mm以上が好ましい。多孔質セラミックスボールの直径が2mm未満であると、多孔質セラミックスボールの気孔が小さくなり易く、ガラス層中のガラス成分が多孔質セラミックスボールの気孔内に浸透し難くなる。なお、ガラス層中に多孔質セラミックスボールを均一に分散させる観点から、多孔質セラミックスボールの直径は10mm以下、特に7.5mm以下が好ましい。
【0031】
本発明のガラス製造装置において、ガラス層のガラス成分(結晶ガラスの場合を含む)の組成は、アルカリ金属酸化物を含まないことが好ましく、質量%で、SiO 40〜70%、Al 5〜20%、B 0〜15%、MgO 0〜10%、CaO 0〜25%、SrO 0〜15%、及びBaO 0〜15%を含有することが好ましい。このようにすれば、工程温度が高温になっても、高粘性を維持できるため、ガラス層が脱落する事態を防止し易くなり、長期に亘って、白金容器近傍のガラス領域において発泡を防止し易くなる。
【0032】
本発明のガラス製造方法は、上記のガラス製造装置を、溶解工程、清澄工程、供給工程、均質化工程、及び成形工程中の少なくとも一部に用いて、ガラス製造装置中に溶融ガラスを流すことを特徴とするため、本発明のガラス製造装置と同様の技術的特徴を有している。このため、当該装置の好ましい態様、効果等は、当該方法の好ましい態様、効果等と実質的に同一になる。
【0033】
本発明のガラス製造方法は、種々のガラスを製造することが可能である。その中でも、無アルカリガラスを製造することが好ましく、ガラス製造装置中に無アルカリガラスからなる溶融ガラスを流すことが好ましい。無アルカリガラスは、一般的に溶融温度が高い。このため、無アルカリガラスを製造する際、清澄工程、均質化工程等の各工程を白金容器内で行う必要性が高く、この場合、本発明の効果が大きくなる。
【0034】
無アルカリガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜70%、Al 5〜20%、B 0〜15%、MgO 0〜10%(好ましくは0〜1%)、CaO 0〜15%(好ましくは5〜10%)、SrO 0〜15%、BaO 0〜15%、及びSnO 0〜1%(好ましくは0.1〜1%)を含有することが好ましい。このようにすれば、ディスプレイ用ガラス板の要求特性(低密度、高歪点、耐薬品性、低膨張性、耐失透性等)を満たし易くなる。また、無アルカリガラスは、実質的にAs、Sbを含有していないことが好ましい。これらの清澄剤は、清澄性に優れるが、環境的観点から、その使用を制限することが好ましい。ここで、「実質的にAs、Sbを含有していない」とは、As、Sbの含有量が1000ppm(質量)未満の場合を指す。
【0035】
本発明のガラス製造方法は、種々の用途のガラスの製造に適用可能であるが、高い泡品位が要求されるディスプレイ用ガラス板(特に、液晶ディスプレイ用ガラス板、有機ELディスプレイ用ガラス板)の製造方法として好適である。なお、本発明のガラス製造方法は、プラズマディスプレイ用ガラス板の製造にも適用可能である。
【0036】
本発明のガラス製造方法において、ガラス製造装置中に流す溶融ガラスの温度は、1400℃以上、1450℃以上が好ましい。このようにすれば、ガラス層中で多孔質セラミックボールの気孔内にガラス成分が浸透し易くなる。
【0037】
次に、図面を用いて、本発明のガラス製造装置及びガラス製造方法の一例を詳細に説明する。
【0038】
図1は、本実施形態に係るガラス製造装置及びガラス製造方法を説明するための模式的側面図である。図1に示すガラス製造装置1は、液晶ディスプレイパネル用ガラス板等に使用される無アルカリガラスを製造するためのガラス製造装置である。
【0039】
図1に示すように、ガラス製造装置1は、溶解槽31と、清澄槽32と、均質化槽(攪拌槽)33と、状態調節槽34と、成形槽(オーバーフロー槽)35と、供給容器36、37、38、39とを備えている。
【0040】
溶解槽31は、投入されたガラス原料(バッチ、カレット等)を溶解して、溶融ガラスを得る溶解工程を行うための容器である。溶解槽31は、供給容器36によって清澄槽32に接続されている。
【0041】
清澄槽32は、溶解槽31から供給された溶融ガラスを清澄する清澄工程を行うための白金容器である。清澄槽32は、供給容器37によって均質化槽(攪拌槽)33に接続されている。
【0042】
均質化槽(攪拌槽)33は、清澄された溶融ガラスを攪拌し、均一化する均質化工程を行うための白金容器である。均質化槽(攪拌槽)33は、供給容器38によって状態調節槽34に接続されている。
【0043】
状態調節槽34は、溶融ガラスを成形に適した状態に調節する白金容器である。状態調節槽34は、供給容器39によって成形槽(オーバーフロー槽)35に接続されている。
【0044】
成形槽(オーバーフロー槽)35は、溶融ガラスを所望の形状に成形する成形工程を行うための容器である。図1では、成形槽(オーバーフロー槽)35は、断面形状(紙面と直行する断面形状)が略楔形を呈しており、成形槽(オーバーフロー槽)35の上部にオーバーフロー溝が形成されている。供給容器39によって溶融ガラスをオーバーフロー溝に供給した後、その溶融ガラスをオーバーフロー溝から溢れさせて、成形槽(オーバーフロー槽)35の両側の側壁面(紙面の表裏両側に位置する側面)に沿って流下させる。そして、その流下させた溶融ガラスをそれぞれ成形体の下頂部で融合させて、板状に成形する。
【0045】
図2は、均質化槽(攪拌槽)33の略図的断面図である。なお、清澄槽32、状態調節槽34も同様の構造を有している。図3は、供給容器37の略図的断面図である。なお、供給容器38、39も供給容器37と同様の構造を有している。
【0046】
図2、3に示すように、均質化槽(攪拌槽)33、供給容器37、38、39は、白金容器11の外側に、多孔質アルミナボール12aが分散したガラス層12を備えると共に、ガラス層12を介して白金容器11と耐火物15が密着した状態となっている。そして、ガラス層12中の多孔質アルミナボール12aの気孔内にガラス成分が浸透していると共に、多孔質アルミナボール12aの表面から針状のムライト結晶が析出している。
【0047】
ガラス層12に含まれるガラス成分(結晶化ガラスとなっているものを含む)は、組成として、質量%で、SiO 40〜70%、Al 5〜20%、B 0〜15%、MgO 0〜10%、CaO 0〜25%、SrO 0〜15%、及びBaO 0〜15%を含有し、実質的にアルカリ金属酸化物を含有していない。なお、ガラス層12の厚みは5mmである。
【0048】
多孔質アルミナボールの気孔率は58体積%である。そして、多孔質アルミナボールの直径は2〜10mmとなっている。
【0049】
溶融ガラス14は、無アルカリガラス(例えば日本電気硝子株式会社製OA−10G)からなる。
【0050】
図1〜3に記載のガラス製造装置1によれば、清澄槽32で溶融ガラス14中の初期泡を除去し得ると共に、その後の工程で泡の発生を抑制することができる。ガラス層12中で多孔質アルミナボール12aの気孔内にガラス成分が浸透しており、更に多孔質アルミナボール12aの表面から針状のムライト結晶が析出している。このため、ガラス層12は、白金容器11から脱落し難い状態になっている。
【0051】
なお、図1〜3に記載のガラス製造装置1は、単なる例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。例えば、溶解工程と清澄工程を単一の白金容器で行ってもよいし、一つの工程を複数の白金容器で行ってもよい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。但し、以下の実施例は単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0053】
耐火物坩堝に直径3mmの多孔質アルミナボール(気孔率 58体積%)とガラスカレット(SiO 56.0質量%、Al 15.0質量%、B 11.0質量%、CaO 10.0質量%、SrO 6.0質量%、BaO 2.0質量%)を投入し、電気炉を用いて、1500℃で72時間溶融した。次に、得られた溶融ガラス(白金容器の外側のガラス層を想定)の上に、25mm角で厚み0.05mmの白金箔(白金容器の壁を想定)を配置して、溶融ガラスと白金箔とを密着させた。次に、白金箔の上に、無アルカリガラス(日本電気硝子株式会社製OA−10G、10mm×10mm×4.2mm厚)を配置した。続いて、この試料を1500℃で10分間保持して、無アルカリガラスを溶融した後、電気炉を冷却し、多孔質アルミナボールと無アルカリガラスの状態を観察した。
【0054】
(比較例)
25mm角で厚み0.05mmの白金箔の上に、無アルカリガラス(日本電気硝子株式会社製OA−10G、10mm×10mm×4.2mm厚)を配置した。次に、この試料を1500℃で10分間保持して、無アルカリガラスを溶融した後、電気炉を冷却し、得られた無アルカリガラスの状態を観察した。なお、この実験は、白金容器の外側にガラス層が存在しない場合を想定している。
【0055】
実施例では、多孔質アルミナボールの気孔にガラスが浸透しており、多孔質アルミナボールの表面から針状のムライト結晶が析出していた。そして、無アルカリガラス中に発泡がほとんど観察されなかった。この結果から、白金容器の外側にガラス層が存在している場合、無アルカリガラス中に泡が発生しないことが分かる。更に、白金容器の外側に、多孔質セラミックスボールを含むガラス層を備えると、ガラス層が脱落し難いことが分かる。
【0056】
一方、比較例では、無アルカリガラス中に多数の発泡が認められた。この結果から、白金容器の外側にガラス層が存在していない場合、無アルカリガラス中に多数の泡が発生することが分かる。
【符号の説明】
【0057】
1 ガラス製造装置
11 白金容器
12 ガラス層
12a 多孔質セラミックスボール(多孔質アルミナボール)
14 溶融ガラス
15 耐火物
31 溶解槽
32 清澄槽
33 均質化槽(攪拌槽)
34 状態調節槽
35 成形槽(オーバーフロー槽)
36〜39 供給容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解工程、清澄工程、供給工程、均質化工程、及び成形工程中の少なくとも一部に使用されるガラス製造装置において、白金又は白金合金からなる白金容器の外側に、多孔質セラミックスボールを含むガラス層を備えることを特徴とするガラス製造装置。
【請求項2】
前記多孔質セラミックスボールの気孔率が10体積%以上であることを特徴とする請求項1項に記載のガラス製造装置。
【請求項3】
前記多孔質セラミックスボールの材質が、アルミナ、ムライト、シリカの何れかであることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス製造装置。
【請求項4】
前記多孔質セラミックスボールの直径が2mm以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のガラス製造装置。
【請求項5】
前記多孔質セラミックスボールの表面から結晶が析出していることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のガラス製造装置。
【請求項6】
前記結晶がムライトであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のガラス製造装置。
【請求項7】
前記ガラス層中のガラス成分が、実質的にアルカリ金属酸化物を含まないことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のガラス製造装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載のガラス製造装置を、溶解工程、清澄工程、供給工程、均質化工程、及び成形工程中の少なくとも一部に用い、前記ガラス製造装置中に溶融ガラスを流すことを特徴とするガラス製造方法。
【請求項9】
前記溶融ガラスが、実質的にアルカリ金属酸化物を含まないことを特徴とする請求項8に記載のガラス製造方法。
【請求項10】
前記溶融ガラスの温度が1400℃以上であることを特徴とする請求項8又は9に記載のガラス製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−63881(P2013−63881A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204361(P2011−204361)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)