説明

ガラスシートの梱包

【課題】ガラスシートの取扱いの手間を減らす。
【解決手段】LCDディスプレーガラス等のシート材を保管し出荷するためのコンテナ1は、コンテナ1を水平面上に支持するための台座5と、シート材の積重ね体を支持するための水平から約3〜15°傾いている支持台7とを有する。支持台7上のシート材のエッジに係合するための、ボトムエッジ案内部材11、対向する一対のサイドエッジ案内部材15、およびトップエッジ案内部材13が支持台7の縁部から上方へ延びている。支持台7上のシート材を固定するために、取外し可能な係止バーがシート材を横切って延びている。1個のコンテナを別のコンテナの上に積み重ねるために、積重ね用支柱51が台座5から上方へ延びている。シート材の積み下ろしのために、積重ね用支柱51、サイドエッジ案内部材15およびトップエッジ案内部材13は、取外し可能または邪魔にならない位置への下方移動が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状材料またはシート材料の梱包、保管および出荷のためのコンテナに関するものである。特に本発明は、LCDガラス基板として用いるための種々のガラスシート等をほぼ水平姿勢で梱包するためのコンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近までは、ディスプレー生産のための種々のフルサイズの板ガラスは、溶融、成形および裁断の実施に続いて、木枠内に垂直に梱包されて保管されていた。これらの木枠は、ガラス成形領域からガラス仕上げ領域までのプラント内でフルサイズのシートを移動させ、国内へ出荷し、あるいはより小さいサイズのシートを海外へ出荷するために用いることが可能である。しかしながら、比較的大型のガラスシートのための一般の木枠は、国際的な輸送のためには大き過ぎる。一般の木枠のサイズはまた、ガラス工場における設備および機器のレイアウトに関して問題を起こしていた。木枠はまた、一般に再利用が不能であり、これにより、廃棄される材料および余分な材料費が生じていた。
【0003】
最近の生産工程においては、より小型で再利用可能な金属製の特製のコンテナおよび/またはパレットが、工場内でガラスシートを保管かつ輸送するために開発されて来た。同様に、その他の特製のコンテナおよび/またはパレットが、ガラスをガラス工場外へ国内的または国際的に出荷または輸送するために開発されて来た。このような手配においては、ガラス工場からガラス需用者の施設へ出荷するために、工場用コンテナから取り出したガラスを出荷用コンテナに収納して出荷し、ガラス需用者の施設に到着すると、出荷用コンテナからガラスを取り出してガラス需用者のコンテナへ収納することが必要であった。効率の向上およびコストの低減のみでなく、ガラスシートの汚染または破損の可能性を低減するためには、例えばコンテナに入れたり出したりする一つまたは複数の工程を省略することによって、ガラスシートの取扱いの手間を減らすことが望ましい。
【0004】
特許文献1および特許文献2には、LCDガラス基板等のシート材料を梱包するためのコンテナが記載されている。これらの特許文献に開示されたコンテナは、ガラス基板をほぼ垂直に収納している(特許文献1)、コンテナへの出し入れに融通性を欠く、複雑である等の種々の欠点に悩まされている。さらに、LCDガラス基板をほぼ水平の状態において保管し輸送することが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0017841号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0131574号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記およびその他の要求に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
複数枚のシート材からなる積重ね体を保持することが可能なコンテナがここに開示されている。一部の実施の形態によれば、このコンテナは、コンテナを水平面上に支持するための台座と、この台座上に取り付けられた支持台をと備え、この支持台は、1枚または複数枚のシート材を支持台上に平らに寝かせて支持するための実質的に平面状の支持面を画成し、この支持面は、水平に対して約3°〜約15°傾斜している。またこのコンテナは、支持台上のシート材のボトムエッジに係合するために支持台の低方の縁部に隣接して上方へ延びるボトムエッジ案内部材と、支持台上のシート材のトップエッジに係合するために支持台の上縁に隣接して上方へ延びるトップエッジ案内部材と、支持台上のシート材のサイドエッジに係合するために支持台の両側部に隣接して上方へ延びる、支持台の各側部に1個ずつ配されて対向する一対のサイドエッジ案内部材とを備えている。支持台は、約3°〜約12°、または約3°〜約10°、または約5°〜約15°、または約5°〜約12°、または約5°〜約10°傾斜していてもよい。
【0008】
一部の実施の形態によれば、このコンテナは、トップエッジ案内部材およびサイドエッジ案内部材を備えることができ、これらエッジ案内部材は、(a)(1)直立した出荷位置と(2)上記支持面の下方の低い積み下ろし位置との間で移動するためにコンテナに移動可能に取り付けられているか、または(b)支持台または台座に取外し可能に固定されているかの何れかである。
【0009】
一部の実施の形態によれば、このコンテナは、上記支持台または上記台座に固定されかつ支持台上に載せられた複数枚のシート材のうちの最上位のシートのトップエッジの上方の水平面まで上方へ延びる複数本の積重ね用支柱を備えることができ、上記台座の各隅部から各1本の上記積重ね用支柱が上方へ延びている。
【0010】
一部の実施の形態によれば、このコンテナは、上記支持台上の複数枚のシート材を係止するために、上記支持台に移動可能に取り付けられて複数枚のシート材を横切って延びる係止バーを備えることができる。締付け機構がこの係止バーを下方へ引き寄せて支持台上のシート材に接触させることができる。
【0011】
一部の実施の形態によれば、このコンテナは、支持台の各サイドエッジから上方へ延びる対向する一対の設置用支柱を備えることができる。上記係止バーの各端部は,対応する設置用支柱を摺動可能に受け入れる凹部または透孔の何れかを備え、これにより、上記係止バーが上記締付け機構により下方へ引き寄せられたときに、この係止バーが設置用支柱に沿って摺動降下してシート材に接触することができる。
【0012】
一部の実施の形態によれば、このコンテナは、上記係止バーと上記支持台上のシート材との間に配置された緩衝用ライニングを備えることができる。上記支持台とシート材との間にも緩衝用ライニングを配置することができる。この支持台とシート材との間の緩衝用ライニングは、支持面上のシート材が支持面上で滑動するのを防止するために、高密度エチレン酢酸ポリマー等の摩擦材で形成されているのがよい。
【0013】
一部の実施の形態によれば、このコンテナは、上記ボトムエッジ案内部材、サイドエッジ案内部材およびトップエッジ案内部材の表面上に緩衝用パッドを備えることができる。これらの緩衝用パッドは、エチレン・プロピレン・ポリマーまたはエチレン・プロピレン・ジエンポリメチレン・エラストマーから形成するのがよい。
【0014】
一部の実施の形態によれば、このコンテナは、上記台座の少なくとも一側に一対のフォーク挿入孔を備えることができる。上記台座の各側部に一対のフォーク挿入孔を備えていてもよい。
【0015】
上記シート材は、LCDディスプレー基板として用いるためのガラス等のガラスシートであり得る。
【0016】
一部の実施の形態によれば、このコンテナは、コンテナを水平面上に支持するための台座と、この台座上に取り付けられた支持台とを備え、この支持台は、1枚または複数枚のシート材を上記支持台上に平らに寝かせて支持するためのほぼ水平の平面状の支持面を画成し、またこのコンテナは、上記支持台上のシート材のボトムエッジに係合するための、上記支持台の低方の縁部に隣接して上方へ延びるボトムエッジ案内部材と、上記支持台上のシート材のサイドエッジに係合するための、上記支持台の両側部に隣接して上方へ延びる、支持台の各側部に1個ずつ配されて対向する一対のサイドエッジ案内部材と、複数本の積重ね用支柱とを備え、上記台座の各隅部から1本の上記積重ね用支柱が、上記支持台上の複数枚のシート材の最上位のシートのトップエッジの上方の水平面まで上方へ延びており、これにより、第2のコンテナを上記積重ね用支柱の上端に積み重ねることが可能である。
【0017】
一部の実施の形態によれば、上記積重ね用支柱は、(a)上記支持台上へのシート材の積み下ろしのために上記台座から取外し可能であるか、または(b)直立した位置と、上記支持面の下方の低い積み下ろし位置との間で枢動するために、上記台座にヒンジ結合されているかの何れかである。
【0018】
一部の実施の形態によれば、上記サイドエッジ案内部材は、(a)(1)直立した出荷位置と、(2)上記支持面の下方の低い積み下ろし位置との間で移動するために上記コンテナに移動可能に取り付けられているか、あるいは(b)上記支持台上へのシート材の積み下ろしのために取外し可能であるかの何れかである。
【0019】
一部の実施の形態によれば、上記係止バーは、上記支持台上の複数枚のシート材の係止のために、上記複数枚のシート材を横切って延びるように上記支持台に取外し可能に取り付けられることが可能である。
【0020】
一部の実施の形態によれば、このコンテナは、上記トップエッジ案内部材、上記サイドエッジ案内部材、上記積重ね用支柱および上記係止バーのうちの少なくとも一つを収納するための収納場所を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】多数枚のシート材からなる積重ね体を有する本発明の一実施の形態によるコンテナの概略的側面図である。
【図2】図1に示されたコンテナ上のトップエッジ案内部材の詳細を示す概略的背面斜視図である。
【図3】図1に示されたコンテナの概略的正面斜視図である。
【図4】図1に示されたコンテナの可倒式積重ね用支柱、係止バー取付け構造およびサイドエッジ案内部材を示す概略的正面斜視図である。
【図5】倒された位置にある可倒式(折畳み式)積重ね用支柱および係止バー設置用支柱と、コンテナ上へのシート材の積み下ろしのために取り外されたエッジ案内部材とを示す、図1に示されたコンテナの概略的側面図である。
【図6】上下に積み重ねられかつ緩衝用パレット上に積み重ねられた一対の図1に示されたコンテナを示す概略的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付図面は、実施の形態を介して本発明をさらに理解するために備えられているもので、本明細書に組み入れられ、かつその一部を構成するものである。
【0023】
本明細書および請求項において用いられている物理特性に関する重量、寸法および値を示す数値は、特に指示のない限り、あらゆる場合に「約」が付されるものとして理解すべきである。また、本明細書および請求項において用いられている厳密な数値も、本発明のさらなる実施の形態を形成することも理解すべきである。実施の形態において開示された数値の正確性を保証すべく努力が払われている。しかしながら、何れの測定値も、それぞれの測定技術に見受けられる標準偏差から生じるいくらかの誤差を本来的に包含している可能性がある。さらに、本発明の説明および請求項において、単数形で示されている部材は、特に単数に限るとの明白な指示がない限り、単数のみに限定されるべきではない。したがって、例えば「フォーク挿入孔」と言えば、明白な指示がない限り、複数のこの種の孔を備えた実施の形態を含むものである。
【0024】
図1および図2を参照すると、本発明の実施の形態として、複数枚のガラスシート等の複数枚の板材またはシート材3をほぼ水平状態に保持することが可能な梱包・出荷用コンテナ1が記載されている。コンテナ1は、このコンテナを床またはその他の水平面上に支持するための水平台座5と、複数枚の板材またはシート材3を僅かに傾斜させてほぼ水平に支持するために、僅かに傾斜させてほぼ水平に台座上に固定された支持台7とを備えている。水平に対する支持台7の角度Aは、約3°〜約15°、または約3°〜約12°、または約3°〜約10°、または約5°〜約15°、または約5°〜約12°、または約5°〜約10°、または8°がよい。支持台7は、1枚の板材またはシート材(不図示)であっても、あるいは、上述のように水平に対して角度Aだけ僅かに傾いた支持面内で平坦な支持表面を画成する複数本の支持ビーム7であってもよい。コンテナ1に対するシート材の積み下ろし時における、およびシート材を積んだコンテナの出荷および取扱い時における支持台7からシート材への衝撃および振動の伝達を最少にするために、衝撃吸収材料からなる可撓性マット、パッドまたはライニング9が支持台7と複数枚のシート材3との間に配置されていてもよい。上記ライニング9は、支持台7に接着されていても、あるいは単純に非接着状態で支持台7上に置かれていてもよい。
【0025】
支持台7の前縁または低縁からは、1個または複数個のボトムエッジ案内部材11(図3および図4参照)が支持台7とほぼ垂直に上方へ延びている。このボトムエッジ案内部材11は、シート材3を支持台7上に載せるときにシート材のボトムエッジを案内し、かつシート材を積んだコンテナの出荷および取扱い時におけるシート材3のフロントエッジすなわちボトムエッジを支持しかつ上記エッジに係合する。この構成によって、ボトムエッジ案内部材11は、傾斜した支持台7と協働して、支持台7およびボトムエッジ案内部材11に対してシート材を下方へ引き寄せる重力の作用でシート材3をコンテナ1上に保持する。
【0026】
上記ボトムエッジ案内部材11は、台座5または支持台7に永久的に固定されていることが可能であり、コンテナに対するシート材の積み下ろし時に取り去られることを要しない。あるいいは、ボトムエッジ案内部材が、コンテナに対するシート材の積み下ろしの邪魔にならないようにするために除去または支持台7の下方(例えば支持面の下方)への移動が可能なように、台座および/または支持台に対して取外し可能に、摺動可能に、または枢動可能に取り付けられていてもよい。ボトムエッジ案内部材11は、図4に示されているように、支持台7のほぼ幅一杯に延びる1枚のフランジであっても、図3に示されているように、複数枚のフランジであっても、あるいは複数本の柱(不図示)であってもよい。シート材を積んだコンテナの出荷および取扱い時におけるボトムエッジ案内部材からシート材への衝撃および振動の伝達を最少にし、かつシート材のエッジの欠けまたは破損を防止するために、緩衝材からなるシートまたはマット12が、ボトムエッジ案内部材11とシート材3の積重ね体との間に配置されていてもよい。緩衝材12は、ボトムエッジ案内部材11のシート材エッジに対向する面に取り付けられていても、または接着されていてもよい。
【0027】
シート材を支持台7上に載せるときにシート材3のトップエッジおよびサイドエッジを案内するために、かつシート材のエッジに係合して、シート材を積んだコンテナの出荷および取扱い時においてシート材が支持台に対して移動するのを防止するために、複数のトップエッジ案内部材13(図2および図3参照)ならびにサイドエッジ案内部材15(図1および図4参照)が、支持台7の上縁および側縁からそれぞれ支持台と垂直に上方へ延びていてもよい。シート材を積んだコンテナの出荷および取扱い時におけるエッジ案内部材からシート材への衝撃および振動の伝達を最少にし、かつ板またはシート材のエッジの破損を防止するために、緩衝材からなるシートまたはマット17が、エッジ案内部材13および15のシート材エッジに対向する面に取り付けられまたは接着されていてもよい。
【0028】
エッジ案内部材11、13および15は、例えば、ボルト、図1および図4に示されているような蝶ナット19、図2に示されているような締め具21、ロックピン、クリップ、ベルクロ(登録商標)等のような適当な取外し可能な固定手段によって、支持台7または台座5に取外し可能に取り付けられていればよい。この構成によって、エッジ案内部材11、13および15、特にトップエッジ案内部材13およびサイドエッジ案内部材15は、支持台に対してシート材を積み下ろしするために、図5に示されているように支持台7から取り外されることが可能になり、これにより、積み下ろし時にシート材がエッジ案内部材15に衝突して破損するおそれが著しく軽減される。あるいは、エッジ案内部材11、13および15、特にトップエッジ案内部材13およびサイドエッジ案内部材15が、コンテナに対するシート材の積み下ろしの邪魔にならないように、支持台の下方(例えば支持面の下方)へ枢動または摺動可能なように、支持台にヒンジで、または摺動可能に取り付けられていてもよい。
【0029】
シート材3の積重ね体を支持台7上の所定位置に係止するために、図3および図4に示されているような、1本または複数本の係止バー23がコンテナ1に取外し可能に取り付けられていてもよい。これらの係止バー23は、支持台7上に載せられたシート材3の積重ね体を横切って延びる態様で、シート材を載せたコンテナ1に選択的に取り付けられている(図3に明瞭に示されている)。このコンテナ1はさらに、係止バー23を所定位置に保持しかつ係止バー23をシート材3の積重ね体上に押し付けまたは締め付けるために、例えば係止ベルト25および締め具41またはその他の適当な機構を備えていてもよい。これによって係止バー23は、シート材3を支持台7に押し付け、かつシート材を載せたコンテナ1の出荷および取扱い時においてシート材3が支持台7上で上下にバウンドするのを防止する。出荷および取扱い時において係止バー23から衝撃および振動がシート材に伝達されるのを最少にするために、衝撃を吸収するフレキシブルなライニングまたはパッド(不図示)が、支持台7上に載せられたシート材3の積重ね体と係止バー23との間に挿入されていてもよい。あるいは係止バー23が、その少なくともシート材に対向する面上に、または係止バー23の全ての面上に、緩衝材27を備えていてもよい。
【0030】
梱包されたシート材が汚染されたり破損したりするのを防止するために、次にプラスチックまたはカンバス地のシート、塩ビシート、または収縮フィルム(不図示)等の軟らかいフレキシブルなカバー、または硬いカバーまたは覆いがシート材3の積重ね体上に、またはコンテナ1全体上に掛けられる。このカバーは、シート材3の積重ね体の頂面を覆うものであっても、塵埃および積重ね体3上に加えられる不慮の打撃および衝撃をさらに防止するために、シート材3の積重ね体のサイドエッジをも覆うものであってもよい。「ベルクロ」、ロープまたはその他の適当な締結手段が用いられて、コンテナに対してカバーがしっかりとかつ取外し可能に取り付けられる(不図示)。
【0031】
図3および図4から明らかなように、係止バー設置用支柱29が支持台7から上方へ延びていてもよい。係止バー23は、図4に示されているように、二股に分かれた両端部31を備えていても、あるいは各端部に支柱29を収容する貫通孔(不図示)が形成されていてもよい。係止バー23は、設置用支柱29に沿って摺動降下して、支持台7上に載せられたシート材3の積重ね体上に乗る。設置用支柱29は、支持台7の側縁から外方へ突出する枢支ピン32に枢動可能に取り付けられているので、支持台7に対してシート材3を積み下ろしするために、図5に示されているように、設置用支柱29が支持台7の下方(例えば支持面の下方)へ折り畳まれることが可能である。
【0032】
一端が支持台7に固定された係止ベルト25は、係止バー23を固定するのに用いることができる。係止ベルト25は、係止バー23の両端部に縛り付けられまたは巻き付けられる。係止バー23は、係止ベルト25を収容しかつ係止ベルト25が係止バー23の両端部から滑り落ちるのを防止するために、その両端近傍に凹部または溝39を備えている。係止バー23をシート材3の積重ね体上にしっかりと押し付けるために、係止ベルト25の自由端は、ベルト締め具41を一方向に通過しかつきつく引かれる。係止ベルトの一端を引く力を解除したときに、係止ベルトがベルト締め具に保持されるようにするために、ベルト締め具の歯(不図示)が係止ベルトに食い込んで、ベルト締め具が係止ベルトをクランプし、これにより係止ベルトによる周知の態様のしっかりとした固定が行なわれる。上記に説明されかつ図示されているベルト締め具41に代えて、ラチェット式ベルト締め具、バックルまたは他の適当なベルト固定具を用いてもよい。
【0033】
本発明の実施の形態による図3および図4を参照すると、倉庫、トラックまたは出荷用コンテナ内において、一つのコンテナ1′上に他のコンテナ1を載せる態様で複数のコンテナ1を上下に積み重ねるために、コンテナ1が、支持台7または台座5に固定された複数本の積重ね用支柱51を備えていてもよい。図3および図6から明らかなように、積重ね用支柱51は、台座5の各隅部から、支持台7上に載せられたシート材3の積重ね体の最上位のシート材のトップエッジの上方まで延びていればよい。各積重ね用支柱51の上端には、コンテナ1が他のコンテナ1′上に積み重ねられるときに、台座5の各隅部の底面における雌の積重ね用凹部55(図1参照)に嵌合する、支柱の上端から上方へ突出する雄の積重ね用突起53が設けられている。この方法で、積み重ねられたコンテナ1および1′はしっかりと水平に固定され、これにより、積み重ねられたコンテナの出荷および取扱い時に、積み重ねられたコンテナが互いに水平方向にずれるのを防止することができる。積重ね用支柱51の上端には、積重ね用突起53を取り囲む水平面上に緩衝パッド58が取り付けられていてもよい。コンテナ1および1′はまた、出荷のための緩衝パレット57(図6参照)上に積み重ねられていてもよい。
【0034】
図示のコンテナの一部の実施の形態によれば、積重ね用支柱51は、ヒンジ59(図4および図5に明示されている)を介して台座5または支持台7に連結されており、これにより、図5に示されているように、支持台7へのシート材3の積み下ろしのために、積重ね用支柱51が支持台7の下方(例えば支持面の下方)の邪魔にならない低い位置すなわち積み下ろし位置に折り畳まれる。この構成により、積み下ろしされるシート材が支柱に当たって破損するおそれが著しく軽減される。支持台7の低縁に隣接した積重ね用支柱51のみは、コンテナの積み下ろし時に折畳むためにヒンジ結合されているのがよく、支持台7の低縁に隣接した積重ね用支柱ほど支持台7の上方高く延びていない支持台7の頂縁に隣接した積重ね用支柱は、ロックピン61またはその他の適当なロックまたはラッチ手段によって台座5に固定されていてもよい。ロックピン61は、コンテナ1と1′との積重ね時、または積重ねられたコンテナ1および1′の出荷および取扱い時における積重ね用支柱の不慮の折畳みを防止するために、図4および図6に示されているように、積重ね用支柱51を直立状態に、すなわち積み重ね状態にロックすべく設けられる。ヒンジピン63をヒンジ59から取り外すことも可能であり、これにより、積重ね用支柱51は、交換、コンテナの積み下ろし、またはその他の目的のために、ロックピン61およびヒンジピン63の双方の取外しによって取り外すことができる。
【0035】
設備の周囲でコンテナ1および1′を持ち上げかつ運搬するために、およびトラック、出荷用コンテナ、およびその他の形式の運搬手段に対するコンテナの積み下ろしのために、台座5はフォークリフトのフォークを受け入れるための一対のフォーク挿入孔65を少なくともその一側に備えることができる。コンテナがフォークリフトのフォークを四方から受け入れるために、台座5の四方の側部にそれぞれ一対のフォーク挿入孔65が形成されているのがよい。
【0036】
コンテナ1は、係止バー23が係止バー設置用支柱29に取り付けられていないときに、係止バー23を収納するための収納場所45を、図1に示されているように台座5上に備えることができる。あるいは係止バー23を収納するために、図5に示されているように、コンテナ1の背部上のフック47等のフックまたは収納場所を台座5の一側に設けてもよい。コンテナ1はまた、ソフトカバー、トップエッジ案内部材13、ボトムエッジ案内部材11、サイドエッジ案内部材15および/または係止ベルト25のうちの一つまたは複数を収納するための区画または場所を備えていてもよい。
【0037】
コンテナ1に対するシート材3の積み下ろしのために、締付け解除タブ43を引き上げることによってベルト締め具41が解除され、このベルト締め具41から係止ベルト25を外すことができる。次に係止ベルト25が係止バー23の捕捉を解除し、係止バー23は係止バー設置用支柱29から取り外される。エッジ案内部材11,13および15、特にサイドエッジ案内部材15およびトップエッジ案内部材13は、支持台7から取り外され、または支持台7の下方へ移動せしめられ、係止バー設置用支柱29は取り外され、または支持台7の下方へ枢動せしめられ、積重ね用支柱51、特に支持台7の低方の縁部に隣接する積重ね用支柱は、取り外されるかまたは支持台7の下方へ枢動せしめられる。係止バー、係止ベルト、および積重ね用支柱が取り外されると、台座または支持台に設けられた収納場所に収納される。ここでシート材は、エッジ案内部材、積重ね用支柱または係止バー設置用支柱に当接して損傷を受けるおそれなしに積み下ろしすることができる。
【0038】
支持台7、係止バー、積重ね用支柱51、ならびにエッジ案内部材11,13および15のための可撓性材料または緩衝材9,12,17,27および58は、エチレン・プロピレン・ポリマー(EPP)、高密度エチレン酢酸ビニル・ポリマー(EVA)およびエチレン・プロピレン・ジエンポリメチレン・エラストマー(EPDM)等の適当なゴム、発泡材、スポンジゴム、または弾性を有するポリマー材料から形成することができる。支持台7上のライニング9は、取扱いおよび集荷時に支持台7上でシート材が水平方向に滑動しないように、その上に載せられたシート材に対して十分な摩擦力を与えるものでなければならない。支持台7上のライニング9は高密度EVA材で形成するのがよい。より軟らかく、より弾性を有するEPPまたはEPDMは、エッジ案内部材11,13および15ならびに係止バー23上の緩衝用パッドまたはライニングを形成するのに用いるのがよい。台座5、支持台7、エッジ案内部材11,13および15ならびに積重ね用支柱51は、コンテナ1が強く、軽量で耐久力がありかつ再使用が可能なように、スチールまたはアルミニウム等の金属、あるいはポリマーとガラス繊維、炭素繊維等との複合材、またはその他の耐久力のあるポリマーで形成するのがよい。
【0039】
本発明のコンテナに載せられるのに先立って、ガラスシートからなる各シート材3は、紙、ポリマーフィルムおよび/またはポリマーコーティング等の個々の包装材(不図示)によって保護される。包装材は、各シート材の各面上に配置されまたは接着される。例えば、薄い保護ペーパまたはポリマーフィルムは、接着剤を用いることなしに紙またはポリマーフィルムをシート材の表面に接着し得るように、シート材の清純かつ平滑な表面に静電的に接着されるのがよい。あるいは、またはこれに加えて、表面の直接接触および擦り傷を防止するために、隣接する2枚のシート材の間に、紙および/またはその他の材料からなるスペーサを配置してもよい。LCDの用途に関しては、清純なガラス表面の品質が要求されるので、このような包装材料がLCDガラス基板にとって重要である。
【0040】
本発明の構成は、垂直に配向されたシート材の積重ね体の梱包に比較していくつかの利点がある。特に、
(1)フォークリフトのドライバは、見通しが制約されることなしに梱包を扱うことが可能である。
【0041】
(2)コンテナは、ガラスを一杯に積んだ状態のときには3段から4段まで、空の場合には5段まで積み重ねることができるので、倉庫への収容密度を高めることができる。
【0042】
(3)垂直積重ねの場合よりも荷降ろし費用を低減することができる。
【0043】
本発明の精神および範囲から離れることなしに、種々の変形および変更が可能なことは、当業者には明らかであろう。したがって本発明は、添付の請求項およびそれらの均等物の範囲内で行なわれた本発明の変形および変更をカバーすることを意図するものである。
【符号の説明】
【0044】
1 コンテナ
3 シート材
5 台座
7 支持台
9 ライニング
11 ボトムエッジ案内部材
13 トップエッジ案内部材
15 サイドエッジ案内部材
23 係止バー
25 係止ベルト
29 係止バー設置用支柱
51 積重ね用支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のシート材からなる積重ね体を保持することが可能なコンテナであって、該コンテナは、
該コンテナを水平面上に支持するための台座と、
該台座上に取り付けられた支持台であって、該支持台は、1枚または複数枚のシート材を前記支持台上に平らに寝かせて支持するための実質的に平面状の支持面を画成し、該支持面は、水平に対して約3°〜約15°、または約3°〜約12°、または約3°〜約10°、または約5°〜約15°、または約5°〜約12°、または約5°〜約10°の範囲内で傾斜している支持台と、
前記支持台上の前記シート材のボトムエッジに係合するために、前記支持台の低方の縁部に隣接して上方へ延びるボトムエッジ案内部材と、
前記支持台上の前記シート材のトップエッジに係合するために、前記支持台の頂縁に隣接して上方へ延びるトップエッジ案内部材と、
前記支持台上の前記シート材のサイドエッジに係合するために、前記支持台の両側縁に隣接して上方へ延びる、前記支持台の各側部に1個ずつ配されて対向する一対のサイドエッジ案内部材と、
を備えていることを特徴とするコンテナ。
【請求項2】
前記支持台または前記台座に固定されて、前記支持台上に載せられた複数枚のシート材の最上位のシートのトップエッジの上方の水平面まで上方へ延びる複数本の積重ね用支柱をさらに備え、前記台座の各隅部から1本の前記積重ね用支柱が上方へ延びており、
前記トップエッジ案内部材、サイドエッジ案内部材および前記積重ね用支柱のうちの一つまたは複数が、(a)(1)直立した出荷位置と(2)前記支持面の下方の低い積み下ろし位置との間での移動のために前記コンテナに移動可能に取り付けられているか、または(b)前記支持台または前記台座に取外し可能に固定されているかの何れかであることを特徴とする請求項1記載のコンテナ。
【請求項3】
前記支持台上の複数枚のシート材を係止するために、前記支持台に移動可能に取り付けられて前記複数枚のシート材を横切って延びる係止バーと、
前記係止バーを下方へ引き寄せて前記支持台上のシート材に接触させる締付け機構と、
をさらに備えていることを特徴とする請求項1または2記載のコンテナ。
【請求項4】
前記支持台と前記シート材との間に配置された緩衝用ライニングであって、前記支持面上の前記シート材が前記支持面上で滑動するのを防止する摩擦材にて形成されたライニングと、
前記ボトムエッジ案内部材、サイドエッジ案内部材およびトップエッジ案内部材の前記シート材に対向する表面上に緩衝用パッドと、
をさらに備えていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載のコンテナ。
【請求項5】
前記シート材がガラスシートであることを特徴とする請求項1から4の何れか1項記載のコンテナ。
【請求項6】
複数枚のシート材からなる積重ね体を保管または出荷するためのコンテナであって、該コンテナは、
前記コンテナを水平面上に支持するための台座と、
該台座上に取り付けられた支持台であって、1枚または複数枚のシート材を前記支持台上に平らに寝かせて支持するためのほぼ水平の平面状の支持面を画成する支持台と、
前記支持台上の前記シート材のボトムエッジに係合するために、前記支持台の低方の縁部に隣接して上方へ延びるボトムエッジ案内部材と、
前記支持台上の前記シート材のサイドエッジに係合するために、前記支持台の両側縁に隣接して上方へ延びる、前記支持台の各側部に1個ずつ配されて対向する一対のサイドエッジ案内部材と、
複数本の積重ね用支柱であって、前記台座の各隅部から前記積重ね用支柱の1本が前記支持台上に載せられた複数枚のシート材の最上位のシートのトップエッジの上方の水平面まで上方へ延びており、これにより、第2の前記コンテナが前記積重ね用支柱の上端に積み重ねられることが可能である支柱と、
を備えたことを特徴とするコンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−298479(P2009−298479A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−99686(P2009−99686)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】