説明

ガラスセラミック物品並びにガラスをセラミック化するための方法及び装置

本発明は、セラミック化をローラー上で直接実施する、連続炉においてグリーンガラスをセラミック化するための方法及び装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーンガラスをセラミック化するための方法及び装置、並びに該方法を用いて製造することができるガラスセラミック製品に関する。とりわけ、本発明は、グリーンガラスを搬送システムのローラー上で直接セラミック化させる方法及び装置、並びにこの方法及び装置を用いて製造することができる製品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間成形プロセスに直接続いて起こる連続的なセラミック化方法は、従来技術から既知である。特許文献1は、結晶化ガラス板を製造する連続的な方法、及び該方法を実行するための装置を教示している。この方法は、結晶性ガラス材料を溶解する工程と、溶融材料の粘度を調節する工程と、ガラスをローラー間及び/又はシリンダ間で圧延成形して、ガラスリボンを形成する工程と、ガラスリボンを結晶化させる結晶化トンネルにガラスリボンを通過させる工程とを含む。教示によれば、ガラスリボンは、耐熱材料からなるローラーで構成されるコンベヤ上で結晶化トンネルに移送される。「押さえローラー」は、結晶化トンネルへの入口の上流に任意に設けられ、平面状のリボンが得られるように新たに成形されたガラスリボンをコンベヤに押しつける。
【0003】
しかしながら、引用文献は、多くの重要なパラメータ、例えば、セラミック化プロセスの総所要時間、セラミック化中の最大温度、及びガラスリボンの関連粘度、又はコンベヤの個々のローラーの間の距離に関する情報を何ら含んでいない。しかしながら、この情報は、十分な平面性を有するガラスセラミック物品を製造可能であるために不可欠なものである。
【0004】
最大温度負荷の段階中、つまり、概して体積結晶化中、ガラスリボンの粘度が極めて低く、ローラー間の距離が大き過ぎればガラスリボンがローラー間で「たわむ」ため、セラミック化製品が強いうねりを示す。このため、概して、体積結晶化の開始直前及び開始時に達する最も低い粘度の期間が、可能な限り最も短い間に過ぎるように、該方法を制御可能であることが望ましいと考えられる。しかしながら、当業者には既知であるように、少なくとも断続的に極めて高いセラミック化温度により、高粘度の期間が短く、さらに、セラミック化の発熱プロセスを制御することが困難であることから、これは難しい。さらに、必要とされる温度が高ければ、短いセラミック化時間により、セラミックグリーンガラスの最小粘度が低くなり、セラミックグリーンガラスをより容易に変形させるため、より扱いにくくもなる。
【0005】
これらの関係及びパラメータは、引用文献において何ら言及されていない。したがって、記載されている方法は、一般論として(only in general terms)、生産される製品の品質が幾分従属的な役割を果たすものの、ローラー上での連続的なセラミック化の実現可能性に関するものに過ぎないと考えられるべきである。詳細を欠いた方法を用いて製造される製品は、この点で、おそらく高いうねり度合いを示し、故に、例えば平滑研削プロセス又は平滑研磨プロセス等のその後の処理を伴うことなく平面状の製品を要する多くの用途に適さない。
【0006】
記載されている方法に加えて、グリーンガラスとローラーとの不連続的な接触によって生じるうねりの問題を防止するために、サポートプレート上又は溶融金属浴において移送を行う、グリーンガラスを連続的にセラミック化する他の方法も知られている(例えば、特許文献2及び特許文献3)。これらの方法は概して、作り出すことが複雑であり、さらにコストの増加につながる不活性雰囲気中で実行しなければならないという欠点を有する。
【0007】
グリーンガラスをサポートプレート上で移送することは、サポートプレート上にあるグリーンガラスの側面のみが炉内雰囲気との接触を制限され、製造されるセラミック物品の特性、例えば、機械的強度、耐薬品性、透明度等に関して、その上面と下面との間に差異がもたらされるという欠点を有する。さらに、サポートプレートは、それらを使用する度に事前加熱しなければならず、またセラミック化中絶えず加熱しておかなければならず、これにより、かなりのエネルギー消費の増加につながり、また、付加的なプロセス工程を要するためさらに時間もかかる。一方、ローラー上でのグリーンガラスの直接的なセラミック化は、グリーンガラスを搬送するのにのみ必要とされ、また加熱する必要がある材料がかなり少ないという利点を有する。
【0008】
溶融金属浴、例えば錫からなるフロートバスにおいてグリーンガラスを支持することは、溶液(bath)と接触するグリーンガラスの表面が溶液の成分によって汚染されるおそれがあるという欠点を有する。これは、セラミック化プロセスに悪い影響がある。錫による汚染は、例えば、ガラスセラミック製品が満たすべき品質要件の観点から望ましいものでない表面結晶化の増大をもたらすおそれがある。さらに、とりわけ高い最大温度を有するセラミック化方法を使用する場合、ガラスリボンのセラミック化がもはや制御可能でなく、それゆえ、プロセスが製造に不適当なものとなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/016214号
【特許文献2】米国特許第3,804,608号
【特許文献3】米国特許第3,809,542号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、高い最大温度における迅速な高エネルギー効率のセラミック化を可能にし、同時に、機械的特性、化学的特性、又は透明度に関連する特性の観点から、とりわけ、製品の平面性の観点から、セラミック化製品の高い品質を確実なものとする、セラミック化方法、及びこの方法を実行するための装置を提供することである。さらに、該方法を連続的に利用することが可能であるものとする。
【0011】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。有利な実施の形態及び改良形態は、従属請求項に開示する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
それゆえ、本発明による方法は、少なくとも体積結晶化中にグリーンガラスをローラー上で直接搬送及び/又は支持する、グリーンガラスのセラミック化を提供するものである。該方法は、グリーンガラスの少なくとも1つの領域で、この領域について成形作業が完了した後、セラミック化領域の冷却工程の完了までの幅広いセラミック化を含む、ほんの0.5時間〜4時間以内のプロセスにおいてセラミック化を可能とする高セラミック化速度で実行することができる。体積結晶化中にグリーンガラスを最大温度に曝す時間は、ほんの5分〜60分からなり、最大温度は750℃〜1250℃の範囲をとる。これはさらに、サポートプレートを用いずにプロセス処理することによって達成されるエネルギー効率を増大させる。該方法は、製品が炉を通過しながらセラミック化を実行する点で連続的なものである。本発明は概して、個々の板のセラミック化と連続的なリボンの両方について使用することができる。したがって、とりわけ、連続的なグリーンガラスリボン又は個々のグリーンガラス板の形態のグリーンガラスが出発基材として用いられる。グリーンガラスリボンの場合、好ましくはセラミック化後に、個々の板へのシンギュレーション又は分離が行われる。
【0013】
本発明によって規定されるグリーンガラスは概して、本発明による方法を用いたセラミック化によって出発基材の材料と構造上異なるガラスセラミック材料へと変換される出発基材である。このガラスは好ましくは非晶質ガラスである。しかしながら、グリーンガラスは結晶相を既に含有していてもよい。加えて、出発基材、即ちグリーンガラスとしてのガラスセラミックに関する本発明の使用、及び再結晶化形態におけるセラミック化の実行について検討した。キータイト混晶相への出発基材の高温石英混晶相の転換は、本明細書において一例として言及するものである。少なくとも体積結晶化の直前及び体積結晶化中に、グリーンガラスのセラミック化セグメントの上面及び下面の温度を連続的に測定し、この情報を用いて目標値に基づき加熱を制御する。
【0014】
体積結晶化の開始直前及び少なくとも開始時に、セラミック化されるグリーンガラスの粘度は、少なくとも断続的に10dPa・s〜1011dPa・sの範囲をとり得る。このような低い粘度が与えられる場合、少なくとも、粘度が最小値に達する時間セグメントの間、搬送装置に、搬送に関する高い要求の規制がかけられる。長過ぎるローラー間距離が選択されるか、前進速度が遅くなり過ぎるか、又は温度が高くなり過ぎると、セラミック化されるガラスリボン、又はセラミック化される板が、支持用ローラー同士の間で「たわむ」おそれがあり、最終製品の望ましくないうねりがもたらされる。極端な場合には、個々のローラー同士の間でガラスリボンが破壊される可能性もあり、これは連続的な製造プロセス全体を中断させると考えられる。結晶化プロセスの大部分が数分以内に起こった後、粘度は、結晶形成に起因して、部分的にセラミック化されたグリーンガラス中で再び急速に増大する。粘度が最も低いとき、つまり、結晶化の開始直前又は開始時に生じる変形は、実質的に停止する。
【0015】
したがって、少なくとも体積結晶化の領域において、搬送装置のローラー同士の間の距離は、ガラスリボンの前進速度及びこのときの温度の関数であり、さらに、体積結晶化の開始直前のグリーンガラスの最も低い粘度を決定するものである。この理由から、ガラスリボンの前進速度は、10Pa・s〜1011Pa・sの最も低い粘度で0.2m/分〜10m/分、好ましくは0.5m/分〜5m/分の範囲をとるものとする。速い前進速度は、低粘度材料がたわむ可能性があるというリスクを下げる。
【0016】
グリーンガラスの前進速度、温度及び粘度によってローラー間の距離を定める代案として、ローラー軸間の距離xローラーは、式
ローラー≦360×(R×t板ガラス)/(ρ×g)×v×η
(式中、Rは最大ガラス歪みであり、t板ガラスはガラスの厚みであり、ρはガラスの密度であり、gは重力加速度であり、vは前進速度であり、ηはローラー上のセラミック化過程にわたるガラスの最小粘度である)を用いて評価することもできる。故に、うねりの最大値をパラメータRにより予め規定しておけば、前進速度及びセラミック化中に達する最小粘度の関数として最大ローラー間距離を求めるのにこの関係を用いることができる。特定のローラー間距離では、ガラスの前進速度若しくは温度、又は最小粘度からなるパラメータの少なくとも1つを適切に制御することによって、この関係を維持することもできる。したがって、本発明の改良形態では、上記の関係を満たすように温度及び/又は前進速度を制御するために、計測制御ユニットが備え付けられている。Rに良好な値は、以下でより詳細に記載されるように、100マイクロメートル未満である。
【0017】
本明細書では、うねりを増大させることなく、特許文献1から既知の押さえローラーを省くこともできる。
【0018】
本発明による方法は、従来技術を越える幾つかの利点を有する。第一に、このタイプのセラミック化は基本的に、無限長さ及び無限幅を有するガラスリボンを搬送するのに適している。ガラスリボンの長さ及び幅は、既存の技術上の選択肢、例えば、利用可能な設備及びそれらの構成要素(加熱素子、ローラー長等)によってのみ制限される。しかしながら、第二に、個々のグリーンガラス板をセラミック化することも可能である。
【0019】
さらに、セラミック化は、サポートプレート上ではなく、ローラーシステム上で実行される。グリーンガラスを搬送するためだけに用いられ、プレートが炉内に導入される度にもたらされる、サポートプレートのエネルギー集約型の加熱が必要とされない。一方、ローラーシステムは、しっかりと据え付けられ、炉を加熱する際に一度だけ加熱する必要がある。それ以降は、加熱されたローラーの温度を維持するのに必要とされるエネルギーしか供給する必要がない。よって合計で、セラミック化中にセラミック化温度に加熱する必要がある質量の少なくとも50重量%が省かれ、これは、かなりの時間の節約、及びとりわけコストの節約を伴う。さらに、「サポートプレートを加熱する」プロセス工程を省き、また少なくとも1つの設備を省くことが可能である。要約すると、これは、有意なエネルギー、時間、それゆえコストの節約をもたらす。
【0020】
また、本発明による方法は、溶融金属浴、例えば錫からなるフロートバスにおけるセラミック化を越える明らかな利点を示す。例えば、セラミック化中に特殊な環境を必要とせず、これは、コスト面の利点を伴う。さらに、フロートバスにあるグリーンガラスの側面の汚染が回避される。特に、本発明によりもたらされる高い最大温度では、結晶化プロセスが発熱を伴って起こるため、このような汚染が、制御しにくい、又はもはや全く制御することができないセラミック化をもたらすおそれがある。よって、フロートバスにおいてグリーンガラスを支持することは、少なくとも高速セラミック化にかかるプロセス制御における大きな困難と関連すると考えられるか、又はこのような制御をさらに不可能なものとすると考えられる。
【0021】
本発明の改良形態によれば、一般の温度及びセラミック化度によって誘導される、セラミック化されるグリーンガラス領域の既定の前進速度及び粘度で、製品のうねりがほんのわずかしか生じないように、搬送装置のローラーを互いに一定の距離で設ける。波底(wave valley)と隣り合う波頭との高さの差として測定されるこのわずかなうねりは、100μm以下、好ましくは更に50μm以下であり、このうねりは、周期的なものでありかつ好ましい方向を有する。好ましい方向は、ローラー上の板又はリボンの流れる方向によって決定される。ほんのわずかな、好ましくは感知できないほどの、即ち、目ではほとんど感知できないうねりは、この方法を用いて製造される製品を、平面を必要とする分野、つまり、例えば、窓、ファサードパネル、又はガラスセラミッククックトップにおいて使用することを可能とする。このように製造される製品は概して、セラミック及び高性能セラミックの代わりとして適する。高性能セラミックは、熱的負荷、耐摩耗性、耐熱衝撃性及び電気絶縁性能からなる因子の少なくとも1つに対する要求が高い場合において使用される。使用分野としては、軸受部材、シーリング部材、ピストン部材及びバルブ部材、ノズル、並びにスタンピング用具及び成形用具が挙げられる。
【0022】
原則として、明らかに目で感知できるうねりは、2つのパラメータから構成される。1つには、上記の振幅が明白なものである。しかしながら、この振幅の視認性は、うねりの波長に直接的に関係している。一般的には、うねりの波長が大きくなると、うねりの振幅も大きくなり、うねりを目で感知することができないと言うことができる。例えば、135mm未満の波長と組み合わせた50μmを超える振幅では、目に見えるうねりが存在する。このようなうねりは、平面状の物品が要求される場合にはもはや許容することができない。
【0023】
しかしながら驚くべきことに、製造される物品の或る特定のレベルの最小うねりが、極めて有用であることが判明した。波底と隣り合う波頭との高さの差が少なくとも1μm、好ましくは5μmである最小うねりは概して、とりわけ、より大きな板を要する場合、製造される物品の取扱いを容易なものとする。ガラスセラミック物品は概して、その表面に何らかの損傷を著しく受けやすいことに応じて、その強度等の機械的特性の低下をもたらし、またその耐薬品性も低下させる。
【0024】
とりわけうねりが、本発明による場合のように好ましい方向を有していれば、わずかなうねりは、表面部分、それゆえ、例えばパッキング中に物品を不注意に取り扱ったときに傷がつく可能性のある領域を限定する。例えば、最小うねりの好ましい方向に起因して個々の板の間に点接触のみが存在するように、ガラスセラミック板を互いの上に積み重ねることができることは有益である。故に、ガラスセラミック板に傷がつくリスクが、大幅に低減する。
【0025】
本発明による周期的なうねりは、幾つかの波底のそれぞれの後に波頭が相互に続くものとして理解されるものである。よって、波頭及び続く波底は、サイクルであると考えられる。故に、周期的という用語は広義に「サイクル的」を意味するが、サイクル性は規則的である必要がない。しかしながら、物品のうねりの間隔は、平均値から30%を超えて外れるものでないことが好ましい。
【0026】
うねりにおける好ましい方向は、長く伸びた波頂及び長く伸びた波底をとることを述べている。好ましい方向という用語は、好ましい方向を有せずにガラスセラミック物品全体に及び得る、表面部分の大きな隆起又はへこみとの対比を本質的に強調するように、本発明に関して使用している。ガラスセラミック物品全体を含み得るこれらの個々の構造は、本発明によって排除されるものでない。しかしながら、それらは、かなり短い間隔の周期的なうねりと重ね合わされる。
【0027】
本発明の好ましい改良形態によれば、うねりの波長は50mm〜500mm、好ましくは60mm〜200mmの範囲をとる。
【0028】
板形態の本発明によるガラスセラミック物品の両側の平滑面とは別に、この方法は、石目(pebbled)面を作製するのにも使用することができる。その場合、グリーンガラスの成形プロセス中又は成形プロセス直後に表面の構造化が実行される。しかしながら、石目面は、損傷作用及び水分減少作用を石目の先端に局所的に制限するためにのみ頻繁に生成されるものである。よって、これらの損傷作用は、限界レベルに達することはまずない、つまり、ガラスセラミックの強度特性は、損傷が石目の先端にしか作用しない限り、負の影響を受けない。セラミックグリーンガラスの望ましくない変形は、主に鉛直方向の温度勾配に起因し得る。変形は、時間オフセットで互いに起こる上面及び下面の粘度の増大を伴って、セラミック化される材料の上面及び下面の一時的な非対称収縮を引き起こす。また結晶化を進めることによって粘度の急な増大がもたらされるため、多くの場合、後で大きな変形を修正することは不可能である。大抵の場合、唯一の選択肢は、材料を除去する方法を用いたセラミック化物品の後処理であるものの、これらの方法は、不利なことに表面を傷つけ、加えて極めてコスト集約的なものである。このようにして製造される物品は、後処理を必要としない物品よりもかなり悪い機械的特性及び化学的特性を有する。
【0029】
要約すると、本発明による方法を用いて石目面も製造し得ると述べることができる。
【0030】
平滑面及び石目面に加えて、本発明による方法は、透明、半透明、未着色及び空間色、並びに不透明なガラスセラミック物品を製造するのに使用することができる。透明なガラスセラミック物品は概して、高温石英混晶からなる主結晶相を特徴とし、半透明から不透明なガラスセラミックは概して、キータイト混晶からなる主結晶相を特徴とする。本発明に関して、主結晶相は、総結晶含有率における少なくとも60%の結晶含有率を意味すると理解されるものである。
【0031】
本発明の改良形態において、平面状の表面、又は平面の生成は、セラミック化されるグリーンガラスリボン内の可能な限り高い温度均一性によって裏付けられている。本発明のこの改良形態によれば、炉内でセラミック化されるグリーンガラスの幅Tにわたる温度は、既定の目標温度Tから−5℃〜+5℃を超えて外れるものでない。言い換えると、とりわけ体積結晶化直前及び体積結晶化中、それゆえ一般的にセラミックグリーンガラスの最も低い粘度の期間中、炉内でセラミック化されるグリーンガラスの幅にわたる温度差は、10℃未満、好ましくは5℃未満、更に好ましくは3℃未満である。
【0032】
この理由から、セラミック化されるグリーンガラスの上面と下面との間の温度均一性も、炉内のガラスの上面と下面との温度差が−0.5℃〜+1℃の範囲をとるように制御されることが有益である。この制御は、とりわけ、温度が変化すると熱くなった材料の体積膨張の変化につながり得るため、セラミック化物品の実現可能な最も平面状の又は最も平面的な生成に関して、また、セラミック化応力を回避するために、重要なものである。うねりの発生に加えて、体積膨張の変化はまた、板の不利益な、さらには許容不可能な折れ曲がり、例えば、その角の上向きのアーチ又は中央領域の折れ曲がり等に有利に働く。
【0033】
結晶化プロセスが発熱を伴って起こり、また高速セラミック化のために比較的高い最大温度を本発明によって使用するため、セラミックグリーンガラスにわたるバランスのとれた温度分布を確実なものとすることは、ささいなことではない。これらの環境下で、制御されたセラミック化は、極めて一様な熱分布を生じさせる加熱装置、及び発熱プロセスにより生じる温度変化を、計測制御ユニットに数秒のうちに報告する極めて強力な温度センサを用いることによってのみ可能である。この際、この計測制御ユニットは、実現可能な最も短い時間内で温度調節に適応しなければならない。さもなければ、セラミック化度、それゆえ物品の品質にかかる制御が失われる。この目的で、該方法を実行するための装置は、最新の測定値及び目標とする仕様に基づき温度調節を制御する計測制御機器を提供する。本発明によれば、計測制御機器は概して、変化した条件に10秒以内、最も好ましい場合には更に1秒以内に応答することができる。
【0034】
このような計測制御機器は、例えば、コンピュータに接続された温度センサと、同様にコンピュータに接続された温度制御機器とで構成され得る。
【0035】
極めて均一な熱分布を生じさせる加熱装置は、例えば、好ましくはセラミック化されるグリーンガラスの縁から少なくとも10cm突出する、互いに規則的な間隔で設けられる、当業者に既知の加熱素子で構成され得る。グリーンガラスの縁からの加熱素子の突出は、グリーンガラスの縁領域における均一な温度分布を達成するためにも有用である。
【0036】
さらに、グリーンガラスのセラミック化を効果的に制御し得る急速な温度変化を実現するために、体積セラミック化が起こる炉領域の壁を、熱伝導性となるように設計することが有用である。これは、一般的には、加熱コストを削減するために可能な限りの最良の断熱性が炉に関して望まれることから、驚くべきことと考えられる。この場合、体積結晶化が起こる、少なくともチャンバ、又はそれぞれの炉セグメントの良好な断熱性は逆効果を招く。急速な応答性の温度制御は、チャンバ、又はそれぞれの炉セグメントから比較的急速に熱が放散することを要する。よって、本発明の特に好ましい改良形態によれば、断熱性をほとんど又は全く有しないチャンバが、体積結晶化を実行するために提供される。
【0037】
本発明の更なる改良形態によると、セラミック化されるグリーンガラス及び/又はセラミック化製品は、以下の範囲の組成:
60wt%〜73.0wt% SiO
15wt%〜25.0wt% Al
2.0wt%〜5.0wt% LiO、
0wt%〜5.0wt% CaO+SrO+BaO、
0wt%〜5.0wt% TiO
0wt%〜5.0wt% ZrO
0wt%〜4.0wt% ZnO、
0wt%〜3.0wt% Sb
0wt%〜3.0wt% MgO、
0wt%〜3.0wt% SnO
0wt%〜2.0wt% P
0wt%〜1.5wt% As
0wt%〜1.2wt% NaO+KO、それぞれの含有率は好ましくは下記に規定される範囲内である、
0wt%〜1.0wt% NaO、
0wt%〜0.5wt% KO、
を有する。
【0038】
しかしながら概して、該方法は広範な組成に利用することができることに留意されたい。また、例えば、再溶融相からガラスセラミック組成物を製造することも可能である。本明細書では、上記の組成範囲の成分が全く存在しなくてもよい。
【0039】
該方法の1つの改良形態では、最大温度における体積結晶化及び任意の熟成段階に続いて、少なくとも5℃/分、好ましくは、少なくとも断続的に10℃/分〜20℃/分の冷却速度で、600℃未満まで急速冷却を行う。
【0040】
体積結晶化又はセラミック化中の炉内で一般的な雰囲気との相互作用は、これまでに概説してきた方法において局所的な制限を伴うことなく、また全く損なわれることがないように起こり得る。これは有益に、実質的に結晶性の内部領域を完全に又は少なくとも部分的に取り囲む実質的にガラス質の縁領域の生成をもたらす。ガラス質層、即ちガラス質の縁領域の厚みは、通常50ナノメートル〜5000ナノメートル、大抵の場合250ナノメートル〜3000ナノメートル、好ましくは300ナノメートル〜1500ナノメートルの範囲をとる。
【0041】
実質的にガラス質の縁領域、即ち実質的にガラス質の縁の層は10重量%以下の結晶を含む。つまり、少なくとも90重量%の縁領域がガラス質のマトリックスからなる。ガラス質の縁領域は更に好ましくは1重量%未満の結晶を含む。一方、ガラスセラミック物品の実質的に結晶性の内部領域中の結晶の含有率は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%、更に好ましくは少なくとも90重量%である。本明細書で使用される検出方法は、X線回折法である。
【0042】
透明なガラスセラミック物品では、このようなガラス質の縁領域が、ガラス質の縁領域を有しないガラスセラミック物品と比較して、絶対的に最大1%光透過率又は透明度を増大させる。しかし、半透明又は不透明なガラスセラミックであっても、機械的強度及び耐薬品性が改善されることによってガラス質層の生成により利益が得られる。
【0043】
とりわけ、直接的なセラミック化も起こるローラー搬送システムによってもたらされるような、両側で作用する環境接触の選択は、このようなガラス質の縁領域の生成に特に有益であることが判明した。また、ローラー上の支持によって、ローラー上にあるグリーンガラスの下面が、環境との略連続的な接触を有するようになっている。この理由から、本明細書では一様なガラス質の縁領域が同様に生成されるため、上面又は下面のそれぞれの表面部分に沿った、好ましくは平均層厚みの10%以下の厚み許容差(thickness tolerance)が確実なものとなる。ガラス質の縁領域のこのような均質層の厚みは、とりわけセラミック化製品の下面において、サポートプレート又はSnフロートバスにおけるセラミック化中に実現することができない。
【0044】
本発明の好ましい改良形態によれば、ローラー表面が好ましくは、炭化ケイ素、酸化ケイ素、コランダム、又は溶融/焼結ムライト−sillimantinの系の混合物、炭化ホウ素及び窒化ホウ素を含む材料の少なくとも1つを含有する。これらの材料は、十分な熱安定性を有し、このようなローラー上で製造されるガラスセラミックは、この目的のために特別に表面のコンディションを調整した、サポートプレート上で製造された同様のタイプのガラスセラミックと驚くほど類似する、損傷がなく欠陥のない表面を示す。
【0045】
下からの良好な熱供給を確実なものとするために、好ましくは、ローラーの直径dローラーとローラー長lローラーとの比率は、0.25<dローラー/lローラー<0.9を維持しなければならない。この比率が0.5であることが特に好ましい。
【0046】
本発明の更なる有益な実施形態によれば、グリーンガラス板は、個々のグリーンガラス板をセラミック化する場合、角の1つが残りの板を先導するように、搬送機器、つまりローラー上に斜めに適用又は設置される。このような配置を用いることによって、ローラーによって支持されずまた低い粘度を有する板の出発領域又は最終領域を、板の従来の「直線」配置と比較して低減することができる。これはまた、隣り合う2つのローラーの間の移行中に支持されていない板の重量成分を低減させる。この配置は、低い粘度及び支持されていない自重に起因して垂れ下がり得る前進方向の板の先端が、その後のローラーに衝突しないように、かつプロセスにおいて損傷を受け変形しないように意図されるものである。同時に、板の最終領域も、2つのプレートの間の移行中に支持されていない質量がここで同様に低減されるため、それほど下向きに曲がることがない。
【0047】
本発明による方法を実行するための装置は好ましくは、セラミック化されるグリーンガラスを供給する機器を備える。これは、とりわけ、本発明によるセラミック化装置の上流に直接接続される、グリーンガラスを溶融及び成形するための装置である。しかしながら、好適な送りシステムは、予めシンギュレーションされたグリーンガラス板を連続的に供給することも可能である。
【0048】
さらに、グリーンガラスをセラミック化するための連続炉が設けられ、該連続炉は、0.5時間〜4時間以内に全セラミック化プロセスを実行するように備え付けられている。連続炉の少なくとも1つのチャンバは、グリーンガラスの体積結晶化のために備え付けられており、セラミック化されるグリーンガラスの上面及び下面を750℃〜1250℃に別々に加熱することを可能とする機器を備える。さらに、炉のこの領域は、装置全体の制御を想定し得るだけでなく、中でも、ほんの数秒のうちにセラミックグリーンガラスの上面及び下面上の温度変化を検出し、それに応じて炉の温度調節を適応させ、最も好ましい場合には1秒以内で行うように備え付けられる計測制御機器を備える。この速い応答時間は、発熱セラミック化プロセスにわたって有効な制御を確実なものとするために必要である。
【0049】
連続炉は付加的に、少なくとも、体積結晶化が起こる炉領域内でグリラーンガラスを搬送及び/又は支持するためのローラーを含む搬送機器を備え、0.2m/分〜10m/分、好ましくは0.5m/分〜5m/分の前進速度が実施され得る。
【0050】
本発明の改良形態によれば、ローラー軸は、少なくとも、体積結晶化又はセラミック化が起こる領域内に、少なくともローラーの直径+0.2cmであり、かつローラーの直径+10cm以下である距離で互いに設けられる。これは、板の下面における良好な温度交換を可能にするため、温度の良好な制御も可能となる。
【0051】
さらに、同一間隔で互いに隣り合って設けられるローラーは、周期的に押し上げることにより、最終製品にうねりを生じさせ得るか、又は、ローラー中心間の非周期的な距離が、最終製品のうねりを低減させる場合がある。故に、本発明の有益な改良形態によれば、搬送ユニットが、可変の又は非周期的な距離で設けられるローラーを備え、ローラーの距離及び直径は、セラミック化されるグリーンガラスリボンの「たわみ」を防止するように寸法をとっている。
【0052】
また、ローラーは、ローラー間の距離が規則的な間隔で繰り返されることのないように設けることもできる。しかしながら、「非周期的な配置」という用語は、或る特定のローラー群の間の距離が繰り返される配置も含む。例えば、ローラー距離の並びが8cm、12cm、8cm、12cm等であるような配置が存在すると考えられる。
【0053】
本発明の更なる改良形態によれば、前進速度を、セラミック化中に増大させてもよい。この目的で、ローラーは、前進方向に沿って逐次的により速く流すか、又は動かすことができる。前進を加速することによって、板の延伸が影響を受けることにより、ローラー間の板のたわみが防止又は修正される。
【0054】
本発明による方法によって製造することのできるガラスセラミック物品は、板ガラス、とりわけ、車両窓、暖炉の窓若しくはクックトップとして、一般に調理器具として、又はファサードの外装に使用することができる。しかしながら、それらは包括的に、高性能セラミックの代わりとして使用することもできる。
【0055】
例示的な実施形態に基づき以下でより詳細に本発明を説明する。異なる図面中の同一の参照記号は、同一又は類似の特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1a】本発明による方法を実行することができる一般的な装置の概略図である。
【図1b】本発明による方法の典型的な温度−時間プロファイルを示す図である。
【図2a】粘度が変化することなく、ローラーシステムにわたる搬送中にセラミック化する板の、一地点における変形を示す図である。
【図2b】粘度が変化することなく、ローラーシステムにわたる搬送中にセラミック化する板の、2つの異なる地点における変形を示す図である。
【図3】体積結晶化の開始直前及び開始時における、セラミック化物品の変形に対する様々な最小粘度の影響を示す図である。
【図4】ローラー間の距離の関数として、板の縦方向位置に対してプロットされる、セラミックグリーンガラスのうねりを示す図である。
【図5】ガラスセラミック物品のうねりに対する、周期的及び非周期的なローラー間距離の影響を示す図である。
【図6】ガラスセラミック物品の変形に対する前進速度の影響を示す図である。
【図7】ガラスセラミック物品の変形に対する前進の加速の影響を示す図である。
【図8】セラミック化物品のうねりに対するセラミック化されるグリーンガラスの長さの影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1aは、本発明によるセラミック化方法を実行することができる、一般的な装置1を概略的に示しており、図1bは、関連する典型的で例示的な温度−時間プロファイル10を示している。グリーンガラス2を連続的にセラミック化する本発明による方法は、わずか0.5時間〜4時間の極めて短いセラミック化所要時間を提供する、ローラー搬送システム3上での直接的なセラミック化を特徴とする。高品質製品の製造のためのこのような組合せが可能であるのは、製品の平面性に影響を及ぼすパラメータが、極めて厳密な範囲内に規定され、とりわけ、相互に許容される場合だけである。例えば、温度調節は、セラミックグリーンガラス2の粘度に決定的に影響を及ぼす。図1aに示される例では、温度を制御するために、熱電対8が炉内に突出している。熱電対は、グリーンガラスの上面と下面との間で実現可能な最小の温度差を生じさせるために、グリーンガラスの上下両方に設けられる。グリーンガラスの粘稠度(thickness)については、粘度に応じて、搬送システム3の個々のローラー4の間の間隙がとり得る大きさが決定されるため、低粘度グリーンガラス2も個々のローラー4の間でたわむことなく、望ましくないうねりも最終製品において発生しない。
【0058】
図1aに示されるローラー型の炉1は、本発明による方法を実行することができる装置の実現可能な例として意図されるものに過ぎず、これは、本来の意味において、体積結晶化直前の期間、及び体積結晶化自体の期間についてのみ言及するものである。通常、核形成が1つ又は複数のチャンバ5において起こり、体積結晶化が2つ〜3つのチャンバ6において起こる一方、4つ〜6つのチャンバ7が、該方法の最後でセラミック化グリーンガラス2を冷却するのに使用される。
【0059】
図1bに示される温度−時間プロファイル10も概略的な例として意図されるものに過ぎず、この理由から、絶対値は示していない。温度11及び時間12は、この用途の主題ではないが、合計時間又は最大温度等の構成パラメータを限定する形で本明細書中に組み込まれるに過ぎない、固有の方法の関数であることを理解されたい。さらに、典型的なセラミック化プログラムの個々の段階、つまり、核形成13、体積結晶化14、熟成段階15及び冷却16が示される。プロセスの初めの加熱段階は概して、ガラスリボンが熱間成形プロセス直後にセラミック化され、かつ十分な残留熱が存在する場合には、必要とされない。
【0060】
ガラスセラミック物品の平面性、それゆえ品質に対する、体積結晶化14の直前及び体積結晶化14中の、粘度、ローラー間の距離、前進速度等の個々のパラメータの影響は、例に基づいて以下に説明する。ローラー搬送システム3上で直接起こるセラミック化に関して、生成されるガラスセラミック物品の平面性又はうねりは、本発明の本質的な特徴である。
【0061】
図2a及び図2bは、秒単位の時間tの関数として示される、ローラーシステム3によって搬送される、長い板ガラス形状のセラミックグリーンガラスリボン2の変形(開始値からの偏移)を示している。変形Vはミリメートル単位で示される。時間に対する変形は、例として選択される3つのポイントに基づいて示される。ポイント1は、板の先頭地点を示し、ポイント2は板の末端地点を示し、ポイント3は板の中央地点を示す。
【0062】
搬送した板ガラスは、5m長及び4mm厚である。リボンの粘度はおよそ10Pa・sであり、経時的に変化しない。搬送システムのローラーの直径は5cmであり、10cmのローラー中心間の規則的な間隔で設けられる。前進速度は60cm/分である。
【0063】
図2a及び図2b中の曲線21、曲線22及び曲線23は、時間に対する、ガラスリボン上の3つの例示的なポイントの変形を表している。明確にするために、図2a中の曲線21及び図2b中の曲線23は、振動する線の包絡線のみを示している。
【0064】
図2aは、リボンの搬送方向における、板の前部、又は先頭に位置するポイントの運動曲線の包絡線21を示している。
【0065】
およそ200秒後、包絡線21は最大振幅を示し、その後、期末に向けて再びわずかに減少する。全体的に、時間がおよそ半分経過した後には、リボンのこの中央領域の上向きの動きに対する傾向を観測することができるため、リボンのこの領域は再び、400秒後にさらに小さいうねり度合いを有する。
【0066】
図2b中の曲線22は、リボンの中央に位置するポイントの動きの詳細なプロットを示しており、曲線22の上向きの動向はそれぞれ、ローラー3上のこのポイントのローリングに対応し、下向きの動向はそれぞれ、2つの隣り合うローラーの間のポイント地点におけるリボンの動きを示している。よって、下向きの動向は、隣り合うローラーへの経路上でローラー「から離れた(rolling off)」際の、低粘度及び重力に起因するリボンの下向きの動き方をたどるものである。曲線22の上側包絡線及び下側包絡線はそれぞれ点線として示される。
【0067】
曲線22の包絡線は、リボンの中央部分の振幅が400秒後に50μmであり、つまり、これらの条件下で、リボンの波頭から隣り合う波底までの高さの最大差が、50μmであることを示している。
【0068】
図2bは、ポイント2、つまり、リボンの運動方向における後部に位置するポイントの運動曲線の包絡線23をさらに示している。また、明確にするために、曲線推移全体の詳細図は省略してある。包絡線23は、時間の経過と共にリボンの後端で、振幅、それゆえうねりの安定した増大を示している。しかしながら、示される期末に向けて、包絡線の推移は、一定推移に次第に近づいている。波頭と隣り合う波底との間の高さの最大差は、上述の条件下において、ガラスリボンの終端でおよそ450μmである。
【0069】
図3は、体積結晶化の開始直前及び開始時における、セラミック化物品の変形に対する、様々な最小粘度の影響を示している。グラフは、x軸に沿ってプロットされる板の長さの関数として、y軸に物品の変形を示している。x軸及びy軸の両方の単位はミリメートルである。x軸の0ミリメートルは、搬送方向における板の後端に相当し、1000mmは、搬送方向から見た板の前端に相当する。
【0070】
曲線33、曲線34、曲線35及び曲線36は、粘度のみが異なる以外は、同一条件下でセラミック化された同一の板を示す。板の長さは1mであり、板の厚みは4mmであり、ローラーの直径は50mmであり、ローラー間の距離は100mmであり、前進速度は60cm/分である。曲線において示される板の粘度は以下の通りである:
曲線33 109.6Pa・s
曲線34 109.4Pa・s
曲線35 109.2Pa・s
曲線36 109.0Pa・s。
【0071】
変形曲線33、変形曲線34、変形曲線35、変形曲線36は、他のパラメータが同一であれば、最小粘度の段階ではグリーンガラスの粘度が小さいほど、変形が増大することを示している。このデータから導くことができる、粘度とうねりとの比率は、線形であり、また関係式
/Ra1=η/η
(式中、Rは第1の粘度ηでのうねりを示し、Ra1は第2の粘度ηでのうねりを示す)
に従う。
【0072】
図4は、ローラー間の距離の関数として、板の長さに対してプロットされる、セラミックグリーンガラス板2のうねりを示している。ローラー間の距離は、隣り合うローラーのローラー中心間の距離を指す。
【0073】
示される全ての場合において、セラミック化された板は、1m長、4mm厚であり、粘度は109.0Pa・sである。板の変形をy軸にプロットし、板の長さをx軸に沿ってプロットする。これらは両方ともミリメートル単位である。例は全て、規則的又は周期的なローラー間距離を有する搬送システムにおいて搬送した。ローラー間の距離は全ての例において50mmである。
【0074】
曲線43は、ローラー間の距離が75mmである搬送装置3において搬送したセラミック化された板の変形を表している。
【0075】
曲線44は、100mmのローラー間距離で生じる、セラミック化された板の変形を表す一方、曲線45は、125mmのローラー間距離で生じる変形を表している。
【0076】
他が同一条件であれば、ローラー間の距離が、セラミック化物品の変形に大いに影響を及ぼすことが分かる。包括的に、短い距離が小さい変形をもたらすのに対し、長い距離は強い変形をもたらす。しかしながら、距離が変化すると変化するものには、変形、つまり曲線の振幅のみならず、変形の波長も含まれる。互いのローラー中心間の距離が増大するにつれて、生じる波長も同様に変化する。ローラー間の距離が増大するにつれて不均衡に増大する(曲線43及び曲線45を参照)、板の前後端における強い変形は、特に顕著なものである。
【0077】
単にうねりとも称される、物品の平均うねりと、ローラー間の距離との関係は、極めて非線形である。以下が適用される:
/Ra1=(xローラー/xローラー1×(η/η
(式中、Rは平均値からの偏差の二次平均であり、マイクロメートル単位の平均うねりを示し、xローラーは、隣り合うローラー中心間の距離を示し、ηは粘度を示す)。補足の指数1は、ローラー間の距離が異なるものの同じパラメータを示す。
【0078】
所与の条件下で、75mmのローラー間距離は、5.28μmの平均うねりをもたらし、100mmのローラー間距離は、22.64μmのうねりをもたらし、125mmのローラー間距離は、73.03μmのうねりをもたらす。
【0079】
現在の知見によれば、変形の間隔は、ローラー間の距離に対して1.1倍〜1.3倍のスケールで変わるように見える。
【0080】
図5は、ガラスセラミック物品の変形に対する、周期的及び非周期的なローラー間距離の影響を示している。y軸は変形Vを示し、x軸は板の長さsを示す。これらは両方ともミリメートル単位である。図3と同じ値が、板の長さ、板の厚み、粘度及びローラーの直径に適用される。
【0081】
曲線51は、100mmの規則的なローラー間距離を有する搬送システムにおいてセラミック化された板の変形を表している。曲線52は、不規則なローラー間距離を有する搬送システムにおいてセラミック化された同じ板の変形を表している。ローラー間の距離は交互にに80mm及び120mmとしたため、密接に位置するペアと、より大きな間隙でそれぞれが隔てられるペアとができる。
【0082】
また、板の中央部分と比較した、板の前端(1000m)及び板の後端(0mm)における特に強い変形は、曲線51及び曲線52の両方において注目に値する。図3から導かれる、物品の平均うねりについての式を用いた計算によると、うねりは、変動する距離で設けられるローラーに起因しておよそ2μm低減する(曲線52)。同時に、ガラス板の前部領域における波長は、周期的なローラー間距離によるもの(曲線51)よりも、非周期的なローラー間距離(曲線52)でより長くなるように見える。間隔は、後部領域で再び相互に一致するようになっている。
【0083】
図6は、ガラスセラミック物品の変形Vに対する前進速度の影響を示している。変形は、板の長さsに対して、共にミリメートル単位で同様にプロットされている。
【0084】
板のサイズ、粘度及びローラーの直径は同様に、図3に提示される値に対応する。ローラー間の距離は100mmである。示される3つの曲線61、曲線62、曲線63は、セラミック化中に板を搬送させた前進速度が互いに異なる。曲線61で表される板は30cm/分で搬送し、曲線62で表される板は60cm/分で搬送し、曲線63で示される板は90cm/分で搬送した。前進速度は、その間隔ではなく、変形の高さに大いに影響を及ぼすことが明らかに分かる。最も速く搬送される板は、あまり変形を有しない(曲線63)。平均うねりと前進速度との関係は、ほぼ線形であり、下記式から導かれる:
/Ra1≒(v前進/(v前進1+Δv前進1))×(η/η
(式中、Rは同様に平均うねりに相当し、ηは粘度に相当し、v前進は前進速度に相当する)。補足の指数1は、前進速度が異なるものの同じパラメータを示す。
【0085】
図7は、既知のガラスセラミック物品の変形に対する、セラミック化中に加速された前進が有する影響を示している。板の寸法、粘度及びローラーの直径に関する図3による情報が同様に適用される。ローラー間の距離は同様に100mmである。板の変形Vをミリメートル単位でy軸に示し、板の長さ18を同様にミリメートル単位でx軸に沿って示す。
【0086】
曲線71は、60cm/分の一定の前進速度でセラミック化した板の変形を示すのに対し、曲線72は、次第に大きくなる前進速度でセラミック化した板の変形を示す。前進速度は、5メートル長の搬送装置の最初の1メートルについては一定の60cm/分である。残りの4mについては、前進速度が、120cm/分まで継続的に増大する。故に、板は一様に加速する。
【0087】
変形曲線71と変形曲線72との比較は、前進の加速が板の変形を、とりわけ振幅に関して低減させることを示す。しかしながら、前進の加速は、変形の間隔に対する影響をほとんど又は全く有しないように見える。
【0088】
図8は、セラミック化物品のうねりに対する、セラミック化されるグリーンガラスの長さの影響を描いている。板の長さ18を除き、板の厚み、ローラー間の距離、ローラーの直径、粘度及び前進速度等のパラメータは全て、図3の記載に示される値と同一であり、これに対応するものである。
【0089】
物品の変形は、縦軸に沿って示される。曲線81は、1m長の板の変形を示すのに対し、曲線82は、2m長の板の変形を示す。とりわけガラスリボンのモデルとして本明細書中で認識されるより長い物品では、本明細書中の例においておよそ900mm〜1800mmとなる中央領域が、かなり小さい変形振幅を示すことが分かる。したがって、セラミック化後までシンギュレーションされていない連続的なガラスリボンの形状でセラミック化される物品のうねりを、シンギュレーションした後でセラミック化される物品と比較して大幅に低減することができることが推定される。平均して、2メートル長の板のうねりは、わずか1m長の板よりも2.7倍〜2.8倍小さくなる。
【0090】
上述のパラメータを除いて、セラミック化物品の厚みは当然のことながら、起こり得るうねりに決定的に影響を及ぼす。低粘度のより厚みのある板が薄い板よりも容易には変形しないことは、言うまでもない。板又はリボンの厚みは、変形の間隔に何ら影響を有せず、振幅に対してのみ影響を及ぼす。板の厚みと、セラミック化物品のうねりとの間に存在する比率は、二次方程式であり、下記式によって記載することができる:
/Ra1=(t板ガラス/t板ガラス1×(η/η
(式中、t板ガラスは板ガラスの厚みである)。補足の指数1は、板ガラスの厚みが異なるものの同じパラメータを示す。
【0091】
うねりに関する種々の影響因子を考慮した式を、上記の種々の影響因子から導くことができる。得られる式は:
/Ra1=η/η×(xローラー/xローラー1×(v前進/(v前進1+Δv前進1))×(t板ガラス/t板ガラス1
である。補足の指数1は、変化するパラメータの関数が異なるものの同じパラメータを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
とりわけ連続的なグリーンガラスリボン又は個々のグリーンガラス板の形態の、グリーンガラスをセラミック化する方法であって、
少なくとも体積結晶化中、前記グリーンガラスをローラー上で直接搬送し、
グリーンガラスの少なくとも1つの領域の全セラミック化プロセスが0.5時間〜4時間続き、該少なくとも1つの領域を、前記体積結晶化中、750℃〜1250℃の最大温度に5分〜60分間曝し、
前記体積結晶化を、750℃〜1250℃の温度範囲で実行し、前記グリーンガラスの少なくとも1つの前記セラミック化領域の上面及び下面の温度を連続的に測定して、この情報を用いて目標値に基づき計測制御機器によって加熱を制御し、かつ
少なくとも1つの前記領域を、前記体積結晶化中、0.2m/分〜10m/分の範囲の前進速度でローラー上において前方に動かし、
前記体積結晶化中の前記グリーンガラスの少なくとも1つの前記領域の粘度が、前記前進速度及び前記温度を調節することによって、少なくとも断続的に10dPa・s〜1011dPa・sの範囲をとる、
とりわけ連続的なグリーンガラスリボン又は個々のグリーンガラス板の形態のグリーンガラスをセラミック化する方法。
【請求項2】
前記温度及び前記前進速度からなる一般のパラメータにおいて、波底と波頭との間で測定される前記セラミック化グリーンガラスのうねりが100μm未満となるように、互いに一定の距離で設けられるローラー上で、前記グリーンガラスを搬送及び/又は支持することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
セラミック化される前記グリーンガラスが、以下の組成範囲:
60wt%〜73.0wt% SiO
15wt%〜25.0wt% Al
2.0wt%〜5.0wt% LiO、
0wt%〜5.0wt% CaO+SrO+BaO、
0wt%〜5.0wt% TiO
0wt%〜5.0wt% ZrO
0wt%〜4.0wt% ZnO、
0wt%〜3.0wt% Sb
0wt%〜3.0wt% MgO、
0wt%〜3.0wt% SnO
0wt%〜2.0wt% P
0wt%〜1.5wt% As
0wt%〜1.2wt% NaO+KO、それぞれの含有率は好ましくは下記に規定される範囲内である、
0wt%〜1.0wt% NaO、
0wt%〜0.5wt% KO、
による組成を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記温度が炉内で、セラミック化される前記グリーンガラスの幅Tにわたる既定の目標温度Tから−5℃〜+5℃を超えて外れることがないように、かつ/又は炉内でセラミック化される前記グリーンガラスの前記上面と前記下面との温度差が−0.5℃〜+1℃の範囲をとるように、前記温度を制御することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記グリーンガラスの少なくとも1つのセラミック化セグメントの前記上面及び前記下面の温度を、最も好ましい場合には応答時間が1秒の温度センサによって測定して、加熱を10秒以内に制御することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
グリーンガラス板の角の1つが残りの板を先導するように、該グリーンガラス板を搬送機器上に斜めに設置することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
グリーンガラスを連続的にセラミック化するための装置であって、
0.5時間〜4時間以内に全セラミック化プロセスを実行するように備え付けられる、前記グリーンガラスをセラミック化するための連続炉と、
750℃〜1250℃の最大温度を5分〜60分間発生させるように備え付けられる、前記連続炉の少なくとも1つのチャンバと、
前記グリーンガラスの体積結晶化のために備え付けられ、セラミック化される前記グリーンガラスの上面及び下面を別々に加熱することを可能とする機器を備える、前記連続炉の少なくとも1つのチャンバと、
前記セラミックグリーンガラスの前記上面及び前記下面上の温度変化を検出すると共に、既定の目標値に従って前記炉の加熱を適応させるように備え付けられる、計測制御機器と、
前記体積結晶化が起こる少なくとも前記炉領域において、前記グリーンガラスを搬送及び/又は支持するためのローラーを備える、搬送機器であって、セラミック化される前記グリーンガラスを0.2m/分〜10m/分の前進速度で搬送するように備え付けられる、搬送機器と、
を備える、グリーンガラスを連続的にセラミック化するための装置。
【請求項8】
下記:
ローラー≦360×(R×t板ガラス)/(ρ×g)×v×η
(式中、Rは最大ガラス歪みであり、t板ガラスはガラスの厚みであり、ρはガラスの密度であり、gは重力加速度であり、vは前進速度であり、ηは前記ガラスの最小粘度である)
がローラー軸の距離xローラーに関して適用されるように、前記温度及び/又は前記前進速度を制御するよう前記計測制御機器が備え付けられていることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ローラーの表面が、炭化ケイ素、石英、コランダム、又は溶融/焼結ムライト及びSillimantinの系の混合物を含む材料の少なくとも1つを含有することを特徴とする、請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
前記ローラーの間の距離が非周期的であることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
とりわけ請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法を用いて製造することができる、結晶性の内部領域を取り囲むガラス質の縁領域を有する板形態のガラスセラミック物品であって、該ガラス質の縁領域が10重量%以下の結晶を含み、該結晶性の内部領域が少なくとも50重量%の結晶を含有し、該ガラス質の縁領域が50nm〜5000nmの範囲の厚みを有し、該物品の上面及び/又は下面が波打っており、波底と、隣り合う波頭との高さの差が100μm未満かつ少なくとも1μmであり、該波底と該波頭との間で測定されるセラミック化グリーンガラスのうねりが、周期的でありかつ好ましい方向を有する、ガラスセラミック物品。
【請求項12】
それぞれの表面部分に沿った前記上面及び前記下面の前記ガラス質の縁領域が、平均層厚みの10パーセントを超える厚み許容差を伴って生成されることを特徴とする、請求項11に記載のガラスセラミック物品。
【請求項13】
前記下面のうねりが前記上面のうねりと同調しているため、前記物品の或る位置における表面上の波底が、前記物品の同じ位置における前記下面上の波頭に相当することを特徴とする、請求項11又は12に記載のガラスセラミック物品。
【請求項14】
前記ガラスセラミック物品の前記うねりが、50mm〜500mmの範囲の間隔を有することを特徴とする、請求項11〜13のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項15】
前記ガラスセラミック製品が、以下の組成:
60wt%〜73.0wt% SiO
15wt%〜25.0wt% Al
2.0wt%〜5.0wt% LiO、
0wt%〜5.0wt% CaO+SrO+BaO、
0wt%〜5.0wt% TiO
0wt%〜5.0wt% ZrO
0wt%〜4.0wt% ZnO、
0wt%〜3.0wt% Sb
0wt%〜3.0wt% MgO、
0wt%〜3.0wt% SnO
0wt%〜2.0wt% P
0wt%〜1.5wt% As
0wt%〜1.2wt% NaO+KO、
NaOの含有率は、
0wt%〜1.0wt%
Oの含有率は、
0wt%〜0.5wt%
を有することを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項16】
クックトップ、調理器具、ファサードパネル、窓としての、とりわけ、車両窓若しくは暖炉の窓としての、又は高性能セラミックとしての、請求項11〜15のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品の使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−521949(P2012−521949A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502490(P2012−502490)
【出願日】平成22年3月20日(2010.3.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001766
【国際公開番号】WO2010/112148
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】