説明

ガラスレンズの製造方法及びガラスレンズ

【課題】 ガラスレンズの破損を防ぐと共に取り扱いし易く、しかも光軸と外径形状との位置精度が極めて高い、光学性能の優れたガラスレンズの製造方法及びガラスレンズを提供する。
【解決手段】 ガラス素材を成形して、複数個のガラスレンズが格子状に形成されたガラスレンズシート10の接続部11の表面に、複数個のガラスレンズに分離するための断面形状がV形に凹むカット溝12を形成し、カット溝12に対面した位置の裏面に、台形に凹むカット溝13を形成し、ブレードがガラスレンズシート10の表面に形成されたカット溝12をガイドラインとして、カット溝12に沿って、ガラスレンズシート10を切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCDやCMOSなどの固体撮像素子等に用いられるガラスレンズの製造方法及びガラスレンズに関し、特にガラスレンズを複数一体化したガラスレンズシートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マルチメディアの進展は目覚しく、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)などの固体撮像素子を備えた撮像装置、例えば携帯電話やデジタルスチルカメラ等が急速に普及が進んでいる。こうした撮像装置等に用いられる撮像レンズとして、より高画質,高解像度化の対応、および小型化、低コスト化が求められている。
こうした小型化、低コスト化に対応するために、複数のレンズ部、連結部等を備え、複数個に分離するための切り代を設けた光学素子一体ガラスシートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−277084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるような光学素子一体ガラスシートを複数個に分離する場合、一般的に、成形するガラスシートの外周部に、金型の転写等により十字の位置決めマークが通常4箇所設けられる。そしてガラスシートの切断は、ガラスシートが切断装置にセットされ、最初に位置決めマークの位置情報を検出して切断位置が決定され、ダイサーがNC制御されて、順次切断される。
【0005】
しかしながら、切断の進行にしたがって位置決め誤差が加算される、あるいは、ダイサーブレードが薄いために、ダイサーブレードが切断中に波打ったり、蛇行することにより、切断後の光学素子の寸法精度(外形寸法、あるいは外形に対する光学素子の光軸位置等)にばらつきが生じる。また、切断するダイサーブレードがガラスシート面を突き破る際に、切断面に欠けが生じ易い。
そこで本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ガラスレンズの破損を防ぐと共に取り扱いし易く、しかも光軸と外径形状との位置精度が極めて高い、光学性能の優れたガラスレンズの製造方法及びガラスレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のガラスレンズの製造方法は、ガラス素材を成形して、複数個のガラスレンズが格子状に形成されたガラスレンズシートにおいて、前記ガラスレンズシートを前記複数個のガラスレンズに分離するためのカット溝が、前記ガラスレンズシートの表面及び裏面の対面した位置に形成され、前記ガラスレンズシートの表面及び裏面に形成された内のどちらか一方の面の前記カット溝を、ガイドラインとして切断することを特徴とする。
【0007】
これによれば、複数個のガラスレンズが格子状に形成されたガラスレンズシートを一体成形し、複数個のガラスレンズに分離するためのカット溝をガイドラインとして切断することにより、複数個のガラスレンズを効率良くまとめて製造することができるため、低コストのガラスレンズが得られる。また、分離するためのカット溝が、ガラスレンズシートの表面及び裏面の対面した位置に形成されていることにより、ガラスレンズシートが複数個のガラスレンズに切断された時、各ガラスレンズの切断面がカット溝により面取り形状に形成されることにより、ガラスレンズの破損(チッピング)を防止することができ、不良品の発生を抑制し、歩留まりを向上させることができると共に、取り扱いし易いガラスレンズが得られる。
【0008】
また、本発明のガラスレンズの製造方法は、前記ガラスレンズシートの表面及び裏面の内のどちらか一方の面に、面から突起し、前記複数個のガラスレンズを分離する突起部を有し、該突起部の突起面上に前記カット溝が形成されたことを特徴とする。
これによれば、ガラスレンズシートの表面及び裏面の内のどちらか一方の面に、面から突起し、複数個のガラスレンズを分離する突起部を有し、この突起部の突起面上にカット溝が形成されることにより、成形されるガラスレンズシート(ガラスレンズ、あるいはレンズ接続部)が薄い場合に、薄型ガラスレンズに対応した、効率的なガラスレンズシートの切断が行えると共に、波打ちや蛇行を防止したガラスレンズシートの切断を行うことができる。
【0009】
また、本発明のガラスレンズの製造方法は、前記カット溝の断面形状が、V形、台形、円弧の内の何れかの形状で形成されていることを特徴とする。
これによれば、カット溝の断面形状が、V形、台形、円弧の内の何れかの形状で形成されていることにより、成形されたガラスレンズシートが複数個のガラスレンズに切断された時、各ガラスレンズの切断面がカット溝により面取り形状に形成されることにより、ガラスレンズの破損(チッピング)を防止することができると共に、取り扱いし易いガラスレンズが得られる。
【0010】
また、本発明のガラスレンズの製造方法は、前記ガラスレンズシートに形成された前記複数個のガラスレンズを複数個に切断する切断手段が、前記カット溝をガイドラインとして、該カット溝に沿って切断することを特徴とする。
これによれば、ガラスレンズシートに形成された複数個のガラスレンズを複数個に切断する切断手段が、カット溝をガイドラインとしてカット溝に沿って切断することにより、波打ちや蛇行を防止したガラスレンズシートの切断を行うことができる。
【0011】
また、本発明のガラスレンズの製造方法は、前記ガラスレンズシートに形成された前記複数個のガラスレンズを複数個に切断する切断手段が、複数の前記カット溝のひとつずつの位置情報を画像認識し、逐次、切断位置を補正しながら、前記カット溝に沿って、前記複数のカット溝を順次切断することを特徴とする。
これによれば、ガラスレンズシートに形成された複数個のガラスレンズを複数個に切断する切断手段が、複数のカット溝のひとつずつの位置情報を画像認識し、逐次、切断位置のずれ量を補正しながら、カット溝に沿って、複数のカット溝を順次切断することにより、切断されたガラスレンズの光軸と外径形状との位置精度が極めて高い、光学性能の優れたガラスレンズが得られる。
【0012】
また、本発明のガラスレンズの製造方法は、前記切断手段は、前記カット溝の断面形状の一部が残るように切断することを特徴とする。
これによれば、ガラスレンズシートに形成された複数個のガラスレンズを複数個に切断する切断手段が、カット溝の断面形状の一部が残るように切断することにより、成形されたガラスレンズシートが複数個のガラスレンズに切断された時、各ガラスレンズの切断面がカット溝により面取り形状に形成されることにより、ガラスレンズの破損(チッピング)を防止することができると共に、取り扱いし易いガラスレンズが得られる。
【0013】
また、本発明のガラスレンズは、ガラス素材を成形して、複数個のガラスレンズが格子状に形成されたガラスレンズシートにおいて、前記ガラスレンズシートを前記複数個のガラスレンズに分離するための、V形、台形、円弧の内の何れかの断面形状のカット溝が、前記ガラスレンズシートの表面及び裏面の対面した位置に形成され、前記ガラスレンズシートに形成された前記カット溝のひとつずつの位置情報を画像認識し、位置補正された、前記カット溝をガイドラインとしてカット溝に沿って、前記複数のカット溝を順次、切断手段により切断する製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0014】
これによれば、ガラスレンズの破損(チッピング)を防止する共に、取り扱いし易いガラスレンズが得られる。また、切断されたガラスレンズの光軸と外径寸法との位置ずれ精度が極めて高い、光学性能の優れたガラスレンズが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態のガラスレンズは、光学ガラス素材を多数個取り成形金型を用いてモールド成形してガラスレンズシートを作製し、ガラスレンズシートを切断して分離することにより、複数個のガラスレンズが同時に作製される。図1はモールド成形されたガラスレンズシートの表平面図であり、図2は図1のA−A断面におけるガラスレンズシートの断面図である。なお、図2は、図1を拡大した断面で示す。
【0016】
図1および図2において、ガラスレンズシート(以降、レンズシートと示す場合がある)10は、レンズシート上にレンズ部1Cが同一ピッチで格子状に複数配列(図示の例は、6個×6個の配列)され、接続部11により各レンズ部1C間が接続されている。また、接続部11の表面に、例えば断面形状がV形に凹むカット溝12が形成され,接続部11の裏面にカット溝12に対向して、例えば断面形状が台形に凹むカット溝13が形成されている。
【0017】
レンズ部1Cは、ガラスレンズシート10の表面に形成された凸面1Aと、凸面1Aに対向したガラスレンズシート10の裏面に形成された凸面1Bとでガラスレンズ(以降、レンズと示す場合がある)が構成されている。凸面1Aおよび凸面1Bは、所望のレンズを構成する所定の球面あるいは非球面形状の屈折表面が形成されている。
【0018】
カット溝12は、ガラスレンズシート10上の各レンズ部1Cを含み構成されるレンズ1(後述する図6、参照)を、複数個に切断するためのカット溝であり、同一ピッチで格子状に配列された全ての各レンズ部1C間の接続部11に、分離される各格子状の外形の幾何学中心が、レンズ部1Cの光軸と一致するように、同一ピッチで等間隔の直線で分割されている。なお、ガラスレンズシート10の最外周部の縦横に形成されたカット溝12からなるコーナー部の4つの十字状のカット溝12を、ガラスレンズシート10を複数個に切断するための基本のアライメントマークとして用いることができる。
【0019】
次に、ガラスレンズシートの成形について説明する。
図3は、ガラスレンズシートのモールド成形を示す概略説明図であり、同図(a)は成形型が開いた状態のキャビティの断面図であり、同図(b)は成形状態におけるキャビティの断面図である。
【0020】
ガラスレンズシート10を成形する成形型100の構成は、図3(a)に示すように、閉じられたときにキャビティを構成する下型101と、上型102の2つの型で構成されている。下型101、および上型102の各キャビティ面105,106には、成形されるレンズ部1Cの所定の球面、あるいは非球面形状の屈折表面が形成された、凹面103、および凹面104を複数個備え、多数個取り成形金型を構成している。
【0021】
下型101、上型102の各キャビティ面105,106には、複数個の凹面103、および凹面104が、同一ピッチで格子状に配列(図1に示すガラスレンズシートの表平面図、参照)して形成されている。また、キャビティ面105には、カット溝13を成形するための台形の突起107が形成され、キャビティ面106には、カット溝12を成形するための山形の突起108が形成されている。すなわち、キャビティ面105,106によりガラスレンズシート10の接続部11が成形される。
こうした凹面103,104、および突起107,108は、下型101、および上型102のキャビティ面105,106に直接形成する、あるいは入れ子によって構成することができる。
【0022】
ガラスレンズシート10の成形は、図3(a)に示すように、下型101、上型102を開き、キャビティ内に所定の形状にした光学ガラス素材109を投入する。光学ガラス素材109としては、特に限定されず、成形されたガラスレンズが用いられる装置に対応した、所定の屈折率、アッベ数等を考慮して選択される。
そして、図3(b)に示すように、キャビティ全体を加熱することにより、光学ガラス素材を軟化させる。その後プレス力を加えることにより、下型101、上型102とを閉じて光学ガラス素材109をキャビティ内に展延させ、この状態で光学ガラス素材109を冷却させる。そして、下型101,上型102を開いて成形型100から取り出されて、複数個(図示の例は、36個)のレンズ部1Cが形成されたレンズシート10が、一回の成形により完成する。
【0023】
そして、完成したガラスレンズシート10は、ダイシング装置によりカット溝をガイドラインとして切断され、複数個のガラスレンズに分離される。
【0024】
次に、ガラスレンズシート10の切断について説明する。
図4はガラスレンズシートを切断するダイシング装置の模式図であり、図5はガラスレンズシートの切断状態を示す部分断面図であり、図6(a)はガラスレンズシートから切断されたガラスレンズの平面図、同図(b)は断面図である。
【0025】
図4においてダイシング装置20は、プログラム化された数値指令によってディジタル制御される数値制御装置、いわゆるNC制御されるダイシング装置である。
ダイシング装置20は、X−Yステージ21、モータ22、切断手段としてのブレード23、モータ24、CCDカメラ25、制御部26等で構成されている。
【0026】
X−Yステージ21は、装置の筐体(図示せず)上に水平に配備され、成形されたガラスレンズシート10を、ステージ上に保持すると共に、後述する制御部26から出力されるサーボ制御信号によりモータ22が作動して、X−Y方向に移動する。なお、ガラスレンズシート10のX−Yステージ21への保持は、例えば、加熱することにより再可溶化するUV接着剤14、あるいは、高弾性ビニルシリコーン印象材を用いて、ステージの所定の平面位置、およびステージ面から所定の高さ位置に、限りなく水平に保持される。
【0027】
ブレード23は、例えば、金属基台にレジンボンドブレードが一体に構成された極薄のブレードであり、スピンドル(図示せず)に取付けられ、制御部26から出力される制御信号によりモータ24が作動して、回転すると共に、X−Yステージ21のステージ面に対して垂直方向に移動可能に構成されている。
CCDカメラ25は、CCD撮像素子を搭載し、X−Yステージ21に保持されたガラスレンズシート10(カット溝12)の画像データを制御部26に出力する。
【0028】
制御部26は、CPU(Central Processing Unit)27と、メモリ28を備え、CPU27において、メモリ28に格納された制御プログラムや各種アプリケーションプログラムが実行されると、ブレード制御部29、画像処理部30、座標演算部31、加工プログラム生成部32、X−Yステージ制御部33等が構築される。
【0029】
このように構成されたダイシング装置20の切断動作について説明する。
先ず、CCDカメラ25において、X−Yステージ21に保持されたガラスレンズシート10上のカット溝12の画像が、所定の画素に分割され、分割された各画素毎に所定数の階調に分けられた画像データを制御部26(CPU27)に出力する。
そして、制御部26に入力された画像データは、CPU27に構築された画像処理部30において、2値化処理される。
【0030】
そして、画像処理部30で2値化処理された画像データに基づいて、座標演算部31において、カット溝12の中心位置情報(座標)が生成される。このカット溝12の中心位置情報は、最初にガラスレンズシート10のコーナー部の4つの十字状のカット溝12の位置を検出し、その位置情報からガラスレンズシート10全体のカット溝12の位置情報が生成され、各カット溝12の切断開始点の位置情報を算出する。
そして、座標演算部31で算出された各カット溝12の位置情報に基づいて、加工プログラム生成部32において、X−Yステージ21(モータ22)を作動するNCプログラムが生成される。
【0031】
そして、X−Yステージ制御部33において、加工プログラム生成部32で生成されたNCプログラムが実行される。このNCプログラムに基づいて、モータ22が作動することによりX−Yステージ21が、ガラスレンズシート10の切断位置、すなわち、最初に切断する所定位置のカット溝12の中心位置に移動する。
そして、ブレード制御部29からモータ24に駆動信号が出力されて、ブレード23が所定の高さ位置まで下降し、回転する。
【0032】
そして、ガラスレンズシート10のカット溝12の中心位置がブレード23の幅の中心になる位置にX−Yステージ21が移動して、カット溝12の中心に沿って移動しながらガラスレンズシート10を切断する。最初のカット溝12の切断が終了すると、NCプログラムに基づいたX−Yステージ制御部33からの制御信号を受けて、X−Yステージ21が次のカット溝12の切断開始位置まで移動し、前記と同様にカット溝12の切断が行われる。
【0033】
なお、より切断精度を高めるために、ガラスレンズシート10が切断開始位置まで移動した後に、これから切断するカット溝12の画像データをCCDカメラ25により取り込み、座標演算部31において、新たなカット溝12の中心位置情報を生成する。そして、新たなカット溝12の中心位置情報と、現在のX−Yステージ21の位置情報との差を位置ずれ量とし、位置ずれ量を解消するように再度、X−Yステージ21を移動して、切断を開始する方法を用いることができる。
【0034】
こうした切断時における、ガラスレンズシートの切断状態を示す部分断面図を図5に示す。
図5において、ガラスレンズシート10は、ダイシング装置20を構成するX−Yステージ21上に、UV接着剤14を用いて水平に保持されている。このガラスレンズシート10の各レンズ部1C間を接続する接続部11の表面に形成された、断面形状がV形に凹むカット溝12と、接続部11の裏面にカット溝12に対向して形成された、断面形状が台形に凹むカット溝13との共通の中心線a−a上を、ブレード23の幅の中心が移動して、ガラスレンズシート10の切断が行われる。したがって、X−Yステージ21が移動することによりブレード23がカット溝12,13中を移動するため、ブレード23が薄いことにより発生する切断中の波打ちや、蛇行を防ぐことができる。なお、カット溝12,13は、図示のように、接続部11がブレード23に切断された時に、各カット溝を形成する凹部の斜面が残る大きさに設定される。
【0035】
このように、ガラスレンズシート10に形成された14本のカット溝12に沿って、ガラスレンズシート10が順次切断され、複数個(36個)のガラスレンズに分離される。
ガラスレンズシート10が切断され、ダイシング装置20(X−Yステージ21)から取外された一つのガラスレンズを図6に示す。
【0036】
図6において、ガラスレンズ1は、正方形の接続部11の中心部に、表面に形成された凸面1Aと、凸面1Aに対向した裏面に形成された凸面1Bとで、所定の光学性能のレンズが構成されている。また、接続部11の切断された4つの端面の表裏面には、表面側にカット溝12を形成した断面形状の一部の面12a、裏面側にカット溝13を形成した断面形状の一部の面13aが、面取り面を形成している。この面取り面により、ガラスレンズ1を各種装置に組み込む際等に、ガラスレンズ1の破損(チッピング)を防止することができると共に、取り扱いし易いガラスレンズが得られる。
【0037】
また、このように画像認識した複数の各カット溝12の位置情報に基づいて、各カット溝12の位置ずれを補正しながら切断された各ガラスレンズ1は、切断後のレンズの光軸と外径寸法との位置ずれ精度が10μm程度に切断することができ、光学性能の優れたガラスレンズを得ることができる。因みに、一般的に行われるアライメントマークを基準にして、位置補正されずに順次切断される場合の位置ずれ精度は、ダイシング装置の誤差が加算されていくことにより、50〜100μm程度に達する。
【0038】
以上の実施形態において、成形されるガラスレンズシート10の接続部11(コバ厚)が薄い場合には、図7のガラスレンズシートの切断状態を示す部分断面図に示すように、ガラスレンズシート40の全ての各レンズ部1C間の薄い接続部15の表面側(切断側)に、接続部15の表面から突起し、各ガラスレンズ(レンズ部1C)を分離する突起部(図示の場合は、断面形状が台形の突起)16を形成し、その突起部16の突起面にカット溝17(図示の場合は、断面形状が台形の凹み)を形成するのが好ましい。
【0039】
したがって、突起部16の突起面にカット溝17を形成することにより、接続部15に突起16Aと突起16Bの2列の直線突起が形成される。この突起部16(突起16A,突起16B)を形成することにより、薄いコバ厚の薄型レンズに対応し、切断されたガラスレンズの切断面に面取り面が得られると共に、切断面に十分な厚みが得られ、ブレード23の波打ちや蛇行を防止したガラスレンズシート40の切断を行うことができる。
【0040】
また、ガラスレンズシートに形成される複数のカット溝の断面形状は、ガラスレンズシート10に形成されたV形に凹むカット溝12、台形に凹むカット溝13およびカット溝17の他に、接続部15の裏面に形成された円弧状に凹むカット溝18に示すような円弧状の形状を形成することができる。さらに、これらのカット溝の断面形状を、成形するガラスレンズシートの表、裏面に、任意に組み合わせて用いることができる。
【0041】
また、ガラスレンズシート10に形成されるレンズ部1C(ガラスレンズ1)は、凸面1Aと凸面1Bとで構成された凸レンズの場合で説明したが、凸面と凹面、凹面と凹面で構成される凹レンズ、あるいは、凸面と平面で構成される平凸レンズ等、どんな面形状のガラスレンズであっても良い。
【0042】
また、ガラスレンズシート10の切断は、表面に形成されたカット溝12,17をガイドラインとして切断した場合で説明したが、ガラスレンズシート10の裏面をX−Yステージ21に保持して、裏面に形成されたカット溝13,18をガイドラインとして切断しても良い。ガラスレンズシート10の切断面の選択は、ガラスレンズシートに形成されるガラスレンズ部の形状を考慮するのが好ましい。
【0043】
本実施形態の製造方法により製造されたガラスレンズは、単独、もしくは組み合わせて、CCDやCMOS等の撮像素子、あるいは、携帯電話等の各種小型カメラの集光レンズなどに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】モールド成形されたガラスレンズシートの表平面図。
【図2】図1のA−A断面におけるガラスレンズシートの断面図。
【図3】(a)は成形型が開いた状態のキャビティの断面図、同図(b)は成形状態におけるキャビティの断面図。
【図4】ガラスレンズシートを切断するダイシング装置の模式図。
【図5】ガラスレンズシートの切断状態を示す部分断面図。
【図6】(a)は切断されたガラスレンズの平面図、(b)は切断されたガラスレンズの断面図。
【図7】別のガラスレンズシートの切断状態を示す部分断面図。
【符号の説明】
【0045】
1…ガラスレンズ、1A、1B…凸面、1C…レンズ部、10,40…レンズシート、11,15…接続部、12,13,17,18…カット溝、12a…面、13a…面、14…UV接着剤、16…突起部、20…ダイシング装置、21…X−Yステージ、22,24…モータ、23…切断手段としてのブレード、25…CCDカメラ、26…制御部、27…CPU、28…メモリ、29…ブレード制御部、30…画像処理部、31…座標演算部、32…加工プログラム生成部、33…X−Yステージ制御部、100…成形型、101…下型、102…上型、103,104…凹面、105,106…キャビティ面、107,108…突起、109…光学ガラス素材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス素材を成形して、複数個のガラスレンズが格子状に形成されたガラスレンズシートにおいて、
前記ガラスレンズシートを前記複数個のガラスレンズに分離するためのカット溝が、前記ガラスレンズシートの表面及び裏面の対面した位置に形成され、
前記ガラスレンズシートの表面及び裏面に形成された内のどちらか一方の面の前記カット溝を、ガイドラインとして切断することを特徴とするガラスレンズの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のガラスレンズの製造方法において、
前記ガラスレンズシートの表面及び裏面の内のどちらか一方の面に、面から突起し、前記複数個のガラスレンズを分離する突起部を有し、該突起部の突起面上に前記カット溝が形成されたことを特徴とするガラスレンズの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガラスレンズの製造方法において、
前記カット溝の断面形状が、V形、台形、円弧の内の何れかの形状で形成されていることを特徴とするガラスレンズの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガラスレンズの製造方法において、
前記ガラスレンズシートに形成された前記複数個のガラスレンズを複数個に切断する切断手段が、
前記カット溝をガイドラインとして、該カット溝に沿って切断することを特徴とするガラスレンズの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガラスレンズの製造方法において、
前記ガラスレンズシートに形成された前記複数個のガラスレンズを複数個に切断する切断手段が、
複数の前記カット溝のひとつずつの位置情報を画像認識し、逐次、切断位置を補正しながら、前記カット溝に沿って、前記複数のカット溝を順次切断することを特徴とするガラスレンズの製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載のガラスレンズの製造方法において、
前記切断手段は、前記カット溝の断面形状の一部が残るように切断することを特徴とするガラスレンズの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のガラスレンズの製造方法により製造されたことを特徴とするガラスレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−188388(P2006−188388A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1152(P2005−1152)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】