説明

ガラス上に多色面を形成する方法

【課題】本発明は、担体流体を含む異色の複数の原色セラミック・プロセスカラーインクをセラミック要素又はガラスの表面上の少なくとも一部分に滴状付与することによりセラミック要素又はガラス上に多色面を形成する方法に関する。
【解決手段】少なくとも二つの原色プロセスカラーインクを相互に重ねて印刷した後に付与されたインク滴を焼成して混色を生成する。少なくとも一つの(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤が原色セラミック・プロセスカラーインクに添加される。最初に付与したインク滴の上に追加のインク滴を印刷する前に、最初のインク滴を少なくとも部分的に硬化するか、又はその粘度を増加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック要素又はガラス上に、担体流体を含む異なる原色セラミック・プロセスカラーインクをそのセラミック要素又はガラス表面の少なくとも一部に滴下付与することによって形成する方法であって、混色は少なくとも二つの原色プロセスカラーインクを相互に重ねて印刷し、続いて、付与されたインク滴を焼成することによって形成する方法に関し、また、いくつかの異なる色の原色セラミック・プロセスカラーインクから成る印刷インクシステムであって、混色を少なくとも二つの原色セラミック・プロセスカラーインクを相互に重ねて印刷することによって形成でき、各原色セラミック・プロセスカラーインクは少なくとも一つの無機顔料、ガラス原料(frit)、分散剤、そして特に有機の担体流体を含む印刷インクシステムに関し、また、セラミック要素又はガラス上で、いろいろな色の原色セラミック・プロセスカラーインクを該セラミック要素又はガラス表面の少なくとも一部に滴下付与して多色面を形成し、混色は少なくとも二つの原色プロセスカラーインクを相互に重ねて印刷することによって形成する装置であって、該プロセスカラーインクのためのいくつかの配送要素及び該プロセスカラーインク付与時に該セラミック要素又はガラスを支持する支持装置を含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物正面の装飾ガラスには、日光及び耐久性に関して高い要求が課される。この問題は、従来、たいていの場合に着色ガラスを用いて、又はセラミック・インクを用いるスクリーン印刷法によって解決されてきた。
【0003】
スクリーン印刷には、一つの色を付与した後、次の色を付与して混色を生成する前に、最初に付与した色を通過オーブン(through oven)で完全に乾燥させる(焼く)ことが、次の色を付与したときに流れ落ちないようにするために必要であるという欠点がある。スクリーン印刷には、また、各色及び各装飾に関して別々のスクリーンを用意しなければならないという欠点がある。更に、スクリーン印刷のインクは完全に不透明であり、透き通って見えないという欠点がある。
【0004】
米国特許US 6,336,723 B1はカラーのパタンを有するガラス基板を生成する方法を記載している。この場合、所望のパタンはテンプレートからスタートして、それがキャリアにカラーで作成され、画像処理によって電子的に調製され、インクジェット・プリンタによって4色でカラー印刷され、焼成される。ガラス上で約500℃から700℃に加熱されるカラーとして用いられるのは、適当な通常の無機顔料による加熱カラーである。これを希釈剤で希釈してインクジェット・プリンタで付与できるようにする。印刷後、加熱する前に、付与したカラーがほぼ乾燥するまで、ガラス・ディスクは水平の姿勢に保持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、少数のプロセスカラーを用いて彩色されたガラス表面を形成するための改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、それぞれ独立に、次のようにして達成される、即ち、前述の方法によれば、少なくとも一つの(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤と、場合によっては少なくとも一つの光開始剤を原色セラミック・プロセスカラーインクに添加し、インク滴の上に追加されるインク滴で印刷する前に該インク滴を少なくとも部分的に硬化させ、且つ/又はプロセスカラーインクのインク滴を付与した後、追加のプロセスカラーインクを最初のインク滴の上に付与する前に、前に付与されたインク滴の粘度を高めて、前述の印刷インクシステムでは、原色セラミック・プロセスカラーインクの各々が少なくとも一つの(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤と、場合によっては少なくとも一つの光開始剤を含み、前述の装置では、該配送要素又は配送要素の群に、又はそれに隣接して光源が配置され、且つ/又は配送要素がいくつかのプリントヘッドに配置され、熱源が該プリントヘッド間に配置されることにより達成される。
【0007】
個々のインク滴は、それぞれの表面に付与された後、次のインク滴がそれらのインク滴の上に印刷される前に、固定されることが有利である。このようにして、個々のインク滴が相互に分離して流動することがなく、画像の鮮明さが著しく高められ、色の精度が向上し、所望の混色だけが形成されて、インク滴の溶解や隣接する滴との部分混合から生ずる混色を防止できる。また、インク滴の粘度がカラーの流出を防ぐほどに高められても、インク滴がある程度の流動性を保持していると、そのインク滴の上に付与される追加のインク滴が少なくとも部分的にこのインク滴と混合でき、特にそれにより担体流体がインク滴の領域に入り込み、混色の形成が容易になり助けられるので、有利である。
【0008】
インク滴の(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤は、特にその上に追加のインク滴が付与される前に部分的にオリゴマー化又はポリマー化されて、好ましくは担体流体の一部も除去される場合に、インク滴の粘度を高めることができる。この場合、科学反応は比較的速やかに起こり、インク滴が速やかに固定され、しかも完全な反応を回避し又は添加剤の混合量を調節してインク滴が所望の残留流動性を保持することが有利である。特に、オリゴマー化又はポリマー化は、非常に小さなインク滴の場合、オリゴマー化又はポリマー化のためのエネルギー移動が非常に精密に、例えば光導体を用いて行うことができるのでより効果的に制御される。
【0009】
上述の理由により、(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤が、最大で90%、特に最大で80%、好ましくは最大で70%、オリゴマー化又はポリマー化されることが有利である。
【0010】
更に、上述の理由により、インク滴の上に次のインク滴が付与される前に、担体流体が、インク滴における担体流体の全比率に対して最大で20%、特に最大で25%、好ましくは最大で30%、の比率で除去される。
【0011】
オリゴマー化又はポリマー化可能な担体流体を用いると、この場合、それが前述した添加剤を構成し、インク滴が付与された後でオリゴマー化又はポリマー化されるので、簡単で安価な選択が提供される。オリゴマー化又はポリマー化は、異なる種々のメカニズムで行われ、例えば電磁放射によって、温度の効果によって行われ、この場合同時に担体流体のある比率を水分との反応等によって減らすことができる。
【0012】
本発明の方法のある実施形態では、セラミック要素又はガラスは印刷装置を一回通過させて(シングルパスで)印刷され、この場合、印刷装置では原色セラミック・プロセスカラーインクに対していくつかの配送要素が――セラミック要素又はガラスの進行方向で見て――相互に前後に配置され、同じスポットに追加インク滴が付与される前に、その原色セラミック・プロセスカラーインクの担体流体が付与されたインク滴から少なくとも部分的に除去される。このようにして、表面に付与された後にインク滴の粘度が増加するので、個々のインク滴の固定が向上し、その結果基板への印刷をいわゆるシングルパス法で行うことができ、小さい又は非常に少ない生産シリーズで生産する場合でも、方法の効率が高められる。
【0013】
本発明の装置の好ましい実施形態では、加熱装置が複数のプリントヘッド間に配置される。
【0014】
担体流体の蒸発は、少なくとも二つの原色セラミック・プロセスカラーインクのそれぞれに担体流体が用いられ、それらは異なる温度で蒸発することによってサポートされる。この場合、沸点がより高い担体流体、即ちより高い温度で蒸発する担体流体(別の担体流体に対して)、が基板表面に最初に付与されるプロセスカラーインクに加えられる。この場合、最初のインク滴は十分に固定されるが、後で担体流体が少なくとも部分的に蒸発するため、前記インク滴に印刷される追加のインク滴が最初のインク滴にある程度混合して後の混色の形成がサポートされる。更に、最初のインク滴は進行方向でより長い距離を移動し、その間沸点が高い担体流体の蒸発が更に続き、印刷の後の焼成の際の気泡の形成が避けられる。このため、最後に付与されるカラーインクが低い沸点の担体流体を含むことがやはり有利である。好ましい実施形態では、(基板の進行方向で)相互に前後して付与されるインクは、沸点がだんだん低くなる担体流体を含む。
【0015】
印刷インクシステムは、また、少なくとも二つの原色セラミック・プロセスカラーインクの担体流体が相互に異なる沸点を有するように設計できる。
【0016】
この方法のある変形では、異なる沸点の流体の混合物から成る担体流体が用いられる。それによって、付与後の印刷インクの粘度が担体流体の一部を除去することによって高められ、インク滴の固定をサポートする。印刷時の基板の進行する距離にわたって、担体流体のうち沸点が高い方の成分が少なくとも部分的に除去され、それによって気泡の形成が防止できる。しかし同時に、インク滴の領域で依然として存在している担体流体部分によって特別な混合物が達成され、そのインク滴に追加のインクが付与されても、単数又は複数のインク滴が隣接する滴に流れ込まない。
【0017】
印刷インクシステムは、また、複数の原色セラミック・プロセスカラーインクの担体流体が異なる沸点の流体の混合物から成るように設計できる。
【0018】
セラミック要素又はガラスがインクジェット・プリンタで印刷される形態でこの方法が実行されることが特に好ましい。本発明による装置がインクジェット・プリンタとして設計されるのはそのためである。
【0019】
印刷インクシステムのある実施形態では、それぞれの原色セラミック・プロセスカラーインクにおける(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤の全体比率は下限が5重量%で上限が70重量%である範囲から選択される。(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤が5重量%よりも低い比率で実際にはインク滴は固定されるが、印刷の質は所定の下限から相当に優れていることが示された。所定の下限より上では、個々の滴が硬くなりすぎて、混色を達成するための焼成時に混合手順に悪影響を及ぼす。
【0020】
従って、本発明の範囲内で、それぞれの原色セラミック・プロセスカラーインクにおける(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤の全体比率を下限が5重量%で上限が40重量%の範囲から、又は下限が10重量%で上限が25重量%の範囲から選択することができる。このようにして前述の効果が更に改良される。
【0021】
上述理由により、印刷インクシステムの別の実施形態では、それぞれの原色セラミック・プロセスカラーインクにおける光開始剤の全体比率は、下限が0.5重量%で上限が20重量%の範囲から選択される。
【0022】
従って、本発明の範囲内で、それぞれの原色セラミック・プロセスカラーインクにおける光開始剤の全体比率は、下限が1重量%から上限が10重量%の範囲から、又は下限が3重量%から上限が7重量%の範囲から選択される。このようにして前述の効果が更に改良される。
【0023】
本発明の範囲内で、“光開始剤”という用語はIR-開始剤を含み、この場合IR-開始剤(単数又は複数)の比率は下限が0.5重量%で上限が15重量%である範囲から選択されることが有利である。
【0024】
担体流体の蒸発を容易にするために、原色セラミック・プロセスカラーインクにおける担体流体の比率は、下限が30重量%で上限が90重量%である範囲、又は下限が40重量%で上限が80重量%である範囲、特に下限が60重量%で上限が80重量%である範囲から選択される。
【0025】
印刷インクシステムの別の実施形態では、少なくとも二つの原色セラミック・プロセスカラーインクが異なる比率の担体流体を含む。特に、後で付与される印刷インクの担体流体の比率が低くなる。また、このようにして、印刷プロセスの間に担体流体の比率が減少し、カラー焼成時の気泡の形成を防止できる。好ましくは、最後に付与されるインクが最小比率の担体流体を含み、最初に付与されるインクが最大比率の担体流体を含む。その中間で付与される印刷インクはその直前に付与された印刷インクよりも低い比率で担体流体を含む。
【0026】
本発明のより良い理解のために、本発明は以下の単純化された概略図を参照して詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】インクジェット印刷装置の形態における本発明による装置の一実施形態を示す。
【図2】プリントヘッドが内部に配置されたプリントヘッド機構の下側を示す。
【図3】配送要素の領域におけるプリントヘッドの細部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず初めに、説明で使用される位置に関する細部、例えば上、下、側などは図示された図面に関し、位置が変化する場合には新しい位置に調整しなければならない。更にまた、図示され説明される例示実施形態からの個々の特徴や特徴の組み合わせは、それ自体で本発明による独立の解決を表している。
【0029】
図1は、インクジェット・プリンタの形態の装置1の概観を、個々の構成要素の単純化した概略図と共に示している。
【0030】
装置1は、印刷されるプリント部材3を載置して進行方向4へ(図では左から右に)移動させる実質的水平に配置された輸送装置2を含む。この輸送装置2によって、プリントヘッド6を含むプリントヘッド機構5があり、それによって下を移動するプリント部材3にインクが印刷される。
【0031】
輸送装置2は、好ましくは連続的コンベヤ・ベルト7で構成され、コンベヤ・ベルト7は少なくとも二つのガイドローラー8上でガイドされ、少なくとも一つのガイドローラー8が駆動される。進行方向4に移動するコンベヤ・ベルト7の上部は一つ以上のガイドプレート9によってその下面が支持される。コンベヤ・ベルト7は、水平方向に並んでいるガイドプレート9上で摺動するように引っ張られ、プリント部材3の適当に均一な水平移動が進行方向4において達成される。
【0032】
プリントヘッド機構5は、各色に対して複数のプリントヘッド6を含み、好ましくは、プリントヘッド機構5を側方へ移動させる必要なく、印刷媒体又はプリント部材3の幅全体が一時に印刷できる。このことはプリントヘッド機構5が側方に関して固定された状態で配置されることを意味する。垂直方向に並んだガイド10によってプリントヘッド機構5をコンベヤ・ベルト7の方向に下げたり、持ち上げてそこから離したりできる。
【0033】
プリントヘッド機構5のプリントヘッド6を制御するために、印刷するパタンの画像データは画像コンピュータ11によってプリントヘッド6の制御信号に変換される。インクジェット印刷装置全体を制御するために制御装置12が更に装備される。制御装置12はインクジェット印刷装置を制御するソフトウエアを含み、且つ画像コンピュータ11は画像データ処理のためのソフトウエアを含む。
【0034】
この例示実施形態によれば、カラーパタンはシアン、マジェンタ、イエロー及び白又は黒で印刷され、プリントヘッド6又はプリントヘッド機構5に対応するタンク13からインクが供給される。
【0035】
装置1は、また、ノズル洗滌装置14を含み、プリントヘッド機構5を持ち上げた後にそれをプリントヘッド機構5の下の位置(鎖線で示される)から移動させることができる。このようにしてプリントヘッド6のノズルの閉塞を解除するために、ノズル洗滌装置14に含まれるすべてのノズルからインクを押し出すことができる。
【0036】
好ましくは、進行方向4と反対に動かされるコンベヤ・ベルト7の下部の領域にクリーニング装置15がコンベヤ・ベルト7のクリーニングのために配置される。このようにしてコンベヤ・ベルト7のインクの残りを除去することができる。クリーニング装置15によるクリーニング波、例えば、まだ乾いていないインクの残りをかき取り又は吸い取ることによって行われる。クリーニングの効果はコンベヤ・ベルトに洗剤をスプレーすることによりサポートされ、このようにして乾いたインクの残りが除去される。
【0037】
センサ16によってプリント部材3の上側17の垂直方向の位置又はプリント部材3の厚さが検出され、制御装置12によってプリントヘッド機構5の垂直方向の位置又はプリント部材3の上側17からのプリントヘッド機構5の間隔を自動的に調整することができる。プリントヘッド機構5の前方の輸送装置2の入力側区域に別のセンサを設けて、プリント部材3の前縁19を検出し、プリントヘッド機構5の印刷手順を正しい時間にスタートさせることができる。
【0038】
輸送装置2の入力側区域にプリント部材3の位置を修正する装置20を設けることができ、それによってプリント部材3を所定位置でコンベヤ・ベルト7上で運搬できる。選択的に、カメラ21を設けてよく、それによって自動画像認識との結合でコンベヤ・ベルト7上のプリント部材3の位置と配置を検出して、画像コンピュータ11による画像データの計算時にこの情報を考慮に入れる。
【0039】
図2は、プリントヘッド6が配置された図1のプリントヘッド機構5の下側を示す。
【0040】
プリントヘッド6の各々は、一列のノズル22を含み、ノズル列長23は複数の隣接するノズルと直線に設計されたノズルで形成される。プリントヘッド6又はそのノズル列22は進行方向4に対して斜めに又は傾いて配置され、ノズル列22の各々は進行方向4に対して垂直のノズル列22の印刷領域幅24を有し、印刷領域幅24はノズル列長23よりも小さい。従って、ノズル列22において低い分解能又は低い密度のノズルを有するプリントヘッド6を用いて進行方向4に対して垂直方向に対してずっと高い分解能が達成される。
【0041】
説明している実施形態での普遍性を制限することなく、九つのプリントヘッドを一つのプリントヘッドモジュール25に組み合わせることができる(図2では概観しやすいように一つのプリントヘッドモジュール25だけしか示されていない)。いくつかのこのようなプリントヘッドモジュール25(説明している実施形態では4個のプリントヘッドモジュール25)が一緒になって一つのカラーを印刷するための一列のプリントヘッド26を形成している。プリントヘッド6は、二つの隣り合うノズル列22のノズル列22の印刷領域幅24が相互に隙間なく隣接し、プリントヘッド列26の全印刷領域幅27はプリントヘッド6の数によって決まるように配置される。
【0042】
印刷すべき各カラーに対して一つのプリントヘッド列26が設けられる。この例示実施形態では、いくつかのプリントヘッド列26が進行方向4に対して相互に前後に配置され、プリントヘッド列26のノズルが印刷領域長さ28にわたって拡がっている。
【0043】
説明している実施形態では、圧電インクジェット・プリントヘッドがプリントヘッド6として使用され、50cmを超える印刷領域幅27が達成でき、200から800 dpiの範囲の分解能が可能になる。
【0044】
産業用のこのようなインクジェット・プリンタは従来からすでに知られている。例えば、このようなインクジェット・プリンタは出願人のWO 2006/084614 A2に記載され、その限りにおいて本明細書の一部を成す。当然ながら、この装置1の変更は可能である。例えば、コンベヤ・ベルトとして記載されている輸送装置2の代わりに、単数又は複数のプリント部材3を支持するための支持装置を一つだけ設けることもできる。また、単数又は複数のプリントヘッド6又はプリントヘッド機構5をプリント部材3に対して対応するガイド装置によって移動可能に取り付けることもできる。プリントヘッド機構5の移動可能性は、xy平面でx方向に、即ち図1の進行方向に、且つ/又はy方向に、即ち進行方向4に対して垂直方向に、設けることができる。後者の場合、プリントヘッド機構5をプリント部材3又は支持装置の全幅にわたって拡がるように設計することは必要でない。更に、記載された装置1のすべての構成要素を設ける必要もない。例えば、ノズル洗滌装置14又はクリーニング装置15又はセンサ16,18などを省略できる。
【0045】
4個より多くのプリントヘッド6又はプリントヘッド機構5を設けて、例えば、4個より多くの基本カラー、即ち4個より多くのプロセスカラーインクを処理するようにすることも可能である。例えば、5,6,7又は8個のプリントヘッド要素を図示のように進行方向4に配置することができる。
【0046】
更に、図1のインクジェットプリンタ装置1の個々のパーツを合体させることもできる、例えば画像コンピュータ11と制御装置12とを組合せて一つの構成要素に形成できる。
【0047】
また、ノズル列を進行方向4に対して斜めに配置することも、好ましいが、絶対に必要ではない。
【0048】
更に、適当な数のノズルを配置することによって記載されたものより高い分解能を達成することもできる。同様に、記載されたものと異なる圧電インクジェット・プリントヘッドを用いることもできる、例えばいわゆるバルブジェット駆動、静電、熱、音響駆動などをインク滴の配送に用いることができる。
【0049】
本発明によれば、この方法によって、セラミック要素又はガラス上に、担体流体を含む異なる色の原色セラミック・プロセスカラーインクをそのセラミック要素又はガラスの表面の少なくとも一部に滴状に付与することが可能であり、混色は少なくとも二つの原色プロセスカラーインクを相互に重ねて印刷し、その後、付与されたインク滴、プリント層又はカラー層を焼成することによって形成される。
【0050】
本発明の意味における“プロセスカラーインク”(“process color ink”)という用語は、可視スペクトルの一部をカバーするカラーインクを含み、可視スペクトルの残りの部分又は後者の少なくとも一部はいくつかの、即ち少なくとも二つのプロセスカラーインクを基板に付与し、その後で混合して形成される。これは原色、例えばシアン、マジェンタ、及びブラックなどの原色のシステムであり、追加のその他の原色、例えばホワイトも使用できる。本発明の範囲内で、混色のトーンは、混色を生成するために複数の原色を事前に混合し、その後に混合されたカラーをセラミック要素又はガラスに付与することによっては形成されない。
【0051】
セラミック面又はガラス面への印刷は、いろいろな異なる理由によって行われる。第一に、その理由は純粋に審美的なものであることがあり、例えば、表面にモチーフを印刷することもあり、表面に写真を転写することもある。第二に、機能的表面を形成することもあり、例えばガラス表面に入射する日光に対する防護層を設けてガラスの背後の加熱を防ぐこともある。特に、このようなセラミック要素又はガラス要素は建物の前面を構成するために使用される。しかし、本発明の範囲内で別の利用も可能である。また、プリント部材3,即ちセラミック要素又はガラス、が平面であることは絶対的に必要ではない。本発明による方法で曲面も同様に印刷できる。
【0052】
セラミック面やガラス面を印刷するための以前の方法では、特にインクジェット・プリンタを用いる場合、付与されたカラー滴が基板の平滑面のために印刷後流れ落ちて高品質画像を形成することが難しいという問題がある。これを防ぐために、本発明の範囲内で、少なくとも一つの(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤と、必要なら少なくとも一つの光開始剤を原色セラミック・プロセスカラーインクに加えることができる。別のカラーインク滴を前記カラーインク滴上に付与する前に、最初のカラーインク滴を少なくとも部分的に硬化させる。あるいはまた、それに加えて、プロセスカラーインクのインク滴の付与の後、プロセスカラーインクの別のインク滴を最初のインク滴の上に付与して混色を生成する前に、既に付与されたインク滴の粘度を高めて、それによってセラミック要素又はガラスの平滑面に付与された後のインク滴の流れ落ちを防ぐことが可能である。
【0053】
セラミック・プロセスカラーインクは、(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤の他に、従来技術に対応する別の添加剤を含む。通常、後者は、無機顔料、例えばクロム、鉄、銅、コバルト、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、クロメートなどの金属酸化物、分散剤、例えば(ポリ)エチレン・グリコールとそれから誘導された化合物、(ポリ)プロピレン・グリコールとそれから誘導された化合物、グリセリンとそれから誘導された化合物、脂肪酸エステル、など、及びいろいろな補助物質、例えば粘度調整剤、泡消し剤、表面活性剤、及びインクジェット・プロセスでの滴の形を制御する添加物、などの混合物から成る。更に、長鎖炭化水素(例えば、オクタコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘネイコサン、ペンタデカン、デカン、など)、アルコール(例えば、プロパン・ジオール、など)、及びその他の有機化合物(例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ブタノン、など)も担体流体の一部にすることができる。無機顔料の比率は、5 重量%から40 重量%までの範囲から選択することができ、分散剤及び追加の担体流体の比率は、30 重量%から90 重量%までの範囲から選択することができる。
【0054】
好ましくは、粒径が550nm未満、特に400nm未満の無機顔料が処理される。場合によっては、粒径が1,000nmから2,000nmまでのもっと大きな無機顔料が、もっと激しい粉砕のために顔料の色彩性質が弱められる場合に、使用される。
【0055】
仕上げ印刷面を形成し且つ“ガラス板”を実質的に形成するためにプロセスカラーインクを焼成した後、前記プロセスカラーインクはまたいわゆる“ガラス原料”(“frit”)を含み、このガラス原料は、例えば、シリコン、亜鉛、ビスマス、鉛、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、カリウム、硼素、リチウム、カルシウム、アルミニウム、錫、バナジウム、マグネシウム、などを含む群の酸化物、又はそれらの混合物である。プロセスカラーインクにおけるガラス原料の比率は、そのプロセスカラーインクにおける固体の比率に対して下限が5 重量%で上限が80 重量%である範囲から選択することができる。
【0056】
同様に、機能化されたガラス原料、即ち、例えばシリコン、亜鉛、ビスマス、鉛、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、カリウム、硼素、リチウム、カルシウム、アルミニウム、錫、バナジウム、マグネシウム、などを含む群の酸化物、又はそれらの混合物であって、その表面に(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な機能性を備えているもの、を使用できる。
【0057】
(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤を加えることによって、それぞれのインク滴を添加剤分子の鎖の延長によって固定することができる。この場合、添加剤それ自体はモノマーの形、又はダイマー(二量体)又はトリマー(三量体)の形であってもよく、後者の場合は大きな鎖長がより短い時間で達成できるので固定が急速に行われる。しかし、インクジェット・プリンタで処理するためにはインクの粘度は高すぎてはならない。
【0058】
しかし、それぞれのプロセスカラーインクに少なくとも一つの光開始剤又は光開始剤の混合物を加えるために、セラミック要素又はガラスにインク滴を固定する時間を短縮することも可能である。光開始剤の例は、種々の異なるフェノン(例えば、種々のアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル・プロピオフェノン、種々のベンゾフェノン、など)、Irgacure(登録商標)、種々のベンゾイン、等が従来技術で知られており、多数の供給業者(例えば、Sigma-Aldrich)から入手できる。
【0059】
選択的に、熱的開始剤又はその混合物を加えて同じ効果を得ることも可能である。IR開始剤の例は、アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、t-ブチル・ヒドロペルオキシド、m-クロロ過安息香酸、ジベンゾイル・ペルオキシド、ジ-t-ブチル・ペルオキシド、など、従来技術で知られており、供給業者(例えば、Sigma-Aldrich)から入手できる。
【0060】
添加剤又は少なくとも添加剤の一部の連鎖延長反応の開始は−―添加剤は完全に(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤から構成される必要はない、例えば添加剤の30 重量%から90 重量%の比率が(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤によって構成される――例えば電磁放射による励起によって行われる。特に、励起はUV(紫外)光によって行われるが、その他の光源、例えばIR(赤外)ランプ、レーザー、あるいは理論的には、電子線や放射線もあり得る。あとの二つの方法は本発明の範囲内では好ましい実施形態ではない。それらの放射は、インクジェット・プリンタの分野で扱うには問題がある。UV光開始剤の例は、種々のフェノン(例えば、種々のアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル・プロピオフェノン、種々のベンゾフェノン、など)、Irgacure(登録商標)、種々のベンゾイン、など、従来技術でも知られているものである。IR開始剤の例は、アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、t-ブチル・ヒドロペルオキシド、m-クロロ過安息香酸、ジベンゾイル・ペルオキシド、ジ-t-ブチル・ペルオキシド、など、やはり従来技術で知られているものである。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、電磁放射は図3に示されるように供給される。各プリントヘッドは、複数の配送要素29を、例えばノズル形態で含む。インク滴に電磁放射を導入するために、好ましくは光源30を各配送要素29に付設し、好ましくは光源30の下端が配送要素29の出口開口の方向を指すようにする。このような光源は、特に光導体で形成され、それが例えばUV光を放射する一次光源に接続される。
【0062】
しかし、他の光源30を使用することも可能である。例えば、対応するダイオードを好ましくは出口要素29の出口開口のすぐ近くに配置して使用できる。必要ならば、いくつかの出口要素29を合体させて共通の光源30を有するようにしてもよい。更に、本発明による方法がシングルパスによって、即ちプリントヘッド6の下に印刷される基板を一回通過させる形で、行われない場合、走査モードで実行することが可能である、即ち進行方向4に対して垂直方向に移動できるプリントヘッド6により実行され、光源30も同方向に対して直角に動かしてプリントヘッド6に追従させる。
【0063】
本発明の範囲内で、添加剤の分子のオリゴマー化又はポリマー化が他の反応誘発因子によって、例えば添加剤と環境雰囲気、特に水分との反応によって(例えばゾル−ゲル反応などによって)行われることもあり得る。同様に、本発明の範囲内で、添加剤の分子が既に光開始剤の基を含むこともあり得る。
【0064】
既述したように、基板表面にインク滴を固定するために、インク滴の粘度を増加した後に異なる色の別のインク滴を付与して、インク滴による混色を生成することが可能である。更に、各プリントヘッド6又は各プリントヘッド列26に加熱装置31を付設して、図2の鎖線に示されているように進行方向4において下流に設置して温度上昇によって担体流体の部分的な減衰(damping)を達成することが可能である。即ち、この加熱装置31は二つのプリントヘッド6又はプリントヘッド列26間に設置される−ただし、進行方向4における最後のプリントヘッド6又は最後のプリントヘッド列26を除く。しかし、図3に示されているように、この加熱装置31を直接配送要素29に付設して、各配送要素29又は配送要素29の群がこのような加熱装置31を有するようにすることも可能である。加熱装置31は熱放射又は暖かい空気を放出するように設計される。その例は、赤外ランプ、電熱装置等である。しかし、本発明の範囲内で、インク滴の粘度の上昇が空気乾燥によって、例えば空気ジェットをインクイ滴に吹き付けて担体流体の一部を蒸発させることによって行われ得る。この場合、加熱装置31は省略できる。
【0065】
当然ながら、本発明の範囲内で、加熱装置31と光源30の組み合わせを含み、そのようにしてプリントヘッド機構5に両要素を装備することも可能である。必要ならば、例えばオリゴマー化又はポリマー化が熱によって又は温度上昇によって誘発され別の光源30を省略できる場合、又は光源30が同時に、例えば赤外放射の形で熱を放出する場合、加熱装置31を光源30に合体させることが可能である。
【0066】
本発明のすべての実施形態において、インク滴がそれほど固定されず、粘度はインク滴が完全には硬化しない程度に増加する。インク滴はある程度の流動性を残し、異なる色が相互に重ねられて印刷されたインク滴の混合が焼成の前に可能でなければならない。焼成は通常400℃から700℃の間の温度範囲で行われ、それによってより均一な混色が生成される利点が得られる。更に、本発明の範囲内で、(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤は、最大で90%まで、又は前述の最大範囲までオリゴマー化又はポリマー化される。しかし、次のインク滴が前のインク滴の上に付与される前に、インク滴の担体流体の全比率に対して最大20%の比率の担体流体だけしか除去されないこともあり得る。ここでは、前述の好ましい比率を参照されたい。
【0067】
担体流体自身が少なくとも部分的にオリゴマー化又はポリマー化可能な添加剤となることも可能である。そのような担体流体の例は、ポリプロピレン・グリコール・ジアクリレート、エポキシ官能化プロピレン又はエチレン・グリコール、エポキシ又はアクリル基を有する長鎖炭化水素、などである。
【0068】
別の実施形態では、原色プロセスカラーインクが異なる担体流体を含み、それらの担体流体の沸点が異なっている場合がある。この場合、いくつかの担体流体のうちで最も沸点が高い担体流体が進行方向4に見て最初のセラミック・プロセスカラーインクに添加され、その後のセラミック・プロセスカラーインクがそれぞれ、沸点が順次低くなる担体流体を含むようにすることが有利である。このようにして、担体流体が異なる温度で蒸発する、又は最初に付与されるインク滴の担体流体の比率が長時間にわたって、即ち進行方向4に見て長距離にわたって保持され、それによりその上に付与される付加的インク滴との混合が効果的に行われる。進行方向4に見た距離全体にわたって、最初のインク滴はいくつかの加熱装置31を順次通過し、そのインク滴の担体流体の比率は漸次減少する。好ましくは、担体流体の減少が全体に進行して、印刷プロセスが完了したときにはそれぞれのインク滴の担体流体の比率が低くなっており、その後の焼成プロセスでは気泡の発生がないか、又は発生が最小限であって、気泡の形成が焼成プロセス事態を乱すことなく、従って空気はプリント層に含まれない。
【0069】
担体流体が流体の混合物から成ることも可能である、例えば、(ポリ)エチレン・グリコール、(ポリ)プロピレン・グリコール、グリセリン、長鎖及び短鎖炭化水素、アルコール(プロパノール、ブタノール、ペンタノール、プロパン・ジオール、エタン・ジオール、など)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ブタノン、酢酸エステル、脂肪酸エステル、フェノキシプロパノールなど、異なる沸点を有する流体の混合物から成り、それらが順次同じ効果を達成することも可能である。
【0070】
好ましくは、それぞれの原色セラミック・プロセスカラーインクにおける(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤の全比率は、下限が5重量%で上限が70重量%である範囲(単数又は複数)から選択される。それぞれの原色セラミック・プロセスカラーインクにおける光開始剤の全比率は、下限が0.5重量%で上限が20重量%である範囲、又は上記範囲から選択できる。
【0071】
原色セラミック・プロセスカラーインクにおける担体流体の比率は下限が30重量%で上限が90重量%である範囲、又は上記範囲から選択できる。
【0072】
複数の原色セラミック・プロセスカラーインクが異なる比率の担体流体を有する場合、担体流体の差は、高い比率の担体流体を有するプロセスカラーインクに対して5%から60%間であってよい。
【0073】
本発明の範囲内で、それぞれのカラー層即ちそれぞれのインク滴が粘度に関して表面でのみ変化することで全く十分であり、それによってそれぞれの基板上でのインク滴の十分な固定が達成できる。このようにして、インク滴の全最大直径に対して10%から60%の層厚の表面領域の粘度が変化することができる。
【0074】
焼成プロセス時に有機成分はすでに知られているように蒸発し、それぞれのインク滴が最終的に硬化する。
【0075】
このように、本発明による方法によれば、インク滴の印刷時にインク滴によって形成される各付与カラー層の制御された乾燥が、印刷の直後で続くカラーが印刷される前に行われ、全表面がカラーで印刷された後にのみ行われるのではない。
【0076】
担体流体の量は、段階的な蒸発と蒸発の速度及びそれによって生ずる気体の除去を意味し、―対応する吸引装置を装置1に設けることができる―その後の焼成プロセスで、残留蒸発担体物質の蒸発が焼成プロセスの熱によってあまりにも急速に進行するために生ずる気泡の発生を防止するように特に規定される。更に、すでに述べたようにガラス上の担体流体の量及び散逸の時間又は焼成温度は、例えば400℃から700℃間での温度に調整できる。プロセスカラーインクの有機成分が気泡を形成することなく蒸発し、セラミック表面又はガラスに付与された構造、付与されたパタン又は画像などは溶融しても、そのデザインは変化することなく残るように、特に、焼成プロセスはコントロールされる。
【0077】
担体流体自身は上述のようにアルコールであってよい。
【0078】
以下に、本発明によるプロセスカラーインクのいくつかの好ましい実施例が記載される。本発明に係るデザイン例としては、多数の可能性があるが、ここではいくつかの例だけをあげる。さもないと、この明細書の記載の範囲を超えてしまうからである。個々の構成要素の比率は上の説明に対応する。
【0079】
例示実施形態は若干の形態しか示していないが、本発明は個々に示された実施形態に限定されることなく、個々の実施形態の色々の異なる組み合わせが可能である。それらの変形は、本発明の教示と技術的な手順から当業者の能力の範囲内にある。
【0080】
実施例1:
黒の焼成可能なプロセスカラーインクであって、担体流体ポリプロピレン・グリコール・ジアクリレート、高分子ポリエチレン・グリコール、及び1,2-プロパン・ジオール、顔料CoCr2O4、CuCr2O4、及びCo3O4、及びガラス原料物質Bi2O3、粘度調整剤、及び光開始剤Irgacure819(登録商標)、から成るものが、上述の方法でガラス上に印刷され、且つUV光で固定された。付与され、且つ予備固定されたプロセスカラーインクは700℃の温度で焼成された。
【0081】
実施例2:
黒の焼成可能なプロセスカラーインクであって、担体流体ポリプロピレン・グリコール・ジアクリレート、高分子ポリエチレン・グリコール、及び1,2-プロパン・ジオール、顔料CoCr2O4、CuCr2O4、及びCo3O4、及びガラス原料物質Bi2O3、粘度調整剤、及び熱開始剤1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、から成るものが、上述の方法でガラス上に印刷され、且つIR要素によって固定された。付与され、且つ予備固定されたプロセスカラーインクは650℃から700℃までの温度で焼成された。
【0082】
実施例3:
青の焼成可能なプロセスカラーインクであって、担体流体ポリプロピレン・グリコール・ジアクリレート、エポキシ官能化ポリエチレン・グリコール、及びヘキサン・ジオール、顔料CoCr2O4、及びアクリレート官能基を有するガラス原料物質(ガラス原料物質のシラン化によって得られる)、粘度調整剤、及びUV開始剤2-ヒドロキシ-2-メチル・プロピオフェノン、から成るものが、上述の方法でガラス及びセラミック要素に印刷され、且つUV放射装置で固定された。付与され、且つ予備固定されたプロセスカラーインクは650℃から700℃までの温度で焼成された。
【0083】
実施例4:
黒の焼成可能なプロセスカラーインクであって、担体流体ポリプロピレン・グリコール・ジアクリレート、高分子ポリエチレン・グリコール、シクロヘキサン、ブタノン及びいろいろな炭化水素の混合物、顔料Fe3O4、及びFeCr2O4、ガラス原料物質Bi2O3、粘度調整剤、及び光開始剤Irgacure819(登録商標)、から成るものが、上述の方法でガラスに印刷され、且つ熱処理とUV光を組み合わせて固定された。付与され、且つ予備固定されたプロセスカラーインクは700℃の温度で焼成された。
【0084】
例示的な実施形態により装置1の可能な実施形態の変形を示したが、本発明は示されている個々の実施形態に限定されることはなく、個々の実施形態の異なる組み合わせも可能であり、それらの変形は技術的手順についての教示から当業者の能力の範囲内にある。
【0085】
最後に、形式的な点であるが、装置1の構造をより良く理解できるように装置1とその構成要素は一部分正しいスケールで表されず且つ/又は拡大且つ/又は縮小サイズになっている。
【符号の説明】
【0086】
1 装置
2 輸送装置
3 プリント部材
4 進行方向
5 プリントヘッド機構
6 プリントヘッド
7 コンベヤ・ベルト
8 ガイドローラー
9 ガイドプレート
10 ガイド
11 画像コンピュータ
12 制御装置
13 タンク
14 ノズル洗滌装置
15 クリーニング装置
16 センサ
17 上側
18 センサ
19 前縁
20 装置
21 カメラ
22 ノズル列
23 ノズル列長
24 印刷領域の幅
25 プリントヘッド・モジュール
26 プリントヘッド列
27 印刷領域の幅
28 印刷領域の長さ
29 配送要素
30 光源
31 加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体流体を含む異なる色の原色セラミック・プロセスカラーインクをセラミック要素又はガラスの表面の少なくとも一部分上に滴状付与することによりセラミック要素又はガラスに多色面を形成する方法であって、少なくとも二つの原色プロセスカラーインクを上下に重ねて印刷し、続いて付与されたインク滴を焼成して混色を生成し、少なくとも一つの(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤及び必要により少なくとも一つの光開始剤を原色セラミック・プロセスカラーインクに添加し、最初のインク滴の上に追加のインク滴を印刷する前に最初のインク滴を少なくとも部分的に硬化し、且つ/又は、所定プロセスカラーインクのインク滴を付与した後で、別のプロセスカラーインクのインク滴を先に付与したインク滴の上に付与する前に、先に付与したインク滴の粘度を増加することを特徴とする方法。
【請求項2】
インク滴の(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤は、その上に別のインク滴を付与する前に部分的にしかオリゴマー化又はポリマー化されない請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤は最大限90%までオリゴマー化又はポリマー化される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
先に付与したインク滴の上に別のインク滴を付与する前に、先に付与したインク滴の担体流体の全比率に対して最大で20%の比率の担体流体を除去する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
オリゴマー化又はポリマー化可能な担体流体を使用し、前記担体流体をインク滴の付与後にインク滴内でオリゴマー化又はポリマー化する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
いくつかの配送要素(29)が原色セラミック・プロセスカラーインクのそれぞれに対してセラミック要素又はガラスの進行方向(4)に見て相互に前後に配置された印刷装置によってセラミック要素又はガラスをシングルパスで印刷し、追加インク滴が同じスポットに付与される前に最初に付与されたインク滴から原色セラミック・プロセスカラーインクの担体流体を、部分的に除去する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも二つの原色セラミック・プロセスカラーインクのそれぞれに担体流体が使用され、前記担体流体を異なる温度で蒸発させる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
沸点の異なる流体の混合物から成る担体流体が使用される請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
セラミック要素又はガラスがインクジェット・プリンタによって印刷される請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
いくつかの異なる色の原色セラミック・プロセスカラーインクを含み、少なくとも二つの原色セラミック・プロセスカラーインクを相互に重ねて印刷することにより混色を生成できる印刷インクシステムであって、原色セラミック・プロセスカラーインクの各々は少なくとも一つの無機顔料、ガラス原料、分散剤、及び特に有機担体流体を含み、原色セラミック・プロセスカラーインクの各々は少なくとも一つの(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤と、可能であれば少なくとも一つの光開始剤を含むことを特徴とする印刷インクシステム。
【請求項11】
それぞれの原色セラミック・プロセスカラーインクにおける(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤の全比率は下限が5 重量%から上限が70 重量%の範囲から選択される請求項10に記載の印刷インクシステム。
【請求項12】
それぞれの原色セラミック・プロセスカラーインクにおける光開始剤の全比率は下限が0.5 重量%から上限が20 重量%の範囲から選択される請求項10又は11に記載の印刷インクシステム。
【請求項13】
少なくとも二つの原色セラミック・プロセスカラーインクの担体流体は相互に異なる沸点を有する請求項10乃至12のいずれか1項に記載の印刷インクシステム。
【請求項14】
原色セラミック・プロセスカラーインクの担体流体が異なる沸点の流体の混合物から成る請求項10乃至13のいずれか1項に記載の印刷インクシステム。
【請求項15】
原色セラミック・プロセスカラーインクの担体流体の比率は下限が30 重量%から上限が90 重量%の範囲から選択される請求項10乃至14のいずれか1項に記載の印刷インクシステム。
【請求項16】
原色セラミック・プロセスカラーインクの少なくとも二つが異なる比率の担体流体を含む請求項10乃至15のいずれか1項に記載の印刷インクシステム。
【請求項17】
前記担体流体の少なくとも一部分が(光)オリゴマー化又は(光)ポリマー化可能な添加剤を形成する請求項10乃至16のいずれか1項に記載の印刷インクシステム。
【請求項18】
異なる色の原色セラミック・プロセスカラーインクをセラミック要素又はガラスの表面の少なくとも一部分上に滴状付与することにより多色面をセラミック要素又はガラス上に形成し、少なくとも二つの原色プロセスカラーインクを相互に重ねて印刷した後に付与されたインク滴を焼成して混色を生成する装置(1)であって、前記プロセスカラーインクのためのいくつかの配送要素(29)と、前記プロセスカラーインクの付与時にセラミック要素又はガラスを支持する支持装置を含み、前記配送要素又は配送要素(29)の群上に又はそれに隣接して光源(30)が配置され、且つ/又は、配送要素(29)がいくつかのプリントヘッド(6)に配置され、且つ加熱装置(31)が前記プリントヘッド(6)間に配置される装置。
【請求項19】
前記装置がインクジェット・プリンタである請求項18に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−219357(P2011−219357A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−86416(P2011−86416)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(510326706)ドゥルスト フォトテヒニク デジタル テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】