説明

ガラス基板の製造方法及びその方法に用いられるキャリアの反り方向検出装置

【課題】研磨後の板厚のばらつきを低減可能なガラス基板の製造方法及びその方法に用いられる反り方向検出装置を提供する。
【解決手段】磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、複数のキャリア14のそれぞれの反り方向を特定する反り方向特定工程と、複数のキャリア14の反り方向を揃えてサンギヤ13とリングギヤ12間に複数のキャリア14を配置するキャリア配置工程と、複数のキャリア14の反り方向を揃えた状態で複数のガラス基板Gを研磨する研磨工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の製造方法及びその方法に用いられるキャリアの反り方向検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ガラス基板は、従来の用途を越えて種々の産業分野において用いられ、例えば、種々の電子デバイスにおいては、用途に応じたガラス基板が用いられている。
【0003】
例えば、パーソナルコンピュータ(PC)などには、外部記憶装置としてハードディスクドライブ(HDD)などが設けられている。通常、このハードディスクドライブには、コンピュータ用ストレージなどとして知られた磁気ディスクが搭載されている。この磁気ディスクは、例えばアルミニウム系合金基板などのような適宜の基板上に、磁性層等が成膜された構成のものである。
【0004】
近年、磁気ディスク用の基板には、脆弱な金属基板に代わって、高強度、かつ、高剛性な材料であるガラス基板が多用されてきている。また、サーバー用途としての磁気ディスク用基板としてガラス基板が注目されてきている。
【0005】
このようなガラス基板を製造するための研磨装置として、両面研磨装置が知られている(例えば特許文献1参照。)。両面研磨装置は、それぞれ所定の回転比率で回転駆動されるリングギヤとサンギヤを有するキャリア装着部と、このキャリア装着部を挟んで互いに逆回転駆動される金属製の上定盤及び下定盤と、を有して構成され、キャリア装着部には、リングギヤ及びサンギヤと噛合する複数のキャリアが装着されている。このキャリアは自らの中心を軸に自転し、かつサンギヤを軸に公転する遊星歯車運動し、この遊星歯車運動によりキャリアに装着された複数のガラス基板の両面が上定盤及び下定盤との摩擦で研磨される。
【0006】
この両面研磨装置では、上下定盤に研磨パッドが張られており、上定盤側からスラリー供給しながら各キャリアに装着された複数のガラス基板の両面を研磨している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−103061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような両面研磨装置で同時に研磨した複数のガラス基板の板厚を調べてみると、板厚にばらつきが生じる場合があることがわかった。
【0009】
そこで、本発明は、上記した事情に鑑み、研磨後の板厚のばらつきを低減可能なガラス基板の製造方法及びその方法に用いられる反り方向検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の態様を提供するものである。
(1)サンギヤとリングギヤ間で遊星歯車運動を行なう複数のキャリアのそれぞれに複数のガラス基板を装着し、各キャリアに装着された複数のガラス基板を上定盤と下定盤間に挟んでスラリーを供給しながら研磨する工程を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、当該工程が、
前記複数のキャリアのそれぞれの反り方向を特定する反り方向特定工程と、
前記複数のキャリアの反り方向を揃えて前記サンギヤとリングギヤ間に前記複数のキャリアを配置するキャリア配置工程と、
前記複数のキャリアの反り方向を揃えた状態で前記複数のガラス基板を研磨する研磨工程と、
を備えることを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
(2)前記キャリア配置工程では、前記スラリーが供給される側に前記キャリアの凸側を合わせて前記複数のキャリアを配置することを特徴とする(1)に記載の磁気ディスク用ガラス基板の研磨方法。
(3)上記(1)又は(2)に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造に用いられるキャリアの反り方向を特定する反り方向検出装置。
(4)サンギヤとリングギヤ間で遊星歯車運動を行なう複数のキャリアのそれぞれに複数のガラス基板を装着し、各キャリアに装着された複数のガラス基板を上定盤と下定盤間に挟んでスラリーを供給しながら研磨する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法で使用されるキャリアの反り方向を検出する反り方向検出装置であって、
前記キャリアを支持する支持部と、
前記キャリアに対向するように配置され、前記キャリアとの距離を測定するセンサと、を備え、
前記キャリアの中心を通り前記キャリアの一端部から他端部まで延びる少なくとも2以上の直線において、それぞれの直線の一端部と他端部と両端部間に位置する少なくとも1点以上の点から前記キャリアの反りを検出することを特徴とする反り方向検出装置。
【0011】
本発明者は、複数のガラス基板を同じ条件で同時に研磨を行ったにも拘らず、あるキャリアに装着されたガラス基板はよく削れるのに対し、他のキャリアに装着されたガラス基板はあまり削れておらず、研磨後のガラス基板に板厚の差が生じる、すなわち研磨後の板厚にばらつきが生じることを突き止めた。さらに本発明者はガラス基板が装着されるキャリアによってガラス基板がよく削れたりあまり削れなかったりする原因について調査、研究した結果、キャリアの反り方向によってガラス基板の研磨レートは異なり、キャリアの反り方向が揃っていないときにはそのためにガラス基板に板厚の差が生じることを見出し、本発明に至った。
【0012】
なお、本発明において、「キャリアの反り方向」は、キャリアの一方側の面を上面、他方側の面を下面としたときに、凸となっている面が上面のときには反り方向を上とし、凸になっている面が下面のときには反り方向を下とする。また、「キャリアの凸側」とは、キャリアの反り方向が上のときはキャリアの上面側であり、キャリアの反り方向が下のときはキャリアの下面側である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、キャリアの反り方向を特定し、反り方向を揃えてキャリアをサンギヤとリングギヤ間に配置することで、研磨後の複数のガラス基板の板厚のばらつきを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る両面研磨装置の正面図である。
【図2】図1の両面研磨装置のキャリア装着部の一部を切り欠いて示すキャリア装着部の斜視図である。
【図3】(a)は両面研磨装置を用いて研磨したガラス基板のバッチ数に対する研磨レートと板厚偏差を示すグラフであり、(b)は2バッチ目の各キャリアから1枚ずつ取り出したガラス基板の板厚を示すグラフであり、(c)は11バッチ目の各キャリアから1枚ずつ取り出したガラス基板の板厚を示すグラフである。
【図4】(a)は反り方向検出装置を概略的に示す斜視図であり、(b)は(a)の反り方向検出装置を説明するために側面から見た概略図である。
【図5】(a)はキャリアの測定位置を示す図であり、(b)は11バッチ目の板厚が最小値を示したキャリア(Carrier Number2)の反りを示すグラフであり、(c)は11バッチ目の板厚が最大値を示したキャリア(Carrier Number4)の反りを示すグラフである。
【図6】11バッチ目に使用した各キャリアの上面と下面の写真である。
【図7】(a)は上面が凸となるようにキャリアを配置した場合の上下定盤間でのキャリア位置を示す模式図であり、(b)は下面が凸となるようにキャリアを配置した場合の上下定盤間でのキャリア位置を示す模式図である。
【図8】(a)は上面が凸となるように全てのキャリアの反り方向を揃えて配置した際の上下定盤の負荷を示すものであり、(b)は下面が凸となるように全てのキャリアの反り方向を揃えて配置した際の上下定盤の負荷を示すものである。
【図9】上下定盤間でのキャリア位置とスラリーとの関係を示す模式図である。
【図10】(A)は上面が凸のキャリアと下面が凸のキャリアを混在させて研磨した際の各キャリアから1枚ずつ取り出したガラス基板の板厚を示すグラフであり、(B)は下面が凸となるように全てのキャリアの反り方向を揃えて配置して研磨した際の各キャリアから1枚ずつ取り出したガラス基板の板厚を示すグラフであり、(C)は上面が凸となるように全てキャリアの反り方向を揃えて配置して研磨した際の各キャリアから1枚ずつ取り出したガラス基板の板厚を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本発明のガラス基板の製造方法に使用される両面研磨装置について、図1及び図2を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
両面研磨装置10は、それぞれ所定の回転比率で回転駆動されるリングギヤ12とサンギヤ13を有するキャリア装着部11と、このキャリア装着部11を鉛直方向から挟んで互いに逆回転駆動される上定盤21及び下定盤22と、を備えて構成され、キャリア装着部11には、リングギヤ12及びサンギヤ13と噛合する複数のキャリア14が装着されている。このキャリア14は、ガラス基板Gを保持する複数のガラス基板配置14aを有しており、サンギヤ13とリングギヤ12が回転駆動することにより、自らの中心を軸に自転し且つサンギヤ13を軸に公転する遊星歯車運動する。
【0017】
上下定盤21、22には、それぞれ研磨パッド21a、22aが取り付けられており、上定盤21側から上下定盤21、22間に複数のチューブ23を介して砥粒を含むスラリーが供給される。そして、キャリア14の遊星歯車運動により、キャリア14に保持された複数のガラス基板Gの両面が上定盤21及び下定盤22との摩擦で同時に研磨される。
【0018】
なお、本実施形態では、キャリア装着部11に5つのキャリア14が装着され且つ各キャリア14には5枚のガラス基板Gを装着できるようにガラス基板配置穴14aが5つ設けられている。従って、両面研磨装置10では、1回の処理(1バッチ)で同時に25枚のガラス基板Gを研磨することが可能となっている。以下に説明する測定等は、この両面研磨装置10を用いて測定を行なったが、キャリアの数や径寸法、キャリアに装着されるガラス基板の数等は任意に設定することができる。
【0019】
図3(a)は、両面研磨装置10を用いて研磨したガラス基板のバッチ数(Batch Number)に対する研磨レート(Removal Rate)と板厚偏差(Thickness range)を示すグラフである。
図中、□が板厚偏差、○が研磨レートを示している。板厚偏差は、5枚のキャリアからそれぞれ1枚ずつ研磨後のガラス基板Gを取り出して板厚を測定し、その最大値と最小値との差を算出した値である。また、研磨レートは、研磨時間と取り出した5枚の板厚の変化の平均値とから算出した値である。なお、測定は、4バッチ毎に研磨パッドを洗浄しており、洗浄直後の研磨レートが高く、洗浄してからバッチ数を重ねる毎に次第に研磨レートが低くなっている。
【0020】
図3(a)の1バッチ目から16バッチ目までの結果を見ると、2バッチ目で板厚偏差が最小となっており、13バッチ目で板厚偏差が最大となっている。図3(b)は、板厚偏差が最小であった2バッチ目の各キャリアから1枚ずつ取り出したガラス基板Gの板厚(Disk thickness)を示している。これらは全て668μm〜669μm内に位置しており、板厚偏差が1μm以下であり良好な結果を示していた。
【0021】
図3(c)は、比較的板厚偏差の大きかった11バッチ目の各キャリアから1枚ずつ取り出したガラス基板Gの板厚を示している。これらのキャリアのうち1番から3番のキャリア(Carrier Number 1〜3)はよく削れており、これに対し4番と5番のキャリア(Carrier Number 4,5)はあまり削れていないことが分かる。2番のキャリア(Carrier Number2)に装着したガラス基板Gの板厚が約665μmであったのに対し、4番のキャリア(Carrier Number 4)に装着したガラス基板Gの板厚が約668μmであり、板厚偏差が約3μmと好ましくない結果を示していた。
【0022】
ここで、11バッチ目の板厚が最小値を示した2番のキャリア(Carrier Number2)と板厚が最大値を示した4番のキャリア(Carrier Number 4)の反りを以下に説明する反り方向検出装置30を用いて測定するとともに、11バッチ目に使用した各キャリア(Carrier Number1〜5)の外観を目視で観察した。
【0023】
反り方向検出装置30は、図4(a)及び(b)に示すように、平行に延びる一対の基台31上に、基台31から鉛直方向に延びるセンサ支持部32とキャリア支持部33が水平方向に間隔をあけて対向配置される。センサ支持部32には鉛直方向に移動可能にセンサ34が設けられ、キャリア支持部33には、上方にキャリア14を吊り下げるフック35が設けられ、下方にキャリア14をセンサ支持部32側にキャリア14を押圧する押圧部36が設けられている。
【0024】
そして、フック35をキャリア14の中心孔14bに係合させてキャリア14を吊り下げ、押圧部36でキャリア14の下方をセンサ支持部32側に押圧することで、キャリア14は鉛直方向から僅かにセンサ支持部32に対して後傾した姿勢で支持される。キャリア支持部33に支持されたキャリア14は、センサ34でセンサ34からキャリア14までの距離が測定される。
【0025】
今回の測定では、図5(a)に示すように、ガラス基板Gが配置されるガラス基板配置穴14aの中心O1且つキャリア14の中心O2を通る線上の4箇所で距離を測定し、それを5つのガラス基板配置穴14aのそれぞれについて測定した((I)〜(V))。測定された4箇所のうち、1箇所はガラス基板配置穴14aの外側(一端部)で他の1箇所はガラス基板配置穴14aの内側であり、残りの2箇所は、その測定した2箇所に対しキャリア14の中心O2から略点対称となる箇所とした。このように測定されたセンサ34とキャリア14間距離は、センサ34に接続されたコンピュータ37により外側の2箇所(両端部)を基準として、内側の2箇所の反り量を算出した。
【0026】
図5(b)と図5(c)は、それぞれ11バッチ目の板厚が最小値を示した2番のキャリア(Carrier Number2)と11バッチ目の板厚が最大値を示した4番のキャリア(Carrier Number 4)の反りを示すグラフである。横軸がキャリアの位置であり、縦軸が両端部を基準とした反り量を示している。
【0027】
図5(b)から、2番のキャリア(Carrier Number2)は、全体として上面が凸形状となっていることが分かる。また、図5(c)から、4番のキャリア(Carrier Number 4)は、(IV)の線を中心に下面が凸となる2つ折り形状となっていることが分かる。即ち、11バッチ目の板厚が最小値を示した一番良く削れる2番のキャリア14(Carrier Number2)は、上面が凸となっており、11バッチ目の板厚が最大値を示した一番削れなかった4番のキャリア14(Carrier Number4)は、下面が凸になっていることが確認できた。
【0028】
図6は、11バッチ目に使用した各キャリア(Carrier Number1〜5)の上面(Top)と下面(Bottom)の写真である。なお、上面(Top)はスラリーが供給される側である上定盤21に対抗する面であり、下面(Bottom)は下定盤22に対抗する面である。
【0029】
キャリア14の両面には、研磨前に、それぞれ5つのガラス基板配置穴14aの1つが点線で囲まれており、中央にはキャリア番号(Carrier Number)を示す数字と上面(A)、下面(B)を示すアルファベットがマジックで記載されていたが、研磨後には、良く削れたキャリア14(Carrier Number 1〜3)では、下定盤22側、即ち下面(Bottom)のマジックが消えているのに対し、あまり削れないキャリア14(Carrier Number 4,5)では、上定盤21側、即ち上面(Top)のマジックが消えている。このことから、よく削れるキャリア(Carrier Number 1〜3)では、下定盤22に張り付き、あまり削れないキャリア14(Carrier Number 4,5)では、上定盤21に張り付いているものと推定される。
【0030】
このことを模式的に説明すると、図7(a)に示すように、よく削れるキャリア(Carrier Number 1〜3)では、上面が凸になっているため、スラリーが凸側である上面と上定盤21との間に浸入することで下定盤22に張り付き、あまり削れないキャリア14(Carrier Number 4,5)では、下面が凸となっているため、スラリーが凸側である下面と下定盤22との間に浸入することで上定盤21に張り付いているものと考えられる。
【0031】
このことは、図8に示す、研磨時間(Polishing time)と上下定盤に作用する負荷(Loading factor)との関係から実証される。図8(a)は上面が凸となるように全てのキャリアの反り方向を揃えて配置した際の上下定盤の負荷を示すものであり、図8(b)は下面が凸となるように全てのキャリアの反り方向を揃えて配置した際の上下定盤の負荷を示すものである。負荷は、上下定盤を駆動させているモータのインバータ電流値から求められたものである。
【0032】
図8(a)と図8(b)を比較すると、上定盤21側に対向する上面が凸となるように全てのキャリアの反り方向を揃えて配置した図8(a)では下定盤22側の負荷が高く、下定盤22側に対向する下面が凸となるように全てのキャリアの反り方向を揃えて配置した図8(b)では上定盤21側の負荷が高くなっている。即ち、負荷が高いということは、研磨がより行なわれていることを示しており、よく削れるキャリア(Carrier Number 1〜3)では、下定盤22側に張り付いており、あまり削れないキャリア14(Carrier Number 4,5)では、上定盤21側に張り付いていることが実証された。
【0033】
このように上定盤21に張り付いたものと下定盤22に張り付いたもので、研磨レートに差がでるのは、下定盤22にキャリア14が張り付くと、図9の左側で描かれるように、上定盤21側から供給されるスラリーがキャリア14と上定盤21との間に供給されスラリーが全体に回るのに対し、上定盤21にキャリア14が張り付くと、図9の右側で描かれるように、上定盤21側から供給されるスラリーがキャリア14と上定盤21との間に十分供給されずスラリーが全体に回りづらくなり、このことが研磨レートに影響を与えているものと推測される。
【0034】
これらの測定結果から、キャリア14の凸側をいずれか一方向、即ち上定盤21側か下定盤22側に揃えることで研磨レートがほぼ等しくなり、板厚差が小さくできると考えられる。
【0035】
図10は、(A)が5つのキャリア14のうち3つを凸側を上面とし、残り2つを凸側を下面として配置したものであり、(B)は5つのキャリア14の全てを下面が凸となるようにキャリア14の反り方向を揃えて配置したものであり、(C)は5つのキャリア14の全てを上面が凸となるようにキャリア14の反り方向を揃えて配置したものである。
【0036】
図10(A)から、キャリア14の反り方向が異なっていると、板厚偏差が約3.5μmと大きいことが分かる。これに対し、図10(B)、(C)から、キャリア14の反り方向を同じにすると、板厚偏差が約1μmと小さくなることが分かる。以上より、図10(A)と図10(B)、(C)を比べて明らかなように、発明者らの立てた仮説、両面研磨装置を用いて同時に研磨した複数のガラス基板の板厚の差がキャリアの反りに関連するという仮説が正しいことが実証された。
【0037】
また、図10(B)と図10(C)を比較すると、スラリーが供給される側である上定盤21側を凸となるように全てのキャリアを揃えて配置することで、スラリーが供給される側とは反対側である下定盤22側を凸となるように全てのキャリアを揃えて配置した場合に比べて、早く研磨処理を行うことができることが分かった。なお、負荷を小さくして研磨精度を上げたい場合には、下定盤22側を凸となるように全てのキャリアを揃えて配置してもよい。
【0038】
従って、両面研磨装置10により複数のガラス基板Gを研磨するとき、先ず、それぞれのキャリア14の反り方向を、例えば上述した反り方向検出装置30で検出して、反り方向を特定する(反り方向特定工程)。続いて、複数のキャリア14の反り方向を揃えてサンギヤ13とリングギヤ12間に複数のキャリア14を配置する(キャリア配置工程)。そして、複数のキャリア14の反り方向を揃えた状態で複数のガラス基板Gを研磨する(研磨工程)。これにより、研磨後の複数のガラス基板Gの板厚のばらつきを小さくすることができる。
【0039】
また、スラリーが供給される側(本実施形態では上定盤21側)にキャリア14の凸側を合わせて複数のキャリア14を配置することで、研磨後の複数のガラス基板Gの板厚のばらつきを小さく抑えながら、研磨時間を短縮することができる。
【0040】
また、反り方向検出装置30を用いてキャリア14の反り方向を検出することで簡易にキャリア14の反り方向を特定することができる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得るものである。
【符号の説明】
【0042】
10 両面研磨装置
11 キャリア装着部
12 リングギヤ
13 サンギヤ
14 キャリア
21 上定盤
22 下定盤
30 反り方向検出装置
33 キャリア支持部(支持部)
34 センサ
G ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンギヤとリングギヤ間で遊星歯車運動を行なう複数のキャリアのそれぞれに複数のガラス基板を装着し、各キャリアに装着された複数のガラス基板を上定盤と下定盤間に挟んでスラリーを供給しながら研磨する工程を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、当該工程が、
前記複数のキャリアのそれぞれの反り方向を特定する反り方向特定工程と、
前記複数のキャリアの反り方向を揃えて前記サンギヤとリングギヤ間に前記複数のキャリアを配置するキャリア配置工程と、
前記複数のキャリアの反り方向を揃えた状態で前記複数のガラス基板を研磨する研磨工程と、
を備えることを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記キャリア配置工程では、前記スラリーが供給される側に前記キャリアの凸側を合わせて前記複数のキャリアを配置することを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク用ガラス基板の研磨方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造に用いられるキャリアの反り方向を特定する反り方向検出装置。
【請求項4】
サンギヤとリングギヤ間で遊星歯車運動を行なう複数のキャリアのそれぞれに複数のガラス基板を装着し、各キャリアに装着された複数のガラス基板を上定盤と下定盤間に挟んでスラリーを供給しながら研磨する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法で使用されるキャリアの反り方向を検出する反り方向検出装置であって、
前記キャリアを支持する支持部と、
前記キャリアに対向するように配置され、前記キャリアとの距離を測定するセンサと、を備え、
前記キャリアの中心を通り前記キャリアの一端部から他端部まで延びる少なくとも2以上の直線において、それぞれの直線の一端部と他端部と両端部間に位置する少なくとも1点以上の点から前記キャリアの反りを検出することを特徴とする反り方向検出装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−181897(P2012−181897A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45096(P2011−45096)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】