説明

ガラス封止体の作製方法及び発光装置の作製方法

【課題】衝撃や外力に強いガラス封止体の作製方法を提供する。また、当該ガラス封止体で封止された発光装置の作製方法を提供する。
【解決手段】第1のガラス基板に粉末ガラスとバインダを含むペーストを塗布し、閉曲線を成す隔壁を形成する工程と、隔壁を加熱し、バインダを揮発させると共に粉末ガラスを融合させてペーストをフリットガラスとする工程と、フリットガラスと第2のガラス基板を密着させ、フラッシュランプを照射し、フリットガラスと第2のガラス基板とを溶着させ、フリットガラスと第1のガラス基板と第2のガラス基板とで閉空間を形成する工程と、を有するガラス封止体の作製方法を提供する。当該ガラス封止体に発光素子を密封させると衝撃や外力を加えても封止が極めて破れにくいため、外気に弱い発光素子、特に有機EL素子の長寿命化に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスを外気より保護する封止体の作製方法に係り、開示される発明の一形態は、ガラス封止体の作製方法及びガラス封止体を備えた発光装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。
【背景技術】
【0003】
近年、自発光型の発光素子としてエレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence、以下ELと称す。)を利用したEL素子を有した発光装置の研究が活発化している。当該発光装置は、有機ELディスプレイや有機EL照明などに利用されている。このような発光装置は有機発光ダイオードとも呼ばれている。EL素子の設けられた発光装置は、動画表示に適した速い応答速度、低電圧、低消費電力駆動などの特徴を有しているため、新世代の携帯電話や携帯情報端末(PDA)をはじめ、次世代ディスプレイとして大きく注目されている。
【0004】
EL素子をマトリクス状に配置して形成された発光装置には、パッシブマトリクス駆動(単純マトリクス型)とアクティブマトリクス駆動(アクティブマトリクス型)といった駆動方法を用いることが可能である。画素密度が増えた場合には、画素(又は1ドット)毎にスイッチが設けられているアクティブマトリクス型の方が低電圧駆動できるので有利であると考えられている。
【0005】
EL素子の一種である有機EL素子は「正孔輸送層、発光層、電子輸送層」に代表される積層構造を有している。また、これらの層の材料は低分子系(モノマー系)材料と高分子系(ポリマー系)材料に大別され、低分子系材料は例えば蒸着法を用いて薄膜とする。
【0006】
「正孔輸送層、発光層、電子輸送層」などは発光に関わる層であり、陽極と、陰極とで挟まれている。本明細書中では、陽極と陰極とで挟まれた積層構造を有する発光に関わる層をまとめて有機EL層と呼称する。有機EL素子における発光には、一重項励起状態から基底状態に戻る際に発生するもの(蛍光)と三重項励起状態から基底状態に戻る際に発生するもの(リン光)とがあることが知られている。
【0007】
有機EL素子を有する有機ELディスプレイは、バックライトを必要とする液晶表示装置と異なり自発光型であるため、高いコントラストを実現し易く、視野特性も広いことから視認性に優れている。即ち、屋外で用いられるディスプレイとしては、液晶ディスプレイよりも適しており、携帯電話、デジタルカメラの表示装置等をはじめとして、様々な形での使用が提案されている。
【0008】
また、有機EL素子を用いれば、大面積な面状の発光装置を形成することも容易である。このことは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色である。加えて、当該発光素子の発光効率が白熱電球や蛍光灯よりも高いという試算から、次世代の照明器具に好適であるとして注目されている。
【0009】
有機EL素子の欠点として、有機EL層やそれを両側から挟んでいる電極が、水分や酸素に曝されると急速にその性能を低下させることが挙げられる。これに関しては、有機EL層や両電極を大気に曝さないよう、例えば、特許文献1や特許文献2のような先行技術に記された技術が知られている。特許文献1に記された技術は、ガラス基板の縁に沿ってフリットガラスと呼ばれる低融点ガラスからなる閉曲線を成す隔壁を形成後、他のガラス基板に当該隔壁を押し付け、レーザ溶接により当該隔壁と他のガラス基板とを溶着させ、高い密閉性を有するガラス封止体を形成するものである。当該ガラス封止体で有機EL素子を保護すれば、劣化の抑えられた有機EL素子を得ることができる。特許文献2にも、レーザ溶接を使ったガラス封止体形成技術が示されている。ガラス封止体の一部又はすべてを可視光線に対して透光性を有するものとすると、発光素子を当該ガラス封止体の中に設置しても、外部に光を取り出すことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−65895号公報
【特許文献2】特開2009−272229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
レーザ溶接により有機EL素子をガラスで密封する技術は、シール材によりガラス基板同士を貼り付ける方式と比べ密封性が格段に高く、乾燥剤を不要にするなど大きな利点を有している。乾燥剤を使わなくてすむため、トップエミッション方式を採用しても、乾燥剤で光が一部遮蔽されるなどの不都合が生じない。しかしながら、レーザ溶接は、フリットガラスの隔壁とガラス基板とを接着開始箇所から終了箇所に至るまで順次接着していくため、接着開始箇所から終了箇所に至るまでのガラスの歪み方がわずかに異なり、応力となってガラス封止体に残ってしまう。これにわずかな衝撃や外力を加えると、残留した応力が開放されて封止が破れる恐れがあった。
【0012】
本発明は、上記問題を鑑み、封止の破れにくいガラス封止体の作製方法を提供することを課題の一とする。また、当該ガラス封止体を備えた発光装置を作製する方法を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、第1のガラス基板に粉末ガラスとバインダを含むペーストを塗布し、閉曲線を成す隔壁を形成する工程と、隔壁を加熱し、バインダを揮発させると共に粉末ガラスを融合させてペーストをフリットガラスとする工程と、フリットガラスと第2のガラス基板を密着させ、フラッシュランプを照射し、フリットガラスと第2のガラス基板とを溶着させ、フリットガラスと第1のガラス基板と第2のガラス基板とで閉空間を形成する工程と、を有するガラス封止体の作製方法である。
【0014】
フラッシュランプは、閉曲線を成す隔壁を覆って照射され、かつ、閉曲線を成す隔壁の内側の一部には照射されないようにすると好ましい。これにより隔壁全体に一様にエネルギーを与えることができるため、応力の発生を抑制できる。さらに、隔壁の内側にエネルギーを過剰に与えないため、ガラス封止体内部に熱に弱いデバイスを配置できる。
【0015】
フラッシュランプのパルス幅は、10μs以上10ms以下であると好ましい。これにより、熱伝導による隔壁周辺の過剰な加熱を抑制できるため、ガラス基板や隔壁の変形、およびガラス封止体内部に配置されたものの変質または変形を抑えることができる。
【0016】
また、本発明の別の一態様は、第1のガラス基板に粉末ガラスとバインダを含むペーストを塗布し、閉曲線を成す隔壁を形成する工程と、隔壁を加熱し、バインダを揮発させると共に粉末ガラスを融合させてペーストをフリットガラスとする工程と、第2のガラス基板上に発光素子を形成する工程と、フリットガラスと第2のガラス基板を密着させ、フラッシュランプを照射し、フリットガラスと第2のガラス基板とを溶着させ、フリットガラスと第1のガラス基板と第2のガラス基板とで閉空間を形成して発光素子を当該閉空間に密封する工程と、を有する発光装置の作製方法である。
【0017】
上記発光素子から出ている電極の端子の一部は、フリットガラスと第2のガラス基板の間に挟まれていてもよい。このとき、予めフリットガラスに凹部を形成し、当該電極端子の一部と噛み合わせることにより、閉空間の密封性を上げることができる。当該凹部を形成するには、例えば、ペーストの塗布後に型をペーストに押し付けるなどすればよい。その後、加熱することでペーストが硬化するため、当該凹部を有するフリットガラスが得られる。
【0018】
また、本発明の別の一態様は、第2のガラス基板上に発光素子を形成する工程と、粉末ガラスとバインダを含むペーストを第2のガラス基板上に塗布し、発光素子を囲む閉曲線を成す隔壁を形成する工程と、隔壁に第1のフラッシュランプを照射し、バインダを揮発させると共に粉末ガラスを融合させてペーストをフリットガラスとする工程と、フリットガラスと第1のガラス基板を密着させ、第2のフラッシュランプを照射し、フリットガラスと第1のガラス基板とを溶着させ、フリットガラスと第1のガラス基板と第2のガラス基板とで閉空間を形成して発光素子を当該閉空間に密封する工程と、を有する発光装置の作製方法である。
【0019】
通常、有機ELを含む発光素子は隔壁の加熱温度に耐えないが、フラッシュランプによりペーストのみを局所的に加熱することができるためこのような工程が可能となる。当該工程はフラッシュランプを2度照射するが、バインダの揮発量が無視できる程度であれば、1度にまとめても構わない。すなわち、バインダを揮発させると共に粉末ガラスを融合させてペーストをフリットガラスとする過程で、フリットガラスと第1のガラス基板とを溶着させ、フリットガラスと第1のガラス基板と第2のガラス基板とで閉空間を形成して発光素子を当該閉空間に密封する。
【0020】
また、当該発光素子より電極の端子を取り出す場合、当該端子の一部と重なる部分にはペーストの塗布量を減らす又は無くして隔壁の段差を小さくすることにより、後に形成する閉空間の密封性を上げることができる。当該段差を小さくする方法には、例えば、ペーストで隔壁を形成後、平坦な板を押し付けて隔壁を平坦化することや、ペーストを吐出するノズルからの吐出量を時間変化させ、端子部に塗るペーストの量を減らすことなどがある。
【0021】
また、第2のガラス基板上に加えて、予め第1のガラス基板上にフリットガラスを形成していてもよい。フリットガラス同士を密着させてフラッシュランプを照射することにより、溶着をさらに容易にすることができるため好ましい。あるいは、第1又は第2のガラス基板に形成された隔壁により、他方の隔壁を囲んでもよい。
【0022】
なお、本明細書中において「ペースト」とは、粉末ガラスとバインダを含むものとする。本明細書中でいう「バインダ」は、粉末ガラスの粒1つ1つをつなげて粘度を持たせる役割を果たす。また、本明細書中において「フリットガラス」とは、粉末ガラスを融合させたものとする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様により、残留応力の極めて少ないガラス封止体及びガラス封止体を備えた発光装置の作製方法を提供できる。このようなガラス封止体は衝撃や外力に極めて強いため、過酷な環境下での使用にも、その密封性を保持できる。例えば、酸素や水分などを含む外気に弱いとされる有機ELを含む発光素子を、携帯し戸外で使用する場合にも、長期に渡る特性維持を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一態様に係るガラス封止体の作製工程の例を示す図。
【図2】本発明の一態様に係るガラス封止体の作製工程の例を示す図。
【図3】本発明の一態様に係るガラス封止体の作製工程の例を示す図。
【図4】本発明の一態様に係るガラス封止体の作製工程の例を示す図。
【図5】本発明の一態様に係るフラッシュランプの光学系の例を示す図。
【図6】本発明の一態様に係る発光素子の概念図。
【図7】本発明の一態様に係る発光装置の例を示す図。
【図8】本発明の一態様に係る発光装置の例を示す図。
【図9】本発明の一態様に係る発光装置の例を示す図。
【図10】本発明の一態様に係る電子機器及び照明装置の例を示す図。
【図11】本発明の一態様に係る照明装置の例を示す図。
【図12】本発明の一態様に係る車載表示装置の例を示す図。
【図13】本発明の一態様に係る照明装置の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本明細書に開示する発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本明細書に開示する発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0026】
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態では、ガラス封止体の作製方法の一形態を、主に図1を用いて説明する。図1(A)は、ガラス基板100に粉末ガラスとバインダを含むペースト122aを塗布する工程を示す模式図である。ペースト122aはノズル124から吐出させ、ガラス基板100とノズル124を相対的に移動させることで、閉曲線を成す隔壁122を形成する(図1(B)参照)。
【0028】
粉末ガラスは、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ホウ素、酸化バナジウム、酸化亜鉛、酸化テルル、酸化アルミニウム、二酸化シリコン、酸化鉛、酸化スズ、酸化リン、酸化ルテニウム、酸化ロジウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ビスマス、酸化アンチモン、ホウ酸鉛ガラス、リン酸スズガラス、バナジン酸塩ガラスおよびホウケイ酸ガラスよりなる群から選択された1以上の化合物を含むことが望ましい。これに、例えば、有機溶媒で希釈した樹脂バインダを混ぜ、ペーストとする。
【0029】
図1(A)中に示すノズル124は、ペースト122aを供給する図示しないディスペンス装置に接続されている。ペースト122aの塗布は、ディスペンス法に限られず、スクリーン印刷法などを用いることもできる。
【0030】
図1(B)の状態から、隔壁122に含まれる有機溶媒および樹脂バインダを気化させて除去するため、ガラス基板100全体を加熱処理する。このとき、有機溶媒および樹脂バインダを効率よく除去するために、酸素を含む雰囲気で実施することが好ましい。有機溶媒および樹脂を酸化させて二酸化炭素として放出することができるからである。当該加熱処理で、粉末ガラスを溶融し固化させることにより当該粉末ガラスを融合させ、隔壁122をフリットガラスとすることができる。あるいは、当該加熱処理をフラッシュランプにて行ってもよい。フラッシュランプは隔壁122のみに熱を加えることが可能であるため、ガラス基板100を加熱したくないときには有効な手段である。このような例として、ガラス基板100に有機EL素子が形成されている場合などがある。また、フラッシュランプは大面積光源であるため隔壁122全体を一度に加熱できる。これは、隔壁122に応力が蓄積されにくいため好ましい。他方、同様の工程をレーザにより行なうと、隔壁122の一部から順にレーザビームを走査させ加熱処理を行うため、とくに走査開始部と走査終了部における隔壁の変形が応力となって残留するため好ましくない。
【0031】
その後、所望の雰囲気下においてガラス基板101を隔壁122に密着させ(図1(C)参照)、この状態でフラッシュランプ123を発光させ(図1(D)参照)、フリットガラスを瞬時に溶融し固化させる。当該雰囲気は、封止するデバイスの特性にもよるが、例えば、水分や酸素などの少ないものとするとよい。例えば、ドライ窒素やその他の乾燥した気体、代表的には不活性ガスとすればよい。また、これらの混合気体でもよい。この工程により、ガラス基板101と隔壁122とが溶着され、ガラス封止体が完成する。フラッシュランプ123は隔壁122に対し、高いエネルギー密度で照射されるように、例えば格子状に配置される。さらにエネルギー密度を高めるために、円筒状のミラーやレンズを使ってもよい。これらの構成例については後に記す。フラッシュランプの形状は、隔壁の形状に合わせるとよい。図1に示したように長方形の隔壁を形成する場合は、例えば、細長い円筒状のものを4本用い長方形を形成する。
【0032】
フラッシュランプには、例えば発光管の内部に希ガスであるキセノン、クリプトンおよびアルゴンのうちの1種あるいは2種以上が封入されているものを用いる。これにより、例えば200nm以上1100nm以下の波長領域の光が放射される。これらのランプは、発光時間を10μs以上10ms以下、または100μs以上10ms以下とすることが可能で、局所的に高いエネルギーを与えるのに適している。また、発光管の長さを例えば1m以上とすることが可能であるため、大型のガラス封止体を作製することができる。この工程の最大の特長は、隔壁122を同時に溶融し固化させることができることにある。これにより、隔壁122やそれらに接着させるガラス基板100、101の間に応力がほとんど残らないため、衝撃や歪みなどの外力に対して極めて強いガラス封止体を得ることができる。これによる効果は、特に長期間使用したい有機EL照明や有機ELを利用した表示装置を当該ガラス封止体に密封する際、顕著に現れる。
【0033】
次に、図4を用いて複数のガラス封止体を作製する例を示す。まず、基板450に隔壁452を複数形成する。この数はいくつあっても構わない。続いて、基板451を隔壁452に密着させ、その状態で格子状に組まれたフラッシュランプ453を発光させ、隔壁452と基板451とを溶着させる。フラッシュランプは細長い円筒形状とすることが可能なため、このような構成が好ましい。このとき、隔壁452で形成される各閉空間の間に接着剤を塗布し、基板450と基板451とを仮止めしてもよい。これにより、隔壁452と基板450と基板451とで形成される閉空間内の雰囲気を同閉空間に閉じ込めることができ、フラッシュランプ453を照射する雰囲気を大気中とすることができるため、装置構成が簡易になり好ましい。これは隔壁が1つであっても有効な方法である。また、基板451を隔壁452に合わせ複数用いても良い。このようにすると、複数のガラス封止体を分離することが容易になる。当該分離には例えば、レーザスクライバーなどを用いる。
【0034】
以上示したように、本実施の形態によって衝撃や歪みなどの外力に強いガラス封止体を提供することができる。そのため、当該ガラス封止体に保護されたデバイスは長期に渡り、性能を維持できる。
【0035】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0036】
(実施の形態2)
実施の形態1に記載のガラス封止体を用いた本発明の一態様である発光素子の作製方法を、図2、図3を用いて説明する。
【0037】
有機EL素子のような発光素子には、電力を供給するための電極が設けられており、これから端子を出し、外部電源に接続できるようになっている。しかしながら、当該端子の設置位置において凸部が形成されるため、封止の密封性が悪くなることがある。当該凸部の弊害を抑える方法の一例は、図3に沿って説明する。
【0038】
まず、図2(A)に示すように、ガラス基板100上に有機EL素子125を設ける。有機EL素子125は、例えば、ガラス基板100に近いほうから陽極、発光層、陰極の順に積まれた積層構造を有する。陽極と陰極を入れ替えてもよい。これらの他に別の層を追加で設けても構わない。陽極からは端子126aが、陰極からは端子126bがそれぞれ出ており、これらを外部電源に接続することで、有機EL素子125に電力を供給できる。
【0039】
続いて、図2(B)に示すように、隔壁122を実施の形態1で示した方法により形成する。隔壁122は有機EL素子125を囲むように形成し、端子126a、端子126bの一部を隔壁122の成す閉曲線の外に位置させる。ガラス基板100上には、熱に弱い有機EL素子125が形成されているため、隔壁122の加熱処理には図示しないフラッシュランプを用いる。これにより、隔壁122中にあるバインダを揮発させ、さらに粉末ガラスを融合させてフリットガラスを得る。
【0040】
通常、端子126a、端子126bには少なからず厚み(代表的には数十nm以上数十μm以下程度)があるため、隔壁122とガラス基板100との密着性が悪くなる部分が生じる可能性がある。加えて、隔壁122最表面の平坦性もそれに沿って損なわれる。これらの不具合を抑制するために、例えば、図3に示すような方法を採用するとよい。
【0041】
具体的には、ガラス基板100上に端子301があり、それを跨いで隔壁302aを形成すると、図3(A)に示すような隔壁302aと端子301の間の空間や、端子301と重なる隔壁302aの部分に凸部が形成される。当該空間はガラス封止体の密封性を著しく損なう可能性があるため、これを出来るだけ小さくする必要がある。また同様に隔壁302a上の凸部はその上に溶着させる基板との隙間を作る原因となるため、これも出来るだけ小さくしなくてはならない。
【0042】
例えば、図3(B)に示すように、隔壁302aを加熱処理する前に、平坦な板303を隔壁302aに押し付けることにより、隔壁302aの形状を変形させ、隔壁302とする。隔壁302aは、加熱処理前なので柔軟性が高く、このような工程が可能である。これにより、隔壁302aと端子301との間の空間や、隔壁302aの最表面に形成される凸部が小さくなる又は消失する。その後、平坦な板303を隔壁302から離すと、隔壁302の形状が保たれる。平坦な板303を隔壁302の材質と異なるものとすると、接着性が悪いため、平坦な板303を隔壁302に押し付けたまま、フラッシュランプなどで加熱処理しても構わない。このとき平坦な板303はフラッシュランプに対し透光性を有している必要があり、例えばプラスチック基板などが挙げられる。あるいは、ガラス基板100と端子301とに当該透光性があれば、ガラス基板100の下方よりフラッシュランプを照射してもよい。このとき平坦な板303に透光性は問われないため、金属やセラミックスなど、フリットガラスとの接着性の悪い材質のものを採用できる。なお、端子126a及び端子126bの凸部が無視できるほど小さいものであれば、図3に示したような工程を省くことができる。また、隔壁122をガラス基板100の表面ではなく、ガラス基板101の表面に設け、端子の凸部と噛み合う凹部を予め隔壁122に設けてもよい。例えば、隔壁122を加熱処理する前に、端子の凸部又はそれと同形状のものを隔壁122に押し付けると、容易に当該凹部を形成できる。また、隔壁122は、ガラス基板100とガラス基板101の双方に設けてもよい。フリットガラス同士を密着させてフラッシュランプを照射することにより、溶着をさらに容易にすることができる。あるいは、ガラス基板100又はガラス基板101に形成された隔壁により、他方の隔壁を囲んでもよい。
【0043】
その後、図2(C)に示すように、ガラス基板101を隔壁122に押し付けた状態で、フラッシュランプ123により、隔壁122を溶融後固化させ、ガラス基板101と隔壁122を溶着させる。このときの雰囲気は、水分や酸素など有機EL素子に有害なものを極力排除したものとするのが好ましい。具体的には、ドライ窒素や水分の少ないその他の不活性ガスなどを用いるとよい。また、ガラス基板101はガラス基板100と比較して小さなものを用いる。これにより、端子126a、端子126bを露出させることができるため、外部電源への接続を容易にする。
【0044】
以上示したように、本実施の形態によって衝撃や歪みなどの外力に強いガラス封止体に保護された発光素子を提供することができる。そのため、当該発光素子は長期に渡り、性能を維持できる。
【0045】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0046】
(実施の形態3)
実施の形態1に記載のフラッシュランプの本発明の一態様を、図5を用いて説明する。図5には、ガラス基板100上に隔壁122が形成されており、ガラス基板101が隔壁122に密着された状態を示している。
【0047】
図5(A)に示すように、円筒状のミラー127をフラッシュランプ123に被せることで、四方に広がる光を一方向に集めることが可能となる。例えば、図5の紙面に平行な方向における円筒状のミラー127の断面形状を楕円とし、当該楕円の焦点にフラッシュランプ123を配置し、他の焦点に隔壁122を配置することにより、光を効率よく隔壁122に集めることができる。
【0048】
その他の例として、図5(B)に示すように、フラッシュランプ123と隔壁122の間に、凸レンズ128を設け、広がる光を収束させてもよい。また、ミラー127と凸レンズ128とを組み合わせて用いてもよい。これらの光学系を用いてフラッシュランプ123を発光させると少ないエネルギーで隔壁122とガラス基板101とを溶着できる。
【0049】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0050】
(実施の形態4)
実施の形態2に記載の有機EL素子125の一態様について、図6(A)を用いて説明する。簡単のため、端子126a、端子126bについては言及しない。
【0051】
発光素子は、一対の電極(第1の電極102及び第2の電極104)と、当該一対の電極間に挟まれた有機EL層103を有する。また、本実施の形態で説明する発光素子は、ガラス基板100上に設けられている。
【0052】
ガラス基板100は、発光素子の支持体として用いられる。ガラス基板100としては、長方形の板上のものは勿論、曲面を有するものなど様々な形状のものを用いることができる。なお、発光素子の支持体であり、封止性能を有するものであれば、ガラス基板100としてこれら以外のものを用いることも可能である。
【0053】
第1の電極102及び第2の電極104は、一方が陽極として機能し、他方が陰極として機能する。本実施の形態においては、第1の電極102を陽極として用い、第2の電極104を陰極として用いるものとして説明するが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0054】
陽極として用いる材料は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、またはこれらの混合物などが好ましい。具体的には、酸化インジウム−酸化スズ(Indium Tin Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0055】
陰極として用いる材料は、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物などが好ましい。具体的には、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属が挙げられる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む合金(例えばMgAg、AlLi)を用いることもできる。また、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)などの希土類金属、または希土類金属を含む合金を用いることもできる。また、有機EL層103の一部として、第2の電極104に接する電子注入層を設ける場合、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITOなどの様々な導電性材料を第2の電極104として用いることができる。これら導電性材料は、スパッタリング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて薄膜とすることが可能である。
【0056】
有機EL層103は、単層構造で構成されることも可能であるが、通常積層構造から構成される。有機EL層103の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質を含む層(電子輸送層)または正孔輸送性の高い物質を含む層(正孔輸送層)、電子注入性の高い物質を含む層(電子注入層)、正孔注入性の高い物質を含む層(正孔注入層)、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質を含む層、発光材料を含む層(発光層)などを適宜組み合わせて構成すればよい。例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等を適宜組み合わせて構成することができる。図6(A)においては、第1の電極102の上に形成された有機EL層103として、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114が順に積層された構造を示している。
【0057】
発光素子は、第1の電極102と第2の電極104との間に生じた電位差により電流が流れ、発光性の高い物質を含む層である発光層113において正孔と電子とが再結合し、発光するものである。つまり発光層113に発光領域が形成されるような構成となっている。
【0058】
発光は、第1の電極102または第2の電極104のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極102または第2の電極104のいずれか一方または両方は、透光性を有する電極で成る。第1の電極102のみが透光性を有する電極である場合、発光は第1の電極102を通って基板側から取り出される。また、第2の電極104のみが透光性を有する電極である場合、発光は第2の電極104を通って基板と逆側から取り出される。第1の電極102および第2の電極104がいずれも透光性を有する電極である場合、発光は第1の電極102および第2の電極104を通って、基板側および基板と逆側の両方から取り出される。
【0059】
発光層113に接する正孔輸送層112や電子輸送層114、特に発光層113における発光領域に近い方に接するキャリア(電子または正孔)輸送層は、発光層113で生成した励起子からのエネルギー移動を抑制するため、発光層を構成する発光材料、または発光層に含まれる発光中心物質が有するエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有する物質で構成することが好ましい。
【0060】
正孔注入層111は、正孔注入性の高い物質を含む層であり、第1の電極102から正孔輸送層112へ正孔の注入を補助する機能を有する層である。正孔注入層111を設けることによって、第1の電極102と正孔輸送層112との間のイオン化ポテンシャルの差が緩和され、正孔が注入され易くなる。正孔注入層111は、正孔輸送層112を形成している物質よりもイオン化ポテンシャルが小さく、第1の電極102を形成している物質よりもイオン化ポテンシャルが大きい物質、または正孔輸送層112と第1の電極102との間に1〜2nmの薄膜として設けたときにエネルギーバンドが曲がるような物質を用いて形成することが好ましい。つまり、正孔注入層111におけるイオン化ポテンシャルが正孔輸送層112におけるイオン化ポテンシャルよりも相対的に小さくなるような物質を正孔注入層111として選択することが好ましい。正孔注入性の高い物質の具体例としては、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、またはポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液(PEDOT/PSS)等の高分子が挙げられる。
【0061】
正孔輸送層112は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質とは、電子よりも正孔の移動度が高いものを指し、好ましくは電子の移動度に対する正孔の移動度の比の値(=正孔移動度/電子移動度)が100よりも大きい物質である。また、正孔輸送性の高い物質としては、1×10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質が好ましい。正孔輸送性の高い物質の具体例としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス{N−[4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル]−N−フェニルアミノ}ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N,N−ジ(m−トリル)アミノ]ベンゼン(略称:m−MTDAB)、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、フタロシアニン(略称:HPc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)が挙げられる。また、正孔輸送層112は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0062】
電子輸送層114は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質とは、正孔よりも電子の移動度が高いものを指し、好ましくは正孔の移動度に対する電子の移動度の比の値(=電子移動度/正孔移動度)が100よりも大きい物質である。また、電子輸送性の高い物質としては、1×10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。電子輸送性の高い物質の具体例としては、キノリン骨格を有する金属錯体、ベンゾキノリン骨格を有する金属錯体、オキサゾール系配位子を有する金属錯体、チアゾール系配位子を有する金属錯体が挙げられる。キノリン骨格を有する金属錯体の具体例としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)が挙げられる。また、ベンゾキノリン骨格を有する金属錯体の具体例としては、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)が挙げられる。また、オキサゾール系配位子を有する金属錯体の具体例としては、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))が挙げられる。また、チアゾール系配位子を有する金属錯体の具体例としては、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))が挙げられる。また、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ 01)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。具体例を挙げた上述の物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、これら以外の物質を電子輸送層114として用いてもよい。また、電子輸送層114は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0063】
また、発光層113と電子輸送層114との間に電子キャリアの移動を制御する層を設けてもよい。電子キャリアの移動を制御する層は、上述したような電子輸送性の高い材料に対して、電子トラップ性の高い物質を少量添加した層である。電子キャリアの移動を制御する層を設けることにより、電子キャリアの移動を抑制し、キャリアバランスを調節することが可能となる。このような構成は、発光層を電子が突き抜けてしまうことにより発生する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に大きな効果を発揮する。
【0064】
また、電子輸送層114と第2の電極104との間に、第2の電極104に接して電子注入層を設けてもよい。電子注入層としては、電子輸送性を有する物質からなる層中に、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)などのようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を含有させたものを用いればよい。具体例としては、Alq中にマグネシウム(Mg)を含有させたものを用いることができる。電子注入層を設けることにより、第2の電極104からの電子注入を効率良く行うことができる。
【0065】
また、有機EL層103の形成方法は、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、インクジェット法、またはスピンコート法を用いることができる。また、有機EL層103を積層構造とする場合、各層毎に異なる成膜方法を用いて形成してもよいし、各層全てを同一の成膜方法で形成してもよい。
【0066】
また、第1の電極102、第2の電極104は、ゾル−ゲル法を用いた湿式法で形成してもよいし、金属材料のペーストを用いた湿式法で形成してもよい。また、スパッタリング法や真空蒸着法などの乾式法で形成してもよい。
【0067】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0068】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様として、複数の発光ユニットを積層した構成を有する発光素子(以下、「タンデム型の発光素子」という)について、図6(B)を参照しながら説明する。タンデム型の発光素子は、第1の電極と第2の電極との間に、複数の発光ユニットを有する発光素子である。発光ユニットとしては、先に示した有機EL層103と同様な構成を用いることができる。
【0069】
図6(B)において、第1の電極501と第2の電極502との間には、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512が積層されている。第1の電極501と第2の電極502は、実施の形態4と同様なものを適用することができる。また、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512は同じ構成であっても異なる構成であってもよく、各ユニットの構成は、それぞれ実施の形態4と同様なものを適用することができる。
【0070】
第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512との間には、電荷発生層513が設けられている。電荷発生層513は、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含み、第1の電極501と第2の電極502に電圧を印加したときに、一方の側の発光ユニットに電子を注入し、他方の側の発光ユニットに正孔を注入する機能を有する。有機化合物と金属酸化物の複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。
【0071】
正孔輸送性の有機化合物には、正孔移動度が10−6cm/Vs以上であるものを用いることが好ましい。有機化合物の具体例としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール化合物、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)が挙げられる。また、金属酸化物は、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を用いればよく、具体例としては、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムが挙げられ、これらの金属酸化物は電子受容性が高いため、好ましい。特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、且つ扱いやすいため、特に好ましい。
【0072】
また、電荷発生層513は、単層構造でもよいし、積層構造でもよい。例えば、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物、及び電子輸送性の高い化合物を含む層とを積層した構造としてもよいし、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と、透明導電膜とを積層した構造としてもよい。
【0073】
本実施の形態では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、タンデム型の発光素子は、3つ以上の発光ユニットを有する発光素子でもよい。なお、3つ以上の発光ユニットを有する発光素子の場合、各発光ユニットの間には電荷発生層を有する。例えば、第1のユニットと、それよりも長波長の発光(例えば、赤色の発光)を呈する発光材料を用いて作製される第2のユニットとを有する発光素子を構成してもよい。また、第1のユニットと、それよりも長波長の発光(例えば、赤色の発光)を呈する第1の発光材料を用いて作製される第2のユニットと、第1のユニットよりも長波長、かつ第1の発光材料よりも短波長の発光(例えば、緑色の発光)を呈する第2の発光材料を用いて作製される第3のユニットとを有する発光素子を構成してもよい。これらの発光素子を用いることにより、白色の発光装置を得ることができる。
【0074】
本実施の形態に係るタンデム型の発光素子は、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度領域での長寿命素子を実現することができる。このような発光素子と本発明の一態様であるガラス封止体を組み合わせることにより、より長寿命で衝撃や歪みなどの外力に強い発光装置を得ることができる。
【0075】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0076】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様であるガラス封止体により封止された、パッシブマトリクス型の発光装置、及びアクティブマトリクス型の発光装置について説明する。
【0077】
図7、図8にパッシブマトリクス型の発光装置の例を示す。
【0078】
パッシブマトリクス型(単純マトリクス型ともいう)の発光装置は、ストライプ状(帯状)に並列された複数の陽極と、ストライプ状に並列された複数の陰極とが互いに直交するように設けられており、その交差部に発光層が挟まれた構造となっている。従って、選択された(電圧が印加された)陽極と選択された陰極との交点にあたる画素が点灯することになる。
【0079】
図7(A)乃至図7(C)は、封止前における画素部の平面図であり、図7(A)乃至図7(C)中の鎖線A−A’で切断した断面を図7(D)に示す。
【0080】
基板601上には、下地絶縁層として絶縁層602が形成されている。なお、絶縁層602が必要でなければ特に形成しなくともよい。絶縁層602上には、ストライプ状の複数の第1の電極603が等間隔で配置されている(図7(A))。なお、本実施の形態で示す第1の電極603は、実施の形態5における第1の電極102に相当する。
【0081】
また、第1の電極603上には、各画素に対応する開口部605を有する隔壁604が設けられている。隔壁604は、絶縁材料で形成されている。例えば、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト、もしくはベンゾシクロブテン等の感光性または非感光性の有機材料や、アルキル基を含むSiOx膜等のSOG膜を絶縁材料として用いることができる。また、各画素に対応する開口部605は、発光領域となる(図7(B))。
【0082】
開口部を有する隔壁604上には、第1の電極603と交差する複数の隔壁606が設けられている(図7(C))。複数の隔壁606は、それぞれ互いに平行に設けられており、逆テーパ状をなしている。
【0083】
第1の電極603及び隔壁604上には、有機EL層607及び第2の電極608が順次積層されている(図7(D))。なお、本実施の形態で示す有機EL層607は、実施の形態5における有機EL層103に相当し、第2の電極608は、実施の形態5の第2の電極104に相当する。隔壁604及び隔壁606を合わせた高さは、有機EL層607及び第2の電極608の膜厚より大きくなるように設定されているため、図7(D)に示すように複数の領域に分離された有機EL層607、及び第2の電極608が形成される。なお、複数に分離された領域は、それぞれ電気的に独立している。
【0084】
第2の電極608は、第1の電極603と交差する方向に伸長するストライプ状の電極である。なお、逆テーパ状の隔壁606上にも有機EL層607及び第2の電極608を形成する導電層の一部が形成されるが、有機EL層607、及び第2の電極608とは分断されている。
【0085】
続いて、基板601を基に実施の形態2で示したようにガラス封止体を形成する。これにより、発光素子の劣化を著しく抑制できる。なお、密閉された空間には、乾燥した充填材や不活性ガスを充填しても良い。さらに、水分などによる発光素子の劣化を防ぐために当該ガラス封止体に乾燥材などを封入してもよい。乾燥剤によって微量な水分が除去され、十分乾燥される。乾燥剤としては、酸化カルシウムや酸化バリウムなどのアルカリ土類金属の酸化物、ゼオライト、またはシリカゲル等を用いることができる。アルカリ土類金属の酸化物は、化学吸着によって水分を吸収する性質を有する。また、ゼオライトやシリカゲルは、物理吸着によって水分を吸着する性質を有する。
【0086】
次に、図7(A)乃至図7(D)に示したパッシブマトリクス型の発光装置にFPC(フレキシブルプリントサーキット)などを実装した場合の平面図を図8に示す。
【0087】
図8において、画像表示を構成する画素部は、走査線群とデータ線群が互いに直交するように交差している。
【0088】
ここで、図7における第1の電極603が、図8の走査線703に相当し、図7における第2の電極608が、図8のデータ線708に相当し、逆テーパ状の隔壁606が隔壁706に相当する。データ線708と走査線703の間には、図7の有機EL層607が挟まれており、領域705で示される交差部が画素1つ分となる。
【0089】
走査線703は配線端で接続配線709と電気的に接続され、接続配線709が入力端子710を介してFPC711bに接続される。また、データ線708は入力端子712を介してFPC711aに接続される。データ線708と接続配線709は、図2に示した端子126a、端子126bに相当する。これらを跨いでフリットガラスの隔壁を形成し、例えば先の実施の形態に示した方法により、ガラス封止体を形成する。
【0090】
また、必要に応じて、光の射出面に偏光板、円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板または円偏光板に加えて反射防止膜を設けてもよい。反射防止膜を設けることにより、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0091】
なお、図8では、駆動回路を基板上に設けない例を示したが、基板上に駆動回路を有するICチップを実装させてもよい。
【0092】
また、ICチップを実装させる場合には、画素部の周辺(外側)の領域に、画素部へ各信号を伝送する駆動回路が形成されたデータ線側IC、走査線側ICをそれぞれ実装する。実装方式は、COG方式、TCP、ワイヤボンディング方式等を用いることができる。TCPはTABテープにICを実装したものであり、TABテープを素子形成基板上の配線に接続してICを実装する。データ線側IC及び走査線側ICは、シリコン基板やSOI(Silicon On Insulator)基板に形成されたものであってもよいし、ガラス基板、石英基板、またはプラスチック基板上に形成されたものであってもよい。
【0093】
次に、アクティブマトリクス型の発光装置の例について、図9を用いて説明する。なお、図9(A)は発光装置を示す平面図であり、図9(B)は図9(A)を鎖線A−A’で切断した断面図である。本実施の形態に係るアクティブマトリクス型の発光装置は、ガラス基板801上に設けられた画素部802と、駆動回路部(ソース側駆動回路)803と、駆動回路部(ゲート側駆動回路)804とを有する。画素部802、駆動回路部803、及び駆動回路部804は、隔壁805とガラス基板801とガラス基板806とで形成されたガラス封止体の中に封止されている。
【0094】
ガラス基板801上には、駆動回路部803及び駆動回路部804に外部からの信号(ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、またはリセット信号等)や電位を伝達する外部入力端子を接続するための引き回し配線807が設けられる。ここでは、外部入力端子としてFPC808を設ける例を示している。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていてもよい。本明細書における発光装置は、発光装置本体だけでなく、発光装置本体にFPCまたはPWBが取り付けられた状態のものも範疇に含むものとする。
【0095】
次に、アクティブマトリクス型の発光装置の断面構造について図9(B)を用いて説明する。なお、ガラス基板801上には駆動回路部803及び駆動回路部804及び画素部802が形成されているが、図9(B)においては、ソース側駆動回路である駆動回路部803と、画素部802を示している。
【0096】
駆動回路部803は、nチャネル型TFT809とpチャネル型TFT810とを組み合わせたCMOS回路を有する例を示している。なお、駆動回路部を形成する回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路、またはNMOS回路で形成することができる。また、本実施の形態では、画素部が形成された基板上に駆動回路が形成されたドライバー一体型を示すが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、画素部が形成された基板とは別の基板に駆動回路を形成することもできる。
【0097】
画素部802は、スイッチング用のTFT811と、電流制御用のTFT812と、電流制御用TFT812の配線(ソース電極またはドレイン電極)に電気的に接続された陽極813とを含む複数の画素により形成されている。また、陽極813の端部を覆って絶縁物814が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂を用いることにより形成する。なお、スイッチング用のTFT811や電流制御用のTFT812といったTFTの構造は、特に限定されない。例えば、スタガ型のTFTでもよいし、逆スタガ型のTFTでもよい。また、トップゲート型のTFTでもよいし、ボトムゲート型のTFTでもよい。また、TFTに用いる半導体の材料についても特に限定されず、シリコンを用いてもよいし、インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物等の酸化物半導体を用いてもよい。また、TFTに用いる半導体の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体を用いてもよいし、結晶性半導体を用いてもよい。
【0098】
発光素子817は、陽極813、有機EL層815、及び陰極816によって構成されている。発光素子の構造、材料等については先に示した通りである。なお、図9における陽極813、有機EL層815、及び陰極816はそれぞれ実施の形態4における第1の電極102、有機EL層103、第2の電極104に相当する。また、ここでは図示しないが、陰極816は外部入力端子であるFPC808に電気的に接続されている。
【0099】
絶縁物814は、陽極813の端部に設けられている。そして、絶縁物814の上層に形成される陰極816の被覆性を少なくとも良好なものとするため、絶縁物814の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにするのが好ましい。例えば、絶縁物814の上端部または下端部に曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせるのが好ましい。また、絶縁物814の材料としては、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型の感光性樹脂、或いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型の感光性樹脂などの有機化合物や、酸化シリコン、酸窒化シリコン等の無機化合物を用いることができる。
【0100】
また、図9(B)に示す断面図では発光素子817を1つのみ図示しているが、画素部802においては、複数の発光素子がマトリクス状に配置されている。例えば、画素部802に3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子をそれぞれ選択的に形成し、フルカラー表示可能な発光装置を形成することができる。また、先の実施の形態に示した白色の発光素子とカラーフィルタを組み合わせることによってフルカラー表示可能な発光装置としてもよい。また、当該発光素子は、ボトムエミッション方式、トップエミッション方式、または両面射出方式のいずれも採ることができる。
【0101】
また、発光素子817は、ガラス基板801、ガラス基板806、及び隔壁805で囲まれたガラス封止体818に設けられている。ガラス封止体818は、希ガスまたは窒素ガスが充填されていてもよいし、固体で充填されていてもよい。
【0102】
以上のようにして、本発明の一態様に係るガラス封止体で封止されたアクティブマトリクス型の発光装置を得ることができる。このような発光装置は、より長寿命で衝撃や歪みなどの外力に強いなどの特徴を有する。
【0103】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0104】
(実施の形態7)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した発光装置を用いて作製される電子機器及び照明装置の具体例について、図10、図11を用いて説明する。
【0105】
本発明を適用可能な電子機器の一例として、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、遊技機(パチンコ機、スロットマシン等)、ゲーム筐体が挙げられる。これらの電子機器および照明装置の具体例を図10、図11に示す。
【0106】
図10(A)は、テレビジョン装置9100を示している。テレビジョン装置9100は、筐体9101に表示部9103が組み込まれている。本発明の一態様を用いて作製される発光装置は、表示部9103に用いることが可能であり、表示部9103により映像を表示することが可能である。なお、ここではスタンド9105により筐体9101を支持した構成を示している。
【0107】
テレビジョン装置9100の操作は、筐体9101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機9110により行うことができる。リモコン操作機9110が備える操作キー9109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機9110に、当該リモコン操作機9110から出力する情報を表示する表示部9107を設ける構成としてもよい。
【0108】
図10(A)に示すテレビジョン装置9100は、受信機やモデムなどを備えている。テレビジョン装置9100は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0109】
先の実施の形態に示したガラス封止体で封止された発光装置を利用すれば、発光素子が劣化しにくいため、当該発光装置をテレビジョン装置の表示部9103に用いることで、従来に比べて丈夫で長寿命なテレビジョン装置とすることができる。
【0110】
図10(B)はコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス9206等を含む。コンピュータは、本発明の一態様を用いて作製される発光装置をその表示部9203に用いることにより作製される。
【0111】
また、先の実施の形態に示したガラス封止体で封止された発光装置を利用すれば、発光素子が劣化しにくいため、当該発光装置をコンピュータの表示部9203に用いることで、従来に比べて丈夫で長寿命な表示部とすることが可能となる。
【0112】
図10(C)は携帯型ゲーム機であり、筐体9301と筐体9302で構成されており、連結部9303により、開閉可能に連結されている。筐体9301には表示部9304が組み込まれ、筐体9302には表示部9305が組み込まれている。また、図10(C)に示す携帯型ゲーム機は、操作キー9309、接続端子9310、センサ9311(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9312等の入力手段を備えている。さらに、スピーカ部9306、記録媒体挿入部9307、LEDランプ9308等を備えていてもよい。もちろん、携帯型ゲーム機の構成は上述のものに限定されず、表示部9304および表示部9305の両方、または一方に上記実施の形態を適用して形成される発光装置が少なくとも用いられていればよい。
【0113】
図10(C)に示す携帯型ゲーム機は、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の携帯型ゲーム機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、図10(C)に示す携帯型ゲーム機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0114】
また、先の実施の形態に示したガラス封止体で封止された発光装置を利用すれば、発光素子が劣化しにくいため、当該発光装置を携帯型ゲーム機の表示部(9304、9305)に用いることで、従来に比べて丈夫で長寿命な携帯型ゲーム機とすることが可能となる。
【0115】
図10(E)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機9500は、筐体9501に組み込まれた表示部9502の他、操作ボタン9503、外部接続ポート9504、スピーカ9505、マイク9506などを備えている。携帯電話機9500は、本発明の一態様を用いて作製される発光装置を表示部9502に用いることにより作製される。
【0116】
図10(E)に示す携帯電話機9500は、表示部9502を指などで触れることで、情報を入力する、電話を掛ける、またはメールを作成するなどの操作を行うことができる。
【0117】
表示部9502の画面は、主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合したものである。
【0118】
例えば、電話を掛ける、またはメールを作成する場合は、表示部9502を文字の入力を主とする入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部9502の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0119】
また、携帯電話機9500内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機9500の向き(縦向きか横向きか)を判断して、表示部9502の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0120】
また、画面モードの切り替えは、表示部9502を触れる、または筐体9501の操作ボタン9503の操作により行われる。また、表示部9502に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0121】
また、入力モードにおいて、表示部9502の光センサで検出される信号を検知し、表示部9502のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0122】
また、表示部9502は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部9502に掌や指を触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0123】
先の実施の形態に示したガラス封止体で封止された発光装置を利用すれば、発光素子が劣化しにくいため、当該発光装置を携帯電話機の表示部9502に用いることで、従来に比べて丈夫で長寿命な携帯電話機とすることが可能となる。
【0124】
図10(D)は卓上型の照明装置であり、照明部9401、傘9402、可変アーム9403、支柱9404、台9405、電源スイッチ9406を含む。卓上型の照明装置は、本発明の一態様を用いて作製される発光装置を照明部9401に用いることにより作製される。なお、照明装置の形式は、卓上型に限らず、天井固定型や、壁掛け型、携帯型も含まれる。
【0125】
図11は、本発明の一態様を用いて作製される発光装置を、室内の照明装置1001として用いた例である。本発明の一態様を用いて作製される発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、上記実施の形態で示した発光装置は、薄型化が可能であるため、ロール型の照明装置1002として用いることもできる。このようなデバイスを作製するには、例えば、巻き取ることが可能な極薄ガラス基板をガラス封止体の一部として利用すればよい。巻き取れるほどの極薄ガラス基板であっても、水分や酸素などを極めて通しにくいため、本発明に適用することは好ましい。なお、図11に示すように、室内の照明装置1001を備えた部屋で、図10(D)で説明した卓上型の照明装置1003を併用してもよい。
【0126】
また、先の実施の形態に示したガラス封止体で封止された発光装置を利用すれば、発光素子が劣化しにくいため、当該発光装置を照明装置として用いることで、従来に比べて丈夫で長寿命な照明装置とすることができる。
【0127】
図12に本発明の一形態に係るガラス封止体で封止された発光素子を自動車のフロントガラスやダッシュボードに用いる一態様を示す。
【0128】
表示5000と表示5001は自動車のフロントガラスに設けられた本発明の一形態に係るガラス封止体で封止された発光素子を搭載した表示装置である。実施の形態4または実施の形態5に記載の発光素子は、第1の電極と第2の電極を透光性を有する電極で作製することによって、反対側が透けて見える、いわゆるシースルー状態の表示装置とすることができる。シースルー状態の表示であれば、自動車のフロントガラスに設置したとしても、視界の妨げになることなく設置することができる。なお、駆動のためのトランジスタなどを設ける場合には、有機半導体材料による有機トランジスタや、酸化物半導体を用いたトランジスタなど、透光性を有するトランジスタを用いると良い。
【0129】
表示5002はピラー部分に設けられた実施の形態4または実施の形態5に記載の発光素子を搭載した表示装置である。表示5002には、車体に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界を補完することができる。また、同様に、ダッシュボード部分に設けられた表示5003は車体によって遮られた視界を、自動車の外側に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、死角を補い、安全性を高めることができる。見えない部分を補完するように映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。
【0130】
表示5004や表示5005はナビゲーション情報、スピードメーターやタコメーター、走行距離、給油量、ギア状態、エアコンの設定など、その他様々な情報を提供することができる。表示は使用者の好みに合わせて適宜その表示項目やレイアウトを変更することができる。なお、これら情報は表示5000乃至表示5003にも設けることができる。また、表示5000乃至表示5005は照明装置として用いることも可能である。
【0131】
本発明の一形態に係るガラス封止体で封止された発光装置または照明装置は、長寿命で衝撃や歪みなどの外力に極めて強いため、車載用に好適に用いることができる。
【0132】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0133】
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一形態に係るガラス封止体で封止された発光素子を照明装置として用いる例を、図13を参照しながら説明する。図13(B)は照明装置の平面図、図13(A)は図13(B)におけるc−d断面図である。
【0134】
本実施の形態における照明装置は、支持体である透光性を有する基板400上に、第1の電極401が形成されている。基板400及び第1の電極401は実施の形態4におけるガラス基板100及び第1の電極102に相当する。
【0135】
第1の電極401上には補助配線402が設けられている。本実施の形態では、第1の電極401側から発光を取り出す例を示したため、第1の電極401は透光性を有する材料により形成する。補助配線402は透光性を有する材料の導電率の低さを補うために設けられており、第1の電極401の抵抗が高いことによる電圧降下を起因とする発光面内の輝度むらを抑制する機能を有する。補助配線402は少なくとも第1の電極401の材料よりも導電率の大きい材料を用いて形成し、好ましくはアルミニウムなどの導電率の大きい材料を用いて形成すると良い。なお、補助配線402における第1の電極401と接する部分以外の表面は絶縁層で覆われていることが好ましい。これは、取り出すことができない補助配線402上部からの発光を抑制するためであり、無効電流を低減し、電力効率の低下を抑制するためである。なお、補助配線402の形成と同時に第2の電極404に電圧を供給するためのパッド412を形成しても良い。
【0136】
第1の電極401と補助配線402上には有機EL層403が形成されている。有機EL層403は実施の形態4におけるEL層103の構成、もしくは実施の形態5における発光ユニット511、512及び電荷発生層513を合わせた構成に相当する。なお、有機EL層403は第1の電極401よりも平面的に見て少し大きく形成することが、第1の電極401と第2の電極404とのショートを抑制する絶縁層の役割も担えるため好ましい構成である。
【0137】
有機EL層403を覆って第2の電極404を形成する。第2の電極404は実施の形態4における第2の電極104に相当し、同様の構成を有する。本実施の形態においては、発光は第1の電極401側から取り出されるため、第2の電極404は反射率の高い材料によって形成されることが好ましい。本実施の形態において、第2の電極404はパッド412と接続することによって、電圧が供給されるものとする。
【0138】
以上、第1の電極401、有機EL層403、及び第2の電極404(及び補助配線402)を有する発光素子を、本発明の一形態に係るガラス封止体により封止することによって照明装置が完成する。隔壁405、406は先の実施の形態に示したフリットガラスであり、どちらか一方でもかまわない。また、内側の隔壁406には乾燥剤を混ぜることもでき、これにより、水分を吸着することができ、信頼性の向上につながる。
【0139】
また、パッド412、第1の電極401及び補助配線402の一部を隔壁405、406の外に伸張して設けることによって、外部入力端子とすることができる。また、その上にコンバーターなどを搭載したICチップ420などを設けても良い。
【0140】
以上、本実施の形態に記載の照明装置は、発光素子を高い封止性能を持つガラス封止体により密封するため、長寿命で衝撃や歪みなどの外力に強いものとすることができる。
【0141】
以上のように、本発明の一態様を用いて作製される発光装置を用いて電子機器や照明装置を提供することができる。本発明の一態様を用いて作製される発光装置の適用範囲は極めて広く、様々な分野の電子機器に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0142】
100 ガラス基板
101 ガラス基板
102 電極
103 有機EL層
104 電極
111 正孔注入層
112 正孔輸送層
113 発光層
114 電子輸送層
122 隔壁
122a ペースト
123 フラッシュランプ
124 ノズル
125 有機EL素子
126a 端子
126b 端子
127 ミラー
128 凸レンズ
301 端子
302 隔壁
302a 隔壁
303 板
400 基板
401 電極
402 補助配線
403 有機EL層
404 電極
405 隔壁
406 隔壁
412 パッド
420 ICチップ
450 基板
451 基板
452 隔壁
453 フラッシュランプ
501 電極
502 電極
511 発光ユニット
512 発光ユニット
513 電荷発生層
601 基板
602 絶縁層
603 電極
604 隔壁
605 開口部
606 隔壁
607 有機EL層
608 電極
703 走査線
705 領域
706 隔壁
708 データ線
709 接続配線
710 入力端子
711a FPC
711b FPC
712 入力端子
801 ガラス基板
802 画素部
803 駆動回路部
804 駆動回路部
805 隔壁
806 ガラス基板
807 配線
808 FPC
809 nチャネル型TFT
810 pチャネル型TFT
811 TFT
812 TFT
813 陽極
814 絶縁物
815 有機EL層
816 陰極
817 発光素子
818 ガラス封止体
1001 照明装置
1002 照明装置
1003 照明装置
5000 表示
5001 表示
5002 表示
5003 表示
5004 表示
5005 表示
9100 テレビジョン装置
9101 筐体
9103 表示部
9105 スタンド
9107 表示部
9109 操作キー
9110 リモコン操作機
9201 本体
9202 筐体
9203 表示部
9204 キーボード
9205 外部接続ポート
9206 ポインティングデバイス
9301 筐体
9302 筐体
9303 連結部
9304 表示部
9305 表示部
9306 スピーカ部
9307 記録媒体挿入部
9308 LEDランプ
9309 操作キー
9310 接続端子
9311 センサ
9312 マイクロフォン
9401 照明部
9402 傘
9403 可変アーム
9404 支柱
9405 台
9406 電源スイッチ
9500 携帯電話機
9501 筐体
9502 表示部
9503 操作ボタン
9504 外部接続ポート
9505 スピーカ
9506 マイク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のガラス基板に粉末ガラスとバインダを含むペーストを塗布し、閉曲線を成す隔壁を形成する工程と、
前記隔壁を加熱し、前記バインダを揮発させると共に前記粉末ガラスを融合させて前記ペーストをフリットガラスとする工程と、
前記フリットガラスと第2のガラス基板を密着させ、フラッシュランプを照射し、前記フリットガラスと前記第2のガラス基板とを溶着させ、前記フリットガラスと前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とで閉空間を形成する工程と、
を有することを特徴とするガラス封止体の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、前記フラッシュランプは、前記閉曲線を成す隔壁を覆って照射され、かつ、前記閉曲線を成す隔壁の内側の一部には照射されないことを特徴とするガラス封止体の作製方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記フラッシュランプは、パルス幅10μs以上10ms以下で照射されることを特徴とするガラス封止体の作製方法。
【請求項4】
第1のガラス基板に粉末ガラスとバインダを含むペーストを塗布し、閉曲線を成す隔壁を形成する工程と、
前記隔壁を加熱し、前記バインダを揮発させると共に前記粉末ガラスを融合させて前記ペーストをフリットガラスとする工程と、
第2のガラス基板上に発光素子を形成する工程と、
前記フリットガラスと前記第2のガラス基板を密着させ、フラッシュランプを照射し、前記フリットガラスと前記第2のガラス基板とを溶着させ、前記フリットガラスと前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とで閉空間を形成して前記発光素子を前記閉空間に密封する工程と、
を有することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項5】
請求項4において、前記発光素子の電極につながる端子の一部は、前記閉空間の外に位置させ、前記端子と重なる前記フリットガラスには前記端子の凸部と噛み合う凹部を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、前記フラッシュランプは、前記閉曲線を成す隔壁を覆って照射され、かつ、前記閉曲線を成す隔壁の内側の一部には照射されないことを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6において、前記フラッシュランプは、パルス幅10μs以上10ms以下で照射されることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項8】
第2のガラス基板上に発光素子を形成する工程と、
粉末ガラスとバインダを含むペーストを前記第2のガラス基板上に塗布し、前記発光素子を囲む閉曲線を成す隔壁を形成する工程と、
前記隔壁に第1のフラッシュランプを照射し、前記バインダを揮発させると共に前記粉末ガラスを融合させて前記ペーストをフリットガラスとする工程と、
前記フリットガラスと前記第1のガラス基板を密着させ、第2のフラッシュランプを照射し、前記フリットガラスと前記第1のガラス基板とを溶着させ、前記フリットガラスと前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とで閉空間を形成して前記発光素子を前記閉空間に密封する工程と、
を有することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項9】
請求項8において、前記第1のフラッシュランプ、又は前記第2のフラッシュランプは、前記閉曲線を成す隔壁を覆って照射され、かつ、前記閉曲線を成す隔壁の内側の一部には照射されないことを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9において、前記第1のフラッシュランプ、又は前記第2のフラッシュランプは、パルス幅10μs以上10ms以下で照射されることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項11】
第2のガラス基板上に発光素子を形成する工程と、
粉末ガラスとバインダを含むペーストを前記第2のガラス基板上に塗布し、前記発光素子を囲む閉曲線を成す隔壁を形成する工程と、
前記隔壁と前記第1のガラス基板を密着させフラッシュランプを照射し、前記バインダを揮発させると共に前記粉末ガラスを融合させて前記ペーストをフリットガラスとする過程で、前記フリットガラスと前記第1のガラス基板とを溶着させ、前記フリットガラスと前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とで閉空間を形成して前記発光素子を前記閉空間に密封する工程と、
を有することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項12】
請求項8乃至請求項11において、前記発光素子の電極につながる端子の一部は、前記閉空間の外に位置させ、前記端子と重なる前記ペーストには前記端子の凸部と噛み合う凹部を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項13】
請求項8乃至請求項12において、前記隔壁の前記第1のガラス基板と接する面は平坦化されていることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項14】
請求項8乃至請求項13において、前記フラッシュランプは、前記閉曲線を成す隔壁を覆って照射され、かつ、前記閉曲線を成す隔壁の内側の一部には照射されないことを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項15】
請求項8乃至請求項14において、前記フラッシュランプは、パルス幅10μs以上10ms以下で照射されることを特徴とする発光装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−230891(P2012−230891A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−90053(P2012−90053)
【出願日】平成24年4月11日(2012.4.11)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】