説明

ガラス板の支持構造

【課題】十分な接着強度を有する構造シリコーンシーリング材を、短い養生時間で接着硬化させることで、SCNユニットガラスと同様のユニットガラスを製造することができるガラス板の支持構造を提供する。
【解決手段】アルミ押し出し部材2の略コの字型形状の溝内に嵌着されたゴム製の緩衝材4を介してガラス板1とアルミ押し出し部材2とが、2成分系、脱アルコールタイプの高モジュラスシリコーンシーリング材であって、25℃での可使時間が90分以下の高モジュラスシリコーンシーリング材3で工場で接着一体化されてガラスユニット9、9が構成される。ガラスユニット9、9は現場に納入され、アルミカバー材5を用いて、下地部材7にボルト部品6によって固定され、ガラスユニット9、9の間にはウェザーシール8が施工され、ユニットガラス9、9同士の水密性が確保され、ガラスカーテンウォール12が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス板の支持構造に係り、特に建物の壁面を構成するガラス板を建物の躯体側に支持させるためのガラス板の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物はDPG構法(Dot-point Glazing)によりガラス板を支持させて外壁を構築している例が増えている。一方、中高層ビルの外壁においては、DPG構法の場合、強化ガラスを採用することになるため、万一のガラス破損時の安全性確保の観点から、DPG構法ではなく、一般的な非強化のフロート板ガラスを用い、かつ、サッシ材をスリムにしたタイプが流行となりつつある。
【0003】
以前、熱線反射ガラスが多用されていた時代は、構造シリコーンシーリング材を用いたSSG構法(Structural Silicone-Sealant Glazing)が広く普及していたが、透明ガラスが主流の現在においては、ほとんど使用されていない。加えて、SSG構法では、構造シリコーンシーリング材の接着強度が性能を支配しているため、長期の接着耐久性に不安があったことも、この構法が採用されなくなった一因と考えられる。また、SSG構法は外観意匠性には優れるが、構造シリコーンシーリング材の接着強度に依存しているため、負圧の風圧力に対応するために、シーリング材の許容応力値以下(一般的には、引張り許容応力:1.4kgf/cm)となるように接着面積を確保する必要があり、これに起因して、室内の方立てを含めた見付け幅は必ずしもすっきりした内観とはなっていなかった。
【0004】
更に、SSG構法では、所定の接着信頼性を確保するために、シール施工を工場にて行うことにより管理していた。すなわち、室温25℃×湿度60%を代表とする温度湿度管理された環境下でのシール施工を標準とし、かつ、1週間程度その環境下で、外力を加えない状態で養生することを必須としていたため、結果的に、場所及び時間的な経費が加算され、コストアップを招いていた。
【0005】
特許文献1に示されるような、略コの字形状をした型材(アルミ部材)をガラス板の小口に接着固定する構法は、一般的にSCN構法(Structural Channel Glazing)と呼ばれる。このSCN構法によれば、アルミ部材とシーリング材との接着性の相性に左右されず、略コの字部材の機械的接合によりガラス板を支持するため、品質面では優れた構法といえる。
【0006】
また、構造シリコーンシーリング材の接着強度に依存しないため、すっきりとした内観意匠が実現できる可能性があるが、SSG構法と同じく、この略コの字部材の接着についての信頼性確保のため、室温25℃×湿度60%を代表とする温度湿度管理された環境でのシール施工を標準とし、かつ、1週間程度その環境下で養生する工程が必要とされてきた。そのため、場所・時間的経費の削減には至らず、大きなコストダウンを達成することはできなかった。
【0007】
ところで、SSG構法では、ガラス板とアルミ部材という異なる線膨張係数を有する部材を接着固定するため、温度変化に伴う熱伸びにより、せん断ずれが生じ、このせん断ずれが、構造シリコーンシーリング材に働くことになる。構造シリコーンシーリング材は、高モジュラスタイプであるため、せん断変形への追従性は、20〜30%であり、一般的なウェザーシールが60%であることに比較して、小さい値であるため、部材長さをあまり長くすることができなかった。
【0008】
また、SCN構法では、アルミ部材が露出し、直接日射にさらされるため、温度差は更に大きくなり、熱伸びの観点からは不利な条件となっていた。
【特許文献1】特許第2612400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術が有していた前述の課題を解消し、十分な接着強度を有する構造シリコーンシーリング材を、短い養生時間で接着硬化させることで、取り扱いが容易で従来に比して低価格なユニットガラスを製造することができるガラス板の支持構造を提供することを目的とする。また、本発明は、温度変化に伴う熱伸びによりせん断ずれがシーリング材に生じることなく、熱伸びを逃がすことができるガラス板の支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、ガラス板の少なくとも一つの辺部に、略コの字形状の金属製部材が接着固定され、該金属製部材によってガラス板が支持されるガラス板の支持構造において、前記金属製部材を前記ガラス板に接着するシーリング材が、2成分系、脱アルコールタイプの高モジュラスシリコーンシーリング材であり、25℃での可使時間が90分以下であることを特徴としている。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、シーリング材として、2成分系、脱アルコールタイプの高モジュラスシリコーンシーリング材であって、25℃での可使時間が90分以下のシーリング材を使用したので、養生時間が短く、接着品質が高く、かつ、従来に比して低価格なガラス板の支持構造を提供できる。なお、可使時間とは、2成分系シーリング材の基材と硬化剤とを練り混ぜた後、作業が出来る時間の範囲をいい、JIS A1439(2004年)に規定されている。
【0012】
請求項2に記載の発明は、ガラス板の少なくとも一つの辺部に、略コの字形状の金属製部材が接着固定され、該金属製部材によってガラス板が支持されるガラス板の支持構造において、前記金属製部材を前記ガラス板に接着するシーリング材が、2成分系、脱アルコールタイプの高モジュラスシリコーンシーリング材であり、硬化したシーリング材のゴム硬度が30度に到達する時間が25℃で4時間以内であることを特徴としている。
【0013】
シーリング材の硬化特性は、硬化時間とゴム硬度の関係で定義することもできる。ガラス板と金属製部材とを工場で接着一体化して構成する場合、一体化されたガラスユニットを工場内で梱包して搬送する上で、ゴム硬度は約30度に達しているのが望ましい。請求項2に記載の発明によれば、シーリング材の硬化特性は、硬化開始からゴム硬度30度に到達するまでの時間が25℃で4時間以下であり、接着性能の発現のために、温度湿度をコントロールされた環境下での厳重な管理を必要とせず、養生時間も極めて短時間でよい。
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記硬化したシーリング材のゴム硬度が40度に到達する時間が25℃で4時間以内であることを特徴としている。
実用的な強度に到達したときのゴム硬度は、通常40度程度とされている。請求項3に記載の発明によれば、シーリング材の硬化特性は、硬化開始からゴム硬度40度に到達するまでの時間が25℃で4時間以下であり、この硬化スピードにより、養生時間がさらに短縮され、結果的に低価格を実現できる。なお、従来のシーリング材は、硬化スピードの速いものであっても、ゴム硬度40度に到達するまでの時間は、24時間程度必要であった。なお、本明細書で硬化とは、JIS A5758(2004年)の定義に従い、シーリング材が液状またはペースト状から、ゴム状態へ移る非可逆的な変化のことを意味する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記ガラス板の前記辺部には面取り部が形成され、該面取り部と対向する前記金属製部材の対向部分は、該面取り部と合致する略三角形状に形成され、前記辺部に前記金属製部材が接着固定された状態で、前記金属製部材と前記ガラス板表面とが略同一面となることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、ガラス板の面取り部と、これに対向する金属製部材の対向部分とによって、ガラス板は金属製部材に保持され、また、金属製部材の前記対向部分は、面取り部と合致する略三角形状に形成されるので、辺部に金属製部材が接着固定された状態で、金属製部材とガラス板表面とが略同一面となっているため、外観意匠性が向上する。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記金属製部材は、前記ガラス板と接する内側部分にゴム製又は金属製の成型体層を有し、該成型体層を介して前記金属製部材が前記シリコーンシーリング材により前記ガラス板に接着されることを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、温度変化に伴うガラス板と金属製部材とのせん断変形を吸収するために、ガラス板の少なくとも一つの辺部に接着される、略コの字形状の金属製部材は、ガラス板と接する内側部分に、ゴム製又は金属製の成型体層を有している。接着に使用されるシリコーンシーリング材は、硬化時に成形体層と嵌合一体化する。これによって、金属製部材は、成型体層を介してシリコーンシーリング材によりガラス板に接着される。また、シリコーンシーリング材と金属製部材とは直接接着しておらず、成型体層を介して間接的に接着されている。このため、熱伸びが生じた場合、金属製部材と成型体層との界面で成型体層が滑ることにより、熱伸びを逃がすことができ、熱伸びの懸念が無くなる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記金属製部材は、前記ガラス板と接する内側部分全体に離型効果を有する薄膜層を有し、該薄膜層を介して前記金属製部材が前記シリコーンシーリング材により前記ガラス板に接着されることを特徴としている。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、シリコーンシーリング材と金属製部材とは直接接着しておらず、薄膜層を介して間接的に接着されている。このため、熱伸びが生じた場合、金属製部材と薄膜層との界面で薄膜層が滑ることにより、熱伸びを逃がすことができ、熱伸びの懸念が無くなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るガラス板の支持構造によれば、養生時間を短縮可能なシーリング材を使用したので、取り扱いが容易で従来に比して低価格なガラス板の支持構造を提供できる。
【0021】
また、ガラス板の面取り部と、これに対向する金属製部材の対向部分とによって、ガラス板は金属製部材に保持され、また、金属製部材の前記対向部分は、面取り部と合致する三角形状に形成されるので、金属製部材が接着固定された状態で、金属製部材とガラス板表面と略同一面となっているため、外観意匠性が向上する。
【0022】
更に、本発明に係るガラス板の支持構造によれば、シリコーンシーリング材と金属製部材とは直接接着しておらず、成型体層を介して間接的に接着されているので、熱伸びが生じた場合、金属製部材と成型体層との界面で成型体層が滑ることにより、熱伸びを逃がすことができ、熱伸びの懸念が無くなる。
【0023】
更にまた、本発明に係るガラス板の支持構造によれば、シリコーンシーリング材と金属製部材とは直接接着しておらず、薄膜層を介して間接的に接着されているので、熱伸びが生じた場合、金属製部材と薄膜層との界面で薄膜層が滑ることにより、熱伸びを逃がすことができ、熱伸びの懸念が無くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
図5は、実施の形態のガラス板の支持構造が適用されたガラスカーテンウォール12の一部を室内側から見た斜視図である。また、図1は、請求項1〜3に記載の発明に対応する第1の実施の形態を示したガラス板支持構造の断面図であり、隣接する2枚のガラス板1、1の支持構造を示した水平方向断面図である。
【0026】
更に、図1は、鉄骨フラットバーを下地部材7としたガラスカーテンウォールのガラス板周りの詳細図であり、符号2は略コの字型形状のアルミ押し出し部材(金属製部材)を示している。また、符号3は、本発明の特徴である速硬化性の高モジュラスシリコーンシーリング材を示している。図1では、ガラス板1とアルミ押し出し部材2との直接的な接触を防止するため、及び、この部分の水密性を確保するために、アルミ押し出し部材2の略コの字型形状の溝内に嵌着されたゴム製の緩衝材4を介してガラス板1とアルミ押し出し部材2とが接着一体化されており、アルミ押し出し部材2は、ガラス板1の左右の縦辺のほぼ全長にわたって設けられている。なお、金属製部材としては、アルミニウム製以外の金属としてもよいが、接着性良好の理由によりアルミニウム製が特に好ましい。
【0027】
ガラス板1とアルミ押し出し部材2の接着は全て工場にて行われる。ガラス板1にアルミ押し出し部材2を、工場において接着一体化して構成されるガラスユニット9、9が、現場へ納入される。
【0028】
所定の寸法に加工された下地部材7は、スチール製、ステンレス製、又はアルミニウム製であり、現場の所定の位置に精度よく施工される。
【0029】
現場へ納入されたガラスユニット9、9は、アルミカバー材5を用いて、下地部材7にボルト部品6によって固定されている。なお、アルミカバー材5とアルミ押し出し部材2とは、アルミカバー材5に形成された係合部10を、アルミ押し出し部材2に形成された凹部11に嵌合させることにより、アルミ押し出し部材2がアルミカバー材5に取り付けられる。
【0030】
ガラスユニット9、9の間には、バッカーと称されるスポンジ(不図示)を介在させ、この後、アルミ押し出し部材2、2間の隙間に現場でウェザーシール8が施工され、ユニットガラス9、9同士の水密性が確保される。このようにして、ガラスカーテンウォール12が構成される。
【0031】
このように施工されたガラスユニット9の上下の横辺は、通常、サッシ部材の溝に嵌め込まれる構造となり、サッシ部材によりガラス板1の自重が支持される。ガラス板1が受ける風圧時の荷重等の面外変位は、ガラス板1の左右の縦辺に装着されたアルミ押し出し部材2からアルミカバー材5、そして下地部材7に伝達される。
【0032】
一方、地震時においては、ガラス板1は、主に、ロッキング(回転)することになるが、アルミ押し出し部材2とアルミカバー材5との間(係合部10と凹部11との間)で、上下方向のすべりが生じることで、ロッキングを容易とする構造となっている。
【0033】
速硬化性の高モジュラスシリコーンシーリング材3は、ガラス板1の室内側面1Aとアルミ押し出し部材2のリブ2Aとの間に充填され、この高モジュラスシリコーンシーリング材3によってアルミ押し出し部材2がガラス板1に直接接着されている。
【0034】
高モジュラスシリコーンシーリング材3は、2成分系、脱アルコールタイプの高モジュラスシリコーンシーリング材であって、25℃での可使時間が90分以下、および/または硬化したシーリング材のゴム硬度が40度に到達する時間が4時間以内のシーリング材であり、非常に硬化スピードが速い。
【0035】
図2は、請求項4に対応する第2の実施の形態の代表的な水平方向断面図である。
【0036】
基本的な構成は、図1の構成と同様であるが、ガラス板1の縦辺部が、斜面取り加工されており、この斜面取り部1Bに対向して、略コの字型のアルミ押し出し部材2の三角形状の対向部2Bが、適切に配置されることにより、ガラス板1の表面とアルミ押し出し部材2とによって、完全にフラットな表面が形成されている。
【0037】
図2に示した第2の実施の形態のガラス板の支持構造によれば、ガラス板1の斜面取り部1Bと、これに対向するアルミ押し出し部材2の対向部分2Bとによって、ガラス板1はアルミ押し出し部材2に保持され、また、アルミ押し出し部材2の対向部分2Bは、斜面取り部1Bと合致する略三角形状に形成されるとともに緩衝材4を介して接触されるので、斜面取り部1Bアルミ押し出し部材2が接着固定された状態で、アルミ押し出し部材2とガラス板1の表面とが略同一面となっているため、外観意匠性が向上する。
【0038】
なお、図2では、アルミカバー材5に形成された係合部10と、アルミ押し出し部材2に形成された凹部11とを嵌合させる際に、アルミニウム製の部材同士が直接接触して発音することを避けるため、係合部10の表面に薄いゴム製シートからなる発音防止材10Aを設けている。
【0039】
図3は、請求項5に対応する第3の実施の形態の代表的な水平方向断面図である。
【0040】
同図によれば、アルミ押し出し部材2は、その内側面全体に、ゴム製の成形体層8を有している。なお、成形体層8はアルミニウム製のものであってもよい。
【0041】
ガラス板1と成形体層8とによって形成される空間は、略くさび形状をなし、この空間に、アルミ押し出し部材2の側面開放部から速硬化性の高モジュラスシリコーンシーリング材3が施工(充填)される。施工された高モジュラスシリコーンシーリング材3は、硬化時に、ガラス板1の室内側面1Aに接着するとともに成型体層8と嵌合した状態でゴム状に硬化する。
【0042】
高モジュラスシリコーンシーリング材3と成形体層8は、基本的には接着するが、接着していない設計としてもよい。このような嵌合構造の断面形状をとることで、ガラス板1とアルミ押し出し部材2とが固定され外れることはない。そして、アルミ押し出し部材2の長手方向のせん断ずれ−熱伸び−に際しては、成形体層8が、アルミ押し出し部材2の内部を滑ることで、その影響を緩和させることが可能となる。
【0043】
なお、成形体層8を限りなく薄くし、離型効果を有する薄膜層とすることにより、請求項6の発明に対応する実施の形態のガラス板の支持構造を構成できる。この支持構造は、図3に示した支持構造と略同一なので、ここでは図面を省略している。
【0044】
上述した実施の形態では、速硬化性の高モジュラスシリコーンシーリング材3を使用することが最大の特徴である。この高モジュラスシリコーンシーリング材3を特定する指標として、可使時間を使用する。具体的には、2成分系、脱アルコールタイプの高モジュラスシリコーンシーリング材であって、25℃における可使時間は、およそ90分である。
可使時間は温度依存性があり、例えば5℃では、約130分程度である。
【0045】
また、高モジュラスシリコーンシーリング材3を特定する別の指標として、時間とゴム硬度の関係を使用する。具体的には、2成分系、脱アルコールタイプの高モジュラスシリコーンシーリング材であって、その硬化特性は、25℃の温度条件下において、ゴム硬度30度に到達するまでの時間が4時間以下である。ガラス板と金属製部材とを工場で接着一体化して構成する場合、ゴム硬度が約30度に達していれば、一体化されたガラスユニットを工場内で梱包して搬送するのに支障は生じない。また、接着性能の発現のために、温度湿度をコントロールされた環境下での厳重な管理を必要とせず、養生時間も極めて短時間でよい。また、実用的な強度に到達したときのゴム硬度は、通常40度程度とされており、従来のシーリング材は、硬化スピードの速いものであっても、ゴム硬度40度に到達するまでの時間は、24時間程度必要であった。
【0046】
実施の形態の高モジュラスシリコーンシーリング材3としては、例えば、複層ガラス製造における2次シール材用途に最近開発された速硬化性のもの等も、好適に使用できる。
このようなシーリング材としては、(I)(A)成分および必要に応じて(D)成分を配合してなり、(B)成分および(C)成分を含まない組成物と、(II)(B)成分と(C)成分および必要に応じて上記のその他の添加剤を配合してなり、(A)成分を含まない組成物からなる2成分型室温硬化性シリコーンゴム組成物であることが好ましい。製造が容易であり、1種の組成物(I)と組成や配合比を変更した組成物(II)を組み合わせることで、用途や施工方法に応じた多様な硬化速度や接着性などの各種特性を備えた室温硬化性シリコーンゴム組成物を容易に得ることができるからである。
(A)成分は、(A−1)分子鎖両末端がアルコキシシリル基もしくはヒドロキシシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン(20〜100重量部)と(A−2)一方の分子鎖末端のみがアルコキシシリル基もしくはヒドロキシシリル基で封鎖され、分子鎖の他端がアルキル基またはアルケニル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン(0〜80重量部)とからなる25℃に於ける粘度が20〜1,000,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン 100重量部である。
(B)成分は、(B−1)ビス(メトキシシリル)アルカンまたはオルガノトリメトキシシラン(ただし、アミノ基含有オルガノトリメトキシシランは含まない)と(B−2)メトキシ基含有カルバシラトラン誘導体と(B−3)アミノアルキルメトキシシランとからなるメトキシ基含有含ケイ素化合物((B−1)成分は(A)成分100重量部に対して0.5〜15重量部となる量であり、(B−2)成分と(B−3)成分は、(A)成分100重量部に対して合計で0.1〜10重量部となる量であって(B−2)成分と(B−3)成分の比率は重量比で20:80〜80:20である。)である。
(B−1)成分は1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリメトキシシリル)ノナンおよび1,10−ビス(トリメトキシシリル)デカンからなる群から選択されるビス(メトキシシリル)アルカンであるのが好ましい。
(B−3)成分はN−(β−アミノアルキル)アミノアルキルオルガノジメトキシシランまたはN−(β−アミノアルキル)アミノアルキルトリメトキシシランであるのが好ましい。
(C)成分は、硬化触媒0.001〜20重量部であり、特に有機スズ化合物であるのが好ましい。
(D)成分は、炭酸カルシウム微粉末であるのが好ましい。
このシーリング材は、使用に際して個別に保存される組成物(I)、(II)を混合して使用する。その混合方法としては、保存容器から計量ポンプを用いて組成物の各成分をスタティックミキサーに導入して混合使用する方法が例示される。また、開放系のミキサーで組成物の各成分を混合して使用する際には混合物を脱泡操作してから使用することが好ましい。
【0047】
以上の如く実施の形態のガラス板の支持構造によれば、シーリング材として、2成分系、脱アルコールタイプの高モジュラスシリコーンシーリング材であって、25℃での可使時間が90分以下のシーリング材3を使用したので、速硬化性であり、養生時間が短く、接着品質が高く、かつ、従来に比して低価格なガラス板の支持構造が得られる。また、シーリング材の硬化特性は、硬化開始からゴム硬度30度に到達するまでの時間が25℃で4時間以下であり、この硬化スピードにより、養生時間が短縮され、結果的に低価格を実現できる。
【0048】
従来のSCN構法では、通常のSSG構法に使用されている構造シリコーンシーリング材を使用しているため、接着性能の発現のために、温度湿度を管理された環境下での1週間程度の養生時間が必要であったが、実施の形態では、4から6時間程度で十分に硬化が進む速硬化性の高モジュラスシリコーンシーリング材3を使用するため、温度湿度コントロールされた部屋が不要であり、養生時間も極めて短時間でよい。
【0049】
このため、養生スペース、養生時間が短縮でき、低コストでガラスユニット9を製造することができる。硬化特性は温度に依存し、スピードが変化するが、従来の構造シリコーンシーリング材のように管理する必要はない。
【実施例】
【0050】
高モジュラスシリコーンシーリング材3として、複層ガラス製造における2次シール材用途に最近開発された速硬化性のものを用いた。25℃での可使時間が90分以下のシーリング材を使用したので、養生時間が短く、接着品質が高く、かつ、従来に比して低価格なガラス板の支持構造が得られる。図4は、このシーリング材の、硬化開始時点からの養生時間とそのときのゴム硬度との関係を、25℃の場合で、従来品と比較したものであり、従来品と比較して、実用的強度の発現を示すゴム硬度に到達するまでの時間が極めて早い。また、このシーリング材は、ガラス板1及びアルミ押し出し部材2との接着性が極めて良好であるので、プライマー無しで使用でき、作業性に優れる。
【0051】
このシーリング材は、硬化後の特性として、非常にゴム硬度が高く、アルミ押し出し部材2をしっかりとガラス板1に接着固定させることが可能となる。また、従来の複層ガラス用の2次シール材と比較すると、硬化時間が短く、劣化後のゴム物性の低下が少ないという優れた特長を有しており、本発明に係るガラス板の支持構造に好適なシーリング材となる。
【0052】
本発明に係る高モジュラスシリコーンシーリング材3は、硬化後の特性としては、ゴム硬度が非常に高いが、熱伸びを想定したせん断変形への追従性は、10%までは問題無く使用することが可能であり、15〜20%程度の追従性能がある。また、非常に接着強度の強い高モジュラスシリコーンシーリング材3であるため、アルミ押し出し部材2の自由膨張を拘束することが可能となる。すなわち、アルミ押し出し部材2とガラス板1とを比較すると、アルミニウムの方がガラスより線膨張係数が大きいので、同じ温度が生じると、ガラス板1よりアルミ押し出し部材2の伸びの方が大きい。ガラス板1とアルミ押し出し部材2とは高モジュラスシリコーンシーリング材3で接着固定されているため、自由に伸びることができない。
【0053】
ウェザーシールのような低モジュラスのシーリング材の場合は、ほぼ自由膨張に近い挙動となるが、本実施例に係るシーリング材によれば、アルミ押し出し部材2は自由膨張を妨げられ、約半分程度しか伸びることができないことを、FEM解析及び実大での加熱実験により確認した。この高強度接着の利点を使用することで、通常の熱伸びよりも、有利に設計することが可能となり、部材長さを長く設定することができる。
【0054】
また、請求項5、6に対応する図3の実施の形態を使用すれば、高モジュラスシリコーンシーリング材3と、アルミ押し出し部材2とは直接接着していないため、熱伸びが生じた場合、アルミ押し出し部材2と成形体層8(薄膜層)との界面ですべりが生じることにより、熱伸びを逃がすことが可能となり、熱伸びに対する懸念が無くなる。なお、アルミ押し出し部材2と成形体層8(薄膜層)の間に隙間が生じることにより、水密性上の弱点となる可能性があるが、通常のカーテンウォールでの使用を考えた場合、横方向の無目材に排水経路を設けることで、水分の浸入に対して対応することができる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態ないし実施例を図面により詳述してきたが、本発明は前記実施の形態ないし実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の設計変更等が可能である。例えば、金属性部材としてのアルミ押し出し部材2をガラス板1の左右の縦辺に代えて、上下の横辺に設ける構成としたり、4辺全てにアルミ押し出し部材2を設ける構成としてもよい。また、ガラス板1として、単板ガラスに代えて、合わせガラスや複層ガラス等の各種のガラス板を用いても、全く同様な構成とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係るガラス板の支持構造の第1の実施の形態を示した水平方向断面図であり、図5のA−A線に沿う断面図
【図2】本発明に係るガラス板の支持構造の第2の実施の形態を示した水平方向断面図
【図3】本発明に係るガラス板の支持構造の第3の実施の形態を示した水平方向断面図
【図4】実施の形態に使用される速硬化性の2成分タイプの高モジュラスシリコーンシーリング材の硬化特性を示したグラフ
【図5】実施の形態のガラス板の支持構造が適用されたガラスカーテンウォールの一部を室内側から見た斜視図
【符号の説明】
【0057】
1…ガラス板、2…アルミ押し出し部材、3…高モジュラスシリコーンシーリング材、4…緩衝部材、5…アルミカバー部材、6…固定ナット、7…下地部材、8…成形体層、9…ガラスユニット、10…係合部、11…凹部、12…ガラスカーテンウォール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板の少なくとも一つの辺部に、略コの字形状の金属製部材が接着固定され、該金属製部材によってガラス板が支持されるガラス板の支持構造において、
前記金属製部材を前記ガラス板に接着するシーリング材が、2成分系、脱アルコールタイプの高モジュラスシリコーンシーリング材であり、25℃での可使時間が90分以下であることを特徴とするガラス板の支持構造。
【請求項2】
ガラス板の少なくとも一つの辺部に、略コの字形状の金属製部材が接着固定され、該金属製部材によってガラス板が支持されるガラス板の支持構造において、
前記金属製部材を前記ガラス板に接着するシーリング材が、2成分系、脱アルコールタイプの高モジュラスシリコーンシーリング材であり、硬化したシーリング材のゴム硬度が30度に到達する時間が25℃で4時間以内であることを特徴とするガラス板の支持構造。
【請求項3】
前記硬化したシーリング材のゴム硬度が40度に到達する時間が25℃で4時間以内であることを特徴とする請求項2に記載のガラス板の支持構造。
【請求項4】
前記ガラス板の前記辺部には面取り部が形成され、該面取り部と対向する前記金属製部材の対向部分は、該面取り部と合致する略三角形状に形成され、前記辺部に前記金属製部材が接着固定された状態で、前記金属製部材と前記ガラス板表面とが略同一面となることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラス板の支持構造。
【請求項5】
前記金属製部材は、前記ガラス板と接する内側部分にゴム製又は金属製の成型体層を有し、該成型体層を介して前記金属製部材が前記シリコーンシーリング材により前記ガラス板に接着されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラス板の支持構造。
【請求項6】
前記金属製部材は、前記ガラス板と接する内側部分全体に離型効果を有する薄膜層を有し、該薄膜層を介して前記金属製部材が前記シリコーンシーリング材により前記ガラス板に接着されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラス板の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−144572(P2008−144572A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274799(P2007−274799)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(391017975)AGC硝子建材エンジニアリング株式会社 (28)
【Fターム(参考)】