説明

ガラス板の製造方法

【課題】電極を備えた熔解槽を用いてガラスを製造するとき、長期間熔解槽を用いて安定的にガラスを製造する。
【解決手段】ガラスの製造方法は、少なくとも一対の電極を備える熔解槽にガラス原料を導入し前記ガラス原料を熔解する工程と、前記ガラス原料を熔解してつくられる溶融ガラスを前記一対の電極を用いて通電加熱する工程と、を含む。前記熔解槽は、複数の耐火レンガが積層されて構成される。前記一対の電極の少なくとも一方の第1電極は、前記支持用耐火レンガに載せられて支持され、前記支持用耐火レンガに載せられて支持された第2電極と端面同士が接続される。前記通電加熱する工程において、前記第1電極と接続する前記第2電極の端面と反対側に位置する前記第2電極の後端面から前記第1電極に向けて荷重を負荷して、前記第1電極と前記第2電極との間の端面間の隙間を低減させた状態で、前記第2電極の前記後端面から通電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスを製造する場合、一般に、熔解槽に投入されたガラス原料を熔解して得られる溶融ガラスがつくられる。この溶融ガラスは、脱泡等により清澄されたのち、成形装置でシート状ガラスに成形される。このシート状ガラスが所定の長さで切断されることによりガラス板が得られる。
【0003】
ガラス原料を熔解して溶融ガラスをつくるとき、溶融ガラスの液面上に投入されたガラス原料は、バーナー等の火炎により熔解される。具体的には、ガラス原料は、バーナー等により加熱された炉壁の熱輻射や高温化した気相雰囲気により次第に熔解を始め、下方の溶融ガラスに熔けて行く。一方、溶融ガラスは、熔解槽の壁面に蓄えられ、溶融ガラスと接触する一対の電極を用いて通電される。この通電により、溶融ガラス自身はジュール熱を発し、このジュール熱が溶融ガラス自身を加熱する。
【0004】
熔解炉に用いる電極に使用する材料として、白金や白金ロジウム合金、モリブデン、酸化錫等の耐熱性材料を使用することが知られている(特許文献1)。
モリブデン電極において、電極にネジを設けて別の電極を接続する技術が知られている。電極が雄ねじおよび雌ねじによって別の電極と接続されて使用される場合に、この電極と別の電極の接続部分に起因する接続不良の発生を防止するために、雌ねじにモリブデンペーストを塗布して電極と別の電極を接続する技術も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−292323号公報
【特許文献2】特開昭58―156543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、雄ねじおよび雌ねじによって電極を別の電極と接続する上述の技術は、電極周りの構成が複雑になり好ましくない。
これに対して、電極が熔解槽に設けられた基準とする耐火レンガの上に載せられて支持された状態で、電極に継ぎ足し用電極(以降、単に継ぎ足し電極という)が継ぎ足される場合がある。この場合、継ぎ足し電極も、上記耐火レンガの面上を滑らせて電極に継ぎ足される。
しかし、上記耐火レンガは、表面の平面度が低く、電極と継ぎ足し電極の接続する端面同士が必ずしも面接触せず、接続端面間に隙間が生じ、接続抵抗が上昇する場合がある。具体的には、電極と継ぎ足し用の電極の接続する端面の延在方向の中心軸が平行にならず、隙間が生じる場合がある。つまり、電極と継ぎ足し用の電極の接続する端面の加工精度が良好であっても隙間が生じ、さらには、上記隙間によって端子間で放電が発生し、電極及び継ぎ足し電極の端面が損傷して、接続抵抗が上昇する場合もある。
また、上記耐火レンガの他に複数の耐火レンガとともに電極の支持面が形成されている場合、耐火レンガ同士の継ぎ目によって段差ができ、電極と継ぎ足し電極の接続する端面同士が必ずしも面接触しない場合が生じる。また、上記耐火レンガが、多段に積層された耐火レンガの層に載せられている場合、多段に積層された耐火レンガの寸法や耐火レンガ同士の継ぎ目の寸法等が十分に均一でないため、電極及び継ぎ足し電極が載せられる耐火レンガの表面は、電極と接触して保持する電極の上方の耐火レンガの面と平行な平面となり難い。このため、電極と継ぎ足し電極の接続する端面同士が必ずしも面接触せず、接続
端面間に隙間が生じ、接続抵抗が上昇する場合もある。
このため、熔解槽において安定した溶融ガラスの通電加熱が行えず、ひいては、熔解槽を用いて長期間安定的にガラスを製造することができない場合が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、電極を備えた熔解槽を用いてガラスを製造するとき、長期間熔解槽を用いて安定的にガラスを製造することができるガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ガラスの製造方法である。当該方法は、
少なくとも一対の電極を備える熔解槽にガラス原料を導入し前記ガラス原料を熔解する工程と、
前記ガラス原料を熔解してつくられる溶融ガラスを前記一対の電極を用いて通電加熱する工程と、を含む。
前記熔解槽は、複数の耐火レンガが積層されて構成される。
前記一対の電極の少なくとも一方の第1電極は、前記熔解槽を構成する前記耐火レンガのうち前記一対の電極の周りの耐火レンガによって保持されるとともに前記支持用耐火レンガに載せられて支持されている。前記第1電極の端面は、前記支持用耐火レンガに載せられて支持された前記一対の電極とは別の第2電極の端面と接続されている。
前記通電加熱する工程において、前記第1電極に接続する前記第2電極の端面と反対側に位置する前記第2電極の後端面から前記第1電極に向けて荷重を負荷して、前記第1電極と前記第2電極との間の端面間の隙間を低減した状態で、前記第2電極の前記後端面から通電する。
【0009】
その際、前記荷重を、前記第2電極の後端面から、弾性部材を介して負荷する、ことが好ましい。
【0010】
また、前記一対の電極は、酸化錫で構成され、前記第1電極および前記第2電極が互いに接続する端面には、互いに対向する凹部を有し、前記凹部に棒状の酸化錫材を設けることにより、前記接続する端面の位置ずれを防止する。
【0011】
前記熔解槽は、例えば、前記溶融ガラスを通電加熱する複数の電極体要素が束ねられた電極体と、前記電極体要素のそれぞれに接続する継ぎ足し用電極体要素が束ねられた継ぎ足し用電極体と、を有する。この場合、前記電極体要素のそれぞれが前記第1電極であり、前記継ぎ足し用電極体要素のそれぞれが前記第2電極である。前記継ぎ足し用電極体要素が前記電極体要素と接続する複数の接続端面は、前記継ぎ足し用電極体要素の延在方向の位置に関して、少なくとも一部分においてお互いに位置ずれしている。
【0012】
前記熔解槽は、例えば、前記溶融ガラスを通電加熱する複数の電極体要素が束ねられた電極体と、前記電極体要素のそれぞれに接続する継ぎ足し用電極体要素が束ねられた継ぎ足し用電極体と、を有する。この場合、前記電極体が前記第1電極であり、前記継ぎ足し用電極体が前記第2電極である。
【0013】
本発明の他の一態様は、同様に、ガラスの製造方法である。当該製造方法は、
少なくとも一対の電極を備える熔解槽にガラス原料を導入し前記ガラス原料を熔解する工程と、
前記ガラス原料を熔解してつくられる溶融ガラスを前記一対の電極を用いて通電加熱する工程と、を含む。
前記熔解槽は、複数の耐火レンガが積層されて構成される。
前記一対の電極は、前記熔解槽を構成する前記耐火レンガのうち該電極の周りの耐火レンガによって保持されるとともに、該電極の下部に設けられる支持用耐火レンガの層に載せられて支持される。
前記一対の電極の少なくとも一方の電極の端面に接続するように、前記支持用耐火レンガの上に継ぎ足し用電極が載せられ、かつ、該電極の延在方向の中心軸と前記継ぎ足し用電極の延在方向の中心軸とが平行になるように、前記継ぎ足し用電極の向きが調整される。
【発明の効果】
【0014】
上記形態のガラスの製造方法では、電極を備えた熔解槽を用いてガラスを製造するとき、長期間熔解槽を用いて安定的にガラスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態のガラスの製造方法の工程を説明する工程図である。
【図2】図1に示す熔解工程〜切断工程を行う装置を模式的に示す図である。
【図3】図1に示す熔解工程を行う熔解槽を説明する図である。
【図4】(a)は、図3に示す熔解槽における電極の配置を説明する図であり、(b)は、電極の摩耗を説明する図である。
【図5】(a),(b)は、電極と継ぎ足し電極の端面間の接続を説明する図である。
【図6】本実施形態に用いるコネクタ及び荷重負荷機構を説明する図である。
【図7】図6に示す継ぎ足し用電極体要素のコネクタを説明する図である。
【図8】(a)〜(c)は、電極と継ぎ足し電極の継ぎ足しの変形例1を示す図である。
【図9】(a)は、本実施形態に用いる熔解槽の設置を説明する図であり、(b)は、電極と継ぎ足し電極の横方向の位置ずれを説明する図である。
【図10】(a)は、実施例で行う接続抵抗の評価法を説明する図であり、(b)は、電極体要素と継ぎ足し用電極体要素の接続の一状態を示す図である。
【図11】(a),(b)は、本実施形態の電極と継ぎ足し電極の継ぎ足しの変形例2を説明する図である。
【図12】(a),(b)は、本実施形態の電極と継ぎ足し電極の継ぎ足しの変形例3を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(ガラスの製造方法の全体概要)
以下、本実施形態のガラスの製造方法について説明する。図1は、本実施形態のガラスの製造方法の工程を説明する工程図である。
ガラスの製造方法は、熔解工程(ST1)と、清澄工程(ST2)と、均質化工程(ST3)と、供給工程(ST4)と、成形工程(ST5)と、徐冷工程(ST6)と、切断工程(ST7)と、を主に有する。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有し、梱包工程で積層された複数のガラス板は、納入先の業者に搬送される。
【0017】
図2は、熔解工程(ST1)〜切断工程(ST7)を行う装置を模式的に示す図である。当該装置は、図2に示すように、主に熔解装置200と、成形装置300と、切断装置400と、を有する。熔解装置200は、熔解槽201と、清澄槽202と、攪拌槽203と、第1配管204と、第2配管205と、を主に有する。
【0018】
熔解工程(ST1)では、熔解槽201内に供給されたガラス原料を、バーナー206(図3参照)から発する火焔で加熱して熔解して、溶融ガラスMGが作られる。この後、電極体208(図3参照)を用いて溶融ガラスMGが通電加熱される。
清澄工程(ST2)は、清澄槽202において行われる。清澄槽202内の溶融ガラスMGが加熱されることにより、溶融ガラスMG中に含まれるO2等の気泡は、清澄剤の還元反応により生成される酸素を吸収して成長し液面に浮上して放出される、あるいは、気泡中の酸素等のガス成分が、清澄剤の酸化反応のために溶融ガラス中に吸収されて、気泡が消滅する。
均質化工程(ST3)では、第1配管204を通って供給された攪拌槽203内の溶融ガラスMGがスターラを用いて攪拌されることにより、ガラス成分の均質化が行われる。
供給工程(ST4)では、第2配管205を通して溶融ガラスMGが成形装置300に供給される。
【0019】
成形装置300では、成形工程(ST5)及び徐冷工程(ST6)が行われる。
成形工程(ST5)では、溶融ガラスMGがシート状ガラスに成形され、シート状ガラスの流れが作られる。本実施形態では、後述する成形体14を用いたオーバーフローダウンドロー法を用いる。徐冷工程(ST6)では、成形されて流れるシート状ガラスが所望の厚さになり、内部歪が生じないように、さらに、熱収縮率が大きくならないように、冷却される。
切断工程(ST7)では、切断装置400において、成形装置300から供給されたシート状ガラスを所定の長さに切断することで、板状のガラス板が得られる。切断されたガラス板はさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス板が作られる。この後、ガラス板の端面の研削、研磨が行われ、ガラス板の洗浄が行われ、さらに、気泡や脈理等の異常欠陥の有無が検査された後、検査合格品のガラス板が最終製品として梱包される。
【0020】
(熔解槽)
図3は、熔解工程を行う熔解槽201を説明する図である。
熔解槽201は、複数の耐火物部材(耐火レンガ)が積層されて構成されている。
熔解槽201に設けられる三対の電極のうちの少なくとも一対の電極を構成する一方の第1電極は、熔解槽201を構成する耐火物部材(耐火レンガ)によって保持されるとともに、この一対の電極の下部に設けられる耐火物部材(耐火レンガ)に載せられて支持されている。この第1電極には、この第1電極の端面に接続するように、耐火物部材(耐火レンガ)に載せられて支持された第2電極(継ぎ足し用電極)が接続されている。第2電極(継ぎ足し用電極)は、上記一対の電極とは異なる電極である。熔解槽201において溶融ガラスを通電加熱するとき、第1電極と接続する第2電極の端面と反対側に位置する第2電極の後端面から第1電極に向けて荷重を負荷して、第1電極と第2電極との間の端面間の隙間を低減させた状態で、第2電極の後端面から通電する。第1電極と第2電極との間の端面間の隙間を低減させた状態には、隙間が全く無くなった状態の他、隙間が小さくなった状態も含まれる。隙間が全くなくなる場合、例えば、継ぎ足し用電極の中心軸の向きが調整されることにより、上記隙間が無くなる。
本実施形態では、後述するように、複数の長尺状の複数の電極体要素208aのそれぞれが、第1電極に対応し、複数の長尺状の継ぎ足し用電極体要素209aのそれぞれが、第2電極(継ぎ足し用電極)に対応する。また、電極体要素208aを束ねた電極体208を第1電極に対応させることもでき、継ぎ足し用電極体要素209aを束ねた継ぎ足し用電極体209を第2電極(継ぎ足し用電極)に対応させることもできる。以下、熔解槽201について詳細に説明する。なお、本実施形態は、一対の電極のうち一方の電極に対して継ぎ足し用電極体要素を用いる構成であるが、一対の電極のそれぞれに対して継ぎ足し用電極体要素を用いる構成とすることもできる。また、本実施形態における三対の電極の二対の電極あるいは三対の電極に対して継ぎ足し用電極体要素を用いることもできる。また、熔解槽210に用いる電極の対の数は、三対に限らず、一対、二対でもよく、四対以上であってもよい。
【0021】
熔解槽201は、耐火レンガである耐火物部材により構成された壁210を有する。熔解槽201は、壁210で囲まれた内部空間を有する。熔解槽201の内部空間は、上記空間に投入されたガラス原料が熔解してできた溶融ガラスMGを加熱しながら収容する液槽Bと、溶融ガラスMGの上層に形成され、ガラス原料が投入される、気相である上部空間Aとを有する。
上部空間Aの壁210には、燃料と酸素等を混合した燃焼ガスが燃焼して火炎を発するバーナー206が設けられる。バーナー206は火炎によって上部空間Aの耐火物部材を加熱して壁210を高温にする。ガラス原料は、高温になった壁210の輻射熱により、また、高温となった気相の雰囲気により加熱されて熔解する。
【0022】
熔解槽201の向かい合う液槽Bの壁210,210に、酸化錫あるいはモリブデン等の耐熱性を有する導電性材料で構成された3対の電極体208が設けられている。3対の電極体208はいずれも、液槽Bの内壁面に向かって延びている。3対の電極体208のそれぞれの対のうち、図中奥側の電極体は図示されていない。3対の電極体208の電極体208の各対は、溶融ガラスMGを通してお互いに対向するように、壁210に設けられている。各対の電極体208は、正電極、負電極となってこの電極間の溶融ガラスMGに電流を流す。溶融ガラスMGはこの通電により、ジュール熱を自ら発して溶融ガラスM
Gを加熱する。熔解槽201では、溶融ガラスMGは例えば1500℃以上に加熱される。加熱された溶融ガラスMGは、ガラス供給管を通して清澄槽202へ送られる。
本実施形態では、熔解槽201には3対の電極体208が設けられるが、1対、2対あるいは4対以上の電極体が設けられてもよい。
【0023】
図4(a)は、熔解槽201における電極体208の配置を説明する図である。図4(b)は、電極体208の摩耗を説明する図である。図4(a)では、電極体に設けられるコネクタ等の図示は省略されている。
電極体208は、複数の長尺状の電極体要素208aを一方向に延びるように束ねた複合体であり、各電極体要素208aが溶融ガラスを通電する電極となっている。図4(a)では、縦方向に4段、横方向に3列、合計12本の電極体要素208aで構成されている。電極体要素208aからなる複合体としての電極体208は、本実施形態のように、縦方向に4段、横方向に3列、合計12本の電極体要素208aで構成されることに限定されず、合計本数、縦方向の段数、横方向の列数は特に制限されない。例えば、電極体208は、1つの電極体要素208aで構成されてもよい。
【0024】
熔解槽208の壁210は、図4(a)に示されるように、耐火レンガである耐火物部材が積層されて構成されている。壁210には、電極用窓210aが設けられている。この電極用窓210aに電極体208が挿入されている。すなわち、電極体208は、液槽Bの内壁面に向かって延びて、熔解槽208の壁210を構成する電極体208周りの耐火物部材、具体的には、電極体208の図中の下方、上方、及び側方にある耐火物部材によって保持されている。また、図4(a)に示されるように、電極体208のそれぞれの底部が、1つの耐火物部材211、すなわち1つの耐火レンガによって支持されている。耐火物部材211は、多段に積層された耐火レンガの層に載せられている。この状態で、電極体208に電流が供給される。
【0025】
電極体208は、電極体208周りの壁210を構成する耐火物部材によって保持されるので、溶融ガラスMGの浸食によって電極体208が摩耗した場合、電極体208を溶融ガラスMGの方に移動して、電極体208の先端が液槽Bの中で常に同じ位置になるように、移動可能になっている。すなわち、電極体208が溶融ガラスMGの浸食によって摩耗した場合、図4(b)に示すように、摩耗した分だけ、電極体208は溶融ガラスMGの方に耐火物部材211の表面に沿って移動することができる。こうして、電極体208は、通電により溶融ガラスMGを安定して加熱することができる。
【0026】
図4(a)に示すように、電極体208には、継ぎ足し用電極体(以降、単に継ぎ足し電極体という)209が電極体208に向かって延びて継ぎ足されている。継ぎ足し電極体209も、電極体208と同様に、複数の長尺状の継ぎ足し用電極体要素(以降、継ぎ足し電極体要素という)209aを一方向に向かって延びるように束ねた複合体であり、各継ぎ足し電極体要素209aが溶融ガラスを通電する際に用いる継ぎ足し電極となっている。図4(a)に示す例では、縦方向に4段、横方向に3列、合計12本の継ぎ足し電極体要素209aで構成されている。本実施形態の継ぎ足し電極体209も、電極体208と同様に、縦方向に4段、横方向に3列、合計12本の継ぎ足し電極体要素209aで構成されることに限定されず、合計本数、縦方向の段数、横方向の列数は特に制限されない。しかし、上記合計本数、縦方向の段数、横方向の列数は、電極体208の合計本数、縦方向の段数、横方向の列数と同じであることが好ましい。継ぎ足し電極体209は、1つの継ぎ足し電極体要素209aで構成されてもよい。
【0027】
継ぎ足し電極体209は、その端面が電極体208の端面と面接触して電気的に電極体208と接続されるように、継ぎ足し電極体209の向きが調整される。すなわち、継ぎ足し電極体要素209aは、その端面が電極体要素208aの端面と面接触して電気的に電極体要素208aと接続されるように、継ぎ足し電極体要素209aの向きが調整される。これにより、電極体208(電極体要素208a)の延在方向の中心軸と継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)の延在方向の中心軸とを平行にすることができ、端面同士の向きがお互いに正反対の方向に向くようにできる。
なお、面接触とは、接続端面の向きが幾何学的にお互いに正反対に向き、面全体同士が隙間無く接触することをいう。このように、電極体要素208aの延在方向の中心軸と継ぎ足し電極体要素209aの延在方向の中心軸とが平行になるように、継ぎ足し電極体要素209aの向きが調整されて電極体要素208aが継ぎ足されるのは、電極体208(電極体要素208a)が溶融ガラスMGの浸食により摩耗しても、継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)を用いて溶融ガラスMGの通電加熱を安定して行い、ガラスを長期間安定して製造するためである。
【0028】
上述したように、電極体208と継ぎ足し電極体209のお互いの接続端面の向きがお互いに正反対に向く(対向する)ように、いいかえると、電極体208の延在方向の中心軸と継ぎ足し電極体209の延在方向の中心軸とが平行になるように、継ぎ足し電極体209の向き調整を行うのは以下の理由による。すなわち、継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)が、耐火物部材211の支持面に沿って移動して電極体208(電極体要素208a)と電気的に接続される。このとき、耐火物部材211の面の平面度によって継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)の端面と、電極体208(電極体要素208a)の端面とが面接触しない場合が生じる。
また、上記耐火物部材が他の耐火物部材とともに、電極体208(電極体要素208a)及び継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)の支持面を形成する場合、耐火物部材同士の継ぎ目に段差ができ、継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)の端面が、電極体208(電極体要素208a)の端面と面接触しない場合が生じる。また、耐火物部材211は、図4(a)に示されるように、多段に積層された耐火物部材の層に載せられているので、多段に積層された耐火物部材の寸法や耐火物部材同士の継ぎ目の寸法等が十分に均一でなく、耐火物部材211の支持面は、電極体208と接触し電極体208を保持する電極体208上方の耐火物部材210の保持面と平行な平面となり難くなることが顕著となる。このため、電極体208(電極体要素208a)と継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体体要素209a)の接続する端面同士が必ずしも面接触せず、接続端面間に隙間が生じ、接続抵抗が上昇し易い。
これらの場合、図5(a)に示されるように、接続端面同士に隙間ができて、面接触せず接続抵抗が大きくなり、安定して溶融ガラスMGを加熱することができない。また、僅かな端面間の隙間で放電が生じることにより端面が破損し、ますます隙間が大きくなり接続抵抗が大きくなる。このため、本実施形態では、接続する端面同士がお互いに正反対に向くように、いいかえると、電極体208(電極体要素208a)の延在方向の中心軸と継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)の延在方向の中心軸とが平行になるように、図5(b)に示すように、継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)の向きを調整するための荷重Fが継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)に負荷される。この荷重Fにより、図5(b)に示すように、接続端面同士の向きが正反対に向くように、すなわち電極体208(電極体要素208a)の延在方向の中心軸C1と継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)の延在方向の中心軸C2とが平行になるように、継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)の向きが調整されて、接続端面同士が面接触する。なお、継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)及び電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)の接続端面は、中心軸C1及び中心軸C2に対して垂直な平面である。
【0029】
図6は、継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)の向きを調整するために荷重Fを負荷する荷重負荷機構およびコネクタ212を説明する図である。図7は、継ぎ足し電極体要素209aのコネクタ212を説明する図である。
【0030】
コネクタ212は、平編銅線220と、チャンネル222と、ボルト224と、を有する。
平編銅線220は、平編銅線に設けられた図示されないナットとボルト224によって、チャンネル222とともに固定される。平編銅線220は継ぎ足し電極体要素209aと接触する。平編銅線220は電源と接続されている。したがって、平編銅線220、継ぎ足し電極体要素209a、電極体要素208aを通して、溶融ガラスMGに電流を流すことができる。
【0031】
荷負荷機構は、押さえ板226と、押さえシャフト228と、バネ232と、を有する。
チャンネル222の継ぎ足し電極体要素209aと反対側には、押さえ板226が接触し、チャンネル22を継ぎ足し電極体要素209aに向けて押さえるように設けられている。押さえ板226の背面には、押さえシャフト228が、バネ232を通して押さえ板226と接続されている。押さえ板226は、耐火物部材211の面によって支持されている。押さえシャフト228には、図示されない基盤に固定された圧力ジャッキに連結されている。したがって、図示されない圧力ジャッキが押さえシャフト228に荷重を負荷することにより、押さえシャフト228がバネ232を介して押さえ板226を押す。すなわち、継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)は、バネ232の付勢力により、継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)の向きを調整するための荷重Fが、継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)に負荷される。さらにいうと、継ぎ足し電極体要素209aの、電極体要素208aと接続する端面と反対側の端面から上記接続する端面に向けて荷重Fを加えることにより、より具体的には、バネ(弾性部材)232の付勢力を用いて荷重Fを加えることにより、継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)の向きの調整が行われる。
したがって、継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)が電極体208(電極体要素208a)に継ぎ足された後は、電極体208(電極体要素208a)及び継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)は、バネ232の作用する付勢力により荷重Fが常時負荷される。これにより、コネクタ212が継ぎ足し電極体209に向けて押すことにより平編銅線220は継ぎ足し電極体209と安定的に接続される。
本実施形態では、付勢力を与えるものとしてバネ232を用いたが、バネ232以外に、ゴム部材を含む弾性材料からなる弾性部材を用いることもできる。
【0032】
本実施形態では、3対の電極体208のいずれの電極体208も継ぎ足し電極体209が継ぎ足され、継ぎ足し電極体209の向きが調整されるが、少なくとも1つの電極体208において、継ぎ足し電極体209が継ぎ足され、継ぎ足し電極体209の向きが調整されてもよい。本実施形態では、電極体208は、電極体要素208aと言い換えることができ、継ぎ足し電極体209は、継ぎ足し電極体要素209aと言い換えることができる。
また、電極体208の接続端面と継ぎ足し電極体209の接続端面との間が導電性ペーストを介在して電気的に接続されてもよい。導電性ペーストを用いて接続することにより、接続抵抗を確実に低減することができる。
なお、電極体208は、溶融ガラスMGと接するので、溶融ガラスMGの圧力によって熔解槽201の液槽Bから熔解槽208の外側に向けて圧力を受ける。このため、溶融ガラスMGと接する電極体208の端面と反対側の端面から溶融ガラスMGと接する端面に向けて、上記圧力に抗するための荷重も付加的に負荷される。なお、溶融ガラスMGの圧力に抗するための上記荷重のみでは、継ぎ足し電極体209の向きを調整することができない。このため、上記圧力に抗するための荷重は、継ぎ足し電極体209の向きを調整するための荷重Fに付加される。
【0033】
以上のように、電極体要素208aのそれぞれには、端面を通して継ぎ足し電極体要素209aが電気的に接続され、かつ、電極体要素208aの延在方向の中心軸と継ぎ足し電極体要素209aの延在方向の中心軸とが平行になるように、荷重負荷機構を用いて継ぎ足し電極体要素209aの向きが調整される。このため、電極体要素208aと継ぎ足し電極体要素209aとの間の接続抵抗の上昇を抑制して長期間溶融ガラスを安定的に通電することができるので、熔解槽を用いて安定的にガラスを製造することができる。
継ぎ足し電極体要素209aの接続端面と反対側の端面から上記接続端面に向けて荷重Fを加えるので、継ぎ足し電極体要素209aの向き調整を効率よく行うことができる。
【0034】
なお、図4(a)に示されるように、耐火物部材211の、電極体要素208a及び継ぎ足し電極体要素209aを支持する面は、1つの耐火物部材の面である。このため、従来のような耐火物部材の継ぎ目による微小段差をなくし、図5(a)に示すような継ぎ足し電極体要素209aの向きのずれを抑制することができる。
【0035】
図4(a)に示されるように、電極体208及び継ぎ足し電極体209の底部全体がいずれも、耐火レンガである耐火物部材211と接触して支持されている。継ぎ足し電極体209が電極体208に継ぎ足されるとき、継ぎ足し電極体209を耐火物部材211の面上を滑らせて移動させて継ぎ足すことができるので、図5(a)に示すように、継ぎ足し電極体要素209aの向きのずれを抑制することができる。
【0036】
また、継ぎ足し電極体要素209aの向き調整は、継ぎ足し電極体要素209aの接続端面と反対側の端面から接続端面に向けて作用するバネ232の付勢力を用いて行われるので、継ぎ足し電極体要素209a及び電極体要素208aの電気的接続を安定的に維持する他、荷重を安定的に負荷することができる。バネ232を用いずに荷重を負荷する場合に比べて、振動等の外的環境により継ぎ足し電極体要素209aの接続端面の位置が変動しても、継ぎ足し電極体要素209aはバネ232を用いて安定して荷重を受けることができる。
【0037】
(変形例1)
図8(a)〜(c)は、電極体208と継ぎ足し電極体209の継ぎ足しの変形例を示す図である。図8(a)〜(c)は、電極体208と継ぎ足し電極体209を、図4(a)の紙面上方から見た図であり、3列の電極体要素208aと継ぎ足し電極体要素209aが示されている。
変形例1では、継ぎ足し電極体要素209aが電極体要素208aと接続する複数の接続端面は、継ぎ足し電極体要素209aの長さ方向の位置に関して、少なくとも一部分においてお互いに位置ずれしている。
図8(a)に示す例では、真ん中の継ぎ足し電極体要素209aが長く、両側の継ぎ足し電極体要素209aが短く、接続端面の位置が異なっている。図8(b)に示す例では、真ん中の継ぎ足し電極体要素209aが短く、両側の継ぎ足し電極体要素209aが長く、接続端面の位置が異なっている。図8(c)に示す例では、右側の継ぎ足し電極体要素209aが最も長く、左側の継ぎ足し電極体要素209aが最も短く、接続端面の位置が異なっている。このように継ぎ足し電極体要素209aと電極体要素208aとの接続端面が継ぎ足し電極体要素209aの長さ方向に関して、位置ずれしている。
【0038】
このような構成にするのは、電極体208と継ぎ足し電極体209が図8(a)〜(c)中の左右方向に位置ずれして接続端面同士の電気的接続が不安定になるのを防止するためである。
【0039】
図9(a)は、熔解槽201の外観と、熔解槽201の基台216への設置を示す図である。熔解槽201は、基台216上に固定されている。基台216は、ガラス原料投入側の熔解槽201の端部の底部分を固定し、清澄槽202と接続されるガラス供給管の側に熱膨張できるように構成されている。このため、熔解槽201の熱上げ前に電極体208(電極体要素208a)及び継ぎ足し電極体209(継ぎ足し電極体要素209a)との接続を行った場合、熱上げ後高温になった熔解槽201は、点Oを基準として、図中の上下方向及び左右方向に熱膨張する。特に、図中左右方向に長い熔解槽201は、左右方
向に大きく熱膨張する。このとき、電極体208は熔解層201の電極用窓201a(図4(a)参照)に挿入されて、電極体208周りの壁210によって保持されているので、電極体208は熔解槽201の熱膨張により僅かな変形に追従して図中の右方向に移動する。一方、継ぎ足し電極体209は、コネクタ212さらにはバネ232を用いた荷重負荷機構によって押されて保持されている。このため、熔解槽201の熱膨張による変形によって、図9(b)に示すように、電極体208と継ぎ足し電極体209の接続端面が左右方向に位置ずれし易くなり、電気的接続が不安定になる。このため、図8(a)〜(c)に示すように、継ぎ足し電極体要素209aの長さ方向に関して接続端面の位置をずらせることにより、図9(b)に示す左右方向の位置ずれを防止することができる。
【0040】
(変形例2)
上述の実施形態では、継ぎ足し電極体要素209aの向きが調整されることにより、電極体要素208aと継ぎ足し電極体要素209aとの間の隙間が低減される場合を説明した。しかしながら、継ぎ足し電極体要素209aの向きが調整されることなく、電極体要素208aと継ぎ足し電極体要素209aとの間の隙間が低減されてもよい。すなわち、電極体要素(第1電極)208aと、継ぎ足し電極体要素209aとの間に僅かな隙間が生じていた場合でも、安定して給電できる場合はある。例えば、電極体要素(第1電極)208aおよび継ぎ足し電極体要素209aの接続端面間の接触面積が大きい場合、電極体要素(第1電極)208aと継ぎ足し電極体要素209aとの間に僅かな隙間が生じていても、接続端面における接触面積の割合が大きければ、安定して給電できる場合もある。したがって、以下のように、電極体要素(第1電極)208a及び継ぎ足し電極体要素209aの接続端面間の隙間が低減される場合にも、本実施形態の効果を奏する。
図12(a),(b)は、変形例2を説明する図である。図12(a),(b)に示すように、一対の電極の一方を構成する電極体要素(第1電極)208aは、熔解槽201を構成する耐火物部材211によって保持されるとともに、電極体要素208aの下部に設けられる耐火部材211に載せられて支持されている。また、継ぎ足し電極体要素(第2電極)209aも、継ぎ足し電極体要素209aの下部に設けられる支持用耐火部材211に載せられて支持されている。電極体要素208aと継ぎ足し電極体要素209aは、互いに端面同士が接続するように構成されている。熔解槽201において熔融ガラスMGを通電加熱するとき、電極体要素208aと接続する継ぎ足し電極体要素209aの端面と反対側に位置する継ぎ足し電極体要素209aの後端面(図11(a),(b)中の右側端面)209eから電極体要素208aに向けて荷重Fを負荷して、電極体要素208aと継ぎ足し電極体要素209aとの間の端面間の隙間を低減させた状態(隙間が小さくなった状態)で、継ぎ足し電極体要素209aの上記後端面から通電する。
このとき、図11(b)に示されるように、必ずしも継ぎ足し電極体要素209aの向きが図5(b)に示すように調整されることなく、電極体要素208aと継ぎ足し電極体要素209aとの間の隙間が低減されるだけであってもよい。
【0041】
変形例2をより詳細に説明する。
図11(a)に示すように、継ぎ足し電極体要素209aは、その端面が電極体要素208aの端面と接続されるように、耐火物部材211の上に載せられて支持されている。また、耐火物部材211は、熱膨張により変形し、支持面が傾いているので、継ぎ足し電極体要素209aと、電極体要素208aとの間に隙間が生じている。この隙間を低減するために、図11(b)に示すように、電極体要素208aと接続する継ぎ足し電極体要素209aの端面と反対側の後端面209eから、電極体要素208aと接続する端面に向けて荷重Fが負荷される。これにより、電極体要素208aと継ぎ足し電極体要素209aとを接続する端面間の隙間を低減することができる。このように、荷重Fが負荷されることにより、継ぎ足し電極体要素209aの向きが調整されなくても、継ぎ足し電極体要素209aと、電極体要素208aとの間の端面間の隙間を低減することができる。また、荷重Fが負荷された状態で、電極体要素208aと接続する継ぎ足し電極体要素209aの後端面209eから通電されることにより、長期間溶融ガラスを安定的に通電することができる。このとき、継ぎ足し電極体要素209aと電極体要素208aとの間の隙間は狭くなり、接続する端面同士は強く押圧されて接触する。このため、端面同士の接続における接続抵抗は低減する。すなわち、電極体要素208aと継ぎ足し電極体要素209aとの間の接続抵抗の上昇を抑制して長期間溶融ガラスを安定的に通電することができるので、熔解槽201を用いて安定的にガラスを製造することができる。
【0042】
本実施形態では、複数の長尺状の電極体要素208aおよび継ぎ足し電極体要素209aを一方向に延びるように束ねられた複合体にして、すなわち、電極体208および継ぎ足し電極体209にした状態で、電極体208および継ぎ足し電極体209の接続端面の隙間を低減し、給電するとより効果的である。この場合、各電極体要素208aと継ぎ足し電極体要素209aとの間に僅かな隙間は許容され得る。各電極体要素208aと継ぎ足し電極体要素209aとの間に僅かな隙間が生じていても、複合体である電極体要素208および継ぎ足し電極体要素209としてみた場合、接続端面において面接触している領域が大きいので、安定して給電することができる。したがって、本発明は、複数の長尺状の電極体要素208aおよび継ぎ足し電極体要素209aを一方向に延びるように束ねられた複合体である電極体208および継ぎ足し電極体209をそれぞれ1つの電極とした状態で、隙間を低減し、給電するとより効果的である。
【0043】
(変形例3)
図12(a),(b)は、電極体要素208aと継ぎ足し電極体要素209aとの継ぎ足しの変形例3を説明する図である。変形例3は、上述した実施形態あるいは変形例1,2の方法を行うときに選択的に用いられ得るものである。変形例3では、電極体要素208aおよび継ぎ足し電極体要素209aが互いに接続する端面には、互いに対向する凹部208b,209bが設けられる。この凹部208b,209bに棒状の酸化錫材260を設けることにより、接続する端面の位置ずれを防止する。酸化錫材260は、凹部208b,209bによりつくられる1つの空間内に設けられるので、図9(b)に示すような接続する端面同士の左右方向の位置ずれが防止される。したがって、電極体要素208aと継ぎ足し電極体要素209aとの間の位置ずれによる接続抵抗の上昇を抑制して長期間溶融ガラスを安定的に通電することができるので、熔解槽201を用いて安定的にガラスを製造することができる。
【0044】
なお、本実施形態、変形例1〜3において、荷重Fにより電極体要素208aを束ねた電極体208が、熔解槽201内に向かって前進していないことを確認するために、定期的に電極体208、あるいは、及び、継ぎ足し電極体要素209aを束ねた継ぎ足し用電極体209の位置の測定を行ってもよい。例えば、継ぎ足し電極体209の後端面の位置を、基準位置に対して定期的に測定することにより、電極体208が、熔解槽201内に向かって前進していないことを、確認することができる。また、各電極体要素208aが熔解槽201内に向かって前進していないことを、個別に確認してもよい。
【0045】
本実施形態では、図6に示すように、バネ232を用いた例を挙げて説明したが、バネ232を用いなくてもよい。また、バネ232を用いない構成の場合、押さえ板226の弾性を利用し、押さえ板226を弾性部材として用いてもよい。また、バネ232を用いない構成の場合、押さえシャフト228の弾性を利用し、押さえシャフト228を弾性部材として用いてもよい。
【0046】
[実施例]
本実施形態の効果を調べるために、電極体要素208aと継ぎ足し電極体要素209aの端面同士を接触させて電気的に接続させたとき、荷重Fによって、さらに端面間の隙間によって接続抵抗がどのように変化するかを調べた。電極体要素208aと継ぎ足し電極体要素209aは、酸化錫を用いた。
【0047】
図10(a)は、実施例で行う接続抵抗の評価法を説明する図である。図10(b)は、電極体要素208aと継ぎ足し電極体要素209aの接続の一状態を示す図である。
図10(a)に示すように、絶縁体基板250に電極体要素208aと継ぎ足し電極体要素209aを載せて、電極体要素208aの端面254と継ぎ足し電極体要素209aの端面256とを接続した。電極体要素208aと継ぎ足し電極体要素209aの両側の端面に平編銅線252を設けて、種々の条件の下、平編銅線252間に電流(約20A)を流すことで平編銅線252間の電気抵抗を計測した。その際、条件1,2として継ぎ足し電極体要素209aに負荷する荷重Fを、20kg重、10kg重に変更した。また、条件3〜5として、継ぎ足し電極体要素209aの向きを電極体要素208aの向きに対して傾けることにより、図10(b)に示すような隙間Dを接続端面の上部に0mm(隙間D無し)、0.1mm、0.5mm設けた。その際、荷重F=20kg重を負荷した。
下記表は、その結果を示す。なお、放電の有無は、電流を流したときの観察と、接続端面の腐食の観察によって判断した。
【0048】
【表1】

【0049】
条件1,2から明らかなように、荷重20kg重を負荷することにより抵抗が低減することがわかる。これは、荷重20kg重を負荷することにより、電極体要素208aの中心軸と継ぎ足し電極体要素209aの中心軸とが平行になるように(端面254,256同士が正反対に対向して面接触するように)、継ぎ足し電極体要素209aの向きが調整されて、端面254,256間の接続抵抗が低減したといえる。実際、条件2では、端面254,256間で放電が生じたことから、端面254,256間に僅かな隙間が存在して放電が発生したといえる。一方、隙間Dが存在する条件4,5では、抵抗が上昇したことから、抵抗の上昇は隙間Dによる接続抵抗の上昇に拠るといえる。また、条件4,5のように隙間Dが存在することで、端面254,256間で放電が生じることもわかった。
以上より、荷重Fを負荷して端面254,256間に隙間Dが無いようにすることが、電極と継ぎ足し電極間の接続抵抗を低減するとともに、安定して電極を通電する点で有効であることがわかる。
【0050】
以上、本発明のガラスの製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0051】
200 熔解装置
201 熔解槽
202 清澄槽
203 攪拌槽
204 第1配管
205 第2配管
206 バーナー
208 電極体
208a 電極体要素
208b,209b 凹部
209 継ぎ足し用電極体
209a 継ぎ足し用電極体要素
209e 後端面
210 壁
210a 電極用窓
211 耐火物部材
212 コネクタ
220,252 平編銅線
222 チャンネル
224 ボルト
226 押さえ板
228 押さえシャフト
232 バネ
250 絶縁体基板
254,256 端面
260 酸化錫材
300 成形装置
400 切断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の電極を備える熔解槽にガラス原料を導入し前記ガラス原料を熔解する工程と、
前記ガラス原料を熔解してつくられる溶融ガラスを前記一対の電極を用いて通電加熱する工程と、を含み、
前記熔解槽は、複数の耐火レンガが積層されて構成され、
前記一対の電極の少なくとも一方の第1電極は、前記熔解槽を構成する前記耐火レンガのうち前記一対の電極の周りの耐火レンガによって保持されるとともに前記支持用耐火レンガに載せられて支持され、前記第1電極の端面は、前記支持用耐火レンガに載せられて支持された前記一対の電極とは別の第2電極の端面と接続されており、
前記通電加熱する工程において、前記第1電極に接続する前記第2電極の端面と反対側に位置する前記第2電極の後端面から前記第1電極に向けて荷重を負荷して、前記第1電極と前記第2電極との間の端面間の隙間を低減した状態で、前記第2電極の前記後端面から通電する、ことを特徴とすることを特徴とするガラスの製造方法。
【請求項2】
前記荷重を、前記第2電極の後端面から、弾性部材を介して負荷する、請求項1に記載のガラスの製造方法。
【請求項3】
前記一対の電極は、酸化錫で構成され、
前記第1電極および前記第2電極が互いに接続する端面には、互いに対向する凹部を有し、前記凹部に棒状の酸化錫材を設けることにより、前記接続する端面の位置ずれを防止する、請求項1または2に記載のガラスの製造方法。
【請求項4】
前記熔解槽は、前記溶融ガラスを通電加熱する複数の電極体要素が束ねられた電極体と、前記電極体要素のそれぞれに接続する継ぎ足し用電極体要素が束ねられた継ぎ足し用電極体と、を有し、
前記電極体要素のそれぞれが前記第1電極であり、前記継ぎ足し用電極体要素のそれぞれが前記第2電極であり、
前記継ぎ足し用電極体要素が前記電極体要素と接続する複数の接続端面は、前記継ぎ足し用電極体要素の延在方向の位置に関して、少なくとも一部分においてお互いに位置ずれしている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラスの製造方法。
【請求項5】
前記熔解槽は、前記溶融ガラスを通電加熱する複数の電極体要素が束ねられた電極体と、前記電極体要素のそれぞれに接続する継ぎ足し用電極体要素が束ねられた継ぎ足し用電極体と、を有し、
前記電極体が前記第1電極であり、前記継ぎ足し用電極体が前記第2電極である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラスの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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