説明

ガラス板の領域からコーティングを除去する方法と装置

【課題】既存のコーティングを除去する領域の幅を場合毎に望ましい寸法に調整できるようにする方法と装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば、基板(4)のコーティングした面に向けられたプラズマの助けによって、コーティング、特に金属含有コーティングを備える基板(4)の一部の範囲、特に周辺ゾーン(11)で層を除去する。プラズマヘッド(10)を基板(4)に対してしかるべく位置合わせすること、及び/または対応する必要な数のプラズマヘッド(10)を動作させて、1列の互いに隣接して配置したいくつかのプラズマヘッド(10)または修正可能な断面を有する1つのプラズマヘッドから、望ましい層除去幅でプラズマを基板に向けることによって、層を除去するゾーン(11)の幅を調整すればよい。層の厚さ全体にわたるコーティングを部分的にだけ除去することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の序文の特徴を有する方法と請求項18の序文の特徴を有する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの適用用途で、透明な基板、特に、ガラスまたはプラスチックから製造した板のみならず、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)から製造したフィルムは、最終処理状態となる前にコーティングを提供される。例えば、熱遮断ガラス(スペーサフレームによって互いに接合した少なくとも2つの個別の板)を製造するため、コーティング、特に金属含有コーティングを有する板を使用して、特に熱線、すなわち赤外線領域の透過性を低下させ、全体として光通過に望ましい形で影響を与える。この同じ熱反射目的は多層板で達成してもよいが、この場合コーティングした表面は多層板の内部にある。
【0003】
コーティングという用語はここでは、単純な単一相コーティングだけではなく、特に、金属層、酸化物層、窒化物層、有機物層またはそれらの混合物といった、いくつかの個別の層からなる層組織をも意味する。
【0004】
また、反射防止または反射低減層をこうした透明な基板に塗布することも多く、熱反射層組織は普通いかなる場合でもこうした反射防止層を備える。例えば、風化条件にさらされる基板表面上の疎水性または親水性のコーティングを必要とする他の適用用途または機能も存在する。
【0005】
上記の熱遮断または赤外線反射といった純粋に受動的な使用目的の他に、パネル暖房システムまたはアンテナアレイとして導電性(金属含有)コーティングを使用することもある。こうしたコーティングの撥水性及び/または自己清浄特性は、エレクトロクロミック、サーモクロミック等のコーティングと同様周知である。こうしたコーティングした(窓)ガラスまたは板は建設産業及びあらゆる種類の自動車及び航空機で使用する。
【0006】
適切な大型システムで広い表面積にわたって基板、例えばフロートガラスをコーティングし(これは普通スパッタリングまたはCVDによって実行する)、その後必要な小さい基板に切断してさらに加工するのは有利である。
【0007】
様々な理由から、それぞれの基板の最終使用目的のために、最初に施した表面積の大きなコーティングを部分的/局所的に除去しなければならないことがあり、これは切断作業の前または後に行ってもよい。
【0008】
例えば、コーティングしたガラス板を熱遮断ガラスとして使用する場合、機械的損傷を受けやすいコーティングをできるだけ保護するため、コーティングした側面が熱遮断ガラスの内側、すなわちエアギャップに面するように配置する。少なくとも1つのコーティングしたガラス板を備える熱遮断ガラスの1つの問題は、縁端を接合する従来のコンパウンド(シーリングコンパウンドとしてのブチルゴム及びポリサルファイド)の金属含有コーティングに対する接着が不良であるため、縁端接合の強度と拡散に対する密閉性が望ましい程度に保証されない点である。多層板の場合、堅固な板を広い面積にわたって接着することを考慮すると、接着が低下することはそれほど問題ではない。
【0009】
シールまたは窓昇降機構といった付属部品を接着によって表面に固定する場合、特に疎水性または親水性または反射防止コーティングした基板または表面といった他の場合にも同様の接着の問題が発生することがある。
【0010】
一般に、上記及び同様の使用例では、利用可能な接着剤はコーティングしていない基板表面への直接接着に適しており、必要とする境界層の数をできる限り最小化するため、上記及び他の付属部品はコーティングしていない基板表面に直接接着するのが好適である。
【0011】
また、特に金属含有コーティングの1つの問題は、金属部分または層は環境の影響下で腐食することがある点である。この損傷の危険は、特に、段付きガラスのガラス板の少なくとも一方が少なくとも1つの縁端部でもう一方のガラス板を越えて突出するようにガラス板が異なる寸法である、いわゆる段付きガラスとして設計した熱遮断ガラスの場合発生する。もう一方のガラス板を越えて突出したガラス板の領域の金属含有コーティングは腐食することがあるので、外観が好ましくないだけでなく、熱遮断ガラスの縁端接合部の密閉度を損なうことがある。
【0012】
しかし、上記の腐食の問題は、例えば自動車に設置したコーティングした基板(フロントガラスまたは一般に多層板)の場合にも発生する。この場合でもコーティングは多層板の内部に置かれるが、特別な保護対策がなければ、基板の縁端からその面に進行する腐食による損傷がこの場合でも発生する。
【0013】
他の理由からも、基板の一部の領域からコーティングを除去するのが有益なことがある。例えば、金属含有コーティングでコーティングした基板を金属フレーム内のアンテナまたは遮蔽板として設置する場合、この金属フレームの周囲またはそこから距離を置いて少なくとも部分的にコーティングを省略する必要があることがある。自動車内のアンテナの場合、これは例えばアンテナアレイと車両車体との容量結合を防止する。さらに、時として、例えば、赤外線遠隔制御、料金検出システム等のため、(金属含有)コーティングでコーティングしたある範囲(「通信ウィンドウ」)を通じて意図的な放射線伝送が必要なことがある。
【0014】
疎水性コーティングの場合、例えば、センサの使用領域(降雨センサ)からまたは一般に窓(例えば、側方窓の「バックミラーの領域」)からコーティングを除去することが有利なことがある。
【0015】
最後に、いくつかの層からなるコーティングを、層組織の1つかそれ以上の上部層だけを除去し1つかそれ以上の下部層を基板上に残すという意味で、部分的にだけ除去する必要があることもある。これは、1つかそれ以上の残りの(基部)層が基板のその後の使用を損なわず、またむしろ必要である場合特に好適である。
【0016】
こうした上記の問題を解消し要求を満足するため、特に縁端領域で、特定の幅または特定の範囲のコーティングを除去することが知られている。この目的で、熱遮断ガラスまたは上記で言及した他の使用目的で使用する場合、(金属)コーティングしたガラス板の、少なくとも縁端領域で、コーティングを除去するために使用し得る装置が知られている。こうした装置には、熱装置によって動作するもの(ガス炎またはプラズマ、DE 34 03 682 C参照)や、研削または研磨丸砥石によって動作するものがある。例として、EP 0 517 176 A(=DE 41 18 241 A)、DE 43 42 067 AまたはEP 603 152 Aを参照されたい。
【0017】
コーティングを除去するための(大気圧での)プラズマ処理の1つの利点は、基板表面に対するプラズマ処理装置またはプラズマヘッドの位置決めに関する重大な問題がないことであり、その一方で、機械的研磨装置では、特に丸砥石が比較的顕著な磨耗を示す場合、丸砥石の不正確な位置決めは大きな誤差の原因になる。
【0018】
しかし、ガラスまたはプラスチック板からコーティングを除去する際の1つの問題は、たとえそれがプラズマを使用して実行されるものであっても、コーティング除去作業中にコーティングを除去する領域の幅または範囲を容易に変更できないため、より広い領域からコーティングを除去する必要がある場合、コーティングを除去する必要がある領域を何回も通過しなければならないということである。
【0019】
これは、少なくとも1つのコーティングしたガラス板を備える段付き熱遮断ガラスを製造する際破壊的または減速的な作用を有する。2つのガラス板が異なる寸法を有し(例えば「段付き要素」)、コーティングしたガラス板の方が面積が広い場合、突出領域では、コーティングを除去する領域を従来可能であったよりも広く選択する必要がある。
【0020】
また、コーティングを除去する既知の方法と装置の1つの問題は、プラズマヘッドを1つだけ使用する場合、この領域が、例えばコーティング除去作業のためのプラズマヘッドの有効幅の1.5倍といった、整数でない倍数である場合も、コーティングを除去する領域を何回も通過しなければならないということである。
【0021】
こうした多数の作業は、基板当たりの必要時間をかなり増大しシステムの効率を低下させることがあるので、生産技術の見地から大きな障害である。
【0022】
単一のプラズマヘッドまたは1つのプラズマノズルを備えた従来の種類のシステムの中には、例えばプラズマの放射強度を変更することによって、コーティングを除去する領域の幅を、例えば±3mmの範囲内で変更できるものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】DE 34 03 682 C
【特許文献2】EP 0 517 176 A
【特許文献3】DE 43 42 067 A
【特許文献4】EP 603 152 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、既存のコーティングを除去する領域の幅を場合毎に望ましい寸法に調整できるようにする方法と装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的は、方法請求項1の特徴による方法で達成する。
【0026】
装置に関しては、本発明が依拠する目的は装置請求項18の特徴によって達成する。
【0027】
本発明による方法と本発明による装置の好適な改善点は、場合毎に独立請求項に従属する従属請求項の主題を形成する。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、プラズマが基板に衝突する範囲(作業領域、カバレージ領域またはコーティング除去領域)を、コーティングを除去しなければならない範囲または幅にできる限り正確に一致させることを伴う。これは、プラズマが基板の縁端を越える、すなわちコーティングを除去する領域外に延び、必要ならば基板の縁端に衝突しそこからも場合によってはコーティングを除去する可能性を除去しない。
【0029】
本発明によれば、プラズマソース(ヘッド、ノズル、等)からコーティングした基板に向けられたプラズマビームの有効幅または範囲の管理された変更によって、コーティングを除去する幅または範囲を目的に応じた形で変更できるので、基板を使用するために準備する際、上記で言及したように、特に縁端で、従来可能であったよりも迅速かつ柔軟な形で、場合毎に望ましい程度にコーティングを除去することが可能である。
【0030】
以下繰り返し使用する「プラズマソース」または「プラズマヘッド」という用語は、一般に、プラズマまたはプラズマビームを、多かれ少なかれ収束した形態の目的に応じた形で、基板またはコーティングした表面に向けることができる全ての想定される形態の出口開口を意味するものと理解すべきであることに注意されたい。それらは固定式または可変式の断面を有してもよく、必要ならば、処理する範囲の作業領域の幅及び/または単位面積当たりのプラズマエネルギーを変更するため、グループを形成するように結合した多数のヘッド同士の調整も可能である。
【0031】
この可能性は、基板の異なる領域及び/または縁端部で異なるコーティング除去幅を選択することによって得られる。特に、処理の際、コーティングを除去すべき基板の領域の幅または範囲を変更して、最良の場合、1回の作業で必要な程度まで範囲全体からコーティングを除去することが可能である。
【0032】
本発明によるこの処置のさらなる利点は、基板の(主な)面からコーティングを除去するのと同時に、縁端またはその面にもコーティングがある場合(上塗り、モデル切断作業の際元の縁端が影響されずに残ったもの、等)、そこからもコーティングを除去してもよい。縁端でのコーティング除去が必要な場合、本発明によれば、プラズマビームをこの縁端に(本質的に直角方向で)直接衝突させることが好都合なことがある。このため、プラズマヘッドまたはノズルを旋回式にしかるべく誘導することが有益なことがある。
【0033】
本発明の1つの実施形態では、コーティングを除去する領域の幅は、プラズマビームを放出または出力するために使用する個々のプラズマヘッドの直径または寸法とは無関係に設定してもよい点が有利である。
【0034】
本発明では、コーティングを除去する領域(ストリップ)の望ましい幅を達成するためコーティング除去領域を何回も通過する必要がないので、比較的広い作業またはコーティング除去領域の場合でも縁端または面のコーティングを除去する時間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による方法を実行する装置の概略斜視図を示す。
【図2】図1の装置の細部の拡大図を示す。
【図3】プラズマ処理装置に結合したシールド及び吸引装置の細部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明によれば、少なくとも2つのプラズマヘッドを使用してコーティング除去を実行する場合、1つの実施形態では、プラズマヘッドの1つが部分的にだけ、例えばその可能な有効幅の3分の1だけに作用するように、一部の領域でコーティングを除去するガラス板の縁端に対してプラズマヘッドを位置合わせする有利な可能性が存在する。すなわち、ガラス板の縁端を何度も通過する必要なしに、プラズマヘッドを適切に位置決めすることによって、コーティングを除去する領域の幅は機械加工作業中に自由に選択及び変更してもよい。
【0037】
もちろん、狭いストリップからコーティングを除去することが望ましい場合にはいくつかのプラズマヘッドの一部だけを動作させ、より大きな幅または範囲からコーティングを除去する場合、追加のヘッドまたはノズルを作動またはオンにすることも可能である。
【0038】
本発明による装置では、少なくとも2つのプラズマヘッドの支持体が、コーティングを除去する基板の平面に垂直な軸に沿って回転できるならば、そのような装置によって、基板の縁端領域全体またはその周囲の部分にわたってコーティングを除去するため基板を一周してもよい。少なくとも1つの列に配置したプラズマヘッドの連続回転が可能ならば、任意の輪郭(造形またはモデル化した板)を通過することも可能であり、プラズマヘッドの列の方向は有利には常にガラス板の縁端に垂直である。しかし、例えば基板縁端またはコーティング除去作業の進行方向に対する前記列の角度を目的に応じて変化させることによってコーティング除去幅の変更を達成してもよい。
【0039】
一般に、本発明による処理工程では、コーティングされた範囲からコーティングを除去した範囲への移行部でコーティングの縁端ができる限り鋭利できれいであることが望ましい。従って、発明の1つの有利な発展によれば、それぞれの作業ヘッドからのプラズマビーム(単数または複数)の管理されない広がりを防止する平坦なシールドを提供することが可能である。例えば、フレームの形で実際の現在の作業範囲(プラズマ及び基板の現在のカバレージ領域)を取り囲む適切な「移動式」シールドを使用して、縁端またさらには(基板縁端に沿って作業する場合)反対側の表面で、さらに機械加工すべき表面または隣接する表面上に「上塗り」の形態で、すでに除去した層の粒子が堆積するのを防止することもさらに可能である。また、こうした平坦なシールドは、すでにコーティングを除去した範囲で除去された層の粒子が再び堆積するのを最小化することもある。
【0040】
シールドは有利にはプラズマヘッドと共に移動及び位置決めされ、間隔はできる限り小さくすべきであるが残りのコーティングに接触すべきではない。
【0041】
さらに、それ自体周知の方法で、装置は、分離した層の粒子をすぐに排出する装置(例えば、空気吸引装置)を保持してもよい。こうした吸引装置は必要に応じて上記の種類のシールドに関連してもよい。
【0042】
ここで説明する種類の大気圧でのプラズマ処理によって、必要ならば、機械的方法を使用するよりもはるかに簡単な方法で層組織の一部の層だけを除去することが可能である。一部の層が異なる種類(有機物、金属、酸化物、窒化物、疎水性/親水性)であれば、選択的エッチングまたはバーンオフ処理を実行するため、(例えば、除去する材料に特に適応したエッチングガスまたは反応性ガスを使用すること、及び/または例えば、ガス流、流速といった処理パラメータを制御することによって)、プラズマは必要に応じて特定の層向けまたは特定の材料向けに生成してもよい。
【0043】
プラズマのエネルギーまたは励起の度合を制御することによって、プラズマの浸透深さ及びひいては、基板表面に垂直にコーティングを除去する程度を変化させることも可能である。
【0044】
最後に、コーティングされた範囲からコーティングを除去した領域までなだらかな移行を提供するのが望ましいかまたは必要なこともある。これは、例えば光学的な理由のためだけでなく機能的な理由で必要なこともある。プラズマソースをいくつかの個々に制御可能なビームヘッドまたはノズルに分割することによって、本発明によれば、こうしたコーティングのなだらかな除去を達成することも可能である。例えば、プラズマの一部を完全なコーティング除去のために設定し、別の部分を層組織の上部層だけの選択的コーティング除去のために設定することが可能である。
【0045】
さらに、プラズマヘッド(及び場合によっては上記のシールド)が1つの平面中だけでなく空間中で必要な調整性を有するならば、本発明による方法と関連する装置を使用して、(例えば、車両の前方、後方または側面窓に提供されるガラスまたはプラスチック窓板に含まれる)非平面(例えば、曲げるかまたは事前成形した)コーティング基板を処理しそこからコーティングを除去することも可能である。プラズマヘッドと基板またはコーティングとの間の垂直距離を維持することは、もちろん曲げた基板では特に重要である。
【0046】
プラズマコーティング除去の原理自体は周知なので、プラズマまたはその生成に関してこれ以上詳細に説明する必要はない。簡単に言うと、本発明によれば、本方法は、すでに言及したように、普通大気圧で実行する。ガスビームを形成する電力を供給することによってプラズマを生成するが、このガスビームは、基板またはコーティングに衝突する前に、その反応性、エネルギー、温度及び電離に影響するため、電磁エネルギー(例えば、直流電流、高周波またはマイクロ波)を供給することによって励起する。
【0047】
除去する層の種類に応じて、冒頭で言及した種類の全ての層を処理できる、適切な反応性プラズマを選択する。また、例えば、後で塗布する接着剤の接着をさらに改善するように基板表面を活性化(または粗くする)ため、コーティング除去作業自体とは無関係にプラズマを使用することも想定される。
【0048】
本発明による方法及び本発明による装置のさらなる詳細、特徴及び利点は、図面を参照した装置の実施形態の非制限的な例の以下の説明から明らかになるだろう。
【0049】
図1に示す装置はベースフレーム1からなり、そこに支持壁2が固定されている。支持壁2は、図示するように、エアクッション壁として設計してもよく、その目的のため、例えばフェルトで覆った支持壁2と、前記壁の上に置かれたガラス板4との間にエアクッションを形成するように圧縮空気によって作動するいくつかの開口3を有する。
【0050】
支持壁2の設計及び方向自体は重要ではない。シリンダまたはローラまたは何らかの他の摺動表面を備えた支持壁も想定される。もちろん、図と異なって、支持壁は基板の処置平面に水平な面に対して平坦でもよくまたわずかに傾斜してもよい。
【0051】
ガラス板4を移送するため、コンベヤベルトまたはコンベヤローラといった何らかの種類のコンベヤ装置5を支持壁2の下部縁端に提供する。ガラス板4の正確な位置決め(図2の二重矢印9)を支援する追加コンベヤ補助具を同様に提供してもよい。処理平面が水平であるかまたは水平に対してわずかに傾斜している場合、それに対応する適切な位置決め手段を提供する。
【0052】
垂直に対してわずかに(3〜5°)後方に傾斜した支持表面2の前に、ベースフレーム1に固定式に接続したバー6が存在する。支持板7(キャリッジ)は、(直線)駆動機構(図示せず)によってバー6上に配置したガイド(図示せず)上でバー6に沿って(矢印14)移動してもよい。
【0053】
支持板7はキャリヤ8を有し、図示する実施形態の例(図2)では、その上に5つのプラズマヘッド10が互いに隣り合って一列に設置されている。プラズマヘッド10のためのキャリヤ8は、支持板7上で、ガラス板4に垂直な軸(図2の二重矢印18)に沿って旋回してもよい。すなわち、たとえプラズマヘッド10がガラス板4の全周に沿って移動しても、プラズマヘッド10の列を、縁端領域11でコーティングを除去するガラス板4の縁端に常に垂直に位置合わせすることが可能であり、基本的に均一な処理幅が保証される。また、図と異なって、何列かのプラズマヘッドを提供することももちろん可能であり、それらは場合によっては互いにオフセットしてもよい。
【0054】
さらに、プラズマヘッド10を備えたキャリヤ8を、その長手方向(矢印12)、すなわちプラズマヘッド10の列の方向に調整できるように、支持板7上に設置してもよい。この目的は、ガラス板4の領域内、またはカバレージ範囲にわたる基板上に垂直に突出して、場合毎に望ましいコーティング除去幅に対応する数のプラズマヘッド10を配置することである。基板の縁端を越えて突出するプラズマヘッドを必要に応じてオフにするか、または基板の端部面にプラズマを作用させるため(部分的に)励起してもよい。
【0055】
また、それによって、1つのプラズマヘッド10(ガラス板4の縁端に割り当てたもの)がコーティング除去目的でその有効幅の一部でだけガラス板に作用するように方向付けられるように、プラズマヘッド10を備えたキャリヤ8を方向付けることも可能である。このようにして、使用するプラズマヘッド10の有効幅の整数倍に等しくない幅を有する領域からコーティングを除去することが可能である。
【0056】
この例の図面では、簡単にするために円形のプラズマヘッドを図示し、前記円形のプラズマヘッドを一列に配置している。しかし、それ以外の設計、例えばスリットの形状のプラズマヘッドまたはノズルの断面も本発明の範囲内であり、それぞれのスリットの有効幅は可変式でもよい。例えば、外力(電気的、空圧的、等)によって位置決めしてもよい可動式スクリーンによってか、及び/または、ここでも、互いにオフセットして配置してもよい個々のノズルまたはプラズマソースを個別に使用することによって、開口のこうした変更を行ってもよい。
【0057】
図2から容易に見られることであるので詳細に示す必要はないが、図面と異なって、(円形の)プラズマヘッド10の列の代わりに、ヘッド10が対象とする列または幅全体または、場合毎に、その一部だけを個々に対象とすることのできる1つかそれ以上のスリットノズルを使用することも可能である(その場合、いくつかのスリットノズルが進行方向にわずかに重なり合うことが可能である)。そして、コーティング除去領域11の幅の変更は明らかに、進行方向に対するスリットノズルの入射角を変更することによって行ってもよい(これはもちろん、ヘッド10を使用し、それらが形成する列の入射角を同様に変更することによって行ってもよい)。いくつかのスリットノズルが提供される場合、スリットノズルの相互オフセットを変更することも可能である。最後に、すでに前に言及したように、可変断面を備えたスリットノズルまたは一般にプラズマヘッドを使用してもよい。
【0058】
ガイド(図示せず)上のバー6に沿って矢印14の方向に支持板7を移動させるため、電気制御モータを提供してもよい。
【0059】
プラズマヘッド10を場合毎にガラス板4の表面から正しい距離に配置するため、また縁端領域11でコーティングを除去するガラス板4の厚さの関数として、ガラス板4の表面及び支持壁2に垂直な方向(矢印16)にモータを作動させることによって支持板7を調整してもよい。
【0060】
ガラス板4に垂直な軸に沿って保持板7に対してプラズマヘッド10を備えたキャリヤ8を回転させる(矢印18)ため、一体式インクリメンタルセンサ(図示せず)を備えたモータを提供する。
【0061】
支持板7に対してプラズマヘッド10を備えたキャリヤ8を移動させるため、何らかのリニアモータ(例えば、電気式、空圧式)を提供してもよい。
【0062】
図と異なって、一方では支持バー6はガイドに沿って前後に移動してもよい。他方では、プラズマヘッドのガイドは、二次元プロッタの形で、互いに垂直な2つかそれ以上のガイドを装着してもよい。特に上記で言及した平面でない機械基板の場合、さらに正確なガイドの自由度が必要なこともある。しかし、この装置自体は先行技術から周知なので、この点はこれ以上詳細に説明しない。
【0063】
上記で説明した装置は以下のように動作する。
【0064】
ガラス板4をキャリヤ8上のプラズマヘッド10に対して正しい位置に合わせると、前記ガラス板はその下部縁端をコンベヤ装置5の上に乗せて直立し、エアクッションを介して支持表面2に支持される。最初に、プラズマヘッド10をガラス板4の第1の垂直縁端に垂直な列に位置合わせするように、プラズマヘッド10を備えたキャリヤ8を方向付ける。ガラス板4に向かって配置するプラズマヘッド10の数はコーティング除去11の望ましい幅に対応しなければならない(また、コーティング除去11の望ましい幅に対応するのに必要なものと同数のプラズマヘッド10だけを動作させることも可能である)。そして、支持板7をキャリヤ8及びプラズマヘッド10と共にガラス板4の垂直縁端に沿って上向きに移動し(矢印14)、ガラス板4の第1の垂直縁端(領域11、図2)からコーティングを除去する。プラズマヘッド10を備えたキャリヤ8を90°回転させることによって、プラズマヘッド10は、ガラス板4の上部水平縁端に垂直な列に位置合わせされるように方向付けられる。そして、上部縁端からコーティングを除去するように、ガラス板4を支持表面2に沿って移動させる(また、ガラス板を固定して保持し、支持板7とキャリヤ8を配置したバー6を支持表面2に沿って水平方向に移動させることも可能である)。一旦ガラス板4の上部縁端からコーティングを除去したら、キャリヤ8をもう一度90°旋回させ、ガラス板4の第2の垂直縁端からコーティングを除去するが、その際キャリヤ8は支持板7と共に下向きに移動する。ガラス板4は固定したままである。
【0065】
最後に、キャリヤ8をもう一度90°旋回し、プラズマヘッド10を備えたキャリヤ8に対してガラス板4を移動させることによって、ガラス板4の下部水平縁端からコーティングを除去する。
【0066】
コーティング除去自体は、一方では、プラズマヘッド10からガラス板4に向けた(場合によっては多数の)プラズマビームの影響下で熱の作用によって行われる。他方では、特にプラズマ中の反応性ガスを使用することによって、化学的コーティング除去機構(エッチング)を使用してもよい。フッ素含有ガスがこの処理に特に適している。
【0067】
本発明による装置によれば、幅11に対応する形で使用するプラズマヘッド10の数を選択することによって、及び/または、望ましいコーティング除去幅に対して場合毎に必要なプラズマヘッド10だけをガラス板4に向かって配置するように直線的にキャリヤ8を移動させることによって、コーティング除去の幅を自由に選択できることが分かる。また、同じガラス板4の異なる幅の様々な縁端部11からコーティングを除去することも可能である。
【0068】
最後に、図3は、やはり極めて概略的に、プラズマヘッド10の作業領域11’に直接隣接するシールド20を示す。プラズマヘッドはこの場合、コーティングした基板4またはコーティング22に衝突する発生中のビームだけによって表し、コーティング22はこの場合、(分かりやすくするため極めて強調した厚さの)灰色の被覆によって示す。プラズマビームと基板4との間の相対移動性を水平二重矢印によって示す。ビームの右側のコーティング22はまだ無処理であり、ビームの左側では除去されていることが分かる。プラズマビームの下部領域では、基板4の表面のすぐ上で、コーティングから分離した粒子が不確定な運動状態にあり得ることが示される。
【0069】
シールド20はフレームの形で作業領域11’を取り囲んでもよい。これは、コーティング22から分離した粒子によってコーディングをすでに除去した領域または範囲のコーティングまたは再コーティングを汚染するのを防止する意図である。さらに、ここでも概略的に示すが、必要ならば、分離した粒子と、場合によってはもちろん、特に反応性(例えば、フッ素含有)加工用ガスをすぐに除去し、それらを廃棄する(また加工用ガスの場合リサイクルする)吸引装置24を提供してもよい。この排出装置とシールド20がシステム中に同時に提供されるならば、排出装置は好都合にはシールド20に結合し、後者と同期して誘導される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的にコーティングのない基板の表面を必要とする基板をその後の使用のために調製する際に、コーティングした基板、特にガラスまたはプラスチック板からプラズマの支援によってコーティングを除去する方法であって、コーティングを局所的に除去するために、コーティングを除去しようとする基板の領域にプラズマを向けるものであり、部分的な範囲上及び/または少なくとも部分的な厚さにわたってコーティングを除去するために、コーティングを除去する(作業)領域の幅/範囲に少なくとも対応するプラズマの有効幅/範囲を、コーティングを除去する基板の表面に向けることを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも2つの隣接、好適には直接隣接したビームの列としてプラズマを前記ガラス板に向けることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プラズマ及び基板のカバレージ幅を変化させるために、少なくとも1つのプラズマビームを励起しないかまたは励起すること、及び/または前記プラズマビームが形成する列の入射角を進行方向に対して変化させることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのスリット型ソースからのプラズマを前記基板に向けることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
プラズマ及び基板のカバレージ幅を変化させるために、前記スリット型ソースの断面を変化させること、及び/またはその入射角を進行方向に対して変化させることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
プラズマと、コーティングを除去する基板との間の連続相対移動を行い、その際プラズマを放出する装置が前記基板に対して移動するか、前記基板がプラズマを放出する前記装置に対して移動するか、または両者が互いに移動するかであることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項7】
プラズマと基板との間の相対移動を、コーティングを除去する基板の縁端に平行に行うことを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項8】
平行なプラズマビームの列を、コーティングを除去する前記ガラス板の縁端に垂直に位置合わせすることと、進行方向の相対移動を、前記基板と、前記基板を横切るこのプラズマビームの列との間で行うこととを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項9】
プラズマビームの列またはプラズマビームを放出するスリットノズルが、コーティングを除去するガラス板の角の領域で、前記ガラス板に垂直な軸に沿って回転することを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項10】
基板の縁端及び/または面からコーティングを除去するために使用されることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項11】
プラズマが基板の縁端または面からコーティングを除去するためにも使用され、その際プラズマビームが前記縁端または面に本質的に直角な方向に向けられることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項12】
対応する作業領域に直接隣接する平坦なシールドが使用され、前記平坦なシールドが前記基板の表面にできる限り近く配置されることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項13】
フレームの形でプラズマの前記作業領域を取り囲むシールドが使用されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記作業領域で分離した粒子が、排出装置、特に吸引装置によってすぐに除去されることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項15】
前記基板の縁端が外接する範囲内の領域からコーティングを除去するために、特にいわゆる通信ウィンドウからコーティングを除去するために使用されることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項16】
金属、酸化物、窒化物または有機物コーティングまたは前記層の種類の組み合わせを除去するために使用されることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項17】
疎水性及び/または親水性コーティングを除去するために使用されることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項18】
先行する請求項の1つに記載の方法を実施する装置であって、
− コーティングを除去する基板(4)のための支持表面(2)と、
− 少なくとも1つのプラズマソース(10)のためのキャリヤ(8)と、
− 前記基板(4)を移動させる装置(5)と、
− 前記プラズマソース(10)の前記キャリヤ(8)を移動させる装置とを備え、
少なくとも2つのプラズマヘッド(10)または可変断面を備えた少なくとも1つのプラズマヘッドが前記プラズマソースのためのキャリヤ(8)上に配置されることを特徴とする装置。
【請求項19】
前記プラズマヘッド(単数または複数)(10)のための前記キャリヤ(8)が、駆動手段によって本質的に垂直なバー(6)に沿って前記支持表面(2)の前で移動できることを特徴とする、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記バー(6)が固定式または可動式に前記装置内に設置されることを特徴とする、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記プラズマヘッド(10)のための前記キャリヤ(8)が、コーティングを除去する前記ガラス板(4)の平面に垂直な軸(16)に沿って回転できることを特徴とする、請求項19または請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記プラズマヘッド(単数または複数)(10)のための前記キャリヤ(8)が前記ガラス板(4)の平面に垂直に調整できることを特徴とする、請求項19〜21の1つに記載の装置。
【請求項23】
前記プラズマヘッド(単数または複数)(10)のための前記キャリヤ(8)が、前記バー(6)に誘導される保持板(7)上に調整式に設置されることを特徴とする、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記保持板(7)上の前記キャリヤ(8)が前記ガラス板(4)の平面に垂直な軸に沿って回転できることを特徴とする、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記保持板(7)上の前記キャリヤ(8)が前記ガラス板(4)の平面に平行に直線的に調整できることを特徴とする、請求項23または24に記載の装置。
【請求項26】
前記プラズマヘッド(10)が前記キャリヤ(8)上で互いに隣接する列に配置されることを特徴とする、先行する装置請求項の1つに記載の装置。
【請求項27】
前記保持板(7)上の前記キャリヤ(8)が、隣接するプラズマヘッド(10)の列の方向に調整できることを特徴とする、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記プラズマヘッドの作業領域内、またはプラズマが前記基板(4)及びコーティング(22)に衝突する領域内にシールド(20)が提供されることを特徴とする、先行する装置請求項の1つに記載の装置。
【請求項29】
前記シールド(20)がフレームの形でプラズマの前記作業領域を取り囲むことを特徴とする、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記シールドが前記プラズマヘッドと共に誘導されることを特徴とする、請求項28または29に記載の装置。
【請求項31】
コーティング(22)の分離した粒子を排出する、特に吸引によって除去するための装置(24)が、前記プラズマヘッドの作業領域内、またはプラズマが前記基板(4)及びコーティング(22)に衝突する領域内に提供されることを特徴とする、先行する装置請求項の何れか1つに記載の装置。
【請求項32】
前記装置(24)が前記シールド(20)に接合し、それと共に誘導されることを特徴とする、請求項28及び31に記載の装置。
【請求項33】
前記基板の縁端または面に本質的に垂直な方向のプラズマを偏向するために、前記キャリヤが前記基板の表面に平行な少なくとも1つの軸に沿って回転できることを特徴とする、先行する装置請求項の1つに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−82184(P2011−82184A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262861(P2010−262861)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【分割の表示】特願2006−515953(P2006−515953)の分割
【原出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】