説明

ガラス板トレイ

【課題】トレイ自体の清浄性を向上、維持することができ、収容したガラス板の清浄性を損うことのないガラス板トレイ10を提供すること。
【解決手段】
ガラス板を平置き状態で多数並列させて収容し、互いに上下に積み重ね可能なガラス板トレイ10において、平板状のトレイ本体1の上面11に各ガラス板を収容する複数の収容部2を形成し、各収容部2において複数の載置突起同士の間に、トレイ本体1の上下面を貫通する貫通孔3を設け、この貫通孔3をトレイ本体1の上面11から下面へ向うに従って拡径させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板トレイ、より詳しくは、ガラス板を平置き状態で多数並列させて収容するガラス板の搬送トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体撮像素子のカバーガラスやフィルタガラス等の比較的に小さいガラス板の搬送は、これらガラス板を平置き状態で多数並列させてトレイに収容し、トレイ同士を互いに積み重ねた状態で行なわれる(例えば、下記特許文献1、2参照)。これらカバーガラスやフィルタガラス等には、高い清浄性が求められることから、カバーガラス等を収容するトレイ自体にも、高い清浄性が要求される。
【0003】
ところが、従来のトレイは、ガラス板を安定に収容することが可能であるものの、各ガラス板を収容する収容部の底面、或いはその底面に開設された貫通孔の孔内面に、塵挨等が溜まり易い難点があり、これらの塵挨等が収容部に収容したガラス板に付着し、ガラス板の清浄性を損う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−130175号公報
【特許文献2】特開2006−69651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のガラス板トレイに上記のような問題があったことに鑑みて為されたもので、トレイ自体の清浄性を向上し、維持することができ、収容したガラス板の清浄性を損うことのないガラス板トレイを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ガラス板を平置き状態で多数並列させて収容し、互いに上下に積み重ね可能なガラス板トレイであって、
平板状のトレイ本体と、前記トレイ本体の上面に設けられ、各ガラス板を収容する複数の収容部とを備え、前記各収容部は、前記トレイ本体の上面に突設され、前記ガラス板の各側辺部が載置される複数の載置突起と、前記各載置突起と一体に設けられ、該載置突起に載置された前記ガラス板を水平方向に位置決めする位置決め突起と、から構成され、
前記各収容部の前記複数の載置突起同士の間に、前記トレイ本体の上下面を貫通する貫通孔が設けられ、該貫通孔が該トレイ本体の上面から下面へ向うに従って拡径していることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記トレイ本体の上面の外周側に、最外周側の前記位置決め突起と一体に規制突起が突設され、前記トレイ本体の下面の外周側に、複数のガラス板トレイを積み重ねたとき、下方の他のガラス板トレイの前記規制突起の外側に嵌合し、該他のガラス板トレイの前記トレイ本体の上面に載置される脚突起が突設されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、互いに隣り合う前記収容部同士の間において互いに隣り合う前記位置決め突起同士が、前記トレイ本体の上面に突設された連結突起を介して一体に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るガラス板トレイによれば、各収容部の載置突起同士の間にトレイ本体の上下面を貫通する貫通孔を設けているので、例えばガラス板トレイの保管時等に、従来のトレイのように収容部の底面に塵挨等が溜まる難点がない。しかも、この貫通孔が、トレイ本体の上面から下面へ向うに従って拡径しているので、貫通孔の孔内面に塵挨等が溜まるおそれもなく、ガラス板トレイの清浄性を維持することができる。
【0010】
また、貫通孔がトレイ本体の下面へ向って拡がっているので、ガラス板トレイの保管時に、貫通孔の孔内面に塵挨等が付着したとしても、トレイ本体の下面側からエア等を噴射すれば、噴射エアを有効に孔内面に当てることができ、孔内面の塵挨等を容易に除去することができ、ガラス板トレイの清浄性を維持することができる。
【0011】
さらに、貫通孔がトレイ本体の下面へ向って拡がっているので、ガラス板トレイの洗浄工程時においても、貫通孔の孔内面の塵挨等を効率的に除去することができ、その清浄性を向上させることができる。さらに、洗浄後の乾燥工程時においても、貫通孔内の液溜まりを低減させることができ、乾燥染みの発生を抑制することができる。このことによっても、ガラス板トレイの清浄性を向上させることができる。
【0012】
また、トレイ本体の上面に、位置決め突起と一体に規制突起を設け、トレイ本体の下面に、この規制突起の外側に嵌合する脚突起を設ければ、ガラス板トレイ同士の積重ね構造を簡素化することができ、特にトレイ本体の上面の凹凸を少なくすることができる。このことによっても、塵挨等の付着、残留を抑制し、ガラス板トレイの清浄性を維持することができる。
【0013】
また、トレイ本体の上面の互いに隣り合う位置決め突起同士を連結突起を介して一体に形成すれば、トレイ本体の上面の凹凸を大幅に少なくすることができ、このことによっても、塵挨等の付着、残留を抑制し、ガラス板トレイの清浄性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態のガラス板トレイの上面図である。
【図2】本実施形態のガラス板トレイの側面図である。
【図3】本実施形態のガラス板トレイの下面図である。
【図4】本実施形態のガラス板トレイの部分拡大上面図である。
【図5】図4中のA−A線矢視拡大断面図である。
【図6】本実施形態のガラス板トレイを積み重ねた状態の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態のガラス板トレイ10は、図1〜図5に示すように、平面視矩形の平板状のトレイ本体1と、トレイ本体1の上面11に設けられ、各ガラス板Wを収容するための複数の収容部2と、を備えている。本実施形態のガラス板トレイ10は、合成樹脂材の射出成形により形成されており、各収容部2において、固体撮像素子用のカバーガラス(約2mm角×0.2mm厚)から成る微小なガラス板Wを保持する。
【0016】
トレイ本体1は、平面視正方形状を成しており、その上面11に縦横同数の収容部2が縦横に等間隔をあけて並列して設けられている。そして、トレイ本体1の一つの角部には、トレイ本体1の向きを識別するための切欠部13が形成されている。
【0017】
各収容部2は、図4及び図5に示すように、トレイ本体1の上面11に上向きに突設され、ガラス板Wの各側辺部を載置し得る計四つの載置突起21と、各載置突起21と一体に設けられ、載置突起21上に載置されたガラス板Wを水平方向に位置決めする位置決め突起22と、から構成されている。各収容部2において、計四つの載置突起21がガラス板Wの側辺部の中程を下方から支えるとともに、計四つの位置決め突起22がそのガラス板Wの側辺部の中程を側方から支えることによって、ガラス板Wが水平方向に所定の遊びをもって平置き状態で収容される。
【0018】
本実施形態では、互いに隣り合う収容部2・2同士の間において、互いに隣り合う位置決め突起22・22同士が、トレイ本体1の上面11に突設された連結突起23を介して一体に形成されている。つまり、縦横に整列した複数の収容部2・2...のうち、一の収容部2の一の位置決め突起22と、この一の収容部2と隣り合う他の収容部2において一の位置決め突起22と隣り合う他の位置決め突起22とが、連結突起23によって連結されている。これら位置決め突起22と連結突起23とは、同一高さ、同一幅で形成されており、両者は段差なく一体に連結されている。
【0019】
また、各収容部2において、計四つの載置突起21同士の間には、トレイ本体1の上下面を貫通する平面視正方形状の貫通孔3が設けられている。この貫通孔3は、図5に示すように、トレイ本体1の上面11から下面12へ向うに従って単調に拡径しており、貫通孔3の孔内面31は四角錐台形状を成している。
【0020】
また、トレイ本体1の上面11の外周側には、複数の位置決め突起22のうち最も外周側に位置する位置決め突起22と一体に規制突起4が突設されている。本実施形態では、これら規制突起4と位置決め突起22とは、同一高さ、同一幅で形成されており、両者は段差なく一体に連結されている。
【0021】
また、トレイ本体1の下面12の外周側には、下向きに脚突起5が突設されている。本実施形態では、図3に示すように、トレイ本体1の下面12の各側辺部に計二つの脚突起5が配設されている。図6に示すように、複数のガラス板トレイ10A・10Bを上下に積み重ねたとき、上方の一のガラス板トレイ10Aの脚突起5Aが、下方の他のガラス板トレイ10Bの規制突起4Bの外側に嵌合し、他のガラス板トレイ10Bのトレイ本体1Bの上面11B上に載置される。こうして、上方の一のガラス板トレイ10Aが、下方の他のガラス板トレイ10Bに対し、水平方向に所定の遊びをもって位置決めされて積み重ねられる。
【0022】
また、図4及び図5に示すように、トレイ本体1の下面12には、安定突起6が上面11の各収容部2に対応する位置に、下向きに突設されている。本実施形態では、平面視正方形状の貫通孔3の角部近傍に計4つの半球形状の安定突起6が配設されている。図6に示すように、複数のガラス板トレイ10A・10Bを上下に積み重ねたとき、上方の一のガラス板トレイ10Aの安定突起6Aの下端が、下方の他のガラス板トレイ10Bの収容部2B内において、位置決め突起22Bの上端よりも下方に位置される。このことで、複数のガラス板トレイ10A・10Bを上下に積み重ねたとき、収容部2Bに平置き状態で収容されたガラス板Wが、上下方向に所定の遊びをもって位置決めされ、各収容部2B内で安定に保持される。
【0023】
このように本実施形態のガラス板トレイ10によれば、各収容部2の載置突起22同士の間にトレイ本体1の上下面を貫通する貫通孔3を設けているので、例えばガラス板トレイ10の保管時等に、従来のトレイのように収容部の底面に塵挨等が溜まる難点がなく、しかも、この貫通孔3が、トレイ本体1の上面11から下面12へ向うに従って拡径しているので、貫通孔3の孔内面31に塵挨等が溜まるおそれもなく、ガラス板トレイ10の清浄性を維持することができる。
【0024】
また、貫通孔3がトレイ本体1の下面12へ向って拡がっているので、ガラス板トレイ10の保管時に、貫通孔3の孔内面31に塵挨等が付着したとしても、トレイ本体1の下面12側からエア等を噴射すれば、噴射エアを有効に孔内面31に当てることができ、孔内面31の塵挨等を容易に除去することができ、ガラス板トレイ10の清浄性を維持することができる。ガラス板トレイ10の各貫通孔3の周囲には、トレイ本体1の上面11側にガラス板Wを所定高さに載置し位置決めする載置突起21及び位置決め突起22が設けられているのに対し、下面12側には安定突起6が設けられているに過ぎない。したがって、下面12側から噴射エアを孔内面31により効率的に当てることができ、各貫通孔3の孔内面31の塵挨等を確実に除去することができる。
【0025】
さらに、貫通孔3がトレイ本体1の下面12へ向って拡がっているので、ガラス板トレイ10の洗浄工程時においても、貫通孔3の孔内面31の塵挨等を効率的に除去することができ、その清浄性を向上させることができる。さらに、洗浄後の乾燥工程時においても、貫通孔3内の液溜まりを低減させることができ、乾燥染みの発生を抑制することができる。このことによっても、ガラス板トレイ10の清浄性を向上させることができる。
【0026】
また、本実施形態のガラス板トレイ10によれば、トレイ本体1の上面11に、位置決め突起22と一体に規制突起4を設け、トレイ本体1の下面12に、この規制突起4の外側に嵌合する脚突起5を設けているので、ガラス板トレイ10同士の積重ね構造を簡素化することができ、特にトレイ本体1の上面11の凹凸を少なくすることができる。このことによっても、塵挨等の付着、残留を抑制し、ガラス板トレイ10の清浄性を維持することができる。
【0027】
また、本実施形態のガラス板トレイ10によれば、トレイ本体1の上面11の互いに隣り合う位置決め突起22同士を連結突起23を介して一体に形成しているので、トレイ本体1の上面11の凹凸を大幅に少なくすることができ、このことによっても、塵挨等の付着、残留を抑制し、ガラス板トレイ10の清浄性を維持することができる。
【0028】
また、本実施形態のガラス板トレイ10によれば、各ガラス板Wの側辺部の中程を載置突起21で下方から支え、この載置突起21と一体に形成された位置決め突起22でガラス板Wの側辺部の中程を側方から支えているので、各収容部2において、略直交し合う3つの面から成る入隅部が形成されることがなく、かかる入隅部に塵挨等が残留する問題もない。
【0029】
以上、本実施形態のガラス板トレイ10について説明したが、本発明はその他の形態でも実施することができる。
【0030】
例えば、上記実施形態では、トレイ本体1の貫通孔3を平面視正方形状に形成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、長方形状等の他の矩形状、円形状、楕円形状等の平面視形状に形成してもよい。また、貫通孔3は、トレイ本体1の上面11から下面12へ向うに従って必ずしも単調に拡径している必要はなく、貫通孔3の内側に向って凸状に形成されていても、凹状に形成されていてもよい。例えば、貫通孔3の孔径や深さ、ガラス本体1の材質等を考慮して種々の設計変更が可能である。
【0031】
本発明は、その他、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよく、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施してもよい。
【符号の説明】
【0032】
10、10A、10B ガラス板トレイ
1、1B トレイ本体
11、11B 上面
12 下面
2、2B 収容部
21 載置突起
22、22A 位置決め突起
23 連結突起
3 貫通孔
4、4B 規制突起
5、5A 脚突起
6、6A 安定突起
W ガラス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板を平置き状態で多数並列させて収容し、互いに上下に積み重ね可能なガラス板トレイであって、
平板状のトレイ本体と、前記トレイ本体の上面に設けられ、各ガラス板を収容する複数の収容部と、を備え、
前記各収容部は、
前記トレイ本体の上面に突設され、前記ガラス板の各側辺部が載置される複数の載置突起と、前記各載置突起と一体に設けられ、該載置突起に載置された前記ガラス板を水平方向に位置決めする位置決め突起と、から構成され、
前記各収容部の前記複数の載置突起同士の間に、前記トレイ本体の上下面を貫通する貫通孔が設けられ、該貫通孔が該トレイ本体の上面から下面へ向うに従って拡径していることを特徴とするガラス板トレイ。
【請求項2】
前記トレイ本体の上面の外周側に、最外周側の前記位置決め突起と一体に規制突起が突設され、
前記トレイ本体の下面の外周側に、複数のガラス板トレイを積み重ねたとき、下方の他のガラス板トレイの前記規制突起の外側に嵌合し、該他のガラス板トレイの前記トレイ本体の上面に載置される脚突起が突設されている請求項1に記載のガラス板トレイ。
【請求項3】
互いに隣り合う前記収容部同士の間において互いに隣り合う前記位置決め突起同士が、前記トレイ本体の上面に突設された連結突起を介して一体に形成されている請求項1または請求項2に記載のガラス板トレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−166825(P2012−166825A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29922(P2011−29922)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】