説明

ガラス板梱包用パレット及びガラス板梱包体

【課題】輸送時におけるガラス板の積載効率の向上を図りつつ、衝撃等に由来するガラス板の下端縁近傍の割れや損傷を抑制する。また、梱包用パレットに収容された段階では湾曲しているガラス板を、その積層作業時及び取り出し作業時には略平坦な形状にして、作業性の改善を図る。
【解決手段】基台部4の受け面8に縦姿勢で受けられたガラス板積層体3を、裏面側に凸となる曲率半径が、上部よりも下部の方が小さくなり、且つ、幅方向と直交する断面において、下端3bの裏面に接する接線Lが、その裏面に接する点から前方に延びる水平線Hを基準として、上方に向かう角度αが、α≧0°となる形状に保持するように受け面8の形状を設定する。また、基台部4が、受け面8を有する上下動可能な可撓性受け部材9を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板梱包用パレット及びガラス板梱包体に係り、詳しくは、縦姿勢のガラス板積層体を適切な姿勢で支持することが可能な梱包用パレット及び梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(サーフェイスエミッションディスプレイを含む)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板に代表される各種のガラス板は、近年、大型化が推進されているのが実情である。その一例として、液晶ディスプレイ用ガラス基板においては、一辺の長さが3000mmを超えるに至り、且つ板厚も0.7mm以下のものが普及されて薄肉化が伴うに至っている。このように大型且つ薄肉のガラス板は、破損が生じ易いことから、梱包して輸送する際の取り扱いが極めて困難化され、特に梱包形態が重要視されているのが実情である。
【0003】
この種のガラス板は、複数枚を並列に配置してなるガラス板積層体として、梱包用パレットに収容した状態で、コンテナに積み込まれて輸送されるのが一般的であるが、その輸送時には、ガラス板積層体に衝撃が生じるなどして種々の弊害を招く。そこで、この種のガラス板の梱包形態については、衝撃対策を考慮する必要がある。
【0004】
このような要請に応じるものとして、例えば特許文献1に開示されているように、可撓性を有するシート材の両端部を容器本体に固定すると共に、シート材の上面にガラス板積層体を水平姿勢で載せることにより、シート材をガラス板積層体とともに湾曲させた状態で宙吊り状態とすることが行われている。
【0005】
このような構成によれば、基本的に、二点間支持でガラス板が自重による曲線を描くことになって、ガラス板が懸垂曲線またはこれに近似する曲線に湾曲するため、二点間の中央部分での最も曲率半径が小さくなる箇所に局所的に大きな応力が作用する。そのため、このような梱包形態では、輸送時における衝撃の影響を回避できるものの、湾曲部の曲率半径が適切でないことによりガラス板の割れや破損の問題が生じる。
【0006】
このようなガラス板の割れや破損の問題に加えて、近年においては、上述のようにガラス板の大型薄肉化に伴って、上記の特許文献1に開示のように水平姿勢でガラス板積層体を梱包用パレットに収容していたのでは、コンテナのフロア面積の制約を受けて、積載効率が悪化し、大量のガラス板積層体を一挙に輸送できなくなるという問題が生じる。
【0007】
このような問題に対処するには、ガラス板積層体を縦姿勢で梱包用パレットに収容した状態で、コンテナに積み込むことが有利となる。このような要請に応じるために、例えば特許文献2によれば、ガラス板が裏面側に凸となる湾曲形状にして縦姿勢で梱包することが開示されている。
【0008】
また、特許文献3には(FIG.4A、4B参照)、縦姿勢のガラス板積層体の裏面を受ける受け面を湾曲させた状態で、当該ガラス板積層体の下端を傾斜した平坦な受け面で受けるようにした梱包形態が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−13178号公報
【特許文献2】特開2002−128182号公報
【特許文献3】特表2006−521975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1に開示の梱包形態によれば、ガラス板の湾曲形状の不適切化に伴う弊害と、水平姿勢で支持されることによる弊害との両者を回避することができず、特に輸送時におけるガラス板の梱包形態としては、致命的な欠点を有することになる。
【0011】
これに対して、特許文献2、3に開示の梱包形態によれば、ガラス板積層体が縦姿勢で支持されるため、コンテナへの積載効率が改善されるという点においては有利である。しかしながら、同公報に開示の梱包形態では、湾曲形状の不適切化に伴って、ガラス板積層体の下端に、自重による大きな荷重が作用して応力集中が生じる。そのため、輸送時の衝撃等に起因して、各ガラス板の下端の近傍に割れや損傷が生じ易くなるという欠点を有している。
【0012】
したがって、輸送時におけるガラス板の積載効率の向上と、衝撃等に由来するガラス板の下端縁近傍の割れや損傷の抑制とが、一挙同時に実現されることが望まれるが、そのような対策については、何ら見い出されていないのが実情である。
【0013】
また、特許文献1、2、3に開示された梱包形態は何れも、梱包用パレットにガラス板が積層されて収容作業を終えた段階では、各ガラス板が湾曲した状態にある。然るに、梱包用パレットにガラス板を積層する作業を行っている段階や、既にガラス板積層体が収容されている梱包用パレットからガラス板を取り出す作業を行っている段階では、作業性などの観点から、ガラス板は平坦もしくは平坦に近い状態に維持されることが望ましい。しかしながら、特許文献1、2、3に開示の梱包技術では、このような要請に応じることができない。
【0014】
以上の観点から、本発明の第1の課題は、輸送時におけるガラス板の積載効率の向上を図りつつ、衝撃等に由来するガラス板の下端縁近傍の割れや損傷を抑制することにある。
また、本発明の第2の課題は、梱包用パレットに収容された段階では湾曲しているガラス板を、その積層作業時及び取り出し作業時には略平坦な形状にして、作業性の改善を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記第1の課題を解決するために創案された本発明は、複数枚のガラス板が縦姿勢で並列に配列されてなるガラス板積層体を下方側及び後方側から支持する基台部を備えると共に、該基台部に、前記ガラス板積層体の裏面及び下端を受ける受け面が配設されたガラス板梱包用パレットであって、前記基台部の受け面に縦姿勢で受けられたガラス板積層体は、幅方向と直交する断面において、裏面側に凸となる曲率半径が、上部よりも下部の方が小さくなり、且つ、下端の裏面に接する接線が、その裏面に接する点から前方に延びる水平線を基準として、上方に向かう角度αが、α≧0°となる形状に保持されるように前記受け面の形状を設定したことに特徴づけられる。
【0016】
このような構成によれば、基台部の受け面に縦姿勢で受けられたガラス板積層体の下部は、その上部よりも曲率半径が小さいことに加えて、その下端の裏面が、水平方向を指向するか又は前方に向かって斜め上方を指向する形状に保持されるため、ガラス板積層体の下部においては、自重による荷重が殆ど下端に作用しなくなり、当該荷重は主として下部の裏面または下端近傍の裏面に作用することになる。厳密には、ガラス板積層体の自重による荷重は、その下端を通じて受け面に殆ど作用しなくなり、その荷重の大半が、下部または下端近傍の裏面を通じて受け面に作用することになる。これを各ガラス板について考察すれば、上記の荷重がガラス板の下端で線接触として受けられるのではなく、面接触により荷重を分配して受けられるため、ガラス板の下端部には応力集中の生じる部位がなくなる。これにより、ガラス板積層体を縦姿勢にすることによりコンテナ等への積載効率を向上させ得るにも拘らず、ガラス板の下端に応力集中に伴う割れや損傷等が生じる事態を回避することが可能となる。したがって、輸送時におけるガラス板の積載効率の問題と、その輸送時の振動等に由来するガラス板の割れや損傷等の問題とが、一挙同時に解決される。
【0017】
この場合、前記ガラス板積層体の上部は、略平坦な形状に保持されるように前記受け面の形状を設定することが好ましい。
【0018】
このようにすれば、ガラス板積層体の姿勢が安定した状態で受け面により支持され得ることになり、輸送時にガラス板積層体の上部に受け面から離反しようとする力などの不当な力が作用しなくなるため、ガラス板積層体を安全に輸送することが可能となる。
【0019】
また、以上の構成からなるガラス板梱包用パレットにおいて、前記基台部は、前記受け面を有する可撓性受け部材を備え、該可撓性受け部材は、前記ガラス板積層体を縦姿勢に保持した状態で上下動可能とされると共に、前記可撓性受け部材が下動端に位置している時には、前記ガラス板積層体が、以上で述べた形状とされ、前記可撓性受け部材が上動端に位置している時には、前記ガラス板積層体の表面全体が、略平坦な形状とされるように前記受け面の形状を可変とすることができる。
【0020】
このようにすれば、ガラス板積層体を裏面側から受けて保持する上下動可能な可撓性受け部材を有していることにより、輸送時にはガラス板積層体の下部が上部よりも曲率半径が小さい既述の状態に維持できると共に、梱包用パレットにガラス板を積層する作業及び梱包用パレットからガラス板を取り出す作業を行う際には、ガラス板積層体の表面全体を略平坦な状態に維持することができる。これにより、輸送時における上述の利点を確保した上で、ガラス板の積層作業時及び取り出し作業時における作業性の向上を図ることが可能となる。したがって、この場合には、上記第1の課題のみならず、第2の課題をも解決できることになる。
【0021】
また、上記第2の課題を解決するために創案された本発明は、複数枚のガラス板が縦姿勢で並列に配列されてなるガラス板積層体を下方側及び後方側から支持する基台部を備えると共に、該基台部に、前記ガラス板積層体の裏面及び下端を受ける受け面が配設されたガラス板梱包用パレットであって、前記基台部は、前記受け面を有する可撓性受け部材を備え、該可撓性受け部材は、前記ガラス板積層体を縦姿勢に保持した状態で上下動可能とされると共に、前記可撓性受け部材が下動端に位置している時には、前記ガラス板積層体は、裏面側に凸となる湾曲部を少なくとも下部に有する形状に保持され、且つ、前記可撓性受け部材が上動端に位置している時には、前記ガラス板積層体は、上部及び下部が略平坦な形状に保持されるように前記受け面の形状を可変としたことに特徴づけられる。
【0022】
このような構成によれば、ガラス板積層体を裏面側から受けて保持する上下動可能な可撓性受け部材が、下動端にある時には、ガラス板積層体の少なくとも下部が湾曲しているのに対して、上動端にある時には、ガラス板積層体の表面全体が略平坦な形状に維持される。すなわち、可撓性受け部材が、下動端にある時と上動端にある時とでは、ガラス板積層体の湾曲度合いが異なることになる。そして、この可撓性受け部材が上動端にある時に、ガラス板を積層する作業及びガラス板を取り出す作業を行えば、ガラス板が殆ど湾曲していない状態でこれらの作業が行われ得ることになり、ガラス板を湾曲させながら当該作業を行う場合と比較して、円滑且つ迅速な作業が可能となる。
【0023】
このような構成のガラス板梱包用パレットは、前記基台部のうちのガラス板積層体を後方側から支持する後方支持部に、該後方支持部の上方側への延長線上に存する状態と、該後方支持部の上方から退避する状態とに切り換え可能な延長支持部材を装着し、該延長支持部材が前者の状態にある時に、前記可撓性受け部材が該延長支持部材により案内されて上動するように構成されていることが好ましい。
【0024】
このようにすれば、基台部の後方支持部の上方側への延長線上に延長支持部材が存する時に、可撓性受け部材が上動することになるので、基台部に収容されていたガラス板積層体は、基台部の上端を超えて上方に移動し且つ略平坦な形状に近づいていくことになる。そして、可撓性受け部材が、延長支持部材に案内されて上動端に達した段階で、既述のように、ガラス板の取り出し作業を行えると共にガラス板の積層作業をも行うことが可能となる。一方、延長支持部材を、基台部における後方支持部の上方から退避させれば、基台部の高さを必要最小限に抑えて、ガラス板積層体を収容できるため、輸送時においては、コンテナ等の高さによる制約を回避することが可能となる。
【0025】
また、上記第1の課題を解決するために創案された本発明は、複数枚のガラス板が並列に配列されたガラス板積層体を備えると共に、該ガラス板積層体を下方側及び後方側から支持する基台部と、該基台部に配設されて前記ガラス板積層体の裏面及び下端を受ける受け面とを有するガラス板梱包用パレットを備えたガラス板梱包体であって、前記基台部の受け面に縦姿勢で受けられたガラス板積層体は、ガラス板積層体の幅方向と直交する断面において、裏面側に凸となる曲率半径が、上部よりも下部の方が小さくなり、且つ、下端の裏面に接する接線が、その裏面に接する点から前方に延びる水平線を基準として、上方に向かう角度αが、α≧0°となる形状に保持されるように構成したことに特徴づけられる。
【0026】
このガラス板梱包体の特徴となる構成は、既述の対応するガラス板梱包用パレットの構成と実質的に同一であるので、その作用効果も、既述の対応する作用効果と実質的に同一である。したがって、ここでは、その説明を省略する。
【0027】
一方、上記第2の課題を解決するために創案された本発明は、複数枚のガラス板が並列に配列されたガラス板積層体を備えると共に、該ガラス板積層体を下方側及び後方側から支持する基台部と、該基台部に配設されて前記ガラス板積層体の裏面及び下端を受ける受け面とを有するガラス板梱包用パレットを備えたガラス板梱包体であって、前記基台部は、前記受け面を有する可撓性受け部材を備え、該可撓性受け部材は、前記ガラス板積層体を縦姿勢に保持した状態で上下動可能とされると共に、前記可撓性受け部材が下動端に位置している時には、前記ガラス板積層体は、裏面側に凸となる湾曲部を少なくとも下部に有する形状に保持され、且つ、前記可撓性受け部材が上動端に位置している時には、前記ガラス板積層体は、上部及び下部が略平坦な形状に保持されるように構成したことに特徴づけられる。
【0028】
このガラス板梱包体の特徴となる構成も、既述の対応するガラス板梱包用パレットの構成と実質的に同一であるので、その作用効果も、既述の対応する作用効果と実質的に同一である。したがって、ここでは、その説明を省略する。
【発明の効果】
【0029】
以上のように本発明によれば、縦姿勢にあるガラス板積層体の自重による荷重が、その下端を通じて受け面に作用することが殆どなくなり、その荷重の大半が、下部または下端近傍の裏面を通じて受け面に作用することになるため、応力集中の生じる部位がなくなり、輸送時におけるガラス板の積載効率の問題と、その輸送時の衝撃等に由来するガラス板の下端縁近傍の割れや損傷等の問題とが、一挙同時に解決される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係る梱包体(梱包用パレット)の概略構成を示す縦断側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る梱包体(梱包用パレット)の要部の概略構成を示す拡大縦断側面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る梱包体(梱包用パレット)の概略構成を示す一部破断縦断側面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る梱包体(梱包用パレット)の概略構成を示す正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る梱包体(梱包用パレット)の作用を示す概略縦断側面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る梱包体(梱包用パレット)の概略構成を示す一部破断縦断側面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る梱包体(梱包用パレット)の作用を示す概略縦断側面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る梱包体(梱包用パレット)の作用を示す概略縦断側面図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る梱包体(梱包用パレット)の概略構成を示す一部破断縦断側面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る梱包体(梱包用パレット)の作用を示す概略縦断側面図である。
【図11】本発明の第5実施形態に係る梱包体(梱包用パレット)の概略構成を示す縦断側面図である。
【図12】本発明の第6実施形態に係る梱包体(梱包用パレット)の概略構成を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態に係るガラス板梱包用パレット(以下、単に梱包用パレットという)及びガラス板梱包体(以下、単に梱包体という)を添付図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において梱包対象となるガラス板は、液晶ディスプレイ用ガラス基板であって、縦方向寸法が500〜3000mm、幅方向寸法が500から3500mm、板厚が0.1〜0.7mm(好ましくは、0.1〜0.4mm)である。
【0032】
図1は、本発明の第1実施形態に係る梱包体1(梱包用パレット2)を示す概略縦断側面図である。同図に示すように、梱包体1は、主たる構成要素として、縦姿勢のガラス板積層体3と、ガラス板積層体3を受ける基台部4と、基台部4を下方から支持する台座5とを備えている。ガラス板積層体3は、複数枚のガラス板6を並列に配列してなり、これら複数枚のガラス板6の相互間には、発泡樹脂シートや合紙等からなる保護シート7が介在されている。基台部4は、ガラス板積層体3を下方側及び後方側からそれぞれ支持する下方支持部4a及び後方支持部4bと、ガラス板積層体3を受ける受け面8とを有し、受け面8は、ガラス板積層体3の裏面3a及び下端3bをそれぞれ受ける裏受け面8a及び下受け面8bとからなる。そして、この実施形態では、基台部4と台座5とから梱包用パレット2が構成されている。
【0033】
ガラス板積層体3が基台部4の受け面8により受けられた状態の下では、ガラス板積層体3の上部3xよりも下部3yの方が、曲率半径が小さくなっている。詳しくは、ガラス板積層体3の上部3xは、略平坦であるのに対して、その下部3yは、裏面側に凸となるように湾曲した形状とされている。そして、図2に示すように、ガラス板積層体3の幅方向と直交する断面(図示の断面)においては、ガラス板積層体3の下端3bの裏面に接する接線Lが、その裏面に接する点Aから前方に延びる水平線Hを基準として、上方に向かう角度αが、α≧0°、好ましくは、α>0°の関係を満たしている。具体的には、この角度αは、0°〜45°、好ましくは、下限値が2°、上限値が30°とされる。
【0034】
基台部4の受け面8は、ガラス板積層体3が上記のような形状になるように湾曲している。すなわち、基台部4の裏受け面8aも、上部よりも下部の方が、曲率半径が小さくなっている。詳しくは、裏受け面8aの上部は、略平坦面であるのに対して、その下部は、裏面側に凸となるように湾曲している。そして、裏受け面8aの幅方向と直交する断面においては、裏受け面8aの下端に接する接線が、その接する点から前方に延びる水平線を基準として、上方に向かう角度が、0°以上、好ましくは、0°よりも大きくされている。なお、この角度の数値範囲は、上記のガラス板積層体3の場合と同様である。なお、ガラス板積層体3の上部3x及び裏受け面8aの上部は、上方に移行するに連れて後方側位置となるように傾斜している。
【0035】
このような構成であると、ガラス板積層体3の下端3bから、その自重による荷重が、基台部4の下受け面8bに殆ど作用しない状態にあり、その荷重の大半は、ガラス板積層体3の下部3yの裏面を通じて、裏受け面8aに作用する。この状態を、各ガラス板6について考察すれば、ガラス板6の下端には応力集中が生じず、ガラス板6の下部3y(または下端近傍)の裏面は、裏受け面8aに面接触しているため、応力が分散される。したがって、ガラス板6には、応力集中の生じる部位がなくなり、ガラス板6に割れや損傷等の生じる確率が極めて小さくなる。
【0036】
図3は、本発明の第2実施形態に係る梱包体1(梱包用パレット2)を例示している。この梱包体1は、基台部4の構成要素として、裏受け面8a及び下受け面8bからなる受け面8を有する可撓性受け部材9を備え、この可撓性受け部材9の受け面8は、上記第1実施形態に係る基台部4の受け面8と同一形状とされている。したがって、この受け面8により受けられているガラス板積層体3も、上記第1実施形態に係るガラス板積層体3と同一形状に保持されている。そして、この可撓性受け部材9は、基台部4の上縁部に沿って上下動可能とされており、図示の状態は、可撓性受け部材9が下動端にある時の状態を示している。なお、この第2実施形態に係る梱包体1と、上記第1実施形態に係る梱包体1との共通する構成要件については、図3に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0037】
基台部4における後方支持部4bの上端部には、略直線状に延びる延長支持部材10が支軸11を介して回動可能に連結されており、この延長支持部材10は、後方支持部4bの上方から退避する状態(同図に実線で示す状態)と、後方支持部4bの上方側への延長線上に存する状態(同図に鎖線で示す状態)とに切り換え可能とされている。そして、後者の状態にある時には、延長支持部材10は、その回動を規制されるように構成されており、また前者の状態にある時にも、延長支持部材10の回動は規制されることが好ましい。
【0038】
図4に示すように、可撓性受け部材9は、複数の金属板9aをすだれ状に繋ぎあわせたシャッター(鎧戸)で構成され、その幅方向の両端部が基台部4の上縁部に沿って固定されたガイドレール12により案内されて上下動するように構成されている。そして、図示しないが、延長支持部材10にも、同様のガイドレールが固定されており、延長支持部材10が基台部4の後方支持部4bの上方延長線上に位置している時には、基台部4のガイドレール12と延長支持部材10のガイドレールとが連結されるようになっている。この場合、可撓性受け部材9は、基台部4の支持面により幅方向の全域が下方から支持される構成であってもよく、あるいは基台部4のガイドレール12により幅方向の両端部のみが支持される構成であってもよい。また、延長支持部材10についても、基台部4の幅方向の両側方にそれぞれ配設されたガイドレールを有するロッド10aでのみ構成してもよく、あるいは両ロッド10a間に幅方向の全域に亘る板状体を張り渡してこの板状体によりガラス板積層体3が下方から支持される構成であってもよい。なお、可撓性受け部材9は、上記のシャッターで構成されることに限られず、可撓性を有する1枚の金属製あるいは樹脂製などの板状体で構成することも可能であるが、下受け面8bと裏受け面8aとが直角または略直角に保持されることが必要である。また、この実施形態では、可撓性受け部材9を上下動させるための操作機構として、基台部4の側面に取り付けられたギヤ機構13が用いられる(図3参照)。
【0039】
そして、延長支持部材10が、基台部4の後方支持部4bの上方側における延長線上に存する場合には、ギヤ機構13の操作によって、可撓性受け部材9の上部が延長支持部材10により案内されて上動し、可撓性受け部材9に保持されているガラス板積層体3の下部3yの曲率半径が大きくなりながら、図5に示すように上動端に達する。この時点では、可撓性受け部材9及びガラス板積層体3は、略平坦な状態になる。そして、このような状態で、ガラス板積層体3からのガラス板6の取り出し作業や、ガラス板6を積層する作業が行われる。この何れの作業を行う場合にも、ガラス板6は略平坦な状態に維持されるため、作業性の向上が図られる。なお、ガラス板6の積載作業が完了した後は、ギヤ機構13を操作することにより、可撓性受け部材9が図5に示す状態から下動し、これによりガラス板積層体3の下部3yの曲率半径が小さくなりながら、図3に示すように下動端に達する。なお、この第2実施形態に係る梱包体1(梱包用パレット2)において、可撓性受け部材9が下動端にある時には、上記第1実施形態における場合のように、ガラス板積層体3の下端3bの角度αが限定されるわけではなく、ガラス板積層体3の上部3xよりも下部3yの方が曲率半径が小さければ足りる。
【0040】
図6は、本発明の第3実施形態に係る梱包体1(梱包用パレット2)を例示している。この第3実施形態に係る梱包用パレット2が、上述の第2実施形態に係る梱包用パレット2と相違している点は、延長支持部材10が、基台部4の後方支持部4bにその傾斜に倣うように退避可能とされている点と、この延長支持部材10の長手方向中間部に、折り畳み可能な補助脚14を回動可能に取り付けた点とである。このような構成によれば、図6に示すように、ガラス板積層体3が基台部4に収納されている状態から、可撓性受け部材9を上動させる際には、図7に示すように、延長支持部材10を、基台部4の後方支持部4bの上方延長線上に位置させた状態で、補助脚14を伸張させて、台座5上に起立姿勢に保持する。このような状態で、ギヤ機構13(図示略)を操作することにより、可撓性受け部材9がガラス板積層体3を保持した状態で上動し、図8に示すように上動端に達した段階で、ガラス板6の取り出し作業及び積層作業が行われる。そして、これらの作業が行われている間は、補助脚14の存在により、基台部4の傾倒が阻止される。なお、この第3実施形態に係る梱包用パレット2と、上記第2実施形態に係る梱包用パレット2との共通する構成要件については、図6、図7及び図8に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
図9は、本発明の第4実施形態に係る梱包体1(梱包用パレット2)を例示している。この第4実施形態に係る梱包用パレット2が、上述の第2実施形態に係る梱包用パレット2と相違している点は、延長支持部材10の上部に、スタンド脚15を回動可能に取り付けた点と、台座5にブラケット16を介して基台部4を傾倒可能に保持させた点とである。このような構成によれば、可撓性受け部材9をガラス板積層体3と共に上動端に移動させた後に、図10に示すように、基台部4を倒伏させてスタンド脚15を起立姿勢にすれば、ガラス板6の取り出し作業や積層作業を、略水平姿勢で行うことが可能となる。したがって、ガラス板6を縦姿勢に代えて略水平姿勢で行う要請がある場合には、このような構成を採用することにより、的確に対処可能となる。なお、この第4実施形態に係る梱包用パレット2と、上記第2実施形態に係る梱包用パレット2との共通する構成要件については、図9及び図10に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
図11は、本発明の第5実施形態に係る梱包体1(梱包用パレット2)を例示している。この第5実施形態に係る梱包用パレット2が、上述の第1実施形態に係る梱包用パレット2と相違している点は、基台部4の底面と台座5の上面との間に、平板状の緩衝部材17を介設した点である。このようにすれば、梱包用パレット2にガラス板積層体3を収納してなる梱包体1の輸送時に、衝撃等が生じた場合であっても、緩衝部材17によって衝撃等が適切に吸収されるため、ガラス板6の破損や損傷等の発生確率を可及的に低減させることが可能となる。なお、この第5実施形態に係る梱包用パレット2と、上記第1実施形態に係る梱包用パレット2との共通する構成要件については、図11に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
図12は、本発明の第6実施形態に係る梱包体1(梱包用パレット2)を例示している。この第6実施形態に係る梱包用パレット2が、上述の第1実施形態に係る梱包用パレット2と相違している点は、基台部4の底面にベース板18を固定し、このベース板18と台座5の間に、複数のバネ等からなる弾性体19を介設した点である。このようにすれば、梱包用パレット2にガラス板積層体3を収納してなる梱包体1の輸送時に、衝撃等が生じた場合であっても、弾性体19が有する緩衝機能によって衝撃等が適切に吸収されるため、ガラス板6の破損や損傷等の発生確率を可及的に低減させることが可能となる。なお、この第6実施形態に係る梱包用パレット2と、上記第1実施形態に係る梱包用パレット2との共通する構成要件については、図12に同一符号を付し、その説明を省略する。
【符号の説明】
【0044】
1 梱包体
2 梱包用パレット
3 ガラス板積層体
3x ガラス板積層体の上部
3y ガラス板積層体の下部
4 基台部
4a 下方支持部
4b 後方支持部
6 ガラス板
8 受け面
8a 裏受け面
8b 下受け面
10 延長支持部材
L 接線
H 水平線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のガラス板が縦姿勢で並列に配列されてなるガラス板積層体を下方側及び後方側から支持する基台部を備えると共に、該基台部に、前記ガラス板積層体の裏面及び下端を受ける受け面が配設されたガラス板梱包用パレットであって、
前記基台部の受け面に縦姿勢で受けられたガラス板積層体は、幅方向と直交する断面において、裏面側に凸となる曲率半径が、上部よりも下部の方が小さくなり、且つ、下端の裏面に接する接線が、その裏面に接する点から前方に延びる水平線を基準として、上方に向かう角度αが、α≧0°となる形状に保持されるように前記受け面の形状を設定したことを特徴とするガラス板梱包用パレット。
【請求項2】
前記ガラス板積層体の上部は、略平坦な形状に保持されるように前記受け面の形状を設定したことを特徴とする請求項1に記載のガラス板梱包用パレット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガラス板梱包用パレットにおいて、前記基台部は、前記受け面を有する可撓性受け部材を備え、該可撓性受け部材は、前記ガラス板積層体を縦姿勢に保持した状態で上下動可能とされると共に、前記可撓性受け部材が下動端に位置している時には、前記ガラス板積層体が、請求項1または2に記載の形状とされ、前記可撓性受け部材が上動端に位置している時には、前記ガラス板積層体の上部及び下部が、略平坦な形状とされるように前記受け面の形状を可変としたことを特徴とするガラス板梱包用パレット。
【請求項4】
複数枚のガラス板が縦姿勢で並列に配列されてなるガラス板積層体を下方側及び後方側から支持する基台部を備えると共に、該基台部に、前記ガラス板積層体の裏面及び下端を受ける受け面が配設されたガラス板梱包用パレットであって、
前記基台部は、前記受け面を有する可撓性受け部材を備え、該可撓性受け部材は、前記ガラス板積層体を縦姿勢に保持した状態で上下動可能とされると共に、前記可撓性受け部材が下動端に位置している時には、前記ガラス板積層体は、裏面側に凸となる湾曲部を少なくとも下部に有する形状に保持され、且つ、前記可撓性受け部材が上動端に位置している時には、前記ガラス板積層体は、上部及び下部が略平坦な形状に保持されるように前記受け面の形状を可変としたことを特徴とするガラス板梱包用パレット。
【請求項5】
前記基台部のうちのガラス板積層体を後方側から支持する後方支持部に、該後方支持部の上方側への延長線上に存する状態と、該後方支持部の上方から退避する状態とに切り換え可能な延長支持部材を装着し、該延長支持部材が前者の状態にある時に、前記可撓性受け部材が該延長支持部材により案内されて上動するように構成したことを特徴とする請求項4に記載のガラス板梱包用パレット。
【請求項6】
複数枚のガラス板が並列に配列されたガラス板積層体を備えると共に、該ガラス板積層体を下方側及び後方側から支持する基台部と、該基台部に配設されて前記ガラス板積層体の裏面及び下端を受ける受け面とを有するガラス板梱包用パレットを備えたガラス板梱包体であって、
前記基台部の受け面に縦姿勢で受けられたガラス板積層体は、幅方向と直交する断面において、裏面側に凸となる曲率半径が、上部よりも下部の方が小さくなり、且つ、下端の裏面に接する接線が、その裏面に接する点から前方に延びる水平線を基準として、上方に向かう角度αが、α≧0°となる形状に保持されるように構成したことを特徴とするガラス板梱包体。
【請求項7】
複数枚のガラス板が並列に配列されたガラス板積層体を備えると共に、該ガラス板積層体を下方側及び後方側から支持する基台部と、該基台部に配設されて前記ガラス板積層体の裏面及び下端を受ける受け面とを有するガラス板梱包用パレットを備えたガラス板梱包体であって、
前記基台部は、前記受け面を有する可撓性受け部材を備え、該可撓性受け部材は、前記ガラス板積層体を縦姿勢に保持した状態で上下動可能とされると共に、前記可撓性受け部材が下動端に位置している時には、前記ガラス板積層体は、裏面側に凸となる湾曲部を少なくとも下部に有する形状に保持され、且つ、前記可撓性受け部材が上動端に位置している時には、前記ガラス板積層体は、上部及び下部が略平坦な形状に保持されるように構成したことを特徴とするガラス板梱包体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−218765(P2012−218765A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85544(P2011−85544)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】