説明

ガラス用粘着シート

【課題】ガラス表面への貼り直し作業が容易に行えると共に、耐熱性と耐久性に優れ、24時間以降の接着力が十分に大きいガラス用粘着シートを提供する。
【解決手段】シート本体1と、該シート本体1に積層された粘着層2とを備えてガラス表面に貼着される粘着シートに於いて、上記粘着層2は貼付直後の接着力Fが弱く、経時的に接着力Fが増加する経時的接着力増加特性を備えたことを特徴とするガラス用粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス表面に貼着して用いられる粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス用粘着シートとしては、粘着層にアクリル系樹脂が一般に使用されていた(例えば、特許文献2参照)。
また、数が少ないがポリエステル系樹脂を粘着層に用いるガラス用粘着シートも知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−99792号公報
【特許文献2】特開2004−27018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、ガラス表面に粘着シートを貼る作業に於て、貼る位置がずれたり、皺が生じた時には、一旦めくって、再度貼り直す必要がある(以下、これを「貼り直し作業」という)。
従来のアクリル系樹脂の粘着層の粘着シート(特許文献2参照)を、一旦、ガラス面に貼ってしまうと、強力に接着されてしまって、「貼り直し作業」が極めて難しいという問題があった。
また、上記特許文献2の粘着シートは、脂肪族系のポリエステルであって、特に、耐熱性及び耐久性が劣るという欠点を有すると共に、上記「貼り直し作業」も容易ではないという欠点があり、しかも、(24時間後乃至以降の)接着力も不十分であるという欠点もある。
【0004】
そこで、本発明は、ガラス表面への「貼り直し作業」が容易に行い得ると共に、耐熱性と耐久性に優れ、24時間以降の接着力が十分に大なるガラス用粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、シート本体と、該シート本体に積層された粘着層とを、備えてガラス表面に貼着される粘着シートに於て、上記粘着層は貼付直後の接着力が弱く、経時的に接着力が増加する経時的接着力増加特性を、備えている。
また、貼着時から10分後の接着力をF10とし、24時間後の接着力をF100 とすると、上記経時的接着力増加特性が、次の数式を満足するものである。
〔数1〕 0.50・F100 ≦F10≦0.80・F100
【0006】
また、上記経時的接着力増加特性を備えた粘着層は、芳香族ポリエステル系樹脂から成る。
また、上記ポリエステル系樹脂は、芳香族ジカルボン酸と、側鎖に炭化水素基を有するグリコールと、3価以上の多価アルコール及び/又は3価以上の多価カルボン酸を、重縮合してなる。そして、上記ポリエステル系樹脂は、その数平均分子量が5000以上である。また、ポリエステル系樹脂(固形分) 100重量部に対し、架橋剤を 1.5〜 4.0重量部含有させたものである。
そして、上記粘着層の厚さ寸法を、15μm〜45μmに設定する。また、上記粘着層は、上記ガラス表面に貼着される粘着面が凹凸模様の無い平滑面に形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るガラス用粘着シートは、間違って貼ったとき(位置ずれや皺が生じたりしたとき)、その直後ならば、ガラス表面から容易に剥離が可能であり、貼り直し作業が可能である。
そして、経時的に接着力が十分に大きくなり、耐久性と耐熱性も優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説すると、図1は構成説明のための簡略斜視図であって、1は、透明乃至半透明の塩化ビニル等のシート本体である。このシート本体1は、建物や車両等のガラス(窓)に貼られる装飾シートとして好適であり、種々の文字や図形や模様等の意匠が、各種印刷にて施される場合が多い。また、このシート体1の表て面1aにはエンボス等によって梨地面等として、全体をスリガラス風の半透明とするも好ましい。
【0009】
2は、このシート本体1の裏面1bに積層された粘着層(粘着剤層)であって、さらに、離型紙3が粘着層2の裏面に積層状に付着している。なお、離型紙3は表面に剥離処理された紙に限らず、樹脂等のシートの場合であっても自由である(このときも「紙」と呼ぶこととする)。
【0010】
本発明に係る粘着シート10は、図1の簡略図よりも、左右前後(幅と長さ)方向に十分に長大であり、図1は極端に小面積の部位を拡大して示した斜視図であり、しかも、離型紙3を剥離する途中を示している。
使用時には、離型紙3を剥離して、(図外の)ガラス表面に粘着層2を貼り付ける。
【0011】
本発明の最大の特徴点は、粘着層2にあり、この粘着層2は、ガラス表面への貼着直後(本発明では20分以内を“直後”と呼ぶこととする)の接着力Fが弱く、経時的に接着力が増加する経時的接着力増加特性を、具備している点にある。
即ち、貼着時から10分後の接着力をF10とし、24時間後の接着力をF100 とすると、
〔数1〕 0.50・F100 ≦F10≦0.80・F100
を満足する経時的接着力特性を示す。好適な粘着層2の材質としては、芳香族(系の)ポリエステル系樹脂である。さらに望ましいのは、上記ポリエステル系樹脂は、芳香族ジカルボン酸と、側鎖に炭化水素基を有するグリコールと、3価以上の多価アルコール及び/又は3価以上の多価カルボン酸を、重縮合してなる材質のものとする。
【0012】
ここで、従来のアクリル系粘着剤と比較して、本発明の粘着層2の経時的な接着力Fの変化を次の表1に示す。被着体はガラスであり、貼着時から、1分後,10分後, 20分後, 24時間後の接着力を、順次、F1 ,F10,F20,F100 とし、かつ、F100 = 100%として百分率にて示す。
【0013】
【表1】

【0014】
ところで、図1に於て、離型紙3自体には凹凸模様(凹溝や凹窪部や凸条)が省略された平滑面であることを示しているが、これと積層していた粘着層2の粘着面2A───図1の下面側───は、凸条や凸部や凹溝の無い平滑面に形成されている。つまり、ガラス表面に貼着される粘着面2Aについては、本出願人がかつて登録を受けた実用新案登録第2503717号「粘着加工シート」に於て提案したように、貼り直し作業を可能とするための小凸部や小凸条が必須であると、考えられてきた常識を覆して、平滑面であっても、貼り直し作業を、20分以内(乃至30分以内)であれば、容易に行うことができるのである。
【0015】
また、粘着層2の厚さ寸法T2 を、15μm〜45μmとするのが好ましい。下限値未満であると、乾燥後、粘着力が低下する虞を生ずる。逆に、上限値を越えると、均一に塗工することが困難となり、塗工した粘着層2内に気泡が入る等の不具合を生じ易くなる。
【0016】
そして、粘着層2に用いる芳香族ポリエステル系樹脂は、芳香族ジカルボン酸と、側鎖に炭化水素基を有するグリコールと、3価以上の多価アルコール及び/又は3価以上の多価カルボン酸を、重縮合してなるものであり、その数平均分子量が5000以上が望ましい。さらに、ポリエステル系樹脂(固形分) 100重量部に対し、架橋剤を 1.5〜 4.0重量部含有させるのが良い。架橋剤としては、イソシアネート系のものが良い。これによって、耐熱性が向上し、凝集力に優れてシート撤去後に、ガラスへの糊残り(粘着剤残り)や、シート本体1の収縮発生も防止できる。
【0017】
次の、表2は、イソシアネート系架橋剤を、前記下限値未満としたとき、及び、前記上限値を越えたときに、経時的に接着力がどのように変化するか、実測した値を示す。架橋剤としては、コロネートL(日本ポリウレタン製)を使用した。
【0018】
【表2】

【0019】
1 ,F10,F20,F100 は、ガラスの表面に貼った時から、各々、1分,10分,20分,24時間の後の接着力を百分率にて示し、24時間後のF100 を永久値( 100%)として示す。この表2から、架橋剤の量に関係なく、接着力Fは増加するが、その増加の程度に差があり、 1.5重量部未満では、耐熱性及び凝集性が劣る点で不適であり、しかも、24時間後の接着力F100 の絶対値が過大であり、ガラスに貼るシートとしては全く不向きである。
逆に、 5.0重量部を越すと、急に接着力(F1 ,F10,F20及びF100 )の値が過小となって、ガラスに貼るシートとしては不向きである。
【0020】
なお、本発明に係る粘着層2として、ポリエステル系樹脂を用い、ポリエステル系樹脂は、芳香族ジカルボン酸と、側鎖に炭化水素基を有するグリコールと、3価以上の多価アルコール及び/又は3価以上の多価カルボン酸を、重縮合してなるものであるが、芳香族ジカルボン酸は、10モル%〜30モル%が望ましく、下限値未満であると耐熱性や凝集力が急に低下して好ましくなく、逆に、上限値を越すと、接着性が低下するという欠点がある。また、上記グリコールは5モル%とするのが望ましい。なお、数平均分子量が5000未満とすると、急に、凝集力と耐熱性が低下する。
なお、表面基材としてのシート本体1の材質は、PVCの他に、PET等を用いることも好ましい。前述の粘着層2の材質は、PVCとの相性が良く相互に強く接着される。
【0021】
本発明は以上述べたように、シート本体1と、該シート本体1に積層された粘着層2とを、備えてガラス表面に貼着される粘着シートに於て、上記粘着層2は貼付直後の接着力Fが弱く、経時的に接着力Fが増加する経時的接着力増加特性を、備えているので、初期接着力が極めて低く、施工性に優れ、貼り直し作業を容易かつ迅速に、美しく行うことが可能となった。これに伴って、従来の粘着層2への凹凸模様等の加工が省略可能となって、製造が容易となる。さらに、水貼り等も不要となり、施工性が向上する。このように、ガラス装飾用シートとして好適なものである。
【0022】
また、貼着時から10分後の接着力をF10とし、24時間後の接着力をF100 とすると、上記経時的接着力増加特性が、次の数式を満足するように構成した。
〔数1〕 0.50・F100 ≦F10≦0.80・F100
これによって、10分以内ならば、簡単に剥離して、再度、美しくかつ安定して、貼り直し作業を行うことが可能である。
【0023】
また、上記経時的接着力増加特性を備えた粘着層2は、芳香族ポリエステル系樹脂から成るので、貼り直し作業が容易かつ迅速に、美しくできると共に、耐熱性にも優れ、コスト的にも高価とならない。
また、上記ポリエステル系樹脂は、芳香族ジカルボン酸と、側鎖に炭化水素基を有するグリコールと、3価以上の多価アルコール及び/又は3価以上の多価カルボン酸を、重縮合してなるので、経時的接着力増加特性が、適度な増加傾向を示し、接着力も過大・過小とならず、ガラス装飾用シートとして望ましい。かつ、耐熱性及び凝集力に優れている。シート撤去時のガラスへの糊残りも発生しないという利点がある。
【0024】
また、上記ポリエステル系樹脂は、その数平均分子量が5000以上であるので、凝集力に優れ、かつ、耐熱性も一層向上する。
また、ポリエステル系樹脂(固形分) 100重量部に対し、架橋剤を 1.5〜 4.0重量部含有させたことにより、耐熱性や凝集力がさらに改善され、接着力も適度な大きさに維持しやすい。
【0025】
また、上記粘着層2の厚さ寸法T2 を、15μm〜45μmに設定したことにより、乾燥後も接着力Fが安定して高く維持され、しかも、均一に(気泡を含まずに)粘着材を塗工しやすい。
また、上記粘着層2は、上記ガラス表面に貼着される粘着面2Aが凹凸模様の無い平滑面に形成されているので、製造が容易で、多数の凹凸模様のあるローラにて離型紙3に予めエンボス加工する等の必要性がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の構成を説明するための要部拡大斜視説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 シート本体
2 粘着層
2A 貼着面
3 離型紙
F 接着力
2 厚さ寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体(1)と、該シート本体(1)に積層された粘着層(2)とを、備えてガラス表面に貼着される粘着シートに於て、上記粘着層2は貼付直後の接着力(F)が弱く、経時的に接着力(F)が増加する経時的接着力増加特性を、備えたことを特徴とするガラス用粘着シート。
【請求項2】
貼着時から10分後の接着力を(F10)とし、24時間後の接着力を(F100 )とすると、上記経時的接着力増加特性が、次の数式を満足する請求項1記載のガラス用粘着シート。 〔数1〕 0.50・F100 ≦F10≦0.80・F100
【請求項3】
上記経時的接着力増加特性を備えた粘着層(2)は、芳香族ポリエステル系樹脂から成る請求項1又は2記載のガラス用粘着シート。
【請求項4】
上記ポリエステル系樹脂は、芳香族ジカルボン酸と、側鎖に炭化水素基を有するグリコールと、3価以上の多価アルコール及び/又は3価以上の多価カルボン酸を、重縮合してなる請求項3記載のガラス用粘着シート。
【請求項5】
上記ポリエステル系樹脂は、その数平均分子量が5000以上である請求項4記載のガラス用粘着シート。
【請求項6】
ポリエステル系樹脂(固形分) 100重量部に対し、架橋剤を 1.5〜 4.0重量部含有させた請求項3,4又は5記載のガラス用粘着シート。
【請求項7】
上記粘着層(2)の厚さ寸法(T2 )を、15μm〜45μmに設定した請求項1,2,3,4,5又は6記載のガラス用粘着シート。
【請求項8】
上記粘着層(2)は、上記ガラス表面に貼着される粘着面(2A)が凹凸模様の無い平滑面に形成されている請求項1,2,3,4,5,6又は7記載のガラス用粘着シート。

【図1】
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【公開番号】特開2009−221388(P2009−221388A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68724(P2008−68724)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000226091)日栄化工株式会社 (17)
【Fターム(参考)】