説明

ガラス組成物

【課題】プラスイオンの抑制効果と、マイナスイオンを増幅効果で該イオンを多量かつ持続的に発生し、同時に遠赤外線を放射するガラス組成物を提供する。
【解決手段】ガラス基材と極微細な放射線を放出する稀有元素類を含む鉱物と、トルマリン若しくは遠赤外線セラミックのいずれか一方の混合物を、溶融し成形したガラス組成物とし、プラスイオンを抑制減少し、マイナスイオンを増幅し多量かつ持続的に発生し、同時に遠赤外線も増幅し、持続的に放射させることができる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス組成物に関し、混合溶融したガラス組成物からマイナスイオンを放出し、或いはマイナスイオンを放出すると同時に、遠赤外線を放射することを図った消臭及び抗菌用品、鮮度保持材、水質浄化材、健康治療用、医用器具等に有益なガラス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスは、一般に工業用品として、住居・店舗用の窓ガラス、自動車用の窓ガラス、電気製品用窓ガラス、医用器具、カメラ・メガネのレンズ等があり、家庭用品としてコップ、皿、花瓶等があり、最も有用な材料の一つである。
【0003】
一般的なガラスの機能として、鮮明度の高い視認性・鑑賞性、高耐熱性、風防圧性、光透過性が最も優れた機能を有している。
【0004】
近年、住環境や健康に対する関心が非常に高まり、特に生活空間における空気や水に関心が高まり、最近、注目されるようになってきたマイナスイオン効果を図った製品が多く市場にみられるようになってきた。マイナスイオン効果は、消臭、抗菌、健康治癒効果としての沈痛、快眠、疲労回復、食欲回復、食欲増進等があると良く知られるようになってきた。また、遠赤外線の放射特性を図った製品も市場に多くみられるようになってきた。マイナスイオンを発生する方法として、機械的に電子を発生させてマイナスイオンを発生させる方法と、放射性物質を含む希有元素鉱石を用いて、放射線の電子作用でイオン化させる方法が知られている。放射性物質を含む希有元素鉱石を用いて、放射線の作用で空気をイオン化させる方法の場合、放射線の電子作用で空気をイオン化するが、マイナスイオンとプラスイオンを同時生成するもので、またマイナスイオンよりもプラスイオンの方が多く発生するものでマイナスイオン効果を発揮できるものではなく、また、放射性物質を多く使うと取扱いに非常に注意が必要であった。
【0005】
また、遠赤外線は、温熱治療、発汗作用、血行促進、新陳代謝の促進作用などがあるといわれている。遠赤外線は、常温体温域で、波長が4〜14μmミクロンの範囲で放射率50%を放射するものが良いといわれている。このような背景のなか、数多くの先行技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−203635 放射線を放出する元素と、ランタノイド(La)とアクチノイド(Ac)と、を少なくとも有する多元素鉱石、すなわちボナライト鉱石とガラス基材とを溶融して製造されたこを特徴とするガラス材が開示されている。
【0006】
前述の多元素鉱石、すなわちボナライト鉱石は、広義の解釈では、稀有元素を含む鉱石ではあるが、鉱石類の文献には、ボラナイト鉱石という名称の鉱石は無く、また稀有元素を含む鉱石、或いは稀土類元素を含む鉱石には分類されていない。文献中の成分から判断すると、アクチノイド(Ac)の元素は無いことである。また、酸化トリウムは、トリウム系化合物の放射線を放出する物質である。また、ランタノイド別名の希土類元素が、
0.0155〜0.0005wt%及び放射性物質である酸化ナトリウムが0.0114wt%と、ともに極微量なため、不純物として稀有元素を含む鉱石類及び希土類元素を含む鉱石に分類されないのである。また、ボナライト鉱石のほとんどの主成分が、シリカ、アルミナで構成されているため、一種の花崗岩と成分が似ている。また、シリカ、アルミナを主成分とする天然あるいは合成のセラミック或いは鉱石は、遠赤外線を放射することがよく知られている。
【0007】
上記文献1で、実施例では、マイナスイオンが発生する発生量が記述されてはいるが、発生量が自然界の空気中に含まれる量と僅かしか変わっていなく、通常、マイナスイオン効果が発揮できる発生量は、数1000個/cc以上必要になってくる。また、放射性物質は、マイナスイオンよりもプラスイオンのほうが多く発生するが、該プラスイオンの記載はもとより認識もなく、ガラス基材にボナライト鉱石を使用した構成、手段の一部を欠き、自然法則を利用からみても目的達成が曖昧である。
【特許文献2】特開平06−100332 上記文献2は、70〜88重量%のガラスと、12〜30重量%の遠赤外線放射セラミックとからなることを特徴とする遠赤外線放射ガラス組成物が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、ガラス組成物を主目的にすると、放射性物質を使った素材を利用した場合、マイナスイオンとプラスイオンを同時発生させて、さらにはプラスイオンがより多く発生するものとなっている為、それを逆転するプラスイオンよりもマイナスイオンの方がより多く発生する素材がマイナスイオン効果を奏するものであり、このような素材、すなわちガラス組成物が必要になってきた点である。
【0009】
さらには、放射性物質を使うため、安全性を考慮して、規制値以下の低濃度でもマイナスイオンが持続的に大量に発生して、マイナスイオンの効果を奏するガラス組成物が必要になってきたという点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点に鑑みて、ガラス材に、極微弱な放射線を放出する稀有元素類を含む天然鉱石或いは稀有元素鉱石と、トルマリン若しくは遠赤外線セラミックのいずれか一方を混合溶融させて作られたガラス組成物が、プラスイオンを減少させる効果があることを見出し、また、同時に稀有元素を含む天然鉱石が低濃度でも、持続的にマイナスイオンが大量に増幅発生する作用も見い出され、また、同時に遠赤外線も持続的に大量増幅する作用も見い出されるとの知見を得るに至った。
【0011】
本発明において、ガラス原料として、ソーダ石灰ガラス、クリスタルガラス、セミクリスタルガラス、カリ石灰ガラス、ほうけい酸ガラスなどがある。ガラスの成分として、一般的なものとしては、ソーダ石灰ガラスは、ケイ酸62%、ソーダ灰、石灰石9.3%、クリスタルガラスは、ケイ酸50〜55%、炭酸カリウム13〜17%、酸化鉛24〜35%の成分となっている。より好ましくはソーダ石灰ガラス以外のガラス原料の方が、透明度が高く、強度が高いので混合粉末を練り込み溶融してできたガラス材は強度が高く、透明度が高くなるので有益である。
【0012】
本発明において、稀有元素類を含む鉱石、及び稀有元素類を含む鉱石と、その粉体混合物とした、フェルグソン石、モナズ石、バストネス石、ゼノタイム、コルンブ石、ベタホ石、サマルスキー石、ユークセン石、タンタル石、閃ウラン鉱、閃ウラン鉱、方トリウム石、ゴム石、カルノー石、ガドリン石等がある。この鉱石のうち、極微弱な放射線を放射し、人体に悪影響を及ぼさないとされる規制値370ベクレル/g以下の放射線濃度を有し、マイナスイオン発生を励起している鉱石として、最も好ましくは、モナズ石である。
【0013】
上記天然鉱石の粒径として、10mm以下に粉砕した粉体を使用することができる。最も好ましくは、1mm以下に粉砕した粉体の方が混合溶融するうえで有利である。その他の粉体として、天然或いは合成のセラミックを充填材として混合して用いる事が出来る。上記配合部数として、ガラス基材100重量部に対し、200重量部配合することができる。最も好ましくは、10〜50重量部が、強度及び透明度が高く、イオン放出を安定するうえで有利である。
【0014】
本発明において、遠赤外線セラミックとして次のとおりである。
常温体温域で、2〜50μmの波長をもつ遠赤外線を放射率50%以上放射している遠赤外線セラミックを用いることができる。遠赤外線セラミックの成分として、アルミナ、シリカ、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄等のものを用いることができる。
【0015】
上記成分を含有された市販品の遠赤外線セラミックとして、「商品名セラジット」,オーケートレーディング製があり、イオンを増幅し、同時に遠赤外線を高放射するうえで有利である。粉体の粒径として、10ミクロン前後の粉体を使用する方が混合するうえで有利である。
上記配合部数として、ガラス基材100重量部に対し、200重量部配合することができる。最も好ましくは、10〜50重量部が、イオン放出の増幅を図る上で有利である。
【0016】
本発明において、トルマリンとして次のとおりである。
トルマリンとして、ショールトルマリン、リチウムトルマリン、ドラバイトトルマリン、ルベライトトルマリン、ピンクトルマリン、インデコライト、バライバトルマリン、ウォーターメロン等を用いることができる。粉体の粒径として、10ミクロン前後の粉体を使用する方が混合するうえで有利である。
上記配合部数として、ガラス基材100重量部に対し、200重量部配合することができる。最も好ましくは、10〜50重量部がイオン放出を増幅するうえで有利である。
【0017】
本発明において、ガラス基材と稀有元素類を含む鉱石と、トルマリン若しくは遠赤外線セラミックの混合物の配合部数は、ガラス基材100重量部に対し、稀有元素類を含む鉱石200重量部、トルマリン200重量部若しくは遠赤外線セラミック200重量部配合することができる。最も好ましくは、ガラス基材100重量部に対し、稀有元素類を含む鉱石10〜50重量部、トルマリン10〜50重量部若しくは遠赤外線セラミック10〜50重量部が、プラスイオンよりもマイナスイオンを多く放出しながら増幅放出し、又、遠赤外線も増幅し、持続的に放出させることができるうえで有利である。
【0018】
本発明において、上記ガラス混合物の混合攪拌と溶融方法として、混合攪拌機は、V字型回転攪拌機を使用することができる。溶融方法として、坩堝を使用することができる。溶融温度としては、約1400度程度の温度が好ましく、溶融時間として、24時間が好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、ガラス基材と稀有元素類を含む鉱石との混合物、或いはガラス基材と稀有元素類を含む鉱石とトルマリン若しくは遠赤外線セラミックのいずれか一方の混合物を、溶融し成形したガラス組成物が、プラスイオンの抑制効果とマイナスイオンの増幅効果でマイナスイオンが大量に持続的に発生し、同時に、遠赤外線が増幅して大量に放射するものになり、殺菌材、消臭材、鮮度保持材、水質浄化材等の広い範囲の多機能性のガラス材としてすぐれた効果を奏する。
【実施例】
【0020】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0021】
試料の作成
表1に示す配合材では、ガラス原料として、クリスタルガラス原料のケイ酸粉末、炭酸カリウム粉末、酸化鉛粉末を使用した。
【0022】
モナズ石粉末と、トルマリンは、平均粒径10ミクロンに粉砕したものを使用した。
【0023】
遠赤外線セラミックとして、商品名セラジットAL−F9 オーケートレーディング製を使用した。
【0024】
試料の作成方法として、表1に示した所定量の配合材を、V字型回転攪拌機に投入し、2時間攪拌させた。その混合物を、坩堝に投入し、約1400度で、24時間、溶融させ、溶融状態ものを、圧延ロール機で、厚さ2mmの板を圧延し、常温冷却した後、20cm角に裁断したものを試料とした。
【0025】
【表1】

イオン測定と遠赤外線測定
イオン測定方法は、小イオン測定として、イオンテスターKST−900,神戸電波製を使用し、室温25℃、湿度60%、試料20cm角で、マイナスイオンとプラスイオンを、3分間の平均生成数/ccを測定した。
【0026】
総イオン測定は、空気イオンテスターITC−201A アンデス電気製を使用し、上記同じ雰囲気下で、マイナスイオンとプラスイオンを3分間の生成数/ccを測定した。
【0027】
その結果を表2に示した。
【0028】
遠赤外線測定は、FTIR測定機、JIR−500を使用し、試料温度35℃の遠赤外線放射率を測定した。
【0029】
【表2】

実施例1及び2のイオン測定結果から、小イオン及び総イオン共、プラスイオンよりも、マイナスイオンの方が、より多く生成して、マイナスイオンを増幅させていることが
明らかとなった。遠赤外線放射においても、実施例1及び2共に、遠赤外線を高放射していることが明らかとなった。
【比較例】
【0030】
試料の作成方法として、表3に示した所定量の配合処方で、実施例で示した同じ方法出比較例1、2及び3の試料を作成した。
【0031】
【表3】

上記比較例のイオン測定と、遠赤外線放射率の測定を、実施例と同じ方法で行った。
【0032】
その結果を表4に示した。
【0033】
【表4】

比較例1、2及び3の結果から、比較例1では、小イオンと総イオン共に、マイナスイオンよりもプラスイオンの方が多く、また、マイナスイオンの生成が低下していた。
【0034】
比較例2及び3は、全くイオンが生成しないものであった。
【0035】
遠赤外線放射率では、比較例1は、低い放射率で、比較例2及び3では、中程度の遠赤外線を放射するものであることが判明した。
【0036】
上記実施例及び比較例のイオン測定結果から明らかなように、実施例1及び2のガラス組成物は、プラスイオンを減少させつつ、マイナスイオンを増幅生成するという作用を見いだし、マイナスイオン効果を発揮できるものとなった。
【0037】
また、同時に放射する遠赤外線放射率も高放射して、増幅効果も見出すものとなった。これらの現象効果は、ガラスとモナズ石と、遠赤外線セラミックの相互作用で成し得た効果であることを見いだしたものである。
【0038】
実用化試験
実施例及び比較例で作成した試料を用いて、消臭試験及び抗菌試験として、本発明をより明らかにしていく。
【0039】
消臭試験
消臭試験として、検知管法を用いた。試験方法として、5リットルのテトラーパック中に、実施例及び比較例の試料5cm角及びガスを注入し、3時間後と、24時間後のガス濃度を検知管法を用いて測定し、下記の式により脱臭率(%)を換算した。
【0040】
ガスの種類として、アンモニアを使用した。コントロールは、試料を入れていないブランクである。
【0041】
アンモニアガス 初期濃度 50ppm、ガス量 600ml、 脱臭率%=
〔(コントロールガス濃度−試料ガス濃度)/コントロールガス濃度〕×100
その結果、3時間後のコントロールガス濃度 35ppm
24時間後のコントロールガス濃度 9ppm
【0042】
【表5】

上記消臭試験結果から明らかなように、実施例及び比較例と対比して、実施例では、効率良くアンモニアを分解消臭したことが明らかとなった。それに対し、比較例1,2,では、消臭効果は、見られなかった。
【0043】
抗菌試験
抗菌試験として、(財)日本紡績検査協会で試験を行った。
【0044】
抗菌性試験方法として、JIS−L1902定量試験法を準拠した。試験菌株として、MRSA(耐性黄色ぶどう球菌)を使用した。試験結果を、下記に示した。
【0045】
(試験結果)

logB−logA= 2.8 1.5以上で試験は有効
殺菌活性値=logA−logC
殺菌活性値=logB−logC
【0046】
【表6】

上記試験結果から明らかなように、実施例と比較例を比較すると、実施例では、抗菌性の良好な結果を示した。それに対し、比較例では、抗菌性は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明での、ガラス基材と稀有元素類を含む構成との混合物、或いはガラス基材と稀有元素類を含む構成とトルマリン若しくは遠赤外線セラミックのいずれか一方の混合物を、溶融し成形したガラス組成物に、光触媒機能材料から選ばれた酸化チタン等を添加混合した構成とし、抗菌、脱臭作用を備えた多機能性ガラス組成物の構成とすることができる。
【0048】
硝子素材よりなる硝子基板を、上記ガラス基材と稀有元素類を含む構成との混合物、或はガラス基材と稀有元素類を含む構成とトルマリン若しくは遠赤外線セラミックのいずれか一方の混合物を、溶融し成形したガラス組成物からなる構成を、たとえば硝子素材よりなる、部屋を仕切るパーティーション等の室内用建材の部材とし、プラスイオンを抑制効果と、マイナスイオンの増幅により多量に放出し、同時に遠赤外線放射により室内雰囲気の浄化改善、或いは居住空間での癒し効果を期待する構成とすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基材に、稀有元素類を含む鉱物、及び少なくともトルマリン若しくは遠赤外線セラミックのいずれか一方を含有し、混合溶融して成り、プラスイオンを抑制減少し、マイナスイオンを多量放出すると同時に、遠赤外線を放射することを特徴とするガラス組成物。

【公開番号】特開2006−83011(P2006−83011A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269141(P2004−269141)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000153410)株式会社日野樹脂 (26)
【Fターム(参考)】