説明

ガン細胞検出方法ならびにガン疾患の診断およびガン疾患の処置のモニタリングのためのその使用

ガン細胞を検出する方法が開示される。この方法は、(a)電気的シグナルをもたらすことができる生成物を生じさせるように、酵素が細胞と基質との反応を触媒する条件のもと、細胞を酵素のための基質と接触させること;および(b)電気的シグナルのレベルを測定することを含み、この場合、所定の閾値と比較した前記電気的シグナルのレベルの違いにより、ガン細胞が示される。この方法は、診断、ガン治療をモニタリングすること、ガンを処置する薬剤を同定すること、およびガン治療を個々に最適化することに適合化されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガンの検出方法に関連し、より具体的には、ガンのための薬物処理を最適化する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
ガンは、医療技術における近年の進歩にもかかわらず、世界中で病的状態および死亡の大部分に関わっている。現在の治療戦略は主に、多様な外科的技術および非外科的技術によって患者体内のガン細胞の除去または死を達成することに集中しており、最も広く使用されるのが化学療法およびガンマ線照射である。それらの方法には、いくつかの顕著な欠点がある(具体的には、患者体内の健康な細胞/組織が殺されること、および、ガン処置で利用される現世代の化学療法薬物のかなりの毒性副作用)。
【0003】
「分化療法」は、悪性から正常への表現型の逆戻りを促進させる代替法である。分化療法は、ガン細胞が、未成熟な状態またはそれほど分化していない状態で停止させられており、自身の成長を抑制することができず、従って、異常に速い速度で増加する正常な細胞であるという考えに基づく。分化療法は、ガン細胞に成熟化のプロセスを強制的に再開させることを目的とする。分化療法はガン細胞の死をもたらさないが、分化療法では、残存する悪性細胞を根絶するために、ガン細胞の成長を制限し、また、より多くの従来的治療(例えば、化学療法など)の適用を可能にする。
【0004】
分化療法には、ガン/腫瘍細胞の死を目標にする従来の治療戦略を上回るいくつかの利点がある。まず第一に、患者体内の健康な細胞/組織が化学療法薬物またはガンマ線照射により殺されることが、それらの関連した有害な副作用とともに除かれると考えられる。多くの場合、ガン細胞をガンマ線照射または化学療法剤により殺すことにより、患者体内のガン細胞が、完全にすべてではないが、ほとんど除かれ、それにより、疾患の寛解がもたらされる。分化療法に関しては、ガン細胞の一部を最終分化および結果としての老化の経路に誘導することによって、このことが、様々な機構を介して追随するために他のガン細胞に何らかの形でシグナル伝達することが推測される。
【0005】
様々なマーカーがこれまで、分化療法を受けている患者をモニタリングする手段として使用されている。1つのそのようなマーカーがアルカリホスファターゼであり、その発現が、細胞の分化状態と相関することが示された[Patnaik Aら、Clin.Can Research,2002(Jul);8(7):2142−8;Rephaeli A,Zhuk R,Nudelman A,2000,Drug Develop.Res.Vol 50:379−391]。
【0006】
そのようなマーカーを、高い感度、選択性および正確性で迅速かつ容易に検出することにより、治療剤を特定の患者に合わせること、すなわち、「個別化医療」のための道が開かれる。このことは、腫瘍処置応答がそのタイプおよび解剖学的存在位置だけからは予測できないことが現在知られているガン治療では非常に重要である。
【0007】
現在まで、これらの要求のすべてを満たすそのようなマーカーについての検出システムは1つもない。
【0008】
米国特許出願公開第20060100488号は、交流電流を加えた後における細胞の電気的応答を直接にモニタリングすることによるガン性細胞の検出を教示する。国際特許出願公開WO91/15595は、治療および薬物スクリーニングに対する応答性をモニタリングするためのガン細胞の電気伝導率の分析を教示する。具体的には、国際特許出願公開WO91/15595は、ガン細胞の体積および数における増大を阻害するための特定の薬剤の有効性を、その電気伝導率を分析することによってモニタリングすることを教示する。従って、これらの特許出願はともに、ガン細胞の固有的な電気特性がガン細胞の検出およびモニタリングのためのマーカーとして使用され得ることを教示する。
【0009】
米国特許出願公開第20040053425号は、電極が電流生成酵素を含む、流体中の分析物のアンペロメトリー分析を教示する。米国特許出願公開第20040053425号は細胞内マーカーのアンペロメトリー検出を教示していない。
【0010】
米国特許第5149629号は、電極が、マーカーを電極に結合させることができる抗体を含む、様々なマーカー(ガン細胞マーカーを含む)のアンペロメトリー分析を教示する。この分析は、基質競合によるものである。米国特許第5149629号では、ガン細胞の内因性のアンペロメトリー特徴が検出されていない。
【0011】
従って、分析物のアンペロメトリー検出は、検出のための効果的な方法であることが示されている。しかしながら、現在まで、アンペロメトリー検出は、細胞の酵素活性を分析するためには使用されていない。
【発明の概要】
【0012】
本発明の1つの局面によれば、ガン細胞を検出する方法が提供され、本方法は、(a)電気的シグナルをもたらすことができる生成物を生じさせるように、酵素が細胞と基質との反応を触媒する条件のもと、細胞を酵素のための基質と接触させること;および(b)電気的シグナルのレベルを測定することを含み、この場合、所定の閾値と比較した電気的シグナルのレベルの違いにより、ガン細胞が示される。
【0013】
本発明の別の局面によれば、対象をガンと診断する方法が提供され、本方法は、(a)電気的シグナルをもたらすことができる生成物を生じさせるように、酵素が細胞と基質との反応を触媒する条件のもと、対象のサンプルにおける少なくとも1つの細胞を酵素のための基質と接触させること;および(b)電気的シグナルのレベルを測定することを含み、この場合、所定の閾値と比較した電気的シグナルのレベルの違いにより、ガンが示される。
【0014】
本発明のさらに別の局面によれば、ガンのための処置を個々に最適化する方法が提供され、本方法は、(a)対象のサンプルにおける少なくとも1つのガン細胞を少なくとも1つの抗ガン剤と接触させること;(b)電気的シグナルをもたらすことができる生成物を生じさせるように、酵素が細胞と基質との反応を触媒する条件のもと、少なくとも1つのガン細胞を酵素のための基質と接触させること;および(c)細胞によって生じた電気的シグナルのレベルを測定することを含み、この場合、そのレベルにより、対象のガンを処置するための抗ガン剤の効力が示される。
【0015】
本発明のなおさらに別の局面によれば、抗ガン処置を対象においてモニタリングする方法が提供され、本方法は、(a)少なくとも1つの抗ガン剤を対象に投与すること;(b)工程(a)の後での対象のサンプルにおけるガン細胞の存在またはレベルを本発明の方法に従って検出することを含み、この場合、その存在またはレベルにより、ガンの状態が示される。
【0016】
本発明のさらなる局面によれば、対象のための抗ガン処置を決定する方法が提供され、本方法は、(a)対象のサンプルにおけるガン細胞の存在またはレベルを本発明の方法に従って分析すること;(b)対象に対して、治療効果的な量の抗ガン剤を対象のサンプルにおけるガン細胞の存在またはレベルに従って投与することを含む。
【0017】
下記において記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、本方法はさらに、工程(a)を工程(b)の後で繰り返すことを含む。
【0018】
本発明のさらにさらなる局面によれば、細胞の悪性表現型を逆戻りさせることができる薬剤を同定する方法が提供され、本方法は、(a)少なくとも1つのガン細胞を薬剤に供すること;(b)細胞の悪性表現型を、工程(a)の後、および、必要な場合には工程(a)に先だって、本発明の方法に従って測定することを含み、この場合、表現型の逆戻りにより、細胞の悪性表現型を逆戻りさせることができる薬剤が示される。
【0019】
本発明のさらにさらなる局面によれば、(i)少なくとも1つの生物学的細胞を収容するために、かつ、電気化学的測定を行うために適合化された電気化学的セルの少なくとも1つの成分;および(ii)少なくとも1つの抗ガン剤を含むキットが提供される。
【0020】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、キットはさらに、電気化学的セルの電極におけるレドックス反応を生じさせる反応生成物をもたらすために生物学的細胞の酵素によって酵素反応させられる基質を含む。
【0021】
本発明のさらなる局面によれば、ガン細胞を本発明の方法に従って検出するために構成されるシステムが提供される。
【0022】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、少なくとも1つの細胞は複数の細胞を含む。
【0023】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、測定は、高速大量処理のための手段を使用して行われる。
【0024】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、そのような手段は、自動化サンプリングデバイス、液体取り扱い装置、ディスペンサー、電極アレイ、ロボット、または、これらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0025】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、接触はインビトロで行われる。
【0026】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、接触はエクスビボで行われる。
【0027】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、サンプルは、最大でも500個の細胞を含む。
【0028】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、生検サンプルは、最小でも10個の細胞を含む。
【0029】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、酵素はアルカリホスファターゼである。
【0030】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、基質はp−APPである。
【0031】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、ガン細胞は結腸ガン細胞である。
【0032】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、測定は、電気化学的セルを使用して行われる。
【0033】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、測定は、マルチウエルアレイ中で行われる。
【0034】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、マルチウエルアレイの各ウエルが電気化学的セルを含む。
【0035】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、マルチウエルアレイの各ウエルがナノ体積のウエルである。
【0036】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、薬剤は試験組成物を含む。
【0037】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、試験組成物は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、小分子化学物質、炭水化物、脂質、および、これらの組合せからなる群から選択される。
【0038】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、薬剤は試験条件を含む。
【0039】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、試験条件は放射線条件である。
【0040】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、細胞は無傷である。
【0041】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、ガン細胞は無傷である。
【0042】
記載されている好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、細胞は哺乳動物細胞である。
【0043】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、ガン細胞は哺乳動物細胞である。
【0044】
本発明は、ガン細胞を電気的に検出する方法を提供することによって、現在知られている形態の欠点に対処することに成功している。
【0045】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。本明細書中で言及した刊行物、特許願、特許、および他の参考文献はすべて、それらの全体を参考として組み入れられる。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図1】図1A〜図1Cは、BA、ブチロイルメチル−ジエチルホスファートおよびピバロイルオキシメチルブチラートに対するHT−29結腸ガン細胞の応答を示すグラフである。アルカリホスファターゼ活性をモニタリングするためのアンペロメトリー応答曲線が、電気化学的アレイチップを使用して作製された。HT−29結腸ガン細胞を下記の分化剤に暴露した:酪酸(2.5mM)−図1A、ブチロイルメチル−ジエチルホスファートおよびピバロイルオキシメチルブチラート(50μM)−それぞれ、図1Bおよび図1C。基質PAPPとともにHT−29細胞をチップ上の100nL体積の電気化学的チャンバーに入れた。電流を、220mVにおいてアンペロメトリー技術を使用して測定した。誤差推定(5回の反復)が2nAのRMSである。
【図2】図2A〜図2Cは、サンプルあたりの細胞数を例示する写真であり、図2D〜図2Fは、細胞数に対するサンプルの酵素活性を例示するグラフである。誤差推定(5回の反復)が3nAのRMSである。
【図3】図3は、HT−29結腸ガン細胞の数と、誘導されたアルカリホスファターゼ酵素活性との間における相関を示す棒グラフである。活性が、_電流/_時間によって示される。それぞれの結果が3回の測定の平均を表す。電流が、220mVにおいてアンペロメトリー技術を使用して測定された。
【図4A】図4Aは、HT−29細胞に対するブチロイルメチル−ジエチルホスファートの8時間の処理の影響を例示するグラフであり、アルカリホスファターゼによる電流シグナルの傾きを例示する棒グラフである。
【図4B−C】図4B〜図4Cは、HT−29細胞に対するブチロイルメチル−ジエチルホスファートの8時間の処理の影響を例示するグラフであり、電流における経時変化を異なる数の処理細胞(図4B)および非処理細胞(図4C)に対して例示するグラフである。
【図5A】図5Aは、HT−29細胞に対するブチロイルメチル−ジエチルホスファートの78時間の処理の影響を例示するグラフであり、アルカリホスファターゼによる電流シグナルの傾きを例示する棒グラフである。
【図5B−C】図5B〜図5Cは、HT−29細胞に対するブチロイルメチル−ジエチルホスファートの78時間の処理の影響を例示するグラフであり、電流における経時変化を異なる数の処理細胞(図5B)および非処理細胞(図5C)に対して例示するグラフである。
【図6A】図6Aは、HT−29細胞に対するブチロイルメチル−ジエチルホスファートの96時間の処理の影響を例示するグラフであり、アルカリホスファターゼによる電流シグナルの傾きを例示する棒グラフである。
【図6B−C】図6B〜図6Cは、HT−29細胞に対するブチロイルメチル−ジエチルホスファートの96時間の処理の影響を例示するグラフであり、電流における経時変化を異なる数の処理細胞(図6B)および非処理細胞(図6C)に対して例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、ガン細胞を検出する方法の発明である。具体的には、本発明は、ガンの診断、処置のモニタリング、処置療法の決定、および疾患に対する新規な処置様式の開発のために使用されることができる。
【0048】
本発明の方法の原理および操作は、図面および添付された説明を参照してより良く理解することができる。
【0049】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるまたは実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行される。また、本明細書中で用いられる表現および用語は説明のためであり、従って限定として見なされるべきではないことを理解しなければならない。
【0050】
分化療法は、ガン細胞に成熟化のプロセスを強制的に再開させることによってガン細胞を正常な細胞に誘導することに集中する。数多くのマーカーがこれまで、分化療法を受けている患者をモニタリングする手段として使用されている。そのようなマーカーの1つがアルカリホスファターゼであり、その発現が、細胞の分化状態と相関することが示された。一般には、正常な酵素活性により、細胞が特定の薬物処理の結果として適切に分化することが示され、一方、酵素活性がないことにより、薬物処理が特定のガンおよび/または特定の患者については効果的でないことが示される。
【0051】
しかしながら、今までのところ、そのようなマーカーを、高い感度、選択性および正確性で迅速かつ容易に検出するための方法は1つもない。
【0052】
本発明者らは、分化療法に対するガン細胞の応答の感度かつ高速大量処理可能な検出のための新規な電気化学的方法を開発している。
【0053】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、アンペロメトリーによる酵素測定が、分化剤の有効性を明らかにするために、電気化学的基質(例えば、p−APPなど)を用いて行われ得ることを示している。図1に例示されるように、ヒト結腸ガン細胞に対する3つの分化剤の有効性が、本発明の方法を使用して評価された。小型化された電気化学的セルのアレイを含有するチップを使用して、本発明者らは、これらの分化療法剤の有効性を、非常に高感度で、正確かつ迅速な様式で細胞の非常に少ないサンプル(約15個未満の細胞)に対してモニタリングすることができた(図2A〜図2Fおよび図3)。
【0054】
薬物の効果を5分以内に10ナノアンペアの分解能の電流応答により測定することができた。そのうえ、これらの結果から、量的相関が、誘導された電流シグナルと、ナノ体積チャンバーの内部で計数されるガン細胞の数との間において明らかにされる。
【0055】
ナノ体積の分析デバイスを利用することは、そのような分析デバイスはより少ない組織を診断のために必要とし、また、一様な生物学的条件および環境的条件を保ちながら、1つの腫瘍サンプルに対する様々な薬物の影響の高速大量処理可能な分析および比較を可能にするので、臨床的に関係のあるサンプルでは特に注目される。加えて、この新しい方法は、ガン薬物およびガン処置を「個別化医療」に向けて個々の患者に合わせることを助けることができる。
【0056】
従って、本発明の1つの局面によれば、ガン細胞を検出する方法が提供される。この方法は、電気的シグナルをもたらすことができる生成物を生じさせるように、酵素が細胞と基質との反応を触媒する条件のもと、細胞を酵素のための基質と接触させること、その後、電気的シグナルのレベルを測定することを含み、この場合、所定の閾値と比較した電気的シグナルのレベルの違いにより、ガン細胞が示される。
【0057】
本明細書中で使用される用語「検出する」は、細胞を検出するという行為、細胞を診断するという行為、細胞を認識するという行為、細胞を発見するという行為、細胞を暴露するという行為、細胞を可視化するという行為、または、細胞を同定するという行為を示す。
【0058】
本明細書中で使用される用語「細胞」は哺乳動物細胞を示し、好ましくはヒト細胞を示す。単一の細胞を本発明の教示に従って使用することができ、同様にまた、複数の細胞を本発明の教示に従って使用することができる。好ましくは、複数の細胞は最小でも10個の細胞を含み、最大でも500個の細胞を含む。好ましくは、細胞は、細胞の数が計数され得るように単一分散物の状態であるが、接着性細胞および凝集物がそれにもかかわらず検出され得る。複数の細胞は任意の生物学的サンプルから得ることができ、例えば、細胞株、初代培養物および細胞サンプル(例えば、生検材料(切開生検または切除生検を含む外科生検材料、細針吸引物およびその他)、完全切除物または体液)などから得ることができる。生検材料回収の方法がこの技術分野では広く知られている。
【0059】
生物学的サンプルにおける細胞は、前処理を何ら行うことなく、機能的酵素についてアッセイすることができる。従って、生物学的サンプルにおける細胞は好ましくは無傷(すなわち、完全)であり、好ましくは生存可能であるが、細胞の前処理(例えば、細胞抽出物の作製など)、または、無傷でない細胞もまた、本発明によって意図されることが理解される。
【0060】
「ガン細胞」は、本明細書中では「悪性細胞」としてもまた示されるが、正常な細胞分裂制御から解除されている細胞であり、従って、異常な成長、ならびに、抑制されない様式で増殖する傾向、および、場合によっては転移する傾向によって特徴づけられる。従って、ガン細胞は、新生物細胞、前悪性細胞、転移細胞、腫瘍細胞、発ガン性細胞、ガン遺伝子型を有する細胞、悪性表現型の細胞、ガン遺伝子によりトランスフェクションされた細胞、ウイルスにより形質転換された細胞、ガン遺伝子を発現する細胞、ガンについてのマーカーを発現する細胞、または、これらの組合せであり得る。
【0061】
本発明の方法によって検出することができるガン細胞の限定されない例には、下記の細胞が挙げられる:腺ガン細胞、副腎腫瘍細胞、エナメル上皮腫細胞、未分化細胞、甲状腺未分化ガン細胞、血管線維腫細胞、血管腫細胞、血管肉腫細胞、アプドーマ細胞、カルチノイド腫瘍細胞、男性胚細胞腫細胞、腹水腫瘍細胞、腹水腫瘍(ascitic tumor)細胞、星状芽細胞腫細胞、星状細胞腫細胞、毛細管拡張性運動失調細胞、心房粘液腫細胞、基底細胞ガン細胞、良性腫瘍細胞、骨ガン細胞、骨腫瘍細胞、脳幹神経膠腫細胞、脳腫瘍細胞、乳ガン細胞、バーキットリンパ腫細胞、ガン性細胞、カルチノイド細胞、ガン腫細胞、小脳星状細胞腫細胞、頸部ガン細胞、サクランボ色血管腫細胞、胆管ガン細胞、胆管腫細胞、軟骨芽細胞腫細胞、軟骨腫細胞、軟骨肉腫細胞、絨毛膜芽腫細胞、絨毛ガン細胞、結腸ガン細胞、一般的な急性リンパ芽球性白血病細胞、頭蓋咽頭腫細胞、嚢胞ガン細胞、嚢胞線維腫細胞、嚢腫細胞、細胞腫細胞、非浸潤性乳管ガン細胞、管乳頭腫細胞、未分化胚細胞腫細胞、脳腫瘤細胞、子宮内膜ガン細胞、内皮腫細胞、脳室上衣細胞腫細胞、上皮腫細胞、赤白血病細胞、ユーイング肉腫細胞、節外性リンパ腫細胞、ネコ肉腫細胞、線維腺腫細胞、線維肉腫細胞、甲状腺濾胞ガン細胞、神経節膠腫細胞、ガストリノーマ細胞、多形性神経膠芽細胞腫細胞、神経膠腫細胞、性腺芽腫細胞、血管芽細胞腫細胞、血管内皮芽細胞腫細胞、血管内皮腫細胞、血管周皮細胞腫細胞、血管リンパ管腫細胞、血球芽細胞腫細胞、血液細胞腫(haemocytoma)細胞、ヘアリーセル白血病細胞、過誤腫細胞、肝ガン細胞、肝細胞ガン細胞、ヘパトーマ細胞、組織腫細胞、ホジキン病細胞、副腎腫細胞、浸潤性ガン細胞、浸潤性導管細胞ガン細胞、インスリノーマ細胞、若年性血管線維腫細胞、カポジ肉腫細胞、腎臓腫瘍細胞、大細胞リンパ腫細胞、白血病細胞、慢性白血病細胞、急性白血病細胞、脂肪腫細胞、肝臓ガン細胞、肝臓転移細胞、リュッケガン細胞、リンパ節腫細胞、リンパ管腫細胞、リンパ性白血病細胞、リンパ球性リンパ腫細胞、リンパ細胞腫細胞、リンパ水腫細胞、リンパ腫細胞、肺ガン細胞、悪性中皮腫細胞、悪性奇形腫細胞、肥満細胞腫細胞、髄芽細胞腫細胞、メラノーマ細胞、髄膜芽腫細胞、中皮腫細胞、転移性細胞、転移細胞、転移拡大細胞、モートン神経腫細胞、多発性骨髄腫細胞、骨髄芽球腫細胞、骨髄性白血球細胞、骨髄脂肪腫細胞、骨髄腫細胞、筋芽細胞腫細胞、粘液腫細胞、鼻咽頭ガン細胞、新生物細胞、腎芽細胞腫細胞、神経芽細胞腫細胞、神経線維腫細胞、神経線維腫症細胞、神経膠腫細胞、神経腫細胞、非ホジキンリンパ腫細胞、乏突起神経膠腫細胞、視神経膠腫細胞、骨軟骨腫細胞、骨原性肉腫細胞、骨肉腫細胞、卵巣ガン細胞、乳頭パジェット病細胞、パンコースト腫瘍細胞、膵臓ガン細胞、クロム親和性細胞腫細胞、クロム親和性細胞腫細胞、プラズマ細胞腫細胞、原発性脳腫瘍細胞、胎児転位腫細胞、プロラクチノーマ細胞、腎細胞ガン細胞、網膜芽細胞腫細胞、横紋筋肉腫細胞、横紋筋肉腫細胞、固形腫瘍細胞、肉腫細胞、二次的腫瘍細胞、セミノーマ細胞、皮膚ガン細胞、小細胞ガン細胞、扁平上皮ガン細胞、イチゴ状血管腫細胞、T細胞リンパ腫細胞、奇形腫細胞、精巣ガン細胞、胸腺腫細胞、絨毛性腫瘍細胞、腫瘍形成性細胞、腫瘍開始細胞、腫瘍進行細胞、前庭神経鞘腫細胞、ウィルムス腫瘍細胞、または、これらの組合せ。
【0062】
本発明のこの局面の1つの好ましい実施形態によれば、ガン細胞は結腸ガン細胞である。
【0063】
本明細書中上記で言及されたように、本発明の方法は、酵素反応の生成物が電気的シグナルを生じさせることができる細胞の反応をもたらすために、酵素基質を細胞と接触させることによって行われる。
【0064】
本明細書中で使用される語句「細胞の反応」は、外因性酵素により生じる反応ではなく、基質と細胞によって発現される内因性酵素との間において生じる反応を示す。
【0065】
基質は、検出されるために要求される酵素(これはまた、本明細書中では「マーカー酵素」として示される)に従って選択される。酵素は細胞の内側(すなわち、細胞内)に存在し得るか、または、細胞膜上に存在し得る(すなわち、膜結合型であり得る)。別の実施形態によれば、酵素は分泌型酵素である。検出されるための酵素が細胞内型であるとき、基質は好ましくは膜透過性であることが理解される。さらに、基質は好ましくは、触媒反応後、形成された生成物もまた、生成物が細胞から検出器の電極にまで拡散し得るように膜透過性であるように選択される。
【0066】
1つの実施形態によれば、検出されるために要求される酵素はアルカリホスファターゼ(または分泌型アルカリホスファーゼ(SEAP))であり、基質は4−アミノフェニルホスファート(p−APP)である。アルカリホスファーゼはp−APPを電気化学的生成物のp−アミノフェノール(PAP)に変換する。
【0067】
p−APPは、Sigma−Aldrich(www.sigmaaldrich.com)およびBio−world(www.Bio−world.com)のような企業から広く市販されている。
【0068】
アルカリホスファターゼは正常な細胞に存在するが、ガン性細胞では低下している(または存在しないことさえある)。従って、細胞のアルカリホスファターゼ活性レベルの分析を、ガンを処置するための特定の薬物の効率を評価するためのマーカーとして使用することができ、また、診断目的のためのマーカーとしてさえ使用することができる。
【0069】
本明細書中で使用される用語「接触させる」は、基質が酵素によって触媒され得るような条件のもとで、基質を細胞の近傍に近づけることを示す。従って、例えば、接触は、基質の触媒反応、および、生成物が電気化学的セルによって検出され得る十分な生成物の生成を可能にするために十分な温度および時間で、緩衝液条件下で行われなければならない。例えば、p−APPが基質として使用されるとき、好ましくは、接触は、室温において少なくとも5分間行われる(本明細書中下記の実施例2および実施例3を参照のこと)。
【0070】
接触を、インビトロ、エクスビボまたはインビボで行うことができる。接触を、電気的シグナルがオンラインで検出されるように、酵素反応の生成物もまた検出することができる容器(すなわち、電気化学的セル)において行うことができる。そのような容器が本明細書中下記でさらに記載される。あるいは、接触を、サンプルを特定の時点で継続的に抜き取り、そのようなサンプルを電気化学的セルの中に入れることが可能であるように、検出が行われる容器とは別個の容器において行うことができる。従って、接触を、試験管、フラスコ、組織培養、チップ、アレイ、プレート、マイクロプレートまたはキャピラリーなどにおいて行うことができる。細胞は、細胞の内容物の絶え間ない完全な混合のために、基質添加後、振動プレートに置くことができる。
【0071】
本明細書中上記で言及されたように、電気的シグナル(すなわち、電気化学的生成物)を生じさせるために化学的セルの電極においてレドックス反応を受けることができる(すなわち、電子移動が可能である)生成物の電気化学的測定が、典型的には電気化学的セルにおいて行われる。
【0072】
本明細書中で使用される語句「電気的シグナル」は、電子または電気化学的に活性な化学種を示す。
【0073】
本明細書中で使用される語句「電気化学的測定」は、電極を溶液中、典型的には電気化学的セルにおいて使用することによって行われる測定を示す。この測定を、例えば、クロノアンペロメトリー、クロノポテンシオメトリー、サイクリックボルタンメトリー、クロノクーロメトリーまたは方形波ボルタンメトリーによって行うことができる。そのような測定において検出可能であるシグナルは、そのような電気化学的測定において対照と異なるシグナルである。
【0074】
オンライン測定のために、本発明の電気化学的セルは、測定電極、戻り電極、参照電極、および、細胞を収容するためのチャンバーを含む。
【0075】
作用電極は様々な異なる種類のものであり得る。例えば、作用電極を、炭素(ガラス状炭素、活性炭素布電極、炭素フェルト、白金炭素布、平織炭素布を含む)から作製することができ、また、金、白金または銀から作製することができる。対向電極もまた、作用電極と同じ材料から作製することができる。参照電極は、例えば、飽和カロメル電極である場合があり、また、Ag/AgCl電極である場合がある。さらに、電極は、サンプルを抜き取り、そのサンプルを別個の電気化学的セルに運ぶことを必要とすることなく、細胞を含む容器の中に入れることができるスクリーン印刷電極から作製される場合がある。
【0076】
生成物を本発明の方法に従って検出するために使用される電極は、再使用可能な電極または使い捨て電極であり得る。再使用可能な電極は、例えば、テフロン(登録商標)に埋め込まれる、ディスク形状またはロッド形状の、ガラス状炭素から作製される電極である場合がある。使い捨て電極は、例えば、炭素紙、炭素布、炭素フェルトの形態である電極である場合があり、または、上記で記された種類のスクリーン印刷電極である場合がある。
【0077】
1つの実施形態によれば、電気化学的セルは三電極セルである。別の実施形態によれば、電気化学的セルは二電極セルである。1つの好ましい実施形態によれば、電気化学的セルは、複数のそのようなセルを含むアレイ(すなわち、チップ)として、すなわち、それぞれのウエルがナノ体積サイズであるマルチウエルアレイとして提供される。
【0078】
反応生成物によって生じる電気的シグナルを測定するためのシステムはさらに、コンピューターであり得る制御モジュール、ポテンシオスタット、および、1つの典型的な実施形態の場合において、複数の電気化学的セルからの同時測定のために必要とされるマルチプレクサーモジュールを含むことができる。
【0079】
セルにおいて行われる電気化学的測定が次に、クロノアンペロメトリーモードを参照して記載される。理解されるように、その記載は、必要に応じて必要な変更を加えて、上記で言及される他の電気化学的測定モードにもまた当てはまる。さらに、記載は、多電極システム(電極のアレイを含むシステム)を使用して行われ、その記載が、1つだけのセルを含むシステムに対して同様に当てはまることは明らかである。
【0080】
電気化学的測定の開始に際して、すべての電極が一緒に作動させられ、コンピューターがパラレルポートを介してすべての電極をスキャンし、電位を加えたことに対する各電極のバックグラウンド応答がコンピューターによって記録される。電気化学的測定シーケンス全体を、生成物の濃度における変化から生じる電流を測定しながら、長期間にわたって行うことができる。電極の表面が自然変動のために同一でない場合には、システムを、電気活性化学種(典型的には、電気化学的セルにおける酵素反応の生成物である同じ化学種)の酸化または還元を測定すること、および、すべての電極の結果を比較することによって修正することができる。
【0081】
アッセイを行う際には、電極はポテンシオスタットに接続することができ、同時に、電極はまた、マルチプレクサーを介してマイクロコンピューターのパラレルポートに集めることができる。
【0082】
それぞれの電極が、ポテンシオスタットに同様に接続される参照電極および対向電極を含有する電気化学的セルの中に入れられる。特定の電位がポテンシオスタットによって電極に加えられ(この場合、電位は電極のすべてについて同じとすることができるか、または、それぞれの電極に対して異なる電位とすることができる)、それぞれの電極における電流が検出される。電気的シグナルがコンピュータースクリーンにリアルタイムで可視化される。
【0083】
酵素反応の電気化学的生成物によって生じる電気的シグナルは細胞における酵素のレベルを反映し、また、酵素(酵素の存在、非存在またはレベル)がガンについてのマーカーであるので、そのシグナルを、細胞がガン性(すなわち、悪性)であるか否かを明らかにするために使用することができる。具体的には、生じた電気的シグナルのレベルが所定の閾値に対して異なるならば、このことは、細胞がガン性であることを示すと考えられる。典型的には、所定の閾値は、対照細胞によって生じる電気的シグナルによって求められる。
【0084】
対照細胞は、正常に分化した細胞、非ガン性細胞、好ましくは、ガン性の表現型または未分化型の表現型が疑われる試験された細胞と同じ組織および試料の正常に分化した細胞、非ガン性細胞であることが可能である。好ましくは、違いは、対照細胞と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、80%、100%(すなわち、2倍)、3倍、5倍または10倍の違いである。
【0085】
本発明の1つの実施形態によれば、ガン細胞における酵素(従って、電気的シグナル)の量は、ガンでない細胞における酵素(従って、電気的シグナル)の量よりも低い。
【0086】
本発明の別の実施形態によれば、ガン細胞における酵素(従って、電気的シグナル)の量は、ガンでない細胞における酵素(従って、電気的シグナル)の量よりも高い。
【0087】
本発明の方法は、対象をガンと診断するために使用され得ることが理解される。
【0088】
本明細書中で使用される用語「診断する」は、ガンを分類すること、ガンの重篤度(悪性度または病期)を決定すること、ガンの進行をモニタリングすること、ガンの結果および/または回復の見込みを予測することを示す。
【0089】
対象は、定期健康診断を受けている健康な動物対象またはヒト対象である場合がある。あるいは、対象は、ガンを有する危険性がある対象(例えば、遺伝的素因を有する対象、ガンの病歴および/または家族歴を有する対象、発ガン物質、職業的危険因子、環境的危険因子に暴露されている対象)、および/または、ガンの臨床的徴候[例えば、血便または下血、原因不明の痛み、発汗、原因不明の発熱、食欲不振に至るまでの原因不明の体重減少、排便習慣における変化(便秘および/または下痢)、テネスムス(不完全な排便感、具体的には直腸ガンについて)、貧血および/または全身衰弱]の疑いを示す対象である場合がある。
【0090】
本発明は、ガンのための処置を個々に最適化すること、抗ガン処置を対象においてモニタリングすること、抗ガン処置を対象のために決定すること、および、細胞の悪性表現型を逆戻りさせることができる薬剤を同定することに関連する様々な適用を有することが理解される。
【0091】
従って、本発明の別の局面によれば、細胞の悪性表現型を逆戻りさせることができる薬剤を同定する方法が提供される。この方法は、少なくとも1つのガン細胞を薬剤に供すること、および、抗ガン剤の有効性を、マーカー酵素(例えば、アルカリホスファターゼ)の活性または発現を本発明の方法に従ってモニタリングすることによって求めることを含む。
【0092】
本明細書中で使用される語句「悪性表現型を逆戻りさせる」は、悪性細胞の増殖性特徴および/または侵襲性特徴を少なくとも部分的に逆戻りさせることを示す。
【0093】
本明細書中で使用される用語「薬剤」は、生物学的薬剤または化学的薬剤を含む試験組成物を示す。
【0094】
可能性のある抗ガン剤として本発明の方法に従って試験することができる生物学的薬剤の例には、核酸、例えば、ポリヌクレオチド、リボザイム、siRNAおよびアンチセンス分子(これらには、RNA、DNA、RNA/DNAハイブリッド、ペプチド核酸、ならびに、変化した骨格構造および/もしくは塩基構造または他の化学的修飾を有するポリヌクレオチドアナログが含まれるが、これらに限定されない);タンパク質、ポリペプチド(例えば、ペプチド)、炭水化物、脂質および「小分子」薬物候補物が含まれるが、これらに限定されない。「小分子」として、例えば、約10000ダルトン未満の分子量(好ましくは約5000ダルトン未満の分子量、最も好ましくは約1500ダルトン未満の分子量)を有する天然に存在する化合物(例えば、植物抽出物、微生物培養液およびその他に由来する化合物)または合成された有機化合物もしくは有機金属化合物を挙げることができる。
【0095】
本発明のこの局面の1つの好ましい実施形態によれば、薬剤は分化剤であり、これには、酪酸およびその誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
可能性のある抗ガン剤として本発明の方法に従って試験することができる条件の例には、放射線暴露(例えば、ガンマ線、UV線、X線など)が含まれるが、これらに限定されない。
【0097】
本発明のこの局面の1つの実施形態によれば、「マーカー酵素」はまた、比較が処置前および処置後に行われ得るように、薬剤との接触に先立ってアッセイされる。
【0098】
本発明のこの局面の別の実施形態によれば、薬剤が、抗ガン効果を有するために十分に長い期間、ガン細胞に供される。従って、例えば、酪酸および/またはその誘導体が分析されているならば、好ましくは、これらの薬剤は、少なくとも1日間、より好ましくは3日間、ガン細胞に供される。
【0099】
薬剤は、インビトロ、エクスビボまたはインビボのどれかでガン細胞と接触させられ得ることが理解される。接触がインビボで行われるならば、細胞は典型的には、本発明の基質との接触に先立って対象から取り出される。
【0100】
本発明は理論的には、単一の電気化学的セルを用いて実施することができるが、そのような方法は効率的でないか、または、そのような方法は望ましくない。好ましくは、本発明の方法は、様々な薬剤を同時にスクリーニングするために複数の電気化学的セルを使用する薬剤の高速大量処理スクリーニングのために使用される。セルはチップ(例えば、本明細書中下記で実施例1において記載されるようなシリコンチップ)の一部であり得る。
【0101】
従って、1つの実施形態によれば、本発明の方法は、高速大量処理のための手段を使用して行われる。従って、本方法は、例えば、自動化サンプリングデバイス、液体取り扱い装置、ディスペンサー、電極アレイ、ロボット、または、これらの任意の組合せを使用して行うことができる。
【0102】
腫瘍処置応答がそのタイプおよび解剖学的存在位置だけからは予測できないことが現在知られている。細胞の悪性表現型を逆戻りさせることができる薬剤を同定する方法は、患者の特定の細胞がそのようなアッセイシステムで使用され得るように改変することができ、それにより、治療剤を特定の患者に合わせることができることが理解される。さらに、特定の薬剤が、本発明の方法を使用して選択され得るだけでなく、最適な用量および最適な処置療法もまた、本発明の方法に従って同定され得ることが理解される。このようにして、薬剤の治療効果的な量を決定することができる。
【0103】
患者は、本発明の方法の助けをかりて選択された最適な処置条件に従って処置することができ、また、必要な場合には、好適な期間の後で再び試験することができる。このようにして、患者の応答を、治療を受けながら継続的にモニタリングすることができる。
【0104】
考えられる限りでは、酵素レベルを分析すること、および、工程を施すことを、処置の経過期間中に何回か繰り返すことができる。例えば、アルカリホスファターゼのレベルを、薬剤を投与した1週間後に分析することができる。アルカリホスファターゼのレベルが、対照と比較されるレベルよりも高いならば、薬剤の用量を減らすことができる。アルカリホスファターゼのレベルが、対照と比較されるレベルよりも低いままであるならば、薬剤の用量を増大させることができる。
【0105】
本発明の電気化学的セルが、ガン細胞に対するその影響を求めるための少なくとも1つの抗ガン剤(例えば、分化剤、例えば、酪酸など)と一緒にキットで提供され得ることが理解される。本発明のキットは、所望されるならば、本発明のキットの1単位以上を含有し得るパックで提供され得る。パックには、キットを使用するための説明書、および、特定のいくつかの細胞についての抗ガン剤の推定用量が伴い得る。パックはまた、実験室補助品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で容器に付随する通知による適合化を受け得る(そのような通知は組成物の形態の当局による承認を反映する)。
【0106】
1つの実施形態によれば、キットはまた、電気化学的セルの電極におけるレドックス反応を生じさせる反応生成物をもたらすために生物学的細胞(すなわち、ガン細胞)のマーカー酵素によって酵素反応させられる基質を含むことができる。そのような基質が本明細書中上記で記載される。
【0107】
本特許の存続期間中において、多くの関連した基質が開発されることが予想され、従って、基質の用語の範囲は、すべてのそのような新しい技術を演繹的に包含することが意図される。
【0108】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴が、限定であることが意図されない下記の実施例を検討したとき、当業者には明らかになる。加えて、本明細書中上記に描かれるような、また、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0109】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0110】
概して、本明細書中で使用される用語と、本発明で利用される実験方法には、分子生化学、微生物学および組み換えDNAの技法が含まれている。これらの技法は文献に詳細に説明されている。例えば以下の諸文献を参照されたい:「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrook他(1989);Ausubel,R.M.編「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻(1994);Ausubel他著「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley and Sons,米国メリーランド州バルチモア(1989);Perbal著「A Practical Guide to Molecular Cloning」John Wiley & Sons,米国ニューヨーク(1988);Watson他、「Recombinant DNA」Scientific American Books、米国ニューヨーク;Birren他編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク(1998);米国特許の4666828号、4683202号、4801531号、5192659号および5272057号に記載される方法;Cellis,J.E.編「Cell Biology:A Laboratory Handbook」I〜III巻(1994);Coligan,J.E.編「Current Protocols in Immunology」I〜III巻(1994);Stites他編「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、米国コネティカット州ノーウォーク(1994);MishellとShiigi編「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H. Freeman and Co.、米国ニューヨーク(1980);また利用可能な免疫検定法は、例えば以下の特許と科学文献に広範囲にわたって記載されている:米国特許の3791932号、3839153号、3850752号、3850578号、3853987号、3867517号、3879262号、3901654号、3935074号、3984533号、3996345号、4034074号、4098876号、4879219号、5011771号および5281521号;Gait,M.J.編「Oligonucleotide Synthesis」(1984);Hames,B.D.およびHiggins S.J.編「Nucleic Acid Hybridization」(1985);Hames,B.D.およびHiggins S.J.編「Transcription and Translation」(1984);Freshney,R.I.編「Animal Cell Culture」(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.著(1984)および「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ(1990);Marshak他、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」、CSHL Press(1996);なお、これらの文献類は、あたかも本願に完全に記載されているように援用するものである。その他の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。それらの文献に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。それらの文献に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
【0111】
実施例1
ナノ−バイオ−チップの製造
ナノ−バイオ−チップを、標準的なマイクロシステム技術(MST)方法を使用して設計し、製造した。その構造には、小型化された電気化学的セルのアレイが含まれた。細胞がナノ体積のチャンバー(すなわち、電気化学的セル)に入れられた。この円筒状チャンバーは、それぞれが100nLの体積を保持した。すべてのアレイには、陽性および陰性の対照チャンバーが含まれた。
【0112】
デバイスを、a)使い捨てチップ(細胞が入れられたナノチャンバーを有する)、および、b)再使用可能なチップ(マルチプレクサー、ポテンシオスタット、温度制御、ならびに、検知およびデータ分析のためのポケットPCを含む電子回路網へのインターフェースを有する)の2つの部品で製造した。この設定は、多数の測定のための連続再使用を可能にした。
【0113】
チップをシリコンから製造し、チップは、8個の小型化された電気化学的セルからなるアレイを含有した。それぞれの電気化学的セルが、1)金の作用電極、2)金の対向電極、および、3)Ag/AgCl参照電極の3つの円形形状の電極(これらは絶縁用の窒化ケイ素層によって取り囲まれる)からなった。電極を、金のスパッタリング、マイクロリソグラフィーによって、また、参照電極については、銀を選択的に蒸着し、銀を塩化物含有溶液中で陽極酸化することによって作製した。チャンバーの壁を光重合ポリイミド(SU−8)から構築した(図1A〜図1B)。シリコンチップを、電子回路網をつないでいるプラスチックチップにワイヤーボンディングした。
【0114】
シグナルの検知を、電極でのシグナルの調節および検出のための電子回路網に対するインターフェースを有する手持ち型パーム−ポテンシオスタット(Palm Instruments BV−2004)によって行った。電子回路は、温度制御される電気化学的セルの8個の独立した二重の回路からなった。電位を、それぞれの電気化学的セルにおいて、作用電極と、参照電極との間に加え、出力電流を測定した。
【0115】
実施例2〜実施例3
一般的な材料および方法
細胞株および培養:HT−29ヒト結腸ガン細胞を、ブチラート処理前の3日間、95%空気/5%CO2において37℃で、ウシ胎児血清の存在下、DMEM培地で成長させた。種々の濃度でのブチラートをHT−29細胞培養物に加えた。添加された濃度は、0mM、0.078mM、0.156mM、0.3125mM、0.625mM、1.25mM、2.5mM、5mMおよび10mMであった。最適なブチラート濃度、LC50および生存性をそれらに従って計算した。測定を、無傷の細胞を用いて、また、ガン細胞のさらなる処理(例えば、溶解)を行うことなく、PBS中で行った。
【0116】
酪酸(BA)およびその誘導体:0.08mM〜10mMの間の範囲のBA(Sigma,Israel)をHT−29結腸ガン細胞に導入し、最適化のために72時間インキュベーションした。2.5mMの一定濃度でのBAをすべての電気化学実験では加えた。BA誘導体のブチロイルメチル−ジエチルホスファートおよびピバロイルオキシメチルブチラートを記載されるように合成した[Rephaeli A,Zhuk R,Nudelman A,2000,Drug Develop.Res.Vol 50:379−391]。ブチロイルメチル−ジエチルホスファートをPBSにおいて可溶化し、ピバロイルオキシメチルブチラートをDMSOにおいて可溶化し、その後、培地により希釈し、最終的なDMSO濃度を0.1%以下にした。その後、これらのプロドラッグを50μMの一定の濃度で細胞に導入し、95%空気/5%CO2の条件において37℃で96時間インキュベーションした。分化剤とのインキュベーションの後、生細胞をトリパンブルー排除によって計数し、生存性およびLC50の計算のために試験した。すべての電気化学的測定の前に、細胞を遠心分離し、PBSで希釈した。すべての測定をPBS中で行った。BA、ピバロイルオキシメチルブチラートおよびブチロイルメチル−ジエチルホスファートの影響を、アルカリホスファターゼの酵素活性を測定することによって調べた。
【0117】
アルカリホスファターゼ活性の測定:
光学的測定:アルカリホスファターゼ活性を光学的基質のパラ−ニトロフェニルホスファート(直ちに使用できるPNPPキット、Sigma)により検出した。酵素による得られる生成物を420nmの波長で測定した。
【0118】
電気化学的測定:アンペロメトリーによる酵素測定を、電気化学的基質のp−APPを用いて行った。酵素反応生成物、すなわち、アミノフェノール(p−AP)は220mVで金の作用電極において酸化される。生じた電流を測定した。8チャンネルの100nL体積の電気化学的チャンバーに、BAまたはその誘導体により処理されたHT−29ガン細胞を負荷した。細胞を電気化学的チャンバーに入れ、基質を100nLの総体積において1mg/mlの最終濃度に加えた。生じた電流を測定し、細胞の数を顕微鏡下で計数した。細胞数と、電流密度との間における相関を分析した。
【0119】
実施例2
本発明のバイオチップによってアッセイされたときの結腸ガン細胞に対する薬物の影響
ガン治療を各個体に合わせるために、ヒト結腸ガン細胞(HT−29)に対する様々な単一源薬物の影響を調べた。
【0120】
結果
HT−29結腸ガン細胞を様々な分化治療剤に96時間暴露し、誘導されたアルカリホスファターゼ活性を測定した。アレイ上のそれぞれの電気化学的チャンバーに、異なる薬剤(すなわち、酪酸、ブチロイルメチル−ジエチルホスファートおよびピバロイルオキシメチルブチラート)に暴露された細胞を負荷した。結果を図1A〜図1Cに示す。正常な酵素活性により、細胞が特定の薬物処理の結果として適切に分化することが示される。図1A〜図1Cに示されるように、BAおよびブチロイルメチル−ジエチルホスファートはアルカリホスファターゼの酵素活性を誘導し、一方、ピバロイルオキシメチルブチラートは酵素活性を50μM濃度の暴露において何ら誘導しなかった。このことは、HT−29ガン細胞に関するその低下した効力に関係づけられ得る[M.Entin−Meerら、Molecular Cancer Therapeutics,Vol.4,pp.1952−1961、2005;D.Engelら、Clinical Cancer Research,Vol.11,pp.9052S−9052S,2005]。加えて、陽性対照および陰性対照を行った。チャンバーに、薬物処理細胞、陰性対照としての非処理細胞、および、陽性対照としての精製アルカリホスファターゼを負荷した。ブチロイルメチル−ジエチルホスファートが、BAと類似する分化効果を発揮したが、その濃度が1.5桁ほど低下していたこと(ブチロイルメチル−ジエチルホスファートおよびBAについてそれぞれ、50μM対2.5mM)に注目することは重要である。
【0121】
実施例3
バイオチップによるガン細胞の定量
結果
誘導された電流シグナルと、ナノ体積チャンバーの内側で計数されたガン細胞の数との間における顕著な量相関が検出された。ガン細胞の算出結果および相対的な酵素活性が図2A〜図2Fに示される。アルカリホスファターゼ活性のモニタリングのためのアンペロメトリー応答曲線を、電気化学的アレイチップを使用して作製した。HT−29結腸ガン細胞を酪酸(2.5mM)に暴露した。基質PAPPとともにHT−29をチップ上の100nL体積の電気化学的チャンバーに入れた。電流を、220mVにおいてアンペロメトリー技術を使用して測定した。上段、中段および下段の曲線は、チャンバーの内側で計数された約100個の細胞、15個の細胞および0個の細胞の電流応答をそれぞれ表す。多数の測定により、チャンバーの内側で計数された細胞数と、アルカリホスファターゼ活性との間における大きい相関が明らかにされた。結果を図3に示す。この酵素反応を定量することができることは、電気化学的検出方法の利点と組み合わされた、チップの小型化された設計に起因する。
【0122】
実施例4
本発明のバイオチップによってアッセイされたときの結腸ガン細胞に対するブチロイルメチル−ジエチルホスファートの影響
バイオチップの感度をさらに調べるために、増大する数のHT−29結腸ガン細胞を異なる長さの時間にわたってブチロイルメチル−ジエチルホスファートとインキュベーションした。内因性アルカリホスファターゼの量を、本発明のバイオチップを使用して測定した。
【0123】
結果
結果を図4A〜図4C、図5A〜図5C、および、図6A〜図6Cに示す。ガン細胞に対するブチロイルメチル−ジエチルホスファートの影響は、インキュベーション時間が増大するにつれ増大した。加えて、影響の大きさが、試験された細胞の数と相関したことを認めることができる。
【0124】
結論
分化療法に対する応答でのガン細胞の高感度かつ高速大量処理可能な検出のための新しい方法が明らかにされている。ヒト結腸ガン細胞の場合において、この細胞を種々の分化療法薬物により処理し、異なる薬物に対する細胞応答を同時かつオンラインで測定した。このマイクロアレイ技術では、多数の薬物をオンラインで試験することができること、および、効果的な治療を個体に合わせることができることがもたらされる。
【0125】
この「ラボ・オン・ア・チップ(Lab−on−a−chip)」システムは、極めて少量のサンプル(約15個未満の細胞)に対する高感度測定が可能であることを提供し、チップに入れる前の特別な細胞処理を必要としない。
【0126】
明確にするため別個の実施形態で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0127】
本発明はその特定の実施形態によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本明細書中で言及した刊行物、特許および特許願はすべて、個々の刊行物、特許もしくは特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガン細胞を検出する方法であって、
(a)電気的シグナルをもたらすことができる生成物を生じさせるように、酵素が細胞と基質との反応を触媒する条件のもと、細胞を酵素のための基質と接触させること;および
(b)前記電気的シグナルのレベルを測定すること
を含み、所定の閾値と比較した前記電気的シグナルのレベルの違いにより、ガン細胞が示される方法。
【請求項2】
対象をガンと診断する方法であって、
(a)電気的シグナルをもたらすことができる生成物を生じさせるように、酵素が細胞と基質との反応を触媒する条件のもと、対象のサンプルにおける少なくとも1つの細胞を酵素のための基質と接触させること;および
(b)前記電気的シグナルのレベルを測定すること
を含み、所定の閾値と比較した前記電気的シグナルのレベルの違いにより、ガンが示される方法。
【請求項3】
ガンのための処置を個々に最適化する方法であって、
(a)対象のサンプルにおける少なくとも1つのガン細胞を少なくとも1つの抗ガン剤と接触させること;
(b)電気的シグナルをもたらすことができる生成物を生じさせるように、酵素が細胞と基質との反応を触媒する条件のもと、前記少なくとも1つのガン細胞を酵素のための基質と接触させること;および
(c)細胞によって生じた前記電気的シグナルのレベルを測定すること
を含み、前記レベルにより、前記対象のガンを処置するための前記抗ガン剤の効力が示される方法。
【請求項4】
抗ガン処置を対象においてモニタリングする方法であって、
(a)少なくとも1つの抗ガン剤を対象に投与すること;および
(b)工程(a)の後での対象のサンプルにおけるガン細胞の存在またはレベルを請求項1に記載の方法に従って検出すること
を含み、前記存在またはレベルにより、ガンの状態が示される方法。
【請求項5】
対象のための抗ガン処置を決定する方法であって、
(a)対象のサンプルにおけるガン細胞の存在またはレベルを請求項1に記載の方法に従って分析すること;および
(b)対象に対して、治療効果的な量の抗ガン剤を前記対象のサンプルにおける前記ガン細胞の存在またはレベルに従って投与すること
を含む方法。
【請求項6】
細胞の悪性表現型を逆戻りさせることができる薬剤を同定する方法であって、
(a)少なくとも1つのガン細胞を薬剤に供すること;および
(b)細胞の悪性表現型を、工程(a)の後、および、必要な場合には工程(a)に先だって、請求項1に記載の方法に従って測定すること
を含み、表現型の逆戻りにより、細胞の悪性表現型を逆戻りさせることができる薬剤が示される方法。
【請求項7】
工程(a)を工程(b)の後で繰り返すことをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの細胞は複数の細胞を含む、請求項2、3、および6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記測定は、高速大量処理のための手段を使用して行われる、請求項1〜3および6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記手段は、自動化サンプリングデバイス、液体取り扱い装置、ディスペンサー、電極アレイ、ロボット、または、これらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記接触はインビトロで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記接触はエクスビボで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記サンプルは、最大でも500個の細胞を含む、請求項2〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記サンプルは、最小でも10個の細胞を含む、請求項2〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記酵素はアルカリホスファターゼである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記基質はp−APPである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記ガン細胞は結腸ガン細胞である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記測定は、電気化学的セルを使用して行われる、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記測定は、マルチウエルアレイ中で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記マルチウエルアレイの各ウエルが電気化学的セルを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記マルチウエルアレイの各ウエルがナノ体積のウエルである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記薬剤は試験組成物を含む、請求項3〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記試験組成物は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、小分子化学物質、炭水化物、脂質、および、これらの組合せからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記薬剤は試験条件を含む、請求項3〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記試験条件は放射線条件である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞は無傷である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記ガン細胞は無傷である、請求項4〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記細胞は哺乳動物細胞である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記ガン細胞は哺乳動物細胞である、請求項4〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
ガン細胞を請求項1に記載の方法に従って検出するために構成されるシステム。
【請求項31】
(i)少なくとも1つの生物学的細胞を収容するために、かつ、電気化学的測定を行うために適合化された電気化学的セル;および
(ii)少なくとも1つの抗ガン剤
を含むキット。
【請求項32】
前記電気化学的セルの電極におけるレドックス反応を生じさせる反応生成物をもたらすために前記生物学的細胞の酵素によって酵素反応させられる基質をさらに含む、請求項31に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B−C】
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【図5A】
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【図5B−C】
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【図6A】
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【図6B−C】
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【公表番号】特表2010−523104(P2010−523104A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501666(P2010−501666)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000457
【国際公開番号】WO2008/120216
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(501177609)ラモット・アット・テル・アビブ・ユニバーシテイ・リミテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】RAMOT AT TEL AVIV UNIVERSITY LTD.
【Fターム(参考)】