説明

キシリレンジアミンの製造方法

本発明は、不均一系触媒の存在下で、o−、m−、又はp−フタロジニトリルを水素化することによる、o−、m−又はp−キシリレンジアミンの製造方法に関する。この方法は、粗キシリレンジアミンの相当する異性体中のフタロジニトリルの溶液を、水素化反応器中に導入し、その際、粗キシリレンジアミンが85〜99.7質量%の純度及び0.3〜15質量%の高沸点成分を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不均一系触媒下でのフタロジニトリルの水素化によるキシリレンジアミンの製造方法に関する。
【0002】
キシリレンジアミン(ビス(アミノメチル)ベンゼン)は、例えばポリアミド、エポキシ樹脂の合成のために、又はイソシアナート製造のための中間段階として有用な出発物質である。
【0003】
フタロジニトリルの水素化によるキシリレンジアミンの合成は公知である。
【0004】
「キシリレンジアミン」(XDA)という名称には、3種の異性体であるオルト−キシリレンジアミン、メタ−キシリレンジアミン(MXDA)及びパラ−キシリレンジアミンが含まれる。
【0005】
「フタロジニトリル」(PDN)という概念には、3種の異性体である1,2−ジシアンベンゼン=o−フタロジニトリル、1,3−ジシアンベンゼン=イソフタロジニトリル=IPDN及び1,4−ジシアンベンゼン=テレフタロジニトリルが含まれる。
【0006】
フタロジニトリルは、固形物(例えばイソフタロジニトリル(IPDN)は161℃で溶融する)であり、有機溶剤中で比較的悪い可溶性を示す。
【0007】
ニトリルを第1級アミンに水素化するための溶剤としては、文献中において主にアルコール、アミド、環状エーテル又はアミンが教示されている。
【0008】
EP-A1-1 209 146 (BASF AG)は、特定のラネー触媒上で、ニトリルを第1級アミンに水素化するための方法に関する。溶剤としてアルコール、アミン、アミド、たとえばNMP及びジメチルホルムアミド(DMF)、エーテル及びエステルが挙げられる。
【0009】
WO-A-98/09947 (Du Pont)には、多くの可能な溶剤、特にNMP(請求項2参照)の存在下での2−メチルグルタロニトリルの水素化が記載されている。
【0010】
PDNを水素化するための溶剤として、たとえばJP-A-2002 205980、WO-A-2000/046179、JP-A-54 041 804及びJP-B-54 037 593では、アルコール、特にメタノールが記載されている。
【0011】
メタノール(IPDN60℃での溶解度:18質量%)の使用の欠点は、メチル化されたXDAが副生成物として生じることである。
【0012】
CN-A-1 285 343 (Derwent Abstract WP2001317563) (China Petrochem. Corp.)には、PDNを水素化するための溶剤としてのアミンの使用が記載されている。
【0013】
US-A-4,482,741(UOP)には、溶剤としてのMXDAの使用が記載されている。MXDA中におけるIPDNの70℃での溶解度は約20質量%に達する。その際、勿論、MXDAsの大きい精製流が必要不可欠である。たとえば、純粋なMXDA中でのIPDNの20%濃度の溶液である場合には、5倍の精製容量が必要不可欠であり、この場合、これは、形成された生成物の単独での精製に必要不可欠である。相応して高くなるのは、投資及び運転コストである。
【0014】
EP-A-538 865及び US 4,247,478は、エーテル、たとえばジオキサン、THF及びジグリムのPDNの水素化のための溶剤としての使用を教示している。
【0015】
THF中で、60℃でかろうじて19質量%のIPDNの溶解度は確かに十分ではあるが、しかしながら溶剤としてのエーテルの欠点は、望ましくない過酸化物を形成するその傾向にある。
【0016】
EP-A2-1 193 247及びEP-A1-1 279 661(双方ともに Mitsubishi Gas Chem. Comp)は、イソフタロジニトリル(IPDN)の精製のための方法又は精製XDAを製造するための方法に関する。
【0017】
EP-A2-1 193 247は、NH及び溶剤の存在下でのIPDNの水素化を開示している(図1参照)。
【0018】
EP-A1-1 279 661において、水素化のための溶剤として、芳香族炭化水素及び飽和炭化水素が開示されている(第7欄、段落[0038])。
【0019】
EP-A2-1 193 244 (Mitsubishi Gas Chem. Comp.)には、フタロジニトリルを水素化することによるXDAを製造するための方法が記載されており、この場合、この方法は、C〜C12芳香族炭化水素、たとえばキシレン、メシチレン及びプソイドクメン中に溶解する(第5〜6欄、段落[0027]及び[0028];第6欄、段落[0032])。
【0020】
US-A-3,069,469(California Research Corp.)では、芳香族ニトリルを水素化するための溶剤として、たとえばPDN、芳香族炭化水素、キシレン、ジオキサン及び脂肪族アルコールが教示されている。
【0021】
DE-A-21 64 169(Mitsubishi Gas Chemical Co., Inc.)は、第6頁、最終段落において、Ni−触媒及び/又はCo−触媒の存在で溶剤としてのアンモニア中でIPDNを水素化し、MXDAにすることが記載されている。
【0022】
さらにGB-A-852,972 (DE-A-1 1 19 285に相当、BASF AG)では、PDNの水素化における溶剤としてのアンモニアの使用が開示されている。
【0023】
これら8個の特許出願WO-A-05/028417、WO-A-05/026102、WO-A-05/026103、WO-A-05/026104、WO-A-05/026100、WO-A-05/026101、WO-A-05/026098及びWO-A-05/026099(それぞれBASF AG)は、それぞれXDAを製造するための方法に関する。
【0024】
ドイツ特許出願番号102005036222.2(02.08.05、BASF AG)は、反応器中で、液体アンモニアの存在下で、不均一系触媒上で、フタロジニトリルを連続的に水素化することによる、キシリレンジアミンの製造方法に関し、その際、反応器搬出物の一部は液体循環流として、連続的に反応器入口に返送され(循環方式)、ここでフタロジニトリルは、混合装置を用いて、溶融物又は固体の形で、液体アンモニア流(流a)及び他の流(流b)、この場合、この他の流は、少なくとも一部の流が、水素化反応器周囲の循環流から引き抜かれたものである、と一緒に、あるいは、流a及び流bから成る混合物と一緒に混合し、かつ、得られた液体混合物を水素化反応器中に導く。
【0025】
溶剤及びアンモニア中の溶液としての液体アンモニアの取り扱いは、特定の圧力装置を必要とするが、これについては、常に準備されているとは限らない。
【0026】
本発明は、高純度のキシリレンジアミン、特にメタキシリレンジアミンを、高い収率及び空時収量(RZA)で製造するための改善された経済的な方法を見出すという課題に基づき、この場合、この方法は、技術水準の方法に匹敵する流量で実施することができる。水素化反応器中のニトリル又はその溶液の計量供給は、中程度の温度(たとえば≦80℃)又は圧力(たとえば≦6bar)で実施することができ、かつ蒸留コストは可能な限り少なく維持すべきであり、これによって現存する装置又は標準的装置中でのXDAの製造を実施することができ、その結果、投資コストの問題は解消される。
【0027】
したがってo−、m−又はp−フタロジニトリルを不均一系触媒の存在下で水素化することによる、o−、m−又はp−キシリレンジアミンを製造するための方法が見出され、この場合、この方法は、粗キシリレンジアミンの相当する異性体中のフタロジニトリルの溶液を水素化反応器中に導き、その際、粗キシリレンジアミンは85〜99.7質量%の純度及び0.3〜15質量%の高沸点成分の含量を有する。
【0028】
好ましくは、粗キシリレンジアミンの相当する異性体中のフタロジニトリルの溶液を水素化反応器中に導き、その際、粗キシリレンジアミンは89〜99.5質量%、特に92〜99.2質量%の範囲の純度及び0.5〜11質量%、特に0.8〜8質量%の高沸点成分の含量を有する。
【0029】
高沸点成分は、たとえばアミド、アミジン、ビス−XDA(XDAダイマー)及び他のオリゴマー、たとえば以下の式によるものである:
【化1】

【0030】
好ましくは、溶剤として使用された粗キシリレンジアミンは、低沸点成分、たとえばベンジルアミン及び/又はN−メチル−ベンジルアミンを0.01〜2質量%、好ましくは0.01〜1質量%(それぞれアンモニアなし)の含量及びアンモニアを0〜5質量%、特に0〜2質量%の含量で有する。
【0031】
高沸点成分とは、同様の条件下で、それぞれキシリレンジアミンよりも高い沸点を有する成分であると理解される。
【0032】
低沸点成分とは、同様の条件下で、それぞれキシリレンジアミンよりも低い沸点を有する成分であると理解される。
【0033】
XDAのm−フタロジニトリル(=イソフタロジニトリル)に相当する異性体は、メタ−XDAである。他の異性体に関しても同様である。
【0034】
後処理に関して、付加的な溶剤を使用しないことは重要であり、それというのも、これによって、蒸留及びロジスティックスに関するコストが増加するためである。ロジスティックスによれば、溶剤の再利用は、特にXDAの少ない製造量の場合には当然コストがかかる。しかしながらそれぞれの場合において、溶剤に基づく他の物質コストが生じる。さらに、確保すべき装置又は部分装置の数ならびにその大きさ(ならびにロジスティックス)は可能な限り少なく維持されることが重要である。これは本発明によれば、水素化から粗生成物として得られるXDAが、たとえば後処理されることなくLMとして使用される場合に達成される。
【0035】
好ましくは本発明による方法を、イソフタロジニトリル(IPDN)の水素化によるメタ−キシリレンジアミン(MXDA)の製造のために使用することが見出された。
【0036】
MXDAが、IPDNの溶剤のために適していることは公知である。粗悪な溶解性(たとえば60℃で15質量%)に基づいて、高い蒸留容量が必要不可欠である。本発明によれば、得られた粗−MXDAsの使用(場合によっては反応中で使用されたアンモニアの導入後の反応器搬出物)によって、蒸留流を強力に減少させることができる(精留のための供給流としての使用されるIPDNとほぼ同量)。反応器搬出物は、反応副生成物(たとえばベンジルアミン、メチルベンジルアミン、メチル化MXDA、アミド、アミジン、ビス−MXDA、他の高沸点成分)ならびに場合によっては残りのアンモニア量を含有する。
【0037】
しかしながら、IPDNを溶解するための粗−MXDAsの返送によって、副生成物、特にMXDAよりも高い沸点を有するもの、の堆積が生じる。驚くべきことに、0.3kg/hの触媒装填量の場合に粗−MXDA中の10質量%を上回るまでの高沸点成分が堆積する場合であってさえも、触媒活性又は選択性の急激な減少は観察されない。
【0038】
この方法において出発材料として使用されるPDNは、先行する工程で、相応するキシレン異性体のアンモ酸化により合成することができる。このような合成方法は、たとえばBASF特許出願EP-A-767 165、EP-A-699 476、EP-A-222 249、DE-A-35 40 517及びDE-A-37 00 710において、前記に挙げたEP-A2-1 193 247、EP-A1-1 279 661及びEP-A2-1 193 244(すべてMitsubishi Gas Chem. Comp.)ならびにXDAを製造するための前記BASF特許出願において記載されている。
【0039】
本発明による方法は、以下のように実施される:

【化2】

による、相当するキシリレンジアミン(o−、m−又はp−キシリレンジアミン)へのフタロジニトリルの水素化のために、PDNを粗−XDA中に溶解する。これは、たとえば別個の、たとえば後続の工程において、非連続的、半連続的又は連続的に操作される、場合により外部の循環ポンプを備えた容器又は撹拌容器中でか、あるいは、通常の適した混合−及び溶解装置中で実施することができる。
【0040】
溶解速度を高めるため及び/又は溶解されたPDNの量を高めるために、溶解工程は高めた温度で、例えば40〜120℃で、好ましくは50〜80℃で、特に好ましくは55〜70℃で実施することができる。この熱は、二重壁、熱コイル、外部熱交換器又は他の熱交換に適した装置を介して導入することができる。溶解工程は、好ましくは1〜20bar、特に好ましくは1〜6barの絶対圧で実施する。
【0041】
好ましくは、本発明による方法において、粗XDA中の7.5〜25質量%、特に10〜20質量%濃度のPDN、特にIPDNの溶液を使用する。
【0042】
多量の副生成物の堆積は、粗−XDA、たとえば粗−MXDAの規則的な連続搬出によって制御される。搬出される材料の量を、使用されるPDN、たとえばIPDNの量を用いて制御することは有利である。この方法において、専ら操作開始時に、純粋なXDA、たとえばMXDAの使用が必要とされる。これは、蒸留流−最初のこれらの導入量とは異なる−を、まさに形成されるXDAにまで減少させることができる。他の場合において、たとえばPDNsを溶解するために粗−XDAに代えて純粋なXDAを使用する場合には、たとえば15質量%濃度までの溶液を使用することにより、蒸留すべきXDAの量の7倍量が生じる。
【0043】
しかしながら、技術的可能性に応じて、断続的に搬出されるXDAのより大きい量は有利であってもよい。
【0044】
副生成物のより大きい堆積量の場合には、一定数のサイクル後に、蒸留されたXDAの少なくとも少量を溶剤として使用することが必要とされうる。
【0045】
しかしながらすべての場合において、溶剤を使用した場合又は精製されたXDAのみを使用した場合よりも、蒸留コストは何倍も少なくなる。
【0046】
相当するキシリレンジアミン(o−、m−又はp−キシリレンジアミン)へのフタロジニトリルの水素化のために、溶剤、特に好ましくはアンモニアを好ましくは液体の形で導入する。
【0047】
これに関して、新鮮な供給量におけるジニトリルとアンモニアとの質量比は、一般に1:0.15〜1:15、好ましくは1:0.5〜1:10、特に好ましくは1:1〜1:5である。
【0048】
水素化のために、この反応に関して当業者に公知の触媒及び反応器(例えば固定床運転法又は懸濁運転法)並びに方法(連続的、半連続的(セミバッチ式)、非連続的(バッチ式))を用いることができる。
【0049】
触媒固定床運転方式の場合、アップフロー方式(Sumpffahrweise)もダウンフロー方式(Rieselfahrweise)も可能である。ダウンフロー方式は有利である。
【0050】
水素化反応器は、シングルパスで(geradem Durchgang)運転することができる。二者択一的には、さらに循環運転方式が可能であり、その際、反応器搬出物の一部を反応器入口に返送する。これによって、反応溶液の最適な希釈が達成され、これは選択率において有利に作用する。特に、循環流は、外部熱交換器を用いて単純かつコスト削減的方法で冷却することができ、これにより反応熱を排出することができる。反応器は、断熱式に運転されてもよく、その際、反応溶液の温度上昇は冷却された循環流により制限されうる。この場合、反応器は冷却される必要がないため、単純かつコスト削減的な構造様式が可能である。代替物は冷却された管束型反応器である。
【0051】
触媒として、技術水準から公知の不均一系触媒を、芳香族ニトリルの水素化のために使用することができる。
【0052】
コバルト及び/又はニッケル及び/又は鉄を完全触媒としてか又は不活性担体上に含む触媒は有利である。
【0053】
適した触媒は、たとえばラネーニッケル、ラネーコバルト、Co−完全触媒、担体上のチタンドープコバルト(JP-A-2002 205980)、SiO−担体上のNi(WO-A-2000/046179)、SiO−担体上のCo/Ti/Pd(CN-A-1 285 343, CN-A-1 285 236)及び二酸化ジルコニウム−担体上のニッケル及び/又はコバルト(EP-A1-1 262 232)である。
【0054】
特に好ましい触媒は、EP-A1-742 045(BASF AG)で開示可能なコバルト−完全触媒であり、この場合、これはMn、P及びアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)でドープされている。これらの触媒の触媒活性材料は、水素での還元前に55〜98質量%、特に75〜95質量%のコバルト、0.2〜15質量%のリン、0.2〜15質量%のマンガン及び0.05〜5質量%のアルカリ金属、特にナトリウムから構成され、それぞれ酸化物として換算する。
【0055】
水素化の反応温度は、一般に40〜150℃、好ましくは40〜120℃である。
【0056】
絶対圧は、水素化の際に一般に40〜250bar、好ましくは100〜210barである。
【0057】
XDAの単離:
水素化後に、場合によっては使用されたアンモニアを留去する。XDAの一部(好ましくは、導入されるPDNに相当する量)を場合によっては搬出し、かつ精製に導く。残りの量は再度、溶剤として使用する。
【0058】
好ましくは、キシリレンジアミンの精製は、塔頂を介しての低沸点副生成物の留去によって、及び塔底を介しての高沸点不純物の蒸留分離によって実施される。
【0059】
特に好ましくは、水素化の後に場合によりアンモニア並びに場合により低沸点副生成物を塔頂を介して留去し、かつその後に、高沸点不純物をキシリレンジアミンから蒸留分離によって塔底を介して除去する運転方式である。
【0060】
特別な実施態様において、低沸点副生成物及び高沸点副生成物の除去を側留塔又は隔壁塔内で行うこともでき、その際、純粋なキシリレンジアミンは、液体又はガス状の側留を介して得られる。
【0061】
所望の純度に応じて、生成物(XDA)は付加的に有機溶剤、有利に脂肪族炭化水素、特に脂環式炭化水素、殊にシクロヘキサン又はメチルシクロヘキサンを用いて抽出される。これらの抽出による精製は、例えばDE−A−1074592にしたがって実施することができる。
【0062】
MXDAの水素化は、たとえば図1による装置において実施することができる。MXDA又は粗−MXDA(流[2])を撹拌容器中に予め導入し、かつ加熱する。IPDN(流[1])を撹拌下に導入する。MXDA中のIPDNの15質量%溶液が得られる。この溶液(流[3])は、その後に連続的にアンモニア(流[4])と混合され、かつ新鮮な水素(流[5])及び場合によっては循環水素(流[9])と一緒に、熱交換器W300中で予め加熱し、かつ水素化反応器C300に導く。ここで、MXDAへの接触水素化が実施され、その際、装填量及び温度は、完全な反応を達成する程度に調節する。反応器搬出物を冷却し、かつ高圧分離装置B301中でガスと分離する。このガスは、圧縮機V300を用いて循環中に導き(流[9])、かつその一部を搬出し(流[12])、不活性物の堆積を回避する。B301からの液相は、部分的に循環中に導くことができる(流[6])か又はさらにすべてをK300中で圧力蒸留に導き、その際、アンモニアを液体の形状で返送し(流[12])、かつ、さらに新鮮なアンモニアに代えて流[4]として使用することができる。圧力カラムK300の塔底を介して、粗−MXDAが得られ(流[13])、この場合、これは蒸留条件に応じて、わずかな痕跡量のアンモニアのみを含有する。これをその後に直接的に、かつ他の後処理工程を用いることなく、IPDNの新鮮な装填量を溶解するために、純粋なMXDA(流[2])の代わりに使用することができる。粗−MXDAの一部を蒸留装置に導入することができ、これによって、99質量%を上回る純度を有するMXDAを達成する。これらの純粋なMXDAは、同様に、IPDNを溶解するために使用することができるが、しかしながら好ましくは粗−MXDAを使用し、これによって蒸留コストを少なく保持することができる。
【実施例】
【0063】
例1
70mlの反応器容量を有するアップフロー方式のために適した反応器に、コバルト−完全触媒(Mn、P、Naでドープされたもの)を4mm押出物(Straenge)として装填した。反応器の下部末端に、MXDA中IPDNの15質量%濃度の溶液(60℃)を供給した。水素及びアンモニアは同様に下から導入した。1時間当たり126gのジニトリル−MXDA溶液及び54gのアンモニアを供給する場合には、水素流を20l/h(通常条件下での体積量)ならびに循環流を3.5ml/分に調整した。反応圧は190bar(絶対圧)であった。88%の選択率(使用されたIPDNに対する)で150gまでのIPDNを反応させた後に、得られた粗−MXDAsの15%を搬出した。残りの量は、溶剤としてさらに150gまでのIPDNに使用した。この工程を10回に亘って繰り返した。すべての場合において、IPDNは搬出物中で検出されることはなかった。得られた粗−MXDAsの純度は10回の工程後に89質量%であった。これらは、使用されたIPDNに対して87%の選択率に達する。
【0064】
例2
撹拌容器中で、60℃で断続的にMXDA中15質量%のIPDNの溶液を製造し、かつ中間容器中にポンプでくみあげた。運転開始時に、99質量%を上回る純度を有するMXDAを提供した。この溶液を、高圧ポンプを用いて200barに圧縮し、かつ液体アンモニアと一緒に混合した(1モルのIPDNに対する50モルのNH)。この混合物を70℃に加熱し、かつ水素と一緒に水素化反応器中に導入した。この反応器を、断熱的にダウンフロー方式で、触媒装填量0.3kgIPDN/hで、シングルパスで運転した。反応熱によって増加した反応器中の温度は出口において約100℃であった。反応器搬出物は約14barに放圧し、かつこの圧力でアンモニアを留去し、これを、凝縮後に再度使用した。残りの塔底生成物(=粗−MXDA)すべてについて、さらなる後処理工程を用いることなく、IPDNのさらなる装填量を溶解するために使用し、この場合、これを引き続いて水素化した。この方法において、粗−MXDAは、最終的にこれを精留に導く前に、5回に亘ってIPDNを溶解するために返送した。使用されたIPDNに対する選択率は93%であった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明による水素化を実施するための装置を示す図
【符号の説明】
【0066】
1 IPDN、 2 MXDA、 3 MXDA中のIPDNの溶液、 4 液体アンモニア、 5 新鮮な水素、 6 液相、 9 循環水素、 12 アンモニア、 13 粗−MXDA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不均一系触媒の存在下で、o−、m−又はp−フタロジニトリルを水素化することによって、o−、m−又はp−キシリレンジアミンを製造する方法において、粗キシリレンジアミンの相当する異性体中のフタロジニトリルの溶液を水素化反応器中に導入し、その際、粗キシリレンジアミンが85〜99.7質量%の純度及び0.3〜15質量%の高沸点成分の含量を有することを特徴とする、o−、m−又はp−キシリレンジアミンを製造する方法。
【請求項2】
イソフタロジニトリルの水素化によってメタ−キシリレンジアミンを製造するための、請求項1記載の方法。
【請求項3】
フタロジニトリルの7.5〜25質量%濃度の溶液を使用する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
フタロジニトリルの溶液を40〜120℃の温度で製造する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
フタロジニトリルの溶液を、1〜20barの絶対圧で製造する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
水素化を、他の溶剤の不在下で実施する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
水素化を、アンモニアの存在下で実施する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
水素化を、40〜150℃の温度で実施する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
溶剤として使用された粗キシリレンジアミンが、89〜99.5質量%の純度及び0.5〜11質量%の高沸点成分の含量を有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
溶剤として使用された粗キシリレンジアミンが、フタロジニトリルの水素化によって得られる、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
溶剤として使用された粗キシリレンジアミンが、0.01〜2質量%の低沸点成分の含量及び0〜5質量%のアンモニア含量を有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
連続的に実施する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
反応器搬出物の一部を、液体循環流として連続的に反応器入口に返送する(循環方式)、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
水素化を、完全触媒として又は不活性担体上のNi、Co及び/又はFeを含む触媒上で実施する、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
水素化を、マンガンでドープされたコバルト完全触媒上で実施する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
水素化後に、場合によってはアンモニア及び場合によっては低沸点副生成物を、塔頂を介して留去し、かつ得られた粗キシリレンジアミンの一部を方法において使用されるフタロジニトリルの溶液を製造するために使用する、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
水素化後に、場合によりアンモニア及び場合により低沸点副生成物を、塔頂を介して留去し、かつ、高沸点不純物を、塔底を介して蒸留分離することにより、キシリレンジアミンの精製を実施する、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
キシリレンジアミンを蒸留の後に後精製のために、有機溶剤を用いて抽出する、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
抽出のために、シクロヘキサン又はメチルシクロヘキサンを使用する、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−508909(P2009−508909A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531677(P2008−531677)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066342
【国際公開番号】WO2007/033932
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】