説明

キッチンカウンターの製造方法およびその製造方法により得られたキッチンカウンター

【課題】カウンターに形成された開口部にシンクを作業性よく取り付けでき、かつ、上記シンクと開口部との接合部が意匠性よく目地仕上げされたキッチンカウンターの製造方法、およびキッチンカウンターを提供する。
【解決手段】シンク2はフランジ部21を有し、該フランジ部21の周縁には、床面に対して略垂直に延び、かつ、貫通孔23が設けられた折り返し垂下片22が周設され、上記シンク2はカウンター1に開設された開口部14に嵌入されるとともに、該開口部14を形成する内周縁15と上記折り返し垂下片22とを上記貫通孔23のシンク2側を通気性素材で塞いだ状態で隙間を介して保持し、該隙間に接合樹脂を注入、硬化させ、形成された接合部の一部が目地51を構成するようにされたキッチンカウンターAの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はシステムキッチン等に設置されるキッチンカウンターに関し、詳しくは、シンクをカウンターに意匠性よく取り付けることのできるキッチンカウンターの製造方法およびそれにより得られたキッチンカウンターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、システムキッチン等で使用されるキッチンカウンターとしては、カウンターに形成された開口部近傍の裏面に、シンクの外周縁に形成されたフランジ部を下方から重ね合わせて接着剤あるいはボルト等の固着手段を用いて水密的に取り付けられた構造のものが知られている。
【0003】
また、上記以外に、カウンターに開口された開口部に、床面に対し略垂直に延びる折り返し片を周設したフランジ部を有するシンクを嵌入させるとともに、上記開口部近傍の裏面に周設された桟木と上記折り返し片との間の隙間にコーキング剤を充填、固化させ、この充填層を接合部とする構成のキッチンカウンターも知られている。
【0004】
例えば、特開2008−156939号公報には、人造大理石からなるカウンターに開口部を形成するとともに、該開口部近傍の裏面に桟木を周設し、床面に対し略垂直に延びる折り返し片が周設されたフランジ部を有するシンクを接合部を介して上記開口部の内周縁に固着させてなるキッチンカウンターが開示されている。
【0005】
すなわち、特開2008−156939号公報においては、上記開口部とシンクとの接合部は、上記開口部の内周縁に上記折り返し片を対向させ、上記カウンターとシンクとの表面側を整合させるとともに、隙間を介した状態で保持し、その状態で、上記桟木とシンクの裏面側とで形成された空間に硬質接着剤を注入することにより形成されると記載されている。ここで、上記接合部の一部は上記隙間の表面側に露出して目地を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−156939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したようにカウンターに形成された開口部に、隙間を介して嵌入されるシンクの周囲には床面に対し略垂直に延びる折り返し片が設けられているが、この折り返し片には、シンクを容易に移動して作業効率を高めるように組立作業上の利便性から貫通孔を設けることが多い。
【0008】
しかしながら、従来の技術によれば、硬質接着剤を注入して接合部を形成する際、硬質接着剤が上記貫通孔から漏れ出して、ロスとなり、組立コストが上がるという問題がある。さらに漏出した硬質接着剤が硬化するとき発熱するため、その発熱により折り返し片が加熱されて均一な硬化が妨げられ、接合境界面が不連続となり、空隙やひずみが発生して接着力が低下するという問題も生じる。
【0009】
本願発明は上記背景技術に鑑みてなしたものであり、その目的は、カウンターに形成された開口部にシンクを作業性よく取り付けることができるとともに、上記シンクと開口部との接合部を意匠性よく目地仕上げできるキッチンカウンターの製造方法およびそれにより得られたキッチンカウンターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明では、シンクとカウンターとからなるキッチンカウンターの製造方法であって、フランジ部を有し、該フランジ部の周縁には、床面に対して略垂直に延び、かつ、貫通孔が設けられた折り返し垂下片が周設されシンクにおいて、該シンクはカウンターに開設された開口部に嵌入されるとともに、該開口部を形成する内周縁と上記折り返し垂下片とを上記貫通孔のシンク側を通気性素材で塞いだ状態で隙間を介して保持し、該隙間に接合樹脂を注入、硬化させ、形成された接合部の一部が目地を構成するようにされたことを特徴としている。
【0011】
なお、本願発明におけるキッチンカウンターは、カウンターが通常備える水洗蛇口やコンロ、カウンター下方に配設される収納部、該収納部に内設される配管等についての図示、説明は省略されたものとする。
【0012】
本願請求項2に記載の発明では、シンクとカウンターとからなるキッチンカウンターであって、フランジ部を有し、該フランジ部の周縁には、床面に対して略垂直に延び、かつ、貫通孔が設けられた折り返し垂下片が周設されたシンクにおいて、該シンクはカウンターに開設された開口部に嵌入されるとともに、該開口部を形成する内周縁と上記折り返し垂下片とを上記貫通孔のシンク側を通気性素材で塞いだ状態で隙間を介して保持し、該隙間に接合樹脂を注入、硬化させ、形成された接合部の一部が目地を構成するようにされたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本願請求項1記載の発明に係るキッチンカウンターの製造方法においては、該開口部を形成する内周縁と上記折り返し垂下片とを上記貫通孔のシンク側を通気性素材で塞いだ状態で隙間を介して保持し、該隙間に接合樹脂を注入、硬化させるため、接合樹脂が上記貫通孔から折り返し垂下片の裏面側に漏れ出すことを防いで接合樹脂の無駄な消費を防ぐことができる。
【0014】
また、加熱硬化するときに自己発熱によって生じるガス類が通気性素材、例えば、通気性不織布からなる通気性テープから貫通孔を経て折り返し垂下片の裏面側に拡散して抜けるため、接合樹脂の接合境界面において気泡により空隙やひずみが発生することを防いて均一に硬化し、開口部の内周縁と折り返し垂下片とをしっかりと接合させることができる。
【0015】
さらに、上記貫通孔の中にも接合樹脂が隙間なく、かつ、気泡等を生じることなく充填されるため、接合樹脂の硬化後にはアンカー効果が奏され、よりシンクとカウンターとの接合強度を高めることができる。
【0016】
本願請求項2記載の発明に係るキッチンカウンターにおいては、シンクのフランジ部とカウンターのカウンタートップとの間に接合樹脂が空隙やひずみが生じることなく均一に充填され、硬化しているため、シンクとカウンターとがしっかりと接合されるとともに、硬化した接合部の一部が硬質の目地として現出し、意匠性に優れたキッチンカウンターを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願発明のキッチンカウンターの製造方法の構成を模式的に示す分解斜視図。
【図2】図1に示すシンクをカウンターの開口部に嵌入した状態を上下逆にして示す部分拡大断面図。
【図3】図2における第1接合層の上部に第2接合層を形成した状態を示す部分断面拡大図である。
【図4】本願発明にかかるキッチンカウンターを示す外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本願発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本願発明のキッチンカウンターの製造方法の構成を模式的に示す分解斜視図である。図1に示すように、本実施形態にかかるキッチンカウンターは、耐熱性の樹脂で成型された人造大理石からなるカウンター1と絞り成型されたステンレススティール製のシンク2とから構成される。
【0019】
上記カウンター1はカウンタートップ11を構成するとともに、その手前側縁は垂下し、エプロン部12を形成し、後方側縁は立ち上がってバックガード13が形成され、略中央には平面視略長方形で内角が丸くされた開口部14が設けられている。
【0020】
上記開口部14近傍の裏面には、合板やパーチクルボード、角材等の木製あるいは合成樹脂製の桟木3が周設されている。桟木3は、断面矩形に形成され、開口部14の内周縁15から一定の間隔を空けて、その全周に亘って固着されている。
【0021】
一方、上方に開口するシンク2の開口外周部の上端縁には外方に向けて延出するフランジ部21が形成され、このフランジ部21の外周縁からは、床面に対し略垂直に延びる折り返し垂下片22が周設されている。この折り返し垂下片22には、シンク2を図1に白抜き矢印で示すように、嵌入する際、あるいは移動する際等に、容易に作業できるように保持用の貫通孔23が開設されている。また、シンク2の底面の中央後方側には、排水口24が設けられている。
【0022】
図2は、図1におけるシンク2をカウンター1の開口部14に嵌入した状態を上下逆にして示す部分拡大断面図である。図2においては、図示しない台座上に平面視略矩形状に形成されたシリコンゴム治具4を載置し、その上にカウンター1が上下反転して置かれている。さらに、シンク2も上下反転してそのフランジ部21が上記シリコンゴム治具4の上に置かれ、その折り返し垂下片22が開口部14を形成する内周縁15と一定の隙間を保持するように整合して載置される。この場合、シンク2の保持は通常用いられる技術手段で良く詳細な説明は省略する。
【0023】
このとき、上記内周縁15と折り返し垂下片22との間の隙間が第1接合樹脂を注入する空間となる。この注入空間に第1接合樹脂を注入する際、本願発明の製造方法においては、折り返し垂下片22の裏面側に通気性素材、例えば、通気性不織布からなる通気性テープ6を貼着して上記貫通孔23を塞いだ後、第1接合樹脂を注入する。注入された第1接合樹脂は、常温硬化した後、注入空間内で第1接合層5を形成する。
【0024】
このように、通気性テープ6を貼着することによって、第1接合樹脂が貫通孔23から折り返し垂下片22の裏面側へ漏出することを防ぐことができるため、第1接合樹脂の無駄な使用を抑えることができる。また、加熱硬化するときに自己発熱によって生じるガス類は、貫通孔23から通気性テープ6を経て折り返し垂下片22の裏面側に拡散して抜けるため気泡が生じることなく、第1接合樹脂の接合境界面における空隙やひずみの発生を防止できる。
【0025】
また、上記貫通孔23に充填された後、通気性テープ6に含浸、硬化した第1接合樹脂は第1接合層5との間でアンカー効果を発揮して、さらにしっかりと、開口部14の内周縁15と折り返し垂下片22とを接合することができる。
【0026】
上記第1接合樹脂の充填空間の幅、すなわち、内周縁15と折り返し垂下片22との間は、意匠性および成型誤差の観点から0.5mm〜5.0mm程度とすることが好ましく、より好ましくは、2.0mm程度である。このようにすることによって、カウンター1とシンク2との接合強度を阻害することなく、また、意匠性にも優れたものとなる。
【0027】
上記第1接合樹脂としては、例えば、主剤と硬化剤とからなる2液常温硬化型の樹脂組成物系接合樹脂が好適に用いられ、主剤としては、エポキシ樹脂系やウレタン樹脂系が、また硬化剤としては、主剤に応じてポリアミド系やイソシアネート系硬化剤が用いられる。このような2液常温硬化型の接合樹脂は硬化反応が進んで完全に硬化すると、硬質となり、シリコンゴム治具4を取り除いた後、意匠性に優れたきれいな目地が形成される。
【0028】
ついで、本実施形態においては、上記第1接合樹脂を補強するために、さらに第2接合樹脂を注入する。ここで、第2接合樹脂は、第1接合樹脂が完全硬化する前に第1接合層5の上に注入される。
【0029】
図3は、上記のようにして第2図に示す第1接合層5の上部に第2接合層7を形成した状態を示す部分断面拡大図である。前記第2接合樹脂は図示するように、桟木3のシンク側の側面全体に接触するような量まで注入することが好ましい。第1接合樹脂、第2接合樹脂が完全に硬化した後、シリコンゴム治具4は取り外される。このようにして第1接合層5を第2接合層7によって補強することにより、カウンター1とシンク2との接合強度をさらに高めることができる。また、第1接合層5のシリコンゴム治具4との接触面が、硬質の目地51として意匠性よく現出する。
【0030】
第2接合樹脂としては、上記第1接合樹脂と同様に、例えば、主剤と硬化剤とからなる2液常温硬化型の樹脂組成物系接合樹脂が好適に用いられ、主剤としては、エポキシ樹脂系やウレタン樹脂系が、また硬化剤としては、主剤に応じてポリアミド系やイソシアネート系硬化剤が用いられる。
【0031】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂やウレタン変成エポキシ樹脂等のように変成させたエポキシ樹脂を用いてもよい。また、ウレタン樹脂としては、無黄変や難黄変タイプ等のウレタン樹脂を用いてもよい。
【0032】
図4は、上記のようにしてカウンター1とシンク2とを接合して得られた本願発明にかかるキッチンカウンターAを示す外観斜視図である。図4に示すように、本願発明にかかるキッチンカウンターの製造方法を用いることにより、シンク2のフランジ部21とカウンター1のカウンタートップ11との間に硬質の目地51が現出した意匠性に優れたキッチンカウンターAを得ることができる。
【0033】
なお、上記実施形態においては、人造大理石からなるカウンター1とステンレススティール製のシンク2とからなるキッチンカウンターについて説明したが、これに限定されずカウンター1として、他のプラスチック素材からなるものや、天然大理石を用いてもよい。また、第1接合樹脂、第2接合樹脂として2液常温硬化型の樹脂組成物からなる接合樹脂を用いた例について述べたが、これに限られず、常温硬化型の1液性接合樹脂を用いてもよい。このように、本願発明に係るキッチンカウンターの製造方法は種々設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、いずれの場合も本願発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0034】
A 本願発明にかかるキッチンカウンター
1 カウンター
11 カウンタートップ
12 エプロン部
13 バックガード
14 開口部
15 内周縁
2 シンク
21 フランジ部
22 折り返し垂下片
23 貫通孔
24 排水口
3 桟木
4 シリコンゴム治具
5 第1接合層
51 目地
6 通気性テープ
7 第2接合層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンクとカウンターとからなるキッチンカウンターの製造方法であって、フランジ部を有し、該フランジ部の周縁には、床面に対して略垂直に延び、かつ、貫通孔が設けられた折り返し垂下片が周設されたシンクにおいて、該シンクはカウンターに開設された開口部に嵌入されるとともに、該開口部を形成する内周縁と上記折り返し垂下片とを上記貫通孔のシンク側を通気性素材で塞いだ状態で隙間を介して保持し、該隙間に接合樹脂を注入、硬化させ、形成された接合部の一部が目地を構成するようにされたキッチンカウンターの製造方法。
【請求項2】
シンクとカウンターとからなるキッチンカウンターであって、フランジ部を有し、該フランジ部の周縁には、床面に対して略垂直に延び、かつ、貫通孔が設けられた折り返し垂下片が周設されたシンクにおいて、該シンクはカウンターに開設された開口部に嵌入されるとともに、該開口部を形成する内周縁と上記折り返し垂下片とを上記貫通孔のシンク側を通気性素材で塞いだ状態で隙間を介して保持し、該隙間に接合樹脂を注入、硬化させ、形成された接合部の一部が目地を構成するようにされたキッチンカウンター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−174432(P2010−174432A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14901(P2009−14901)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】