説明

キッチンペーパー及びキッチンペーパー製品

【課題】吸液性に優れるキッチンペーパーを提供する。
【解決手段】2枚のシートが積層されたキッチンペーパーであって、
親水性繊維を90%以上含むクレープ紙と、親水性繊維を40%以上含みエアレイド法による不織布シートとが、それらに付与されたマクロエンボスの天部に付与された接着剤を介してネステッド形式で積層一体化され、
そのマクロエンボスのエンボス面積率がキッチンペーパーの片面の面積に対して5.0〜40%であり、かつ、少なくともクレープ紙に付与されたマクロエンボスは、その単位マクロエンボスのエンボス天部面積が1.75〜9.0mm2、エンボス深さが0.9〜1.5mmであるキッチンペーパーにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃用途、食材に触れる用途に用いられるキッチンペーパー及びキッチンペーパー製品に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチンペーパーは、台所周りの拭き掃除、調理器具の拭取りなどの清掃用途、食品の包装、煮物の落とし蓋、鮮魚等のドリップ吸収材、水きり、油漉し、揚げ物の過剰油分の吸収等の食材に直接触れる用途に用いられるなど、その用途は多岐にわたるところであるが、吸液性と衛生的安全性、衛生的な意匠性が本質的に求められる。
その上で、上述の用途の一つとして挙げられる揚げ物の過剰油分の吸収用途においては、揚げ物の衣などを傷つけない、揚げ物からの蒸気や油によって揚げ物がベタついたりしないように素早く油や水を吸収或いは発散させるとともに、その一旦吸収した油等が揚げ物に戻らないようにする機能が求められる。
【0003】
従来、キッチンペーパーの構成としては、エンボス加工を施したクレープ紙からなるシートを適宜枚数積層して形成され、シート繊維間の空隙による毛細管現象を主たる吸液機構として各シートのエンボス間の空隙に水分、油分等を取り込み保持するように構成したもの、不織布シートのみで形成され、不織布繊維間の空隙に水分、油分等を取り込み保持するようにしたものが知られる。
しかし、これら従来のクレープ紙からなるキッチンペーパー、不織布シートからなるキッチンペーパーのいずれも、各シートの性質に起因して用途に対する適、不適がはっきりとしており、上記多岐にわたる用途の何れかにおいて欠点を有している。
例えば、上述のクレープ紙を積層したものは、不織布シートのものと比較して、キッチンペーパー全体としての厚みがなく、また、また、製造工程に起因する一定方向への繊維の高い配向性により液体の拡散性には優れるものの、繊維密度が高いために吸液速度が遅く、吸液量も少ないという欠点がある。さらに、紙自体の厚さがなく、厚み方向のクッション性が不織布シートのものより劣ることから、特に、上述の揚げ物の過剰油分の吸収用途に用いた場合、揚げ物の衣が剥がれたり、揚げ物からの蒸気や油によって揚げ物がベタついたりすることがある。
また、キッチンペーパーでは、ロール形態の製品とされることがあり、この場合、適宜配置されたミシン目線で使用者が裁断して使用される。このミシン目線での裁断については、クレープ紙が不織布シートを比較すると紙力が高くなる傾向にあり、クレープ紙同士が積層されたキッチンペーパーでは、不織布シートを用いたものよりミシン目強度が高くなる傾向にある。このため、不織布シートのものと比較して、消費者が使用時に裁断し難いことがあった。このミシン目線での裁断性の改善については、単純にクレープ紙の紙力を落とすことも可能ではあるが、強度のない脆いキッチンペーパーとなってしまい、その他の多岐にわたる用途において不具合が生じやすくなる。
【0004】
他方、クレープ紙は、表面に細かな皺(クレープ)を有する。この皺は、キッチンペーパーとしたときに、吸液性、拭取り性において重要に機能するため、必要なものであるが、不織布シートのものと比較するとこの皺に起因して衛生的な印象に大きく作用する白色度を高め難く、表面の滑らかさを得られ難いという性質がある。
【0005】
一方、不織布シートのみからなるキッチンペーパーは、不織布シートの製法に起因して、繊維密度が粗であり繊維間の空隙が多いために、吸液速度は極めて速いものの、一旦吸液した液体の保持性についてはクレープ紙を積層したキッチンペーパーのもの比較して極めて劣り、この性質に起因して液体の拡散性についても、繊維が一定方向に強く配向しているクレープ紙と比較すると劣る。
また、不織布シートのみからなるキッチンペーパーは、繊維密度が粗であり繊維間の空隙が多いために、乾燥状態においては乾燥した塵や埃を空隙内にとりこみやすく、この点クレープ紙からなるものと比較すると優れているが、こぼしたコップの水や汚液の吸収用途、拭取り用途等の清掃用途については上記水分保持性が悪く液の裏抜け、液の戻りが早く適していない。また、水拭き用途においても、繊維が密で一定方向に強く配向するクレープ紙と比較すると、好適な湿潤状態を維持し難く不十分なものであった。
さらに、不織布シートのみからなるキッチンペーパーは、製法に起因して厚み方向の繊維分散が必然的にクレープ紙と比較すると多くなるため、紙厚を薄くすることができない。さらに、不織布シートのみからなるキッチンペーパーは、その不織布シートが厚みがありクッション性も高いために、白色度については良好なものとすることができるが、エンボス(型押し)がしっかりと入らずエンボスデザインを施して衛生的な印象を与える意匠性を高めることが難しい。
また、上述のとおり繊維密度が粗となるため、表面の滑らかさの印象についてはクレープ紙と比較すると劣る。
さらに、不織布シートのみのキッチンペーパーは、ミシン目線により裁断しやすいという利点があるものの、意図しない切断を防止すべくミシン目線のタイ部を長くとる必要があり、使用時(裁断時)にタイ部分であったミシン目の切れ残り部分が毛羽立ち、見栄えが悪いという欠点がある。
【0006】
ここで、本出願人は、非エンボスの不織布シートとエンボス付与したクレープ紙を積層したキッチンペーパーを開発した(下記特許文献2)。
しかし、このキッチンペーパーは、各面において不織布シートとクレープ紙の機能を有するものであり、優れるものであるが各効果の面における、より有機的な機能向上がなく不十分な点が多く、また、製造時において積層後にワインダーでのシートを巻き取る際に不織布シートが断裂することがあり、加工適性の面で難があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−208501
【特許文献2】特開2008−137241
【特許文献3】特開2005−288764
【特許文献4】実開S49−124867
【特許文献5】特開2007−44539
【特許文献6】特開2007−21168
【特許文献7】特開2006−95263
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は不織布シート及びクレープ紙の双方の利点を生かしつつ、それらの欠点を十分に補い、また、製造問題についても改善され、もって、製造安定性、使用時の裁断性、吸液速度、液保持性、見栄えに優れるキッチンペーパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明及び作用効果は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
2枚のシートが積層されたキッチンペーパーであって、
親水性繊維を90%以上含むクレープ紙と、親水性繊維を40%以上含みエアレイド法による不織布シートとが、それらに付与されたマクロエンボスの天部に付与された接着剤を介してネステッド形式で積層一体化され、
そのマクロエンボスのエンボス面積率がキッチンペーパーの片面の面積に対して5.0〜40%であり、かつ、少なくともクレープ紙に付与されたマクロエンボスは、その単位マクロエンボスのエンボス天部面積が1.75〜9.0mm2、エンボス深さが0.9〜1.5mmであることを特徴とするキッチンペーパー。
【0010】
<請求項2記載の発明>
クレープ紙に、前記マクロエンボスとともに、単位エンボスの面積が0.04〜1.0mm2、エンボス深さ0.1〜0.8mmのマイクロエンボスがキッチンペーパーの片面の面積に対して5.0〜40%付与されており、かつ、不織布シートにはマイクロエンボスが付与されていない請求項1記載のキッチンペーパー。
【0011】
<請求項3記載の発明>
前記キッチンペーパーは、クレープ紙面のクレープ高低差が60〜70μmであり、クレープ頂点間距離が35〜45μmであり、かつ、8枚重ねでクレープ紙側から測定した白色度が77〜98%である請求項1又は2記載のキッチンペーパー。
【0012】
<請求項4記載の発明>
不織布シートを構成する親水性繊維は、繊維長1.0〜12.0mmのパルプ繊維である請求項1〜3の何れか1項に記載のキッチンペーパー。
【0013】
<請求項5記載の発明>
クレープ紙は、非エンボス部分の厚さが140〜250μmであり、不織布シートの非エンボス部分の厚さが500〜1000μmである請求項1〜4の何れか1項に記載のキッチンペーパー。
【0014】
<請求項6記載の発明>
キッチンペーパーは、切断用のミシン目線を有し、そのミシン目線のカットタイ比(カット部分:タイ部分)が5:1〜8:1であるとともにタイ部分が0.75〜1.25mmであり、かつ、ミシン目強度が200〜500cNである請求項1〜5の何れか1項に記載のキッチンペーパー。
【0015】
<請求項7記載の発明>
水平台上に載置したろ紙の上に、さらに前記不織布シートを上方、前記クレープ紙を下方となるようにして重ね、前記不織布シート側から1000μLのサラダ油を滴下したのち4秒経過後に、前記ろ紙に移行したサラダ油の重量で規定される油の裏抜け量が0.25g以下である請求項1〜6の何れか1項に記載のキッチンペーパー。
【0016】
<請求項8記載の発明>
水平台上に載置したろ紙の上に、さらに前記不織布シートを上方、前記クレープ紙を下方となるようにして重ね、前記不織布シート側から1000μLのサラダ油を滴下したのち4秒経過後に、さらに、前記不織布シート側に別のろ紙を重ね、その上から底面平滑、底面面積56cm2、重量70gの分銅を載置し、1分間経過後において前記別のろ紙に移行したサラダ油の重量で規定される油の戻り量が0.7g以下である請求項1〜7の何れか1項に記載のキッチンペーパー。
【0017】
<請求項9記載の発明>
請求項1〜8の何れか1項に記載のキッチンペーパーが、帯状とされ、そのクレープ紙側面が巻取り外面、不織布シート側が巻取り内面として巻取られていることを特徴とするキッチンペーパー製品。
【0018】
(作用効果)
本発明のキッチンペーパーは、揚げ物の過剰油分の吸収用途においては、不織布シート面に揚げ物を載置して使用すると、不織布シートは、バルキーで繊維間空隙が大きいため、粘度が高い油でも比較的容易に繊維内に取り込むことができ、もって吸油速度の点で優れる。特に、エアレイド法による不織布シート(以下、エアレイド不織布シートということがある)は、その製造方法に起因して、その構成繊維の先端部が、表面及びその近傍に無数存在しているとともに、その構成繊維が三次元的にランダムな状態で分散し、さらにシートの厚さ方向に延在する繊維間空隙が多く形成されているため、水よりも粘度の高い油に対しても良好な吸収速度を示し、油分が迅速に取り込まれる。
【0019】
さらに、揚げ物の過剰油分の油取り用途として使用するにあたっては、不織布シート上に揚げ物をおいて油取りとを行なうようにすると、エアレイド法による不織布シートがクレープ紙と比較して厚さがあり繊維密度も低いことから、クッション性や通気性に優れ、揚げ物が載置されたときに、揚げ物の衣などを傷つけることなく揚げ物を受け止めることができる。
【0020】
不織布シートにおいて吸収された液や通気した蒸気の一部は、不織布シートと積層されるクレープ紙により保持され、油や蒸気(水滴)が再度揚げ物に付着してべたつくことがない。
特に、本発明のキッチンペーパーでは、エアレイド法による不織布シートにも比較的大きいマクロエンボスが付与されている。エアレイド法による不織布シートのクッション性が高いために揚げ物を載置しても、そのエンボスは潰れがたい。そして、この比較的大きいマクロエンボスによる表面の凹凸の存在によって、揚げ物自体との接触面積が低くなるとともに、揚げ物からの油分との接触範囲が広くなり、もって繊維間の空隙が多いことに起因する吸液速度の早さがより向上され、瞬時に油を吸収することができる。その上、揚げ物から放出される蒸気などもエンボス凹部及び当該繊維間空隙の多さによって発散性がより一層高まる。
【0021】
反対に、揚げ物の過剰油分の吸収用途において、クレープ紙面に揚げ物を載置して使用すると、クレープ紙による高い液体の拡散性により、揚げ物から油分が面方向に広範に拡散し、その後に浸透して不織布シート側に移行する。これにより、不織布シート面に揚げ物を載置する場合と比較すると、所定部分から短時間的に流出する粘度の低い油分や水分混合の液体の吸液量が高まる傾向にある。従って、本発明のキッチンペーパーにおいては、例えば、フライ等の衣が剥がれやすい揚げ物を不織布シート面、素揚げ等の衣がない揚げ物についてはクレープ紙面を使用するなど揚げ物(食材)の性質や調理法に応じて使い分けることも可能となる。もっとも、衣が剥がれやすい揚げ物についても食材からの流出液量を考慮して吸液量を重視してクレープ紙面を使用してもよいことはいうまでもない。
【0022】
さらに、本発明では、特に親水性繊維を40%以上含む不織布シートであると、種々の点においてキッチンペーパーの各用途において効果が高まることを知見した。
従来の不織布シートのみのキッチンペーパーでは、不織布シート面においては油と比較して水分の保持性が十分ではなく、水分の吸収保持・水拭き用途等の清掃用途においては十分なものではなかったが、本願発明では親水性繊維を40%以上含むこととすることで、この水分との親和性が不織布シート面において向上され不織布シート面における清掃用途、水分の保持性が改善される。
すなわち、水分は油分と比較して粘度が低い傾向にあり、不織布シートの繊維間空隙の存在に起因する浸透現象によって一旦空隙内に浸透してもそれが保持されがたい。油分では粘度の高さにより空隙内へ止まる作用がある。
【0023】
本発明では、不織布シートの繊維間空隙に起因する浸透と、その浸透された水分と繊維自体の水分との親和性により吸収された水分が空隙内に保持されやすい。その繊維の親水性による水分保持性は短時間であるものの、本発明においてはクレープ紙と積層されているため、そのクレープ紙の機能によってクレープ紙及びクレープ紙と不織布シートとの間の空隙に効果的に保持されるようになる。
【0024】
なお、これらの吸水、吸油等の吸液性の改善効果については、下記に詳述するがエンボス形態がネステッド形式であることとの相乗効果がある。
本発明のキッチンペーパーでは、不織布シート面にマクロエンボスが付与されていることから、塵などの固形物の掻き取り性能が向上され、これによっても清掃用途における対応性が向上されている。
【0025】
他方、本発明のキッチンペーパーは、ネステッド形式であり、このネステッド形式は、二枚の積層シートのエンボス天部同士を接着するティップ トゥ ティップ形式(ポイント トゥ ポイント形式とも呼ばれる)や、一方のシートにエンボスを付与し、他方のシートにエンボスを付与しない積層形態と比較すると、シート間が離間している部分が小さい。これにより、上述の不織布シートに親水性繊維を含ませることによる水分の吸収性の高まりと、クレープ紙及びクレープ紙との間の空隙への移行、保持が効果的になされるのである。これは、エンボスの天部同士が接着され、各シートの離間している部分が多くなるティップ トゥ ティップ形式や一方のシートにマクロエンボスを付与し、他方のシートにマクロエンボスを付与しない積層形態では得られ難い利点である。
【0026】
この点をさらに説明すると、従来のマクロエンボスを付与したクレープ紙の同士のキッチンペーパーでは、クレープ紙自体に厚み方向のクッション性がないためにしっかりとしたエンボスが付与され、各シートのエンボス深さと紙厚に依存する大きさの空隙が形成される(図5参照)。しかし、本発明のキッチンペーパーのエアレイド不織布シートとクレープ紙とをネステッド形式の構成とすると、エアレイド不織布シートのクッション性により、エアレイド不織布シートのエンボス付与時の圧縮後の膨張及びクレープ紙のエンボス天部のエアレイド不織布シート側への入り込みにより、ネステッド形式により本来形成されるべきしっかりとした空隙が形成されず、当該空隙部分にエアレイド不織布シートが入り込むような態様となるために実際の空隙が小さくなる(図2参照)。これにより不織布シートからクレープ紙への素早い液移行か可能となる。
【0027】
さらに、ティップ トゥ ティップ形式は揚げ物を載置した際や拭取り操作など押厚しながら拭取り面に接するような態様では、マクロエンボスが潰れやすく、その空隙間に吸液した液体が再度流出しやすいが、本発明では上述のネステッド形式とすることでそのようなことはない。さらにティップ トゥ ティップ形式の場合、上述のとおりシート間が離れているためエンボスにより形成される空隙が潰れやすい。このため、積層接着面積率を比較的高くする必要がある。このことは、液体の拡散吸収を阻害する要因となる。
【0028】
また、吸水、吸油に関しては、上述のマクロエンボスのネステッド形式とするとともに、クレープ紙にマイクロエンボスを施すことでより、クレープ紙の不織布シート対向面、特に、空隙に対向する部分の面積が広くなり好適である。
【0029】
他方、本発明のキッチンペーパーは、エアレイド法による不織布シートとクレープ紙の双方(以下、不織布シートとクレープ紙の双方をまとめて各シートと言うことがある)にマクロエンボスを付与したことにより、不織布シートのワインダー巻き取り時の破断という製造上の問題が改善される。これは、エンボス付与時にエアレイド不織布シートが圧縮されるため、エアレイド不織布シートにはエンボスロールで潰された分の若干の伸びしろがあり、ワインダー巻き取り時に緩衝機能をエンボス非付与の不織布シートよりも効果的に発揮する。
この機能は、不織布シートに付与されたマクロエンボスの天部には接着剤を付与しないことでより、柔軟となりその伸びしろは顕著になる。
【0030】
さらに、ネステッド形式では、一方のシートのエンボス天部が他方のシートのエンボス底部に入り込む構造のため、シート延在方向の引っ張り強度が弱くなる傾向にあるが、本発明のキッチンペーパーでは、不織布シートの引っ張り強度の弱さが、クレープ紙によって補完されるとともに、エアレイド不織布シートにクッション性があることから、これによってもワインダー巻き取り時の問題が改善される。
【0031】
さらに、クレープ紙にマイクロエンボスを施すと、クレープ紙も伸びやすくなり、一層ワインダーでの巻き取り時の問題が改善される。
また、このようにシート延在方向の引っ張り強度について、不織布シート単層以上、かつ、クレープ紙二枚積層以下とする設計が可能となり、もって、ミシン目線の設計範囲がひろがる。これにより、従来キッチンペーパーにおいて発生していた、不織布シートのキッチンペーパーの裁断時のタイ部の毛羽立ち、及び、クレープ紙積層のキッチンペーパーの裁断し難いといった問題も改善される。
【0032】
他方、本発明のキッチンペーパーでは、クレープ紙とエアレイド不織布シートとがともにマクロエンボスを有し、さらに、それらが積層接着されていることから、厚み感があり、視覚的に不透明で白さを感じるものとなり高級感のある見栄えとなる。
さらに、クレープ紙にマイクロエンボスを施すことでより一層意匠性が高まる。
また、この見た目については、不織布シートにマクロエンボスを付与することにより、不織布シート面においても向上する。
【0033】
さらに、エアレイド不織布シートがクレープ紙と比較してクッション性があるため、ネステッド形式によってエンボス付与後に両者を接着すると、不織布シートがエンボス加工時に若干収縮され、これがクレープ紙と接着されたのちに伸び、これにともなってクレープ紙のクレープや皺が伸びる方向に作用し、クレープ紙側が一見して滑らかな風合いを呈するようになるとともに白色度の向上がなされ、極めて美感に優れたものとなる。
【0034】
白色度の明確な相違は、8枚重ね程度で確実に発現し、一般的な製品形態である、ロール形態、ポップアップ式形態が50枚程度重ねられていることを考慮すれば、商品訴求力の点で極めて有用な効果である。
【0035】
一方、クレープ紙にマイクロエンボスを施すと、しなやかとなり、不織布シートのしなやかさを相殺しなくなりより好ましい。
さらに、本発明のキッチンペーパーでは、それを製品形態とするにあたって、キッチンペーパーを帯状として、そのクレープ紙側面が巻取り外面、不織布シート側が巻取り内面として巻取られていることとすると、マクロエンボス及びマイクロエンボスによる意匠、表面の滑らかさ等において不織布シート面よりも優れるクレープ紙面が視認される外面となる優れた美匠性を呈する製品となる。また、伸びによるワインダーでの製造困難性がより一層の改善がなされる。
【0036】
なお、このような本発明の作用効果は、クレープ紙と不織布シートをマクロエンボスを介してネステッド形式に積層一体化したことともに、もちろん、上記請求項に記載された発明の各欄において規定した数値範囲や素材とも相まってなされるものであり、その規定についても本願発明の上記作用効果を奏するうえで必須の構成である。詳細は下記実施の形態において詳述する。
【0037】
なお、本明細書においては、油、水等の流体をまとめて液と総称することがあり、また、それら液の吸収量、吸収速度、保持性など吸収・保持に関する機能をまとめて吸液性ということがある。
【発明の効果】
【0038】
以上のとおり、本発明によれば、製造安定性、使用時の裁断性、吸液速度、液保持性、見栄えに優れるキッチンペーパーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のキッチンペーパーX1を説明するための斜視図である。
【図2】本発明のキッチンペーパーX1の断面模式図である。
【図3】本発明のキッチンペーパーX1の他の断面模式図である。
【図4】本発明のキッチンペーパー製品の斜視図である。
【図5】従来のクレープ紙をネステッド形式で積層したキッチンペーパーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次いで、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら以下に詳述する。
図1は、本形態のキッチンペーパーX1の説明するための斜視図である。図2は、キッチンペーパーX1の断面を拡大した模式図である、図3は、キッチンペーパーX1の他形態の断面を拡大した模式図である。図4は、ロール形態を採る本発明のキッチンペーパー製品の斜視図である。図5は、従来のクレープ紙同士をネステッド形式で積層したキッチンペーパーの断面を拡大した模式図である。
【0041】
<キッチンペーパーの構造等>
本発明のキッチンペーパーX1は、親水性繊維を含むクレープ紙1と、親水性繊維を含むエアレイド法による不織布シート2とが、それらに付与されたマクロエンボス10,20の天部10t,20tに付与された接着剤30を介してネステッド形式で積層一体化されたものである。
【0042】
そして、そのマクロエンボスのエンボス面積率がキッチンペーパーの片面の面積に対して5.0〜40%であり、かつ、少なくともクレープ紙1に付与されたマクロエンボス10は、その単位マクロエンボス10のエンボス天部面積が1.75〜9.0mm2、エンボス深さDが0.9〜1.5mmとされている。
【0043】
好ましい形態は、図3に示すように、前記ネステッド形式において、クレープ紙1のマクロエンボス10の天部10tのみに付与された接着剤によって積層一体化されたものであり、不織布シート2のマクロエンボス20の天部20tには接着剤30が付与されていない形態である。
【0044】
この好ましい形態は、シートの接着による積層一体化においては、一方のシートに接着剤を付与すれば十分であり、また、不織布シート2よりもクレープ紙1のほうが、繊維が詰まっておりエンボスがしっかりと入ることから天部10tに接着剤30を付与しやすいことに理由である。エアレイド不織布シート2のみでは接着剤をエンボス天部20tに付与できてもクッション性によってクレープ紙1と確実に接着しない場合がある。さらに、不織布シートの繊維密度が粗であるという特徴により接着剤が繊維間に浸透してしまい天部に止まらせ難く、この点からも接着性に難がある。
【0045】
他方、本発明のキッチンペーパーX1は、全体としての坪量(目付量)が55〜110g/m2の範囲にあるのが望ましい。この範囲であると、従来のキッチンペーパーと何ら遜色のない保管性、輸送性を確保しつつ、十分なシートの柔軟性を確保し、また、本発明の詳細な構成、効果を達成できる。
【0046】
なお、このキッチンペーパーX1の紙厚は、本発明のキッチンペーパーX1の構造、すなわちクレープ紙1とエアレイド不織布シート2との積層構造を採る場合には、クレープ紙1の地の紙厚とエンボスを深さDの和と、不織布シート2の地の紙厚とエンボス深さの和、との総和と必ずしも一致しない。これは、エアレイド不織布シート2に大きなクッション性があり、厳密には積層過程において、不織布シート2の地の部分にクレープ紙1のエンボス天部10tが食い込むことがあるためである(図2参照)。従って、本発明のキッチンペーパーX1では、クレープ紙1の地の紙厚とエンボス深さDの和と、不織布シート2の地の紙厚とエンボス深さの和、との総和よりもキッチンペーパーX1全体の紙厚さは薄くなる傾向にある。
【0047】
他方、本発明のキッチンペーパーX1は、積層一体化された状態における伸び率が18.0〜30.0%であり、乾燥縦紙力が900〜2200cNであるのが望ましい。この範囲であると、ミシン目線の設計が容易となる。すなわち、ミシン目線形成によって、ワインダー加工時にミシン目線において断紙する問題が防止される。なお、伸び率が30.0%を超えると表面性の悪化及び、歩留まり低下の原因ともなる。これらの数値範囲は、具体的には各クレープ紙及び不織布シートの構成により達成できる。
【0048】
ここで、本発明及び明細書中における坪量(目付量)とは、JIS P 8113に基づいて測定した値を言う。また、紙力及び伸び率は、巾25mm×長さ150mmに裁断し105℃、10分間のキュアリングを行った試験片を用い、ロードセル引張り試験機(例えば、ミネベア株式会社製TG−200N TECHNOGRAPH)のつかみ間隔を100mmとして、試験片1プライをセットし、試験片が破断するときの紙力及び伸び率を測定する。この測定は10回行い、その平均値をもって本発明における紙力及び伸び率とする。
【0049】
また、厚さの測定方法としては、JIS P 8111の条件下で、ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定するものとする。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。なお、厚さは測定を10回行って得られる平均値とする。
【0050】
<エンボス>
他方、本発明のキッチンペーパーX1は、クレープ紙1及び不織布シート2のそれぞれにマクロエンボス10,20が付与されており、それらがネステッド形式で積層一体化されている。また、好ましくは、クレープ紙1にはマイクロエンボスが付与されているのがよい。
【0051】
本形態のキッチンペーパーX1におけるネステッド形式とは、各シート1,2に付与されたマクロエンボス10,20の位置関係が、一方のシートのエンボス底部に対して、他方のシートのエンボス天部が対面して臨む関係にあるものである。
なお、前記天部とは対面するシートからみて接近するように突出する凸部の頂面、前記底部とは対面するシートからみて離間するように凹む凹部の底面である。
【0052】
このネステッド形式では、一方のマクロエンボス10の側壁10wと他方のマクロエンボス20の側壁20wとで空隙が形成される。従って、このネステッド形式では両シート間の距離がティップ トゥ ティップ形式と比較して近く、もって不織布シート側を揚げ物などに接するようにして利用した場合に、不織布シート2の有する吸液速度が発揮されて素早く油分を吸液し、さらにクレープ紙1側で保持するという本発明の作用・効果が効果的に発揮される。
【0053】
また、このネステッド形式の空隙は、一方のマクロエンボスの側壁と他方のマクロエンボスの側壁とで空隙が形成されるため、一般的に各シート面に押圧が加わっても潰れがたい傾向にある反面、シート延在方向の力に対して空隙が潰れやすいことがあるが、本発明のキッチンペーパーX1では、特に、不織布シート2と比較してクレープ紙1が高い引張強度を有し、さらに、エアレイド不織布シート2が三次元的なクッション性を有してシート延在方向に伸びやすい傾向にあることから、これらの相乗効果によって、単純にクレープ紙を二層にしたネステッド形式のキッチンペーパーと比較すれば、清拭時などにキッチンペーパー全体の面に押圧が加わりつつ、シート延在方向に力が加わる使用態様であっても、当該空隙が潰れ難く、清掃用途においても効果的な機能を発揮する。
【0054】
なお、この清掃用途における効果は、クレープ紙面と不織布シート面とで比較すればクレープ紙面を用いた場合に良好であるが、本発明のキッチンペーパーX1では、不織布シート面においても従来不織布シートのみからなるものと比較すると上述のように極めて高い効果を奏する。すなわち、清拭時にも当該空隙4に油分等が効果的に保持されるようになり、不織布シート側から吸液した場合に迅速にシート間空間に移動されるとともに、クレープ紙1において油分が保持されるようになる。
【0055】
ここで、一つの単位マクロエンボスの具体的形状やそれら単位マクロエンボスにより描かれるエンボス模様は、適宜の設計事項である。具体例としては、単位マクロエンボスとしては、正方形や円形のほか、菱形、楕円形、多角形などのドット形状とすることができ、複数の単位マクロエンボスにより描かれるエンボス模様としては、花柄、蔦柄、幾何学模様柄など適宜の模様とすることができ、これにより優れた意匠性とすることができる。
【0056】
各シート1,2における単位マクロエンボスの平面視における面積は、少なくともクレープ紙においては、1.75〜9.0mm2、より好ましくは2.00〜7.50mm2、特に好ましくは2.0〜4.0mm2である。単位マクロエンボスの面積が小さすぎると、シート相互の十分な接着強度を得ることができなくなる。他方、単位マクロエンボスの面積が広すぎると、エンボスによる吸収空間の容積が小さくなるため、十分な吸収能力を得ることができなくなる。
【0057】
なお、好適な態様としては、不織布シート2における単位マクロエンボスの平面視における面積もクレープ紙1と同一の範囲であるのがよい。不織布シート2における単位マクロエンボス20の数値範囲も上記範囲とすることで、必要な吸収空間(空隙)40を好適に形成でき、また、製造が容易となり、さらに、空隙の潰れも効果的に防止される。但し、不織布シート2における単位マクロエンボス20については、シート間の接着にあたって、クレープ紙1のマクロエンボス10の天部10tのみに接着剤を付与する態様では、上記数値よりも小さくすることができる。その態様であっても、下限値は、1.50mm2である。
【0058】
また、本発明のキッチンペーパーX1は、クレープ紙1に付与されたマクロエンボス10の単位マクロエンボスのエンボス深さDが0.9〜1.5mmとする。このエンボス深さDにより、クッション性のある不織布シート2との接着が確実になるとともに、所望の空隙40が確実に形成されるようになる。さらに、汚れの掻き取り性についても十分なものとなる。さらに、マクロエンボス10がしっかりと入った意匠性の優れたものとなる。
【0059】
不織布シート2におけるマクロエンボス20のエンボス深さについては、エアレイド不織布シート2の厚さ及びクッション性に起因して、クレープ紙1と同様のエンボスロールによりマクロエンボスを付与してネステッド形式としても、クレープ紙における単位マクロエンボスよりも浅くなる傾向にある。したがって、その深さについては限定されない。上記クレープ紙1へのエンボス付与と同じエンボス深さを付与する条件で不織布シート2へエンボスを付与すると概ね、0.2〜1.4mm程度となる。この低下の割合は、不織布シートの密度、目付量等によっても相違する。もっとも、このことは、本発明のキッチンペーパーX1において、不織布シート2のマクロエンボス20のエンボス深さとクレープ紙1のマクロエンボス10のエンボス深さDが同一であってはならないという意味ではない。
【0060】
なお、本発明のキッチンペーパーX1においては、少なくとも不織布シート2におけるマクロエンボス20のエンボス高さが、クレープ紙1のマクロエンボス10のエンボス高さより低くなる傾向にあり、このような構成となっていることが吸液性の点で望ましい。シート間距離が小さいからである。ここで、エンボス高さとは、一方のシートに対向する面のエンボス非付与部分から、エンボス天部までの距離のことである。
【0061】
他方、各シート1,2におけるマクロエンボス10,20のエンボス面積率(単位マクロエンボスの面積の総和)は、キッチンペーパーの片面の面積に対して5〜40%であるのが望ましい。面積率が5%未満であると空隙が潰れやすくなるとともに、マクロエンボス付与の効果が小さくなり、また、両シートの接着が不十分となりシート間剥離が生じやすくなる。また、40%を超えるシートそのものが有する吸液性能を阻害するおそれが生じ、例えば、揚げ物の過剰油分の吸収用途においては、食材の設置面積が小さくなり所望の吸収性能が得られなくなるおそれがある。
【0062】
他方、本形態のキッチンペーパーX1では、不織布シート2とクレープ紙1とは、マクロエンボスの天部に付与された接着剤3を介して接着されている。上述のとおり好ましくはクレープ紙のマクロエンボスの天部のみに付与された接着剤により接着される態様である。不織布シート1とクレープ紙2との接着面積率、すなわちシート面積(片面)に対する接着材で接着している部分の面積の割合は3〜40%、より好ましくは3〜20%であるのがよい。この範囲であれば、接着剤による硬質化の影響が小さくマクロエンボス加工による柔らかさが十分に確保でき、また、接着部による油吸収性の阻害の影響も小さい。
【0063】
シート同士の接着に用いる接着剤は、エアレイド不織布の接着に用いられている既知のアクリル酸系樹脂、PVA(ポリビニールアルコール)、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、デンプン等が適する。
【0064】
他方、好ましく付与されるクレープ紙1におけるマイクロエンボスについては、単位マイクロエンボスの面積が0.04〜1.0mm2、エンボス深さ0.1〜0.8mmとするのが望ましい。このマイクロエンボスは、キッチンペーパーの片面の面積に対して5.0〜40%付与されているのがよい。マイクロエンボスの付与により、より一層の意匠性の向上、及び、クレープ紙のしなやかさが発現する。さらに、不織布シート面に対面する部分の面積が広くなり、もってより一層の不織布シートからクレープ紙への液移行性が高まる。
【0065】
ここで、本発明のキッチンペーパーX1においては、不織布シート面において揚げ物を載置した場合に優れた利点を奏することについては上記詳述のとおりであるが、反対に、クレープ紙面に揚げ物を載置した場合についても優れた効果がある。この点説明すると、まず、本願発明におけるクレープ紙面のマクロエンボスは、上述のとおり不織布シートとの接着性等を考慮して、エンボス深さが深く、また、単位エンボスの面積が比較的ひろいものである。この構成とクレープ紙の有する高い繊維配向性(所謂MD方向、CD方向など使い分けられるように繊維が一定方向に並ぶ性質)により、クレープ紙面に揚げ物を載置すると、揚げ物等から流出した液体は、その繊維向きに沿って素早く拡散されるともに、深く広いエンボスに流れ込み、本発明のキッチンペーパーの特徴であるクレープ紙面と不織布シート面との距離が近いネステッド形式による積層とも相まって、広範な範囲でかつエンボスの開口面から遠い(エンボス深さの深い)マクロエンボス内に液体が移動した後、不織布シート側に移行する。もちろん、クレープ紙面の非エンボス部分から不織布シート面に移行することもある。このようなことから、例えば、揚げ物から流出する液体量が多い場合、揚げ物の中でも水分流出量が多く、当該水分中に細かな液的状の油分が含まれるような、流出液体の粘度が低い場合等においては、クレープ紙面において揚げ物の過剰油分の吸収用途に使用することが好ましい場合がある。
【0066】
<エンボス加工>
他方、各シートに対するエンボス加工は、一対のエンボスロール間に各シートを通すことにより行うことができる。一対のエンボスロールは、一方をゴムなどからなる弾性ロールとし、他方をエンボス付与凸部を有する金属ロールとするのが好ましい。弾性ロール及び金属ロールの組み合わせが好ましいのは、ロールのクリアランス調整の問題や、ロールに紙粉等が詰まるなどの不具合が生じないためである。
【0067】
なお、ネステッド形式の積層形態の製法は、上述のマクロエンボスの付与後に連続的に積層一体化するのが一般的である。本発明においてもこの一般的なネステッド形式の積層手順であるのが作用・効果が十分に発揮される点で望ましい。例えば、この積層手順であるとワインダーでの巻き取りの際の断紙、不織布シート2とクレープ紙1との距離が近い空隙40の形成等の点で利点が高い。もっとも、予めマクロエンボス20を付与した不織布シート2と予めマクロエンボス10を付与したクレープ紙1を事後的に別途にネステッド形式となるように積層する手順としても通常は積層後にニップロールによるニップ工程経るので本発明のキッチンペーパーの作用・効果を奏するものとなる。
【0068】
ここで、本発明のキッチンペーパーX1は、上述のとおり、クレープ紙1のみからなる従来製品と比較すると表面が滑らかで皺のない印象の見栄えを呈する。
これは、上述のとおり本発明のキッチンペーパーX1は、クッション性のある不織布シート2とクレープ紙1をネステッド形式で積層一体化することに起因すると思われる。すなわち、クッション性のあるエアレイド不織布シート2にマクロエンボス10が付与された後、クレープ紙1と接着されるため、エンボス付与時に収縮された不織布シート繊維群がクレープ紙1との接着後に拡張して戻り、結果的にクレープ紙2のクレープや不要な皺が伸ばされることによると推測される。
【0069】
他方、マクロエンボスを付与するにあたっては、一対のエンボスロールが両方又は一方のエンボスロールを加熱した状態で行うことができる。エンボスロールが加熱されていると、エンボスがより鮮明・明瞭に付与されるようになる。
【0070】
加熱されているエンボスロールは、弾性ロールであってもよいが、金属ロールである方が、好ましい。これは、金属ロールの方が、熱伝導率がよく効果的に加熱による効果が発揮されるということのほか、金属ロールが加熱されていると、エンボスの形状に対応した形で、シート又はシート地に熱が与えられることになり、付与されるエンボスが、より鮮明・明瞭になるためである。また、この加熱エンボスロールによるマクロエンボスの後に連続的にネステッド形式の積層する場合には、クレープ紙1のマクロエンボス凸部(不織布シートからみて凸となっている部分)間において、エアレイド不織布シート2のクッション性による膨張が好適に発現し、当該クレープ紙1のマクロエンボス凸部間に不織布シート2が入り込むことによって、上述の各シート間の空隙40が小さくなる効果がよりいっそう発現する。それとともに、クレープ紙1のクレープ或いは不要な皺の伸びも発生しやすく、もってクレープ紙面の優れた意匠性を発現しやすい。
【0071】
なお、加熱ロールの表面温度は、具体的には、40〜140℃、好ましくは60〜120℃、より好ましくは80〜100℃とされる。加熱温度が低すぎると、エンボスが鮮明になるとの効果が、十分に発揮されないおそれがある。他方、加熱温度が高すぎると、エネルギーロスとなるほか、シート又はシート地が焼き付くおそれや、製造されるシート又はシート地が固くなるおそれがある。但し、前記温度は、不織布シートに対するエンボス付与については、不織布シートに化学繊維が含まれる場合には、その化学繊維が溶融しない程度の温度とすることは言うまでもない。
【0072】
ここで、エンボス加工における前記一対のエンボスロール間のエンボス圧は適宜の設計事項であり、各シートの組成・物性に応じて適宜調整すればよいことであるが、例示すれば、5〜30kg/cm、好ましくは10〜25kg/cm、より好ましくは15〜20kg/cmとなるように行う。エンボス圧が低すぎると、エンボスが鮮明になるとの効果が、十分に発揮されないおそれがある。他方、エンボス圧が高すぎると、被加工シートがちぎれてしまうおそれがある。
【0073】
なお、一対のエンボスロールを、弾性ロールと金属ロールとの組み合せとする場合、弾性ロールは、その表面のショア硬度(Shore hardness)については、40〜70であるのが好ましい。ショア硬度が低すぎると、つまり弾性ロール表面がやわらかすぎると、シート又はシート地が破断するおそれがある。他方、ショア硬度が高すぎると、つまり弾性ロール表面が硬すぎると、エンボスが入らなくなるおそれがある。
【0074】
なお、クレープ紙に対するマイクロエンボスの付与は、マクロエンボスの付与に先立って予めマイクロエンボスを付与してもよいし、マクロエンボスと同時に付与してもよい。
【0075】
<クレープ紙及びクレープ紙面の物性・組成>
本発明のキッチンペーパーX1におけるクレープ紙1は、親水性繊維を90%以上含むものであり、90%以上とすることで、前述のクレープ紙特有の効果が発現する。ここで、親水性繊維の含有量については、好ましくは98%以上、より好ましくは100%である。
この数値範囲については、少なくとも90%以上であれば、本願発明のキッチンペーパーの効果を奏するものの、例えば、クレープ紙1に特別な機能を付与すべく、或いは、原料として古紙パルプを用いることにより、これに由来する親水性を阻害する繊維等が含有されていたとしても98%以上であればほぼ確実に本願発明の効果を奏し、また、非親水性の化学繊維を混抄、或いは古紙パルプを利用したクレープ紙の製造は、親水性繊維100%からなるクレープ紙の製造と比較すると工程が増加するなど容易ではないため、より好ましくは親水性繊維100%としている。
【0076】
ここで、親水性繊維としては、木材パルプ及びレーヨン繊維が望ましい。さらには、バージンパルプである木材パルプが最も好ましく、これを100%と原料繊維とするのが望ましい。さらに、木材パルプのなかでも、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)が最も好ましい。これは、通常、衛生的な用途におけるクレープ紙はこれらの繊維が一般的に用いられており、既存設備を何ら問題なく用いることができるメリットがあるからである。但し、このLBKP、NBKPを用いる場合、配合比率によって紙の性質が異なるため重要であり、本発明のキッチンペーパーでは、それらを配合して用いる場合、その配合比率については、NBKPの配合割合を多く、すなわち50%以上、好適には70%以上をNBKPとするのが望ましい。NBKPはLBKPと比較すると繊維が長く、しっかりとしているいため、エンボスを付与しやすく、また、キッチンペーパーに必要な所望の強度を発現させやすい。
【0077】
以上、クレープ紙1の構成繊維についてまとめると、本願発明のキッチンペーパーにおいて、最も好ましい繊維種、配合形態は、NBKP及びLBKPからなり、NBKPを50%以上含むパルプ繊維100%で構成されたものである。
【0078】
クレープ紙1の抄紙は、上記原料繊維を主成分とする抄紙原料を、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、クレープ加工パート、カレンダーパート等を経る公知の抄紙工程により製造することができる。なお、好ましくクレープは、ドライクレープ法により付与するのがよい。
【0079】
ここで、本発明のキッチンペーパーX1は、クレープ紙面のクレープ高低差が60〜70μmであり、クレープ頂点間距離が35〜45μmであり、かつ、8枚重ねでクレープ紙面側から測定した白色度が77〜98%であるのが望ましい。これはキッチンペーパーX1が要求する吸液性能及び伸びを有しつつも、優れた表面の滑らさ、商品形態において高い白色度を有し、見栄えのよい極めて意匠性に優れるものであることを意味する。この構成は、従来のクレープ紙同士を積層した、キッチンペーパーでは達成し難いものである。これは、エアレイド不織布シート2とのネステッド形式による積層によって、エアレイド不織布のクッション性により積層後に適度にクレープ紙のクレープ等が伸ばされること、及び厚みのあり繊維間空隙が多く光散乱性の高いエアレイド不織布シートの積層によるところが相まってなされると推測される。
【0080】
なお、白色度については、8枚重ねとしているのは、1〜7枚程度では、キッチンペーパーの薄さに起因して、クレープ紙同士を積層したもの或いは不織布シートとの明確な差違は測定されず、視覚的に白さに優劣は感じられないが、重ねる枚数が多くなるにつれて白色度は高まり、8枚以上とすると差違が明確となり視覚的に白さの差違が感じられるようになることによる。なお、10枚では差違が確実なものとなり、10枚以上としても重ね枚数の増加による白色度の変化がほとんどない。この8枚重ねでの白色度が高いという効果は、上述のとおりキッチンペーパーの一般的な製品形態がロール形態、ポップアップ式形態であり、50枚程度重ねられた状態で市販されていることを考慮すれば、商品形態で衛生的な印象を与えるものであり、もって商品訴求力の点で極めて有用な効果である。なお、白色度はJIS P 8148によるものであり、既知の分光式白度計、分光式色差計により測定することができる。
【0081】
ここで、クレープ高低差については、上記範囲とするに、クレープ紙原紙のクレープ率は13〜35%とするのがよい。この設計により、エアレイド不織布シートとの積層により、上記範囲とすることができる。
なお、本発明におけるクレープ率とは、(((製紙時のドライヤーの周速)−(リール周速))/(製紙時のドライヤーの周速)×100)により算出することができる。
さらに、本発明のキッチンペーパーにおけるクレープ紙では、非エンボス部分の厚さが140〜250μmであるのが望ましい。マクロエンボスがしっかりと入ること、吸液性、裏抜け防止性等が十分に発揮され、本発明のキッチンペーパーの作用・効果の発現をより確実なものとする。
なお、クレープ高低差、クレープ間隔は、レーザー顕微鏡を用いることで測定することができる。
【0082】
また、上述の10枚重ねでクレープ紙側から測定した白色度が77〜98%を達成するには、前記木材パルプとして晒しパルプ繊維を用いる必要がある。もっとも、単に、晒しパルプを用いただけでは、この白色度を達成するのは困難であり、本発明のエアレイド不織布シートとクレープ紙をネステッド形式で積層一体化する構成をとることにより好適に達成できる。
【0083】
なお、クレープ紙の設計としては、前記クレープ紙の坪量が10.0〜40.0g/m2とされ、乾燥縦紙力(Fgk)が800〜2000cNとされているのが望ましい。クレープ紙の坪量が10g/m2未満であると破れ易く、また、吸液性が悪化することとなり、40g/m2を超えると固くなり、使用する際に使い勝手が減少する。さらに、クレープ紙の乾燥縦紙力が800cN未満であると強度が低く加工適性が悪化し、2000cNを超えると後述の使用時にミシン目線において裁断し難くなる。
【0084】
<親油性油剤>
他方、本発明のキッチンペーパーX1は、吸収した油の保持性向上のためクレープ紙1の不織布シート対向面に親油性油剤が担持せしめられているのが望ましい。
ここで、担持面の面積としては、少なくともシート面の概ね50%以上、好ましくは80%以上、特別には全面的とするのがよい。細かくは油の保持性との関係により適宜調整する。部分的に担持させる場合には、担持部分を散在的に、例えば、平面直視で網目模様状、格子模様状、散点状に担持せしめるのがよい。部分的に担持せしめる利点は、マクロエンボスを介した二層の接着性を阻害しがたいことである。もちろん、油分保持性の点では全面的が望ましい。
【0085】
クレープ紙1の不織布シート対向面に親油性油剤を担持せしめることにより、不織布シート面から吸液された油が当該面に油分が止まり、吸収された油の空隙内での保持性が高まり、裏抜け防止性が高まるとともに、不織布シートへの油の戻りによる染み出し防止性が高まる。
【0086】
親油性油剤のクレープ紙への担持方法としては、不織布シート1との積層前に、当該不織布シート2と貼り合せる面に親油性油剤を塗布、塗工、散布する等して外添することにより達成される。散布する場合には、シート地に対して薬剤を散布する既知のスプレー装置を用いることができ、塗工するのであれば、既知の塗工機又は印刷機を用いることができる。部分的な担持が可能である点では、塗工、塗布が有利である。
【0087】
親油性油剤の含有量は、シート重量の1〜20重量%が好適である。1重量%未満では十分な効果が発現されないことがあり、20重量%を超えるとキッチンペーパーの水分吸収性等の親水性機能を阻害するおそれが高まる。
【0088】
ここで、親油性油剤の具体例としては、炭化水素、流動パラフィン、トリグリセリド、脂肪酸アマイド、アクリル酸エステル共重合体、ショ糖エステル、イソステアリン酸エステルが挙げられる。なかでも流動パラフィン、トリグリセリドが適する。
流動パラフィンは、酸化安定性の点で優れ、特に好適である。
トリグリセリドを用いる場合、炭素数6〜12の飽和脂肪酸からなるもの、特には中鎖脂肪酸が特に好適である。飽和であることで酸化安定性に優れ、炭素数が6〜12とすることで適度な分子量でシート地への付与性が良好となる。また、単純な直鎖脂肪酸よりトリグリセリドの形態のほうが油の拡散・浸透性を高める効果に優れる。
【0089】
<不織布シートの組成・物性>
本発明における不織布シート2は、親水性繊維を40%以上含む、好ましくは、50%以上、より好ましくは85%以上含む。特別には、親水性繊維100%からなる不織布シートである。親水性繊維を40%以上含むことで、不織布シート面における水分吸収性が好適に発揮される。40%未満であると、不織布シート自体の水分吸収性の悪化のみならず、親水性繊維を90%以上含むクレープ紙と1の親和性も悪化し、製造時においては積層一体化工程、接着工程がし難くなり、物としては不織布シート2からクレープ紙1への水分移行性と接着維持性が十分なものではなくなる。
【0090】
ここで、親水性繊維としては、パルプ繊維、レーヨン繊維が代表的であり、特に好ましくはパルプ繊維である。パルプ繊維は、親水性が良好であるとともにクッション性に富むとともにエアレイド法に適する。特に、繊維長1.0〜12.0mmのパルプ繊維であるのがよい。本発明のキッチンペーパーX1の吸液性能を十分に発揮する毛細管現象をもたらす繊維間空隙を形成しやすい。
【0091】
パルプ繊維なかでも、木材パルプ、特に、バージンパルプである木材パルプが最も好ましく、これを100%と親水性繊維の原料繊維とするのが望ましい。水分、油分の吸液速度、吸液保持性等の吸液性能の点及び製造容易の点で好ましい。さらに、木材パルプのなかでも、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)が最も好ましい。このLBKP、NBKPを用いる場合、それらを配合して用いることができ、その場合の配合比率については任意である。但し、NBKPはエンボス付与及びエアレイド法とするに適した繊維長とすることが容易なので、NBKPを50〜100%、好適には70〜100%とするのが望ましい。LBKPの配合はしなやかさの点では望ましく、この点を考慮して適宜配合すればよい。もっともLBKPは配合しなくてもよい。なお、白色度による意匠性の点を考慮すれば、前記木材パルプとしては晒しパルプ繊維を用いる。
【0092】
親水性繊維以外の繊維としては、キッチンペーパーに用いられている既知の種々の化学繊維を適宜選択できる。上述のとおり本発明のキッチンペーパーの不織布シートにおいては、親水繊維の割合が多く、しかも、天然繊維であるパルプ繊維、レーヨン繊維、特に木材パルプであるのが望ましいのであるが、捲縮繊維(クリンプ繊維とも言われる)等のエアレイド法によるクッション性を妨げず、嵩高さを発現させるような繊維の配合は望ましいい。
化学繊維について例示すれば、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維が挙げられる。
【0093】
ここで、本発明の不織布シート2は、エアレイド法により製造されたものである。このエアレイド法は、気流により比較的短い繊維を堆積させ接着剤等によってシート状にするものであり、その繊維配向性について、構成繊維の先端部が、表面及びその近傍に無数存在しているとともに、その構成繊維が三次元的にランダムな状態で分散し、さらにシートの厚さ方向に延在する繊維間空隙が多く形成されている特徴があり、水よりも粘度の高い油に対しても良好な吸収速度を示すとともに、優れたクッション性を有し、本発明のキッチンペーパーの作用効果を効果的に発揮させる。なお、本発明のキッチンペーパーでは、上述のエアレイド法による繊維配向性は重要な特徴であり、従って、エアレイド法による三次元的な繊維配向性が阻害されるような水流絡交処理等はされていないのが望ましい。
【0094】
繊維の接着に用いる接着剤は、キッチンペーパーの食材に触れるという本質的な用途を考慮して、エアレイド不織布シートに用いられる既知の接着剤が用いられる。PVA(ポリビニールアルコール)、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、デンプン等が例示できる。上述のクレープ紙と不織布シートとの接着に用いものと同様のものとすると、シート同士の接着が良好となる。
【0095】
他方、本発明にかかるエアレイド不織布シートは、坪量(目付量)が45.1〜55g/m2、乾燥縦紙力が45.1〜600cNであるのが望ましい。不織布シートの坪量が45.1g/m2未満であるとキッチンペーパー全体としての紙力を保つのが困難となり、また、吸液性も低下するおそれがある。70g/m2を超えると厚みが出すぎて加工しにくくなることや、強度が強くなりすぎて後述するミシン目線での切断等について問題が生ずるおそれがある。また、不織布シートの乾燥縦紙力300未満であると強度が低く加工適性が悪化し、1000を超えると使用時にミシン目線において裁断し難くなるおそれがある。
【0096】
<特徴的吸液性>
以上の構成をとることで本発明のキッチンペーパーX1は下記の吸液性に関する特徴的な構成を有することができる。
すなわち、本発明のキッチンペーパーX1は、水平台上に載置したろ紙の上に、さらに前記不織布シートを上方、前記クレープ紙を下方となるようにして重ね、前記不織布シート側から1000μLのサラダ油を滴下したのち4秒経過後に、前記ろ紙に移行したサラダ油の重量で規定される油の裏抜け量が0.25g以下である。
本発明は、不織布シートで吸収された油がクレープ紙及びマクロエンボス間の空隙にしっかりと保持されるので、このような油の裏抜け量が達成できる。
【0097】
さらに、本発明のキッチンペーパーX1は、水平台上に載置したろ紙の上に、さらに前記不織布シートを上方、前記クレープ紙を下方となるようにして重ね、前記不織布シート側から1000μLのサラダ油を滴下したのち4秒経過後に、さらに、前記不織布シート側に別のろ紙を重ね、その上から底面平滑、底面面積56cm2、重量70gの分銅を載置し、1分間経過後において前記別のろ紙に移行したサラダ油の重量で規定される油の戻り量が0.7g以下である。
【0098】
本発明のキッチンペーパーX1は、不織布シート2の有する極めて早い油吸収速度に起因して、油が瞬時に不織布シートによって吸収され、さらにそれに積層されるクレープ紙に移行されるとともに、クレープ紙1及びマクロエンボス間空隙において油が保持されるので、このような油戻り量が達成できる。
【0099】
この特徴的な吸液性に関する構成は、上述の各シートの請求項1記載の発明の構成を必須として達成される。従来製品では、このような特徴的な吸液性と製造容易性及び利便性を両立することは困難であったが、本発明のキッチンペーパーではこれらが両立されているところが極めて特徴的である。また、この構成を達成することは、揚げ物の過剰油分の吸収用途において優れたものとなることの裏付けともなる。
【0100】
<ミシン目線>
他方、本発明のキッチンペーパーX1は、図1に示すように、切断用のミシン目線5を有するのが望ましい。そのミシン目線5のカットタイ比は、5:1〜8:1とし、タイ部分が0.75〜1.25mmであるのが望ましい。また、ミシン目強度が200〜500cNであるのが望ましい。
【0101】
このようにすると、従来キッチンペーパーの欠点であるクレープ紙同士を積層したキッチンペーパーにおける裁断伸しがたさと、不織布シートのみからなるキッチンペーパーの裁断面の毛羽立ちが効果的に防止されるとともに、ワインダーでの巻き取り時にミシン目線で断紙するおそれが格段に小さくなる。そして、この構成は、エアレイド不織布シートとクレープ紙とをネステッド形式で積層一体化することにより達成でき、さらには、上述の好ましく例示した各シートの坪量、エンボス構成、乾燥引張強度により、より効果的に達成される。
【0102】
なお、このミシン目線5は、クレープ紙の縦方向(MD方向ともいう)に交わる方向、好ましくは直行する方向に配されているのが望ましい。
【0103】
また、ミシン目強度の測定は、上述のJIS P 8113に基づく紙力及び伸び率の測定方法に準じて、縦方向に、幅50mmで、つかみ間隔間にミシン目線が位置するようにして測定する。
【0104】
<ロール状のキッチンペーパー製品>
上記の本発明のキッチンペーパーX1は、帯状としてこれを短手方向の紙幅と実質的に同幅の管芯に巻くなどしてロール状のキッチンペーパー製品X2とするに適する。
【0105】
この場合、管芯は、この種のキッチンペーパーX1に用いられている既知のものが利用できる。一般例を示せば、その外径(巻き直径)L4は30〜50mm、幅Hは100〜250mm程度とすることができる。
【0106】
また、キッチンペーパーの巻長さは8.8〜30mとするのが望ましく、上記管芯5を用いた場合には、キッチンペーパー製品の外径を90〜130mmとするのがよい。
【0107】
他方、ミシン目線を設ける場合には、シート長手方向の所定間隔おきにシート幅方向に亘って設けるのが望ましい。このミシン目線の間隔は、48〜250mm程度とするのがよい。48mm未満であると、実使用には小さすぎることとなり、250mmを超えると食器などと比べて大きくなることから使い勝手が゛悪くなる。
【0108】
ここで、このキッチンペーパー製品においては、本発明のキッチンペーパーでは特に8枚重ねで白色度は従来品と比較して明確な白色度の差が発現し、クレープ紙面における美匠性が優れることから、そのクレープ紙面が巻き取り外面、不織布シート面が巻き取り内面とするのが意匠性の点で望ましい。また、積層シートを巻取って筒状とするにあたっては、巻き取り外面に比して、巻き取り内面のほうが製造時にくわわるテンションが若干弱くなることから、このようにすると、クレープ紙の引張り強度が不織布シートの引っ張り強度の低さを補完し、製造時における問題についても効果的に改善され製造容易なものとなる。
【0109】
<試験例1>
本発明の吸液性の効果を確認するための試験を行なったので以下に詳述する。
まず、試料(本発明の実施例及び比較例)を作成し、実際に吸水量、吸油量、吸水速度、吸油速度、油の裏抜け、油の戻りを測定した。結果は、各例の構造、組成、物性とともに表1に示す。
【0110】
各例における不織布シートはすべて、繊維原料が100%パルプ繊維であり、繊維同士の接着剤にアクリル酸系樹脂を使用したパルプエアレイド不織布シート(ハビックス社製)を用いた。
【0111】
また、各例におけるクレープ紙は、すべてパルプ繊維100%(NBKP:LBKP=70:30)からなるものであり、そのマクロエンボスの構成についても同一である。マクロエンボスのエンボス深さは1.4mm、エンボス天部面積は1.8mm2とした。
【0112】
両シートの接着面積率はすべて7%であり、シート間を接着する接着剤はすべてクレープ紙のエンボスの天部のみに付与した(クレープ紙同士の場合は一方のシートのみ、クレープ紙同士のティップ トゥ ティップ形式〔比較例2〕は14%の接着面積率)。
【0113】
さらに、不織布シートにマクロエンボス付与し、クレープ紙にマクロエンボスを付与しない例については、シート同士の接着が不十分となり加工適性の点で極めて難があり、構造上、吸液性能についても本発明の作用効果の方向性から実施例より明らかに劣ると理解されるので比較対象とからは外した。
【0114】
吸水量は、100mm四方に裁断した乾燥状態の試料の重量を測定したのち試料を純水中に十分に浸漬させ、次いで、純水中から引き上げて30秒後の重量を測定し、その測定値から乾燥状態時の重量を引いた値を吸水量・吸水保持性とした。
【0115】
吸油量は、100mm四方に裁断した乾燥状態の試料の重量を測定したのち試料をサラダ油中に15秒浸漬させ、次いで、サラダ油(日清オイリオグループ株式会社製)中から引き上げて25秒後の重量を測定し、その測定値から乾燥状態時の重量を引いた値を吸油量・吸油保持性とした。
【0116】
吸水速度は、試料に、0.3ccの純水を滴下し、滴下した純水による光反射が試料面から消失したと目視にて認識できるまでの時間を測定した。
【0117】
吸油速度は、試料に、1000μLのサラダ油(日清オイリオグループ株式会社製)を滴下し、滴下した油による光沢感(てかり)が試料面から消失したと目視にて認識できるまでの時間を測定した。
【0118】
油の裏抜けは 水平台上に載置したろ紙の上に、さらに試料を重ね(実施例においては、不織布シートを上方、クレープ紙を下方となるようにして重ねた)、上方から1000μLのサラダ油(日清オイリオグループ株式会社製)を滴下したのち4秒経過後に、前記ろ紙に移行したサラダ油の重量を測定した。重量は、油吸収後のろ紙と吸収前のろ紙の重量差から算出した。
【0119】
油の戻り(油保持性)は、水平台上に載置したろ紙の上に、さらに試料を重ね(実施例においては不織布シートを上方、クレープ紙を下方となるようにして重ねた)、上方から1000μLのサラダ油(日清オイリオグループ株式会社製)を滴下したのち4秒経過後に、さらに試料の上に別のろ紙を重ね、その上から底面平滑、底面面積56cm2、重量70gの分銅を載置し、1分間経過後において前記別のろ紙に移行したサラダ油の重量で規定される油の重量を測定した。重量は、油吸収後の別のろ紙と吸収前の別のろ紙の重量差から算出した。
【0120】
【表1】

【0121】
表1の結果より、本発明の実施例は、クレープ紙同士からなる比較例1及び2と比較して、吸液性能が優れているのが確認できる。また、不織布シートのみからなる比較例3と比較しても、油の裏抜け、油の戻りについて優れ、吸水量においてはほぼ同等である。さらにクレープ紙と不織布シートの積層であるがエンボスの構成が相違する比較例4及び5と比較してみても、本願発明の実施例1〜5は、裏抜け、油戻りの点で優れている。
【0122】
この試験より、本発明のキッチンペーパーは、比較例にかかる本発明の構成を有さないキッチンペーパーと比較して吸液性の点で優れることが確認された。
【0123】
<試験例2>
次いで、本発明の加工適性(製造容易性)及びミシン目線での切り取りやすさ(利便性)の効果を確認するための試験を行なったので以下に詳述する。
試験に用いた試料は坪量28.1g/m2のクレープ紙と45.2g/m2の不織布シートを積層したものを基本として、不織布シートへのエンボスの有無、タイ部の長さ、カット対比を変化させたものとした。詳細は表1中に示す。
【0124】
クレープ紙及び不織布シートの双方にエンボスを付与した試料はすべてネステッド形式の積層形態である。
なお、各例における不織布シートはすべて、繊維原料が100%パルプ繊維であり、繊維同士の接着剤にアクリル酸系樹脂を使用したパルプエアレイド不織布シート(ハビックス社製)を用いた。
【0125】
また、各例におけるクレープ紙は、すべてパルプ繊維100%(NBKP:LBKP=70:30)からなるものであり、マクロエンボスを付与した試料におけるマクロエンボスの構成については同一である。そのマクロエンボスのエンボス深さは1.4mm、エンボス天部面積は1.8mm2とした。両シートの接着面積率はすべて7%である。
【0126】
試験方法及び評価は、加工適性の確認については、ワインダーで巻き取り速度60m/minで600m巻き取った際の断裂の有無で判断を行い、断裂が起きたものを×、断裂が起きなかったものを○で評価した。裁断のしやすさについては、消費者25名に実際にミシン目線で裁断させ、各試料について、切り取りやすく裁断後の切断面見栄えもよいと感じたものを5点、切り取りに易い、或いは、裁断後の切断面の見栄えがよいのいずれかがであるものを0点、切り取り難く裁断後の切断面の見栄えも悪いものを−5点で評価し、その平均を取り4点以上を○とした。4点未満を×とした。
【0127】
【表2】

【0128】
表2の結果から理解できるように、本願発明の範囲を満たさない試料については、加工適性及び切り取りやすさの少なくとも一方において悪いとの評価がある。このことから、本願発明の構成は加工適性及び切り取りやすさにおいて重要な構成であることが理解できる。
【0129】
<試験例3>
本発明の意匠性、特に白色度についての効果を確認するための試験を行なったので以下に詳述する。結果は、表4に示す。なお、試料1〜5にかかるものは、本発明の実施例であり、クレープ紙と不織布シートとをネステッド形式で積層一体化したものであり、試料6〜10は試料1〜5に用いたものと同様のクレープ紙地を用いて、クレープ紙同士をネステッド形式で積層一体化したものである。また、試料11〜15は、試料1〜10と同様の抄紙原料を用いて坪量のみを28g/m2に変更したクレープ紙地を用いて、クレープ紙同士をネステッド形式で積層一体化したものである。なお、各試料のクレープ紙に対するマクロエンボス構成及び付与条件はすべて同一とした。本発明の実施例である試料1〜5についても、クレープ紙に対するマクロエンボスと不織布シートに対するエンボス付与条件は同様にした。
【0130】
なお、不織布シートはすべて、繊維原料が100%パルプ繊維であり、繊維同士の接着剤にアクリル酸系樹脂を使用したパルプエアレイド不織布シート(ハビックス社製)を用いた。
【0131】
また、各例におけるクレープ紙はすべてパルプ繊維100%(NBKP:LBKP=70:30)からなるものであり、クレープ紙のマクロエンボスの構成についてはすべて同一である。そのマクロエンボスのエンボス深さは1.4mm、エンボス天部面積は1.8mm2とした。両シートの接着面積率はすべて7%である。
【0132】
白色度の測定は、日本電色工業PF−10を用いて行なった。なお、測定は試料を8枚重ねで行ない、不織布シートとクレープ紙との積層構造の試料については、すべての試料についてクレープ紙が上方となるように重ねて測定した。
【0133】
【表3】

【0134】
表3より、本願発明の実施例である試料1〜5については、すべて白色度が77以上と高い数値となっているのに対して、試料6〜10及び試料11〜15については、75未満となっている。このことから、本願発明の構成をとることで、従来、クレープ紙同士を積層したものと比較して高い意匠性を有することが理解できる。
【0135】
<試験例4>
本発明の意匠性、特に表面の滑らかさについての確認するための試験を行なったので以下に詳述する。
試験例2で作成した試料1〜15の表面性について、クレープ間隔及びクレープ高低差を測定した。結果は下記表4に示す。
【0136】
なお、クレープ紙間隔及びクレープ高低差は、キーエンス社製レーザー顕微鏡VK−9500により測定した。
【0137】
【表4】

【0138】
表4より、本願発明の実施例である試料1〜5については、試料6〜15と比較して、クレープ高低差が低く、また、クレープ間隔も広い。これにより、本願発明は表面が滑らかで意匠性に優れたものであることが理解できる。
【0139】
以上より、本発明のキッチンペーパーは、加工適性、ちぎり易さの点が確保されているとともに、吸液性については従来以上の効果が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0140】
1…クレープ紙、2…エアレイド不織布シート、5…ミシン目線、10,20…マクロエンボス(単位マクロエンボスを指す場合もある)、10t,20t…マクロエンボスの天部、10w,20w…マクロエンボスの側壁、30…接着剤、D…エンボス深さ、40…空隙、X1…キッチンペーパー、X2…キッチンペーパー製品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚のシートが積層されたキッチンペーパーであって、
親水性繊維を90%以上含むクレープ紙と、親水性繊維を40%以上含みエアレイド法による不織布シートとが、それらに付与されたマクロエンボスの天部に付与された接着剤を介してネステッド形式で積層一体化され、
そのマクロエンボスのエンボス面積率がキッチンペーパーの片面の面積に対して5.0〜40%であり、かつ、少なくともクレープ紙に付与されたマクロエンボスは、その単位マクロエンボスのエンボス天部面積が1.75〜9.0mm2、エンボス深さが0.9〜1.5mmであることを特徴とするキッチンペーパー。
【請求項2】
クレープ紙に、前記マクロエンボスとともに、単位エンボスの面積が0.04〜1.0mm2、エンボス深さ0.1〜1.0mmのマイクロエンボスがキッチンペーパーの片面の面積に対して5.0〜40%付与されており、かつ、不織布シートにはマイクロエンボスが付与されていない請求項1記載のキッチンペーパー。
【請求項3】
前記キッチンペーパーは、クレープ紙面のクレープ高低差が60〜70μmであり、クレープ頂点間距離が35〜45μmであり、かつ、8枚重ねでクレープ紙側から測定した白色度が77〜98%である請求項1又は2記載のキッチンペーパー。
【請求項4】
不織布シートを構成する親水性繊維は、繊維長1.0〜12.0mmのパルプ繊維である請求項1〜3の何れか1項に記載のキッチンペーパー。
【請求項5】
クレープ紙は、非エンボス部分の厚さが140〜250μmであり、不織布シートの非エンボス部分の厚さが500〜1000μmである請求項1〜4の何れか1項に記載のキッチンペーパー。
【請求項6】
キッチンペーパーは、切断用のミシン目線を有し、そのミシン目線のカットタイ比(カット部分:タイ部分)が5:1〜8:1であるとともにタイ部分が0.75〜1.25mmであり、かつ、ミシン目強度が200〜500cNである請求項1〜5の何れか1項に記載のキッチンペーパー。
【請求項7】
水平台上に載置したろ紙の上に、さらに前記不織布シートを上方、前記クレープ紙を下方となるようにして重ね、前記不織布シート側から1000μLのサラダ油を滴下したのち4秒経過後に、前記ろ紙に移行したサラダ油の重量で規定される油の裏抜け量が0.25g以下である請求項1〜6の何れか1項に記載のキッチンペーパー。
【請求項8】
水平台上に載置したろ紙の上に、さらに前記不織布シートを上方、前記クレープ紙を下方となるようにして重ね、前記不織布シート側から1000μLのサラダ油を滴下したのち4秒経過後に、さらに、前記不織布シート側に別のろ紙を重ね、その上から底面平滑、底面面積56cm2、重量70gの分銅を載置し、1分間経過後において前記別のろ紙に移行したサラダ油の重量で規定される油の戻り量が0.7g以下である請求項1〜7の何れか1項に記載のキッチンペーパー。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載のキッチンペーパーが、帯状とされ、そのクレープ紙側面が巻取り外面、不織布シート側が巻取り内面として巻取られていることを特徴とするキッチンペーパー製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−122277(P2011−122277A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282243(P2009−282243)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】