キッチン用キャビネット
【課題】本発明は、調理や洗い物などで手が塞がっていても、吊り戸棚や引出しを操作することなく収納物の出し入れが可能で、また、使用中の調理器具なども気兼ねなく出し入れ可能であり、さらに、目隠ししたい場合や使用しない場合は引出しの内部に収納できて美感を損ねることの無い、仮置きスペースを備えたキッチンキャビネットを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、シンクと、コンロと、ワークトップと、これらを支えるキャビネットと、このキャビネットに設けられた引出しとを有するキッチン用キャビネットにおいて、前記引出しが、前板と、側板と、背板と、底板とを有し、前記前板の一部に設けられた反転部が、収納用部材を備えるとともに、表裏反転するキッチン用キャビネットである。
【解決手段】本発明は、シンクと、コンロと、ワークトップと、これらを支えるキャビネットと、このキャビネットに設けられた引出しとを有するキッチン用キャビネットにおいて、前記引出しが、前板と、側板と、背板と、底板とを有し、前記前板の一部に設けられた反転部が、収納用部材を備えるとともに、表裏反転するキッチン用キャビネットである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、引出しの前板に収納機能を有し、かつ、美感を損なわないキッチン用キャビネットに関する。
【背景技術】
【０００２】
キッチン用キャビネットは、主に調理やその準備、洗い物を行なうために使用されるが、その際に作業台となるカウンタートップは、これらの作業中、乱雑になり勝ちである。特に、シンクで洗い物をしたり、コンロで調理を行なっている最中は、手が離せずその場を離れることができないため、手が届く範囲に必要なものを揃えておく必要がある。
【０００３】
しかし、カウンタートップの中で、シンクやコンロから手が届く範囲は限られており、必要なものの全てを、そのような範囲に揃えておくことができないことが多い。また、円柱状で立てた状態で置く物や、転がり易い形状のもの、あるいは、おたま、フライ返し等の出っ張りがある形状のもの、その他の平面状のカウンタートップには置き難い形状のものを置く必要が生じることがある。
【０００４】
このような場合に、カウンタートップ以外に、手が届く範囲内で、洗い物や調理に必要なものを置くことができる収納が要求されている。また、キッチン用キャビネットは、美感も重要な要素であるため、必要なとき以外は、隠して置けるような収納が要求されている。
【０００５】
このような要求に応えるものとしては、例えば、吊り戸棚に昇降機構を設け、必要な場合だけ降ろした状態で使用できるようにしたものがある（特許文献１）。また、引出しにプッシュオープン機構を設け、手が塞がっていても、引出しを開閉できるようにしたもの（特許文献２）がある。さらに、図７に示すように、キャビネット５の前板７の裏面に収納用部材１２を設け、この前板７が手前に倒れてキャビネット５の一部を開閉できるようにすることで、収納用部材１２から収納物１３を出し入れできるようにしたもの（特許文献３）が知られている。
【特許文献１】特開２００５−１９８９１８号公報
【特許文献２】特開２００４−０４１６１６号公報
【特許文献３】特開２００３−２１９９２６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
しかしながら、特許文献１は、昇降機構が必要なため、大掛かりでコストがかかる上、コンロの上には設置できない問題がある。また、特許文献１は吊戸棚に、特許文献２は引出しの内部に、特許文献３はキャビネットの内部に、収納物を出し入れすることになる。このため、特許文献１から３の何れにおいても、使用中のおたまやフライ返しなどの調理器具、洗い終わった洗い物などをそのまま収納すると、棚の上や引出しやキャビネットの内部が汚れたり、濡れてしまう問題がある。
【０００７】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、調理や洗い物などで手が塞がっていても、吊り戸棚や引出しを操作することなく収納物の出し入れが可能で、また、使用中の調理器具なども気兼ねなく出し入れ可能であり、さらに、目隠ししたい場合や使用しない場合は引出しの内部に収納できて美感を損ねることの無い、仮置きスペースを備えたキッチンキャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
本発明は、以下のものに関する。
（１） シンクと、コンロと、ワークトップと、これらを支えるキャビネットと、このキャビネットに設けられた引出しとを有するキッチン用キャビネットにおいて、前記引出しが、前板と、側板と、背板と、底板とを有し、前記前板の一部に設けられた反転部が、収納用部材を備えるとともに、表裏反転するキッチン用キャビネット。
（２） （１）において、前板がその一部に開口を有し、この開口に反転部が設けられ、この反転部の幅方向の中央に設けられた支点によって、前記前板に水平方向に回転可能な状態で固定されたキッチン用キャビネット。
（３） （１）または（２）において、前板と側板と背板と底板とからなる引出し箱が、前後にスライドするトレーを備えたキッチン用キャビネット。
（４） （１）から（３）の何れかにおいて、反転部に備えられた収納用部材が、前記反転部から着脱可能であるキッチン用キャビネット。
（５） （１）から（４）の何れかにおいて、
反転部に備えられた収納用部材が、取っ手を有するキッチン用キャビネット。
【発明の効果】
【０００９】
本発明によって、調理や洗い物などで手が塞がっていても、吊り戸棚や引出しを操作することなく収納物の出し入れが可能で、また、使用中の調理器具なども気兼ねなく出し入れ可能であり、さらに、目隠ししたい場合や使用しない場合は引出の内部に収納できて美感を損ねることの無い、仮置きスペースを備えたキッチン用キャビネットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１０】
本発明のキッチン用キャビネットは、例えば、図１に示すように、一般の家庭において使用されるような、シンク２と、コンロ３と、ワークトップ４と、これらを支えるキャビネット５と、このキャビネット５に設けられた引出し６とを有する。
【００１１】
シンク２は、ワークトップ４に設けられ、一般のキッチン用キャビネット１において使用されるものが使用できる。このため、例えば、樹脂を成形したものやステンレス鋼板をプレス成形加工したものであって、底面および周壁、シンク穴等の排水構造を有するものが使用できる。
【００１２】
コンロ３は、ワークトップ４に設けられ、一般のキッチン用キャビネット１において使用されるものが使用できる。このため、例えば、ガスコンロやＩＨコンロ、電気コンロなどが使用できる。
【００１３】
ワークトップ４は、キッチン用キャビネット１の上面にある天板で、調理や洗い物などの作業のできる台であり、一般のキッチン用キャビネット１において使用されるものが使用できる。このため、例えば、樹脂を成形したものやステンレス鋼板をプレス成形加工したものが使用できる。
【００１４】
キャビネット５は、ワークトップ４の下方に設けられ、ワークトップ４、および、これに設けられたシンク２やコンロ３を支えるとともに、収納が設けられるものであり、引出し６を備えるものが使用できる。
【００１５】
図２に示すように、引出し６は、キャビネット５に設けられ、前板７と、側板８と、背板９と、底板１０とを有し、これらによって、引出し箱１１が形成される。そして、前板７の一部には水平方向に回転可能とした反転部１４が設けられる。この反転部１４の一方の面には収納用部材１２が備えられる。そして、もう一方の面には、取っ手１５が設けられるのが望ましい。少なくとも、この取っ手１５の設けられるのが望ましい面、即ち、収納用部材１２が備えられていない面は、引出し６の前板７と統一感のある外観を有するようにするのが美観の点で望ましい。なお、取っ手１５は、反転部１４には設けず、反転部１４の上方の前板７に設けるのも望ましい。これにより、常に、取っ手１５が前板７の表面側にあるため、反転部１４が水平方向に回転して、何れの面が前板７の表面側を向いていても、引出し６の操作が容易となる。
【００１６】
また、引出し６は、比較的深さのあるもの、つまり、図２に示すように、引出し箱１１の上方に収納用部材１２が収納できる空間を有するものが望ましい。これにより、例えば、図２に示すように、反転部１４を前板７の上部に設け、この反転部１４に収納用部材１２を取り付けた場合において、前板７の裏面側に収納用部材１２があるときでも、収納用部材１２の下方の引出し箱１１には収納スペースが確保できる。このため、仮に引出し箱１１に収納物が収納されていても、この収納物に収納用部材１２がぶつからないようにすることができる。
【００１７】
収納用部材１２は、前板７の一部に設けられた反転部１４に固定可能なものである。また、調理や洗い物などの作業で使用するおたまやフライ返しなどの調理器具、調味料、あるいは、洗い終わった食器や洗い物に使用する洗剤、たわしなどを収納できるものである。そして、使用中の調理器具に付着した液状の食材や洗ったばかりの食器などからの水滴を受けることができ、これらを漏らさない構造、材質のものである。これにより、使用中の調理器具や洗ったばかりの食器なども、収納用部材１２に気兼ねなく出し入れ可能となる。
【００１８】
収納用部材１２の材質は、樹脂性またはステンレス製が望ましい。これにより、使用中の調理器具に付着した液状の食材や洗ったばかりの食器などからの水滴を受けても、これらが漏れることがなく、また、腐食したり、変質や劣化したりすることを抑制できる。
【００１９】
図３に示すように、収納用部材１２の構造は、例えばポケットのように、上方向に開口を有し、下方に底を有するのが望ましい。これにより、使用中の調理器具に付着した液状の食材や洗ったばかりの食器などからの水滴を受けることができ、これらを漏らさない構造とすることができる。また、収納用部材１２は、前板７の一部に設けられた反転部１４に着脱可能に固定されるのが望ましい。着脱可能とする方法としては、例えば、フックを設けたり、マグネットを用いる方法などが使用できる。これにより、収納用部材１２の使用が終わったら、収納用部材１２を取り外し、丸洗いすることができ、清潔な状態を維持することができる。また、収納用部材１２の上方向に開口を有するので、上側から手を掛けることができ、引出し６を開閉する際の取っ手としても利用できる。
【００２０】
収納用部材１２の幅や高さは、図４に示すように、前板７の一部に設けられた反転部１４と同等以下にする。また、収納用部材１２の水平断面は、垂直方向のどの部分においても、図５に示すように、反転部１４の片方（図では上方）に突き出して、反転部１４の幅方向の中央の支点１６を中心に反転部１４が回転する際に描く円１７の範囲内に入る形状のものとする。これにより、図２から図４に示すように、前板７の反転部１４を表裏反転させて、収納用部材１２を前板７の前面側としたり、逆に前板７の裏面側とすることができる。また、収納用部材１２の奥行きは２０ｃｍ以下とするのが望ましい。これにより、図２に示すように、収納用部材１２が引出し箱１１の内部にある場合でも、引出し箱１１に収納スペースを確保することができる。また、収納用部材１２を前板７の前面側とした場合でも、前方側への出っ張りの幅が小さいので、調理や洗い物の作業の邪魔にならないようにすることができる。
【００２１】
図２から図４に示すように、引出し６の前板７の反転部１４は、水平方向に回転可能とすることで、表裏が反転できるようにする。これにより、調理や洗い物などの作業を行なう前に、前板７の裏面の収納用部材１２を前板７の前面側に反転させて、収納用部材１２を仮置きスペースとして使用するための準備をしておくことができる。また、調理や洗い物などで手が塞がっていても、特に引出し６などを操作することなく、収納用部材１２への収納物の出し入れが可能になる。そして、収納物をワークトップに置く必要がないので、ワークトップが散らかることがなく、転がり易くワークトップに置くのが難しいものを転がらないように収納できる。また、急な来客などで、急いで目隠ししたい場合や一時的に使用を中断してまた再開する場合、作業が終了した場合などには、引出し６の内部に素早く、しかも容易に収納できる。さらには、前板７の反転部１４の取っ手１５を有するのが望ましい面（収納用部材１２を有しない面）を表側にすることで、美感を損ねることがない。
【００２２】
前板７の一部の開口１８に設けられた反転部１４が表裏反転できる機構は、例えば、図５、及び、図６に示すようなものが挙げられる。つまり、前板７の一部に開口１８が設けられ、この開口１８よりもひと回り小さい板状の反転部１４が、その幅方向の中央に設けられた支点１６によって、前板７の開口１８に水平方向に回転可能な状態で固定される。反転部１４と開口１８との間には、反転部１４が前板７と接触して回転を邪魔しないように、隙間１９が設けられる。これにより、反転部１４の表裏の反転が容易となる。また、隙間１９には係止体２０が設けられ、反転部１４が回転して前板７と平行になる位置で、反転部１４を一旦係止できるようにするのが望ましい。さらに必要に応じて、ロック機構を設けるのが望ましい。これにより、反転部１４を回転する必要の無い時に、反転部１４が回転して、邪魔になったり、手を挟んだりするのを防止することができる。
【００２３】
前板７と側板８と背板９と底板１０とからなる引出し箱１１は、前後にスライドするトレー２１を備えるのが望ましい。これにより、反転部１４の収納用部材１２が引出し６の外側にある場合は、トレー２１を前板７側にスライドさせておくことで、引出し６を少し開けるだけで、トレー２１に収納した収納物の出し入れが可能となる。また、収納用部材１２を備えた反転部１４が反転する際には、トレー２１が回転する反転部１４によって押されて引出し箱１１の奥側にスライドすることで、反転部１４の反転を邪魔しないようにすることができる。
【００２４】
図３に示すように、反転部１４に取付けられた収納用部材１２は、取っ手２２を有するのが望ましい。これにより、反転部１４を反転し、収納用部材１２を前板７の表面側とした場合、収納用部材１２の外側に設けた取っ手２２によって、引出し６を操作することが可能となる。また、収納用部材１２を反転部１４から着脱する際も使い勝手をよくすることができる。
【実施例】
【００２５】
本実施例のキッチン用キャビネットは、図１に示すように、シンク２と、コンロ３と、ワークトップ４と、これらを支えるキャビネット５と、このキャビネット５に設けられた引出し６と、この引出し６の一部に反転部１４を有し、この反転部１４に収納用部材１２を取り付けたものである。
【００２６】
シンク２は、ワークトップ４に設けられ、ステンレス鋼板をプレス成形加工したもので、シンク２の底面および周壁、シンク穴等の排水構造を有するものを使用した。コンロ３は、ＩＨコンロを使用した。ワークトップ４は、ステンレス鋼板をプレス成形加工したものを使用した。キャビネット５は、ワークトップ４の下方に設けられ、ワークトップ４、および、これに設けられたシンク２やコンロ３を支えるとともに、収納として引出し６を備えるものを使用した。
【００２７】
図２に示すように、引出し６は、キャビネット５に設けられ、前板７と、側板８と、背板９と、底板１０とを有し、これらによって、引出し箱１１を構成した。そして、前板７の一部には水平方向に回転可能とした反転部１４を設けた。この反転部１４の一方の面には収納用部材１２を設け、もう一方の面には取っ手１５を設けた。これらの収納用部材１２を設けた面と取っ手１５を設けた面の両方に、引出し６の前板７と統一感のある化粧板を使用した。また、引出し６は、比較的深さのあるもので、引出し箱１１の上方に収納用部材１２が収納できる空間を有するものを用いた。
【００２８】
収納用部材１２は、樹脂を成形したものを用い、反転部１４にフック（図示しない。）で着脱可能な状態で固定した。また、図３に示すように、調理や洗い物などの作業で使用するおたまやフライ返しなどの調理器具、調味料、あるいは、洗い終わった食器や洗い物に使用する洗剤、たわしなどを収納できるように、収納用部材１２の構造は、ポケットのように、上方向に開口を有し、下方に底を有するものとした。
【００２９】
収納用部材１２の幅や高さは、図４に示すように、前板７の一部に設けられた反転部１４と同等以下にした。また、収納用部材１２の水平断面は、垂直方向のどの部分においても、図５に示すように、反転部１４の片面に突き出して、反転部１４の幅方向の中央の支点１６を中心に反転部１４が回転する際に描く円１７の範囲内に入る形状のものとした。
【００３０】
図２から図４に示すように、引出し６の前板７の反転部１４は、水平方向に回転可能とすることで、表裏が反転できるようにした。反転部１４が表裏反転できる機構は、図５、及び、図６に示すようなものとした。つまり、前板７の一部に開口１８を設け、この開口１８よりもひと回り小さい板状の反転部１４を、その幅方向の中央に設けられた支点１６によって、前板７に水平方向に回転可能な状態で固定した。反転部１４と開口１８との間には、反転部１４が前板７と接触して回転を邪魔しないように、隙間１９を設けた。また、隙間１９には弾性体を用いた係止体２０を設け、反転部１４が回転して前板７と平行になる位置で、反転部１４を一旦係止できるようにした。
【００３１】
前板７と側板８と背板９と底板１０とからなる引出し箱１１には、前後（図４の矢印方向）にスライドするトレー２１を備えた。
【図面の簡単な説明】
【００３２】
【図１】実施例のキッチン用キャビネットの斜視図である（収納用部材が前板の表面側にある状態）。
【図２】実施例のキッチン用キャビネットに使用した引出しの斜視図である（収納用部材が前板の裏面側にある状態）。
【図３】実施例のキッチン用キャビネットに使用した引出しの斜視図である（収納用部材が前板の表面側にある状態）。
【図４】実施例のキッチン用キャビネットに使用した引出しの斜視図である（反転部が表裏反転する途中の状態）。
【図５】実施例のキッチン用キャビネットに使用した反転部を上方から見た透視図である。
【図６】実施例のキッチン用キャビネットに使用した前板と反転部の正面図である。
【図７】従来のキッチン用キャビネットの収納用部材の側面図である。
【符号の説明】
【００３３】
１ キッチン用キャビネット ２ シンク
３ コンロ ４ ワークトップ
５ キャビネット ６ 引出し
７ 前板 ８ 側板
９ 背板 １０ 底板
１１ 引出し箱 １２ 収納用部材
１３ 収納物 １４ 反転部
１５ 取っ手 １６ 支点
１７ 円 １８ 開口
１９ 隙間 ２０ 係止体
２１ トレー ２２ 取っ手
【技術分野】
【０００１】
本発明は、引出しの前板に収納機能を有し、かつ、美感を損なわないキッチン用キャビネットに関する。
【背景技術】
【０００２】
キッチン用キャビネットは、主に調理やその準備、洗い物を行なうために使用されるが、その際に作業台となるカウンタートップは、これらの作業中、乱雑になり勝ちである。特に、シンクで洗い物をしたり、コンロで調理を行なっている最中は、手が離せずその場を離れることができないため、手が届く範囲に必要なものを揃えておく必要がある。
【０００３】
しかし、カウンタートップの中で、シンクやコンロから手が届く範囲は限られており、必要なものの全てを、そのような範囲に揃えておくことができないことが多い。また、円柱状で立てた状態で置く物や、転がり易い形状のもの、あるいは、おたま、フライ返し等の出っ張りがある形状のもの、その他の平面状のカウンタートップには置き難い形状のものを置く必要が生じることがある。
【０００４】
このような場合に、カウンタートップ以外に、手が届く範囲内で、洗い物や調理に必要なものを置くことができる収納が要求されている。また、キッチン用キャビネットは、美感も重要な要素であるため、必要なとき以外は、隠して置けるような収納が要求されている。
【０００５】
このような要求に応えるものとしては、例えば、吊り戸棚に昇降機構を設け、必要な場合だけ降ろした状態で使用できるようにしたものがある（特許文献１）。また、引出しにプッシュオープン機構を設け、手が塞がっていても、引出しを開閉できるようにしたもの（特許文献２）がある。さらに、図７に示すように、キャビネット５の前板７の裏面に収納用部材１２を設け、この前板７が手前に倒れてキャビネット５の一部を開閉できるようにすることで、収納用部材１２から収納物１３を出し入れできるようにしたもの（特許文献３）が知られている。
【特許文献１】特開２００５−１９８９１８号公報
【特許文献２】特開２００４−０４１６１６号公報
【特許文献３】特開２００３−２１９９２６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
しかしながら、特許文献１は、昇降機構が必要なため、大掛かりでコストがかかる上、コンロの上には設置できない問題がある。また、特許文献１は吊戸棚に、特許文献２は引出しの内部に、特許文献３はキャビネットの内部に、収納物を出し入れすることになる。このため、特許文献１から３の何れにおいても、使用中のおたまやフライ返しなどの調理器具、洗い終わった洗い物などをそのまま収納すると、棚の上や引出しやキャビネットの内部が汚れたり、濡れてしまう問題がある。
【０００７】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、調理や洗い物などで手が塞がっていても、吊り戸棚や引出しを操作することなく収納物の出し入れが可能で、また、使用中の調理器具なども気兼ねなく出し入れ可能であり、さらに、目隠ししたい場合や使用しない場合は引出しの内部に収納できて美感を損ねることの無い、仮置きスペースを備えたキッチンキャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
本発明は、以下のものに関する。
（１） シンクと、コンロと、ワークトップと、これらを支えるキャビネットと、このキャビネットに設けられた引出しとを有するキッチン用キャビネットにおいて、前記引出しが、前板と、側板と、背板と、底板とを有し、前記前板の一部に設けられた反転部が、収納用部材を備えるとともに、表裏反転するキッチン用キャビネット。
（２） （１）において、前板がその一部に開口を有し、この開口に反転部が設けられ、この反転部の幅方向の中央に設けられた支点によって、前記前板に水平方向に回転可能な状態で固定されたキッチン用キャビネット。
（３） （１）または（２）において、前板と側板と背板と底板とからなる引出し箱が、前後にスライドするトレーを備えたキッチン用キャビネット。
（４） （１）から（３）の何れかにおいて、反転部に備えられた収納用部材が、前記反転部から着脱可能であるキッチン用キャビネット。
（５） （１）から（４）の何れかにおいて、
反転部に備えられた収納用部材が、取っ手を有するキッチン用キャビネット。
【発明の効果】
【０００９】
本発明によって、調理や洗い物などで手が塞がっていても、吊り戸棚や引出しを操作することなく収納物の出し入れが可能で、また、使用中の調理器具なども気兼ねなく出し入れ可能であり、さらに、目隠ししたい場合や使用しない場合は引出の内部に収納できて美感を損ねることの無い、仮置きスペースを備えたキッチン用キャビネットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１０】
本発明のキッチン用キャビネットは、例えば、図１に示すように、一般の家庭において使用されるような、シンク２と、コンロ３と、ワークトップ４と、これらを支えるキャビネット５と、このキャビネット５に設けられた引出し６とを有する。
【００１１】
シンク２は、ワークトップ４に設けられ、一般のキッチン用キャビネット１において使用されるものが使用できる。このため、例えば、樹脂を成形したものやステンレス鋼板をプレス成形加工したものであって、底面および周壁、シンク穴等の排水構造を有するものが使用できる。
【００１２】
コンロ３は、ワークトップ４に設けられ、一般のキッチン用キャビネット１において使用されるものが使用できる。このため、例えば、ガスコンロやＩＨコンロ、電気コンロなどが使用できる。
【００１３】
ワークトップ４は、キッチン用キャビネット１の上面にある天板で、調理や洗い物などの作業のできる台であり、一般のキッチン用キャビネット１において使用されるものが使用できる。このため、例えば、樹脂を成形したものやステンレス鋼板をプレス成形加工したものが使用できる。
【００１４】
キャビネット５は、ワークトップ４の下方に設けられ、ワークトップ４、および、これに設けられたシンク２やコンロ３を支えるとともに、収納が設けられるものであり、引出し６を備えるものが使用できる。
【００１５】
図２に示すように、引出し６は、キャビネット５に設けられ、前板７と、側板８と、背板９と、底板１０とを有し、これらによって、引出し箱１１が形成される。そして、前板７の一部には水平方向に回転可能とした反転部１４が設けられる。この反転部１４の一方の面には収納用部材１２が備えられる。そして、もう一方の面には、取っ手１５が設けられるのが望ましい。少なくとも、この取っ手１５の設けられるのが望ましい面、即ち、収納用部材１２が備えられていない面は、引出し６の前板７と統一感のある外観を有するようにするのが美観の点で望ましい。なお、取っ手１５は、反転部１４には設けず、反転部１４の上方の前板７に設けるのも望ましい。これにより、常に、取っ手１５が前板７の表面側にあるため、反転部１４が水平方向に回転して、何れの面が前板７の表面側を向いていても、引出し６の操作が容易となる。
【００１６】
また、引出し６は、比較的深さのあるもの、つまり、図２に示すように、引出し箱１１の上方に収納用部材１２が収納できる空間を有するものが望ましい。これにより、例えば、図２に示すように、反転部１４を前板７の上部に設け、この反転部１４に収納用部材１２を取り付けた場合において、前板７の裏面側に収納用部材１２があるときでも、収納用部材１２の下方の引出し箱１１には収納スペースが確保できる。このため、仮に引出し箱１１に収納物が収納されていても、この収納物に収納用部材１２がぶつからないようにすることができる。
【００１７】
収納用部材１２は、前板７の一部に設けられた反転部１４に固定可能なものである。また、調理や洗い物などの作業で使用するおたまやフライ返しなどの調理器具、調味料、あるいは、洗い終わった食器や洗い物に使用する洗剤、たわしなどを収納できるものである。そして、使用中の調理器具に付着した液状の食材や洗ったばかりの食器などからの水滴を受けることができ、これらを漏らさない構造、材質のものである。これにより、使用中の調理器具や洗ったばかりの食器なども、収納用部材１２に気兼ねなく出し入れ可能となる。
【００１８】
収納用部材１２の材質は、樹脂性またはステンレス製が望ましい。これにより、使用中の調理器具に付着した液状の食材や洗ったばかりの食器などからの水滴を受けても、これらが漏れることがなく、また、腐食したり、変質や劣化したりすることを抑制できる。
【００１９】
図３に示すように、収納用部材１２の構造は、例えばポケットのように、上方向に開口を有し、下方に底を有するのが望ましい。これにより、使用中の調理器具に付着した液状の食材や洗ったばかりの食器などからの水滴を受けることができ、これらを漏らさない構造とすることができる。また、収納用部材１２は、前板７の一部に設けられた反転部１４に着脱可能に固定されるのが望ましい。着脱可能とする方法としては、例えば、フックを設けたり、マグネットを用いる方法などが使用できる。これにより、収納用部材１２の使用が終わったら、収納用部材１２を取り外し、丸洗いすることができ、清潔な状態を維持することができる。また、収納用部材１２の上方向に開口を有するので、上側から手を掛けることができ、引出し６を開閉する際の取っ手としても利用できる。
【００２０】
収納用部材１２の幅や高さは、図４に示すように、前板７の一部に設けられた反転部１４と同等以下にする。また、収納用部材１２の水平断面は、垂直方向のどの部分においても、図５に示すように、反転部１４の片方（図では上方）に突き出して、反転部１４の幅方向の中央の支点１６を中心に反転部１４が回転する際に描く円１７の範囲内に入る形状のものとする。これにより、図２から図４に示すように、前板７の反転部１４を表裏反転させて、収納用部材１２を前板７の前面側としたり、逆に前板７の裏面側とすることができる。また、収納用部材１２の奥行きは２０ｃｍ以下とするのが望ましい。これにより、図２に示すように、収納用部材１２が引出し箱１１の内部にある場合でも、引出し箱１１に収納スペースを確保することができる。また、収納用部材１２を前板７の前面側とした場合でも、前方側への出っ張りの幅が小さいので、調理や洗い物の作業の邪魔にならないようにすることができる。
【００２１】
図２から図４に示すように、引出し６の前板７の反転部１４は、水平方向に回転可能とすることで、表裏が反転できるようにする。これにより、調理や洗い物などの作業を行なう前に、前板７の裏面の収納用部材１２を前板７の前面側に反転させて、収納用部材１２を仮置きスペースとして使用するための準備をしておくことができる。また、調理や洗い物などで手が塞がっていても、特に引出し６などを操作することなく、収納用部材１２への収納物の出し入れが可能になる。そして、収納物をワークトップに置く必要がないので、ワークトップが散らかることがなく、転がり易くワークトップに置くのが難しいものを転がらないように収納できる。また、急な来客などで、急いで目隠ししたい場合や一時的に使用を中断してまた再開する場合、作業が終了した場合などには、引出し６の内部に素早く、しかも容易に収納できる。さらには、前板７の反転部１４の取っ手１５を有するのが望ましい面（収納用部材１２を有しない面）を表側にすることで、美感を損ねることがない。
【００２２】
前板７の一部の開口１８に設けられた反転部１４が表裏反転できる機構は、例えば、図５、及び、図６に示すようなものが挙げられる。つまり、前板７の一部に開口１８が設けられ、この開口１８よりもひと回り小さい板状の反転部１４が、その幅方向の中央に設けられた支点１６によって、前板７の開口１８に水平方向に回転可能な状態で固定される。反転部１４と開口１８との間には、反転部１４が前板７と接触して回転を邪魔しないように、隙間１９が設けられる。これにより、反転部１４の表裏の反転が容易となる。また、隙間１９には係止体２０が設けられ、反転部１４が回転して前板７と平行になる位置で、反転部１４を一旦係止できるようにするのが望ましい。さらに必要に応じて、ロック機構を設けるのが望ましい。これにより、反転部１４を回転する必要の無い時に、反転部１４が回転して、邪魔になったり、手を挟んだりするのを防止することができる。
【００２３】
前板７と側板８と背板９と底板１０とからなる引出し箱１１は、前後にスライドするトレー２１を備えるのが望ましい。これにより、反転部１４の収納用部材１２が引出し６の外側にある場合は、トレー２１を前板７側にスライドさせておくことで、引出し６を少し開けるだけで、トレー２１に収納した収納物の出し入れが可能となる。また、収納用部材１２を備えた反転部１４が反転する際には、トレー２１が回転する反転部１４によって押されて引出し箱１１の奥側にスライドすることで、反転部１４の反転を邪魔しないようにすることができる。
【００２４】
図３に示すように、反転部１４に取付けられた収納用部材１２は、取っ手２２を有するのが望ましい。これにより、反転部１４を反転し、収納用部材１２を前板７の表面側とした場合、収納用部材１２の外側に設けた取っ手２２によって、引出し６を操作することが可能となる。また、収納用部材１２を反転部１４から着脱する際も使い勝手をよくすることができる。
【実施例】
【００２５】
本実施例のキッチン用キャビネットは、図１に示すように、シンク２と、コンロ３と、ワークトップ４と、これらを支えるキャビネット５と、このキャビネット５に設けられた引出し６と、この引出し６の一部に反転部１４を有し、この反転部１４に収納用部材１２を取り付けたものである。
【００２６】
シンク２は、ワークトップ４に設けられ、ステンレス鋼板をプレス成形加工したもので、シンク２の底面および周壁、シンク穴等の排水構造を有するものを使用した。コンロ３は、ＩＨコンロを使用した。ワークトップ４は、ステンレス鋼板をプレス成形加工したものを使用した。キャビネット５は、ワークトップ４の下方に設けられ、ワークトップ４、および、これに設けられたシンク２やコンロ３を支えるとともに、収納として引出し６を備えるものを使用した。
【００２７】
図２に示すように、引出し６は、キャビネット５に設けられ、前板７と、側板８と、背板９と、底板１０とを有し、これらによって、引出し箱１１を構成した。そして、前板７の一部には水平方向に回転可能とした反転部１４を設けた。この反転部１４の一方の面には収納用部材１２を設け、もう一方の面には取っ手１５を設けた。これらの収納用部材１２を設けた面と取っ手１５を設けた面の両方に、引出し６の前板７と統一感のある化粧板を使用した。また、引出し６は、比較的深さのあるもので、引出し箱１１の上方に収納用部材１２が収納できる空間を有するものを用いた。
【００２８】
収納用部材１２は、樹脂を成形したものを用い、反転部１４にフック（図示しない。）で着脱可能な状態で固定した。また、図３に示すように、調理や洗い物などの作業で使用するおたまやフライ返しなどの調理器具、調味料、あるいは、洗い終わった食器や洗い物に使用する洗剤、たわしなどを収納できるように、収納用部材１２の構造は、ポケットのように、上方向に開口を有し、下方に底を有するものとした。
【００２９】
収納用部材１２の幅や高さは、図４に示すように、前板７の一部に設けられた反転部１４と同等以下にした。また、収納用部材１２の水平断面は、垂直方向のどの部分においても、図５に示すように、反転部１４の片面に突き出して、反転部１４の幅方向の中央の支点１６を中心に反転部１４が回転する際に描く円１７の範囲内に入る形状のものとした。
【００３０】
図２から図４に示すように、引出し６の前板７の反転部１４は、水平方向に回転可能とすることで、表裏が反転できるようにした。反転部１４が表裏反転できる機構は、図５、及び、図６に示すようなものとした。つまり、前板７の一部に開口１８を設け、この開口１８よりもひと回り小さい板状の反転部１４を、その幅方向の中央に設けられた支点１６によって、前板７に水平方向に回転可能な状態で固定した。反転部１４と開口１８との間には、反転部１４が前板７と接触して回転を邪魔しないように、隙間１９を設けた。また、隙間１９には弾性体を用いた係止体２０を設け、反転部１４が回転して前板７と平行になる位置で、反転部１４を一旦係止できるようにした。
【００３１】
前板７と側板８と背板９と底板１０とからなる引出し箱１１には、前後（図４の矢印方向）にスライドするトレー２１を備えた。
【図面の簡単な説明】
【００３２】
【図１】実施例のキッチン用キャビネットの斜視図である（収納用部材が前板の表面側にある状態）。
【図２】実施例のキッチン用キャビネットに使用した引出しの斜視図である（収納用部材が前板の裏面側にある状態）。
【図３】実施例のキッチン用キャビネットに使用した引出しの斜視図である（収納用部材が前板の表面側にある状態）。
【図４】実施例のキッチン用キャビネットに使用した引出しの斜視図である（反転部が表裏反転する途中の状態）。
【図５】実施例のキッチン用キャビネットに使用した反転部を上方から見た透視図である。
【図６】実施例のキッチン用キャビネットに使用した前板と反転部の正面図である。
【図７】従来のキッチン用キャビネットの収納用部材の側面図である。
【符号の説明】
【００３３】
１ キッチン用キャビネット ２ シンク
３ コンロ ４ ワークトップ
５ キャビネット ６ 引出し
７ 前板 ８ 側板
９ 背板 １０ 底板
１１ 引出し箱 １２ 収納用部材
１３ 収納物 １４ 反転部
１５ 取っ手 １６ 支点
１７ 円 １８ 開口
１９ 隙間 ２０ 係止体
２１ トレー ２２ 取っ手
【特許請求の範囲】
【請求項１】
シンクと、コンロと、ワークトップと、これらを支えるキャビネットと、このキャビネットに設けられた引出しとを有するキッチン用キャビネットにおいて、
前記引出しが、前板と、側板と、背板と、底板とを有し、
前記前板の一部に設けられた反転部が、収納用部材を備えるとともに、表裏反転するキッチン用キャビネット。
【請求項２】
請求項１において、
前板がその一部に開口を有し、
この開口に反転部が設けられ、この反転部の幅方向の中央に設けられた支点によって、前記前板に水平方向に回転可能な状態で固定されたキッチン用キャビネット。
【請求項３】
請求項１または請求項２において、
前板と側板と背板と底板とからなる引出し箱が、前後にスライドするトレーを備えたキッチン用キャビネット。
【請求項４】
請求項１から請求項３の何れかにおいて、
反転部に備えられた収納用部材が、前記反転部から着脱可能であるキッチン用キャビネット。
【請求項５】
請求項１から請求項４の何れかにおいて、
反転部に備えられた収納用部材が、取っ手を有するキッチン用キャビネット。
【請求項１】
シンクと、コンロと、ワークトップと、これらを支えるキャビネットと、このキャビネットに設けられた引出しとを有するキッチン用キャビネットにおいて、
前記引出しが、前板と、側板と、背板と、底板とを有し、
前記前板の一部に設けられた反転部が、収納用部材を備えるとともに、表裏反転するキッチン用キャビネット。
【請求項２】
請求項１において、
前板がその一部に開口を有し、
この開口に反転部が設けられ、この反転部の幅方向の中央に設けられた支点によって、前記前板に水平方向に回転可能な状態で固定されたキッチン用キャビネット。
【請求項３】
請求項１または請求項２において、
前板と側板と背板と底板とからなる引出し箱が、前後にスライドするトレーを備えたキッチン用キャビネット。
【請求項４】
請求項１から請求項３の何れかにおいて、
反転部に備えられた収納用部材が、前記反転部から着脱可能であるキッチン用キャビネット。
【請求項５】
請求項１から請求項４の何れかにおいて、
反転部に備えられた収納用部材が、取っ手を有するキッチン用キャビネット。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【公開番号】特開２００８−２００２６３（Ｐ２００８−２００２６３Ａ）
【公開日】平成２０年９月４日（２００８．９．４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−３９３１２（Ｐ２００７−３９３１２）
【出願日】平成１９年２月２０日（２００７．２．２０）
【出願人】（３０１０５０９２４）株式会社日立ハウステック (234)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年９月４日（２００８．９．４）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年２月２０日（２００７．２．２０）
【出願人】（３０１０５０９２４）株式会社日立ハウステック (234)
【Ｆターム（参考）】
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