説明

キノコを保存するための装置、システム、及び方法

マッシュルーム(Agaricus bisporus mushroom)の鮮度を延長するための方法が記載される。一実施形態では、方法は、マッシュルームと接触する改質雰囲気を提供するステップを含む。改質雰囲気は、体積で14%から18%の酸素と、体積で5%から9%の二酸化炭素とを含む。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]本発明は、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれる、2005年10月7日出願の米国特許仮出願第60/725,140号明細書の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
[発明の分野]
[0002]本発明は、一般に、キノコの保存に関し、より詳細には、小売商業環境において、通常生のキノコに関する特性を保ちながらマッシュルーム(Agaricus bisporus mushroom)を保存することに関する。
[発明の背景]
【0003】
[0003]消費者が追加の工程をほとんど又はまったく行わずに使用するための準備ができている、切られている生の果物又は野菜(「付加価値製品」と呼ばれることがある)は、生鮮製品市場の最も急速に成長している区分を構成している。キノコの場合、外観及び清浄度が、消費者がキノコの鮮度又は品質の評価する際に用いる2つの主な要素である。付加価値製品の定義を満たすためには、キノコは通常、それらを使用する前に表面のくずを除去するための洗浄を必要とする。しかし、従来から、洗浄されていないキノコは、洗浄されたキノコよりも良好な長期間の保存特性を示してきた。
【0004】
[0004]いくつかの一般的な果物及び野菜を保存するための技術が開発されてきたが、そのような開発は、キノコのための指針をほとんど提供していない。菌類であるキノコは、通常、食料品店で見られる他の一般的な果物及び野菜と比べて、非常に異なった特性を有する。実際、キノコは、それぞれが互いに非常に異なることがあり、多くの異なる属に属し、同じ組の状態下で、様々な成長パターン、呼吸、及び、別の反応を示すことがある。例えば椎茸(shitake mushroom)は、マツオウジ(Lentinus)属に属し、それらの呼吸は保存剤として働くエチレンを生み出すので、封止された袋の中に保存されることが多い。しかし、封止された袋は、標準的な商業用マッシュルーム菌株など、別のタイプのキノコの保存には望ましくない。ハラタケ(Agaricus)属の菌株は、呼吸により、ボツリヌス中毒症に関連するボツリヌス菌(Clostridium botulinum)など、嫌気性細菌の危険な成長を引き起こすことがある状態を、封止された袋の内部に生み出す可能性がある。
【0005】
[0005]キノコの保存に関するいくつかの問題は、それらの特有の代謝により生じる。キノコは高い呼吸量を示し、したがって、代謝により多量の水分を放出する可能性がある。これは、洗浄工程中に加わる水分と並んで、微生物の急速な成長及び早期変色の一因となる可能性がある。そのため、商業的に食品の包装に使用されるいくつかのタイプの固体の(無孔の)フィルムは、水分を十分に逃がさないので望ましくない。別のタイプの固体のフィルムは、水分の十分な移送を可能にするかもしれないが、キノコの呼吸によって生じる危険な酸素欠如状態を回避するための、十分な酸素の移送をもたらさないおそれがある。従来の試みはまた、高い水分レベルを回避するために穴が設けられた、有孔フィルムの使用も含んでいた。残念ながら、穴の存在は、過度な水分損失、及び、穴付近のキノコの細胞の乾燥の一因となった。
【0006】
[0006]こうした背景に対抗して、本明細書に記載される、キノコを保存するための装置、システム、及び方法を開発する必要が生じた。
[発明の概要]
【0007】
[0007]一態様では、本発明は、マッシュルームの鮮度を延長するための方法に関する。一実施形態では、方法は、マッシュルームと接触する改質雰囲気(modified atmosphere)を提供するステップを含む。改質雰囲気は、体積で14%から18%の酸素と、体積で5%から9%の二酸化炭素とを含む。
【0008】
[0008]別の態様では、本発明は、マッシュルームを保存するための容器に関する。一実施形態では、容器は、内部空間を規定し1組の穴を有する、1組の壁部を備え、1組の穴は、穴を通した呼吸ガスのほぼ均等な拡散を提供するように離隔される。穴は、5インチ水注(inches of water)の圧力差が加えられるとき、容器内に保存されるマッシュルーム1オンスにつき0.2標準立方フィート/時から0.6標準立方フィート/時の範囲内の空気流量を提供する。
【0009】
[0009]本発明の、別の態様及び実施形態もまた企図される。上記の概要及び以下の詳細な説明は、本発明を何らかの特定の実施形態に限定することが意図されず、本発明のいくつかの実施形態を説明することのみが意図される。
【0010】
[0010]本発明のいくつかの実施形態の性質及び目的をよりよく理解するために、添付の図面と併せて読まれる以下の詳細な説明が参照されるべきである。
【発明の詳細な説明】
【0011】
[詳細な説明]
概要
[0012]本発明の実施形態は、キノコの保存寿命を高め、食品の安全性をもたらし、それらの外観を保つ、キノコの保存の改善に関する。これらの改善による利益を受けることができるキノコは、洗浄されているか洗浄されていないかに関わらず、また完全であるかスライスされているかに関わらず、マッシュルームを含む。
【0012】
[0013]本発明のいくつかの実施形態は、改質雰囲気内での生のキノコの保存を含み、これは、呼吸ガスのレベルを適当に管理することによって達成することができる。いくつかの例では、呼吸ガスの管理は、酸素レベル及び二酸化炭素レベルのいずれか又は両方、並びに任意で、相対湿度(「RH」)の制御を含む可能性がある。例として、生のキノコの保存は、酸素のレベルを(体積で)約10%〜約20%など所望の範囲内に維持すること、二酸化炭素のレベルを(体積で)約2.5%〜約12%などの所望の範囲内に維持すること、及び任意で、RHを(自由液体の水が存在しない状態で)約87%から約100%の所望の範囲内に維持することによって、達成することができる。
【0013】
定義
[0014]以下の定義は、本発明のいくつかの実施形態に関して説明されるいくつかの要素に当てはまる。これらの定義は同様に、本明細書において拡張させることができる。
【0014】
[0015]本明細書で使用される「組」という用語は、1つ又は複数の要素の集合を指す。ある組の要素はまた、その組の部材と呼ぶこともできる。ある組の要素は、同一であり、又は、異なっている可能性がある。いくつかの例では、1組の要素は、1つ又は複数の共通の特性を共有することができる。
【0015】
[0016]本明細書で使用される「任意の」及び「任意で」という用語は、続いて説明される事態又は状況が、生じる場合と生じない場合があり、その事態又は状況が生じる例、或いはその事態又は状況が生じない例を、その説明が含むことを意味する。
【0016】
[0017]本明細書で使用される「生のキノコ」という用語は、収穫時に存在する物理的特徴と実質的に同等の一組の物理的特性を保持する、キノコを指す。いくつかの例では、生のキノコとは、保存寿命を延長するために加熱、缶詰め、又は冷凍が行われていない、キノコを指す。
【0017】
[0018]本明細書で使用される「鮮度」という用語は、収穫時に存在する状態と実質的に同等な状態を指す。いくつかの例では、鮮度は、小売施設の買い物客などの消費者にとって、許容可能な状態を指す可能性がある。そのような状態は、消費者の満足度調査によって、又は、以下の実施例において設定されるような量的基準によって、確立することができる。
【0018】
[0019]本明細書で使用される「保存」という用語は、キノコが収穫からその消費までの間に通過する、1組の段階を指す。これらの段階は、生産者による初期保持、輸送工程、小売業者によるバックルーム内又は小売店の商品棚上での保持、及び消費者による保持を含むことができる。
【0019】
[0020]本明細書で使用される「小売施設」という用語は、キノコが消費者に直接販売される場所を指す。小売施設の一例は、通常キノコが冷蔵環境で陳列され保存される、食料品店である。
【0020】
[0021]本明細書で使用される「実質的に制御されない雰囲気」という用語は、霧、若しくは別の湿潤、又は冷蔵によって生じる可能性がある以外に、呼吸ガスの制御工程が実質的に存在しない雰囲気を指す。そのような実質的に制御されない雰囲気では、二酸化炭素及び酸素のレベルは、地球の通常大気内に存在するレベル、即ち(体積で)1%未満の二酸化炭素、及び(体積で)約21%の酸素と、実質的に同等である可能性がある。キノコのための小売施設では、周囲の状態により、二酸化炭素レベルがいくらか上昇し、酸素レベルがいくらか下降することがあり、実質的に制御されない雰囲気は、そのような通常の変動を包含することが企図される。
【0021】
[0022]本明細書で使用される「改質雰囲気」という用語は、実質的に制御されない雰囲気、又は地球の通常大気内に存在するレベルとは異なる、酸素レベル及び二酸化炭素レベルのいずれか一方又は両方を指す。いくつかの例では、改質雰囲気は、(体積で)21%未満の酸素、及び(体積で)1%を超える二酸化炭素を含むことができる。RHの任意の制御は、比較的高いRH(例えば87%以上)と、自由液体の水(例えば霧又は浮遊液滴の形態の水など)の不在とをもたらすことを含む。
【0022】
[0023]本明細書で使用される「酸素欠如状態」という用語は、(体積で)2%未満の酸素レベルを有する雰囲気を指す。
【0023】
[0024]本明細書で使用される「呼吸ガス」という用語は、二酸化炭素及び酸素のいずれか一方又は両方を指し、前者は呼吸によって生み出され、後者は消費される。(水蒸気の形態の)水もまた、呼吸によって生み出される可能性がある。ただし、本明細書で使用されるように、呼吸ガスの制御は、水蒸気の制御を含む必要はない。
【0024】
[0025]本明細書で使用される「洗浄されたキノコ」という用語は、収穫後に表面のくずを実質的に除去するための処理が行われたキノコを指す。いくつかの例では、汚れの除去、保存、細菌の抑制などを助けるための、1組の薬剤などを含む1組の水溶液を使用する水洗工程を、洗浄されたキノコに行うことができる。水溶液は、洗浄工程において使用される、純水、又は、溶解若しくは懸濁された薬剤を含有する水を含むことができる。水溶液の別の例は、懸濁液、乳濁液、及び別の水混合物を含む。
【0025】
[0026]本明細書で使用される「スライスされたキノコ」という用語は、収穫後に切られたキノコを指す。いくつかの例では、スライスされたキノコは、キノコの傘又は柄が菌床から分離された始点以外の位置で、キノコの傘又は柄の内部が露出されるように、より小さい小片に切られたキノコとすることができる。キノコを切ることは、洗浄後に行うことができるが、追加の洗浄作業を後に行うこともできる。いくつかの例では、切る前に少なくとも1つの水洗作業が行われる場合、キノコを切ることは洗浄後に行われると考えられる。
【0026】
[0027]本明細書で使用される「容器」という用語は、1組のキノコなど別の物体を保有又は保持することができる、何らかの物体を指す。「実質的に不通気性の」容器は、その容器が閉じられたままにされる場合、空気流を可能にする穴が存在しない状態で、時間とともに酸素欠如状態が(例えばキノコの呼吸により、また温度に依存する速度で)内部に生じる容器とすることができる。容器は、容器内に保存されるキノコの体積よりも大きい、内部体積を有することができる。即ち、容器が正常な保存位置にあるときにキノコが実質的に存在しない、内部体積の一部である「空隙体積」に対する、容器が正常な保存位置にあるときにキノコがその中に配置される、内部体積の一部である「キノコ保存体積」の、様々な範囲の相対的比率がある可能性がある。
【0027】
[0028]本明細書で使用される「穴」という用語は、以下の、酸素、二酸化炭素、及び水蒸気のうちの1つ又は複数の流れを可能にする、チャネル又は通路を指す。穴は、固体の材料内に、切削、プラスチック成形、又は別の何らかの適当な工程などにより形成される、物理的な開口又は貫通穴とすることができ、或いは、多孔質又は半多孔質膜の細孔とすることができる。いくつかの例では、容器の内部と外部の間のガス交換をもたらすために、容器の壁部に穴を形成することができる。
【0028】
[0029]本明細書で使用される「穴パターン」という用語は、穴の位置、数、及びサイズなど、1組の穴の配列を指す。穴パターンは、穴を通じて容器の内外に「実質的に均等な」呼吸ガスの拡散をもたらすように間隔をおいて配置された、1組の穴を含むことができる。そのような実質的に均等な拡散により、キノコが呼吸するときの、容器内部の呼吸ガスのレベルのいくらかの変動を可能にすることができる。不均等な呼吸ガスレベルは、キノコの不均一な包装、キノコ間の不規則な接触、及び、特定のキノコから最も近くの、それを通じて拡散が生じる穴への距離の(別のキノコと比べた)差によって生じる可能性がある。実質的に均等な拡散の場合、容器内の異なる位置での呼吸ガスレベルの個々の測定値(例えば少なくとも2つの測定値)は、すべての測定値の平均値から、10%未満又は5%未満など、20%未満だけ異なることができる。
【0029】
[0030]本明細書で使用される「標準立方フィート/時」又は「SCFH」という用語は、容器の壁部を通る空気流の尺度を指す。特に、SCFHは、標準的な状態の温度及び圧力における1立方フィートの空気である、「標準立方フィート」又は「SCF」を参照することによって決定することができる。標準圧力は、1気圧(14.7ポンド/平方インチ(「psi」)、1.01325×10パスカル(「Pa」)、又は760トルとして様々に表される)に相当し、標準温度は、20℃(又は68F°)に相当する。様々な温度及び圧力にて測定された測定値は、式:P/T=P/Tを用いて、標準状態に補正することができる。いくつかの例では、空気流は、87%から100%など容器内に存在することが予想されるRH範囲内で、測定することができる。
【0030】
洗浄工程
[0031]本発明のいくつかの実施形態は、洗浄されたキノコの保存の洗浄工程に関連づけて使用することができる。洗浄工程の一例を以下で説明するが、様々な別の洗浄工程を利用することもできることが認識されるべきである。本明細書において説明される洗浄工程は、洗浄に加え保存特性を提供することができるので、望ましい。この洗浄工程に関するさらなる詳細は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2002年12月31日出願の米国特許第6,500,476号明細書に見ることができる。
【0031】
[0032]本発明の一実施形態によれば、洗浄工程は、(1)約10.5から約11.5のpHを有する抗菌性水溶液と、キノコを接触させることと、(2)エリソルビン酸及びエリソルビン酸ナトリウムを実質的に含まない、有機酸及び有機酸塩を含むpH中和緩衝水溶液と、キノコを1回又は複数回接触させることと、(3)褐変抑制剤及びキレート剤を含む溶液と、キノコを1回又は複数回接触させることとを含む。
【0032】
[0033]有利には、洗浄工程は、3つの別個の作業段階、即ち(1)抗菌段階、(2)中和段階、及び(3)抗褐変段階を含むとみなすことができる。第1の段階で、洗浄工程は、完全な又はスライスされたキノコのための抗菌処理剤として、高pH溶液を使用する。この処理剤は、微生物負荷、及びそれに伴うキノコ組織の微生物による腐敗及び褐変を、大幅に低減することができる。高pH溶液への露出によるキノコの傘の組織の損傷を低減するために、洗浄工程は、高pH溶液への露出に続いて行われる中和段階を含む。洗浄工程はまた、酵素的褐変に対処するための抗褐変段階を含む。抗褐変段階は、細胞組織を維持し、褐変抑制を促進するために、カルシウムなどの、抗酸化剤又は褐変抑制剤を含む、抗褐変溶液を組み込むことができる。さらなる褐変抑制をもたらすために、エチレンジアミン四酢酸(「EDTA」)を使用することができる。中和段階と抗褐変段階を分けることによって、比較的高価な抗褐変溶液の減少を抑えることにより、洗浄工程のコスト効率をより高めることができる。
【0033】
[0034]より具体的には、洗浄工程の抗菌段階は、約10.5から約11.5のpHを有する抗菌性緩衝溶液とキノコを接触させることを含むことができる。所望のpHを達成するために、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなど多種多様な化合物を、単独で、又は組み合わせて、この溶液中で使用することができる。いくつかの例では、重炭酸ナトリウムと炭酸ナトリウムの組合せが望ましい。(重量で)約0.3%から約0.5%の重炭酸ナトリウムと、(重量で)約0.05%から約0.10%の炭酸ナトリウムは、特に良好となり得る。いくつかの実施例では、抗菌性緩衝溶液との最初の接触は、周囲温度約25℃で約20秒から約40秒間実行される。より大きい抗菌作用をもたらすために、いくらか高められた温度を用いることができるが、これらの高められた温度は、溶液中の停滞時間をより短くする可能性がある。
【0034】
[0035]次に、有機酸及び有機酸塩を含むが、エリソルビン酸及びエリソルビン酸ナトリウムを実質的に含まない、少なくとも1つのpH中和緩衝水溶液と、キノコを1回又は複数回接触させることができる。この中和段階は、キノコのpHを実質的にそれらの正常なpHまで低減させるために行われ、浸漬、吹付け、又はカスケーディングなど、従来の何らかの手段により、緩衝溶液を塗布することによって達成することができる。いくつかの例では、緩衝溶液は、約3.0から約5.0のpHを有する。塩の調製に使用される酸及び塩基は、クエン酸及びクエン酸ナトリウムなど、弱酸及び弱塩基とすることができる。例えば、約3.5のpHを有する0.1Nのクエン酸溶液を、有効に使用することができる。有機酸の別の例は、リンゴ酸、酢酸、リン酸、及び乳酸を含む。接触時間は、例えば抗菌段階後のキノコのpH、及び緩衝溶液の体積とともに変えることができ、約10秒から約30秒の範囲とすることができる。
【0035】
[0036]洗浄工程の抗褐変段階は、褐変抑制剤及びキレート剤を含む少なくとも1つの溶液と、キノコを1回又は複数回処理することを含むことができる。チロシナーゼの作用を遅らせるために、多種多様な褐変抑制剤を使用することができる。これらの褐変抑制剤は、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、アスコルビン酸、及びアスコルビン酸カルシウムなど、還元剤を含む。銅に対する高い親和性を有する、多種多様なキレート剤を使用することができる。これらは例えば、果物及び野菜上での使用が現在許可されており、米国食品医薬品局によって一般的に安全と認められた(「GRAS」)、ヘキサメタリン酸ナトリウムなど、ポリリン酸塩を含むことができる。EDTAカルシウム二ナトリウムもまた、いくつかの応用例にとって特に十分となり得る。いくつかの実施形態では、抗褐変段階で使用される溶液はまた、塩化カルシウムを含むことができる。
【0036】
[0037]いくつかの例では、最適なpHを維持するために、個々の溶液のpHを監視することができる。また、キノコの酵素的褐変の抑制を促進するために、エリソルビン酸ナトリウムの濃度を監視することができる。
【0037】
[0038]いくつかの応用例では、洗浄工程は、連続的な工程として実施することができ、この工程でキノコは、損傷が低減され、褐変が低減され、活性成分の減損が抑えられる状態で、第1のタンク内に導入され、各段階を通って搬送される。重炭酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムの溶液は、第1段階で高いpHを達成するために、水酸化ナトリウムを用いて調整し、少なくとも約25℃の温度に維持することができる。第1段階の後に、キノコのpHを、キノコにとってより生理学的に許容可能である約6.5に、迅速に調整することができる。このpHの迅速な還元は、工程の第2段階中に、又はすすぎ作業の一部として、達成することができる。すすぎ作業は、有機酸及び有機酸塩から作られた周囲温度のクエン酸緩衝液を収容する、タンク内で行うことができる。溶液の消費を抑えるために、キノコは、約10秒から約30秒を超えて第2段階に留まることはできない。キノコは次いで、(例えば溶液の消費を抑えるために)浸漬深さを減少させた状態で、コンベヤによって第3段階に移送することができる。第3段階で使用される溶液は、周囲温度に維持することができ、酵素的褐変用の処理剤として、エリソルビン酸ナトリウム、塩化カルシウム、及びEDTAを含むことができる。キノコは、約20秒から約40秒間、この溶液中に留まることができる。3段階工程の間の浸漬又は溶液露出時間の合計は、約50秒から約110秒までに制限することができる。
【0038】
キノコの保存
[0039]本発明のいくつかの実施形態は、キノコと接触し、又はそれを取り囲む、改質雰囲気を提供することによりキノコの保存が改善されるという、出願人らの発見に基づいて実施される。この改質雰囲気は、実質的に制御されない雰囲気又は地球の通常大気中に存在する酸素及び二酸化炭素と比べて、より低いレベルの酸素及びより高いレベルの二酸化炭素を含むことができる。例えば、この改質雰囲気は、約14%から約18%又は約15%から約17%などの(体積で)約10%から約20%の範囲内の酸素レベル、及び、約5%から約9%又は約6%から約8%などの(体積で)約2.5%から約12%の範囲内の二酸化炭素レベルを含むことができる。任意で、この改質雰囲気はまた、RHを、(自由液体の水がない状態で)約88%から約94%、又は約88%から約92%などの約87%から約100%の範囲内となるように制御することも含むことができる。
【0039】
[0040]改質雰囲気は、様々な方法で達成することができる。いくつかの実施形態では、以下でさらに説明されるように、所望の改質雰囲気を提供するために、軟らかい保存袋又は硬いクラムシェル包装の形態で容器を使用することができる。これは、1組の穴の使用、又は1組の透過性若しくは半透過性の膜の使用、或いはそれら両方によって、容器に出入りするガスの流れを制御することにより達成することができる。別の実施形態では、キノコは、消費者が所望の量のキノコを選択することができるように、容器に入れずに販売することができる。これらの実施形態では、自動的に閉じる蓋を有する容器内にキノコを配置することができ、所望の改質雰囲気を維持するために、改質雰囲気が、圧縮ガスタンク、又は大気圧抽出装置から、容器内に給送される。
【0040】
[0041]例えば容器は、容器の内部と容器を取り囲む周囲雰囲気との間のガス交換率を制御するための、1組の穴を設けることにより、定常状態の改質雰囲気を達成するように実施することができる。容器内の雰囲気は通常、通常の酸素及び二酸化炭素レベル、並びに、キノコが容器内に配置される周囲雰囲気のRHから始まる。次いで、容器の内部の雰囲気は、通常、時間とともにキノコが呼吸するにつれて変化し、酸素レベルが低下し、二酸化炭素レベル及び水蒸気レベルが上昇する。容器の内部と周囲雰囲気との間に、濃度勾配が発達する可能性がある。穴の両側上のこれらの濃度勾配により、穴を通して呼吸ガスを拡散させることができる。特に、酸素が入り込み、細胞呼吸によって使用された酸素を入れ替えることができる一方、細胞呼吸の結果として蓄積されてきた二酸化炭素及び水蒸気が、抜け出すことができる。最終的に、呼吸ガスを生産し使用するキノコの量と、ガス交換を可能にする穴の面積とに応じた特定のレベルを有する、呼吸ガスの定常状態レベルを、容器の内部で達成することができる。
【0041】
[0042]自由液体の水がない状態で高いRHを維持しながら、所望の酸素及び二酸化炭素レベルを達成するために、キノコを保存するための容器は、通常穿孔される。例えば、物理的な開口の形態の穴を、それを設けなければ、水蒸気の運動並びに周囲雰囲気との酸素及び二酸化炭素の交換を制限する、容器内に設けることができる。穴は、酸素欠如状態を回避するために、酸素の補充及び二酸化炭素の排出を十分に提供することができる。穴の数及びサイズを選択することにより、穴の総面積を制御することによって、適当な定常状態を達成することができる。所望の定常状態はまた、透過性又は半透過性の膜を穴と組み合わせて使用することによって達成することもできる。
【0042】
[0043]容器内に形成される穴の位置、サイズ、及び数を考慮すると、呼吸ガスの実質的に均等な拡散に関する満足な結果を提供するために、様々なバリエーションを用いることができる。いくつかの例では、容器内部の大部分又は全体と、周囲雰囲気との間でガス交換が生じるように、容器の1つ又は複数の壁部に、穴パターンを形成することができる。穴は、容器の周りに実質的に均一に離隔することができる。ただし、そのような均一な離隔は、すべての応用例で必要とされるわけではない。実際、呼吸ガスの拡散は、比較的急速となる可能性があり、穴の間隔のバリエーションの原因となる可能性があるので、様々な穴パターンを使用することができる。特に、濃度勾配が発展して、内部で発生した呼吸ガスがさらに遠くに位置する穴のうちのある1つから拡散することを促進する可能性があり、一方酸素は、同様の方法で内側に拡散することができる。即ち、容器の壁部の列に沿った(又は互いに離れたいくつかの列に沿った)一連の穴は、適当に均一なガス交換を提供することができる。そのような穴の列は、容器が例えば軟らかいフィルム保存袋である場合、比較的容易に製造することができる。一方、表面上の2次元のアレイ内に離隔された穴もまた、満足なものである可能性があり、多くの技法により容易に製造することができる。多くの満足な穴パターンは、どのキノコからの最も近い穴までの距離も、容器の特徴的寸法(例えば長さ)の約4分の1未満などの、特徴的寸法の約3分の1未満となるように、1組の穴を離隔することができる。いくつかの例では、キノコと最も近い穴との間の絶対距離は、約40mm未満、又は約20mm未満などの、約60mm未満とすることができる。容器の形状又は存在するキノコの重量が変わる一方で、これらの距離を維持することができる。距離がより長い場合、(例えば、層間に間隔を有するキノコの層をもたらす棚を、大きい容器内に設けることなどによる)内部形状及び自由気体の体積の特定の構成によっても、満足な結果をもたらすことができる。
【0043】
[0044]強制的な交換がない場合、容器の内部と外部の間のガス交換は通常、拡散によって生じる。ただし、温度及び圧力を変えることによって、容器の内部体積をいくらかの拡大及び縮小させ、それによって強制的な交換と同様の状態を作り出すことができることに留意されたい。いくつかの実施形態では、所望の全体的な拡散速度をもたらすための穴パターンを選択するために、強制空気流測定技法を使用することができる。強制空気流測定は、同一の温度及び圧力条件の下では、気体の拡散速度はそれらのモル質量の平方根に反比例すること、即ち
【数1】


を表す、グレアムの拡散の法則に基づくことができる。流出、即ち圧力をかけられた気体が小さい開口を通過することによってある区画から逃れるプロセスの、相対速度を決定するために、これと同じ式を使用することができる。したがって、様々な種類の気体混合物のための相対拡散速度を、相対流出速度に関連づけることができるので、流出速度の測定は、気体の混合物の拡散速度を決定するために使用することができる。気体混合物の個々の種類の実際の拡散速度は、通常、特定の圧力条件下で測定される流出速度と比例し、測定された後に、キノコ保存のための適当な穴パターンを決定するために使用することができる。
【0044】
[0045]本発明のいくつかの実施形態の実行に満足な拡散速度の推定値は、所与の穴パターンを有する容器に出入りする空気流の速度を、特定の圧力条件下で測定することによって決定することができる。より多量のキノコは、より多量の呼吸ガスを生み出す可能性があり、したがって、より高い拡散速度を扱うためのより大きい穴面積を必要とする可能性があるので、この流量は、容器内に存在するキノコの重量を考慮に入れることができる。容器の内部と周囲雰囲気との間の、5インチ水柱(1インチ水柱=2.49089×10Pa)の圧力差を用いると、1オンスのキノコにつき約0.3から約0.45SCFHなど、1オンスのキノコにつき約0.2から約0.6SCFHの範囲内の流量で満足な結果を達成することができることが、本出願人により発見されている。この所望の範囲は、温度及び周囲雰囲気の圧力の通常の変動の影響を比較的受けにくいが、試験は、20℃及び1気圧の標準条件、又はその付近で実施されると仮定することができる。例として、容器は、例えばおよそ毎時150立方センチメートルなどの酸素拡散速度を有するように、この所望の範囲(例えば1つの標準的なキノコ包装のサイズで4mmの開放面積)に基づいて実施することができる。
【0045】
[0046]本発明のいくつかの実施形態では、所望の定常状態の改質雰囲気を達成するために、1組の穴のサイズ、数、及び位置の組合せを選択することができる。そのような実施形態の1つでは、1オンスのキノコにつき約0.08mmから約0.20mm、又は約0.125mm(±10%)の開放面積など、1オンスのキノコにつき約0.05mmから約1.5mmの開放面積を提供するように、穴の数及びサイズを選択することができる。それぞれ約150μmから約600μmの特徴的寸法(例えば直径)を有する穴を、1オンスのキノコにつき1つから6つの範囲で、容器の1組の壁部に配置することができる。小売目的で設計された容器内で、高いRHから低いRHへの勾配を生み出すために、1組の穴を少なくとも部分的に、キノコから離れたヘッダ領域に配置することができる。この勾配は、所望の水蒸気の移動を提供し、キノコを取り囲む所望のRHを維持する。ただし特に、空隙体積が容器底部にあるキノコから離れている可能性がある、より大きい容器の場合、1組の穴をキノコの付近に配置することもできる。キノコの単位重量あたりの穴のサイズと数のこの組合せ(並びにそれらの位置)によって、所望のレベルの酸素、二酸化炭素、又はRHを、保存中の容器の空隙体積(例えば頭部空間)内に発展させることが可能になる。容器内の拡散は、容器全体にわたり、比較的均等なレベルの、酸素、二酸化炭素、及びRHを保証することができる。
【0046】
[0047]以下の表1は、本発明のいくつかの実施形態に従って実施される容器のための、設計パラメータを説明する。
【表1】

【0047】
[0048]図1から図4は、本発明のいくつかの実施形態に従って実施することができる、保存袋100、200、300、及び400を示す。保存袋100、200、300、及び400は、それらの端を曲げて封止する前の、平坦なポリマーフィルム又はシートとして示す。
【0048】
[0049]図1を参照すると、保存袋100は、「横置き(lay down)」袋、即ち、実質的に水平な通常保存位置を有する袋として実施され、約4オンスまでのキノコを保有することができる。保存袋100は、折曲げ及び封止時に保存袋100の両面上に「互い違い」構成で配列される、第1組の貫通穴102及び第2組の貫通穴104を含む、穴パターンを有する。
【0049】
[0050]図2に示すように、保存袋200は、「縦置き(stand−up)」袋、即ち、実質的に垂直な通常保存位置を有する袋として実施され、約8オンスまでのキノコを保有することができる。保存袋200は、第1組の貫通穴202及び第2組の貫通穴204を含む穴パターンを有し、これらの貫通穴は、折曲げ及び封止時に、保存袋200の両面上に「互い違い」構成で配列される。
【0050】
[0051]保存袋200と同様に、図3に示す保存袋300は、「縦置き」袋として実施される。保存袋300はまた、第1組の貫通穴302及び第2組の貫通穴304を含む穴パターンを有し、これらの貫通穴は、折曲げ及び封止時に、保存袋300の両面上に「互い違い」構成で配列される。
【0051】
[0052]次に図4を見ると、保存袋400は、「横置き」袋として実施され、約40オンスまでのキノコを保有することができる。保存袋400は、第1組の貫通穴402及び第2組の貫通穴404を含む穴パターンを有し、これらの貫通穴は、折曲げ及び封止時に、実質的に均等に離隔された列として保存袋400の両面上に「対向」構成で配列される。
【0052】
[0053]上記で説明される特定の実施形態は、例として提供されるものであり、様々な別の実施形態も企図されることが理解されるべきである。例えば、湿度管理は、容器内に配置されるキノコの量が、(同様の考察をより少量のキノコに当てはめることもできるが)例えば約16オンスなどある閾値を超える場合に、より大きな問題となる可能性がある。特に、容器が「縦置き」袋として実施される場合、キノコは、容器の底部に集まる傾向を有する可能性があり、それによって、容器内のキノコの断面又は密度の膨らみ又は増大を生じる可能性がある。この断面の増大は、酸素と二酸化炭素の交換を大幅には妨げないが、包装内に望ましくない湿度レベルの上昇を生み出す可能性がある。いくつかの例では、穴パターンの調整では、酸素及び二酸化炭素の所望のレベルを損なわずに、この湿度レベルの上昇に適当に対処することができないことがある。
【0053】
[0054]本発明のいくつかの実施形態によると、そのような湿度レベルの上昇に対処するために、2つの手法を用いることができる。1つの手法では、容器内のキノコの最大深さが制御されるように、容器を「横置き」袋として実施することができる。別の手法では、容器は、所望の水蒸気透過率(「MVTR」)を提供する、フィルム又はフィルムの積層を用いて実施することができる。この手法では、所望の酸素レベル及び二酸化炭素レベルを維持するために、穴パターンをフィルム又はフィルムの積層に形成することができる。所望のフィルムの例は、(米国材料試験協会によって規定された手順によって決定されるような)約0.4〜約1.5g/m・24時間・気圧などの、約0.3〜約2.0g/m・24時間・気圧の範囲内のMVTRを有する、ポリマーフィルムを含む。ポリマーフィルムの例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタラート、ナイロン、又はそれらの組合せによって形成される、フィルムを含む。以下の表2は、満足な結果を提供するために使用することができる積層の、具体的な例を説明する。
【表2】

【実施例】
【0054】
[0055]以下の実施例は、当業者のための説明を例示及び提供するための、本発明のいくつかの実施形態の具体的な態様を説明する。本実施例は、本発明のいくつかの実施形態の理解及び実行に有用な、具体的な方法論を提供しているに過ぎないので、本実施例は、本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【0055】
実施例1
[0056]様々な試験で使用された一般プロトコルを、以下で説明する。
【0056】
原料
[0057]交配種のオフホワイト種マッシュルームが、試験に使用された。商業的に栽培されるキノコにはばらつきがあるため、すべての試験は、商業的な環境での使用の指標となる結果を試験が提供することを保証するために、商業的な条件下で生産され収穫されたキノコ上で実行された。従来のプロトコルを超える等級付けは行われなかった。ただし試験は、(キノコ業界では「ブレーク」又は「フラッシュ」とも呼ばれる)様々な成熟度及び収穫数で完了された。フラッシュ1、2、及び3は、異なる品質及び保存寿命特性を示した。試験は、全体的に、第2ブレークのキノコを使用して行われた。ただし、試験はまた、一般プロトコルが様々なキノコで機能することを確認するために、別のブレーク及び品質のキノコ上でも行われた。収穫されたキノコは、処理前に約4℃(又は約38F°〜42F°)で保存された。収穫後に、キノコは、米国特許第6,500,476号明細書に記載されるように洗浄及び処理され、次いで包装された。試験は、完全なキノコ及びスライスされたキノコ上で行われた。スライスされたキノコは、Walkerスライサ(Dutch Tech−Source社)を用いて約1/4インチの厚さに調製され、1つのティル(till)又は1袋に量り分けられる。
【0057】
品質測定
[0058]キノコの変色の程度を、1日ごとの間隔で、対照である同じ生産ロットからの従来通りに包装されたキノコに対して測定することによって、白色度及び質感を維持するための異なる包装の有効性が判定された。変色の程度は、Minolta社の色彩計モデルBC−10(ニュージャージー州、モーウォー、Konica Minolta社)を使用し、L及びY成分を使用する比較を用いて記録された。すべての測定値は、ひだ又は柄の組織から離れた、切られたキノコのプロファイルの中心にて測定された。袋は、インパルスシーラ(カリフォルニア州、ウォールナットクリーク、Impulse Dynamics社)を用いて封止され、商業的な保存条件を模倣するために、輸送用段ボール箱内に梱包された。
【0058】
[0059]品質及び保存寿命を評価するために、主観的評価尺度が使用された。
総合及び白色度:1最低、5最高
細菌成長:1=大量の細菌成長、5=細菌成長がみられない
ひだの色:1=非常に暗い色のひだ、5=ピンク、又は非常に明るい色のひだ
柄の伸長:1=極度な伸長、5=明らかな伸長がみられない
【0059】
容器の調製
[0060]有孔袋が、直鎖低密度ポリエチレン(厚さ1.75ミル、飲食業サイズの袋)、又は積層(2.0ミルのポリエチレン及び0.48ミルのポリエチレンテレフタラート)の、いずれかから製造された。穴は、レーザパンチを使用して形成された。穴パターンは、多数の列(通常1袋につき3列、及び通常1列につき穴10個)を含んでいた。いくつかの例では、穴は、袋内の所望の位置にて所望の数の穴を提供するために、テープで覆われた。穴はまた、以下でさらに説明されるように、袋の頂部から様々な距離に配置された。穴は、円形ではなく、全体的に長円形(例えば楕円形)であった。穴のサイズは、以下の実施例で行われた試験では、全体的に約150×250μmであった。穴の数は、袋の重量及び表面積に応じて、1袋につき約15個と100個の間の範囲であった。結果的に得られた袋の特性を、以下の表3で説明する。
【表3】

【0060】
[0061]「X×Y×Z」の表記は、3列の穴を指し、1列目にX個の穴、2列目にY個の穴、及び3列目にZ個の穴がある。表3で説明した穴パターンは、1袋につき0.4〜4.0mmの総開放面積を生じ、5インチ水柱の圧力差で、1つの穴につき約0.15〜約2.0SCFHの間の流量を示した。比較目的で使用されたティルは、1つの容器につき61.33mmの開放面積を有していた。
【0061】
呼吸ガスレベルの測定
[0062]呼吸ガスのレベルは、PBI Dansensor Checkpoint O/COアナライザ(ニュージャージー州、グレンロック)を使用して測定された。試料採取領域は、少量の可撓性シリコーンが塗布された1片のテープを、袋上に配置することによって調製された。アナライザからの針が、気体試料採取のためにシリコーンを貫通して挿入された。この手順に従うことにより、外部空気からの混入が低減された。
【0062】
実施例2
[0063]多数の異なる有孔袋からのデータをまとめたものを、測定された頭部空間内の二酸化炭素のレベルに基づき、3つに分類して以下で説明する。3つの分類は、(1)二酸化炭素レベルに有効であると考えられる範囲未満、(2)二酸化炭素レベルに有効な範囲内、(3)二酸化炭素レベルに有効な範囲より高い、である。
【表4】

【0063】
[0064]実施例1において上記で説明した評価尺度を用いる表4を参照すると、以下の結論を引き出すことができる。
(1)5%〜9%の範囲の二酸化炭素レベルと、14%〜17%の範囲の酸素レベルの組合せは、最高の総合評価を生じた。
(2)高い範囲の二酸化炭素レベルは、非常に優れた細菌制御をもたらしたが、この高い範囲は、キノコの薄茶色の変色を示し、したがって、色及び総合評価の低下を生じた。
(3)中間の範囲の二酸化炭素レベル(5〜9%)は、柄の伸長の良好な制御をもたらした。
(4)低い二酸化炭素レベルと高い酸素レベルの組合せは、白色度以外のすべてのパラメータにおいて最低の評価を生じた。色が唯一の品質基準として用いられるならば、より低い二酸化炭素レベル(<5.0%)が望ましいであろう。
【0064】
実施例3
[0065]キノコは、上記のように調製され、包装された。評価が行われ、呼吸ガスは、処理後の3、4、5、6、7及び8日目に測定された。以下の表5は、8日目のデータの概要を説明する。
【表5】

【0065】
[0066]二酸化炭素レベルが5%を超えて上昇することが可能になると、キノコがオフホワイトから薄い茶色に変わる傾向があった。驚くべきことに、褐変は、わずかな程度しか生じず、より高い二酸化炭素レベルに関連する別の利益が、わずかな変色より重大であった。表5に記載されるように、白色度評価は、頭部空間内の二酸化炭素レベルが6%未満又は6%超として分類された場合と同様であった。二酸化炭素レベルが6%を超えて上昇することを可能にすることによって、微生物の制御の改善、ひだの色の改善、柄の伸長の減少など、追加の利益が達成された。
【0066】
実施例4
[0067]別の試験において性能を良好に発揮した穴パターンが、再び試験された。これらの穴パターンを有する袋の間で、それらの上方部分(空隙体積)及びそれらの下方部分(キノコ保存体積)内の穴の分布に関して、比較が行われた。袋は、1袋につき合計20〜25個の穴を有していた。同じ数の穴(20個)を有する袋の間でも比較が行われた。キノコは、収穫され、上記実施例のように処理され、同じものに包装され、試験の期間を通じて38°Fで保有された。8オンスのキノコが使用された別のいくつかの試験と異なり、10オンスのキノコが、各袋内に包装された。以下の表6は、穴の位置の効果を示す。
【表6】

【0067】
[0068]表6を参照すると、以下の結論を引き出すことができる。
(1)予想通り、1袋につき2オンスのキノコの追加に伴い、二酸化炭素レベルがいくらか高かった。8日目に、二酸化炭素レベルは、平均8.5〜9.9%であった。
(2)二酸化炭素レベルが9.0%を超えたとき、キノコ全体の大幅な褐変が生じた。
(3)穴がより大きい割合で、キノコに近い袋の下部にあったとき、頭部空間内の二酸化炭素レベルにより大きいばらつきがあった。この効果は、キノコによって穴が覆われたことによる可能性があり、被覆レベルは、各袋内のキノコの位置に基づいて袋ごとに変わる。
【0068】
実施例5
[0069]以下の表7は、実行された試験のさらなる結果を説明する。
【表7】

【0069】
[0070]表7を参照すると、以下の結論を引き出すことができる。
(1)全体的に、袋の使用により、キノコの非常に優れた全体的な品質が維持された。これは、試験された袋の大半において5%と9%の間であった、高められた二酸化炭素レベルによると考えられる。
(2)高められた二酸化炭素レベル(平均5.4%)、及びわずかに低減された酸素レベル(平均17.2%)が存在する中で、非常に優れた品質が達成された。
(3)所望の穴パターンにより、頭部空間の平衡化を24時間未満で達成することが可能になった。
(4)ひだの色及び柄の伸長は、開放領域の約50%が頭部空間区域内にある袋において、大幅に高く評価された。
(5)少なくとも10個の貫通穴が袋の頭部空間に配置され、4個以下の貫通穴がキノコ保存体積内にあった場合に、非常に優れた品質が達成された。この構成は、二酸化炭素レベルを、8日間の保存寿命にわたり5.0%と9.0%の間に到達させること、並びに、袋からの適切な水分移送を可能にした。
【0070】
実施例6
[0071]キノコは、上記のように収穫され、調整された。以下に示す結果は、8オンスの袋に関するが、10オンスの袋の結果も同様であった。流通状態を模倣するために、キノコは42°Fで保存された。キノコを取り囲む雰囲気の組成は、24時間以内に平衡状態に到達し、同様の頭部空間の傾向が、1日目から6日目を通して観察された。
【表8】

【0071】
[0072]表8を参照すると、以下の結論を引き出すことができる。
(1)高い二酸化炭素レベルが、細菌の成長を阻害し、ひだの色及び柄の伸長に関する利益をもたらすことが観察された。ただし、高い二酸化炭素レベルはまた、キノコの望ましくない変色を生み出すことも観察された。
(2)5〜7%の二酸化炭素、及び14〜17%の酸素を提供するための十分な開放領域が、最高の総合評価及び白色度評価を生み出した。
(3)6〜8個の穴は、酸素欠如状態及びボツリヌス中毒症の危険を回避するための、十分な酸素レベルを維持することができる。
【0072】
実施例7
[0073]流通の間、キノコは、所望の温度より高い温度に露出される可能性がある。この状況のための計画的な開放領域(又は穴の数)を確認するために、キノコは、上記のように収穫及び処理され、42°Fの高められた温度にて保有された。20個又は6〜8個の貫通穴を有する袋が、8オンスのキノコを保存するために使用され、24個の貫通穴を有する袋が、10オンスのキノコを保存するために使用された。以下の表9は、5日目の結果を説明する。
【表9】

【0073】
[0074]表9を参照すると、以下の結論を引き出すことができる。
(1)袋内のキノコの品質は、対照ティルよりも優れていた。
(2)キノコの重量に対する穴の数の関係は、品質に影響を及ぼす可能性がある。開放面積が増大されても、10オンスのマッシュルームのための二酸化炭素レベルは、所望のレベルを上回る可能性がある。
(3)穴6個〜8個を有するなど、開放面積が低減される場合、頭部空間内の二酸化炭素及び酸素レベルは、食品安全性の観点から望ましくないレベルに到達する可能性がある。また、高いレベルの二酸化炭素は、キノコのオフホワイトから薄い茶色への変色を生じる可能性がある。
【0074】
実施例8
[0075]いくつかの理由により、キノコの品質は、様々な収穫物内又は収穫物上で異なる可能性がある。キノコは、上記のように収穫され、処理された。本実施例では、(収穫時の)品質が良好なキノコ、及び(収穫時の)品質が劣ったキノコが、有孔袋内に包装され、ティル内に包装された同様の品質のキノコと比較された。すべてのキノコは、38°Fで維持された。結果は、5日間にわたり監視された。商業的な応用例を模倣するために、8オンス及び10オンスのキノコが包装された。
【0075】
[0076]二酸化炭素レベルが、6%と8%の間であった場合、袋詰めされたキノコの品質は、全体的により良好であり、総合評価が、5点の評価尺度で4.5と4.8の間であった。5日目の、有孔袋内に包装された完全なキノコの品質は、多くの態様において、ティル内に包装された完全なキノコの品質と同様であった。ただし、改質雰囲気により、袋詰めされたキノコにおいて柄の伸長が低減され、平均評価は、従来のティル内に保持された比較可能なキノコより少なくとも1/2点高かった。有孔袋内で保有されたスライスされたキノコの品質と、従来のティル内に保有されたスライスされたキノコの品質の間で、より大きい差異が観察された。
【0076】
[0077](収穫時の)品質がより劣ったキノコの鮮度を維持するための、改質雰囲気による利益は、(収穫時の)品質が良好なキノコの鮮度を維持するための利益よりも大きい。ひだの色(完全なキノコの場合)及び柄の伸長に対して、最も大きい影響が観察された。別の実施例では、利益は、少なくとも部分的に、より高いレベルの二酸化炭素に関連していると考えられる。
【0077】
実施例9
[0078]洗浄されていないキノコの保存寿命が、改質雰囲気による利益を受けるかどうか、及び、洗浄されていないキノコが、水への露出がないことにより、洗浄されたキノコを上回る改善された保存寿命を示すかどうかを決定するために、試験が行われた。キノコの収穫後の処理は同じであったが、キノコは洗浄されず、又は褐変抑制剤で処理されなかった。表10及び表11は、それぞれ8日目及び9日目の結果を説明する。
【表10】


【表11】

【0078】
[0079]表10及び表11を参照すると、以下の結論を引き出すことができる。
(1)8日目及び9日目の袋詰めされた洗浄されていないキノコでは、非常に良好な品質が観察されたが、ティル内の洗浄されていないキノコは、9日目にはもはや許容不可能であった。ティル内の洗浄されていないキノコには、1.0の総合評価が与えられたが、袋詰めされた洗浄されていないキノコは、4.5の平均総合評価を受けた。
(2)袋詰めされた洗浄されていないキノコは、各評価パラメータで、従来のティル内のそれらに対してより高い評価を受けた。
(3)二酸化炭素レベルは、洗浄されたキノコに対してより低く(図示せず)、全体的に5%〜9%の所望の範囲内にあった。
(4)洗浄されたキノコに比べて、袋詰めされた洗浄されていないキノコでは、穴の数の増大が、呼吸ガスのレベルへのより大きい影響を有することが観察された。
(5)水への露出がないことにより、袋詰めされた洗浄されていないキノコの品質は、洗浄されたキノコに対して、6日以上全体的により良好であった。
【0079】
実施例10
[0080]3つの異なる材料、即ちポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、及び高透明度のポリオレフィン(Clysar(登録商標)フィルム)で形成された袋上で、試験が行われた。2つのサイズの袋、即ち(1)1列につき34個の貫通穴(200μm)、及び1袋につき4列を有する40オンスの袋、並びに(2)1列につき25個の貫通穴(200μm)及び1袋につき4列を有する、24オンスの袋が使用された。スライスされたキノコが、袋内に配置され、呼吸ガスのレベルが、各袋の頭部空間及び本体部分内で測定された。以下の表12は、6日目、7日目、及び8日目の結果を説明する。
【表12】

【0080】
[0081]酸素及び二酸化炭素のレベルは、同じサイズであるが異なる材料で形成された袋の全体にわたり、ほぼ同等であった。ただし、ポリオレフィンの袋は、8日目に観察された凝結の量が低減されているという点で、より優れていた。
【0081】
実施例11
[0082]3つの異なる材料、即ちポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、及び高透明度のポリオレフィン(Clysar(登録商標)フィルム)で形成された袋上で、試験が行われた。2つのサイズの袋、即ち(1)1列につき28個の貫通孔(200μm)及び1袋につき4列を有する40オンスの袋、並びに(2)1列につき18個の貫通孔(200μm)及び1袋につき4列を有する24オンスの袋が使用された。スライスされたキノコが、袋内に配置され、呼吸ガスのレベルが、各袋の頭部空間及び本体部分内で測定された。以下の表13及び表14は、3日目の結果を説明する。
【表13】


【表14】

【0082】
[0083]酸素及び二酸化炭素のレベルは、同じサイズであるが異なる材料で形成された袋の全体にわたり、ほぼ同等であった。ただし、ポリオレフィンの袋は、3日目に観察された凝結の量が低減されているという点で、より優れていた。特に、ポリオレフィンの袋は、透明なままであり水滴がほとんど観察されなかったが、PETの袋では、より多量の水分飽和が観察された。
【0083】
[0084]本発明をその特定の実施形態を参照しながら説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができ、同等物を置換することができることを、当業者は理解するべきである。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、方法、処理の1つ又は複数の作業に適合させるために、本発明の目的、精神、及び範囲に多くの修正を加えることができる。そのような修正はすべて、本明細書に添付される特許請求の範囲内に包含されることが意図される。特に、本明細書で開示された方法は、特定の順番で行われる特定の操作を参照しながら説明することができたが、これらの操作は、本発明の教示から逸脱せずに同等の方法を形成するために、組合せ、さらに分割し、又は順番を変えることができることを理解されたい。したがって、本明細書に具体的に指示されない限り、操作の順番及びグループ分けは、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明のいくつかの実施形態に従って実施することができる保存袋を示す。
【図2】本発明のいくつかの実施形態に従って実施することができる保存袋を示す。
【図3】本発明のいくつかの実施形態に従って実施することができる保存袋を示す。
【図4】本発明のいくつかの実施形態に従って実施することができる保存袋を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッシュルーム(Agaricus bisporus mushroom)の鮮度を延長するための方法であって、
マッシュルームと接触する改質雰囲気を提供するステップを含み、前記改質雰囲気が、体積で14%から18%の酸素と、体積で5%から9%の二酸化炭素とを含む方法。
【請求項2】
前記改質雰囲気が、体積で15%から17%の酸素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記改質雰囲気が、体積で6%から8%の二酸化炭素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記改質雰囲気が、体積で15%から17%の酸素と、体積で6%から8%の二酸化炭素とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記改質雰囲気が、87%から100%の範囲内の相対湿度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記改質雰囲気を提供するステップが、
前記マッシュルームを容器内に保存するステップを含み、前記容器が、複数の穴を有し、前記複数の穴は、5インチ水柱の圧力差が加えられるとき、前記マッシュルーム1オンスにつき0.2から0.6標準立方フィート/時の範囲内の空気流量を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記穴が、楕円形であり、200μmから300μmの範囲内のそれぞれの長さを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記穴の、それぞれの長さ対幅の比が2以下である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記穴が、実質的に円形であり、150μmから600μmの範囲内のそれぞれの直径を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記容器が、前記マッシュルーム1オンスにつき2から4個の穴を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記容器が、前記マッシュルーム1オンスにつき2から2.5個の穴を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
マッシュルームを保存するための容器であって、
内部空間を規定し複数の穴を有する1組の壁部を備え、前記穴が、前記穴を通した呼吸ガスの実質的に均等な拡散を提供するように離隔され、前記穴は、5インチ水柱の圧力差が加えられるとき、前記容器内に保存されるキノコ1オンスにつき0.2から0.6標準立方フィート/時の範囲内の空気流量を提供する容器。
【請求項13】
前記空気流量が、0.3から0.45標準立方フィート/時の範囲内である、請求項12に記載の容器。
【請求項14】
前記穴が、楕円形であり、200μmから300μmの範囲内のそれぞれの長さを有する、請求項12に記載の容器。
【請求項15】
前記穴の、それぞれの長さ対幅の比が2以下である、請求項14に記載の容器。
【請求項16】
前記穴が、実質的に円形であり、150μmから600μmの範囲内のそれぞれの直径を有する、請求項12に記載の容器。
【請求項17】
前記容器が、前記容器内に保存されるマッシュルーム1オンスにつき、2から4個の穴を有する、請求項12に記載の容器。
【請求項18】
前記容器が、前記容器内に保存されるマッシュルーム1オンスにつき、2から2.5個の穴を有する、請求項12に記載の容器。
【請求項19】
前記内部空間が、体積で14%から18%の酸素と、体積で5%から9%の二酸化炭素とを含む改質雰囲気を有する、請求項12に記載の容器。
【請求項20】
前記内部空間が、体積で15%から17%の酸素と、体積で6%から8%の二酸化炭素とを含む改質雰囲気を有する、請求項12に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−511022(P2009−511022A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534788(P2008−534788)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/039821
【国際公開番号】WO2007/044835
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(508105876)アミセル インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】