説明

キノフタロン系顔料微粒子の製造方法、それにより得られるキノフタロン系顔料微粒子、それを含む着色樹脂組成物および樹脂転写材料、ならびにそれらを用いた液晶表示装置用カラーフィルタおよび液晶表示装置

【課題】
ナノサイズで粒径分布ピークのシャープなキノフタロン系顔料微粒子およびそれを制御して得る製造方法を提供し、さらにカラーフィルタに用いたときに優れた特性を示すキノフタロン系顔料微粒子およびその製造方法を提供する。さらにまた、上記のキノフタロン系顔料微粒子を用いて、目的の色純度、高透過率、高コントラストを有し優れた表示特性を発揮するカラーフィルタおよびそれを用いた表示装置を提供し、またそれらに用いられる着色樹脂組成物および樹脂転写材料を提供する。
【解決手段】
キノフタロン系顔料を良溶媒に溶解させた顔料溶液と、前記良溶媒と相溶性でありかつ前記顔料に対しては貧溶媒となる溶媒中とを混合して、キノフタロン系顔料をナノサイズの微粒子として生成させるキノフタロン系顔料微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタなどに用いられるキノフタロン系顔料微粒子およびその製造方法に関し、さらに詳しくはそれを用いた着色樹脂組成物、樹脂転写材料、ならびにそれらを用いたコントラストが高く、耐光性を有する液晶表示装置用カラーフィルタおよび液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料は鮮明な色調、高い着色力、耐光性などを有し、多くの分野で広く使用されてきている。これらの顔料の中でも実用上重要なものは、一般に微細な粒子のものが多い。これは顔料の凝集を防ぎ微細化することによって鮮明な色調と高い着色力とを得ようとするものである。しかし、例えばソルトミリングのような物理的な方法で顔料を微細化していくと顔料の分散液は高粘度を示すことが多い。そのため、顔料分散液を工業的規模で調製するとき分散機からの取り出しが困難となったり、パイプラインによる輸送ができなくなったり、更には貯蔵中にゲル化したりする。
【0003】
それらの点を改善し、流動性、分散性に優れた顔料分散液あるいは着色感光性組成物を得るため、有機顔料の表面処理を行ったり(例えば、特許文献1及び2参照)、種々の分散剤を使用したりすることが知られている(例えば、特許文献3及び4参照)。また、良溶媒に溶解した試料を貧溶媒に注入することにより、粒子を得る再沈法を用いる方法が特許文献5および6に述べられている。
【0004】
これらの顔料を例えば該着色感光性組成物を用いた着色画像の形成に利用する場合、着色感光性組成物による層は、一般に極めて薄く、かつ薄厚で高い着色濃度を示すことが要求されることから、例えば有機溶媒中に、有機顔料を高度に、また均一に微細化した状態で分散させることが必要となる。しかし、これらの要求を満足し、優れた分散性・流動性等を有する顔料分散物やその組成物は、未だ提供されていないのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特開平11−269401号公報
【特許文献2】特開平11−302553号公報
【特許文献3】特開平8−48890号公報
【特許文献4】特開2000−239554号公報
【特許文献5】特開2004−123853号公報
【特許文献6】特開2003−336001号公報
【特許文献7】特開2004−91560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
顔料の用途としてカラーフィルタが挙げられる。なかでもそのG画素についていうと、着色剤としてC.I.P.G.36とC.I.P.Y.139との混合物が広く用いられている。そして、その混合顔料においては、十分な色純度を得るために顔料を高濃度で添加している。結果として顔料濃度が高すぎ、色純度は上がるものの明るさに欠けるカラーフィルタしかできない。本発明者らはその改良に着目した。
C.I.P.G.36と、C.I.P.Y.138に代表されるキノフタロン系顔料との混合物を用いて明るさを改善することが考えられる。これにより高い色純度で、高い透過率のカラーフィルタとし、さらにコントラストを改善して表示特性を向上させようとするものである。しかし、本発明者らの確認したところによれば、従来のビース分散法やソルトミリング法では満足な結果が得られず、特許文献6に記載のものを用いても良好なカラーフィルタは得られない。
そこで本発明は、ナノサイズで粒径分布ピークのシャープなキノフタロン系顔料微粒子およびそれを制御して得る製造方法の提供を目的とし、さらにカラーフィルタに用いたときに優れた特性を示すキノフタロン系顔料微粒子およびその製造方法の提供を目的する。さらにまた、上記のキノフタロン系顔料微粒子を用いて、目的の色純度、高透過率、高コントラストを有し優れた表示特性を発揮するカラーフィルタおよびそれを用いた表示装置の提供を目的とし、またそれらに用いられる着色樹脂組成物および樹脂転写材料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は下記の手段により達成された。
(1)キノフタロン系顔料を良溶媒に溶解させた顔料溶液と、前記良溶媒と相溶性でありかつ前記顔料に対しては貧溶媒となる溶媒とを混合して、キノフタロン系顔料をナノサイズの微粒子として生成させることを特徴とするキノフタロン系顔料微粒子の製造方法。
(2)前記良溶媒および貧溶媒のいずれか一方に分散剤を含有させることを特徴とする(1)項に記載のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法。
(3)前記良溶媒がアミド系溶媒もしくはスルホキシド系溶媒であり、且つ該良溶媒に分散剤を含有させることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法。
(4)ナノサイズの微粒子の平均粒子径が50nm以下でかつ粒子径100nm以上の粒子の割合が1%以下であることを特徴とする(1)項〜(3)項のいずれか1項に記載のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法。
(5)(1)項〜(4)項のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたナノサイズ微粒子のキノフタロン系顔料微粒子。
(6)キノフタロン系顔料がC.I.P.Y.138であることを特徴とする(5)項記載のキノフタロン系顔料微粒子。
(7)(5)項又は(6)項に記載の顔料微粒子と、結合剤と、有機溶剤とを含むことを特徴とする着色樹脂組成物。
(8)仮支持体上に、少なくとも、(7)項に記載の着色樹脂組成物を含有させた樹脂層を設けたことを特徴とする樹脂転写材料。
(9)(5)項又は(6)項に記載の顔料微粒子を含有してなることを特徴とする液晶表示装置用カラーフィルタ。
(10)(9)項に記載の液晶表示装置用カラーフィルタを備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、ナノサイズのキノフタロン系顔料微粒子を粒径分布がシャープな状態で得ることができ、また必要に応じてそのサイズを制御して得ることも可能である。また、本発明の製造方法によって得られたキノフタロン系顔料微粒子はカラーフィルタに用いたとき、目的の色味の色相と色純度、さらに高い透過率およびコントラストとを実現することができ、しかも耐光性に優れたものとすることができる。
また本発明のカラーフィルタを備えた液晶表示装置は、黒のしまりに優れ、緑顔料と組み合わせて用いたとき高い緑の描写性を示し、表示ムラが抑えられるなどの優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、キノフタロン系顔料を良溶媒に溶解させた顔料溶液と、良溶媒に相溶性がありかつ前記顔料に対しては貧溶媒である溶媒とを混合し、キノフタロン系顔料をナノサイズの微粒子として生成させるキノフタロン系顔料微粒子の製造方法である。以下本発明について詳細に説明する。
【0010】
[有機材料]
本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法に用いられる有機顔料は、キノフタロン構造を有していること以外、特に制限はない。単独で用いても、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アントアントロン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合、ジスアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロンもしくはイソビオラントロン系顔料などとの混合物として用いてもよい。キノフタロン系顔料としては、「顔料の事典」2000年9月25日朝倉書店発行の341頁から344頁に記載の顔料が挙げられ、なかでもC.I.P.Y.138が吸収スペクトルの観点で好ましい。
【0011】
キノフタロン系顔料以外の併用してもよい顔料として、たとえば、C.I.ピグメントレッド254(C.I.番号56110)、C.I.ピグメントレッド255(C.I.番号561050)、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272(C.I.番号561150)、C.I.ピグメントオレンジ71、もしくはC.I.ピグメントオレンジ73等のジケトピロロピロール系顔料、C.I.ピグメントレッド190(C.I.番号71140)、C.I.ピグメントレッド224(C.I.番号71127)、C.I.ピグメントバイオレット29(C.I.番号71129)等のペリレン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ43(C.I.番号71105)、もしくはC.I.ピグメントレッド194(C.I.番号71100)等のペリノン系顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(C.I.番号73900)、C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントレッド122(C.I.番号73915)、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド202(C.I.番号73907)、C.I.ピグメントレッド207(C.I.番号73900、73906)、もしくはC.I.ピグメントレッド209(C.I.番号73905)のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメントレッド206(C.I.番号73900/73920)、C.I.ピグメントオレンジ48(C.I.番号73900/73920)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ49(C.I.番号73900/73920)等のキナクリドンキノン系顔料、C.I.ピグメントイエロー147(C.I.番号60645)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド168(C.I.番号59300)等のアントアントロン系顔料、C.I.ピグメントブラウン25(C.I.番号12510)、C.I.ピグメントバイオレット32(C.I.番号12517)、C.I.ピグメントイエロー180(C.I.番号21290)、C.I.ピグメントイエロー181(C.I.番号11777)、C.I.ピグメントオレンジ62(C.I.番号11775)、もしくはC.I.ピグメントレッド185(C.I.番号12516)等のベンズイミダゾロン系顔料、C.I.ピグメントイエロー93(C.I.番号20710)、C.I.ピグメントイエロー94(C.I.番号20038)、C.I.ピグメントイエロー95(C.I.番号20034)、C.I.ピグメントイエロー128(C.I.番号20037)、C.I.ピグメントイエロー166(C.I.番号20035)、C.I.ピグメントオレンジ34(C.I.番号21115)、C.I.ピグメントオレンジ13(C.I.番号21110)、C.I.ピグメントオレンジ31(C.I.番号20050)、C.I.ピグメントレッド144(C.I.番号20735)、C.I.ピグメントレッド166(C.I.番号20730)、C.I.ピグメントレッド220(C.I.番号20055)、C.I.ピグメントレッド221(C.I.番号20065)、C.I.ピグメントレッド242(C.I.番号20067)、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド262、もしくはC.I.ピグメントブラウン23(C.I.番号20060)等のジスアゾ縮合系顔料、C.I.ピグメントイエロー13(C.I.番号21100)、C.I.ピグメントイエロー83(C.I.番号21108)、もしくはC.I.ピグメントイエロー188(C.I.番号21094)等のジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド187(C.I.番号12486)、C.I.ピグメントレッド170(C.I.番号12475)、C.I.ピグメントイエロー74(C.I.番号11714)、C.I.ピグメントイエロー150(C.I.番号48545)、C.I.ピグメントレッド48(C.I.番号15865)、C.I.ピグメントレッド53(C.I.番号15585)、C.I.ピグメントオレンジ64(C.I.番号12760)、もしくはC.I.ピグメントレッド247(C.I.番号15915)等のアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー60(C.I.番号69800)等のインダントロン系顔料、C.I.ピグメントグリーン7(C.I.番号74260)、C.I.ピグメントグリーン36(C.I.番号74265)、ピグメントグリーン37(C.I.番号74255)、ピグメントブルー16(C.I.番号74100)、C.I.ピグメントブルー75(C.I.番号74160:2)、もしくは、C.I.ピグメントブルー15:6(C.I.番号74160)、C.I.ピグメントブルー15:3(C.I.番号74160)等のフタロシアニン系顔料、C.I.ピグメントブルー56(C.I.番号42800)、もしくはC.I.ピグメントブルー61(C.I.番号42765:1)等のトリアリールカルボニウム系顔料、C.I.ピグメントバイオレット23(C.I.番号51319)、もしくはC.I.ピグメントバイオレット37(C.I.番号51345)等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメントレッド177(C.I.番号65300)等のアミノアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(C.I.番号73312)等のチオインジゴ系顔料、C.I.ピグメントイエロー139(C.I.番号56298)、C.I.ピグメントオレンジ66(C.I.番号48210)等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントイエロー109(C.I.番号56284)、C.I.ピグメントイエロー185(C.I.番号56290)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ61(C.I.番号11295)等のイソインドリノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ40(C.I.番号59700)、もしくはC.I.ピグメントレッド216(C.I.番号59710)等のピラントロン系顔料、またはC.I.ピグメントバイオレット31(60010)等のイソビオラントロン系顔料が挙げられる。
なかでも、本発明においては、キノフタロン系顔料と緑顔料とを組み合わせて用いることが好ましく、C.I.P.G.36と組み合わせて用いることがより好ましい。これらの顔料の組み合わせ方はとくに限定されず、緑顔料を顔料溶液に添加して組み合わせるようにしても、緑顔料を貧溶媒中に含有させて組み合わせるようにしても、顔料溶液と貧溶媒との混合液中に緑顔料を添加して組み合わせるようにしてもよく、ナノ粒子形成後に緑顔料を添加して組み合わせるようにしてもよい。
【0012】
本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法においては、2種類以上の有機顔料または有機顔料の固溶体を組み合わせて用いることもできるほか、通常の染料と組み合わせて用いることもできる。
有機色素としては、例えば、アゾ色素、シアニン色素、メロシアニン色素、クマリン系色素などが挙げられる。高分子化合物としては、例えば、ポリジアセチレン、ポリイミドなどが挙げられる。
本発明に使用できる染料は、特に制限はなく、従来カラーフィルタ用として用いられている染料が使用できる。例えば、特開昭64−90403号公報、特開昭64−91102号公報、特開平1−94301号公報、特開平6−11614号公報、特登2592207号、米国特許第4,808,501号明細書、米国特許第5,667,920号明細書、米国特許第5,059,500号明細書、特開平5−333207号公報、特開平6−35183号公報、特開平6−51115号公報、特開平6−194828号公報、特開平8−211599号公報、特開平4−249549号公報、特開平10−123316号公報、特開平11−302283号公報、特開平7−286107号公報、特開2001−4823号公報、特開平8−15522号公報、特開平8−29771号公報、特開平8−146215号公報、特開平11−343437号公報、特開平8−62416号公報、特開2002−14220号公報、特開2002−14221号公報、特開2002−14222号公報、特開2002−14223号公報、特開平8−302224号公報、特開平8−73758号公報、特開平8−179120号公報、特開平8−151531号公報等に開示されている色素が使用できる。
【0013】
化学構造としては、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、アンスラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサテン系、フタロシアニン系、ペンゾピラン系、インジゴ系等の染料が使用できる。
また、水またはアルカリ現像を行うレジスト系の場合、現像により光未照射部の結合剤および/または染料を完全に除去するという観点では、酸性染料および/またはその誘導体が好適に使用できる場合がある。その他、直接染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、アゾイック染料、分散染料、油溶染料、食品染料、および/または、これらの誘導体等も有用に使用することができる。
上記酸性染料は、スルホン酸やカルボン酸等の酸性基を有するものであれば特に限定されないが、有機溶剤や現像液に対する溶解性、塩基性化合物との塩形成性、吸光度、組成物中の他の成分との相互作用、耐光性、耐熱性等の必要とされる性能の全てを考慮して選択される。
【0014】
以下に上記酸性染料の具体例を挙げるが、本発明はこれらにより限定されるものではない。例えば、acid alizarin violet N;acid black 1,2,24,48;acid blue 1,7,9,15,18,23,25,27,29,40,45,62,70,74,80,83,86,87,90,92,103,112,113,120,129,138,147,158,171,182,192,243,324:1;acid chrome violet K;acid Fuchsin;acid green 1,3,5,9,16,25,27,50;acid orange6,7,8,10,12,50,51,52,56,63,74,95;acid red 1,4,8,14,17,18,26,27,29,31,34,35,37,42,44,50,51,52,57,66,73,80,87,88,91,92,94,97,103,111,114,129,133,134,138,143,145,150,151,158,176,183,198,211,215,216,217,249,252,257,260,266,274;acid violet 6B,7,9,17,19;acid yellow 1,3,7,9,11,17,23,25,29,34,36,42,54,72,73,76,79,98,99,111,112,114,116,184,243;Food Yellow 3;およびこれらの染料の誘導体が挙げられる。
また、上記以外の、アゾ系、キサンテン系、フタロシアニン系の酸性染料も好ましく、C.I.Solvent Blue 44、38;C.I.Solvent orange 45;Rhodamine B、Rhodamine 110等の酸性染料およびこれらの染料の誘導体も好ましく用いられる。
有機色素としては、例えば、アゾ色素、シアニン色素、メロシアニン色素、クマリン系色素などが挙げられる。高分子化合物としては、例えば、ポリジアセチレン、ポリイミドなどが挙げられる。
【0015】
[良溶媒]
次に、キノフタロン系顔料をナノサイズ(本発明において、ナノサイズとは、特に断らない限り、ナノメートルサイズを意味する。)の微粒子(以下、有機ナノ粒子ともいう。)として生成させるときの好ましい良溶媒について説明する。
良溶媒は用いる顔料を溶解することが可能で、有機ナノ粒子作製時に用いる貧溶媒と相溶するもしくは均一に混ざるものであれば特に制限はない。前記顔料の良溶媒への溶解性は顔料の溶解度が0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。この溶解度は酸性またはアルカリ性で溶解された場合の溶解度であってもよい。また、良溶媒と貧溶媒との相溶性もしくは均一混合性は、良溶媒の貧溶媒に対する溶解度が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0016】
良溶媒としては、例えば、水系溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒、二硫化炭素、脂肪族系溶媒、ニトリル系溶媒、スルホキシド系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、スルホキシド系溶媒またはアミド系溶媒が好ましく、水系溶媒、スルホキシド系溶媒またはアミド系溶媒がより好ましく、スルホキシド系溶媒またはアミド系溶媒が特に好ましい。
【0017】
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。アミド系溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。芳香族系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。脂肪族系溶媒としては、例えば、ヘキサンなどが挙げられる。ニトリル系溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。スルホキシド系溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。ハロゲン系溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロエチレンなどが挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートなどが挙げられる。イオン性液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムとPFとの塩などが挙げられる。
【0018】
また、良溶媒に顔料を溶解した顔料溶液の濃度としては、溶解時の条件における顔料の良溶媒に対する飽和濃度乃至これの1/100程度の範囲が望ましい。
顔料溶液の調製条件に特に制約はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−10〜150℃が好ましく、−5〜130℃がより好ましく、0〜100℃が特に好ましい。
【0019】
本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法に用いられる顔料溶液において、顔料は良溶媒中に均一に溶解されなければならないが、酸性でもしくはアルカリ性で溶解することも好ましい。一般に分子内にアルカリ性で解離可能な基を有する顔料の場合はアルカリ性が、アルカリ性で解離する基が存在せず、プロトンが付加しやすい窒素原子を分子内に多く有するときは酸性が用いられる。例えば、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジスアゾ縮合系顔料はアルカリ性で、フタロシアニン系顔料は酸性で溶解される。
【0020】
アルカリ性で溶解させる場合に用いられる塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、もしくは水酸化バリウムなどの無機塩基、またはトリアルキルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、金属アルコキシドなどの有機塩基であるが、好ましくは無機塩基である。
【0021】
使用される塩基の量は、顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、無機塩基の場合、好ましくは顔料に対して1.0〜30モル当量であり、より好ましくは1.0〜25モル当量であり、さらに好ましくは1.0〜20モル当量である。有機塩基の場合、好ましくは顔料に対して1.0〜100モル当量であり、より好ましくは5.0〜100モル当量であり、さらに好ましくは20〜100モル当量である。
【0022】
酸性で溶解させる場合に用いられる酸は、硫酸、塩酸、もしくは燐酸などの無機酸、または酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸であるが好ましくは無機酸である。特に好ましくは硫酸である。
使用される酸の量は、顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、塩基に比べて過剰量用いられる場合が多い。無機酸および有機酸の場合を問わず、好ましくは顔料に対して3〜500モル当量であり、より好ましくは10〜500モル当量であり、さらに好ましくは30〜200モル当量である。
【0023】
[貧溶媒]
次に、キノフタロン系顔料をナノメートルサイズの微粒子として生成させるときの好ましい貧溶媒について説明する。
貧溶媒は用いる顔料を溶解せず、有機ナノ粒子作製時に用いる良溶媒と相溶する、あるいは均一に混ざるものであれば特に制約はない。顔料の貧溶媒に対する溶解度は0.02質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。貧溶媒と良溶媒との相溶性もしくは均一混合性の好ましい範囲は前述のとおりである。
【0024】
貧溶媒としては、例えば、水系溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒、二硫化炭素、脂肪族系溶媒、ニトリル系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水系溶媒、アルコール系溶媒またはエステル系溶媒が好ましい。
【0025】
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。芳香族系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。脂肪族系溶媒としては、例えば、ヘキサンなどが挙げられる。ニトリル系溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。ハロゲン系溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロエチレンなどが挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートなどが挙げられる。イオン性液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムとPFとの塩などが挙げられる。
【0026】
[結合剤]
本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法においては、結合剤を有機ナノ粒子形成時に添加することが好ましい。結合剤(以下、「バインダー」ともいう。)は、酸性基を有するアルカリ可溶性バインダーであることが好ましい。有機顔料溶液および有機顔料溶液を添加して有機ナノ粒子を生成させるための貧溶媒の両方もしくは一方に酸性基を有するアルカリ可溶性バインダーを添加することができる。または酸性基を有するアルカリ可溶性バインダー溶液を別系統で有機ナノ粒子形成時に添加することも好ましい。本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法において用いられる酸性基を有するアルカリ可溶性バインダーとしては、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーが好ましい。その例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報及び特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができ、またこの他にも、水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。また、特に好ましい例として、米国特許第4,139,391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。
【0027】
また架橋効率を向上させるために、重合性基を側鎖に有してもよく、UV硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂等も有用である。これらの重合性基を含有するポリマーの例を以下に示すが、COOH基、OH基、アンモニウム基等のアルカリ可溶性基と炭素−炭素不飽和結合が含まれていれば下記に限定されない。OH基を有する例えば2−ヒドロキシエチルアクリレートと、COOH基を含有する例えばメタクリル酸と、およびこれらと共重合可能なアクリル系もしくはビニル系化合物等のモノマーとの共重合体に、OH基と反応性を有するエポキシ環と炭素−炭素不飽和結合基を有する化合物、例えばグリシジルアクリレートのような化合物を反応させて得られる化合物等が使用できる。OHとの反応ではエポキシ環の他に酸無水物、イソシアネート基を有し、アクリロイル基を有する化合物も使用できる。また特開平6−102669号、特開平6−1938号に開示されるエポキシ環を有する化合物にアクリル酸のような不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物に、飽和もしくは不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる反応物も使用できる。COOHのようなアルカリ可溶化基と炭素−炭素不飽和基を併せ持つ化合物として例えばダイヤナールNRシリーズ(三菱レイヨン株式会社製)、Photomer6173(COOH含有Polyurethane acrylic oligomer。Diamond Shamrock Co. Ltd.,製)、ビスコートR−264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業株式会社製)、サイクロマーPシリーズ、プラクセル CF200シリーズ(いずれもダイセル化学工業株式会社製)、Ebecryl3800(ダイセルユーシービー株式会社製)などが挙げられる。
【0028】
更に、バインダー樹脂として、側鎖の一部に水溶性の原子団を有する有機高分子重合体を用いることができる。上記バインダー樹脂は、モノマーに対して相溶性のある線状有機高分子重合体であり、且つ、有機溶剤およびアルカリ可溶性(好ましくは弱アルカリ水溶液で現像できるもの)である。上記アルカリ可溶性樹脂としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマー、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等があり、また同様に側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体が挙げられる。上記アルカリ可溶性樹脂としては、その他、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたものなどが有用である。特にこれらの中でも、具体的には、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体やベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/および他のモノマーとの多元共重合体が好ましい。上記アルカリ可溶性樹脂としては、少なくとも(i)無水マレイン酸(MAA)、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MA)、およびフマル酸(FA)から選ばれた少なくとも一種の酸成分モノマーと、(ii)アルキルポリオキシエチレン(メタ)アクリレートと、および(iii)ベンジル(メタ)アクリレートとからなる共重合体(以下「共重合体A」という場合がある。)を用いることができる。
上記共重合体Aの組み合わせとしては、(i)酸成分モノマー、(ii)アルキルポリオキシエチレン(メタ)アクリレート(Acr(EO)n:CH(OC)nOCOC(CH)=CHR)、および(iii)ベンジル(メタ)アクリレート(BzMA)の組成質量比は好ましくは10〜25/5〜25/50〜85、より好ましくは15〜20/5〜20/60〜80が好ましい。また、上記共重合体のGPCによるポリスチレン換算質量平均分子量(Mw)としては好ましくは3,000〜50,000、より好ましくは5,000〜30,000である。
【0029】
(i)酸成分モノマーの組成質量比が上記範囲にあると、アルカリ可溶性および溶剤への溶解性が低下しにくい。また、(ii)アルキルポリオキシエチレン(メタ)アクリレート(Acr(EO)n:CH(OC)nOCOC(CH)=CHR)の組成質量比が上記範囲にあると、組成物の基板上への液の広がりやすく、また着色剤の分散性が低下しにくいため、本発明の効果を有効に達成することができる。(iii)ベンジル(メタ)アクリレート(BzMA)の組成質量比が上記範囲にあると、着色剤の分散安定性や組成物中への溶解性や塗布膜のアルカリ現像適性が低下しにくい。
尚、前記(ii)アルキルポリオキシエチレン(メタ)アクリレート(Acr(EO)n:CH(OC)nOCOC(CH)=CHR)のポリオキシエチレン(EO)nの繰り返し数nは、2〜15が好ましく、2〜10が更に好ましく、4〜10が特に好ましい。上記繰り返し数nが、前記範囲にあると、アルカリ現像液で現像した後に現像残渣が発生しにくく、組成物の塗布液としての流動性が低下し、塗布ムラを生じるのを防止でき、塗布膜厚の均一性や省液性が低下するのを防止できる。
これらの極性基を有するバインダーポリマーは、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよく、有機顔料100質量部に対する添加量は10〜200質量部が一般的であり、25〜100質量部が好ましい。
【0030】
酸性基を有するアルカリ可溶性バインダーが高分子化合物である場合、該高分子化合物中の酸性基の数に特に制限はないが、1分子中に含まれる繰り返し単位の数を100とした時、酸性基を有する繰り返し単位が5〜100であることが好ましく、10〜100であることがより好ましい。また、(1)カルボキシル基を有する化合物から導かれた繰り返し単位と、前記(2)カルボン酸エステル基を有する化合物から導かれた繰り返し単位との重合比率としていえば、繰り返し単位(1)のモル%が5〜40であることが好ましく、繰り返し単位(2)が40〜90であることが好ましく、繰り返し単位(1)または(2)以外の繰り返し単位が25以下であることが好ましい。また酸性基を有するアルカリ可溶性バインダーの高分子化合物の分子量は5000〜30000が好ましく、7000〜15000がより好ましく、5000〜80000が特に好ましい。
【0031】
[分散剤]
本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法では、顔料溶液および貧溶媒の両方もしくは一方に分散剤を添加することができ、また分散剤溶液を別系統で有機ナノ粒子形成時に添加することもでき、なかでも良溶媒に分散剤を含有させることが好ましく、アミド系溶媒もしくはスルホシド系溶媒に分散剤を含有させることがより好ましい。分散剤は(1)析出した顔料表面に素早く吸着して、微細な顔料粒子を形成し、かつ(2)これらの粒子が再び凝集することを防ぐ作用を有するものである。
分散剤として、例えば、アニオン性、カチオン性、両イオン性、ノニオン性もしくは顔料性の、低分子または高分子分散剤を使用することができる。なお、高分子分散剤の分子量は溶液に均一に溶解できるものであれば制限なく用いることができるが、好ましくは分子量1,000〜2,000,000であり、5,000〜1,000,000がより好ましく、10,000〜500,000がさらに好ましく、10,000〜100,000が特に好ましい(本発明においては、特に断りのない限り、分子量とは重量平均分子量を意味し、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)によりポリスチレン換算で測定したものを意味する。高分子化合物は多分散系であり、必ずしも同一の分子量または粒子量を持たない。したがって、分子量を測定すると得られた値はなんらかの形で平均された平均分子量になる。その主なものは次の3種類である。すなわち、1)数平均分子量Mn、2)重量平均分子量Mw、3)Z平均分子量Mzであり、Mn<Mw<Mzの関係が成立する。)。高分子分散剤としては、具体的には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリビニル硫酸塩、ポリ(4−ビニルピリジン)塩、ポリアミド、ポリアリルアミン塩、縮合ナフタレンスルホン酸塩、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、トンガントゴム、リグニンスルホン酸塩などの天然高分子類も使用できる。なかでも、ポリビニルピロリドンが好ましい。これら高分子は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの分散剤は、単独あるいは併用して使用することができる。顔料の分散に用いる分散剤に関しては、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」(化学情報協会、2001年12月発行)の29〜46頁に詳しく記載されている。
【0032】
アニオン性分散剤(アニオン性界面活性剤)としては、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。なかでも、N−アシル−N−アルキルタウリン塩が好ましい。N−アシル−N−アルキルタウリン塩としては、特開平3−273067号明細書に記載されているものが好ましい。これらアニオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
カチオン性分散剤(カチオン性界面活性剤)には、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミンおよびポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリンおよびこれらのカチオン性物質の塩が含まれる。これらカチオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
両イオン性分散剤は、前記アニオン性分散剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性分散剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する分散剤である。
ノニオン性分散剤(ノニオン性界面活性剤)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
「顔料性分散剤」とは、親物質としての有機顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される顔料性分散剤と定義する。顔料性分散剤としては例えば、糖含有顔料性分散剤、ピペリジル含有顔料性分散剤、ナフタレンまたはペリレン誘導顔料性分散剤、メチレン基を介して顔料親構造に連結された官能基を有する顔料性分散剤、ポリマーで化学修飾された顔料親構造、スルホン酸基を有する顔料性分散剤、スルホンアミド基を有する顔料性分散剤、エーテル基を有する顔料性分散剤、あるいはカルボン酸基、カルボン酸エステル基またはカルボキサミド基を有する顔料性分散剤などがある。
【0036】
本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法においては分散剤として下記の一般式(I)および(III)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
<1.一般式(I)で表される化合物>
【0037】
【化1】

【0038】
一般式(I)中、AはX−Yとともにアゾ色素を形成しうる成分を表す。前記Aは、ジアゾニウム化合物とカップリングしてアゾ色素を形成しうる化合物であれば任意に選択することができる。前記Aの具体例を以下に示すが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0039】
【化2】

【0040】
【化3】

【0041】
一般式(I)中、Xは単結合又は下記式(i)〜(v)の構造式で表される二価の連結基から選択される基を表す。
【0042】
【化4】

【0043】
一般式(I)中、Yは下記一般式(II)で表される基を表す。
【0044】
【化5】

一般式(II)中、Zは、低級アルキレン基を表す。Zは、−(CH−と表されるが、該bは1〜5の整数を表し、好ましくは2又は3を表す。一般式(II)中、−NRは、低級アルキルアミノ基、又は窒素原子を含む5乃至6員飽和ヘテロ環を表す。該−NRは、低級アルキルアミノ基を表す場合、−N(C2n+1と表され、nは1〜4の整数を表し、好ましくは1又は2を表す。一方、該−NRは、窒素原子を含む5乃至6員飽和ヘテロ環を表す場合、下記構造式で表されるヘテロ環が好ましい。
【0045】
【化6】

前記一般式(II)における、Z及び−NRは、それぞれ、低級アルキル基、アルコキシ基を置換基として有していてもよい。前記一般式(II)中、aは、1又は2を表し、好ましくは2を表す。
以下に、前記一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらの具体例に何ら限定されるものではない。
【0046】
【化7】

【0047】
【化8】

【0048】
【化9】

【0049】
【化10】

【0050】
一般式(I)で表される化合物は例えば特開2000−239554号公報に記載された方法により合成することができる。
【0051】
<2.一般式(III)で表される化合物>
【0052】
【化11】

【0053】
一般式(III)中、
Qは、アントラキノン系色素、アゾ系色素、フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、アントラピリミジン系色素、アンサンスロン系色素、インダンスロン系色素、フラバンスロン系色素、ピランスロン系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、及びチオインジゴ系色素から選ばれる有機色素残基を表し、なかでもアゾ系色素、またはジオキサジン系色素であることが好ましく、アゾ系色素であることがより好ましい。
は、−CO−、−CONH−Y−、−SONH−Y−、又は−CHNHCOCHNH−Y−を表し、−CO−、−CONH−Y−であることが好ましい。
は置換基を有してもよいアルキレン基又はアリーレン基を表し、なかでもフェニレン、トルイレン、またはヘキシレンであることが好ましく、フェニレンであることがより好ましい。
11およびR12はそれぞれ独立に置換もしくは無置換のアルキル基またはR11とR12とで少なくとも窒素原子を含むヘテロ環を形成してもよい。なかでもメチル基、エチル基、プロピル基、またはN原子を含めたピロリジニル基であることが好ましく、エチル基であることがより好ましい。
は−NH−又は−O−を表す。
は水酸基又は一般式(IIIa)で表される基を表し、あるいはnが1の場合−NH−X−Qでもよい。mは1〜6の整数を表し、2〜3が好ましい。nは1〜4の整数を表し、1〜2が好ましい。
【0054】
【化12】

一般式(IIIa)中、Yは−NH−又は−O−を表し、m、R11、およびR12は一般式(III)と同じである。
【0055】
一般式(III)で表される化合物はより具体的には例えば下記一般式により表される。
【0056】
【化13】

【0057】
なお一般式(III−1)〜(III−6)において、Q、m、n、R11、R12は一般式(III)と同じである。以下に一般式(III)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0058】
【化14】

【0059】
【化15】

【0060】
一般式(III)で表される化合物は、例えばR11およびR12を有するアミン化合物とR11およびR12を有するアルコール化合物とをハロゲン化トリアジン化合物と反応させ、得られた中間体に色素化合物を反応させて得ることができる。また、特公平5−72943号明細書の記載も参考にすることができる。
【0061】
<3.グラフト共重合体を含有する顔料分散剤>
本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法においては、窒素原子及びエーテル基を有するグラフト共重合体を含有し、必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有する分散剤を用いることも好ましい。
前記グラフト共重合体は、窒素原子及びエーテル基を少なくとも有してなり、その他のモノマー等を共重合体単位として含んでいてもよい。前記グラフト共重合体において、前記窒素原子は、主鎖に存在していてもよいし側鎖に存在していてもよい。
前記グラフト共重合体の重量平均分子量(Mw)としては、3000〜100000が好ましく、5000〜50000がより好ましい。前記重量平均分子量(Mw)が、3000未満であると、顔料の凝集を防ぐことができず、粘度が上昇してしまうことがあり、100000を超えると有機溶剤への溶解性が不足し、粘度が上昇してしまうことがある。なお、該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(キャリア:テトラヒドロフラン)により測定されるポリスチレン換算重量平均分子量である。
【0062】
前記グラフト共重合体は、(i)末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーと、(ii)窒素原子とエチレン性不飽和二重結合とを有する窒素含有モノマーと、(iii)エーテル基を有する重合性モノマーとを共重合体単位として少なくとも含み、必要に応じて(iv)その他のモノマーを共重合単位として含むことが好ましい。
前記グラフト共重合体は、図1に示した通り、エーテル基を有する側鎖5と窒素原子3とを少なくとも有する主鎖に、重合性オリゴマーによる側鎖2がグラフト共重合により結合しており、主鎖と側鎖との結合部1は、前記重合性オリゴマーにおける末端のエチレン性不飽和二重結合による重合反応の結果生じたものである。前記主鎖及び/又は前記側鎖は、必要に応じて、その他のモノマーを共重合単位として含んでいてもよい。
【0063】
グラフト共重合体は、前記重合性オリゴマーにおける末端のエチレン性不飽和二重結合と、前記窒素含有モノマーにおけるエチレン性不飽和二重結合と、前記エーテル基を有する重合性モノマーとの重合反応により形成される。
【0064】
これらの共重合体単位の、前記グラフト共重合体における含有量としては、(i)前記重合性オリゴマーが15〜98質量%であることが好ましく、25〜90質量%であることがより好ましく、(ii)前記窒素含有モノマーが1〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましく、(iii)前記エーテル基を有する重合性モノマーが1〜70質量%であることが好ましく、5〜60質量%であることがより好ましい。
【0065】
前記重合性オリゴマーの含有量が、15質量%未満であると、顔料分散剤としての立体反発効果が得られず、顔料の凝集が防止できないことがあり、98質量%を超えると、前記窒素含有モノマーの割合が減り顔料に対する吸着能力が低下し、分散性が十分でないことがある。前記窒素含有モノマーの含有量が、1質量%未満であると、顔料に対する吸着能力が低下し、分散性が十分でないことがあり、40質量%を超えると、前記重合性オリゴマーの割合が減ることから、顔料分散剤としての立体反発効果が得られず、顔料の凝集を十分に防止できないことがある。前記エーテル基を有する重合性モノマーの含有量が、1質量%未満であると、カラーフィルタ等の製造の際の現像適性が十分でないことがあり、70質量%を超えると、顔料分散剤としての能力が低下することがある。
【0066】
(i)重合性オリゴマー
前記重合性オリゴマー(以下、「マクロモノマー」と称することがある。)は、エチレン性不飽和二重結合を有する基を末端に有するオリゴマーである。本発明においては、前記重合性オリゴマーの中でも、該オリゴマーの両末端の内の一方にのみ前記エチレン性不飽和二重結合を有する基を有するのが好ましい。
【0067】
前記オリゴマーとしては、一般的には、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、及びブタジエンから選択された少なくとも一種のモノマーから形成された単独重合体又は共重合体などが挙げられ、これらの中でも、アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体、ポリスチレンなどが好ましい。本発明において、これらのオリゴマーは、置換基で置換されていてもよく、該置換基としては、特に制限はないが、例えば、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0068】
前記エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、などが好適に挙げられ、これらの中でも(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。
【0069】
本発明においては、前記重合性オリゴマーの中でも、下記一般式(6)で表されるオリゴマーが好ましい。
【0070】
【化16】

【0071】
前記一般式(6)において、R61及びR63は、水素原子又はメチル基を表す。R62は、炭素数1〜8のアルコール性水酸基で置換されてもよいアルキレン基を表し、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましい。Yは、フェニル基、炭素数1〜4のアルキル基を有するフェニル基、又は−COOR64(ここで、R64は、炭素数1〜6のアルコール性水酸基、ハロゲンで置換されてもよいアルキル基、フェニル基、又は炭素数7〜10のアリールアルキル基を表す。)を表し、フェニル基又は−COOR64(ここで、R64は、炭素数1〜4のアルコール性水酸基で置換されてもよいアルキル基を表す。)が好ましい。qは、20〜200を表す。
【0072】
前記重合性オリゴマーの具体例としては、ポリ−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ポリ−i−ブチル(メタ)アクリレート、それらの共重合体であって、分子末端の一個に(メタ)アクリロイル基が結合したポリマーが好適に挙げられる。
【0073】
前記重合性オリゴマーは、市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよく、該市販品としては、例えば、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(Mn=6000、商品名:AS−6,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AA−6,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルアクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AB−6,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマー(Mn=7000、商品名:AA−714,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリブチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマー(Mn=7000、商品名:707S,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリ2−エチルヘキシルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマー(Mn=7000、商品名:AY−707S、AY−714S,東亜合成化学工業(株)社製)、などが挙げられる。
【0074】
本発明における前記重合性オリゴマーの好ましい具体例としては、アルキル(メタ)アクリレートの重合体、及び、アルキル(メタ)アクリレートとポリスチレンとの共重合体から選択される少なくとも1種のオリゴマーであって、数平均分子量が1000〜20000であり、末端に(メタ)アクリロイル基を有するものが挙げられる。
【0075】
(ii)窒素含有モノマー
前記窒素含有モノマーとしては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物より選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
【0076】
【化17】

【0077】
前記一般式(2)において、R21は、水素原子又はメチル基を表す。R22は、炭素数1〜8のアルキレン基を表し、これらの中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基が特に好ましい。
【0078】
は、−N(R23)(R24)、−R25N(R26)(R27)、ピロリジノ基、ピロリジル基、ピリジル基、ピペリジノ基、イミダゾリル基、カルバゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基又はモルホリノ基を表す。ここで、R23及びR24は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表す。R25は、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、R26及びR27は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表す。
【0079】
上記のうち、−N(R23)(R24)又は−R15−N(R26)(R27)が好ましく、−N(R23)(R24)のR23及びR24は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基若しくはフェニル基が好ましく、−R25−N(R26)(R27)のR25は、炭素数2〜6のアルキレン基が好ましく、R26及びR27は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。また、前記ピリジル基の中でも、4−ピリジル基、2−ピリジル基等が好ましく、前記ピペリジノ基の中でも、1−ピペリジノ基等が好ましく、前記ピロリジル基の中でも、2−ピロリジル基等が好ましく、前記モルホリノ基の中でも、4−モルホリノ基等が好ましい。m及びnは、1又は0を表し、m=1かつn=1、又は、m=1かつn=0が好ましい(即ち、下記一般式(3)、(4)で表される化合物に対応する)。
【0080】
本発明においては、前記一般式(2)で表される化合物の中でも、下記一般式(3)〜(5)のいずれかで表される化合物から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0081】
【化18】

【0082】
前記一般式(3)において、R31は、R21と同義である。R32は、R22と同義である。Xは、Xと同義である。
【0083】
【化19】

【0084】
前記一般式(4)において、R41は、R21と同義である。Xは、Xと同義であり、−N(R43)(R44)(ここで、R43及びR44は、R23及びR24と同義である。)、又は、−R45−N(R46)(R47)(ここで、R45、R46及びR47は、それぞれR25、R26及びR27と同義である。)が好ましい。
【0085】
【化20】

【0086】
前記一般式(5)において、R51は、R21と同義である。Xは、ピロリジノ基、ピロリジル基、ピリジル基、ピペリジノ基、イミダゾリル基、カルバゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基又はモルホリノ基を表す。
【0087】
前記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、ジ−i−ブチル(メタ)アクリルアミド、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミド及びN,N−メチルフェニル(メタ)アクリルアミド(以上(メタ)アクリルアミド類);2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミド及び6−(N,N−ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミド(以上アミノアルキル(メタ)アクリルアミド類);及びビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルトリアゾール、ビニルテトラゾールなどが好適に挙げられる。
【0088】
(iii)エーテル基を有する重合性モノマー
前記エーテル基を有する重合性モノマーとしては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物より選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
【0089】
【化21】

【0090】
前記一般式(1)において、R11は、水素原子又はメチル基を表す。R12は、炭素数1〜8のアルキレン基を表し、中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基がより好ましい。Xは、−OR13又は−OCOR14を表す。ここで、R13は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、又は炭素数1〜18のアルキル基で置換されたフェニル基を表す。R14は、炭素数1〜18のアルキル基を表す。また、lは、2〜200を表し、5〜100が好ましく、10〜100が特に好ましい。
【0091】
前記エーテル基を有する重合性モノマーとしては、エーテル基を有し、且つ重合性のものであれば特に制限はなく、通常のものの中から適宜選択することができ、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられ、これらは市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよい。該市販品としては、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名:NKエステルM−40G,M−90G,M−230G(以上、東亜合成化学工業(株)社製);商品名:ブレンマーPME−100,PME−200,PME−400,PME−1000,PME−2000、PME−4000(以上、日本油脂(株)社製))、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350,日本油脂(株)社製)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPP−500、PP−800、PP−1000,日本油脂(株)社製)、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー70PEP−370B,日本油脂(株)社製)、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー55PET−800,日本油脂(株)社製)、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーNHK−5050,日本油脂(株)社製)などが挙げられる。
【0092】
(iv)その他のモノマー
前記グラフト共重合体は、前記その他のモノマーを更に共重合体単位として含有していてもよく、該その他のモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、芳香族ビニル化合物(例、スチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエン)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート及びi−ブチル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル(例、ベンジル(メタ)アクリレート)、グリシジル(メタ)アクリレート、カルボン酸ビニルエステル(例、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル)、シアン化ビニル(例、(メタ)アクリロニトリル及びα−クロロアクリロニトリル)、及び脂肪族共役ジエン(例、1,3−ブタジエン及びイソプレン)、(メタ)アクリル酸、などが挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル及びカルボン酸ビニルエステルが好ましい。
【0093】
前記グラフト共重合体における該その他のモノマーの含有量としては、例えば、5〜70重量%が好ましい。前記含有率が、5重量%未満であると、塗布膜の物性の制御ができなくなることがあり、70重量%を超えると、顔料分散剤としての能力が十分に発揮されないことがある。
【0094】
前記グラフト共重合体の好ましい具体例としては、(1)N−ビニルイミダゾール/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(2)N−ビニルカルバゾール/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(3)N−ビニルトリアゾール/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(4)N−ビニルイミダゾール/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリスチレン共重合体、(5)N−ビニルカルバゾール/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリスチレン共重合体、(6)N−ビニルイミダゾール/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/メチル(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリスチレン共重合体、(7)N−ビニルイミダゾール/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/ベンジル(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリスチレン共重合体、
【0095】
(8)ビニルピリジン/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(9)N,N−ジメチル−2−ピペリジルエチルアクリレート/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(10)4−モルホリノエチルアクリレート/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(11)3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(12)3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリスチレン共重合体、
【0096】
(13)3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/メチル(メタ)アクリレート末端メタクリロイル化ポリスチレン共重合体、(14)3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化メチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体の共重合体、(15)3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化メチルメタアクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体の共重合体、(16)3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化メチルメタアクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体の共重合体、
【0097】
(17)3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(18)3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(19)3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(20)3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、などが挙げられる。
なかでも、(11)、(14)、(18)が好ましく、下記式(IV)で表される化合物がより好ましい。
【0098】
【化22】

(式(IV)中、Meはメチル基を表す。)
【0099】
前記グラフト共重合体は、前記各共重合体単位となる成分を、例えば、溶媒中でラジカル重合させることにより得ることができる。該ラジカル重合の際、ラジカル重合開始剤を使用することができ、また、更に連鎖移動剤(例、2−メルカプトエタノール及びドデシルメルカプタン)を使用することができる。グラフト共重合体を含有する顔料分散剤については特開2001−31885号公報の記載を参考にすることもできる。
【0100】
分散剤の含有量は、顔料の均一分散性および保存安定性をより一層向上させるために、顔料100質量部に対して0.1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜500質量部の範囲であり、さらに好ましくは5〜20質量部の範囲である。0.1質量部未満であると有機顔料微粒子の分散安定性の向上が見られない場合がある。また、分散剤は、単独で用いても、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0101】
[有機ナノ粒子形成時の条件]
有機顔料を有機ナノ粒子として生成させる際の温度条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜60℃がより好ましく、0〜30℃が特に好ましい。またそのときの圧力条件についても特に限定されないが、収率を高めるために加圧してもよく、顔料等の種類にもよるが加圧が必要な場合に、例えば10〜10Paに加圧することが好ましい。
有機顔料溶液と貧溶媒との混合方法に特に制約はないが、一方を撹拌しておき、そこに他方を添加することが好ましく、有機顔料溶液を撹拌された貧溶媒に添加することが特に好ましい。添加にはポンプ等を用いることもできるし、用いなくてもよい。また、液中添加でも液外添加でもよいが、液中添加がより好ましい。液中添加の際の添加口は1つでもよいし、複数用いてもよい。添加口径は20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましい。貧溶媒を添加するときの添加速度は本発明の効果が得られる範囲であればとくに限定されないが、連続的に注入する場合の流速でいうと例えば5mL/min〜600mL/minが好ましく、10mL/min〜300mL/minがより好ましい。
一方を撹拌する際の撹拌速度は100〜10000rpmが好ましく150〜8000rpmがより好ましく、200〜6000rpmが特に好ましい。
有機顔料溶液と貧溶媒の比(良溶媒/貧溶媒)は体積比で1/50〜2/3が好ましく、1/40〜1/2がより好ましく、1/20〜3/8が特に好ましい。
有機ナノ粒子として調製したのちの分散液の濃度は有機ナノ粒子を分散させることができれば特に制限されないが、分散溶媒1000mlに対してナノ粒子が10〜40000mgの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜30000mgの範囲であり、特に好ましくは50〜25000mgの範囲である。
【0102】
[有機ナノ粒子の粒径、単分散性]
有機ナノ粒子の粒径に関しては、計測法により数値化して集団の平均の大きさを表現する方法があるが、よく使用されるものとして、分布の最大値を示すモード径、積分分布曲線の中央値に相当するメジアン径、各種の平均径(数平均、長さ平均、面積平均、重量平均、体積平均等)などがあり、本発明においては、特に断りのない限り、平均粒径とは数平均径をいう。本発明の製造方法により得られるキノフタロン系顔料微粒子(一次粒子)の平均粒径は、1μm以下であることが好ましく(例えば、その大きさの結晶または会合体であり)、200nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましく、80nm以下であることがさらに好ましく、50nm以下であることが特に好ましい。顔料微粒子のサイズについて下限は特に限定されないが、例えば5nm以上の微粒子が実際的である。
また、粒子の単分散性を表す指標として、本発明においては、特に断りのない限り、体積平均粒径(Mv)と数平均粒径(Mn)の比(Mv/Mn)を用いる。本発明の製造方法で得られるキノフタロン系顔料微粒子(一次粒子)の単分散性、つまりMv/Mnは、1.0〜2.0であることが好ましく、1.0〜1.8であることがより好ましく、1.0〜1.5であることが特に好ましい。さらにまた、本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法においては、粒径100nm以上の粒子の数の割合が、高コントラストを得る観点から、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。ここで、粒径100nm以上の粒子の数の割合はTEM(JEM−2010)(倍率200000倍)(日本電子(株)社製)を用いて観察し、粒子径は粒子の電子顕微鏡写真画像を同面積の円とした時の直径を使用した。また、1000個の粒子について上記の粒子径を求め、粒子の割合を算出した。
【0103】
本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法においては、生成する顔料微粒子のサイズをナノオーダで制御して得ることも可能であり、例えば貧溶媒の温度を調節して粒子サイズをコントロールすることができ、このとき温度を上昇させて微粒子サイズを大きくすることが好ましい。制御する範囲は顔料の種類や求められる粒子径等により適宜定めればよいが、具体的にいえば例えば、貧溶媒の温度を約30℃上昇させて(例えば、50℃から80℃に上昇させて)微粒子の平均粒径を1.1〜5.0倍とする割合で制御することができる。貧溶媒の温度範囲はとくに限定されず、本発明の効果を妨げない範囲であればよく、例えば30〜90℃の範囲で調節することが好ましい。
また、本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法においては、貧溶媒と顔料溶液との混合速度により生成する顔料微粒子のサイズが変化しにくく、例えば貧溶媒の注入速度を上げた際にも安定した微粒子製造が可能であり、必要とされる場合、生産量等に応じて適宜混合速度を調節し微粒子の製造効率を高めることもできる。
【0104】
[有機顔料粒子形成法(製造装置)]
本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法において、ナノ粒子の形成に用いられる製造装置の好ましい実施態様を説明するが、これにより本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0105】
(有機顔料粒子製造装置例1)
図2−1は本発明において、一実施態様として用いられる製造装置の概略図である。図2−1において有機顔料溶液は供給管14により容器11内に設けられた混合室13内へ連続的に供給される。ここに容器11内には貧溶媒11aが容れられており、該混合室13は貧溶媒の液面下に設けられ、その内部は該貧溶媒により満たされている。また反応容器11内のバルク貧溶媒は該混合室13内での攪拌の作用により、該混合室3内を下方から上方へ(図中矢印の方向へ)横切るようにつねに対流させられている。
【0106】
図2−2は、図2−1の製造装置の一実施態様として混合室13を拡大して概略的に示した拡大部分断面図である。有機顔料溶液は供給管14より混合室13内へ供給される。該混合室13は断面積一定の直四角筒よりなるケ−シング17により形成され、ケーシング17の上端は開放端とされ、下端には円形孔18が設けられて該混合器13内の貧溶媒がバルク貧溶媒と互いに連結するようになっている。ここに有機顔料溶液供給管14はケーシング17の下端を構成する壁内に設けられ、前記円形孔に向けて開口している。また前記混合器13内には撹拌羽根12が設けられており、撹拌羽根はシャフト15に取り付けられ、モーター(図示せず)により回転せしめられる。この攪拌羽根12の回転により、貧溶媒は円形孔18を通り混合器13内を下方から上方へ向かってつねに循環運動させられている。
【0107】
上記の混合室13に設けられた撹拌羽根12は、混合室内に所望の混合強さをつくり出すものでなければならない。この混合強さは、有機顔料溶液が混入した際の液滴(ドロップレット)の大きさに対する重要な操作因子であることが推定される。
また、撹拌羽根12は、混合空間内で生成した有機顔料粒子が混合室13にとどまることにより、他の有機顔料粒子と結合して更に大きな粒子となったり、混合室13に供給される有機顔料溶液にさらされて大きな粒子となったりして巨大粒子が生成することがないよう、生成した有機顔料粒子を迅速に引き出し、迅速に混合室13外へ排出する能力を有するものが選ばれることが好ましい。
撹拌羽根12としては上記目的が達成されれば、いかなる形式のものでもよく、例えばタービン型、ファンタービン型等が用いられうる。
またケーシング17は、前述のごとく四角筒により構成されていることが好ましい。このようにすることで、撹拌羽根12によりつくられた流れをケーシング17の角が乱し、邪魔板のごとき付加物を要することなく、混合効果を一層高めることができる。
【0108】
図2−3は、図2−1の製造装置の別の実施態様として混合室内の撹拌羽根を二つ(混合用撹拌羽根19a、排出用撹拌羽根19b)にした混合器の拡大部分断面図である。このように撹拌羽根を二つ設けることによって、混合強さをコントロールする能力と、生成した有機顔料粒子を混合器外へ排出する能力を独立に選択することができるようにし、混合の強さ、循環量を独立に所望の値に設定して操作することが可能となる。
【0109】
(有機顔料粒子製造装置例2)
図3は、本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法に用いられる、製造装置の別の実施態様を概略的に示す断面図である。図3において有機顔料溶液および貧溶媒はそれぞれ供給管24a、24bにより撹拌槽21a内に連続的に供給される。撹拌槽21a内で生成した有機顔料粒子が撹拌槽21a内にとどまることにより、他の有機顔料粒子と結合して更に大きな粒子となったり、供給管24a、24bより供給される有機顔料溶液にさらされて大きな粒子となったりして巨大粒子が生成することがないよう、生成した有機顔料粒子分散液は排出管23より迅速に引き出される。
【0110】
図4は、本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法に用いられる装置の、さらに別の実施態様を概略的に示す断面図である。図4の製造装置においては、撹拌装置50は、有機顔料溶液および貧溶媒をそれぞれ流入させる2つの液供給口32,33と撹拌処理を終えた混合液体を排出する液排出口36とを備えた円筒状の撹拌槽38と、該撹拌槽38内で回転駆動されることで該撹拌槽38内の液体の撹拌状態を制御する撹拌手段である一対の撹拌羽根41,42とを備えてなる。
撹拌槽38は、上下方向に中心軸を向けた円筒状の槽本体39と、該槽本体39の上下の開口端を塞ぐ槽壁となるシールプレート40とで構成されている。また、撹拌槽38および槽本体39は、透磁性に優れた非磁性材料で形成されている。2つの液供給口32,33は槽本体39の下端寄りの位置に装備されており、液排出口36は槽本体39の上端寄りの位置に装備されている。
【0111】
そして、一対の撹拌羽根41,42は、撹拌槽38内の相対向する上下端に離間して配置されて、互いに逆向きに回転駆動される。各撹拌羽根41,42は、それぞれの撹拌羽根41,42が近接する槽壁(シールプレート40)の外側に配置された外部磁石46と磁気カップリングCを構成している。即ち、各、撹拌羽根41,42は、磁力でそれぞれの外部磁石46に連結されており、各外部磁石46を独立したモーター48,49で回転駆動することで、互いに逆向きに回転操作される。
【0112】
槽38内に対向配置された一対の撹拌羽根41,42は、図4中に波線の矢印(X)及び実線の矢印(Y)で示すように、それぞれ向きの異なる撹拌流を槽38内に形成する。そして、それぞれの撹拌羽根41,42の形成する撹拌流は、流れ方向が異なるために互いに衝突して槽38内における撹拌を促進する高速の乱流を槽38内に生成して、槽38内の流れが定常化することを防止し、撹拌羽根41,42の回転を高速化した場合にも撹拌羽根41,42の回転軸回りに空洞が形成されることを阻止すると同時に、撹拌作用を十分に受けずに撹拌槽38の内周面に沿って槽38内を流れる定常流が形成されるという不都合の発生を阻止することができる。したがって、撹拌羽根41,42の回転の高速化により、容易に処理速度を向上させることができ、さらに、その際に、槽38内の液体の流れが定常化して撹拌混合が不十分の液体が排出されることを阻止して、処理品位の低下を防止することができる。
また、撹拌槽38内の各撹拌羽根41,42は、磁気カップリングCによって撹拌槽38の外部に配置されたモーター48,49に連結されているため、撹拌槽38の槽壁に回転軸を挿通させる必要がなくなり、撹拌槽38を回転軸の挿通部のない密閉容器構造にすることができるため、撹拌混合した液の槽外への漏出を防止すると同時に、回転軸用の潤滑液(シール液)等が不純物として槽38内の液に混入することによる処理品位の低下を防止することができる。
【0113】
顔料分散組成物を製造するに際し、これらの構成を有する製造装置を用いて、バッチ方式だけでなく連続フロー方式でも有機顔料粒子の製造をすることができ、大量生産にも対応できる。また生成した有機顔料粒子分散液が迅速に排出されることにより、撹拌槽内に供給される有機材料溶液と貧溶媒液の比を常に一定にすることが可能になる。このため、製造開始時から製造終了時まで、分散液の有機材料の溶解度を一定にすることが可能になり、単分散な有機顔料粒子を安定に製造することができる。
さらに槽内の液体の流れが定常化して撹拌混合が不十分の有機顔料粒子分散液が排出されることを阻止し、また、回転軸用の潤滑液(シール液)等が不純物として槽内の液に混入することを防止することで、単分散な有機顔料粒子をさらに安定に製造することができる。
【0114】
(有機顔料粒子製造装置例3)
本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法に用いられる装置として、さらに別の実施態様である、剪断力を持つ羽根を用いて攪拌する製造方法について説明する。
本発明でいう剪断力とは撹拌羽根が、有機顔料溶液が貧溶媒に混入後に生成する液滴(ドロップレット)に及ぼすズリ力のことである。
本発明で使用可能な撹拌部の形状は、高剪断力を施し得る形態であれば特に限定されないが、一般にパドル羽根、タービン羽根、スクリュー羽根、ファウドラー羽根、等が挙げられ、好ましくはディゾルバー羽根、回転し得るタービン部とその周囲にわずかな間隙を置いて位置する固定化されたステータ部から構成されている撹拌部の、撹拌、乳化、分散機が好ましい。
ディゾルバー羽根は、高剪断力形成できる機能を持った特殊な撹拌羽根であり、図5−1にその1例を概略的に正面図により示し、その図面代用写真を図5−2に示す。
また図6に示すような回転し得るタービン部とその周囲にわずかな間隙を置いて位置する固定化されたステータ部から構成されている撹拌部を有する装置も好ましく用いられ、その撹拌、乳化、分散機としては、例えば、マイクロテック・ニチオン社製ヒスコトロン、特殊機化工業社製T.Kホモミクサー、IKA社製ULTRA−TURRAXが挙げられる。
【0115】
本発明の効果が発現し得る撹拌速度は、貧溶媒の粘度、温度、界面活性剤の種類や添加量によって異なった値をとるが、100〜10000rpmが好ましく150〜8000rpmがより好ましく、200〜6000rpmが特に好ましい。この範囲未満の回転数であれば本発明の効果は充分発揮されず、逆にこの範囲を超えると、貧溶媒中に気泡を巻き込み、好ましくない。
【0116】
[有機ナノ粒子分散液の濃縮]
本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法においては、有機ナノ粒子分散液を、脱塩濃縮することによって、カラーフィルタ塗布液やインクジェット用インクに適した有機ナノ粒子分散液を工業的な規模で生産することが可能である。
以下に、分散液を濃縮する方法について説明する。
濃縮方法に関しては、有機ナノ粒子液を濃縮できれば特に制約されないが、例えば、有機ナノ粒子分散液に、抽出溶媒を添加混合し、有機ナノ粒子を該抽出溶媒相に濃縮抽出して、その濃縮抽出液をフィルタなどによりろ過して濃縮ナノ粒子液とする方法、遠心分離によって有機ナノ粒子を沈降させて濃縮する方法、限外ろ過により脱塩濃縮を行う方法、真空凍結乾燥により溶媒を昇華させて濃縮する方法、加熱ないし減圧による溶媒を乾燥させて濃縮する方法等が好ましい。またはこれらの組合せなどが非常に好ましく用いられる。
濃縮後の有機ナノ粒子濃度に関しては、1〜100質量%が好ましく、5〜100質量%がより好ましく、10〜100質量%が特に好ましい。
【0117】
以下に、濃縮抽出する方法について説明する。この濃縮抽出に用いられる抽出溶媒は特に限定されないが、有機ナノ粒子分散液の分散溶媒(例えば、水系溶媒)と実質的に混じり合わず(本発明において、実質的に混じり合わずとは、相溶性が低いことをいい、溶解量50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい)、混合後、静置すると界面を形成する溶媒であることが好ましい。また、この抽出溶媒は、有機ナノ粒子が抽出溶媒中で再分散しうる弱い凝集(ミリングまたは高速攪拌などの高いせん断力を加えなくても再分散が可能である)を生ずる溶媒であることが好ましい。このような状態であれば、粒子サイズを変化させる強固な凝集を起こさず、目的の有機ナノ粒子を抽出溶媒で湿潤させる一方、フィルタろ過などにより容易に水などの分散溶媒を除去することができる点で好ましい。抽出溶媒としてはエステル系溶媒、アルコール系溶媒、芳香族系溶媒、脂肪族系溶媒が好ましく、エステル系溶媒、芳香族系溶媒または脂肪族系溶媒がより好ましく、エステル系溶媒が特に好ましい。
【0118】
エステル系溶媒としては、例えば、2−(1−メトキシ)プロピルアセテート、酢酸エチル、乳酸エチルなどが挙げられる。アルコール系溶媒としては、例えば、n−ブタノール、イソブタノールなどが挙げられる。芳香族系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。脂肪族系溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。また、抽出溶媒は上記の好ましい溶媒による純溶媒であっても、複数の溶媒による混合溶媒であってもよい。
【0119】
抽出溶媒の量は有機ナノ粒子を抽出できれば特に制約されないが、濃縮して抽出することを考慮して有機ナノ粒子分散液より少量であることが好ましい。これを体積比で示すと、有機ナノ粒子分散液を100としたとき、添加される抽出溶媒は1〜100の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜90の範囲であり、20〜80の範囲が特に好ましい。多すぎると濃縮化に多大な時間を要し、少なすぎると抽出が不十分で分散溶媒中にナノ粒子が残存する。
抽出溶媒を添加した後、分散液と十分に接触するように攪拌混合することが好ましい。攪拌混合は通常の方法を用いることができる。抽出溶媒を添加し混合するときの温度に特に制約はないが、1〜100℃であることが好ましく、5〜60℃であることがより好ましい。抽出溶媒の添加、混合はそれぞれの工程を好ましく実施できるものであればどのような装置を用いてもよいが、例えば、分液ロート型の装置を用いて実施できる。
【0120】
限外ろ過による場合、例えばハロゲン化銀乳剤の脱塩/濃縮に用いられる方法を適用することができる。リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)No.10208(1972)、No.13 122(1975)およびNo.16 351(1977)が知られている。操作条件として重要な圧力差や流量は、大矢春彦著「膜利用技術ハンドブック」幸書房出版(1978)、p275に記載の特性曲線を参考に選定することができるが、目的の有機ナノ粒子分散物を処理する上では、粒子の凝集を抑えるために最適条件を見いだす必要がある。また、膜透過より損失する溶媒を補充する方法においては、連続して溶媒を添加する定容式と断続的に分けて添加する回分式とがあるが、脱塩処理時間が相対的に短い定容式が好ましい。こうして補充する溶媒には、イオン交換または蒸留して得られた純水を用いるが、純水の中に分散剤、分散剤の貧溶媒を混合してもよいし、有機ナノ粒子分散物に直接添加してもよい。
【0121】
図7に、限外ろ過を行うための装置の一構成例を示す。図7に、示されるように、この装置は脂肪酸銀分散物を収納するタンク81、このタンク81内の分散物を循環させる循環用ポンプ82、および循環用ポンプ82によって導入された分散物中の副生成無機塩を透過水として除去する限外ろ過モジュール83を有する。透過水が分離された分散物は再度タンク81内に戻され、同様の操作が、副生成無機塩の除去の所定の目的が達成されるまで、繰り返し行われる。さらに、この装置には、透過水によって失われる溶媒を純水として一定量補充するために使用される補充純水計測用流量計84が設置されており、純水補充量を決定するのに用いられる透過水計測用流量計85が設置されている。また、透過水を希薄にするための水を導入するための逆方向洗浄用ポンプ86が設置されている。
【0122】
限外ろ過膜は、すでにモジュールとして組み込まれた平板型、スパイラル型、円筒型、中空糸型、ホローファイバー型などが旭化成(株)社、ダイセル化学(株)社、(株)東レ社、(株)日東電工社などから市販されているが、総膜面積や洗浄性の観点より、スパイラル型もしくは中空糸型が好ましい。また、膜を透過することができる成分のしきい値の指標となる分画分子量は、用いられる分散剤の分子量より決定する必要があるが、5,000以上50,000以下のものが好ましく、5,000以上15,000以下のものがより好ましい。
【0123】
有機ナノ粒子分散液の分散溶媒と濃縮抽出液を分離するため、フィルタろ過することが好ましい。フィルタろ過の装置は、例えば、加圧ろ過のような装置を用いることができる。好ましいフィルタとしては、ナノフィルタ、ウルトラフィルタなどが挙げられる。フィルタろ過により、残された分散溶媒の除去を行い、濃縮抽出液中の有機ナノ粒子をさらに濃縮して濃縮ナノ粒子液とすることが好ましい。
【0124】
凍結乾燥の方法は特に限定されず、当業者が利用可能な方法であればいかなるものを採用してもよい。例えば、冷媒直膨方法、重複冷凍方法、熱媒循環方法、三重熱交換方法、間接加熱凍結方法が挙げられるが、好ましくは冷媒直膨方法、間接加熱凍結方法、より好ましくは間接加熱凍結方法を用いるのがよい。いずれの方法においても、予備凍結を行なった後凍結乾燥を行なうことが好ましい。予備凍結の条件は特に限定されないが、凍結乾燥を行なう試料がまんべんなく凍結されている必要がある。
【0125】
間接加熱凍結方法の装置としては、小型凍結乾燥機、FTS凍結乾燥機、LYOVAC凍結乾燥機、実験用凍結乾燥機、研究用凍結乾燥機、三重熱交換真空凍結乾燥機、モノクーリング式凍結乾燥機、HULL凍結乾燥機が挙げられるが、好ましくは小型凍結乾燥機、実験用凍結乾燥機、研究用凍結乾燥機、モノクーリング式凍結乾燥機、より好ましくは小型凍結乾燥機、モノクーリング式凍結乾燥機を用いるのがよい。
【0126】
凍結乾燥の温度は特に限定されないが、例えば−190〜−4℃、好ましくは−120〜−20℃、より好ましくは−80〜−60℃程度である。凍結乾燥の圧力も特に限定されず、当業者が適宜選択可能であるが、例えば、0.1〜35Pa、好ましくは1〜15Pa、さらに好ましくは、5〜10Pa程度で行なうのがよい。凍結乾燥時間は、例えば2〜48時間、好ましくは6〜36時間、より好ましくは16〜26時間程度である。もっとも、これらの条件は当業者に適宜選択可能である。凍結乾燥方法については、例えば、製剤機械技術ハンドブック:製剤機械技術研究会編、地人書館、p.120−129(2000年9月);真空ハンドブック:日本真空技術株式会社編、オーム社、p.328−331(1992年);凍結及び乾燥研究会会誌:伊藤孝治他、No.15、p.82(1965)などを参照することができる。
【0127】
以下に遠心分離について説明する。遠心分離による有機ナノ粒子の濃縮に用いられる遠心分離機は有機ナノ粒子分散液(または有機ナノ粒子濃縮抽出液)中の有機ナノ粒子を沈降させることができればどのような装置を用いてもよい。遠心分離機としては、例えば、汎用の装置の他にもスキミング機能(回転中に上澄み層を吸引し、系外に排出する機能)付きのものや、連続的に固形物を排出する連続遠心分離機などが挙げられる。
遠心分離条件は、遠心力(重力加速度の何倍の遠心加速度がかかるかを表す値)で50〜10000が好ましく、100〜8000がより好ましく、150〜6000が特に好ましい。遠心分離時の温度は、分散液の溶剤種によるが、−10〜80℃が好ましく、−5〜70℃がより好ましく、0〜60℃が特に好ましい。
【0128】
以下に乾燥について説明する。減圧乾燥による有機ナノ粒子の濃縮に用いられる装置は有機ナノ粒子分散液(または有機ナノ粒子濃縮抽出液)の溶媒を蒸発させることができれば特に制限はない。例えば、汎用の真空乾燥器およびロータリーポンプや、液を撹拌しながら加熱減圧乾燥できる装置、液を加熱減圧した管中に通すことによって連続的に乾燥ができる装置等が挙げられる。
加熱減圧乾燥温度は30〜230℃が好ましく、35〜200℃がより好ましく、40〜180℃が特に好ましい。減圧時の圧力は、100〜100000Paが好ましく、300〜90000Paがより好ましく、500〜80000Paが特に好ましい。
【0129】
上述のような濃縮方法によれば、有機ナノ粒子分散液から効率よく有機ナノ粒子を濃縮することができる。濃縮倍率に関しては、例えば、原料となる有機ナノ粒子分散液中のナノ粒子の濃度を1とすると、濃縮有機ナノ粒子ペーストにおける濃度を好ましくは100〜3000倍程度、より好ましくは500〜2000倍程度まで濃縮することができる。
【0130】
[着色樹脂組成物]
本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法においては、得られた有機ナノ粒子を濃縮し、バインダーを含む有機溶媒中で再び微細分散化することが好ましい(以下、再分散化ともいい、本発明において微細分散化とは分散液中の粒子の凝集を解き分散度を高めることをいう)。
本発明のキノフタロン系顔料微粒子は、カラーフィルタ用途におけるビヒクル中に再分散化させた着色樹脂組成物とすることができる。前記ビヒクルとは、塗料が液体状態にあるときに顔料を分散させている媒質の部分をいい、液状であって前記顔料と結合して塗膜を固める部分(バインダー)と、これを溶解希釈する成分(有機溶剤)とを含む。なお本発明においては、ナノ粒子形成時に用いるバインダーと再分散化に用いるバインダーとが同じであっても異なっていてもよく、それぞれ、ナノ粒子形成バインダーおよび再分散化バインダーとして区別していうこともある。
本発明の着色樹脂組成物の顔料濃度は目的に応じて適宜定められるが、好ましくは着色樹脂組成物全量に対して顔料が2〜30質量%であることが好ましく、4〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。上記のようなビヒクルにより分散される場合に、バインダーおよび有機溶剤の量は顔料の種類などにより適宜定められるが、着色樹脂組成物全量に対して、バインダーは1〜30質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。有機溶剤は5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。
【0131】
上述の濃縮抽出したナノ粒子液において、速やかなフィルタろ過を可能とする状態では、有機ナノ粒子は、通常、濃縮化により凝集を起こしている。また、遠心分離または乾燥により濃縮化した有機ナノ粒子も濃縮化による凝集をおこしている。
このような凝集ナノ粒子(本発明において、凝集ナノ粒子とは、凝集体などナノ粒子が二次的な力で集まっているものをいう。)を分散する方法として、例えば超音波による分散方法や物理的なエネルギーを加える方法を用いることができる。
用いられる超音波照射装置は10kHz以上の超音波を印加できる機能を有することが好ましく、例えば、超音波ホモジナイザー、超音波洗浄機などが挙げられる。超音波照射中に液温が上昇すると、ナノ粒子の熱凝集が起こるため(非特許文献1参照)、液温を1〜100℃とすることが好ましく、5〜60℃がより好ましい。温度の制御方法は、分散液温度の制御、分散液を温度制御する温度調整層の温度制御、などによって行うことができる。
物理的なエネルギーを加えて濃縮した有機ナノ粒子を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライダー、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル等の分散機が挙げられる。また、高圧分散法や、微小粒子ビーズの使用による分散方法も好適なものとして挙げられる。
【0132】
<1>分散の方式
本発明において着色樹脂組成物の好ましい製造方法としては、着色剤を樹脂成分で混練分散処理後の25℃における粘度が10,000mPa・s以上、望ましくは100,000mPa・s以上の比較的高粘度になるように混練分散処理し、次いで溶剤を添加して、微分散処理後の粘度が1,000mPa・s以下、望ましくは100mPa・s以下の比較的低粘度になるように微分散処理する方法が好ましい。
混練分散処理で使用する機械は二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸および2軸の押出機等であり、強い剪断力を与えながら分散する。次いで、溶剤を加えて、主として縦型若しくは横型のサンドグラインダー、ピンミル、スリットミル、超音波分散機、高圧分散機等を使用し、0.1〜1mmの粒径のガラス、ジルコニア等でできたビーズで微分散処理する。さらに0.1mm以下の微小粒子ビーズを用いて精密分散処理をすることもできる。尚、混練分散処理を省くことも可能である。その場合には、顔料と分散剤若しくは表面処理剤と、本発明におけるアクリル系共重合体および溶剤でビーズ分散を行う。
また主顔料と補顔料を別々に分散処理した後、両者の分散液を混合して更に分散処理を加えたり、主顔料と補顔料をいっしょに分散処理することも可能である。
尚、混練、分散についての詳細はT.C. Patton著“Paint Flow and ピグメント Dispersion”(1964年 John Wiley and Sons社刊)等にも記載されており、この方法を用いてもよい。
【0133】
<2>分散剤の例
本発明において、顔料の分散性を向上させる目的で着色樹脂組成物に通常の顔料分散剤や界面活性剤を添加することができる。これらの分散剤としては、多くの種類の化合物が用いられるが、例えば、フタロシアニン誘導体(市販品EFKA−6745(エフカ社製))、ソルスパース5000(ゼネカ(株)社製);オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)社製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社油脂化学工業(株)社製)、W001(裕商社製)等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤;W004、W005、W017(裕商社製)等のアニオン系界面活性剤;EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450(以上森下産業(株)社製)、ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ社製)等の高分子分散剤;ソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、24000、26000、28000などの各種ソルスパース分散剤(ゼネカ(株)社製);アデカプルロニックL31,F38,L42,L44,L61,L64,F68,L72,P95,F77,P84,F87、P94,L101,P103,F108、L121、P−123(旭電化(株)社製)およびイソネットS−20(三洋化成(株)社製)が挙げられる。また、2000−239554号公報に記載の顔料分散剤や、特公平5−72943号公報に記載の化合物(C)や、特開2001−31885号公報に記載の合成例1の化合物なども好適に用いることができる。
再分散時に有機ナノ粒子形成時に用いる分散剤として[分散剤]の項に示した化合物を再度用いることも好ましい。
【0134】
着色樹脂組成物においては、再分散後の有機ナノ粒子(一次粒子)を微細分散化した粒子とすることができ、粒径を好ましくは1〜200nmとすることができ、2〜100nmがより好ましく、5〜50nmが特に好ましい。また、再分散後の粒子のMv/Mnは、1.0〜2.0であることが好ましく、1.0〜1.8であることがより好ましく、1.0〜1.5であることが特に好ましい。
【0135】
本発明において着色樹脂組成物、また後述する着色感光性樹脂組成物に含まれる顔料粒子は、ナノメートルサイズ(例えば、10〜100nm)という微小な粒径にもかかわらず、目的とした粒子サイズで有機ナノ粒子が濃縮再分散化されている。このため、カラーフィルタに用いたときには、光学濃度が高く、フィルタ表面の均一性に優れ、コントラストが高く、かつ画像のノイズを少なくすることができる。
さらに、本発明において着色樹脂組成物、着色感光性樹脂組成物に含まれる有機顔料の粒子は、高度に、また均一に、微細化した状態で分散させられているため、薄い膜厚さで、高い着色濃度を発揮し、例えばカラーフィルタ等の薄層化を可能とするものである。
また本発明において着色樹脂組成物、着色感光性樹脂組成物は、鮮明な色調と高い着色力とを示す顔料を含有させることで、例えばカラープルーフやカラーフィルタ等を作製するための画像形成材料として有用である。
さらに、着色画像形成時の露光・現像に用いられるアルカリ性の現像液に対して、本発明において着色樹脂組成物、着色感光性樹脂組成物には、結合剤(バインダー)としてアルカリ性水溶液に可溶なものを用いることができ、環境上の要求にも応えることができる。
また本発明において着色樹脂組成物、着色感光性樹脂組成物に用いられる溶媒(顔料の分散媒)として適度な乾燥性を有する有機溶媒を用いることができ、塗布後の乾燥の点でもその要求を満足することができる。
【0136】
[着色感光性樹脂組成物]
着色感光性樹脂組成物は、少なくとも、(1)結合剤(A)の存在下において良溶媒に溶解したキノフタロン系顔料の溶液と貧溶媒とを混合して生成させた微粒子と、(2)結合剤(B)と、(3)モノマー又はオリゴマーと、(4)光重合開始剤又は光重合開始剤系とを含有することが好ましい。ただし(A)と(B)は同じであっても異なっていてもよい。着色感光性樹脂組成物おける、上記(1)〜(4)の成分について説明する。
【0137】
(1)有機ナノ粒子
有機ナノ粒子を作製する方法については既に詳細に述べた。有機ナノ粒子の含有量は、着色感光性樹脂組成物中の全固形分(本発明において、全固形分とは、有機溶媒を除く組成物合計をいう。)に対し、3〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、25〜60質量%がさらに好ましい。この量が多すぎると分散液の粘度が上昇し製造適性上問題になることがある。少なすぎると着色力が十分でない。着色剤として機能する有機ナノ粒子(顔料粒子)としては、粒径0.1μm以下、特には粒径0.08μm以下であることが好ましい。また、調色のために通常の顔料と組み合わせて用いてもよい。顔料は上記で記述したものを用いることができる。
【0138】
(2)結合剤
再分散化に用いられる再分散化バインダーとしては、酸性基を有するものが好ましく、上記[結合剤]の項で述べたものを好ましく用いることができ、有機顔料粒子形成時に添加したナノ粒子形成アルカリ可溶性バインダーと類似の構造をもつ化合物が好ましく、両者が同一であることが最も好ましい。再分散化アルカリ可溶性バインダーの含有量は(ナノ粒子形成アルカリ可溶性バインダーが残留している場合はそれとの合計含有量としてもよい)、着色感光性樹脂組成物の全固形分に対して15〜50質量%が一般的であり、20〜45質量%が好ましい。この量が多すぎると組成物の粘度が高くなりすぎ製造適性上問題となる。少なすぎると塗布膜の形成上問題がある。
【0139】
(3)モノマー又はオリゴマー
着色感光性樹脂組成物に含有させるモノマー又はオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。そのようなモノマー及びオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。また、特開平10−62986号公報に一般式(1)および(2)に記載のように、多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化した化合物も好適なものとして挙げられる。
【0140】
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報及び特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報及び特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
【0141】
これらのモノマー又はオリゴマーは(モノマー又はオリゴマーとしては、分子量200〜1000のものが好ましい。)、単独でも、二種類以上を混合して用いてもよく、着色感光性樹脂組成物の全固形分に対する含有量は5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。この量が多すぎると現像性の制御が困難になり製造適性上問題となる。少なすぎると露光時の硬化力が不足する。
【0142】
(4)光重合開始剤又は光重合開始剤系
着色感光性樹脂組成物に含有させる光重合開始剤又は光重合開始剤系(本発明において、光重合開始剤系とは複数の化合物の組み合わせで光重合開始の機能を発現する混合物をいう。)としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書及び同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール二量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾール及びトリアリールイミダゾール二量体が好ましい。
【0143】
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」や、オキシム系として、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、O−ベンゾイル−4’−(ベンズメルカプト)ベンゾイル−ヘキシル−ケトキシム、2,4,6−トリメチルフェニルカルボニル−ジフェニルフォスフォニルオキサイド、ヘキサフルオロフォスフォロ−トリアルキルフェニルホスホニウム塩等も好適なものとしてあげることができる。
【0144】
これらの光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラが少なくできる。
着色感光性樹脂組成物の全固形分に対する光重合開始剤又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。この量が多すぎると感度が高くなりすぎ制御が困難になる。少なすぎると露光感度が低くなりすぎる。
【0145】
(その他の添加剤)
[溶媒]
着色感光性樹脂組成物においては、上記成分の他に、更に有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒の例としては、特に限定されないが、エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチルなどの3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等;エーテル類、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、等;ケトン類、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等;芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレシ等が挙げられる。これら溶剤のうち、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が本発明における溶剤として好ましく用いられる。これらの溶剤は、単独で用いてもあるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0146】
また沸点が180℃〜250℃である溶剤を必要によって使用することができる。これらの高沸点溶剤としては、次のものが例示される。ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、ブチルラクテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−n−プロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、2−エチルヘキシルアセテート、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、γブチルラクトン、トリプロピレングリコールメチルエチルアセテート、ジプロピレングリコール−n−ブチルアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテルアセテート、1,3−ブタンジオールジアセテート。
溶媒の含有量は、樹脂組成物全量に対して10〜95質量%が好ましい。
【0147】
〔界面活性剤〕
従来用いられてきたカラーフィルタにおいては、高い色純度を実現するために各画素の色が濃くなり、画素の膜厚のムラが、そのまま色ムラとして認識されるという問題があった。そのため、画素の膜厚に直接影響する、感光性樹脂層の形成(塗布)時の、膜厚変動の良化が求められていた。
本発明のカラーフィルタ又は本発明の樹脂転写材料においては、均一な膜厚に制御でき、塗布ムラ(膜厚変動による色ムラ)を効果的に防止するという観点から、該着色感光性樹脂組成物中に適切な界面活性剤を含有させることが好ましい。
上記界面活性剤としては、特開2003−337424号公報、特開平11−133600号公報に開示されている界面活性剤が、好適なものとして挙げられる。界面活性剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
【0148】
〔熱重合防止剤〕
着色感光性樹脂組成物は、熱重合防止剤を含むことが好ましい。該熱重合防止剤の例としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンズイミダゾール、フェノチアジン等が挙げられる。熱重合防止剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して1質量%以下が好ましい。
【0149】
〔補助的に使用する染料、顔料〕
着色感光性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じ前記着色剤(顔料)に加えて、着色剤(染料、顔料)を添加することができる。着色剤のうち顔料を用いる場合には、着色感光性樹脂組成物中に均一に分散されていることが望ましく、そのため粒径が0.1μm以下、特には0.08μm以下であることが好ましい。
染料ないし顔料としては、具体的には、前記顔料として、特開2005−17716号公報[0038]〜[0040]に記載の色材や、特開2005−361447号公報[0068]〜[0072]に記載の顔料や、特開2005−17521号公報[0080]〜[0088]に記載の着色剤を好適に用いることができる。補助的に使用する染料もしくは顔料の含有量は、樹脂組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
【0150】
〔紫外線吸収剤〕
着色感光性樹脂組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、特開平5−72724号公報記載の化合物のほか、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系などが挙げられる。
具体的には、フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−4’−ヒドロキシベンゾエート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2,2’−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ニッケルジブチルジチオカーバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピリジン)−セバケート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、サルチル酸フェニル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン縮合物、コハク酸−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリデニル)−エステル、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、7−{[4−クロロ−6−(ジエチルアミノ)−5−トリアジン−2−イル]アミノ}−3−フェニルクマリン等が挙げられる。紫外線吸収剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
【0151】
また、着色感光性樹脂組成物においては、上記添加剤の他に、特開平11−133600号公報に記載の「接着助剤」や、その他の添加剤等を含有させることができる。
【0152】
<着色感光性樹脂組成物の塗布膜>
着色感光性樹脂組成物を用いた塗布膜における、含有成分については、既に[着色感光性樹脂組成物]の項において記載したものと同様である。また、着色感光性樹脂組成物を用いた塗布膜の厚さは、その用途により適宜定めることができるが、0.5〜5.0μmであることが好ましく、1.0〜3.0μmであることがより好ましい。この着色感光性樹脂組成物を用いた塗布膜においては、そこに含まれる(3)モノマー又はオリゴマーを重合させて着色感光性樹脂組成物の重合膜とし、それを有するカラーフィルタを作製することができる(カラーフィルタの作製については後述する。)。重合性モノマー又は重合性オリゴマーの重合は、光照射により(4)光重合開始剤又は光重合開始剤系を作用させて行うことができる。
【0153】
(スリット状ノズル)
尚、上記塗布膜は、着色感光性樹脂組成物を、通常の塗布方法により塗布し乾燥することによって形成することができるが、本発明においては、液が吐出する部分にスリット状の穴を有するスリット状ノズルによって塗布することが好ましい。具体的には、特開2004−89851号公報、特開2004−17043号公報、特開2003−170098号公報、特開2003−164787号公報、特開2003−10767号公報、特開2002−79163号公報、特開2001−310147号公報等に記載のスリット状ノズル、及びスリットコータが好適に用いられる。
【0154】
着色感光性樹脂組成物の基板への塗布方法は、1〜3μmの薄膜を均一に高精度に塗布できるという点からスピン塗布が優れており、カラーフィルタの作製に広く一般的に用いることができる。しかし、近年においては、液晶表示装置の大型化および量産化に伴って、製造効率および製造コストをより高めるために、スピン塗布よりも広幅で大面積な基板の塗布に適したスリット塗布がカラーフィルタの作製に採用されるようになってきている。尚、省液性という観点からもスリット塗布はスピン塗布よりも優れており、より少ない塗布液量で均一な塗膜を得ることができる。
【0155】
スリット塗布は、先端に幅数十ミクロンのスリット(間隙)を有し且つ矩形基板の塗布幅に対応する長さの塗布ヘッドを、基板とのクリアランス(間隙)を数10〜数100ミクロンに保持しながら、基板と塗布ヘッドとに一定の相対速度を持たせて、所定の吐出量でスリットから供給される塗布液を基板に塗布する塗布方式である。このスリット塗布は、(1)スピン塗布に比して液ロスが少ない、(2)塗布液の飛びちりがないため洗浄処理が軽減される、(3)飛び散った液成分の塗布膜への再混入がない、(4)回転の立ち上げ停止時間がないのでタクトタイムが短縮化できる、(5)大型の基板への塗布が容易である、等の利点を有する。これらの利点から、スリット塗布は大型画面液晶表示装置用のカラーフィルタの作製に好適であり、塗布液量の削減にとっても有利な塗布方式として期待されている。
【0156】
スリット塗布は、スピン塗布よりも遥かに大面積の塗布膜を形成するため、幅の広いスリット出口から塗布液を吐出する際、コーターと被塗布物との間にある程度の相対速度を保つ必要がある。このため、スリット塗布方式に用いる塗布液には良好な流動性が求められる。また、スリット塗布には、塗布ヘッドのスリットから基板に供給される塗布液の諸条件を、塗布幅全般に渡って一定に保持することが特に求められる。塗布液の流動性や粘弾性特性等の液物性が不充分であると、塗布ムラが生じやすく、塗布幅方向に塗布厚を一定に保つのが困難になり、均一な塗布膜を得ることができないという問題が生じてしまう。
【0157】
これらのことから、ムラがなく均一な塗布膜を得るために塗布液の流動性や粘弾性特性を改良しようとする試みが多くなされている。しかし、上述したようにポリマーの分子量を低下させたり、溶剤への溶解性に優れたポリマーを選択したり、蒸発速度をコントロールするために溶剤を種々選択したり、界面活性剤を利用するなどの手段が提案されているが、いずれも上記の諸問題を改良するには充分ではなかった。
【0158】
<樹脂転写材料>
次に、本発明の樹脂転写材料について説明する。
本発明の樹脂転写材料は、特開平5−72724号公報に記載されている樹脂転写材料、すなわち一体型となったフイルムを用いて形成することが好ましい。該一体型フイルムの構成の例としては、仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/着色樹脂層/保護フイルムを、この順に積層した構成が挙げられ、本発明の樹脂転写材料としては、前述の本発明の着色樹脂組成物又は着色感光性樹脂組成物を含有する着色樹脂層(本発明において、着色樹脂層のうち、とくに感光性を付与したものを感光性樹脂層ということもある。)。を設けたものであることが好ましい。
【0159】
(仮支持体)
本発明の樹脂転写材料において、仮支持体としては、可撓性を有し、加圧、若しくは加圧及び加熱下においても著しい変形、収縮若しくは伸びを生じないものであることが好ましい。そのような仮支持体の例としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等を挙げることができ、中でも2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0160】
(熱可塑性樹脂層)
熱可塑性樹脂層に用いる成分としては、特開平5−72724号公報に記載されている有機高分子物質が好ましく、ヴイカーVicat法(具体的にはアメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質より選ばれることが特に好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニル或いはそのケン化物の様なエチレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステル或いはそのケン化物、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニル及びそのケン化物の様な塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なスチレン共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なビニルトルエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体ナイロン、共重合ナイロン、N−アルコキシメチル化ナイロン、N−ジメチルアミノ化ナイロンの様なポリアミド樹脂等の有機高分子が挙げられる。
【0161】
(中間層)
本発明の樹脂転写材料においては、複数の塗布層の塗布時、及び塗布後の保存時における成分の混合を防止する目的から、中間層を設けることが好ましい。該中間層としては、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜を用いることが好ましく、この場合、露光時感度がアップし、露光機の時間負荷が減り、生産性が向上する。
該酸素遮断膜としては、低い酸素透過性を示し、水又はアルカリ水溶液に分散又は溶解するものが好ましく、通常のものの中から適宜選択することができる。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの組み合わせである。
【0162】
(保護フイルム)
着色樹脂層の上には、貯蔵の際の汚染や損傷から保護するために薄い保護フイルムを設けることが好ましい。保護フイルムは仮支持体と同じか又は類似の材料からなってもよいが、着色樹脂層から容易に分離されねばならない。保護フイルム材料としては例えばシリコーン紙、ポリオレフィン若しくはポリテトラフルオロエチレンシートが適当である。
【0163】
(樹脂転写材料の作製方法)
本発明の樹脂転写材料は、仮支持体上に熱可塑性樹脂層の添加剤を溶解した塗布液(熱可塑性樹脂層用塗布液)を塗布し、乾燥することにより熱可塑性樹脂層を設け、その後熱可塑性樹脂層上に熱可塑性樹脂層を溶解しない溶剤からなる中間層材料の溶液を塗布、乾燥し、その後着色樹脂層を、中間層を溶解しない溶剤で塗布、乾燥して設けることにより作製することができる。
また、前記の仮支持体上に熱可塑性樹脂層及び中間層を設けたシート、及び保護フイルム上に着色樹脂層を設けたシートを用意し、中間層と着色樹脂層が接するように相互に貼り合わせることによっても、更には、前記の仮支持体上に熱可塑性樹脂層を設けたシート、及び保護フイルム上に着色樹脂層及び中間層を設けたシートを用意し、熱可塑性樹脂層と中間層が接するように相互に貼り合わせることによっても、作製することができる。
【0164】
本発明の樹脂転写材料において、着色樹脂層の膜厚としては、1.0〜5.0μmが好ましく、1.0〜4.0μmがより好ましく、1.0〜3.0μmが特に好ましい。また、特に限定されるわけではないが、その他の各層の好ましい膜厚としては、仮支持体は15〜100μm、熱可塑性樹脂層は2〜30μm、中間層は0.5〜3.0μm、保護フイルムは4〜40μmが、一般的に好ましい。
【0165】
尚、上記作製方法における塗布は、通常の塗布装置等によって行うことができるが、本発明においては、既に<着色感光性樹脂組成物の塗布膜>の項において説明した、スリット状ノズルを用いた塗布装置(スリットコータ)によって行うことが好ましい。スリットコータの好ましい具体例等は、前記と同様である。
【0166】
<カラーフィルタ及びカラーフィルタの製造方法>
本発明のカラーフィルタは、コントラストに優れていることが特徴である。本発明においてコントラストとは、2枚の偏光板の間において、偏光軸が平行のときと、垂直のときとの透過光量の比を表す(「1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ、植木、小関、福永、山中」等参照。)。
カラーフィルタのコントラストが高いということは液晶と組み合わせたときの明暗のディスクリが大きくできるということを意味しており、液晶ディスプレイがCRTに置き換わるためには非常に重要な性能である。
【0167】
本発明のカラーフィルタは、テレビ用として用いる場合は、F10光源による、レッド(R)、グリーン(G)、及びブルー(B)のそれぞれ全ての単色の色度が、下表に記載の値(以下、本発明において「目標色度」という。)との差(ΔE)で5以内の範囲であることが好ましく、更に3以内であることがより好ましく、2以内であることが特に好ましい。
【0168】
x y Y
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
R 0.656 0.336 21.4
G 0.293 0.634 52.1
B 0.146 0.088 6.90
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0169】
本発明において色度は、顕微分光光度計(オリンパス光学社製;OSP100又は200)により測定し、F10光源視野2度の結果として計算して、xyz表色系のxyY値で表す。また、目標色度との差は、La表色系の色差で表す。
【0170】
(着色樹脂層)
本発明のカラーフィルタは、基板上に着色樹脂層を形成し、露光して現像することを色の数だけ繰り返す方法などの方法によって製造することができる。尚、必要に応じて、その境界をブラックマトリックスで区分した構造とすることもできる。
上記の製造方法において、基板上に上記着色樹脂層を形成する方法としては、(a)上記の着色樹脂組成物又は着色感光性樹脂組成物を通常の塗布装置等によって塗布する方法、及び(b)前述の樹脂転写材料を用い、ラミネーターによって貼り付ける方法などが挙げられる。
【0171】
(a)塗布装置による塗布
本発明のカラーフィルタを製造する際、着色樹脂組成物又は着色感光性樹脂組成物の塗布には、通常の塗布装置を用いることができるが、中でも特に、既に<着色感光性樹脂組成物の塗布膜>の項において説明した、スリットコータを好適に用いることができる。尚、スリットコータの好ましい具体例等は、前記と同様である。着色樹脂層を塗布により形成する場合、その膜厚としては、1.0〜3.0μmが好ましく、1.0〜2.5μmがより好ましく、1.5〜2.5μmが特に好ましい。
【0172】
(b)ラミネーターによる貼り付け
前記本発明の樹脂転写材料を用い、フイルム状に形成した着色樹脂層を、後述する基板上に、加熱及び/又は加圧した、ローラー又は平板で、圧着又は加熱圧着することによって、貼り付けることができる。具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネーター及びラミネート方法が挙げられるが、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。尚、着色樹脂層を前記本発明の樹脂転写材料により形成する場合の、その好ましい膜厚は、<樹脂転写材料>の項において記載した好ましい膜厚と同様である。
【0173】
(基板)
本発明において、カラーフィルタが形成される基板としては、例えば、透明基板が用いられ、表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板、或いは、プラスチックフィルム等を挙げることができる。
また、上記基板は、予めカップリング処理を施しておくことにより、着色樹脂組成物、着色感光性樹脂組成物、又は樹脂転写材料との密着を良好にすることができる。該カップリング処理としては、特開2000−39033号公報記載の方法が好適に用いられる。尚、特に限定されるわけではないが、基板の膜厚としては、700〜1200μmが一般的に好ましく、500〜1100μmが特に好ましい。
【0174】
(酸素遮断膜)
本発明のカラーフィルタは、着色樹脂層を着色感光性樹脂組成物の塗布によって形成する場合において、該着色樹脂層上に更に酸素遮断膜を設けることができ、これにより、露光感度をアップすることができる。該酸素遮断膜としては、既に<樹脂転写材料>の(中間層)の項において説明したものと同様のものが挙げられる。尚、特に限定されるわけではないが、酸素遮断膜の膜厚としては、0.5〜3.0μmが一般的に好ましい。
【0175】
(露光及び現像)
上記基板上に形成された着色樹脂層を感光性樹脂層とし、その上方に所定のマスクを配置し、その後該マスク、熱可塑性樹脂層、及び中間層を介してマスク上方から露光し、次いで現像液による現像を行う、という工程を色の数だけ繰り返すことにより、本発明のカラーフィルタを得ることができる。
ここで、前記露光の光源としては、着色樹脂層を硬化しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射できるものであれば適宜選定して用いることができる。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。露光量としては、通常5〜200mJ/cm程度であり、好ましくは10〜100mJ/cm程度である。
【0176】
また、前記現像液としては、特に制約はなく、特開平5−72724号公報に記載のものなど、通常の現像液を使用することができる。尚、現像液は着色樹脂層が溶解型の現像挙動をするものが好ましく、例えば、pKa=7〜13の化合物を0.05〜5mol/Lの濃度で含むものが好ましいが、更に水と混和性を有する有機溶剤を少量添加してもよい。
水と混和性を有する有機溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、乳酸エチル、乳酸メチル、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。該有機溶剤の濃度は0.1質量%〜30質量%が好ましい。
また、上記現像液には、更に通常の界面活性剤を添加することができる。界面活性剤の濃度は0.01質量%〜10質量%が好ましい。
【0177】
現像の方式としては、パドル現像、シャワー現像、シャワー&スピン現像、ディプ現像等の方法を用いることができる。
ここで、上記シャワー現像について説明すると、露光後の着色樹脂層に現像液をシャワーにより吹き付けることにより、未硬化部分を除去することができる。尚、現像の前に着色樹脂層の溶解性が低いアルカリ性の液をシャワーなどにより吹き付け、熱可塑性樹脂層、中間層などを除去しておくことが好ましい。また、現像の後に、洗浄剤などをシャワーにより吹き付け、ブラシなどで擦りながら、現像残渣を除去することが好ましい。
現像液の液温度は20℃〜40℃が好ましく、また、現像液のpHは8〜13が好ましい。
(ポスト露光)
前記現像後に、ポスト露光工程を実施してもよい。ポスト露光を実施すると、画像の断面形状のコントロール、画像の硬度のコントロール、画像の表面凹凸のコントロール、画像の膜減りのコントロールなどの観点で好ましい。ポスト露光に用いる光源としては、特開2005−3861号公報の段落番号0074に記載の超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。ポスト露光は、超高圧水銀灯やメタルハライド等の光源からの光を露光マスクなどを介さず直接基板に照射する事が、設備の簡素化と省電力の観点で好ましい。必要に応じて、両面から実施する。また、露光量も、上面:100から2000mJ/平方センチメートル、下面:100から2000mJ/平方センチメートルの範囲で、上記コントロール目的に応じ、適宜調整する。
(熱処理)
前記ポスト露光工程後に熱処理工程を実施してもよい。熱処理により本発明の感光性樹脂層に含まれるモノマーや架橋剤を反応させて、画像の硬度を確保することができる。熱処理の温度は、150℃から250℃の範囲が好ましい。150℃以下では硬度が不十分となり、250℃以上では樹脂が着色し色純度が悪くなる。熱処理の時間は、10分から150分が好ましい。10分未満では、硬度が不足し、150分以上では、樹脂が着色し色純度が悪くなる。また熱処理は、色によって変えても良い。また、全部の色を形成後、更に最終の熱処理を行って硬度を安定化させても良い。その場合、高めの温度(例えば240℃)で実施すると硬度の点で好ましい。
【0178】
尚、本発明のカラーフィルタを製造する際、特開平11−248921号公報、特許3255107号公報に記載のように、カラーフィルタを形成する着色樹脂組成物又は着色感光性樹脂組成物を重ねることで土台を形成し、その上に透明電極を形成し、更に分割配向用の突起を重ねることでスペーサを形成することが、コストダウンの観点で好ましい。
着色樹脂組成物又は着色感光性樹脂組成物を順次塗布して重ねる場合は、塗布液のレベリングのため重ねるごとに膜厚が薄くなってしまう。このため、K(ブラック)・R・G・Bの4色を重ね、更に分割配向用突起を重ねることが好ましい。一方、熱可塑性樹脂層を有する転写材料を用いる場合は、厚みが一定に保たれるため、重ねる色は3又は2色とすることが好ましい。
また上記土台のサイズは、転写材料を重ねてラミネートする際の着色樹脂層の変形を防止し一定の厚みを保持する観点から、25μm×25μm以上が好ましく、30μm×30μm以上が特に好ましい。
【0179】
<液晶表示装置>
本発明の液晶表示装置は、コントラストに優れる本発明のカラーフィルタを用い、黒のしまり等の描写力に優れる。ノートパソコン用ディスプレイやテレビモニター等の大画面の液晶表示装置として好適に用いることができる。
【実施例】
【0180】
以下に本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、以下の実施例において「部」とは「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表し、「分子量」は「重量平均分子量」を表す。
【0181】
(実施例1)
良溶媒として、ジメチルスルホキシド100mlに、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液3.3ml、顔料(PY138)6000mg、ポリビニルピロリドン6000mg、顔料分散剤A(前記例示化合物(7.))を600mg添加した顔料溶液Aを調製した。なお顔料分散剤Aは、特開2000−239554号公報に従い合成した。これとは別に貧溶媒として、1mol/l塩酸4.3mlを含有した水1000mlを用意した。
ここで、1℃に温度コントロールし、藤沢薬品工業社製GK−0222−10型ラモンドスターラーにより500rpmで攪拌した貧溶媒の水1000mlに、顔料溶液Aを日本精密化学社製NP−KX−500型大容量無脈流ポンプを用いて流速25ml/minで200ml注入することにより、ナノ顔料粒子を形成し顔料分散液Aを調製した。この顔料分散液Aを、日機装社製ナノトラックUPA−EX150を用いて、粒径、単分散度を測定したところ、数平均粒径32nm、Mv/Mn1.35であった。またTEM(JEM−2010)(倍率200000倍)(日本電子(株)社製)を用いて観察し、粒子径は粒子の電子顕微鏡写真画像を同面積の円とした時の直径を用い、また、1000個の粒子について上記の粒子径を求め、粒子の割合を算出した。
上記のようにして測定した結果、100nm以上の粒径の粒子は認められなかった。
調製した顔料分散液(ナノ顔料濃度約0.5質量%)に、500mlの2−(1−メトキシ)プロピルアセテートを加えて25℃で10分間、500rpmで攪拌した後1日静置し、ナノ顔料を2−(1−メトキシ)プロピルアセテート相に抽出し、濃縮抽出液とした。
ナノ顔料を抽出した濃縮抽出液を、住友電工ファインポリマ社製FP−010型フィルターを用いて、ろ過することにより、ペースト状の濃縮顔料液A(ナノ顔料濃度35質量%)を得た。
前記ペーストを用い、下記組成の着色樹脂組成物Aを調製した。
前記ペースト状の濃縮顔料液A 18.3g
顔料分散剤A 0.6g
メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル共重合体* 15.8g
1−メトキシ−2−プロピルアセテート 45.3g
*モル比28/72、重量平均分子量:3万、40%1−メトキシ−2−プロピルアセテート溶液
【0182】
(実施例2〜5)
流速25ml/minで200ml注入の工程を、流速を50、75、100、200ml/minとして200ml注入する条件にそれぞれ変更した以外は実施例1と同じ方法で顔料分散液B〜E、ペースト状の濃縮顔料液B〜E、および着色樹脂組成物B〜Eを調製した。
【0183】
(実施例6)
良溶媒ジメチルスルホキシドをDMF(ジメチルホルムアシド)に変更し、貧溶剤の液温を50℃にし、顔料分散剤Aを顔料分散剤B(前記例示化合物(C))に変更した以外は実施例1と同じ方法で顔料分散液F、ペースト状の濃縮顔料液F、および着色樹脂組成物Fを調製した。
【0184】
(実施例7)
良溶媒を1−メチル−2−ピロリドンに変更し、貧溶剤の液温を80℃にし、顔料分散剤Aを顔料分散剤Bに変更した以外は実施例1と同じ方法で顔料分散液G、ペースト状の濃縮顔料液G、及び着色樹脂組成物Gを調製した。
【0185】
(比較例1)
下記のようにしてビーズ分散機を用いて、下記組成の着色樹脂組成物Hを調製した。
顔料(ピグメントイエロー138) 6.4g
顔料分散剤A 0.6g
メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル共重合体* 15.8g
1−メトキシ−2−プロピルアセテート 45.3g
*モル比28/72、重量平均分子量:3万、40%1−メトキシ−2−プロピルアセテート溶液
1−メトキシ−2−プロピルアセテート溶液中に、顔料(ピグメントイエロー138)の紛体、メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル共重合体を投入攪拌し、混合液を得た。次にこの混合液をモーターミルM−50(アイガー・ジャパン(株)社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで9時間分散した。
【0186】
なお、実施例1〜7、比較例1において得られた顔料微粒子の平均粒径と粒径100nm以上の粒子の割合を実施例1と同様にして測定した。結果を下表Aに示した。
<表A>
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
顔料分散液 平均粒子径 粒径100nm以上の
(nm) 粒子の割合(%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
実施例1 A 32 0
実施例2 B 30 0
実施例3 C 30 0.1
実施例4 D 30 0.5
実施例5 E 30 1.0
実施例6 F 50 0.1
実施例7 G 60 0.5
比較例1 H 30 5
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
実施例で作製した顔料粒子は、平均粒子径が小さく、且つ、100nm以上の粒子の割合が1.0%以下であり、安定した顔料粒子であった。それに対し、比較例で作製した顔料粒子は、平均粒子径は小さかったが、100nm以上の粒子の割合が5%もあった。
【0187】
(比較例2)
ジメチルスルホキシド100mlに、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液3.3ml、顔料(ピグメントイエロー138)6000mg、顔料分散剤Aを600mg添加し、10気圧に加圧して、色素溶液を調製した。
この溶液を用い、色素固形分濃度が35%になるまで減圧乾燥を行った。この濃縮色素液Iとした。濃縮色素液Iを濃縮顔料液Aに替えて用いた以外は実施例1と同様にして着色樹脂組成物Iを調製した。
【0188】
なお、上記実施例、比較例においては下記試薬を用いた。
試薬 製造元
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ピグメントイエロー138 BAFS社製 Paliotol
Yellow D0960(商品名)
1−メチル−2−ピロリドン 和光純薬社製
ジメチルスルホキシド 和光純薬社製
2−(1−メトキシ)プロピルアセテート 和光純薬社製
1mol/l 塩酸水溶液 和光純薬社製
8mol/l 水酸化カリウム水溶液 和光純薬社製
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0189】
(実施例8)
[カラーフィルタの作製(スリット状ノズルを用いた塗布による作製)]
[ブラック(K)画像の形成]
無アルカリガラス基板を、UV洗浄装置で洗浄後、洗浄剤を用いてブラシ洗浄し、更に超純水で超音波洗浄した。該基板を120℃3分熱処理して表面状態を安定化させた。
該基板を冷却し23℃に温調後、スリット状ノズルを有すガラス基板用コーター(エフ・エー・エス・アジア社製、商品名:MH−1600)にて、下記表1に記載の組成よりなる着色感光性樹脂組成物K1を塗布した。引き続きVCD(真空乾燥装置;東京応化工業(株)社製)で30秒間、溶媒の一部を乾燥して塗布層の流動性を無くした後、120℃3分間プリベークして膜厚2.4μmの感光性樹脂層K1を得た。
【0190】
【表1】

【0191】
超高圧水銀灯を有すプロキシミティ型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該感光性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、露光量300mJ/cmでパターン露光した。
次に、純水をシャワーノズルにて噴霧して、該感光性樹脂層K1の表面を均一に湿らせた後、KOH系現像液(KOH、ノニオン界面活性剤含有、商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)にて23℃80秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像しパターニング画像を得た。引き続き、超純水を、超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で噴射して残渣除去を行い、ブラック(K)の画像Kを得た。引き続き、220℃で30分間熱処理した。
【0192】
[レッド(R)画素の形成]
前記画像Kを形成した基板に、下記表2に記載の組成よりなる着色感光性樹脂組成物R1を用い、前記ブラック(K)画像の形成と同様の工程で、熱処理済み画素Rを形成した。
該感光性樹脂層R1の膜厚及び顔料(C.I.P.R.254及びC.I.P.R.177)の塗布量を以下に示す。
感光性樹脂膜厚(μm) 1.60
顔料塗布量(g/m) 1.00
C.I.P.R.254塗布量(g/m) 0.80
C.I.P.R.177塗布量(g/m) 0.20
【0193】
【表2】

【0194】
[グリーン(G)画素の形成]
前記画像Kと画素Rを形成した基板に、下記表3に記載の組成よりなる着色感光性樹脂組成物G1を用い、前記ブラック(K)画像Kの形成と同様の工程で、熱処理済み画素Gを形成した。該感光性樹脂層G1の膜厚及び顔料(C.I.P.G.36及びC.I.P.Y.138)の塗布量を以下に示す。
感光性樹脂膜厚(μm) 1.60
顔料塗布量(g/m) 1.92
C.I.P.G.36塗布量(g/m) 1.34
C.I.P.Y.138塗布量(g/m) 0.58
【0195】
【表3】

【0196】
[ブルー(B)画素の形成]
前記画像K、画素R及び画素Gを形成した基板に、下記表4に記載の組成よりなる着色感光性樹脂組成物B1を用い、前記ブラック(K)画像Kの形成と同様の工程で、熱処理済み画素Bを形成し、目的のカラーフィルタAを得た。
該感光性樹脂層B1の膜厚及び顔料(C.I.P.B.15:6及びC.I.P.V.23)の塗布量を以下に示す。
感光性樹脂膜厚(μm) 1.60
顔料塗布量(g/m) 0.75
C.I.P.B.15:6塗布量(g/m) 0.705
C.I.P.V.23塗布量(g/m) 0.045
【0197】
【表4】

【0198】
ここで、上記表1〜4に記載の着色感光性樹脂組成物K1、R1、G1、B1の調製についてさらに詳細に説明する。
着色感光性樹脂組成物K1は、まず表1に記載の量のK顔料分散物1、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpm10分間攪拌し、次いで、表1に記載の量のメチルエチルケトン、バインダー2、ハイドロキノンモノメチルエーテル、DPHA液、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン、界面活性剤1をはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpm30分間攪拌することによって得た。
【0199】
尚、表1に記載の組成物の内、下記成分についてその組成を以下に示した。
<K顔料分散物1>
・カーボンブラック(商品名:Nipex 35、デグサ ジャパン(株)社製)
13.1部
・分散剤(下記化合物2) 0.65部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3.7万) 6.72部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.53部
【0200】
【化23】

【0201】
<バインダー2>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比
のランダム共重合物、分子量3.8万) 27部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73部
<DPHA液>
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(重合禁止剤MEHQ 500ppm
含有、日本化薬(株)社製、商品名:KAYARAD DPHA) 76部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 24部
<界面活性剤1>
・下記化合物1 30部
・メチルエチルケトン 70部
【0202】
【化24】

【0203】
着色感光性樹脂組成物R1は、まず表2に記載の量のR顔料分散物1、R顔料分散物2、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpm10分間攪拌し、次いで、表2に記載の量のメチルエチルケトン、バインダー1、DPHA液、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン、フェノチアジンをはかり取り、温度24℃(±2℃)でこの順に添加して150rpm30分間攪拌し、更に、表2に記載の量の界面活性剤1をはかり取り、温度24℃(±2℃)で添加して30rpm5分間攪拌し、ナイロンメッシュ#200で濾過することによって得た。
【0204】
<R顔料分散物1>
・C.I.P.R.254(商品名:Irgaphor Red B−CF、
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製) 8部
・分散剤(前記化合物2) 0.8部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3万) 8部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 83部
<R顔料分散物2>
・C.I.P.R.177(商品名:Cromophtal Red A2B、
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製) 18部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3万) 12部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 70部
<バインダー1>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メチルメタクリレート
=38/25/37モル比のランダム共重合物、分子量4万) 27部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73部
【0205】
着色感光性樹脂組成物G1は、まず表3に記載の量のG顔料分散物1、Y顔料分散物A、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpm10分間攪拌し、次いで、表3に記載の量のメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、バインダー2、DPHA液、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン、フェノチアジンをはかり取り、温度24℃(±2℃)でこの順に添加して150rpm30分間攪拌し、更に、表3に記載の量の界面活性剤1をはかり取り、温度24℃(±2℃)で添加して30rpm5分間攪拌し、ナイロンメッシュ#200で濾過することによって得た。
【0206】
尚、表3に記載の組成物のうち、G顔料分散物1の組成は以下のとおりである。
G顔料分散物1は、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)社製の「商品名:GT−2」を用いた。
<Y顔料分散物A>
・ペースト状の濃縮顔料液A(C.I.P.Y.138) 26部
・分散剤(前記化合物2) 0.9部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3万) 22.2部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 47.3部
・ジメチルアセトアミド 3.6部
【0207】
着色感光性樹脂組成物B1は、まず表4に記載の量のB顔料分散物1、B顔料分散物2、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpm10分間攪拌し、次いで、表4に記載の量のメチルエチルケトン、バインダー3、DPHA液、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン、フェノチアジンをはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpm30分間攪拌し、更に、表4に記載の量の界面活性剤1をはかり取り、温度24℃(±2℃)で添加して30rpm5分間攪拌し、ナイロンメッシュ#200で濾過することによって得た。
【0208】
尚、表4に記載の組成物のうち、B顔料分散物1は、御国色素(株)社製の「商品名:CFブルーEX3357」を用いた。
B顔料分散物2は、御国色素(株)社製の「商品名:CFブルーEX3383」を用いた。
バインダー3の組成は、以下のとおりである。
<バインダー3>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メチルメタクリレート
=36/22/42モル比のランダム共重合物、分子量3.8万) 27部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73部
【0209】
上記のカラーフィルタAの作成方法に対し、Y顔料組成物Aに用いる実施例1のペースト状の濃縮顔料液Aを実施例2〜7のペースト状の濃縮顔料液B〜Gに変更し,カラーフィルタB〜Gをそれぞれ得た。
また、上記のカラーフィルタAの作成方法に対し、Y顔料分散物Aに用いるペースト状の濃縮顔料液Aを着色樹脂組成物Hに変更し、カラーフィルタHを作製した。
さらにまた上記のカラーフィルタAの作成方法に対し、Y顔料分散物Aに用いるペースト状の濃縮顔料液Aを着色樹脂組成物Iに変更し、カラーフィルタIを作製した。
得られたカラーフィルタのコントラスト及び耐光性を下記のようにして測定した結果を表5に示した。
・コントラスト測定方法:
得られた着色樹脂組成物A〜Iを、それぞれガラス基板上に厚みが2μmになるように塗布し、サンプルを作製した。バックライトユニットとして3波長冷陰極管光源(東芝ライテック(株)社製FWL18EX−N)に拡散板を設置したものを用い、2枚の偏光板((株)サンリツ社製の偏光板HLC2−2518)の間にこのサンプルを置き、偏光軸が平行のときと、垂直のときとの透過光量を測定し、その比をコントラストとした(「1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ、植木、小関、福永、山中」等参照。)。
着色樹脂組成物A〜Iから得たサンプルのコントラスト測定の結果を下記のように区別して表5に示した。
コントラスト4000未満 ×
コントラスト4000以上5000未満 ○
コントラスト5000以上 ◎
【0210】
色度の測定には色彩輝度計((株)トプコン社製BM−5)を用いた。2枚の偏光板、サンプル、色彩輝度計の設置位置は、バックライトから13mmの位置に偏光板を、40mmから60mmの位置に直径11mm長さ20mmの円筒を設置し、この中を透過した光を、65mmの位置に設置した測定サンプルに照射し、透過した光を、100mmの位置に設置した偏光板を通して、400mmの位置に設置した色彩輝度計で測定した。色彩輝度計の測定角は2°に設定した。バックライトの光量は、サンプルを設置しない状態で、2枚の偏光板をパラレルニコルに設置したときの輝度が1280cd/mになるように設定した。
【0211】
このサンプルをキセノンランプ110万ルクスでの、UVカットフィルターを用い1000時間照射し、照射前後の色差を測定し、耐光性の指標とした。なお、本発明において色度は、顕微分光光度計(オリンパス光学社製;OSP100又は200)により測定し、F10光源視野2度の結果として計算して、xyz表色系のxyY値で表す。また、色度の差は、La表色系の色差で表す。この色差が小さいほど好ましく、各サンプルにおける測定結果を下記のように区別して表5に示した。
色差0.2未満 ○
色差0.2以上0.5未満 △
色差0.5以上 ×
【0212】
【表5】

表5の結果より、本発明の製造方法で分散生成させて得たキノフタロン系顔料微粒子を用いれば、コントラストが高く耐光性に優れたカラーフィルタを作製できることが分かる。
【0213】
(実施例9)
[液晶表示装置の作製及び評価]
カラーフィルタA〜Iを用いて液晶表示装置を形成し表示特性の評価を行った。
(ITO電極の形成)
カラーフィルタが形成されたガラス基板をスパッタ装置に入れて、100℃で1300Å厚さのITO(インヂウム錫酸化物)を全面真空蒸着した後、240℃で90分間アニールしてITOを結晶化し、ITO透明電極を形成した。
(スペーサの形成)
特開2004−240335号公報の[実施例1]に記載のスペーサ形成方法と同様の方法で、上記で作製したITO透明電極上にスペーサを形成した。
(液晶配向制御用突起の形成)
下記のポジ型感光性樹脂層用塗布液を用いて、前記スペーサを形成したITO透明電極上に液晶配向制御用突起を形成した。
但し、露光、現像、及び、ベーク工程は、以下の方法を用いた。
所定のフォトマスクが感光性樹脂層の表面から100μmの距離となるようにプロキシミティ露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)を配置し、該フォトマスクを介して超高圧水銀灯により照射エネルギー150mJ/cmでプロキシミティ露光した。
続いて、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を、シャワー式現像装置にて33℃で30秒間基板に噴霧しながら現像した。こうして、感光性樹脂層の不要部(露光部)を現像除去することにより、カラーフィルタ側基板上に、所望の形状にパターニングされた感光性樹脂層よりなる液晶配向制御用突起が形成された液晶表示装置用基板を得た。
次いで、該液晶配向制御用突起が形成された液晶表示装置用基板を230℃下で30分ベークすることにより、液晶表示装置用基板上に硬化された液晶配向制御用突起を形成した。
<ポジ型感光性樹脂層用塗布液処方>
・ポジ型レジスト液(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)社製FH−2413F) : 53.3部
・メチルエチルケトン : 46.7部
・メガファックF−780F(大日本インキ化学工業(株)社製) : 0.04部
(液晶表示装置の作成)
上記で得られた液晶表示装置用基板上に更にポリイミドよりなる配向膜を設けた。
その後、カラーフィルタの画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリックス外枠に相当する位置にエポキシ樹脂のシール剤を印刷すると共に、MVAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板を熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして得た液晶セルの両面に、(株)サンリツ社製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。次いで、3波長冷陰極管光源(東芝ライテック(株)社製FWL18EX−N)のバックライトを構成し、前記偏光板が設けられた液晶セルの背面となる側に配置し、液晶表示装置とした。
比較例のカラーフィルタH、Iを用いた液晶表示装置に対して、本発明のカラーフィルタA〜Gを用いた液晶表示装置は黒のしまりおよび緑の描写力に優れ、良好な表示特性を示すことを確認した。
【0214】
(実施例10)
[カラーフィルタの作製(感光性樹脂転写材料のラミネートよる作製)]
[感光性樹脂転写材料の作製]
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体の上に、スリット状ノズルを用いて、下記処方H1からなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させた。次に、下記処方P1から成る中間層用塗布液を塗布、乾燥させた。更に、前記着色感光性樹脂組成物K1を塗布、乾燥させ、該仮支持体の上に乾燥膜厚が14.6μmの熱可塑性樹脂層と、乾燥膜厚が1.6μmの中間層と、乾燥膜厚が2.4μmの感光性樹脂層を設け、保護フイルム(厚さ12μmポリプロピレンフィルム)を圧着した。
こうして仮支持体と熱可塑性樹脂層と中間層(酸素遮断膜)とブラック(K)の感光性樹脂層とが一体となった感光性樹脂転写材料を作製し、サンプル名を感光性樹脂転写材料K1とした。
【0215】
<熱可塑性樹脂層用塗布液:処方H1>
・メタノール 11.1部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 6.36部
・メチルエチルケトン 52.4部
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジル
メタクリレート/メタクリル酸共重合体
(共重合組成比(モル比)=55/11.7/4.5/28.8、
分子量:9万、Tg:約70℃) 5.83部
・スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)
=63/37、分子量:1万、Tg:約100℃) 13.6部
・ビスフェノールAにペンタエチレングリコールモノメタクリートを
2当量脱水縮合した化合物(新中村化学工業(株)社製、
商品名:2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)
フェニル]プロパン) 9.1部
・前記界面活性剤1 0.54部
【0216】
<中間層用塗布液:処方P1>
・PVA205(ポリビニルアルコール、(株)クラレ社製、
鹸化度=88%、重合度550) 32.2部
・ポリビニルピロリドン(アイエスピー・ジャパン(株)社製、
K−30) 14.9部
・蒸留水 524部
・メタノール 429部
【0217】
次に、前記感光性樹脂転写材料K1の作製において用いた前記着色感光性樹脂組成物K1を、下記表6〜8に記載の組成よりなる下記着色感光性樹脂組成物R101(表6)、G101(表7)、及びB101(表8)に変更し、それ以外は上記と同様の方法により、感光性樹脂転写材料R101、G101及びB101を作製した。尚、着色感光性樹脂組成物R101、G101及びB101の調製方法は、それぞれ前記着色感光性樹脂組成物R1、G1及びB1の調製方法に準ずる。
【0218】
【表6】

【0219】
【表7】

【0220】
【表8】

【0221】
尚、表6に記載の組成物の内、添加剤1は、燐酸エステル系特殊活性剤(楠本化成(株)社製、商品名:HIPLAAD ED152)を用いた。
【0222】
[ブラック(K)画像の形成]
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3質量%水溶液、商品名:KBM603、信越化学工業(株)社製)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱して次のラミネーターに送った。
前記感光性樹脂転写材料K1の保護フイルムを剥離後、ラミネーター((株)日立インダストリイズ社製(LamicII型))を用い、前記100℃に加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度2.2m/分でラミネートした。
仮支持体を熱可塑性樹脂層との界面で剥離後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティ型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該熱可塑性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、露光量70mJ/cmでパターン露光した。
【0223】
次に、トリエタノールアミン系現像液(2.5%のトリエタノールアミン含有、ノニオン界面活性剤含有、ポリプロピレン系消泡剤含有、商品名:T−PD1、富士写真フイルム)にて30℃50秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し熱可塑性樹脂層と中間層を除去した。
引き続き炭酸ナトリウム系現像液(0.06モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、同濃度の炭酸ナトリウム、1%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、安定剤含有、商品名:T−CD1、富士写真フイルム社製)を用い、29℃30秒、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し感光性樹脂層を現像しパターニング画像を得た。
引き続き洗浄剤(燐酸塩・珪酸塩・ノニオン界面活性剤・消泡剤・安定剤含有、商品名「T−SD1(富士写真フイルム社製)」、或いは、炭酸ナトリウム・フェノキシオキシエチレン系界面活性剤含有、商品名「T−SD2(富士写真フイルム社製)」)を用い、33℃20秒、コーン型ノズル圧力0.02MPaでシャワーとナイロン毛を有す回転ブラシにより残渣除去を行い、ブラック(K)の画像を得た。その後更に、該基板に対して該樹脂層の側から超高圧水銀灯で500mJ/cmの光でポスト露光後、220℃、15分熱処理した。
この画像Kを形成した基板を再び、前記のようにブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液は使用せずに、基板予備加熱装置に送った。
【0224】
[レッド(R)画素の形成]
前記感光性樹脂転写材料R101を用い、前記感光性樹脂転写材料K1と同様の工程で、熱処理済みのレッド(R)の画素Rを得た。但し露光量は40mJ/cm、炭酸ナトリウム系現像液による現像は35℃35秒とした。
該感光性樹脂層R101の膜厚及び顔料(C.I.P.R.254及びC.I.P.R.177)の塗布量を以下に示す。
感光性樹脂膜厚(μm) 2.00
顔料塗布量(g/m) 1.00
C.I.P.R.254塗布量(g/m) 0.80
C.I.P.R.177塗布量(g/m) 0.20
この画像K、及び画素Rを形成した基板を再び、前記のようにブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液は使用せずに、基板予備加熱装置に送った。
【0225】
[グリーン(G)画素の形成]
前記感光性樹脂転写材料G101を用い、前記感光性樹脂転写材料R101と同様の工程で、熱処理済みのグリーン(G)の画素Gを得た。但し露光量は40mJ/cm、炭酸ナトリウム系現像液による現像は34℃45秒とした。
該感光性樹脂層G101膜厚、及び顔料(C.I.P.G.36及びC.I.P.Y.138)の塗布量を表以下に示す。
感光性樹脂膜厚(μm) 2.00
顔料塗布量(g/m) 1.92
C.I.P.G.36塗布量(g/m) 1.34
C.I.P.Y.138塗布量(g/m) 0.58
この画像K、画素R、および画素Gを形成した基板を再び、前記のようにブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液は使用せずに、基板予備加熱装置に送った。
【0226】
[ブルー(B)画素の形成]
前記感光性樹脂転写材料B101を用い、前記感光性樹脂転写材料R101と同様の工程で、熱処理済みのブルー(B)の画素Bを得た。但し露光量は30mJ/cm、炭酸ナトリウム系現像液による現像は36℃40秒とした。
該感光性樹脂層B101膜厚、及び顔料(C.I.P.B.15:6及びC.I.P.V.23)の塗布量を以下に示す。
感光性樹脂膜厚(μm) 2.00
顔料塗布量(g/m) 0.75
C.I.P.B.15:6塗布量(g/m) 0.705
C.I.P.V.23塗布量(g/m) 0.045
この画素R、画素G、画素B、および画像Kを形成した基板を240℃で50分ベークして、カラーフィルタA1を得た。
【0227】
上記のカラーフィルタA1の作成方法に対し、Y顔料組成物Aに用いる実施例1のペースト状の濃縮顔料液Aを実施例2〜7のペースト状の濃縮顔料液B〜Gに変更し,カラーフィルタB1〜G1をそれぞれ得た。
また、上記のカラーフィルタA1の作成方法に対し、Y顔料分散物Aに用いるペースト状の濃縮顔料液Aを着色樹脂組成物Hに変更し、カラーフィルタH1を作製した。
さらにまた、上記のカラーフィルタA1の作成方法に対し、Y顔料分散物Aに用いるペースト状の濃縮顔料液Aを着色樹脂組成物Iに変更し、カラーフィルタI1を作製した。
得られたカラーフィルタのコントラスト及び耐光性を実施例1と同様に測定した結果を表9に示した。
【0228】
【表9】

【0229】
表9の結果より、本発明の製造方法により分散生成させて得たキノフタロン系顔料微粒子を用いれば、コントラストが高く耐光性に優れたカラーフィルタを作製できることが分かる。
【0230】
(実施例11)
[液晶表示装置の作製及び評価]
カラーフィルタA1〜I1を用いて実施例9と同様の方法で液晶表示装置を形成し表示特性の評価を行った。比較例のカラーフィルタH1、I1を用いた液晶表示装置に対して、本発明のカラーフィルタA1〜G1を用いた液晶表示装置は、黒のしまりおよび緑の描写力に優れ、良好な表示特性を示すことを確認した。
【0231】
(実施例12)
無アルカリガラス基板を、UV洗浄装置で洗浄後、洗浄剤を用いてブラシ洗浄し、更に超純水で超音波洗浄した。該基板を120℃3分熱処理して表面状態を安定化させた。
該基板を冷却し23℃に温調後、スリット状ノズルを有すガラス基板用コーター(エフ・エー・エス・アジア社製、商品名:MH−1600)にて、下記表10に記載の組成よりなる緑色感光性樹脂組成物G12(固形分中の顔料濃度は29重量%)を塗布した。引き続きVCD(真空乾燥装置;東京応化工業(株)社製)で30秒間、溶媒の一部を乾燥して塗布層の流動性を無くした後、120℃3分間プリベークして、感光性樹脂層G12を得た。
超高圧水銀灯を有すプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)社製)で、基板を垂直に立てた状態で、露光量300mJ/cmで露光した。
次に、純水をシャワーノズルにて噴霧して、該感光性樹脂層K1の表面を均一に湿らせた後、KOH系現像液(KOH、ノニオン界面活性剤含有、商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)にて23℃80秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像しパターニング画像を得た。引き続き、超純水を、超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で噴射して残渣除去を行った。さらに引き続き、220℃で30分間熱処理して、ガラス基板上にグリーン(G)着色層G12を形成した試料を得た。
【0232】
該着色層G12を形成した試料の着色層の厚さ及びC光源における色度を表11に示す。色度は、顕微分光光度計(オリンパス光学社製;OSP100)を用い、ピンホール径5μmにて測定し、C光源の結果として計算した。
【表10】

<G顔料分散物2>
・C.I.P.G.36(商品名:商品名:Rionol Green 6YK、
東洋インキ製造(株)社製) 14部
・分散剤(前記化合物2) 1.4部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3万) 9.3部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 75.3部
<バインダー4>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレート
=71/12/17モル比のランダム共重合物、分子量3.8万) 40部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 60部
【0233】
(比較例3)
良溶媒として、ジメチルスルホキシド100mlに、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液3.3ml、顔料(PY139)6000mg、ポリビニルピロリドン6000mg、顔料分散剤Aを600mg添加した顔料溶液Jを調製した。尚、PY139は、BASF社製のPaliotol Yellow D1819(商品名)を用いた。
次いで、顔料溶液Aを顔料溶液Jに変更した以外は、Y顔料分散物Aと同様の方法でY顔料分散物Jを作製した。
Y顔料分散物Aの代わりにY顔料分散物Jを用いて、グリーン(G)着色層G12と同様の方法で、同様の色度(x、y=0.304、0.566)となるように、処方を変更してガラス基板上にグリーン(G)着色層G13を形成した試料を作製した。
着色層G13を形成した試料の着色層の厚さ及びC光源における色度を表11に示す。
【表11】

【0234】
表11に示したとおり、キノフタロン系顔料(C.I.P.Y.138)の着色層(G12)を形成した試料は、イソインドリン系顔料(C.I.P.Y.139)を用いたものに対し、目的の色度において高い透過率を示した。この結果より、キノフタロン系顔料(C.I.P.Y.138)を含有する本発明のカラーフィルタは目的のG画素色度と高透過率を両立する優れた特性を示すことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0235】
【図1】本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法に用いることができる好ましい顔料分散剤の分子構造の一部を模式的に示す概略説明図である。
【図2−1】本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法に用いられる製造装置の好ましい実施態様を概略的に示す断面図である。
【図2−2】図2−1の製造装置の一実施態様として混合室を一部断面により概略的に示す拡大部分断面図である。
【図2−3】図2−1の製造装置の別の実施態様として混合室を一部断面により概略的に示す拡大部分断面図である。
【図3】本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法に用いられる製造装置の別の好ましい実施態様を概略的に示す断面図である。
【図4】本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法に用いられる製造装置のさらに別の好ましい実施態様を概略的に示す断面図である。
【図5−1】本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法に用いられるディゾルバ−撹拌羽根の1例を概略的に示す正面図である。
【図5−2】図5−1に示したディゾルバ−撹拌羽根の図面代用写真である。
【図6】本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法に用いられる回転し得るタービン部とその周囲にわずかな間隙を置いて位置する固定化されたステータ部から構成されている撹拌部の1例を概略的に示す断面図である。
【図7】本発明のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法に用いられる限外ろ過装置の一構成例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0236】
1 主鎖と側鎖との結合部
2 側鎖
3 窒素原子
4 顔料粒子
5 エーテル基を有する側鎖
11 容器
11a 液槽(溶媒)、11b 液面
12 撹拌羽根
13 混合室
14 供給管、14a 供給管開口部
15 シャフト
16 モーター
17 ケーシング(混合室壁)
18 孔(円形孔)
19a,19b 撹拌羽根
21 容器(攪拌槽外壁)
21a 攪拌槽
22 撹拌羽根
23 排出管
24a、24b 供給管
25 シャフト
50 撹拌装置
32,33 供給口
36 排出口
40 シールプレート
41,42 撹拌羽根
46 外部磁石
48,49 モーター
61 円盤部
62 羽根
63 シャフト
74 回転し得るタービン部
75 固定化されたステータ部
81 分散物を収納する容器
82 循環用ポンプ
83 限外ろ過モジュール
84 補充純粋計測用流量計
85 透過水計測用流量計
86 逆方向洗浄用ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノフタロン系顔料を良溶媒に溶解させた顔料溶液と、前記良溶媒と相溶性でありかつ前記顔料に対しては貧溶媒となる溶媒とを混合して、キノフタロン系顔料をナノサイズの微粒子として生成させることを特徴とするキノフタロン系顔料微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記良溶媒および貧溶媒のいずれか一方に分散剤を含有させることを特徴とする請求項1に記載のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記良溶媒がアミド系溶媒もしくはスルホキシド系溶媒であり、且つ該良溶媒に分散剤を含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法。
【請求項4】
ナノサイズの微粒子の平均粒子径が50nm以下でかつ粒子径100nm以上の粒子の割合が1%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のキノフタロン系顔料微粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたナノサイズ微粒子のキノフタロン系顔料微粒子。
【請求項6】
キノフタロン系顔料がC.I.P.Y.138であることを特徴とする請求項5記載のキノフタロン系顔料微粒子。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の顔料微粒子と、結合剤と、有機溶剤とを含むことを特徴とする着色樹脂組成物。
【請求項8】
仮支持体上に、少なくとも、請求項7に記載の着色樹脂組成物を含有させた着色樹脂層を設けたことを特徴とする樹脂転写材料。
【請求項9】
請求項5又は6に記載の顔料微粒子を含有してなることを特徴とする液晶表示装置用カラーフィルタ。
【請求項10】
請求項9に記載の液晶表示装置用カラーフィルタを備えたことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−211115(P2007−211115A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31658(P2006−31658)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ナノテクノロジープログラム「ナノテク・先端部材実用化研究開発」/「有機顔料ナノ結晶の新規製造プロセスの研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】