説明

キャストコート紙の製造方法

【課題】本発明は、リウエットキャスト方式において、ピンホールがなく、高い白紙光沢を有し、印刷適性とその他後加工適性に優れたキャストコート紙を高効率で生産できる製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るキャストコート紙の製造方法は、リウエット法において、再湿潤液が、有効成分として、蟻酸とクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸から選ばれる少なくとも1種と脂肪酸誘導体である離型剤とを含み、(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸から選ばれる少なくとも1種/蟻酸)で求まる配合質量割合が、10/80〜30/80の範囲内であり、再湿潤液が離型剤を該再湿潤液中に0.05質量%以上0.10質量%以下で含有し、かつ、再湿潤液の有効成分濃度が0.5質量%以上2.0質量%以下であり、再湿潤後、ドラムでの加熱処理を100〜140℃で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャストコート紙の製造方法に関し、特に白紙光沢に優れ、印刷適性や後加工適性に優れ、併せて操業性にも優れたキャストコート紙の製造方法に関する。
【0002】
キャストコート紙は、その表面の高光沢性、高平滑性などによって印刷の再現性が極めて良好であり、精密な高級印刷用に適用され、美術印刷物、高級カタログ、包装箱などに使用されている。
【0003】
キャストコート紙は、原紙の表面に、顔料及び接着剤を主成分とする塗料のキャストコート層を設け、続いて該コート層を加熱された金属製の鏡面ドラムに圧着し、乾燥させることで製造されている。
【0004】
このキャストコート紙の製造法は、キャストコート層を得る光沢仕上げを行う処理方法によって、ウエット法(直接法)、ゲル化法(凝固法)、及びリウエット法(間接法)に大別される。すなわち、キャストコート層を、ウエット状態にあるうちに加熱された金属製の鏡面ドラムに圧着し、乾燥させて光沢仕上げするのがウエット法である。また、ウエット状態にあるキャストコート層を凝固浴中に通してゲル化状態にした後、加熱された金属製の鏡面ドラムに圧着し、乾燥させて光沢仕上げするのがゲル化法である。そして、ウエット状態にあるキャストコート層をいったん乾燥した後、湿潤液でキャストコート層を再湿潤し、可塑状態にしてから加熱された金属製の鏡面ドラムに圧着し、乾燥させて光沢仕上げするのがリウエット法である。このリウエット法によるキャストコート紙などが従来技術として知られている(例えば、特許文献1、2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6‐93596号公報
【特許文献2】特開平2‐293491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、再湿潤液として、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム等の金属種と硫酸、硝酸、酢酸など酸との水溶性金属塩と、ナトリウム、カリウム、カルシウム等の金属種とカルボキシル基を含む有機酸との有機酸塩とが共存する水溶液を用いることで、適度の白紙光沢と欠陥の無いキャスト面を形成させ、耐水ブロッキング性及び印刷適性に優れたキャストコート紙を製造する技術を提案している。この方法によれば、品質に優れたキャストコート紙が製造できるものの、キャストドラムの連続操業性に難点が残り、かつ、高速製造が困難であるため、生産効率の面で改善の余地が有る。特に、キャストコート紙の製造法において、リウエット法は高速処理できることが利点であるため、連続操業性や高速処理性に劣るとなると、この方法のメリットが生かされない上、生産の目的の一つである利益の追求が不十分なものとなる。そして、選択する薬品の種類によっては、重金属のイオン種をキャストコート層に導入することによって製品が品質劣化する懸念があり、かつ、製造工程においては作業環境の悪化や排水処理設備へのCOD負荷が掛かるようになることによって環境側面の観点からの問題がある。さらに、多価金属イオンは、その高分子への架橋作用によって、適正範囲内での添加量ではない場合、キャストコート層の可塑性が充分に得られず、光沢度の低い面質になる可能性もありえるが、特許文献1においては、明確な範囲量を規定していない。
【0007】
また、特許文献2では、再湿潤液として、分散剤及び離型剤を主成分として、蟻酸、酢酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、琥珀酸、リンゴ酸、安息香酸などから選ばれるカルボン酸の少なくとも一種類以上を含有させて、pHを2〜4に調整した溶液を使用することによって、白紙光沢、印刷光沢、及び表面強度が改善され、紙面の欠陥が無いキャストコート紙を製造できるとしている。この方法によれば、品質に優れたキャストコート紙が製造でき、かつ、ある程度の生産効率の改善が期待される。ただし、該実施例に示されている分散剤は、いずれも燐を含む物質であり、BOD負荷の大きなものである。また、親水性界面活性剤としての作用には優れるものの、分子量が大きいため、溶解性の点で最善の選択ではない。しかし、該再湿潤液で処理したキャストコート紙の紙面は、湿度を与えた場合、べたつくこともある。したがって、耐水性やラミネート加工といった後加工適性に関わる点において不利な点が多い。よって、特許文献2の再湿潤液の成分の組み合わせは、最善の組合せではない。さらに、特許文献2では、カルボン酸の濃度範囲が規定されておらず、単にその存在だけでは優れた特徴点を発現させることができない。例えば、少ない場合には、充分な効果が得られなかったり、その反対に、多い場合には、キャストドラムの汚れが酷くなったり、可塑性と凝固性との均衡が崩れ面質不良となったりと弊害も出てくる。そして、その薬品の性質上、キャストドラムの連続操業性を改善するのに、より多くの離型剤を系内に含有させる必要が出てくるため、経済的に不利益を被ることになる。また、離型剤の多くが石油化学製品又は生物由来の合成化学品であるため、その使用量の過多は、生産コストの上昇の他、環境中における炭素循環量の不均衡をもたらすことにもなる。したがって、経済性や品質の他に、環境面をも考慮に入れると、分散剤の選択が必ずしも適切ではなく、また、離型剤を含有させる利点はあるものの、その含有量の範囲を最適化しなければならない。
【0008】
塗料調製や各種処理液の調製において、人体に対し有害、又は危険な薬品の使用や取扱を極力避けるべきであるが、なるべく有害性の少ない薬品の選定が前提である。それ故に、自然環境で容易に分解し、分解後は有害な物質を排出することのない薬品であれば最善の選択といえる。そこで、食品用途で使用する材料や一般的な生物由来の薬品であれば、安心して使用できるので労働衛生、作業環境の点からも好ましい。したがって、薬品は、自然界には無いような極度に化学修飾がなされたものや重合度がかなり進んだ物質の選択は賢明ではない。また、ハンドリングが良好なものや、容易に水へ分散するなどの作業性が良好な薬品の選定も製造工程において非常に重要な項目といえる。塗料調製や各種処理液の調製で、腐食性の高いアルカリ薬品や高温を必要とするものなどは、労働安全や作業環境上、好ましくない。また、比較的緩慢な条件下でも、分散や溶解するのに所要動力を過度に要したり、反応を伴う工程で時間がかなり掛かったりするなどの作業が存在した場合には、エネルギーが多く掛かるばかりか、エネルギー損失も計上せざるを得なくなり、経済性を損なうことになる。さらに、品質本位で、特異な特性を有する薬品の選定は選択肢の一つではあるものの、その反応性が高く、取扱が困難なものがある。また、他の薬品との親和性が無い場合、調製時にトラブルを起こす確率が高くなり、多くの損失を被るケースも出てくる。作業効率や有害性のほかに、トラブルフリーな安全性の高い薬品を使うことも重要である。
【0009】
キャストコート紙のこれらの製造方法は、いずれもキャストコート層が湿潤又は可塑状態にあるうちに鏡面ドラムに圧着、乾燥するものである。このため、キャストコート層の水分は、原紙層を通して鏡面ドラム方向とは逆に向かって蒸発する。蒸発速度がある限度を超えて高くなると、得られるキャストコート層表面にピンホールが発生し、印刷やラミネート加工等に支障をきたすようになる。このような現象は、蒸発水分量が比較的多いウエット法において顕著であり、加工速度がなかなか上げられないのが現状である。こうした理由から、キャストコート紙の製造を高速化するにはリウエット法が適している。
【0010】
しかしながら、一方、リウエット法は、他のウエット法及びゲル化法に比較して、キャストコート層の可塑化が低い欠点がある。そのためにリウエット法では、キャストコート層用の水性顔料塗料配合、再湿潤液の選定、加工速度、鏡面ドラムの表面温度、各種プレス圧、乾燥速度の選定が重要である。これらの選定が適切でない場合には、キャストコート層のピンホール、密着不良による光沢不足、光沢むらなどのキャストコート面の不良が発生しやすくなる。
【0011】
これに対し、ゲル化法では、コート層を凝固液処理によってゲル化するもので、比較的高い温度のキャストドラム処理が可能である。しかし、一般に乾燥を行わないので、キャストドラムにおける乾燥負荷がリウエット法よりも高く、又は、凝固処理がキャストドラム処理の直前で行われるため、十分な凝固作用が得られず、凝固剤による光沢低下の懸念もある。凝固剤を水性顔料塗料中に添加する方法もあるが、これによると、塗料の流動性が安定しづらく、塗工トラブルが発生する可能性が高くなる。
【0012】
キャストコート層のピンホールの生成原因は、種々考えられるが、急激な水分の蒸発によってキャストコート層が破壊され、ピンホールやブリスターが起きると考えられている。蟻酸や蟻酸カルシウムによってキャストコート層を凝固処理すると、高温のキャストドラムに接触させてもキャストコート層の破壊が起きにくくなり、従って、製造の高速化が図れることも知られている。ただし、単にゲル化法で対応すると、光沢度がなかなか上がりづらいなどの問題が残ってしまう。
【0013】
キャストコート層表面の光沢不良の原因は、キャストコート用塗料を乾燥後、再湿潤からドラム処理に至るまでの間に十分な可塑化やゲル化が達成されないと、ドラムとの密着不良や乾燥不良による鏡面の再現性不良となることがある。また、ゲル化が強過ぎても、塗工層の多孔質化が過度となり低い光沢となってしまうこともある。
【0014】
キャスト面のピンホールや光沢不良の箇所は、印刷適性を損なったり、エンドレスプレス加工におけるプレス光沢不良、ラミネート加工での概観不良などの原因となったりしまうこともある。
【0015】
さらに、再湿潤液の離型性が劣る場合、生産中にキャストドラムの汚れが発生し、キャストコート紙の品質を落としてしまうので、これを改善するには再湿潤液に潤滑性を有する薬品を適正量添加する必要がある。そして、ドラム上の温度も適正な条件を選択しないと、光沢面質を損なったり、離型性不良となったりする場合が出てくる。
【0016】
そこで、本発明は、リウエットキャスト方式において、このような従来技術が有していた問題を解決しようとするものであり、特にピンホールがなく、高い白紙光沢を有し、印刷適性とその他後加工適性に優れたキャストコート紙を高効率で生産できる製造方法を実現することを目的とするものである。つまり、最適条件の範囲内とすることで、品質を損なうことなく、加工速度を上げられるような状態で製造を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記の如き現状によって、本発明者らはキャストコート紙の製造に関し、特にリウエット法において、操業性は勿論、品質面においても優れたキャストコート紙を効率良く得るべく鋭意検討を行った。その結果、光沢処理で使用する再湿潤液に、蟻酸とクエン酸骨格物質とを必ず含ませ、かつ、適正量の離型剤を含有させることで、品質面と操業性の両方に優れた製造が達成され、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明に係るキャストコート紙の製造方法は、原紙の上に、顔料と接着剤とを主成分とするキャストコート用塗料をコートし、乾燥後、再湿潤液によって塗面の処理を行い、鏡面状に研磨された加熱ドラムに圧着して片面キャスト紙を得るリウエット法によるキャストコート紙の製造方法において、前記再湿潤液が、有効成分として、蟻酸とクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸から選ばれる少なくとも1種と脂肪酸誘導体である離型剤とを含み、(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸から選ばれる少なくとも1種/蟻酸)で求まる配合質量割合が、10/80〜30/80の範囲内であり、前記再湿潤液が前記離型剤を該再湿潤液中に0.05質量%以上0.10質量%以下で含有し、かつ、前記再湿潤液の有効成分濃度が0.5質量%以上2.0質量%以下であり、再湿潤後、前記ドラムでの加熱処理を100〜140℃で行うことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るキャストコート紙の製造方法では、前記接着剤として、カゼインを使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特にピンホールがなく、高い白紙光沢を有し、印刷適性とその他後加工適性に優れたキャストコート紙を高効率で生産できる。そして、欠陥の無い良好な光沢面が得られることから、エンドレスプレス加工、ラミネート加工などにも優れるキャストコート紙の製造を可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0021】
キャスト原紙は、単層抄き、多層抄きのどちらを選んでも構わず、その抄紙においては、円網抄紙機、長網抄紙機、短網のコンビネーション抄紙機等公知のものが使用でき、選択は自由に行うことができる。
【0022】
このキャスト原紙の上に、キャストコート層を設けることになるが、調製される水性顔料塗料は、一般的なキャストコーティングに供されているものでよい。したがって、顔料としては、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛などが用いられる。
【0023】
また、接着剤として、スチレン‐ブタジエンラテックス、メチルメタアクリレート‐ブタジエンラテックス等の合成樹脂ラテックス、カゼイン等の水溶性接着剤などが用いられる。これらの接着剤は、顔料100質量部に対して合計15〜30質量部の範囲で配合される。より好ましくは15〜25質量部、更に好ましくは、15〜20質量部である。15質量部未満の場合は、塗工層表面強度の低下による印刷強度で劣る。30質量部を超えると、印刷時のインク乾燥性やインクセットの面で劣る。
【0024】
塗工層は、固形分濃度40〜70質量%の水性顔料塗料をコートして設けてなるが、水性顔料塗料の調製には、添加剤として、離型剤、消泡剤、着色剤、粘性改良剤、耐水化剤、防腐剤などを必要に応じて配合することができる。固形分濃度は、より好ましくは40〜60質量%、更に好ましくは、40〜50質量%である。
【0025】
水性顔料塗料は、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ロッドコーター等でコートするが、塗工量としては、乾燥固形質量で5〜30g/mになるようにコートされ、キャストコート層は設けられる。より好ましくも10〜20g/m、更に好ましくは、10〜15g/mである。なお、それぞれのコーターには、適正な塗料粘度が存在するので、操業性や塗工設備にあった固形分濃度の設定と粘度の調整が必要となる。塗工量が5g/m未満の場合は、印刷適性が劣ってくる他、接着工程における接着不良といった問題が生じてくる、反対に、塗工量が30g/mを超えると、断裁工程での紙粉トラブルとなったり、印刷工程での耐刷力の不良、印刷面の欠陥を誘発してしまったりすることもある。また、高価なコート層を過剰に設けることは、不経済を招く。
【0026】
次に、塗設されたキャストコート層は、湿潤状態のうち、ある所望の水分を維持するような条件のもと、温風ヒーター、赤外線ヒーターなどによって半乾燥状態にした後、再湿潤液にて塗工層を処理させる。
【0027】
本発明において使用される再湿潤液は、(1)蟻酸と(2)蟻酸とクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸から選ばれる少なくとも1種と(3)脂肪酸誘導体である離型剤とが所定量含有され、蟻酸とクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸から選ばれる少なくとも1種との比率に適正な範囲がある。(1)蟻酸と(2)蟻酸とクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸から選ばれる少なくとも1種と(3)脂肪酸誘導体である離型剤とは、再湿潤液の有効成分である。
【0028】
ここで、蟻酸の作用であるが、キャストコート用塗料中の接着成分をゲル化させる。予備実験によれば、任意の濃度の蟻酸をキャストコート用塗料に投入すると、該塗料中で溶解しているカゼインやラテックスを凝集させ、該塗料の流動性が失われた。特に蟻酸はカゼインを凝固させやすく、この組み合わせは好適である。カゼインは、天然物であり、高次の構造を有しているため、凝固しやすいと推測される。
【0029】
次に、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸の作用であるが、キャストコート用塗料中の接着成分と緩慢ながらも影響を及ぼす。ラテックスとの相互作用はあまり顕著ではなかったが、カゼインには、若干ながら、軟化させるような現象が見受けられた。何故、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸から選ばれる少なくとも1種と蟻酸との組合せによって、所望するキャスト塗工紙の製造に適切な再湿潤液となるのかは定かではないが、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸から選ばれる少なくとも1種と蟻酸とを併用することで所望の効果が得られることは解っている。
【0030】
これらのカルボキシル基を有する有機酸又は有機酸塩の配合量、すなわち、蟻酸とクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸から選ばれる少なくとも1種との合計の配合量は、キャストコート層を再湿潤化するために、再湿潤液における固形分濃度が0.40〜1.95質量%となるように調整する。前記再湿潤液における固形分濃度が、0.40質量%未満では光沢不良となる場合があり、1.95質量%を超えるとキャストコート層の表面強度が劣る場合がある。また、(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸から選ばれる少なくとも1種/蟻酸)で求まる配合質量割合を10/80〜30/80の範囲内とする。より好ましくは15/80〜25/80、更に好ましくは、20/80〜25/80である。この均衡が崩れると、光沢不良、更に印刷適性や各種後加工適性の不良を生じるようになる。例えば、(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸から選ばれる少なくとも1種/蟻酸)で求まる配合質量割合が10/80未満であると、キャストコート用塗料の可塑化が不十分となり、キャスト面質の不良が由来する光沢不良、平滑不足が由来する印刷品質の低下となる場合があり、30/80を超えても、キャストコート用塗料の凝固が過多となり、同様に、キャスト面質の不良が由来する光沢不良、平滑不足が由来する印刷品質の低下となる場合がある。
【0031】
また、再湿潤液に添加する離型剤は、ポリエチレンワックス、各種脂肪族系金属塩、オレイン酸亜アンモニウム、ロート油及びその誘導体の使用が可能である。これら離型剤のうち、分子量が大きくなればなるほど、脂溶性が高くなる傾向にあり、それだけ離型剤としての効果が高くはなるものの、その傾向が高過ぎると、インク乾燥性やインクセット性が劣るようになってくる。それに派生してインク受理性も劣るようになってくる。反対に、水溶性の高いものは、再湿潤液の調製は容易ではあるものの、その傾向が高過ぎると、離型性の効果が薄くなってくる。これらの効果の均衡を鑑み、適切な薬品の選択を行う必要がある。本発明では、離型剤は脂肪酸誘導体が特に好ましい。脂肪酸誘導体としては、水溶解性に優れる市販品各種の適用が可能である。離型剤を再湿潤液中に0.05質量%以上0.10質量%以下で含有することが好ましい。より好ましくは0.05〜0.08質量%、更に好ましくは、0.06〜0.07質量%である。離型剤が0.05質量%未満の場合は、キャストドラムでの紙離れが悪く、キャスト操業性で劣る。また、0.10質量%を超えると、キャスト操業性で良好も、キャスト塗工層の強度低下やキャストドラム面への密着性が悪くなり、光沢面質で劣るようになる。
【0032】
再湿潤液の有効成分濃度を0.5質量%以上2.0質量%以下とする。ここで、再湿潤液の有効成分とは、蟻酸とクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸から選ばれる少なくとも1種と脂肪酸誘導体である離型剤とである。再湿潤液の有効成分濃度が0.5質量%未満であるとキャストコート用塗料の可塑化、ゲル化が適切に行われず、キャスト面質不良となる問題がある。また再湿潤液の有効成分濃度が2.0質量%を超えるとキャストドラムの離型性不良となる問題がある。
【0033】
キャストコート層の再湿潤後、加熱された鏡面を有する金属製のドラムに圧着させるが、この温度が低過ぎても、高過ぎてもいけない。温度が低い場合は、乾燥不良によるキャスト光沢の発現性に乏しく、かつ、加工された製品は、放湿によるカール発生で印刷や各種後加工の操業トラブルを招きやすくなる。反対に、温度が高い場合は、過乾燥となるため、再湿潤液の突沸による光沢面の荒れや、ピンホール、ブリスター等の品質不良になりやすく、かつ、加工された製品は、吸湿によるカール発生で印刷や各種後加工の操業トラブルを招きやすくなる。さらに、ギロ断裁や打ち抜き加工時に、紙のしなやかさが失われてしまうことによって、紙粉が多く発生するようになる。加工時の紙へのダメージも顕著になってくる。したがって、ドラムの表面温度にも適正範囲があり、100〜140℃が好ましい条件である。より好ましくは110〜130℃、更に好ましくは、110〜120℃である。この条件によって、キャストコート紙が操業性に優れ、高い効率で生産できる。
【実施例】
【0034】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0035】
(実施例1)
キャストコート紙用原紙を短網抄紙機によって約400g/mの坪量になるよう多層構造(全7層)で抄紙した。1層目は白層、2層目は白下層とした。3層目以降は古紙パルプを主構成とした。白層側の表面を、キャストコート層を設ける面とした。次に、前記コート用原紙の上にキャストコート層を設けるが、キャストコート用塗料を乾燥固形質量で15g/mとなるようにエアーナイフコーターでオフコートした。該塗料の調製方法と配合比は、次に示すとおりである。クレー70質量部、炭酸カルシウム30質量部、分散剤(商品名:ディスパーサントL400、サンノプコ社製)0.3質量部を分散機にて水中に分散し、顔料スラリーを調製した。その後、カゼイン8質量部、スチレン‐ブタジエンラテックス20質量部を加え、固形分濃度約45質量%の塗料を調製した。コート後は、エアードライヤーにて、所定水分6.5〜7.5質量%を維持するような条件で、半乾燥させた。
【0036】
半乾燥されたコート層は再湿潤液で処理されるが、その再湿潤液の調製方法と配合比は次に示すとおりである。クエン酸ナトリウム(商品名:クエン酸ナトリウム、和光純薬工業製)0.15質量%、次に蟻酸0.80質量%、最後に脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)を分散機にて水中に分散、溶解させ、再湿潤液を調製した。なお、クエン酸ナトリウムと蟻酸と脂肪酸誘導体との合計の固形分濃度は、1.00質量%である。
【0037】
キャストコート層を再湿潤液で処理した後に、約120℃に加熱させられたキャストドラムに、所定条件で圧着後、ドラム表面から剥離させ、リワインドし、本発明によるキャストコート紙を得た。再湿潤液の配合とキャストドラム温度を表1にまとめた。
【0038】
(実施例2)
再湿潤液をクエン酸カリウム0.15質量%(商品名:クエン酸カリウム、和光純薬工業製)、蟻酸0.80質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0039】
(実施例3)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.075質量%、クエン酸カリウム0.075質量%、蟻酸0.80質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0040】
(実施例4)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.15質量%、蟻酸0.40質量%、クエン酸0.40質量%(商品名:クエン酸、和光純薬工業製)、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0041】
(実施例5)
再湿潤液をクエン酸カリウム0.15質量%、蟻酸0.40質量%、クエン酸0.40質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0042】
(実施例6)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.075質量%、クエン酸カリウム0.075質量%、蟻酸0.40質量%、クエン酸0.40質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0043】
(実施例7)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.10質量%、蟻酸0.80質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0044】
(実施例8)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.30質量%、蟻酸0.80質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0045】
(実施例9)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.15質量%、蟻酸1.10質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0046】
(実施例10)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.15質量%、蟻酸0.50質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0047】
(実施例11)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.15質量%、蟻酸0.80質量%、脂肪酸誘導体0.10質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0048】
(実施例12)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.30質量%、蟻酸1.60質量%、脂肪酸誘導体0.10質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0049】
(実施例13)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.05質量%、蟻酸0.40質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0050】
(実施例14)
再湿潤液をクエン酸0.30質量%、蟻酸1.60質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0051】
(実施例15)
再湿潤液をクエン酸0.05質量%、蟻酸0.40質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0052】
(実施例16)
再湿潤液の組成は、実施例14と同様であるが、調製順を次に示すようにした。クエン酸0.30質量%、次に蟻酸1.6質量%、最後に脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)を加えた後に水を添加した。これ以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0053】
(実施例17)
再湿潤液の組成は、実施例15と同様であるが、調製順は次に示すようにした。クエン酸0.05質量%、次に蟻酸0.40質量%、最後に脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)を加えた後に水を添加した。これ以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0054】
(実施例18)
キャストドラム温度を100℃にした以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0055】
(実施例19)
キャストドラム温度を140℃にした以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0056】
(比較例1)
再湿潤液を蟻酸0.50質量%とした以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0057】
(比較例2)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.50質量%とした以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0058】
(比較例3)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.15質量%、クエン酸0.80質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0059】
(比較例4)
再湿潤液をクエン酸カリウム0.15質量%、クエン酸0.80質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0060】
(比較例5)
再湿潤液を酢酸1.00質量%とした以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0061】
(比較例6)
再湿潤液をリンゴ酸ナトリウム1.00質量%とした以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0062】
(比較例7)
再湿潤液をヘキサメタリン酸ナトリウム1.00質量%とした以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0063】
(比較例8)
再湿潤液を蟻酸1.00質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0064】
(比較例9)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム1.00質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0065】
(比較例10)
再湿潤液をヘキサメタリン酸ナトリウム1.00質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0066】
(比較例11)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.15質量%、蟻酸0.80質量%の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0067】
(比較例12)
再湿潤液をヘキサメタリン酸ナトリウム0.15質量%、蟻酸0.80質量%の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0068】
(比較例13)
再湿潤液を塩化ナトリウム0.15質量%、蟻酸0.80質量%の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0069】
(比較例14)
再湿潤液をヘキサメタリン酸ナトリウム0.15質量%、蟻酸0.80質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0070】
(比較例15)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.05質量%、蟻酸0.30質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0071】
(比較例16)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.30質量%、蟻酸1.80質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0072】
(比較例17)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.15質量%、蟻酸0.80質量%、脂肪酸誘導体0.04質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0073】
(比較例18)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.15質量%、蟻酸0.80質量%、脂肪酸誘導体0.11質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0074】
(比較例19)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.09質量%、蟻酸0.80質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0075】
(比較例20)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.31質量%、蟻酸0.80質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0076】
(比較例21)
再湿潤液をクエン酸ナトリウム0.15質量%、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.80質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0077】
(比較例22)
再湿潤液をヘキサメタリン酸ナトリウム0.15質量%、クエン酸ナトリウム0.80質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0078】
(比較例23)
再湿潤液を蟻酸0.15質量%、酢酸0.80質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にして、キャストコート紙を得た。
【0079】
(比較例24)
再湿潤液を酢酸0.15質量%、蟻酸0.80質量%、脂肪酸誘導体0.05質量%(商品名:R−053D、日新化学研究所製)の配合比として調製した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0080】
(比較例25)
キャストドラム温度を95℃にした以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0081】
(比較例26)
キャストドラム温度を145℃にした以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を得た。
【0082】
【表1】

【0083】
前記の方法で得たキャストコート紙の白紙光沢感、ピンホール、離型性(連続操業性)、印刷適性、エンドレスプレス加工品質、ラミネート加工適性、耐水ブロッキング性について、次に示す評価方法及び判断基準に基づいて評価した。さらに、再湿潤液の安定性も評価した。これらの結果を表2に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
<白紙光沢感>
キャストコート紙の表面白紙部分の光沢感の程度を目視評価した。
○:良好で、実用上可、△:やや不良で、実用上不可、×:不良で、実用上不可。
【0086】
<ピンホール>
キャストコート紙表面のピンホールを目視で観察した。
○:良好で、実用上可、△:やや不良で、実用上不可、×:不良で、実用上不可。
【0087】
<離型性>
連続操業(実機)おいて、コート層の一部がキャストドラムに付着するドラムピックの程度によって評価した。
◎:ドラムピックが発生せず、12時間以上の連続生産が可能で、実用上可。
○:ドラムピックが若干発生し、6時間以上の連続生産が可能で、実用上可。
△:ドラムピックが比較的多く発生し、3時間以上の連続生産が可能であるが、実用上不可。
×:ドラムピックが多発。30分も生産が困難な状態で、実用上不可。
【0088】
<印刷適性>
実機印刷のハーフトーン部での階調性を目視評価した。
○:良好で、実用上可、△:やや不良で、実用上不可、×:不良で、実用上不可。
【0089】
<エンドレスプレス加工品質>
エンドレスプレス加工品(実機)の表面の光沢感を目視評価した。
○:良好で、実用上可、△:やや不良で、実用上不可、×:不良で、実用上不可。
【0090】
<ラミネート加工適性>
ラミネート加工された加工表面(実機)の状態の目視と、ラミネートの接着強度を評価した。
○:ラミネートの接着強度が高く、ラミネート表面の凹凸が無い状態で、実用上可。
△:ラミネートの接着強度が低いか、ラミネート表面の凹凸が確認できる状態で、実用上不可。
×:ラミネートの接着強度が低いか、ラミネート表面の凹凸が確認できる状態で、かつ、その状態が顕著な場合。又は、接着強度、表面の欠陥がどちらも劣る場合。いずれの場合も、実用上不可。
【0091】
<耐水ブロッキング性>
サンプルの上に所定量の水を滴下し、一定荷重で抑えた後のコート紙表面の貼り付き具合を評価した。
○:ブロッキングがなく、良好な場合で、実用上可。
△:ブロッキングがややあり、比較的劣る場合で、実用上不可。
×:ブロッキングがあり、明らかに劣る場合で、実用上不可。
【0092】
<再湿潤液安定性>
調製後の液の安定度を、調整直後の色や経時での浮遊物、又は沈殿物の発生状態で評価した。
○:白濁せず、経時変化も無しの状態で、実用上可。
△:若干白濁するか、経時変化を起こす状態で、実用上不可。
×:白濁し、調製直後に沈殿物や浮遊物を生じる状態で、実用上不可。
【0093】
表2で示された結果によって明らかなように、本発明に係る実施例で得られたキャストコート紙は、良好な印刷適性を有するとともに、ピンホールが無く高光沢で、各種の後加工適性に優れていた。なおかつ、再湿潤液が安定しており、離型性が良好なため、操業性にも優れ、高い効率で生産が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のキャストコート紙の製造方法は、操業性にも優れ、特に白紙光沢に優れ、印刷適性や後加工適性に優れたキャストコート紙を提供できる。このキャストコート紙は、その表面の高光沢性、高平滑性などによって印刷の再現性が極めて良好であり、精密な高級印刷用に適用され、美術印刷物、高級カタログ、包装箱などに使用できる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙の上に、顔料と接着剤とを主成分とするキャストコート用塗料をコートし、乾燥後、再湿潤液によって塗面の処理を行い、鏡面状に研磨された加熱ドラムに圧着して片面キャスト紙を得るリウエット法によるキャストコート紙の製造方法において、
前記再湿潤液が、有効成分として、蟻酸とクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸から選ばれる少なくとも1種と脂肪酸誘導体である離型剤とを含み、
(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸から選ばれる少なくとも1種/蟻酸)で求まる配合質量割合が、10/80〜30/80の範囲内であり、
前記再湿潤液が前記離型剤を該再湿潤液中に0.05質量%以上0.10質量%以下で含有し、かつ、
前記再湿潤液の有効成分濃度が0.5質量%以上2.0質量%以下であり、
再湿潤後、前記ドラムでの加熱処理を100〜140℃で行うことを特徴とするキャストコート紙の製造方法。
【請求項2】
前記接着剤として、カゼインを使用することを特徴とする請求項1に記載のキャストコート紙の製造方法。




【公開番号】特開2011−26732(P2011−26732A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173026(P2009−173026)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000241810)北越紀州製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】