説明

キャパシタ型蓄電池、キャパシタ型蓄電池用基板、及びキャパシタ型蓄電池用蓄電層

【課題】静電容量が高く、長時間放置後も充放電効率の高い薄膜キャパシタ型蓄電池を提供する。
【解決手段】本発明のキャパシタ型蓄電池は、導電膜又は半導体膜からなる第1基材と、複数個の導電粒子又は半導体粒子を含む第1粒子層と、絶縁膜と、をこの順に積層する第1積層型基材を備える。そして、前記絶縁膜の上に、互いに平行して形成された第1導電路及び第2導電路を有する。前記導電粒子若しくは半導体粒子又はこれら粒子が複数個集合した粒子集合体の最大幅は10μm以下であり、粒子又は粒子集合体の間には隙間又は絶縁物が存在し、粒子間又は粒子集合体間の距離が30nm以上3000nm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタ型蓄電池、キャパシタ型蓄電池用基板、及びキャパシタ型蓄電池用蓄電層に関し、特に、静電容量が高く、長時間放置後も充放電効率の高い薄膜キャパシタ型蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年地球温暖化防止のため、発電したエネルギーを効率的に蓄電保存する必要に迫られている。このような蓄電システムとしては、携帯機器用蓄電池として理論エネルギー密度に達するまでに著しく進歩したニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等の応用が試みられている。これらの蓄電システムはリチウムなどの希少金属を用いている点や、エネルギー密度と出力密度とを高いレベルで併せ持っていない点などの短所があり、応用上の障害となっている。
【0003】
一方、前記二次電池の耐電圧単位体積当たりのエネルギー容量をはるかに凌ぐキャパシタ(以下「薄膜キャパシタ型蓄電池」と称する)が発明されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の薄膜キャパシタ型蓄電池は、第1導電膜又は第1半導体膜及び第1絶縁膜を積層する第1積層膜と、第1絶縁膜上で第1積層膜の長尺方向に延在する第1導電路と、第1絶縁膜上で第1積層膜の長尺方向に延在し第1導電路に平行に設けられた第2導電路と、第1導電路及び第2導電路の外面上にそれぞれ設けられた第2絶縁膜と、を備えている。
【0004】
この薄膜キャパシタ型蓄電池においては、以下の原理で蓄電が行われている。
第1導電路及び第2導電路端に所定の電位差を与えると、絶縁層を介して配置された導電膜や半導体膜と、導電路間に広がった電磁界すなわちフォトンとの間で、フォトン−フォノンのエネルギー交換が行われる。このため、第1導電路及び第2導電路上に流れる電磁エネルギー速度が遅くなり、電気長が長くなるのと等価の働き、すなわち蓄電池の容量が大きくなり電荷を受容している。そのエネルギーは導電膜中のバンド内で励起される。
【0005】
この原理により、単位体積あたりの容量が大きい電送線型キャパシタ型の蓄電池の開発が期待されており、蓄電池単体の耐電圧として100V以上が得られ、電圧あるいは電流が印加されている状態では、100V以上の電位まで大きな容量での蓄電が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第09/116668号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記薄膜キャパシタ型蓄電池を高い充放電効率で使用するためには、内部抵抗の低下、つまり十分な電子数と電子の移動しやすさが必要であり、蓄電層として導電膜や半導体膜が用いられている。しかしこの形態では、エネルギー受理したフォノンの一部が無輻射遷移、いわゆる熱緩和により失活することが明らかとなった。つまり、電荷保持性能が不十分であり、電圧あるいは電流の印加を切ると、自然放電が起こり急激な電圧降下が生じて、電気容量が低下する。
そこで、本発明では、静電容量が高く、長時間放置後も充放電効率の高い薄膜キャパシタ型蓄電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を鑑み、鋭意研究を行った結果、基材と絶縁膜の間に、複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子からなる第1粒子層を設け、この第1粒子層に含まれる粒子又は粒子集合体の最大幅を特定の範囲内とし、且つこの粒子や粒子が集合した粒子集合体の間には隙間又は絶縁物を介在させ、その粒子間距離を特定の範囲内とすることで、静電容量が高く、長時間放置後も充放電効率の高い薄膜キャパシタ型蓄電池が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
本発明の第一の形態のキャパシタ型蓄電池は、第1導電膜又は第1半導体膜からなる第1基材と前記第1基材の少なくとも一方の面に複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子を含む第1粒子層とを有する第1積層型基材と、前記第1積層型基材の一方の面に第1絶縁膜と、前記第1積層型基材の他方の面に第2絶縁膜と、前記第1絶縁膜上で前記第1積層型基材の長尺方向に延在する第1導電路と、前記第2絶縁膜上で前記第1積層型基材の長尺方向に延在し、前記第1導電路に平行に設けられた第2導電路と、を備え、前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又はこれら粒子が複数個集合した粒子集合体の最大幅が10μm以下であり、前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又は前記粒子集合体の間に隙間又は絶縁物が存在し、前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又は前記粒子集合体の間の距離が30nm以上3000nm以下である。
【0010】
また、本発明の第二の形態のキャパシタ型蓄電池は、第1導電膜又は第1半導体膜からなる第1基材、複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子を含む第1粒子層、及び第1絶縁膜、をこの順に積層した第1積層膜と、前記第1積層膜の第1絶縁膜上で該第1積層膜の長尺方向に延在する第1導電路と、前記第1積層膜の第1絶縁膜上で該第1積層膜の長尺方向に延在し、前記第1導電路に平行に設けられた第2導電路と、を備え、前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又はこれら粒子が複数個集合した粒子集合体の最大幅が10μm以下であり、前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又は前記粒子集合体の間に隙間又は絶縁物が存在し、前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又は前記粒子集合体の間の距離が30nm以上3000nm以下である。
【0011】
本発明の第二の形態のキャパシタ型蓄電池では、更に、前記第1導電路及び前記第2導電路の外面上に連続した第2絶縁膜を設け、前記第2絶縁膜の外面上に、複数個の第2導電粒子又は第2半導体粒子を含む第2粒子層と、第2導電膜又は第2半導体膜からなる第2基材と、をこの順に備えてもよく、この場合には、前記第2導電粒子若しくは前記第2半導体粒子又はこれら粒子が複数個集合した粒子集合体の最大幅が10μm以下であり、前記第2導電粒子若しくは前記第2半導体粒子又は前記粒子集合体の間に隙間又は絶縁物が存在し、前記第2導電粒子若しくは前記第2半導体粒子又は前記粒子集合体の間の距離が30nm以上3000nm以下であることが好ましい。
【0012】
前記粒子集合体は、異なる大きさの粒子を含むことが好ましく、具体的には、最大幅が100nm〜5000nmの粒子に最大幅が10nm〜300nmの粒子が付着している粒子集合体であることが好ましい。
【0013】
前記第1粒子層に含まれる前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又は前記粒子集合体の最大幅は、100nm未満であることが好ましい。
【0014】
前記第1基材と前記第1粒子層を構成する粒子とは、異なる材質であることが好適である。また、前記第2基材と前記第2粒子層を構成する粒子とが、異なる材質であることが好適である。
【0015】
前記第1基材又は前記第2基材の表面粗さRz(μm)は、1≦Rz≦10であることが好ましい。
【0016】
前記第1導電膜、前記第1導電粒子、前記第2導電膜、及び前記第2導電粒子が、各々独立に、Fe、Al、Co、Cr、Ni、Ag、Mg、Cu、Sn、Au、Pt、Pd、In、Ti、Ta及びCからなる群より選択される少なくとも一つの元素、前記群より選択される少なくとも二種の元素で構成される合金若しくは共析物、又は前記群より選択される少なくとも一つの元素を含み更に周期律表の3族から14族からなる群より選択される少なくとも一つの元素を含んで構成される合金若しくは共析物を含有することが好ましい。
【0017】
前記第1半導体膜、前記第1半導体粒子、前記第2半導体膜、及び前記第2半導体粒子が、各々独立に、ニッケルナイトライド、アナターゼ構造のチタン酸化物、酸化錫混入の酸化インジウム、酸化錫、ジルコニウム酸化物、ガリウムナイトライド、アルミニウムナイトライド、シリコン及びカーボンからなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。
更に、これら化合物にn型又はp型の遷移金属、希土類金属又は非磁性金属をドープすることが、常温で不純物準位から50%以上の励起電子を発生させる観点から好適である。
【0018】
なお、前記第二の形態のキャパシタ型蓄電池において、前記第1絶縁膜の同一面上には、複数列の前記第1導電路及び前記第2導電路を備える態様も好適である。また、前記複数列の第1導電路に接続する第1端子と、前記複数列の第2導電路に接続する第2端子と、を備え、前記第1端子及び前記第2端子は、前記第1導電路及び前記第2導電路から離れるに従って幅が狭くなる部分を有しており、この部分において、前記第1導電路と同一方向に延伸する2辺は、互いになす角度が30°以下であることが好ましい。
【0019】
また、第1導電膜又は第1半導体膜からなる第1基材の少なくとも一方の面上に、複数個の導電性又は半導性の第1粒子が存在し、前記第1粒子又は第1粒子が複数個集合した第1粒子集合体の最大幅が10μm以下であり、前記第1粒子又は前記第1粒子集合体の間の距離が30nm以上3000nm以下であるものは、キャパシタ型蓄電池用基板として有益である。
【0020】
更に、このようなキャパシタ型蓄電池用基板の少なくとも一方の面上に絶縁膜を有し、前記第1粒子又は前記粒子集合体の間に隙間又は絶縁物が存在するものは、キャパシタ型蓄電池用蓄電層として有益である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、静電容量が高く、長時間放置後も充放電効率の高いキャパシタ型蓄電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明における第1の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池の一例を示す短尺方向(幅方向)での断面図である。
【図2】本発明における第2の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池の一例を示す短尺方向(幅方向)での断面図である。
【図3】本発明における第3の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池の一例を示す短尺方向(幅方向)での断面図である。
【図4】本発明における第4の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池の一例を示す短尺方向(幅方向)での断面図である。
【図5】実施例1〜実施例12、比較例1〜実施例8における電気容量と保持時間の相関図である。
【図6】実施例4、6及び7、並びに比較例3及び6における粒子層の最大粒子幅と10日後の電気容量の相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第一の形態のキャパシタ型蓄電池は、第1導電膜又は第1半導体膜からなる第1基材、及び前記第1基材の少なくとも一方の面に複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子を含む第1粒子層を有する第1積層型基材と、前記第1積層型基材の一方の面に第1絶縁膜と、前記第1積層型基材の他方の面に第2絶縁膜と、前記第1絶縁膜上で前記第1積層型基材の長尺方向に延在する第1導電路と、前記第2絶縁膜上で前記第1積層型基材の長尺方向に延在し、前記第1導電路に平行に設けられた第2導電路と、を備え、前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又はこれら粒子が複数個集合した粒子集合体の最大幅が10μm以下であり、前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又は前記粒子集合体の間に隙間又は絶縁物が存在し、前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又は前記粒子集合体の間の距離が30nm以上3000nm以下である。
【0024】
本発明の第二の形態のキャパシタ型蓄電池は、第1導電膜又は第1半導体膜からなる第1基材、複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子を含む第1粒子層、及び第1絶縁膜、をこの順に積層した第1積層膜と、前記第1積層膜の第1絶縁膜上で該第1積層膜の長尺方向に延在する第1導電路と、前記第1積層膜の第1絶縁膜上で該第1積層膜の長尺方向に延在し、前記第1導電路に平行に設けられた第2導電路を備え、前記第1導電粒子若しくは第1半導体粒子又はこれら粒子が複数個集合した粒子集合体の最大幅が10μm以下であり、前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又は前記粒子集合体の間に隙間又は絶縁物が存在し、前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又は前記粒子集合体の間の距離が30nm以上3000nm以下である。
【0025】
第1導電路と第2導電路のペア線を流れる電流によって生じた導電路長さ方向に進行する電磁波は、第1導電路と第2導電路とに接する絶縁層によって速度の低下が生じ、TE成分やTM成分を持つことになる。これらの成分は、導電膜若しくは半導体膜内、又は導電粒子若しくは半導体粒子内の電子の粗密波、つまり表面プラズモンと干渉しやすくなる。
【0026】
特に導電膜又は半導体膜を構成する要素が粒子の場合に、TM成分と表面プラズモンとの波面の整合確率が高くなることより、TM成分は表面プラズモンと干渉しやすくなる。この干渉によって粗密波(表面プラズモン)はエネルギーを得る。したがって、前記第一粒子層は、前記第1基材の少なくとも一方の表面上に形成されていることが好ましい。
【0027】
しかしながら一方では、電界の影響により電子の粗密な状態を導電膜又は半導体膜内に生じさせる。これにより、電子が密に存在する部分に電子が集まることになる。この電子の集まりは、連続的な金属・半導体中においては、伝搬の際に原子格子の熱振動によって熱緩和し、エネルギーを損失させることになる。
【0028】
しかし、粗密波の発生する箇所に粒子化した金属・半導体(導電粒子・半導体粒子。以下ではこれらを総称して「粒子」という場合がある。)を配置し、この粒子又は該粒子の集合体の最大幅を10μm以下とすることで、熱緩和しない距離でのエネルギー伝搬となる。更に、この最大幅の粒子又は粒子集合体が互いに接触せずに、互いの間に隙間又は絶縁物を存在させることで、粗密波から電磁波に戻すことができる。そして再び、電磁波から粗密波にエネルギーを変換する。これを繰り返すことで、熱緩和を抑制でき、電荷の保持性能を向上させることができる。
【0029】
ここで、前記粒子間又は粒子集合体間の距離は30nm以上3000nm以下である。互いの距離を30nm以上とすることで、粗密波から電磁波に、また電磁波から粗密波にエネルギーが変換し、結果として蓄電池の容量が大きくなる。また、大きな容量を得るためには、粒子の数を一定以下に減らさないことが必要であり、この観点から互いの距離は、3000nm以下とする。
【0030】
よって、キャパシタ型蓄電池の構成を上記のように、第1粒子層は最大幅が10μm以下の粒子又は粒子集合体を含んでなり、この粒子又は粒子集合体の間に隙間又は絶縁物が介在し、粒子間又は粒子集合体間の距離が30nm以上3000nm以下とすることで、静電容量が高く、長時間放置後も充放電効率の高いキャパシタ型蓄電池となる。
【0031】
ここで、本発明において「粒子」とは、均一な固体相で構成され、その固体相は他相と接している境界で区切られた有限な一単位を意味し、境界においては、バルク体と異なり電子移動の多少の制限を受ける。例えば、本発明における粒子形態は、導電粒子又は半導体粒子(固体相)の周囲が空隙(他相)である場合や、導電粒子又は半導体粒子(固体相)の周囲に絶縁物(他相)が充填されている場合、更には、特定の結晶方位を有する金属相又は半導体相の周囲に他の結晶方位を有する金属相又は半導体相が充填されている場合、極薄酸化膜(他層)が形成されている場合などが挙げられる。つまり、固体相は、単結晶、上記サイズの多結晶、アモルファスでもよい。
【0032】
なお、一般に固体相と他相との境界においては、電子の移動の制限を受ける。しかしながら、粒子が第1導電膜又は第1半導体膜からなる第1基材と接触している場合には、電荷は、粒子と第1基材とが接触していることで接触面を通過できるものも存在する。
一方で、粗密波は、粒子の周囲を形成する境界によって、粒子の外へ伝搬が阻害される。
【0033】
したがって、粒子と第1基材とが接触している場合には、第1基材から粒子の電子の密な部分に電荷が移動し、電子の粗密差をより大きくすることができる。つまり、上記構成を有するキャパシタ型蓄電池では、電磁波と表面プラズモンのエネルギー交換を大きくでき、かつ交換したエネルギーを保持できる。よって、更に大きな容量でかつ、電圧や電流の印加を切っても、電位の降下、つまりは蓄電量の低下を著しく抑制することが可能となる。
【0034】
第1粒子層を形成する前記粒子集合体は、異なる大きさの粒子を含むことが好ましく、具体的には、前記粒子集合体は、粒子(第I粒子と称する)の表面により細かい粒子(第II粒子と称する)が接合していることがより好ましい。
第1粒子層の役割は、表面プラズモンを活性化することにある。第I粒子の表面により細かい第II粒子を接合すると、実効的な粒子の表面積を増やすことになり、活性化する表面プラズモンの密度が多くなる。結果として蓄電量を増やすことができる。
【0035】
特に、表面プラズモンの活性化の観点から、最大幅が100nm〜5000nmの粒子に最大幅が10nm〜300nmの粒子が付着している粒子集合体であることが好ましく、最大幅が500nm〜2000nmの粒子に最大幅が30nm〜200nmの粒子が付着している粒子集合体であることがより好ましく、最大幅が500nm〜1000nmの粒子に最大幅が30nm〜100nmの粒子が付着している粒子集合体であることがより好ましい。また、粒子集合体としての最大幅は300nm〜2000nmが好ましく、500nm〜1000nmがより好ましい。
【0036】
第II粒子の第I粒子への付着量としては、第II粒子同士の接触によって第II粒子同士が粗大化するのを防ぐ観点から、第II粒子が第I粒子の全表面を覆い尽くさない程度であることが好ましい。具体的な付着量は、第I粒子の粒径や表面積から換算することができる。
【0037】
なお、第II粒子の第I粒子への付着方法によっては、第I粒子を形成した後に第II粒子を付与させることになり、この場合には、導体膜又は半導体膜10上に、第I粒子を介さずに第II粒子が付着する場合がある。このように、導体膜又は半導体膜10上に、第I粒子を介さずに第II粒子が付着している場合は、この第II粒子も、本発明における導電粒子若しくは半導体粒子に該当する。したがって、この場合、粒子集合体と粒子集合体と間の導体膜又は半導体膜10上に付着した第II粒子は、その隣に存在する粒子集合体又は第II粒子との間の距離が30nm以上3000nm以下となって付与されている。
【0038】
ただし、第I粒子に第II粒子が付着した粒子集合体間の導体膜又は半導体膜10上に付着した第II粒子が複数ある場合において、これら第II粒子の最大粒子幅が導体膜又は半導体膜10の表面粗さとみなせる程度に小さい場合は、これら第II粒子間の距離は30nm未満であってもよい。この場合には、これら第II粒子と第I粒子に第II粒子が付着した粒子集合体との間のいずれかの距離が30nm以上3000nm以下となっている必要がある。これにより、第I粒子上の第II粒子で活性化した表面プラズモンが緩和せず保持されており、第II粒子で活性化した表面プラズモンに比較しその量が大きくなるためである。第II粒子の最大粒子幅が導体膜又は半導体膜10の表面粗さとみなせる程度とは、例えば、10nm〜100nmであり、10nm〜50nmがより好ましい。
【0039】
また、第1粒子層を形成する前記粒子又は前記粒子集合体の最大幅が100nm未満の場合には、下記に説明するような量子効果が発現する。
【0040】
前記第1粒子層を形成する前記粒子又は前記粒子集合体の最大幅が100nm未満の場合には、固有電子状態を形成し、電子のエネルギーはバルクスケールの連続的なバンド構造ではなく、離散的な複数のエネルギー準位を発生させることができる。つまり量子ドットとなり量子効果が発現する。
【0041】
電磁波と表面プラズモン干渉によりエネルギーを得た粗密状態は、量子ドットの量子効果で得られた離散的エネルギー準位において、基底のエネルギー準位から高いエネルギーバ準位への移動、つまり準位間励起となることができる。バルクスケールの連続的なバンド構造では、バンド内でエネルギーが緩和されてしまい保持が困難であるのに対し、離散的エネルギー準位間の励起では、エネルギーの保持作用を発現できる。さらに言うならば、金属の連続的なエネルギー順位にあっても量子ドット的構造で離散的エネルギー準位となり、エネルギーの保持作用が発現できる。
【0042】
離散的励起状態では、電子を伝導体に励起することで電子の抜け殻にホールができ、その電子ホールペア状態でエネルギーが保持される。この状態では、外部から見たとき電気的に中性である。すなわち、電磁エネルギーから電子ホールペア励起エネルギーにエネルギーが変換されたことになり、いわゆる静電気的な電界強度で対抗電極の一方に電子、他方にホールが保持された状態とは異なるエネルギー保持状態となる。
【0043】
また、電子が一方の電極側に集まっていることにより、カップリングの存在する範囲で正の電荷(ホール)は分極的に、他方に位置することになる。熱緩和的な正の電荷の存在確率が少ないことにより、中和が生じにくくなり、電子の強い粗密状態の保持作用に有効である。
【0044】
上記メカニズムでの蓄電の安定化作用は、第1導電路と第2導電路のペア線の一方の面でだけでなく、他面も活用できることから、第1導電路と第2導電路のペア線の他面に、連続した第2絶縁層を設け、この第2絶縁膜の外面上に、複数個の第2導電粒子又は第2半導体粒子を含む第2粒子層と、第2導電膜又は第2半導体膜からなる第2基材と、をこの順に備えても構わない。
【0045】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0046】
<キャパシタ型蓄電池>
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池の一例を示す短尺方向(幅方向)での断面図である。
第1の実施形態のキャパシタ型蓄電池は、第1導電膜又は第1半導体膜からなる第1基材10の少なくとも一方の表面上に複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子(「第1粒子」と総称する)40を含む第1粒子層を有する第1積層型基材を有する。図1では、第1絶縁膜20及び第2絶縁膜22が接する第1基材10の両表面において、第1粒子40が存在する図を示している。
【0047】
第1積層型基材の一方の面上には第1絶縁膜20、第1積層型基材の他方の面上には第2絶縁膜22が設けられる。第1絶縁膜20上には、第1積層型基材の長尺方向(図1では紙面の手前から奥に向かう方向)に延在する第1導電路30が設けられ、第2絶縁膜22上には、第1積層型基材の長尺方向に延在し、第1導電路30と平行するように第2導電路32が設けられる。
第1粒子40又は第1粒子40が複数個集合した粒子集合体の最大幅は10μm以下である。第1粒子40又は粒子集合体の間には隙間又は絶縁物が介在し、粒子間又は粒子集合体間の距離は30nm以上3000nm以下である。
【0048】
以下、各部材を構成する材料について説明する。
【0049】
(第1基材)
第1基材10は、第1導電膜又は第1半導体膜からなり、導電物質、半導体物質のいずれで構成されていてもよい。
【0050】
なお、本発明において導電性(導電膜)とは、体積抵抗率が10−3Ω・cm以下であることを意味する。半導電性(半導体膜)とは、体積抵抗率が10−3Ω・cmを超えて10Ω・cm以下であることを意味する
【0051】
第1導電膜又は第1半導体膜は、キャリア密度が高く、電荷の移動度が高い材料であることが好ましい。具体的には例えば以下の材料を例示することができる。
【0052】
第1導電膜は、導電性を示すものであれば特に限定されないが、例えば、Fe、Al、Co、Cr、Ni、Ag、Mg、Cu、Sn、Au、Pt、Pd、In、Ti、Ta及びCからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含むことが好ましく、単一元素で構成されていても、2種以上の元素が含まれていてもよい。2種以上の元素が含まれている場合には、合金若しくは共析物、若しくは固溶限界以下の固溶体であってもよい。更に前記群より選択される少なくとも一つの元素を含み更に周期律表の3族から14族からなる群より選択される少なくとも一つの元素を含んで構成される合金若しくは共析物を含有でもよい。なお、合金には固溶限界以下の固溶体も含まれる。
また、第1導電膜としてSi含有物を用いる場合、SiにB、Al、Pなどに代表される、周期律表の3族から15族からなる群より選択される少なくとも一つの元素を固溶限界以下にまで固溶させ導電性を付与したものを用いることができる。
【0053】
第1半導体膜は、半導電性を示すものであれば特に限定されないが、例えば、ニッケルナイトライド、アナターゼ構造のチタン酸化物、酸化錫混入の酸化インジウム、酸化錫、ジルコニウム酸化物、ガリウムナイトライド、アルミニウムナイトライド、シリコン、カーボンからなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましく、二種以上の化合物を併用してもよい。
【0054】
特に半導体においては、常温で不純物準位から50%以上の励起電子が発生するよう、前記群より選択される化合物にn型又はp型の遷移金属、希土類金属又は非磁性金属をドープすることが有効である。
【0055】
第1基材10は、第1導電膜又は第1半導体膜のいずれか1層で構成される単層であっても、異なる材料で構成される第1導電膜を2層以上積層する複層であっても、異なる材料で構成される第1半導体膜を2層以上積層する複層であっても、更には第1導電膜及び第1半導体膜から選択される2層以上を積層してもよい。
【0056】
第1基材10の厚みは、特に規定されないが20nm以上30000nm以下であることが好ましく、電荷量の確保の観点からと軽量化の観点から1μm〜20μm以下であることが好ましい。
【0057】
前記第1基材10の表面粗さRz(μm)は、第1粒子層を形成する際に集合体の最大幅を好適な状態にする観点から1μm以上10μm以下であることが好ましく、2μm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0058】
表面粗さRzの測定方法は以下の通りである。
第1基材の表面の凹凸状態を原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定する。この粗さ曲線からJIS B0601−1994に従い、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定して求めた。
【0059】
(第1粒子層)
第1粒子層は、複数個の第1導電粒子又は複数個の第1半導体粒子(「第1粒子」と総称する)40を含む。
第1粒子層に含まれる第1粒子40は、複数個が集合した粒子集合体(「第1粒子集合体」と称する)となっていてもよい。前記第1粒子40又は第1粒子集合体の最大幅は10μm以下である。前述の通り、表面プラズモンの活性化の観点からは、異なる大きさの粒子を含む粒子集合体であることが好ましく、第I粒子の表面により細かい第II粒子を接合させた粒子集合体であることがより好ましい。また、量子効果を発揮させる観点からは、前記第1粒子40又は第1粒子集合体の最大幅は100nm以下であることがより好ましく、80nm以下であることが更に好ましい。
【0060】
ここで、第1粒子40、第I粒子、第II粒子及び第1粒子集合体の最大幅とは、後述の第1導電路30及び第2導電路32の延在方向、つまり表面プラズモンの進行方法に沿った第1粒子層の断面をHRSEMにより観察し求める。本発明において第1粒子40、第I粒子、第II粒子又は第1粒子集合体の径を一つ一つの第1粒子40又は第1粒子集合体の凸部を取り囲むことのできる最小円の直径と定義する。その第1粒子層の断面に含まれる100個以上の任意の第1粒子40、第I粒子、第II粒子又は粒子集合体についての最大幅を測定したときの値をいう。
【0061】
前記第1粒子40又は第1粒子集合体の間の距離は、30nm以上3000nm以下であり、より好ましくは、30nm以上1500nm以下であり、更に好ましくは50nm以上1000nm以下である。
【0062】
ここで、第1粒子40又は第1粒子集合体の間の距離とは、上記粒子又は粒子集合体の最大幅の測定と同様の方法で断面を観察し、このときに隣り合う第1粒子40又は第1粒子集合体の間隔で最も短い距離を測定し、任意の100個の第1粒子又は第1粒子集合体の間隔の平均値をいう。
【0063】
前記第1粒子40又は第1粒子集合体の間には、隙間又は絶縁物を介在させる。第1粒子40又は第1粒子集合体の間に充填する絶縁物としては、後述する第1絶縁膜で説明する絶縁物を適用することができる。粒子又は粒子集合体の間が隙間となっている場合には、絶縁体である空気が存在している。
なお、上述の通り、第1粒子40又は第1粒子集合体の間の距離が、30nm以上3000nm以下であるため、本発明ではこの部分に隙間又は絶縁物が存在していることを意味する。
【0064】
なお、第1粒子層に含まれる第1粒子40は、第1基材10上に形成した後に、ここに絶縁物を付与して、第1粒子40の周囲を絶縁物で充填してもよいし、或いは絶縁物中に第1粒子40を分散させた塗剤を予め調製し、この塗剤を第1基材10上に付与してもよい。更には、第1粒子層を粒子のみから構成し、粒子の間又は粒子集合体の間には空気などの空隙が形成される態様であってもよい。更に、第1粒子40の周囲に充填する絶縁物は、後述の第1絶縁膜又は第2絶縁膜が兼ねてもよい。上記に記載以外の方法としては蒸着法やスパッタ法、CVDで直接基材に粒子層を形成する方法がある
【0065】
第1粒子層は単層であっても、2層以上の複層であってもよい。また、第1粒子層は、第1基材10の少なくとも一方の面上に設けられていればよく、第1基材10の両面上に設けられていてもよい。第1基材10の両面上に第1粒子層を設ける場合には、それぞれの面上に第1粒子層を単層で設けても、2層以上を積層して設けてもよい。第1粒子層を2層以上設ける場合には、それぞれの第1粒子層に同じ第1粒子40を適用しても、異なる第1粒子40を適用してもよい。なお、第1粒子層は第1基材10の表面上に設けられていることが好ましい。
【0066】
第1導電粒子の組成としては、前記第1導電膜で説明したものを適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。
【0067】
第1半導体粒子の組成としては、前記第1半導体膜で説明したものを適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。
特に第1半導体粒子においては、常温で不純物準位から50%以上の励起電子が発生するよう、前記群より選択される化合物にn型又はp型の遷移金属、希土類金属又は非磁性金属をドープすることが有効である。
【0068】
第1粒子集合体が、異なる大きさの粒子を含む場合、大きさの異なる粒子は、それぞれ異なる材質で形成されていても、同じ材質で形成されていてもよい。具体的な材質としては、前記第1導電膜及び前記第1半導体膜で説明したものを適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。
【0069】
第1粒子40は、キャリア密度が高く、表面プラズモンを発生しやすく、また、粒子を形成しやすい材料で構成されることが好ましい。
【0070】
なお、第1粒子層と第1基材は材料が異なることによりフェルミレベルを変えることでショットキー接合を形成することでエネルギーの熱緩和を防ぐという観点から、第1粒子層を構成する第1粒子40と前記第1基材10とは異なる材質で構成されていることが好ましい。具体的には、第1粒子層を構成する第1粒子40と、第1基材10との組み合わせとしては、第1粒子層を構成する粒子をAl、第1基材をCuとする組み合わせや、第1粒子層を構成する粒子をSn、第1基材をCuとする組み合わせ、第1粒子層を構成する粒子をAu、第1基材をAlとする組み合わせなどを挙げることができる。この組み合わせには特に制限されない
【0071】
更に、粒子集合体が、異なる大きさの粒子を含む場合、粒子集合体の例としては、Cu粒子の表面により細かいSn粒子を接合させた粒子集合体、Sn粒子の表面により細かいCu粒子を接合させた粒子集合体、Cu粒子の表面により細かいCu粒子を接合させた粒子集合体、Sn粒子の表面により細かいSn粒子を接合させた粒子集合体、などをあげることができる。この組み合わせには特に制限されない。
【0072】
第1粒子層の厚み(2層以上を重ねて使用する場合には総厚)は、粒子層が厚膜化した場合には粒子自体が引き付けあう傾向があることから、15nm〜1000nm以下であることが好ましく、20nm〜500nmであることが好ましい。
【0073】
(第1絶縁膜、第2絶縁膜)
第1絶縁膜20及び第2絶縁膜22としては、有機絶縁物、無機絶縁物、又は有機絶縁物と無機絶縁物の複合体のいずれから形成されていてもよい。
有機絶縁物としては、ポリエステル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPC(ポリエステルポリカーボネート)、ビニリデン、ポリイミド、ポリスチレン、ゴム、アクリル、エポキシなどを挙げることができる。
無機絶縁物としては、ほう珪酸ガラス、ソーダライムガラス、チタン酸バリウムやチタン酸ストロンチウムなどの金属酸化物などを挙げることができる。
【0074】
特に、第1絶縁膜20及び第2絶縁膜22には、実効的に誘電率の高い材料を用いることが、TE成分やTM成分の発生、及び空間電荷分布による容量成分の追加に有利であるため好ましい。
また、第1絶縁膜20及び第2絶縁膜22は接着剤層であることが、蓄電層と導電路間の空気の介在を防止できるため好ましい。
【0075】
第1絶縁膜及び第2絶縁膜は、それぞれ単層であっても、2層以上の複層であってもよい。
【0076】
第1絶縁膜20及び第2絶縁膜22の厚み(2層以上を重ねて使用する場合には総厚)は、電磁波と表面プラズモンのエネルギー交換の効率化の観点から、各々20nm以上10000nm以下が好ましい。この膜厚は耐電圧の配慮もなされ、用途に適した電圧に耐えうる最低の厚みを確保することが好ましい。
【0077】
(第1導電路、第2導電路)
第1導電路30及び第2導電路32の組成としては、前記第1導電膜10で説明したものを適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。第1導電路30と第2導電路32は同じ材質で形成してもよいし、異なる材質で形成されていてもよい。
【0078】
第1導電路30及び第2導電路32の短尺方向の長さ(幅)wは、例えば各々1μm以上100mm以下であり、第1導電路と第2導電路との間隔d(つまり第1基材10と第1粒子層と第1絶縁膜20と第2絶縁膜22の総厚み)は、例えば各々1μm以上100mm以下である。また第1導電路及び第2導電路の厚み(高さ)tは、例えば各々0.5μm以上1000μm以下である。また、幅wと間隔dの関係は、w/d≧1.5が望ましい。また幅wと高さtの関係は、t/w≦1が好ましく、より好ましくはt/w≦0.5である。
【0079】
(作製方法)
本発明の第1の実施形態のキャパシタ型蓄電池の製造方法は、上記構成のキャパシタ型蓄電池を形成し得る方法であれば特に限定されるものではない。以下に製造方法の一例について説明する。
【0080】
基材シートの上に、例えばスパッタ、蒸着、メッキ、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で、第1導電膜又は第1半導体膜10が形成される。また、市販の金属箔や半導体膜を第1基材として用いてもよい。
【0081】
この第1導電膜又は半導体膜10の上に、マグネトロンスパッタ、DCスパッタ、RFスパッタ、イオンビームスパッタ、蒸着、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法により、上記サイズの第1粒子40を付与する。なおこのスパッタ法の種類は粒子種によって任意に変更可能である。或いは、電解メッキや無電解メッキなどの手法により、第1導電膜又は半導体膜10の上に、上記サイズの第1粒子40を析出させる。
【0082】
第1粒子40又は粒子集合体の最大幅を10μm以下に調整し且つその第1粒子40又は粒子集合体の間の距離を30nm以上3000nm以下とするのは、スパッタ法の場合は製膜条件の最適化を行うこと、電解メッキ法では印加電流条件の最適化を行うことにより行うことができる。
【0083】
異なる大きさの粒子を含む粒子集合体とし、更には、第I粒子の表面により細かい第II粒子が接合している粒子集合体とするには、第1導電膜又は半導体膜10の上に上記方法により第I粒子を付与し、更にその上に、マグネトロンスパッタ、CVDなどの方法により第II粒子を付与することにより行うことができる。
【0084】
第1導電膜又は第1半導体膜10の上に複数個の第1粒子40又は粒子集合体を付与した後、バーコート法などの塗工、貼合、蒸着、メッキ、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で、第1絶縁膜20が形成される。このとき、第1粒子40又は粒子集合体の間に隙間又は絶縁物が介在するようにするには、絶縁体の流動性を制御することが有益である。更に、第1絶縁膜の上に第1導電路30が形成される。
【0085】
他方、基材シートが第1導電膜又は第1半導体膜10から剥がされ、その剥がされた面の上に、第1絶縁膜20の形成方法と同様の方法により第2絶縁膜22が形成される。更に第2絶縁膜22の上に、第2導電路32が形成される。
なお、第1導電膜又は第1半導体膜10の上に第2絶縁膜22を形成する前に、第1粒子40又は粒子集合体を形成してもよい。
【0086】
(使用)
図示しないが、蓄電池の長尺方向の一方の端部では第1導電路30及び第2導電路32が露出している。この露出している部分に、第1導電路30及び第2導電路32に電圧を与えるための第1端子及び第2端子がそれぞれ接続している。第1端子及び第2端子に所定の電位差を与えると、第1基材10と、第1導電路30及び第2導電路32との間に広がった電磁界すなわちフォトンとの間で、フォトン−表面プラズモンのエネルギー交換が行われ、大きな容量で蓄電される。以下の実施形態においても同様である。
【0087】
[第2の実施形態]
図2は、第2の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池の一例を示す短尺方向(幅方向)での断面図である。
第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池は、第1導電膜又は第1半導体膜からなる基材10の表面上に、複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子(「第1粒子」と称する)40を含む第1粒子層と、第1絶縁膜20とをこの順に積層した第1積層膜50を有する。第1積層膜50の第1絶縁膜20上には、第1積層膜50の長尺方向(図2では紙面の手前から奥に向かう方向)に延在する第1導電路30と、第1導電路30に平行する第2導電路32とが設けられる。
第1粒子40又は第1粒子40が複数個集合した粒子集合体の最大幅は10μm以下である。第1粒子40又は粒子集合体の間には隙間又は絶縁物が介在し、粒子間又は粒子集合体間の距離は30nm以上3000nm以下である。
更に図2においては、第1基材10の外側表面には基材シート60が設けられる。
【0088】
以下、各部材を構成する材料について説明する。
【0089】
(第1基材)
第1基材10は、第1導電膜又は第1半導体膜からなり、導電物質、半導体物質のいずれで構成されていてもよい。
第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1基材10は、前記第1の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1基材で説明したものを適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。
【0090】
第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1基材10の厚みは、特に限定されないが20nm以上30000nm以下であることが好ましく、モジュール化した際の電気容量向上のための電荷量の確保の観点から、1μm〜20μmであることが好ましい。
【0091】
(第1粒子層)
第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1粒子層は、前記第1の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1粒子層で説明したものをそれぞれ適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。
【0092】
(第1絶縁膜)
第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1絶縁膜20は、前記第1の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1絶縁膜20で説明したものをそれぞれ適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。
【0093】
第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1絶縁膜20の厚みは、電磁波と表面プラズモンのエネルギー交換の効率化の観点から、20nm以上10000nm以下が好ましい。この膜厚は耐電圧の配慮もなされ、用途に適した電圧に耐えうる最低の厚みを確保することが好ましい。
【0094】
(第1導電路、第2導電路)
第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1導電路30及び第2導電路32は、前記第1の実施形態のキャパシタ型蓄電池における第1導電路及び第2導電路で説明したものをそれぞれ適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。
【0095】
(基材シート)
図2に示すキャパシタ型蓄電池では、基材シート60の上に前記第1導電膜又は第1半導体膜10を積層する。基材シート60の適用は任意であり、基材シート60を設けなくともよい。
基材シート60を適用する場合の組成としては、前記第1導電膜又は第1半導体膜10を積層できるものであれば、導電性、半導電性、及び絶縁性のいずれであってもよい。絶縁性であれば、本キャパシタ型蓄電池を巻いて使用する場合には、基材シートは導電性のある第1基材と第1導電路及び第2導電路の間を絶縁する役割を果たせる。
導電性のシートとしては、前記第1導電膜で説明したものと適用することができ、半導電性のシートとしては、前記第1半導体膜で説明したものと適用することができ、絶縁性のシートとしては、前記第1絶縁膜で説明したものを適用することができる。好適に用いられる材料についても同様である。
基材シート60の厚みは、1μm〜25μmが好ましい。
【0096】
(作製方法)
本発明の第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池の製造方法は、上記構成のキャパシタ型蓄電池を形成し得る方法であれば特に限定されるものではない。以下に製造方法の一例について説明する。
【0097】
基材シート60の上に、例えばスパッタ、蒸着、メッキ、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で、第1導電膜又は第1半導体膜10を形成する。また、市販の金属箔や半導体膜を第1基材として用いてもよい。
この第1導電膜又は半導体膜10の上に、マグネトロンスパッタ、DCスパッタ、RFスパッタ、イオンビームスパッタ、蒸着、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法により、上記サイズの第1粒子40を付与する。或いは、電解メッキや無電解メッキなどの手法などの手法により、第1導電膜又は半導体膜10の上に、上記サイズの第1粒子40を析出させる。
【0098】
第1導電膜又は第1半導体膜10の上に複数個の第1粒子40を付与した後、バーコート法などの塗工、貼合、蒸着、メッキ、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で、第1絶縁膜20を形成し、更にその第1絶縁膜20の上に第1導電路30と第2導電路32とを、互いが平行するように形成する。
【0099】
[第3の実施形態]
図3は、第3の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池の一例を示す短尺方向(幅方向)での断面図である。
第3の実施形態のキャパシタ型蓄電池は、第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池において、更に、第1導電路30及び第2導電路32の外面上に、第2絶縁膜22が連続して設けられ、第2絶縁膜22の外面上に、複数個の第2導電粒子又は第2半導体粒子(「第2粒子」と総称する)42を含む第2粒子層と、第2導電膜又は第2半導体膜からなる第2基材12と、をこの順に設けられる。更に図3においては、第2基材12の外側表面には基材シート60が設けられる。基材シート60の設置は任意である。
【0100】
第2粒子42又は第2粒子42が複数個集合した粒子集合体の最大幅は10μm以下である。第2粒子42又は粒子集合体の間には隙間又は絶縁物が介在し、粒子間又は粒子集合体間の距離は30nm以上3000nm以下である。
【0101】
第3の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池において、第1基材10、第1導電粒子又は第1半導体粒子40、第1絶縁膜20、第1導電路30、第2導電路32、及び基材シート60は、第2の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池における第1基材、第1導電粒子又は第1半導体粒子、第1絶縁膜、第1導電路、第2導電路及び基材シートで説明したものをそれぞれ適用することができ、好適に用いられる材料についても同様であるため、説明を省略する。
【0102】
(第2絶縁膜)
第2絶縁膜22は、前記第1絶縁膜で説明したものを適用することができ、好適に用いられる材料や形状についても同様である。
なお、図3では、第2絶縁膜22及び第2基材12は平板状のものとして示しているが、このような形状に限定されず、導電路30及び第2導電路32による凹凸に沿って設けられていてもよい。
【0103】
(第2基材)
第2導電膜又は第2半導体膜からなる第2基材12は、前記第1基材で説明したものを適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。
【0104】
前記第2基材12の表面粗さRz(μm)も、1μm以上10μm以下であることが好ましく、2μm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0105】
(第2粒子層)
第2粒子層は、前記第1粒子層で説明したものを適用することができ、好適に用いられる材料についても同様である。
なお、第2粒子層と第2基材は材料が異なることによりフェルミレベルを変えることでショットキー接合を形成することでエネルギーの熱緩和を防ぐという観点から、第2粒子層を構成する第2粒子42と前記第2基材12とは異なる材質で構成されていることが好ましい。第2粒子層を構成する第2粒子42と第2基材12の具体的な組み合わせは、前述の、第1粒子層を構成する第1粒子40と第1基材10の組み合わせと同様である。
【0106】
(作製方法)
本発明の第3の実施形態のキャパシタ型蓄電池の製造方法は、上記構成のキャパシタ型蓄電池を形成し得る方法であれば特に限定されるものではない。以下に製造方法の一例について説明する。
【0107】
基材シート60の上に、例えばスパッタ、蒸着、メッキ、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で、第1導電膜又は第1半導体膜10が形成される。また、市販の金属箔や半導体膜を第1基材10として用いてもよい。
この第1導電膜又は半導体膜10の上に、マグネトロンスパッタ、DCスパッタ、RFスパッタ、イオンビームスパッタ、蒸着、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法により、上記サイズの第1粒子40を付与する。或いは、電界メッキや無電解メッキなどの手法により、第1導電膜又は半導体膜の上に、上記サイズの第1粒子40を析出させる。
【0108】
第1導電膜又は第1半導体膜の上に複数個の第1粒子を付与した後、バーコート法などの塗工、貼合、蒸着、メッキ、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で、第1絶縁膜20を形成して、基材シート60、第1導電膜又は第1半導体膜10、第1粒子層、及び第1絶縁膜20がこの順に積層した積層体1を得る。
【0109】
他方、基材シート60の上に、例えばスパッタ、蒸着、メッキ、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で、第2導電膜又は第2半導体膜12が形成される。また、市販の金属箔や半導体膜を第2基材12として用いてもよい。
この第2導電膜又は第2半導体膜12の上に、マグネトロンスパッタ、DCスパッタ、RFスパッタ、イオンビームスパッタ、蒸着、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法により、上記サイズの第2粒子42を付与する。或いは、電界メッキや無電解メッキなどの手法により、第2導電膜又は第2半導体膜12の上に、上記サイズの第2粒子42を析出させる。
【0110】
第2導電膜又は第2半導体膜12の上に複数個の第2粒子42を付与した後、バーコート法などの塗工、貼合、蒸着、メッキ、イオンプレーティング、CVD、溶射などの手法で第2絶縁膜22を形成して、基材シート60、第2導電膜又は第2半導体膜12、第2粒子層、及び第2絶縁膜22がこの順に積層した積層体2を得る。
【0111】
前記準備した積層体1及び積層体2を、積層体1の第1絶縁膜20と積層体2の第2絶縁膜22が対向するようにして、その第1絶縁膜20と第2絶縁膜22の間に、第1導電路30と第2導電路32とが平行するように配置して挟持させ、第3の実施形態のキャパシタ型蓄電池を得る。
【0112】
[第4の実施形態]
図4は、第4の実施形態に係るキャパシタ型蓄電池の一例を示す短尺方向(幅方向)での断面図である。
図4に示すキャパシタ型蓄電池は、第1絶縁膜20の同一面上に、第1導電路30及び第2導電路32を複数交互に設けた点、更に図示しないが複数の第1導電路30が同一の第1端子に接続しており、複数の第2導電路32が同一の第2端子に接続している点を除いて、第3の実施形態にかかる蓄電池と同様である。
【0113】
対を形成している第1導電路30及び第2導電路32の幅wとその間の距離dとは、w/d≧1.5の関係を満たすことが望ましい。対を形成していない第1導電路30と第2導電路32との距離をsとした場合、s/d≧1を満たすことが望ましい。以下、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して、説明を省略する。
【0114】
第1端子及び第2端子は、第1導電路30及び第2導電路32から離れるに従って幅が狭くなる部分を有しており、かつこの部分において、第1導電路30及び第2導電路32が延伸する2辺が互いになす角度θが30°以下である。これにより、第1端子及び第2端子における電力の抵抗損失を少なくすることができる。
【0115】
また、第1端子は、直接第1導電路30に接続しているが、第2端子は貫通電極(図示せず)を介して第2導電路32に接続している。貫通電極は、第1端子上及び第1導電路30及び第2導電路32上に設けられた絶縁層を貫通している。第2端子は、絶縁層上に位置している。
【0116】
第4の実施形態によっても、第1〜第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。第1導電路30及び第2導電路32の数を多くしたため、蓄電池の容量がさらに大きくなる。
なお、図4では、第3の実施形態のキャパシタ型蓄電池の構成で、第1導電路30及び第2導電路32を複数交互に設けたものを示したが、図1の第1の実施形態のキャパシタ型蓄電池の構成や、図2の第2の実施形態のキャパシタ型蓄電池の構成で、第1導電路30及び第2導電路32を複数交互に設けたものであってもよい。
【0117】
(その他の実施形態)
図1〜図4に示したキャパシタ型蓄電池はシート状であるが、このシートを長尺方向においてロール状に巻いて使用してもよい。
【0118】
<キャパシタ型蓄電池用基板>
前記第1基材10の少なくとも一方の面上に、複数個の導電性又は半導性の第1粒子40が存在し、前記第1粒子40又は第1粒子が複数個集合した第1粒子集合体の最大幅が10μm以下であり、前記第1粒子40又は前記第1粒子集合体の間の距離が30nm以上3000nm以下であるものは、キャパシタ型蓄電池用基板として有益である。
【0119】
このキャパシタ型蓄電池用基板では、第1基材10の両面に複数個の第1粒子又は第1粒子集合体が存在していてもよく、片面のみに複数個の第1粒子又は第1粒子集合体が存在していてもよい。複数個の第1粒子又は第1粒子集合体は第1基材10の表面上に設けられていることが好ましい。
【0120】
<キャパシタ型蓄電池用蓄電層>
前記キャパシタ型蓄電池用基板の少なくとも一方の面上に前記第1絶縁膜20を有する積層体は、キャパシタ型蓄電池用蓄電層として有益である。このとき、第1基材10上の複数個の第1粒子40又は第1粒子集合体の間には、隙間又は絶縁物が存在する。
【0121】
キャパシタ型蓄電池用蓄電層の層構成の例を以下に示すが、これらに限定されない。
(1)前記キャパシタ型蓄電池用基板と第1絶縁膜の積層体。
(2)第1絶縁膜、キャパシタ型蓄電池用基板、第2絶縁膜をこの順で積層する積層体。
(3)第1絶縁膜、第2絶縁膜、キャパシタ型蓄電池用基板、第3絶縁膜をこの順で積層する積層体。
(4)第1絶縁膜、第2絶縁膜、キャパシタ型蓄電池用基板、第3絶縁膜、第4絶縁膜をこの順で積層する積層体。
【実施例】
【0122】
以下、本発明の実施例について比較例と共に説明する。尚、本発明は下記実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【0123】
[実施例1]
Rz=5μm、厚み20μmの銅箔上に電解メッキ法を用いCu粒子を析出させ、粒子層を形成した。形成した試料の表面を前述の方法によりSEM画像(倍率:100000倍、以下同様。)で観察すると、最大幅0.15μmの銅粒子が30nmの距離(前記説明の方法で測定、以下同じ)で存在することを確認した。
【0124】
この粒子層の上に、粘度を調整したアクリル樹脂をバーコート法を用いて塗膜して絶縁層を形成した。絶縁層の厚みは10μmであった。これをSEMで観察すると、Cu粒子の周囲が絶縁物で覆われおり、Cu粒子又はCu粒子集合体の間に絶縁物が介在していた。
【0125】
更にこの絶縁層の上に、厚み35μmの銅箔を平行に貼合することで平行する第1導電路及び第2導電路を形成した。
【0126】
[実施例2]
Rz=5μm、厚み20μmの銅箔上にマグネトロンスパッタを用いてSnの粒子層を形成した。この表面をSEMで観察したところ最大幅0.14μmの突起が30nmの距離で形成されていた。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0127】
[実施例3]
Rz=15μm、厚み20μmの銅箔上にマグネトロンスパッタを用いてSnの粒子層を形成した。この表面をSEMで観察したところ最大幅0.13μmの突起が30nmの距離で形成されていた。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0128】
[実施例4]
Rz=5μm、厚み20μmの銅箔上にマグネトロンスパッタを用いてSnの粒子層を形成した。この表面をSEMで観察したところ最大幅0.13μmの突起が300nmの距離で形成されていた。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0129】
[実施例5]
Rz=5μm、厚み20μmの銅箔上に、マグネトロンスパッタを用いてSnの粒子層を形成した。この表面をSEMで観察したところ最大幅0.15μmの突起が3000nmの距離で形成されていた。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0130】
[実施例6]
Rz=5μm、厚み20μmの銅箔上に、マグネトロンスパッタを用いてSnの粒子層を形成した。この表面をSEMで観察したところ最大幅0.08μmの突起が300nmの距離で形成されていた。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0131】
[実施例7]
Rz=5μm、厚み20μmの銅箔上に、電解メッキ法を用いCu粒子を析出させ、粒子層を形成した。この表面をSEMで観察したところ最大幅10μmの突起が300nmの距離で形成されていた。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0132】
[実施例8]
第1基材としてRz=5μm、厚み20μmの銅箔上に電解メッキ法を用い、銅粒子を形成した。形成した試料の表面をSEM観察すると最大幅0.13μmの突起が300nmの距離で形成されていた。
その基材上にマグネトロンスパッタを用いてSnの粒子層を形成した。形成した試料の表面をSEM観察するとCu粒子上にSn粒子が最大幅0.02μmの突起が平均10nmの間隔で形成されていた。これにより集合体としての粒子最大幅は0.15μm、粒子集合体の距離は280nmとなった。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0133】
[実施例9]
Rz=5μm、厚み20μmの銅箔上に、電解メッキ法を用いCu粒子を析出させ、粒子層を形成した。この表面をSEMで観察したところ最大幅9.5μmの突起が平均290nmの距離で形成されていた。
その基材上にマグネトロンスパッタを用いてSnの粒子層を形成した。形成した試料の表面をSEM観察するとCu粒子上にSn粒子が最大幅0.02μmの突起が平均10nmの間隔で形成されていた。これにより集合体としての粒子最大幅は9.52μm、粒子集合体の距離は270nmとなった。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0134】
[実施例10]
第1基材として実施例6の粒子を形成した基材を用い、その基材上にマグネトロンスパッタを用いてSnの粒子層を形成した。形成した試料の表面をSEM観察するとSn粒子上にSn粒子が最大幅0.02μmの突起が平均10nmの距離で形成されていた。これにより集合体としての粒子最大幅は0.1μm、粒子集合体の距離は280nmとなった。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0135】
[実施例11]
Rz=5μm厚み、20μmの銅箔上に電解メッキ法を用いCu粒子を析出させ、粒子層を形成した。この表面をSEMで観察したところ最大幅5μmの突起が300nmの距離で形成されていた。
その基材上にマグネトロンスパッタを用いてSnの粒子層を形成した。形成した試料の表面をSEM観察するとCu粒子上にSn粒子が最大幅0.4μmの突起が10nmの距離で形成されていた。これにより集合体としての粒子最大幅は5.4μm、粒子集合体の距離は290nmとなった。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0136】
[実施例12]
Rz=5μm厚み、20μmの銅箔上に電解メッキ法を用いCu粒子を析出させ、粒子層を形成した。この表面をSEMで観察したところ最大幅5μmの突起が300nmの距離で形成されていた。
その基材上にマグネトロンスパッタを用いてSnの粒子層を形成した。形成した試料の表面をSEM観察するとCu粒子上にSn粒子が最大幅0.03μmの突起が10nmの距離で形成されていた。これにより集合体としての粒子最大幅は5.03μm、粒子集合体の距離は270nmとなった。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0137】
[比較例1]
Rz=1μm、厚み25μmのPETフィルムを下地層とし、その上にマグネトロンスパッタを用いてSn粒子層を形成した。この表面を上記方法によりSEM画像(倍率:100000倍)で観察したところ、最大幅0.14μmの突起が30nmの距離で形成されていた。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0138】
[比較例2]
Rz=5μm、厚み20μmの銅箔上にマグネトロンスパッタを用いてSn粒子層を形成した。この表面をSEMで観察したところ最大幅0.14μmの突起が4000nmの距離で形成されていた。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0139】
[比較例3]
Rz=5μm厚み、20μmの銅箔上に電解メッキ法を用いCu粒子を析出させ、粒子層を形成した。この表面をSEMで観察したところ最大幅20μmの突起が300nmの距離で形成されていた。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0140】
[比較例4]
Rz=5μm、厚み20μmの銅箔上にマグネトロンスパッタを用いてSn粒子層を形成した。この表面をSEMで観察したところ最大幅0.14μmの突起が28nmの距離で形成されていた。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0141】
[比較例5]
Rz=5μm、厚み20μmの銅箔上にマグネトロンスパッタを用いてSn粒子層を形成した。この表面をSEMで観察したところ最大幅0.14μmの突起が3050nmの距離で形成されていた。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0142】
[比較例6]
Rz=5μm厚み、20μmの銅箔上に電解メッキ法を用いCu粒子を析出させ、粒子層を形成した。この表面をSEMで観察したところ最大幅11μmの突起が300nmの距離で形成されていた。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0143】
[比較例7]
Rz=5μm、厚み20μmの銅箔上にマグネトロンスパッタを用いてSn粒子層を形
成した。この表面をSEMで観察したところ最大幅0.11μmの突起が38nmの距離で形成されていた。
これに別のスパッタ条件で再びSnをマグネトロンスパッタしたところ最初に形成された粒子上に最大幅0.02nmの突起が平均10nmで形成されていた。これにより集合体としての粒子最大幅は0.13μm、粒子集合体の距離は20nmとなった。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0144】
[比較例8]
Rz=5μm厚み、20μmの銅箔上に電解メッキ法を用いCu粒子を析出させ、粒子層を形成した。この表面をSEMで観察したところ最大幅10.7μmの突起が270nmの距離で形成されていた。
この基材上にマグネトロンスパッタを用いてSn粒子層を形成した。この基材をSEMで観察すると、最初に形成された粒子上に最大幅0.02nmの突起が平均10nmの距離で形成されていた。これにより集合体としての粒子最大幅は10.72μm、粒子集合体の距離は290nmとなった。
粒子層上に、絶縁層、第1導電路及び第2導電路を実施例1と同様の方法で作製した。
【0145】
<評価>
このようにして作製したキャパシタ型蓄電池について、定電流充電装置を用いて電気容量を評価した。評価の方法を以下に示す。
【0146】
(1)被測定物に対し10Cのレートで充電を行い、電源から切り離した状態で10〜720時間放置した。
(2)上記(1)の後に1Cのレートで放電を行った。
(3)放電電気量を測定、電気量が60mAh以下となる経過日数を保持時間とし、比較した。
【0147】
図5に、実施例1〜実施例12、比較例1〜比較例8における電気容量と保持時間の関係をグラフに示す。また、図6に、実施例4、実施例6、実施例7、比較例3、比較例6における粒子層の最大粒子幅と10日後の電気容量の関係をグラフに示す。また、保持特性の結果を表1に示す。
【0148】
【表1】

【0149】
表1に示されるように、粒子層に含まれる粒子又は粒子集合体の最大幅が10μm以下であり、粒子間又は粒子集合体間に隙間又は絶縁物が存在し、且つ粒子間又は粒子集合体間の距離が30nm以上3000nm以下の実施例1〜12は、これらの要件を充足しない比較例1〜8に比べて、蓄電電荷の保持性能に著しく優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0150】
10 第1基材(第1導電膜又は第1半導体膜)
12 第2基材(第2導電膜又は第2半導体膜)
20 第1絶縁膜
22 第2絶縁膜
30 第1導電路
32 第2導電路
40 第1粒子
42 第2粒子
50 第1積層膜
60 基材シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電膜又は第1半導体膜からなる第1基材と、前記第1基材の少なくとも一方の面に複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子を含む第1粒子層と、を有する第1積層型基材と、
前記第1積層型基材の一方の面に第1絶縁膜と、
前記第1積層型基材の他方の面に第2絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上で該第1積層型基材の長尺方向に延在する第1導電路と、
前記第2絶縁膜上で該第1積層型基材の長尺方向に延在し、前記第1導電路に平行に設けられた第2導電路と、を備え、
前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又はこれら粒子が複数個集合した粒子集合体の最大幅が10μm以下であり、前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又は前記粒子集合体の間に隙間又は絶縁物が存在し、前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又は前記粒子集合体の間の距離が30nm以上3000nm以下であるキャパシタ型蓄電池。
【請求項2】
第1導電膜又は第1半導体膜からなる第1基材、複数個の第1導電粒子又は第1半導体粒子を含む第1粒子層、及び第1絶縁膜、をこの順に積層した第1積層膜と、
前記第1積層膜の第1絶縁膜上で前記第1積層膜の長尺方向に延在する第1導電路と、
前記第1積層膜の第1絶縁膜上で前記第1積層膜の長尺方向に延在し、前記第1導電路に平行に設けられた第2導電路と、を備え、
前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又はこれら粒子が複数個集合した粒子集合体の最大幅が10μm以下であり、前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又は前記粒子集合体の間に隙間又は絶縁物が存在し、前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又は前記粒子集合体の間の距離が30nm以上3000nm以下であるキャパシタ型蓄電池。
【請求項3】
更に、前記第1導電路及び前記第2導電路の外面上に連続した第2絶縁膜が設けられ、
前記第2絶縁膜の外面上に、複数個の第2導電粒子又は第2半導体粒子を含む第2粒子層と、第2導電膜又は第2半導体膜からなる第2基材と、をこの順に備え、
前記第2導電粒子若しくは前記第2半導体粒子又はこれら粒子が複数個集合した粒子集合体の最大幅が10μm以下であり、前記第2導電粒子若しくは前記第2半導体粒子又は前記粒子集合体の間に隙間又は絶縁物が存在し、前記第2導電粒子若しくは前記第2半導体粒子又は前記粒子集合体の間の距離が30nm以上3000nm以下である請求項2に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項4】
前記粒子集合体は、異なる大きさの粒子を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項5】
前記粒子集合体は、最大幅が100nm〜5000nmの粒子に最大幅が10nm〜300nmの粒子を付着してなる請求項4に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項6】
前記第1導電粒子若しくは前記第1半導体粒子又は前記粒子集合体の最大幅が、100nm未満である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項7】
前記第2導電粒子若しくは前記第2半導体粒子又は前記粒子集合体の最大幅が、100nm未満である請求項3又は請求項4に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項8】
前記第1基材と前記第1粒子層を構成する第1導電粒子又は第1半導体粒子とが、異なる材質である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項9】
前記第2基材と第2粒子層を構成する第2導電粒子又は第2半導体粒子とが、異なる材質である請求項3〜請求項8のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項10】
前記第1基材の表面粗さRz(μm)が、1≦Rz≦10である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項11】
前記第2基材の表面粗さRz(μm)が、1≦Rz≦10である請求項3〜請求項10のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項12】
前記第1導電膜及び第1導電粒子が、各々独立に、Fe、Al、Co、Cr、Ni、Ag、Mg、Cu、Sn、Au、Pt、Pd、In、Ti、Ta及びCからなる群より選択される少なくとも一つの元素、前記群より選択される少なくとも二種の元素で構成される合金若しくは共析物、又は前記群より選択される少なくとも一つの元素を含み更に周期律表の3族〜14族からなる群より選択される少なくとも一つの元素を含んで構成される合金若しくは共析物、を含有する請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項13】
前記第2導電膜及び第2導電粒子が、各々独立に、Fe、Al、Co、Cr、Ni、Ag、Mg、Cu、Sn、Au、Pt、Pd、In、Ti、Ta及びCからなる群より選択される少なくとも一つの元素、前記群より選択される少なくとも二種の元素で構成される合金若しくは共析物、又は前記群より選択される少なくとも一つの元素を含み更に周期律表の3族〜14族からなる群より選択される少なくとも一つの元素を含んで構成される合金若しくは共析物、を含有する請求項3〜請求項12のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項14】
前記第1半導体膜及び第1半導体粒子が、各々独立に、ニッケルナイトライド、アナターゼ構造のチタン酸化物、酸化錫混入の酸化インジウム、酸化錫、ジルコニウム酸化物、ガリウムナイトライド、アルミニウムナイトライド、シリコン及びカーボンからなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有する請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項15】
前記第2半導体膜及び第2半導体粒子が、各々独立に、ニッケルナイトライド、アナターゼ構造のチタン酸化物、酸化錫混入の酸化インジウム、酸化錫、ジルコニウム酸化物、ガリウムナイトライド、アルミニウムナイトライド、シリコン及びカーボンからなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有する請求項3〜請求項14のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項16】
常温で不純物準位から50%以上の励起電子が発生するよう、前記化合物にn型又はp型の遷移金属、希土類金属又は非磁性金属をドープしてなる請求項14又は請求項15に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項17】
前記第1絶縁膜の同一面上に、複数列の前記第1導電路及び前記第2導電路を備える請求項2〜16のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項18】
前記複数列の第1導電路に接続する第1端子と、
前記複数列の第2導電路に接続する第2端子と、
を備え、
前記第1端子及び前記第2端子は、前記第1導電路及び前記第2導電路から離れるに従って幅が狭くなる部分を有しており、この部分において、前記第1導電路と同一方向に延伸する2辺は、互いになす角度が30°以下である請求項17に記載のキャパシタ型蓄電池。
【請求項19】
第1導電膜又は第1半導体膜からなる第1基材の少なくとも一方の面上に、複数個の導電性又は半導性の第1粒子が存在し、
前記第1粒子又は第1粒子が複数個集合した第1粒子集合体の最大幅が10μm以下であり、前記第1粒子又は前記第1粒子集合体の間の距離が30nm以上3000nm以下であるキャパシタ型蓄電池用基板。
【請求項20】
前記第1粒子集合体は、異なる大きさの粒子を含む請求項19に記載のキャパシタ型蓄電池用基板。
【請求項21】
前記第1粒子集合体は、最大幅が100nm〜5000nmの粒子に最大幅が10nm〜300nmの粒子を付着してなる請求項20に記載のキャパシタ型蓄電池用基板。
【請求項22】
第1基材の少なくとも一方の面上に、複数個の第1粒子又は第1粒子集合体を有する請求項19〜請求項21のいずれか1項に記載のキャパシタ型蓄電池用基板と、
前記キャパシタ型蓄電池用基板の少なくとも一方の面上に絶縁膜と、を有し、
前記第1粒子又は前記粒子集合体の間に隙間又は絶縁物が存在するキャパシタ型蓄電池用蓄電層。

【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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