説明

キャパシタ

【課題】各種電子機器に使用されるキャパシタに関し、自己放電現象を抑制し、電圧降下が少ないキャパシタを提供することを目的とする。
【解決手段】金属箔からなる集電体5の表面に一端を除いてカーボン系電極層6を形成した正負一対の電極2、3を互いに逆方向に位置をずらして配置し、その間にセパレータ4を介在させて対向させることにより、正負の電極2、3の各カーボン系電極層未形成部が夫々相反する方向に突出するようにしたキャパシタ素子1と、このキャパシタ素子1を駆動用電解液と共に収容した金属ケース9からなり、上記正負の電極2、3の一部に帯状の窪み部を設けた構成により、窪み部を起点に集電体5が屈曲するために過度のストレスが加わらず、自己放電現象を抑制し、充電後に外部電極端子間をオープン状態で長期間放置しても電圧降下が少なく、従来よりも高い電圧を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器やハイブリッド自動車の回生用、あるいは電力貯蔵用等に使用されるキャパシタの中で、特に、長期信頼性に優れたキャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3はこの種の従来のキャパシタの一例としての電気二重層キャパシタの構成を示した一部切り欠き斜視図であり、図3において、21はキャパシタ素子を示し、このキャパシタ素子21は正極電極22と負極電極23をその間にセパレータ24を介在させた状態で巻回することにより構成されているものである。
【0003】
また、上記正極電極22と負極電極23は、アルミニウム箔からなる集電体25の両面にカーボン系電極層26(裏面側は図示せず)を夫々形成することにより構成されたものであり、更に、この正極電極22と負極電極23には正極リード線27と負極リード線28が夫々接続されているものである。
【0004】
そして、このように構成されたキャパシタ素子21は、図示しない駆動用電解液を含浸させた後に有底円筒状の金属ケース29内に挿入され、正極リード線27と負極リード線28が挿通する孔を有したゴム製の封口部材30を金属ケース29の開口部に配設した後、金属ケース29の開口部の外周を内側に絞り加工すると共に、金属ケース29の開口端をカーリング加工することによって封止を行っているものである。
【0005】
また、上記駆動用電解液としては、主にプロピレンカーボネート(PC)を溶媒とし、テトラエチルアンモニウム塩を電解質とするものが用いられている。
【0006】
また、図4(a)、(b)は上記キャパシタ素子21を示した要部断面図であり、図4(a)は集電体25の表面全体にカーボン系電極層26を形成した正極電極22と負極電極23を同じ位置で重ね合わせて巻回したものを、図4(b)は一端にカーボン系電極層未形成部を形成した正極電極22と負極電極23を互いに逆方向に位置をずらして重ね合わせて巻回することにより、正極電極22と負極電極23の各カーボン系電極層未形成部が夫々相反する方向に突出するようにしたものを示したものである。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平9−17698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記従来のキャパシタでは、キャパシタを充電した後に外部電極端子間をオープン状態にして放置しておくと、キャパシタ固有の自己放電現象によって徐々に電圧が低下するという問題があり、このような電圧低下は一般的には全く問題にならないものではあるが、例えば、自動車のエンジンスタート用として使用する場合等においては、電圧低下によりエンジンが始動できない等、大きな問題になるという課題があった。
【0009】
そこで、このような自己放電現象による電圧低下のメカニズムを推定してみると、図5に示すような反応が正負電極間で起こっているものと考えられる。
【0010】
すなわち、負極側では充電によって電子が電極内に供給された場合、(式1)に示すように負極と駆動用電解液の界面では微量の水と酸素の存在下で電子が作用して水酸化物イオンが生成される。そして、例えば集電体の金属箔としてアルミニウムを使用している場合では、(式2)に示すようにアルミニウムと(式1)で生成した水酸化物イオンが反応し、その結果、アルミン酸が生成する。なお、このとき、水酸化アルミニウムも生成していると思われるが、負極近傍では水酸化物イオンが存在するために、液中の雰囲気がアルカリ性であることから水酸化アルミニウムではなく、主にアルミン酸として存在しているものと思われる。
【0011】
一方、正極側では充電によって(式4)に示すように正極と駆動用電解液の界面では微量の水とアルミニウム箔の存在下で水素イオンと酸化アルミニウムが生成して電子を放出する。また、溶媒中に融解しているテトラフルオロボレートアニオンは、正極の近傍に引き寄せられた水分子と反応した場合、(式5)、(式6)、(式7)に示すようにフッ酸が生成し、更にこのフッ酸は(式8)に示すようにヒドロニウムイオンとフッ素イオンの状態で存在しているものと思われる。
【0012】
このように、電極と駆動用電解液の界面では、主に上記(式1)及び(式4)の反応過程で電子の授受が発生し、これによって電極内部の電子数が増減し、電圧が徐々に低下していくものと思われる。
【0013】
このような推定を基に、従来の構成のキャパシタに種々の負荷を与えた後、製品を分解して調査したところ、主に次に示す3点の現象を確認した。
【0014】
1点目の現象として、負極のアルミニウム箔の断面露出部分において、水酸化アルミニウムの析出を確認した。これは、(式3)に示すように、負極近傍で生成したアルミン酸が負極近傍に引き寄せられた水素イオンと反応し、水酸化アルミニウムと水を生成したためと思われる。
【0015】
2点目の現象として、セパレータの負極端部と正極面の間に挟まれた部分でセパレータの表裏面にフッ化アルミニウムの存在を確認した。これは、(式9)に示すように、負極で生成したアルミン酸が正極へ泳動中にフッ酸と反応したためと思われる。
【0016】
3点目の現象として、正極のアルミニウム箔の断面露出部分において、フッ化アルミニウムの存在を確認した。これは、上記(式5)、(式6)、(式7)、(式8)の反応過程を経て正極で生成したフッ素イオンが(式10)に示すようにアルミニウムと反応したためと思われる。
【0017】
特に、上記(式9)の反応を推察させるフッ化アルミニウムの生成箇所は、セパレータの負極端部と正極面の間に挟まれた部分のセパレータの表裏面に集中している。これは、特に負極のアルミニウム箔の断面露出部分よりアルミン酸が生成して正極側へ泳動しているためであり、アルミン酸の反応起部がアルミニウム箔の断面露出部分であることを示唆しているものと思われる。
【0018】
さらに、上記キャパシタ素子21を金属ケース29内に挿入した際に、図6(a)に示すように(上記図4(a)に示したキャパシタ素子21に対応)、キャパシタ素子21の両端面に夫々突出したセパレータ24が屈曲した場合、ならびに図6(b)に示すように(上記図4(b)に示したキャパシタ素子21に対応)、キャパシタ素子21の両端面に夫々突出した集電体25ならびにセパレータ24が屈曲した場合、また、図6(c)に示すように、最悪の場合として集電体25が屈曲してカーボン系電極層26がセパレータ24に喰い込み、セパレータ24に破れが生じた場合等においては、上記セパレータ24の屈曲部分や破れ部分に電流集中が発生するために上述の反応が更に加速されるようになるという大きな課題を有していた。
【0019】
本発明はこのような従来の課題を解決し、集電体の屈曲に伴って加速される正負電極間の反応を抑制することにより自己放電現象を抑制し、充電後に外部電極端子間をオープン状態で長期間放置しても電圧降下が少なく、従来よりも高い電圧を維持することができるキャパシタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために本発明は、金属箔からなる集電体の表面に一端を除いてカーボン系電極層を形成した正負一対の電極を互いに逆方向に位置をずらして配置し、その間にセパレータを介在させて対向させることにより、正負の電極の各カーボン系電極層未形成部が夫々相反する方向に突出するように構成された素子と、この素子を駆動用電解液と共に収容した外装部材からなるキャパシタにおいて、上記正負の電極の各カーボン系電極層未形成部の一部に帯状の窪み部を設けた構成にしたものである。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明によるキャパシタは、素子の両端に夫々突出した正負の電極の各カーボン系電極層未形成部を電極引き出し部として金属ケースや端子板に接合する、いわゆる端面集電方式を行う場合に、正負の電極の各カーボン系電極層未形成部の一部に設けた帯状の窪み部が起点部となって集電体が屈曲するようになるために集電体に過剰なストレスが加わることを防ぎ、正負電極間で発生している反応が加速されることを抑制することができるようになるため、自己放電現象を抑制し、充電後に外部電極端子間をオープン状態で長期間放置しても電圧降下が少なく、従来よりも高い電圧を維持することができるという効果が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施の形態)
以下、実施の形態を用いて、本発明の特に全請求項に記載の発明について説明する。
【0023】
図1は本発明の一実施の形態によるキャパシタの一例としての電気二重層キャパシタの構成を示した一部切り欠き斜視図、図2(a)、(b)は同電気二重層キャパシタに使用されるキャパシタ素子を示した要部断面図と同キャパシタ素子の集電体を屈曲させた状態を示した要部断面図であり、図1と図2において、1はキャパシタ素子を示す。
【0024】
2は正極電極、3は負極電極であり、この正極電極2ならびに負極電極3は夫々アルミニウム箔からなる集電体5の両面に一端を除いてカーボン系電極層6を形成することにより構成されたものであり、上記一端にカーボン系電極層未形成部を形成した正極電極2と負極電極3を互いに逆方向に位置をずらして重ね合わせ、その間にセパレータ4を介在させて巻回することにより、正極電極2と負極電極3の各カーボン系電極層未形成部が夫々相反する方向に突出するようにしてキャパシタ素子1を構成したものであり、更に、正極電極2と負極電極3には正極リード線7と負極リード線8が夫々接続されている。
【0025】
また、5aは上記集電体5のカーボン系電極層未形成部の一部に設けられた帯状の窪み部であり、この窪み部5aはセパレータ4の端部より外方に設けられ、かつ、セパレータ4の端面と平行に設けられたものである。なお、この窪み部5aは連続した帯状に形成されたものであるが、不連続の帯状(点線状、鎖線状)であっても構わないものである。
【0026】
そして、このように構成されたキャパシタ素子1は、図示しない駆動用電解液を含浸させた後に有底円筒状の金属ケース9内に挿入され、正極リード線7と負極リード線8が挿通する孔を有したゴム製の封口部材10を金属ケース9の開口部に配設した後、金属ケース9の開口部の外周を内側に絞り加工すると共に、金属ケース9の開口端をカーリング加工することによって封止を行っているものである。
【0027】
このように構成された本実施の形態によるキャパシタは、キャパシタ素子1の両端に突出した正極電極2と負極電極3の各カーボン系電極層未形成部を電極引き出し部として金属ケース9や(封口部材10に代えて)端子板に接合する、いわゆる端面集電方式を行う場合に、図2(b)に示すように、正極電極2と負極電極3の各カーボン系電極層未形成部の一部に設けた帯状の窪み部5aが起点部となって集電体5が屈曲するようになるため、集電体5に過剰なストレスが加わることを防止し、正負電極間で発生している反応が加速されることを抑制することができるようになるため、自己放電現象を抑制し、充電後に外部電極端子間をオープン状態で長期間放置しても電圧降下が少なく、従来よりも高い電圧を維持することができるという格別の効果を奏するものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によるキャパシタは、自己放電現象を抑制し、充電後に外部電極端子間をオープン状態で長期間放置しても電圧降下が少なく、従来よりも高い電圧を維持することができるという効果を有し、特に自動車のエンジンスタート用等の分野として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態によるキャパシタの一例としての電気二重層キャパシタの構成を示した一部切り欠き斜視図
【図2】(a)同電気二重層キャパシタに使用されるキャパシタ素子(一端にカーボン系電極層未形成部を形成した正/負の電極を互いに逆方向に位置をずらして重ね合わせて巻回することにより、正/負の電極の各カーボン系電極層未形成部が夫々相反する方向に突出するようにしたもの)を示した要部断面図、(b)同キャパシタ素子の集電体を屈曲させた状態を示した要部断面図
【図3】従来のキャパシタの一例としての電気二重層キャパシタの構成を示した一部切り欠き斜視図
【図4】(a)同電気二重層キャパシタに使用されるキャパシタ素子(正/負の電極を同じ位置で重ね合わせて巻回したもの)を示した要部断面図、(b)同キャパシタ素子(一端にカーボン系電極層未形成部を形成した正/負の電極を互いに逆方向に位置をずらして重ね合わせて巻回することにより、正/負の電極の各カーボン系電極層未形成部が夫々相反する方向に突出するようにしたもの)を示した要部断面図
【図5】同自己放電現象による電圧低下のメカニズムを推定した模式図
【図6】(a)セパレータの屈曲状態を示した要部断面図、(b)同集電体ならびにセパレータの屈曲状態を示した要部断面図、(c)同屈曲した集電体がセパレータに喰い込んでセパレータに破れが生じた状態を示した要部断面図
【符号の説明】
【0030】
1 キャパシタ素子
2 正極電極
3 負極電極
4 セパレータ
5 集電体
5a 窪み部
6 カーボン系電極層
7 正極リード線
8 負極リード線
9 金属ケース
10 封口部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔からなる集電体の表面に一端を除いてカーボン系電極層を形成した正負一対の電極を互いに逆方向に位置をずらして配置し、その間にセパレータを介在させて対向させることにより、正負の電極の各カーボン系電極層未形成部が夫々相反する方向に突出するように構成された素子と、この素子を駆動用電解液と共に収容した外装部材からなるキャパシタにおいて、上記正負の電極の各カーボン系電極層未形成部の一部に帯状の窪み部を設けたキャパシタ。
【請求項2】
正負の電極の各カーボン系電極層未形成部の一部に設けた帯状の窪み部がセパレータの端部より外方に設けられ、かつ、セパレータの端面と平行に設けられた請求項1に記載のキャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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