説明

キャビティに充填するための投薬デバイス及び投薬方法

本発明は、粉末ホッパ(2)と、表面(3)を有するプレート(11)とを備えており、前記プレート(11)に、粒状物質を受容するよう適合させた少なくとも1つのキャビティ(5)と、該少なくとも1つのキャビティ(5)内に粒状物質を移動させるために前記表面(3)に沿って移動可能とされた充填手段(6)とが配設されており、前記充填手段(6)は前記粒状物質に対して前記表面3に向かう方向に圧縮力を作用させ、前記粒状物質が前記少なくとも1つのキャビティ(5)内に押し込まれるよう適合させた投薬デバイス(1)に関する。本発明は、投薬デバイスのプレート内に配設されたキャビティに所定量の粒状物質を充填する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末ホッパと表面を有するプレートとを備え、該プレートに、粒状物質を受容するように適合させた少なくとも1つのキャビティと、該少なくとも1つのキャビティ内へ粒状物質を移動させるために前記表面に沿って移動可能である充填手段とが設けられた投薬デバイスに関する。本発明はまた、投薬デバイスのプレートに設けられたキャビティに所定量の粒状物質を充填する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、薬剤の供給と投与は、多くの異なる方法で行われている。健康管理する上で、効率的でユーザフレンドリーな特定薬剤の投与を実現するために、投薬デバイス、例えば吸入デバイスによりユーザの肺に直接粉末の形で薬剤を施薬投与する可能性に対して、ますますの尽力が注がれている。ほとんどの場合、吸入される投薬量の調製に何らかの形式の投薬方法が用いられる。例えば、所定投薬量の薬剤を、一回の投薬量の薬剤を収容する幾つかのキャビティを有するパックにて提供することができる。続いて、一回の投薬量を充填したキャビティは、封止シート、例えばアルミニウム箔により封止される。パックは投薬デバイス内に装填され、そのデバイス内において、キャビティ上方の箔が穿通され、一回の投薬量の薬剤がユーザの吸入用に放出される。前記の封止により、薬剤は吸入前に良好に保護される。
【0003】
また、1回の投薬量の薬剤を収容するとともに箔で封止されたキャビティを有するパック内に所定投薬量の薬剤を提供するのに適した他の事例がある。所定投薬量の薬剤を収容するパックは、それぞれ粉末の薬剤を収容すべくブリスタを備えたブリスタパック又はキャビティを備えた射出成形ディスクの形をとることができ、前記パックは様々な形状を持つことができ、前記キャビティは様々なパターンで分布されることができる。正確な投薬量の薬剤を収容した異なる大きさのパックを提供するために、前記キャビティを充填する方法は、キャビティ内に正確かつ変更可能な投薬量を提供しなければならない。
【0004】
上記の両方の状況で、キャビティを薬剤で完全に充たさないことがしばしば望まれる。それ故、投薬デバイスのキャビティが、最終パックのキャビティに満たない容積を有し、所望の投薬量の薬剤で充たされ、その後に薬剤が最終パックに移される投薬方法を用いることができる。これにより、1回分の投薬量を収容するキャビティの容積よりも少量の特定の投薬量の粉末を、満足すべき精度をもって配給することが可能である。
【0005】
施薬ディスクのキャビティに一定量の粒状物質を充填する方法とデバイスが、国際公開第06/118526号に開示されている。該文献は、幾つかのチャンバを備えた底面が設けられた充填エレメントを開示しており、前記チャンバの総計は施薬ディスク内のキャビティの総計と同数である。充填エレメントは、チャンバに充填するように擦りつけるための4つの回転スクレーパの形をしたスクレーパ手段を有する。充填エレメントの使用時、粉末の薬剤は充填エレメントの表面に供給され、スクレーパ手段によりチャンバ内に掻き入れられる。充填エレメントのチャンバ内に粒状物質を充填した後、粒状物質は施薬ディスクへ移される。しかしながら、上記の解決策は、それがあらゆる形式の粒状物質に適したものでないという欠点を有する。例えば、自由流動性が制限された粒状物質は付着して塊となることがあり、そのことが異なるキャビティ間での材料の不均一な投与の一因となることがあり、すなわちキャビティの一部に所望量の薬剤が充填できなくなることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の一つの目的は、少なくとも1つのキャビティに所定量の粒状物質(粉末等)を充填し、その後に一回の投薬量を収容するキャビティの容積よりも小さく正確な投薬量の粒状物質を投与することができ、凝集性材料、すなわち自由に流動しない粒状物質を取り扱うことができ、各キャビティ内に正確な分量の粒状物質をもたらす方法およびデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、請求項1に規定した施薬デバイスにより達成される。前記投薬デバイスは、粉末ホッパと表面を有するプレートとを備え、前記プレートに、粒状物質を受容するように適合された少なくとも1つのキャビティと、該少なくとも1つのキャビティ内へ粒状物質を移動させるために前記表面に沿って移動可能な充填手段とが設けられ、該充填手段は、前記粒状物質が前記少なくとも1つのキャビティ内へ押し込まれるように前記表面に向かう方向において前記粒状物質に圧縮力を与えるようにしたものである。
【0008】
自由流動能力が制限された粒状物質は互いに付着する性向を有しており、小塊材料の一因となる。キャビティ内に物質を掻き入れるとき、先行技術のデバイスについて前記した如く、上記のような塊はキャビティやブロック内、例えばキャビティの入口開口内へ掻き入れられ、これにより、キャビティに所望量の粒状物質が充填されなくなる。本発明に係る投薬デバイスは、これに代えて、投薬デバイスのキャビティ内へ粒状物質を押し入れるものである。これは、例えば粒状物質内に形成された小塊がその上に作用する力によって分裂される利点を有する。これによって、キャビティの充填はより信頼性が高くなり、したがって各キャビティ内の薬物の正確な投薬量が保証される。しかしながら、本発明に係るデバイスは、材料内に小塊が形成されてしまったときにおける粒状物質の包装にとって便利であるというだけではない。それは、その中に小塊が全く形成されていなかったときも自由流動性を制限された材料の正確な包装をもたらす。さらにまた、本発明に係る装置は自由流動粒状物質を包装するのにも適するものである。本発明に係る装置によれば、ほぼ5mgの粒状物質の供与量がたった3%の相対標準偏差をもって包装できることが、実験により示されている。
【0009】
本発明に係る投薬装置内のキャビティは、好適には薬剤投与器のパターンに対応するように、任意の所望形状に構成され得る。
【0010】
好適には、投薬デバイスのキャビティは、最終パック内の一回分の投薬量を収容するキャビティの容積に比べて、小さな容積を有する。粒状物質は投薬デバイスのキャビティ内へ押し込まれるため、非常に正確な投薬が達成される。これ故、その後に粒状物質を最終パック内のキャビティへ移すと、たとえ最終収容時のキャビティが大きな容積を有する場合でも非常に正確な投薬がもたらされる。
【0011】
さらにまた、前記装置は、キャビティの粒状物質の簡単な充填を低コストで提供する。好適には、投薬デバイスのキャビティは、前記キャビティ内の投薬対象の投薬量に適合するよう交換可能とする。
【0012】
充填することのできる材料は、0.5〜1000μmの範囲の粒度を有する有機物質の粉を含む。例えば、1〜50μmの範囲の粒子寸法のラクトース一水和物からなる粉末が、本発明に係る方法により首尾よく充填される。本願明細書において、粒子寸法とは、例えばレーザ回折法により計測される質量中央径、すなわちMMD(mass median diameter)を意味する。
【0013】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、投薬デバイスはさらにスクレーパ手段を備えており、該スクレーパ手段はプレートの前記表面に沿って移動可能である。
【0014】
充填手段を投薬装置内のプレートの表面に沿って移動させ、プレートに向かう方向に粒状物質に対して力を作用させると、隣接するキャビティ間に位置するプレート表面に粒状物質の一部を圧迫することができる。それ故、表面に沿って移動可能な構造を有するとともに圧迫された物質をほぐすことのできるスクレーパ手段を有することが好ましい。好適には、スクレーパ手段はプレートの表面に保留された粒状物質を効率的に掻き上げるように設計された構造を有する。その後、削ぎ取られた粒状物質は、充填手段によりキャビティ内に移動させて押し込むか、あるいは別の投薬デバイス内に移して再利用することができる。別の選択肢として、削ぎ取られた粒状物質を除去し、同じ投薬デバイスにおいて後で再利用することができる。スクレーパ手段は、キャビティの上方、すなわちキャビティ内に押し込まれた材料の上で圧迫された材料をほぐすこともできる。しかしながら、スクレーパ手段を表面に沿って移動可能に配設することで、スクレーパ手段がキャビティ内に押し込まれた材料を削ぎ取ったり除去したりはしない。これ故、スクレーパ手段は投薬精度に負の影響を及ぼさない。
【0015】
前記充填手段がプレートの表面に垂直な方向にも移動できるようにした場合、有利となる。この理由は、充填手段が、より圧迫された粒状物質、例えば小塊と接触したときに前記表面から僅かに離間するように移動され、その後に前記表面に向かって移動され、これにより、該方向において粒状物質に力を作用させることができるからである。これによって、充填手段は塊を分割し、粒状物質をキャビティ内に詰め込むように機能する。
【0016】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、前記充填手段は前記表面に向かって付勢される。充填手段が粒状物質に対してプレートに向かう方向に力を作用できるようにするため、該充填手段をプレートに向けて付勢することが好ましい。このことは、例えばプレートに対してばね負荷した充填手段により達成することができる。この機構により、前記した如く例えば塊上を「登る」ことができるよう、充填手段は前記表面から僅かに離間するように移動可能とすることができるが、それと同時にプレートに向かう方向に戻って粒状物質を押し込もうとする。
【0017】
好適には、前記スクレーパ手段は前記表面に向かって付勢する。スクレーパ手段の目的は、表面に沿って移動可能であることと、圧迫された材料をほぐすことができることとである。それ故、前記表面に向かって付勢して、表面に沿った移動中に表面と密接する関係に維持するようにした場合、有利である。
【0018】
好適には、前記充填手段は、前記スクレーパ手段を前記表面に向かって付勢する力を下回る力でもって前記表面に向け付勢される。このことは、スクレーパ手段は表面に対し密接した関係で追従しなければならず、かつ充填手段が前記表面に略垂直な方向に前記表面から僅かに離間するように移動できるようにしなければならないため、有益である。しかしながら、表面から遠ざけたときに、充填手段は表面との密接関係へ戻るようにさせねばならない。
【0019】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、前記表面は円形形状を有し、幾つかのキャビティが配設され、該キャビティは、前記表面の周縁部に環状に配置される。好適には、前記充填手段および前記スクレーパ手段は共通のボスに設けられる。好適には、前記共通のボスはキャビティの前記環状部の中心に配置される。
【0020】
幾つかのキャビティが配設されていて、その上に前記充填手段とスクレーパ手段とを配置する中心配置ボスを有する円形プレートは、投薬デバイスにとって有益な設計となることが証明済みである。円形ボスと、充填およびスクレーパ手段とは、時計回りと反時計回りの両方に回転するよう配置することができる。たとえ充填手段が粒状物質を表面に向けて圧迫しても、スクレーパ手段が粒状物質をほぐすとともに、前記表面に沿って粒状物質を移動させる。円形プレートを配設することで、粒状物質はプレートの一端で留まるとなることなく、プレートの前記表面でぐるりと移動させることができる。さらに、粒状物質を表面に沿って両方向に移動させるすべく、ボスを時計回りと反時計回りに交互に回転させることも可能である。これにより、表面に対する粒状物質の均一な配給を提供維持することが可能である。このことは、各キャビティ内の粒状物質の均一な配分が得られる点で有益である。
【0021】
しかしながら、他の代替設計、例えば長方形プレートもまた想起可能である。
【0022】
少なくとも1つの例示の実施形態によれば、前記充填手段は少なくとも1つのホイールで構成され、該ホイールは前記表面上で回転させることができる。それによって、粒状物質をキャビティ内へ押し込む際の効率的な方法が達成される。プレートの前記表面上でホイールを回転させ、粒状物質をキャビティ内へ押し込むように適合させることができる。この構成では、ホイールは、粒状物質を圧迫するためにキャビティ内に入り込む必要はなく、それゆえ、粒状物質を特定のキャビティ内へ押し込むホイールの一部は、キャビティよりも大きな寸法を有してもよい。充填手段とキャビティの厳密な合致が一切不要となるため、このことは製造公差の点で有利である。さらにまた、異なる寸法のキャビティを充填するのに1つの寸法のホイールを用いることができる。
【0023】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、投薬デバイスは共通のボスに配置する2つのホイールと2つのスクレーパとを有する充填機構を備える。ホイールとスクレーパは、好適には共通のボスの周りに配置され、したがって、各ホイールの後方にスクレーパが配設される。このことは、第1のホイールが粒状物質を圧迫する場合に、第2のホイールが粒状物質のその部分に到達する前にスクレーパがそれをほぐすことになるため、有益である。
【0024】
さらに、本発明によれば、投薬デバイスのプレートに配設されたキャビティに所定量の粒状物質を充填する方法が提示され、該方法は、粒状物質を粉末ホッパへ供給する工程と、充填手段を前記プレートの表面に沿って移動させ、該充填手段が前記表面に沿って移動するのと同時に前記粒状物質に対して前記プレートに向かう方向に圧縮力を作用させる工程とを含む。
【0025】
前記した如く、自由流動能力が制限された粒状物質は互いに付着する性向を有しており、粉末の薬剤内の塊の一因となる。上記の方法を用いることで、粒状物質は投薬デバイスのキャビティ内に押し込まれることになる。これは、例えば粒状物質内に形成された塊がその上に作用させた力により分割されることになる利点を有する。これにより、キャビティの充填はより信頼の置けるものとなり、したがって各キャビティ内の薬剤の正確な投薬量が保証される。しかしながら、本発明に係る方法は、小塊が材料内に形成されているときに粒状物質を包装するのに有益なだけではない。前記方法は、材料の中に塊が一切形成されていないときにも、自由流動性が制限された材料の正確な包装をもたらす。さらに、本発明に係る方法は自由流動粒状物質の包装にも適したものである。
【0026】
好適には、投薬デバイスのキャビティは、最終パックにおいて所定投薬量を収容するキャビティの容積よりも小さな容積を有する。粒状物質は投薬デバイスのキャビティ内に押し込まれるため、極めて正確な投薬が達成される。したがって、その後に粒状物質を最終パック内のキャビティに移すと、たとえ最終的なハウジングにおけるキャビティがより大きな容積を有する場合でも、それは依然として非常に正確な投薬量を有する。本発明に係る方法によれば、ほぼ5mgの粒状物質の投薬量がたった3%の相対標準偏差をもって包装できることは実験により示されている。本方法はキャビティの粒状物質の単純な充填を低コストでもたらす。好適には、投薬デバイスのキャビティは前記キャビティ内に投与する投薬量の大きさに適合するように交換可能とする。本発明に係る方法により取り扱われる粒状物質は、例えば純粋な形の粉末の薬剤とするか、あるいは粉末状の適当な賦形剤を混合することができる。
【0027】
例えば、喘息治療に用いる微粉状にされた薬剤の混合物、例えばブデソニドやジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)やラクトース一水和物の賦形剤が、本発明に係る方法を用いて首尾よく充填されている。
【0028】
少なくとも1つの実施形態によれば、本方法はさらにスクレーパ手段により前記表面上の圧迫された粒状物質をほぐす工程を含むものである。
【0029】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、前記粒状物質はドライパウダー吸入器内で使用する医薬品粉末で構成される。
【0030】
上記の発明方法が、これら実施形態や特徴が方法に整合する限り、前述の本発明投薬デバイスに関連して説明したあらゆる実施形態とあらゆる特徴を包含し、それらをもって実施できることを理解されたい。
【0031】
本発明を、ここで実施形態を介しかつ同封図面を参照し、例示目的に合わせより詳細に説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る投薬デバイスの一実施形態と、充填手段およびスクレーパ手段の一実施形態の概略斜視図である。
【図2】本発明に係る投薬デバイスの一実施形態と、充填手段およびスクレーパ手段の一実施形態の概略断面図である。
【図3】図3a〜図3cは、投薬および注入方法の主工程を示す孔構造体を開示する一部概略側断面図である。
【図4】別のキャビティ構造の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1と図2は、粉末薬剤(図示せず)等の粒状物質を収容する粉末ホッパ2を配設した投薬デバイス1を示すものである。粉末ホッパは漏斗状の内部を有しており、その傾斜面12は粉末の薬剤(図示せず)を表面3を有するプレート11へ向かって案内するよう意図されており、この表面3は粉末ホッパ2の底部を形成するものとして見てとることができる。表面3は、プレート11内に延在するキャビティ5を有する孔構造体4として形成される。本実施形態では、キャビティはプレート11の周縁部に環状に分散させてある。キャビティ5の環状部の中央部分には、充填機構13が回転可能に配置してある。
【0034】
充填機構13は2つの充填手段を備えており、この手段はこの例示実施形態では2つのホイール6と2つのスクレーパ14である。ホイール6とスクレーパ14が、共通のボス15に設けられている。駆動軸16がボス15に接続してあり、ボス15と、ホイール6及びスクレーパ14とが回転できるようにしてある。図1から見てとれる如く、ホイール6とスクレーパ14はボスの周りに均一に、すなわちほぼ90°の間隔で均等に分散させてあり、各ホイール6にスクレーパ14が追従する。スクレーパ14の構造は、表面3上の圧迫された粒状物質を掻き上げるように設計されている。例えば、スクレーパ14の移動方向に見て、スクレーパの前面あるいは先端面はその最前方位置部分をプレート面3に実質当接させることができる。本願明細書では、スクレーパ14は傾斜面を有するとともに例えば矩形断面を有するものとして図示してある。これにより、圧迫された粒状物質を時計回りと反時計回りの両方に移動するように掻き上げられるようになる。
【0035】
ボス15は、プレート11とスクレーパ14とに向かって軸方向にばね荷重を受けており、スクレーパ14は、ボス15に対し固定的に配置され、これ故にプレート11に向かってばね荷重を受ける。図示の実施形態では、駆動軸16に対しばね9が配設してあり、ボスを表面3に向かって付勢すべく外部筺体(図示せず)に接続することができる。ばね荷重は、2つのスクレーパ14とプレート11の表面3との間の力を決定する。スクレーパ14を表面3に密接させて配置することは有益であり、その理由を下記により詳しく説明する。
【0036】
各ホイール6は、ボス15に対し軸方向に、すなわちプレート11の表面3に近接離間する方向に独立して移動可能としてある。各ホイールはまた表面3に向かって独立してばね荷重を受けているが、そのばね荷重は表面3に向かうボス15にかかるばね荷重よりは低いものである。この理由は、ホイール6が例えば小塊等の付着および/または圧迫された粒状物質の一部に遭遇したときに、これらを表面3から僅かに離間する方向に移動させられるようにすることにある。ホイール6はばね荷重のお陰で圧迫された材料の塊上に登り、塊に対してプレート11に向かう方向に力を作用させ、したがって塊を崩すことができる。各ホイールを表面に向かって付勢するばねあるいは他の手段を、ボス15と各ホイール6の間の接続体内に配設することができる。図3aには、軸10が図示してあり、その周囲をホイール6が回転可能である。軸10は、ホイール6を表面3に向け付勢し、同時に図3a中の矢印Dにより示すように、表面3に対し略垂直な方向にホイール6のしかるべき動きを可能にするよう構成してある。
【0037】
ボス15とホイール6とに対するばね荷重は、各キャビティ内の粒状物質の正確な投与が達成されるよう調整することができる。
【0038】
ホイール6は、例えばシリコーンで出来ているか、あるいはシリコーンの表面を有する。この理由は、粒状物質がホイールに付着するのを排除することにある。しかしながら、粒状物質がそこに付着しない限り、シリコーン以外の他の材料もまた使用することができる。ここで、投薬デバイスを使用する際の説明をすることにする。先ず、粒状物質をホッパ2に供給する。好適には、粒状物質は、表面3からホイール6のほぼ中心まで延在し、それによってスクレーパ14を覆うような量にて供給される。充填機構13、すなわちボス15とホイール6とスクレーパ14はその後、駆動軸16により回転させられ、ホイール6を表面3上で回転させるようにする。ボス15を表面3に向かって付勢するばね荷重のお陰で、スクレーパ14は表面3に密接した関係で追従する。ホイール6とスクレーパ14は、それぞれ充填機構13の回転中に1つずつキャビティ5を通過する。ホイール6が回転すると、それらは粒状物質に対して圧縮力を作用させ、それらがキャビティ5を通過すると、それらは粒状物質をキャビティ内へ押し付ける。このことは図3aに示されており、ここでは矢印Aが表面3に対するホイール6の動きを示し、矢印Bがホイール6の回転方向を示し、矢印Cが粒状物質21が孔構造体4のキャビティ5内に導入される仕方を示す。ホイール6の回転のお陰で、ホイールの異なる部分が粒状物質をキャビティ5内へ押圧することになる。
【0039】
ホイールが通過した後、圧迫された粒状物質層が各キャビティ5間の表面3上に保留される。スクレーパ14が圧迫された保留粒状物質を通過すると、スクレーパ14はこれを掻き上げ、したがって持ち上げられた粒状物質が再利用できるようになる。
【0040】
キャビティ5が所望量の粒状物質で充填されるようにするため、充填機構13を1回転もしくは数回転回転させる。駆動軸16は、充填機構13が時計回りと反時計回りに回転できるよう配置することもできる。これにより、充填機構はキャビティを均一な量の粒状物質で充填すべくこれら2つの方向の間で交互に回転させることができる。全てのキャビティ5が所望の量で充填されると、過剰な粒状物質はそのシステム内での使用に向け別の投薬デバイスへ移動させるか、あるいは貯蔵システムへ戻すことができる。
【0041】
投薬デバイス1のキャビティが所望量の粒状物質で充填されると、粒状物質は施薬ディスクへ移され、吸入デバイス等の投薬デバイス内で使用される。粒状物質を投薬デバイス1から施薬ディスクへ移すのに、幾つかの方法とデバイスを使用することができる。
【0042】
本発明に関連して使用することのできる一つのこの種の方法とデバイスが、噴射手段である。キャビティ5は、矩形底部をもって形成することができる。キャビティが所望量の粒状物質で充填されると、各キャビティの底部は取り除かれ、噴射手段をキャビティ内に挿入し、材料をキャビティから押し出し、薬剤投与器の最終パックに入れることができる。
【0043】
本発明と併せ使用することのできる別のこの種の方法とデバイスが、ASTRA ZENECA AB名義の係属特許出願である国際公開第2006/118526号に開示されている。この方法にあっては、投薬デバイス1のプレート11は施薬ディスクの頂部に位置しており、キャビティ5は施薬ディスク内の対応するキャビティに対向配置され、これにより、粒状物質はプレート11のキャビティ5から施薬ディスクのキャビティへ移されることができる。投薬デバイスに振動手段あるいは超音波エレメントを配設し、施薬デバイスの対応するキャビティ内にキャビティを空にする制御を可能にすることができる。
【0044】
投薬デバイス1から施薬ディスクへ所定量の粒状物質を移すさらに別の方法とデバイスが、ASTRA ZENECA AB名義の米国仮特許出願第60/957822号に開示されている。本出願では、可動壁部を備えた孔を有するプレートが開示されている。本方法とデバイスは、本発明と組み合わせて使用するのに適したものにでき、図3a〜図3cを参照してさらに説明することにする。図面3aには、孔構造体4の1つのキャビティ5の断面が概略示してある。前記キャビティ5の壁構造体は、相互に移動させることのできる複数の可動壁部22を備える。投薬デバイス1のキャビティ5は、本実施形態では孔で出来ており、閉鎖機構8により閉鎖することができる。好適には、閉鎖機構8は、該閉鎖機構側における孔5からの出入りを遮断するように第1の位置に配置可能なプレートとして形成される。したがって、閉鎖機構8は、第1の位置にあるときに孔5の底部を形成するようにしてある。
【0045】
孔5の閉塞は、図3aに開示する如く孔5の充填中になされる。十分な量の粉末21を孔5内に導入すると、該孔5を閉じることができる。この目的に合わせ、投薬システム3は蓋機構7を備える。蓋機構7は、開口を有し、第1の位置において孔構造体4の孔5に位置合わせされて配置可能である。蓋機構の開口の第1の位置は、粉末供給手順における最初の工程を示す図3aに開示されている。この工程中、粉末は前述した仕方にて孔5内に導入可能である。
【0046】
ここで、図3bに続けるに、投薬操作の中間状態が開示されている。前記中間状態にあっては、蓋機構7は閉鎖状態にて配設され、閉鎖機構8も同様である。互いに堆積したプレートの可動壁部分が、蓋機構7及び閉鎖機構8と共に、閉じられた容積を画成する。図3bの断面から即理解されるように、孔5はこの中間操作状態において粒状物質21でもって完全に充填されることになる。
【0047】
図3cをさらに参照するが、ここには孔5を空にする作業が示されている。前記孔5のいずれかの底部を形成するよう適合させた孔閉鎖機構部分の側路には、孔5の開口と概ね同じ寸法の開口が存在する。第2の位置にあっては、孔閉鎖機構8の開口は側面から見て孔5に位置合わせされた状態に配置される。孔閉鎖機構8の開口が孔5のその対応する位置にあるときに、前記孔5から粉末を放出することができる。好適には、孔5の任意の一つから粉末を排出しているとき、蓋機構7は孔5の開放を阻止すべくオフセット位置に配置可能である。これは、一旦計量された投与量が達成されると、追加の粉末が孔5に進入するのを防止すべく行われ、したがって、正規の投与量の粉末のシステムへのさらなる給送が確実になる。粉末量の正規の給送をさらに改善すべく、問題とする孔/孔群の壁部分22をお互いに移動させる。壁部分22の相対的な動きは、粉末の低留保をもって信頼すべき空にする効果と正確なさらなる粉末投与を可能にすることが証明済みである。
【0048】
好適には、例示実施形態内の壁部分の相対的な動きは、孔構造体4を構成するプレートの動きにより達成される。孔5を囲む構造の壁22は、結果的に孔5用の壁構造体を構成する。前記孔構造体を形成するプレートは、問題とする孔の主伝搬方向に対し略垂直な方向に前後に摺動可能とすることができ、この主伝搬方向は粉末のための意図された経路に略一致する。各孔22の動きは、整列された始点位置と停止位置を基準に孔5の直径の±2%〜±50%の間の範囲が好適であるが、排他的ではない。好適には、プレートの動きは孔の直径の±5%〜±25%、例えば孔5の直径の±7%〜±15%とする。孔5の直径に言及するに、孔5を異ならしめて形成できることを提示しておく。これ故、本出願に従う直径は、それが正方形であったり、あるいはその辺の間に異なる距離を有する別の形状であったりしようと、広義には問題とする孔を横断する最長距離を表わすものとして解釈すべきである。
【0049】
投薬デバイス1は、例示実施形態に関連して説明してきた。しかしながら、添付の特許請求の範囲に規定された本発明範囲内で幾つかの修正と適合とが可能である。
【0050】
例えば、プレート11は円形とする必要はない。図4は、プレート11’の1本の直線に沿って配置したキャビティ5を有する矩形のプレート11’を有する一実施形態を示す。本実施形態では、ホイール6とスクレーパ14は回転ボスではなく直線的に移動する手段に配設することができる。ホイールとスクレーパはその後、円形プレートについて前記したのと同じ仕方でキャビティ5を粒状物質で充填すべく、表面3’上を前後に移動させることができる。この矩形の実施形態では、スクレーパ手段14をプレート11’の表面3’から僅かに遠ざけることが好適であろう。この理由は、使用中の充填手段とスクレーパがプレートの表面に沿って粒状物質を移動できることにある。一部の材料は、それ故に充填工程中にプレートの端部に位置決めされるようになる。それ故、プレートからその上に配設された粒状物質の上方にスクレーパ手段を持ち上げ、このスクレーパ手段をプレートの外端に位置決めできることは、有益である。プレートの外端に配置された粒状物質を、その後プレートの他端に向かって移動させ、キャビティ内に充填することができる。
【0051】
他の可能な改変は、ホイールとスクレーパを共通のボスあるいはハブに配設する必要をなくすことにある。その代りに、スクレーパとホイールの動きは、ホイールとスクレーパを所望の相互関係にて移動するよう制御される異なる手段により提供することができる。
【0052】
さらに、充填手段は、粒状物質を回転運動によりキャビティ5内に詰め込む表面3上で回転するホイールとして説明してきた。しかしながら、例えばマットや類似の非回転手段等の略平坦面として充填手段を提供することもまた可能である。この非回転手段は、非回転手段が表面3に沿って移動するときに粒状物質に対して圧縮力を作用させるよう、プレート11の表面3に向かってばね荷重を及ぼすことができる。ホイールについては、平坦面を有する手段は、粒状物質がそこに付着するのを防止すべくシリコーンで作成するか、あるいはシリコーン面を持たせることができる。略平坦面を有する充填手段は、円形プレート11や、もしくは矩形プレート11’等の他の任意の形状のプレートの両方に用いることができる。さらに、充填機構13は、開示実施形態では2つの充填手段、すなわち例示実施形態においてホイール6と2つのスクレーパ14を備えるものとして説明してきた。しかしながら、他の数の充填手段およびスクレーパ、例えば1つの充填手段と1つのスクレーパもまた想起しうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末ホッパ(2)と、表面(3)を有するプレート(11)とを備えた投薬デバイス(1)であって、
前記プレート(11)に、粒状物質を受容するように適合させた少なくとも1つのキャビティ(5)と、該少なくとも1つのキャビティ(5)内へ粒状物質を移動させるために前記表面(3)に沿って移動可能な充填手段(6)とが設けられ、
該充填手段(6)は、前記粒状物質が前記少なくとも1つのキャビティ(5)内へ押し込まれるように前記表面に向かう方向において前記粒状物質に圧縮力を与えるようにしたものである投薬デバイス。
【請求項2】
スクレーパ手段(14)をさらに備え、
該スクレーパ手段(14)は前記表面(3)に沿って移動可能である請求項1に記載の投薬デバイス。
【請求項3】
前記充填手段(6)は、前記表面(3)に対して略垂直な方向にも移動可能である請求項1または2に記載の投薬デバイス。
【請求項4】
前記充填手段(6)は、前記表面(3)に向けて付勢されている請求項1から3のいずれか1項に記載の投薬デバイス。
【請求項5】
前記スクレーパ手段(14)は、前記表面(3)に向けて付勢されている請求項2から4のいずれか1項に記載の投薬デバイス。
【請求項6】
前記充填手段(6)は、前記スクレーパ手段(14)よりも小さな力で前記表面(3)に向けて付勢されている請求項4または5に記載の投薬デバイス。
【請求項7】
前記表面(3)は、円形形状を有し、且つ、幾つかのキャビティ(5)を備え、
該キャビティ(5)は、前記表面(3)の周縁部に環状に配置されている請求項1から6のいずれか1項に記載の投薬デバイス。
【請求項8】
前記充填手段(6)と前記スクレーパ手段(14)とは、共通のボス(15)に設けられている請求項2から7のいずれか1項に記載の投薬デバイス。
【請求項9】
前記共通のボス(15)は、キャビティ(5)の前記環状部の中心に配置されている請求項7に組み合わされた請求項8に記載の投薬デバイス。
【請求項10】
前記充填手段(6)は少なくとも1つのホイールで構成され、
該ホイールは前記表面(3)上で回転可能である請求項1から9のいずれか1項に記載の投薬デバイス。
【請求項11】
共通のボス(15)に配設された2つのホイール(6)と2つのスクレーパ(14)とを有する充填機構(13)を備えた請求項1から10のいずれか1項に記載の投薬デバイス。
【請求項12】
投薬デバイス(1)のプレート(11)に設けられたキャビティ(5)に所定量の粒状物質を充填する方法であって、
粉末ホッパ(2)に粒状物質を供給する工程と、
充填手段(6)が前記粒状物質に対して前記プレート(11)に向かう方向に圧縮力を与えるように該プレート(11)の表面(3)に沿って前記充填手段(6)を移動させる工程と、を含む方法。
【請求項13】
前記表面(3)上の圧迫された粒状物質をスクレーパ手段(14)によりほぐす工程をさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記粒状物質は、ドライパウダー吸入器に使用される医薬品粉末を含む請求項12または13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−530463(P2011−530463A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522939(P2011−522939)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050933
【国際公開番号】WO2010/019102
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】