説明

キャリッジ、キャリッジ装置、記録装置

【課題】 キャリッジの首振り現象を抑制しつつキャリッジの駆動モータの消費電力を低減させる。
【解決手段】 記録ヘッド62へインクを供給するインクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kは、インクカートリッジホルダ66に装着される。インクカートリッジホルダ66は、複数のばね67によってキャリッジ61の内部に吊設されている。キャリッジガイド軸56は、軸受部69の第1支持面691及び第2支持面692に外周面が当接した状態で、押圧部材68によって第1支持面691及び第2支持面692に押圧される。押圧部材68は、一端側に設けられた押圧板681がキャリッジガイド軸56の外周面と係合し、他端側に設けられた斜面682がインクカートリッジホルダ66の斜面661と面接触して係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリッジと、キャリッジの被支持部に摺接してキャリッジを所定の往復動方向へ往復動可能に支持する支持部材と、キャリッジを往復動させる駆動装置と、を備えたキャリッジ装置、該キャリッジ装置を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の往復動方向へ往復動可能に支持部材に支持され、駆動装置により往復動されるキャリッジを備えた記録装置の一例としては、例えば、記録ヘッド及びインクカートリッジを搭載したキャリッジを所定の走査方向へ往復動させながら被記録材への記録を実行するインクジェットプリンタ等が公知である。このような記録装置においては、駆動装置でキャリッジを往復動させる際に生ずるキャリッジの首振り現象が記録精度を低下させる要因となることがある。
【0003】
この首振り現象は、駆動装置によりキャリッジの移動方向の駆動力がベルト伝達機構等を介してキャリッジに作用すると、その駆動力によってキャリッジの重心点を回転中心とする回転力がキャリッジに作用し、キャリッジと支持部材との間のがたつきの範囲内でキャリッジの姿勢が傾いた状態となる現象である。この首振り現象によって、例えば上記のインクジェットプリンタ等の記録装置においては、キャリッジが往路方向へ移動するときと復路方向へ移動するときとで逆方向へ傾くため、往路方向への移動時と復路方向への移動時とで被記録材に対する記録ヘッドの姿勢が異なってしまうことになる。そのため、キャリッジが往路方向へ移動するときに形成されたドットの位置と、復路方向へ移動するときに形成されたドットの位置とに相対的なずれが生じてしまい、その結果、記録画質が低下してしまうことになる。
【0004】
このような首振り現象を低減させることが可能な従来技術の一例としては、例えば、キャリッジを支持部材に一定の押圧荷重で押圧する手段を設けた記録装置が公知である。この従来技術によれば、キャリッジを支持部材に押圧する一定の押圧荷重によって、キャリッジに作用する回転力に対抗してキャリッジの姿勢が傾くことを抑制することができるので、前記の首振り現象を低減させることができる(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2007−190680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、キャリッジに搭載したインクカートリッジのインク残量の変動等によって、キャリッジの重量が変動すると、キャリッジの重心回りの慣性モーメントも変動する。つまり、キャリッジの重量が変動すると、首振り現象を抑制するために必要な押圧荷重も変動することになる。そのため、キャリッジの重心回りの慣性モーメントは、例えばインクジェットプリンタにおいては、インクカートリッジのインクが満タンでキャリッジが最も重い状態で最大になり、首振り現象を抑制するために必要な押圧荷重は最も大きくなる。
【0006】
したがって、キャリッジを支持部材に押圧する荷重が一定である従来技術においては、押圧荷重が固定的であることから、キャリッジが最も重い状態において首振り現象を抑制可能な大きさの押圧荷重で、キャリッジを支持部材に押圧する必要があった。そのため、インクカートリッジのインクが消費されてキャリッジが比較的軽い状態においては、必要以上の押圧荷重でキャリッジが支持部材に押圧された状態となっていた。
【0007】
また、キャリッジを支持部材に押圧した状態で支持することによって、前記の首振り現象を抑制することはできるが、その反面、その押圧荷重によってキャリッジの摺動抵抗が増加して動負荷が増加してしまうことになる。つまり、支持部材に対するキャリッジの押圧荷重を大きくしていくと、キャリッジの駆動装置を構成する駆動モータ等に作用する負荷もそれに比例して増大してしまうことになる。
【0008】
このようなことから、キャリッジを支持部材に一定の押圧荷重で押圧する従来技術においては、首振り現象を抑制することはできるものの、押圧荷重が固定的であることから、キャリッジの駆動モータの消費電力が増大し、記録装置等の消費電力が大幅に増加してしまうという課題があった。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、キャリッジの首振り現象を抑制しつつキャリッジの駆動モータの消費電力を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、所定の往復動方向へ往復動可能に支持部材に支持され、駆動装置により往復動されるキャリッジであって、被記録材の記録面に記録材料でドットを形成する記録ヘッドと、自重の変動に応じて変位可能に前記キャリッジに支持され、前記記録ヘッドへ記録材料を供給する記録材料収容部と、前記支持部材に摺接する被支持部と、前記支持部材を前記被支持部に押圧する押圧部材とを備え、前記押圧部材は、前記記録材料収容部が変位することによって前記支持部材を前記被支持部に押圧する荷重が変動する方向へ変位するように前記記録材料収容部と係合している、ことを特徴としたキャリッジである。
【0011】
このように、支持部材をキャリッジの被支持部に押圧する押圧部材をキャリッジに設けることによって、押圧部材による押圧荷重でキャリッジに作用する回転力に対抗してキャリッジの姿勢が傾くことを抑制することができるので、前記の首振り現象を低減させることができる。
【0012】
また、キャリッジの重量が変動すると、キャリッジの重心回りの慣性モーメントも変動するため、この首振り現象を抑制するために必要な押圧荷重も変動するが、本発明の第1の態様に記載のキャリッジは、キャリッジの重量の変動に応じて押圧部材による押圧荷重が変動する。より具体的には、記録材料収容部が自重の変動に応じて変位することによって、その記録材料収容部と係合している押圧部材は、支持部材を被支持部に押圧する荷重が変動する方向へ変位する。例えば、記録材料収容部の記録材料が消費されて減少すれば、キャリッジ全体の重量が減少し、それに応じて押圧部材による押圧荷重は小さくなる。また、記録材料収容部を新品に交換すれば、キャリッジ全体の重量が増加し、それに応じて押圧部材による押圧荷重は大きくなる。
【0013】
すなわち、本発明の第1の態様に記載のキャリッジは、首振り現象を抑制するために必要な押圧荷重をキャリッジ重心回りの慣性モーメントの変動に応じて変動させて適切な荷重に設定することができる。したがって、必要以上の押圧荷重でキャリッジが支持部材に押圧された状態となることを未然に防止することができるので、支持部材をキャリッジの被支持部に押圧することに伴う動負荷の増加を最小限に止めることができる。
【0014】
これにより、本発明の第1の態様に記載のキャリッジによれば、被記録材の記録面に記録材料でドットを形成する記録ヘッドと、記録ヘッドへ記録材料を供給する記録材料収容部とを備えたキャリッジにおいて、キャリッジの首振り現象を抑制しつつキャリッジの駆動モータの消費電力を低減させることができるという作用効果が得られる。
【0015】
本発明の第2の態様は、前述した第1の態様に記載のキャリッジと、前記キャリッジの被支持部に摺接して前記キャリッジを所定の往復動方向へ往復動可能に支持する支持部材と、前記キャリッジを往復動させる駆動装置と、を備えた記録装置である。
本発明の第2の態様に記載の記録装置によれば、キャリッジと、キャリッジの被支持部に摺接してキャリッジを所定の往復動方向へ往復動可能に支持する支持部材と、キャリッジを往復動させる駆動装置とを備えた記録装置において、前述した本発明の第1の態様に記載の発明による作用効果を得ることができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、前述した第2の態様に記載の記録装置において、前記支持部材から前記押圧部材を離間させる方向の力が作用するように前記キャリッジを変位させるキャリッジ変位機構を備えている、ことを特徴とした記録装置である。
【0017】
前記のように、支持部材を被支持部に押圧する押圧部材は、記録材料収容部が変位することによって支持部材を被支持部に押圧する荷重が変動する方向へ変位するように記録材料収容部と係合している。それによって、押圧部材は、支持部材と記録材料収容部との間に挟持された状態となるため、接触面における摩擦抵抗等で支持部材と記録材料収容部との間に引っ掛かったような状態になってしまう虞がある。そうなってしまうと、記録材料収容部の重量が減少しても、その重量の減少に応じて記録材料収容部が変位できない状態となり、押圧部材による押圧荷重が過荷重となってしまう虞が生ずる。
【0018】
本発明の第3の態様に記載の記録装置は、支持部材から押圧部材を離間させる方向の力が作用するようにキャリッジを変位させるキャリッジ変位機構を備えている。このキャリッジ変位機構でキャリッジを変位させて支持部材から押圧部材を離間させる方向の力を一時的に作用させることによって、支持部材と記録材料収容部とによる押圧部材の挟持力を一時的に減少させて、前記の引っ掛かり状態を解消することができる。したがって、キャリッジ変位機構でキャリッジを適宜変位させることによって、前記の引っ掛かり状態を適宜解消することができるので、前記の引っ掛かり状態に起因して押圧部材による押圧荷重が過荷重となってしまう虞を低減させることができるという作用効果が得られる。
【0019】
本発明の第4の態様は、前述した第3の態様に記載の記録装置において、前記記録ヘッドのヘッド面を封止する封止部材と、前記封止部材を変位させる封止部材変位機構とを有し、記録を実行しないときに前記記録ヘッドの保守を行う記録ヘッド保守装置を備え、前記封止部材変位機構が前記キャリッジ変位機構を兼ねている、ことを特徴とした記録装置である。
このように、記録ヘッド保守装置の封止部材変位機構をキャリッジ変位機構として利用することによって、キャリッジ変位機構を別個に設ける必要がなくなるので、前述した第3の態様に記載の記録装置をより低コストに実現することができるという作用効果が得られる。
【0020】
本発明の第5の態様は、キャリッジと、前記キャリッジの被支持部に摺接して前記キャリッジを所定の往復動方向へ往復動可能に支持する支持部材と、前記キャリッジを往復動させる駆動装置と、前記支持部材を前記被支持部に押圧する押圧装置と、前記駆動装置及び前記押圧装置を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記キャリッジの重量の変動に応じて前記押圧装置の押圧荷重を変動させる、ことを特徴としたキャリッジ装置である。
【0021】
このように、支持部材をキャリッジの被支持部に押圧する押圧装置を設けることによって、押圧装置による押圧荷重でキャリッジに作用する回転力に対抗してキャリッジの姿勢が傾くことを抑制することができるので、前記の首振り現象を低減させることができる。
【0022】
また、キャリッジの重量が変動すると、キャリッジの重心回りの慣性モーメントも変動するため、この首振り現象を抑制するために必要な押圧荷重も変動するが、本発明の第5の態様に記載のキャリッジ装置は、キャリッジの重量の変動に応じて、制御装置が押圧装置の押圧荷重を変動させる制御を実行する。
【0023】
すなわち、本発明の第5の態様に記載のキャリッジ装置は、首振り現象を抑制するために必要な押圧荷重をキャリッジ重心回りの慣性モーメントの変動に応じて変動させて適切な荷重に設定することができる。したがって、必要以上の押圧荷重でキャリッジが支持部材に押圧された状態となることを未然に防止することができるので、支持部材をキャリッジの被支持部に押圧することに伴う動負荷の増加を最小限に止めることができる。
【0024】
これにより、本発明の第5の態様に記載のキャリッジ装置によれば、所定の往復動方向へ往復動可能に支持部材に支持したキャリッジを駆動装置により往復動させるキャリッジ装置において、首振り現象を抑制しつつキャリッジの駆動モータの消費電力を低減させることができるという作用効果が得られる。
【0025】
本発明の第6の態様は、前述した第5の態様に記載のキャリッジ装置において、前記制御装置は、フィードバック制御による前記駆動装置の駆動力源の制御を実行するとともに、前記キャリッジの動負荷から推測した前記キャリッジの重量の変動に応じて前記押圧装置の押圧荷重を変動させる、ことを特徴としたキャリッジ装置である。
【0026】
キャリッジの重量は、キャリッジを往復動させる際の動負荷から推測することができる。ここで、キャリッジを往復動させる際の動負荷は、例えば、キャリッジを往復動させる駆動力源となるモータ等に対する制御装置の制御量(制御デューティ等)と実際のキャリッジの移動速度との関係から導出することができる。また、実際のキャリッジの移動速度は、例えば、フィードバック制御のために設けられた公知のリニアエンコーダ等で検出したパルス信号の周期等から制御装置において算出することができる。
【0027】
これにより、本発明の第6の態様に記載のキャリッジ装置によれば、キャリッジの重量を検出する専用の装置等を設ける必要がないので、本発明の第5の態様に記載のキャリッジ装置をより低コストに実現することができるという作用効果が得られる。
【0028】
本発明の第7の態様は、前述した第5の態様又は第6の態様に記載のキャリッジ装置と、前記キャリッジに搭載され、被記録材の記録面に記録材料でドットを形成する記録ヘッドと、前記キャリッジに搭載され、前記記録ヘッドへ記録材料を供給する記録材料収容部と、を備えた記録装置である。
本発明の第7の態様に記載の記録装置によれば、記録装置において、前述した第5の態様又は第6の態様に記載の発明による作用効果を得ることができる。
【0029】
本発明の第8の態様は、前述した第5の態様に記載のキャリッジ装置と、前記キャリッジに搭載され、被記録材の記録面に記録材料でドットを形成する記録ヘッドと、前記キャリッジに搭載され、前記記録ヘッドへ記録材料を供給する記録材料収容部と、を備え、前記制御装置は、前記記録ヘッドを制御して被記録材の記録面にドットを形成する制御を実行するとともに、前記記録材料収容部の記録材料の消費量を前記記録ヘッドの制御内容に基づいて推測し、推測した記録材料の消費量から算出した前記キャリッジの重量の変動に応じて前記押圧装置の押圧荷重を変動させる、ことを特徴とした記録装置である。
【0030】
キャリッジの重量は、キャリッジに搭載された記録材料収容部の記録材料が消費されていくことによって減少していく。また、空になった記録材料収容部に記録材料を充填すれば、キャリッジの重量は増加することになる。そして、記録材料収容部の記録材料の消費量は、制御装置による記録ヘッドの制御内容から推測することができる。
【0031】
これにより、本発明の第8の態様に記載の記録装置によれば、キャリッジの重量を検出する専用の装置等を設ける必要がないので、本発明の第5の態様に記載のキャリッジ装置を備えた記録装置をより低コストに実現することができるという作用効果が得られる。
【0032】
本発明の第9の態様は、前述した第7の態様又は第8の態様に記載の記録装置において、前記制御装置は、前記キャリッジの重量の変動に応じて、前記キャリッジの速度制御曲線を変更する、ことを特徴とした記録装置である。
【0033】
キャリッジを所定の移動範囲において往復動させる際には、停止している状態から一定の速度に達するまで加速し、一定の速度に達した時点から定速で移動させ、所定の停止位置に停止するように減速して停止させる。つまり、制御装置は、加速領域、定速領域及び減速領域を有する速度制御曲線に沿ってキャリッジの移動制御を実行する。ここで、駆動力源のトルク性能の範囲内では、キャリッジが軽くなるに従って慣性抵抗は小さくなるため、キャリッジが軽くなるほど加速領域及び減速領域における加速度及び減速度を大きくすることができる。そして、所定の移動範囲におけるキャリッジの往復動時間は、加速領域及び減速領域における加速度及び減速度を大きくするほど短くなっていく。
【0034】
したがって、キャリッジの重量の変動に応じてキャリッジの速度制御曲線を変更することによって、キャリッジの重量の変動に応じて常にキャリッジの往復動時間を最短にすることが可能になる。すなわち、キャリッジの重量の変動に応じて、キャリッジの往復動時間が最短になる最適な速度制御曲線を設定してキャリッジの往復動制御を実行することができる。これにより、本発明の第9の態様に記載の記録装置によれば、前述した第7の態様又は第8の態様に記載の発明による作用効果に加えて、記録装置における記録実行時間を短縮してスループットを向上させることができるという作用効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
<インクジェットプリンタの概略構成>
まず、「記録装置」の一例としてのインクジェットプリンタの概略構成について、図1〜図3を参照しながら説明する。
【0037】
図1は、インクジェットプリンタの要部平面図であり、図2はその側面図である。図3は、インクジェットプリンタの概略のブロック図である。
インクジェットプリンタ50は、「被記録材」としての記録紙Pにインクを噴射して記録面にドットを形成する記録ヘッド62を備えている。記録ヘッド62は、主走査方向Xに往復動可能にキャリッジガイド軸56に軸支されたキャリッジ61に搭載されている。キャリッジ61には、記録ヘッド62の他、後述するPWセンサ34や図示していないインクカートリッジ等が搭載されている。キャリッジ61は、図示していないベルト伝達機構によって、CRモータ63(図3)の回転駆動力が伝達されて主走査方向Xに往復動する。
【0038】
記録ヘッド62のヘッド面と対向する位置には、記録を実行する記録紙Pを裏面側から支持して、記録ヘッド62のヘッド面と記録紙Pとのギャップを規定するプラテン53が設けられている。キャリッジ61の主走査方向Xへの往復動領域の一端側の外側には、公知のキャッピング装置57が設けられている。記録を実行しない待機状態においては、キャリッジ61がキャッピング装置57の上まで移動して停止し、キャッピング装置57に配設されているキャップCPによって記録ヘッド62のヘッド面が封止される。このキャリッジ61の停止位置は、ホームポジションHPとして規定される。
【0039】
また、インクジェットプリンタ50は、記録ヘッド62を記録紙Pに対して副走査方向Yに走査させる手段として、記録紙Pを副走査方向Yに搬送する搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52とを備えている。搬送駆動ローラ51は、外周面に高摩擦抵抗を有する皮膜が施されており、PFモータ58(図3)の回転駆動力で回転する。複数の搬送従動ローラ52は、個々に従動回転可能に軸支されているとともに、図示していないばね等の付勢手段により個々に搬送駆動ローラ51に付勢されている。記録紙Pは、搬送従動ローラ52で搬送駆動ローラ51の外周面に押しつけられ、搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52とで挟持された状態で搬送駆動ローラ51が回転することによって、副走査方向Yに搬送される。
【0040】
副走査方向Yにおける搬送駆動ローラ51の上流側には、多数の記録紙Pを積重可能な給送トレイ71が配設されている。給送トレイ71には、記録紙Pの積重位置を規制するための記録紙ガイド71aが記録紙Pの幅に合わせて幅方向に摺動可能に設けられている。また、給送トレイ71の近傍には、給送ローラ72が配設されている。給送ローラ72は、PFモータ58(図3)の回転駆動力で回転する。給送トレイ71に積重された記録紙Pは、図示していないホッパ等の押圧手段で押動されて最上位側が給送ローラ72の外周面に押圧され、給送ローラ72が回転することによって、搬送駆動ローラ51へ向けて給送される。このとき、公知の分離パッド等の分離手段によって、最上位にある給送すべき記録紙Pから他の記録紙Pが分離されて重送が防止される。給送ローラ72と搬送駆動ローラ51との間には、給送された記録紙Pの先端位置及び後端位置を検出するための公知の紙検出器33が配設されている。
【0041】
さらに、インクジェットプリンタ50は、記録実行後の記録紙Pを排出する手段として、排出駆動ローラ54と排出従動ローラ55とを備えている。排出駆動ローラ54は、PFモータ58(図3)の回転駆動力で回転する。複数の排出従動ローラ55は、個々に従動回転可能に軸支されているとともに、図示していないばね等の付勢手段により個々に排出駆動ローラ54に付勢されている。排出従動ローラ55は、周囲に複数の歯を有し、各歯の先端が記録紙Pの記録面に点接触するように鋭角的に尖った歯付きローラになっている。記録紙Pは、排出従動ローラ55で排出駆動ローラ54の外周面に押しつけられ、排出駆動ローラ54と排出従動ローラ55とで挟持された状態で排出駆動ローラ54が回転することによって、副走査方向Yに搬送されて排出される。
【0042】
このような構成のインクジェットプリンタ50において、給送ローラ72、搬送駆動ローラ51及び排出駆動ローラ54を回転させるPFモータ58(図3)並びにキャリッジ61を主走査方向に駆動するCRモータ63(図3)は、後述する記録制御部100により制御される。また、記録ヘッド62も同様に、記録制御部100により制御される。記録制御部100は、キャリッジ61を主走査方向Xへ往復動させながら記録ヘッド62から記録紙Pへインクを噴射する動作と、記録紙Pを副走査方向Yへ所定の搬送量で搬送する動作とを交互に繰り返しながら記録紙Pへの記録を行う制御を実行する。
【0043】
記録制御部100は、ROM101、RAM102、ASIC(特定用途向け集積回路)103、CPU(中央処理装置)104、不揮発性メモリ105、PFモータドライバ106、CRモータドライバ107及びヘッドドライバ108を備えている。ROM101、RAM102、ASIC103、CPU104及び不揮発性メモリ105は、記録制御部100のシステムバスに接続されている。PFモータドライバ106、CRモータドライバ107及びヘッドドライバ108は、ASIC103に接続されている。
【0044】
ROM101は、CPU104によるインクジェットプリンタ50の制御に必要な記録制御プログラム(ファームウェア)等が格納される。RAM102は、CPU104の作業領域や記録データ等の格納領域として用いられる。CPU104は、記録制御プログラムを実行して、インクジェットプリンタ50の記録制御を実行する為の演算処理やその他必要な演算処理を行う。不揮発性メモリ105は、記録制御プログラムによる演算処理に必要な各種データ等が記憶されている。
【0045】
ASIC103は、DCモータであるPFモータ58及びCRモータ63の速度制御並びに記録ヘッド62の駆動制御を行うための制御回路を有している。ASIC103は、PFモータ58及びCRモータ63の速度制御を行うための各種演算を行い、その演算結果に基づくモータ制御信号をPFモータドライバ106及びCRモータドライバ107へ送出する。また、ASIC103は、記録ヘッド62の制御信号を演算生成してヘッドドライバ108へ送出し、記録ヘッド62のインク噴射を制御する。さらに、ASIC103は、パーソナルコンピュータ301とのインタフェース機能も有している。
【0046】
さらに、インクジェットプリンタ50は、搬送駆動ローラ51の回転量を検出するロータリエンコーダ31、キャリッジ61の移動量を検出するリニアエンコーダ32、副走査方向Yの記録紙Pの先端及び後端を検出する紙検出器33、主走査方向Xの記録紙Pの端部を検出するためのPWセンサ34及びインクジェットプリンタ50の電源をON/OFFするための電源スイッチ35を備えている。
【0047】
公知のロータリエンコーダ31は、搬送駆動ローラ51の回転に連動して回転するロータリスケール311と、ロータリスケール311の外周に沿って等間隔に形成されているスリットを検出するロータリスケールセンサ312とを有している(図2)。搬送駆動ローラ51の回転に伴い変化するロータリスケールセンサ312の出力信号は、ASIC103を介してCPU104へ出力される。
【0048】
公知のリニアエンコーダ32は、キャリッジ61の近傍に主走査方向Xと略平行に配置されたリニアスケール321と、リニアスケール321に等間隔に形成されているスリットを検出するキャリッジ61に搭載されたリニアスケールセンサ322とを有している(図2)。キャリッジ61の主走査方向Xの移動量に応じたパルスの周期が移動速度に伴い変化するリニアスケールセンサ322の出力信号は、ASIC103を介してCPU104へ出力される。
【0049】
公知の紙検出器33は、立位姿勢への自己復帰習性が付与され、かつ記録紙Pの搬送方向(副走査方向Y)にのみ回動し得るよう記録紙Pの搬送経路内に突出する状態で枢支されたレバーを有している。紙検出器33は、このレバーの先端が記録紙Pに押されることでレバーが回動し、それによって、給送ローラ72より給送された記録紙Pの先端位置及び搬送中の記録紙Pの後端位置を検出する。PWセンサ34は、非接触の光学式センサである。PWセンサ34は、記録紙Pの主走査方向Xの両端位置(記録紙Pの両側端位置)を検出する。紙検出器33及びPWセンサ34の検出信号は、ASIC103を介してCPU104へ出力される。
【0050】
<キャリッジの駆動装置>
つづいて、図4を参照しながら、キャリッジ61を往復動させる「駆動装置」について説明する。
【0051】
図4は、キャリッジ61の「駆動装置」を模式的に図示したブロック図である。
キャリッジ61は、「支持部材」としてのキャリッジガイド軸56に軸支されている。CRモータ63の回転軸に配設された駆動プーリ64と図示していない従動プーリとの間には、無端ベルト65が掛架されている。無端ベルト65の一部は、キャリッジ61に連結されており、CRモータ63の双方向の回転駆動力が無端ベルト65を介してキャリッジ61に伝達され、キャリッジ61は主走査方向Xへ往復動する。
【0052】
CRモータドライバ107は、直流定電圧電源装置20の出力電圧から定電圧で一定周期(PWM基本周期)のパルスを生成してCRモータ63に印加し、パルスのON時間(制御デューティ)を調節することによって、CRモータ63への供給電力を調節するPWM制御を実行する。「制御装置」としての記録制御部100において、CPU104は、リニアエンコーダ32のリニアスケールセンサ322の出力信号からキャリッジ61の移動量及び移動速度を演算する。ASIC103は、そのキャリッジ61の移動量及び移動速度に基づいて、CRモータ63の制御信号を生成し、CRモータドライバ107へ出力する(フィードバック制御)。
【0053】
記録ヘッド63から噴射される各色(イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック)の「記録材料」としてのインクは、キャリッジ61に着脱可能に搭載されるインクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kから記録ヘッド62へ供給される。記録ヘッド62には、ヘッド面に多数のインク噴射ノズル(図示せず)が配設されている。このインク噴射ノズルは、ヘッドドライバ108からの駆動信号によって駆動され、それによって、各色のインクが記録紙Pの記録面に噴射され、記録紙Pの記録面に各色のインクドットが形成される。ASIC103は、記録データ等に基づいて、記録ヘッド62のインク噴射制御信号を生成し、ヘッドドライバ108へ出力する。
【0054】
<本発明の第1実施例>
つづいて、本発明の第1実施例について、図5を参照しながら説明する。
【0055】
図5は、本発明に係るキャリッジ61の構造を模式的に図示した側断面図である。
【0056】
キャリッジ61は、底部に記録ヘッド62が配設されている。記録ヘッド62へインクを供給するインクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kは、インクカートリッジホルダ66に装着され、これら全体で「記録材料収容部」を構成する。このインクカートリッジホルダ66は、複数のばね67によってキャリッジ61の内部に吊設されている。すなわち、インクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kは、自重の変動に応じて上下方向(符号Aで示した方向)へ変位可能にキャリッジ61に支持される。インクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kのインクは、例えば、可撓性を有するインクチューブ等でインクカートリッジホルダ66と記録ヘッド62とをインク色ごとに接続することによって、記録ヘッド62へ供給することができる。
【0057】
尚、キャリッジ61に対するインクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kの支持構造は、図5に図示した支持構造に特に限定されるものではないことは言うまでもない。例えば、インクカートリッジホルダ66を下側から複数のばねで支持しても良く、キャリッジ61に対して、自重の変動に応じて上下方向(符号Aで示した方向)へ変位可能にインクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kを支持することが可能であれば、どのような支持構造であっても本発明の実施は可能である。
【0058】
キャリッジ61は、副走査方向Yの上流側の軸受部69がキャリッジガイド軸56と摺接係合し、副走査方向Yの下流側の凸部611がガイド板59に摺接係合した状態で支持される。「被支持部」としての軸受部69は、V字に交差する第1支持面691及び第2支持面692を有している。キャリッジガイド軸56は、軸受部69の第1支持面691及び第2支持面692に外周面が当接した状態で、押圧部材68によって第1支持面691及び第2支持面692に押圧される。
【0059】
このように、キャリッジガイド軸56を軸受部69に押圧する押圧部材68を設けることによって、キャリッジガイド軸56と軸受部69との間のガタ詰めができるとともに、キャリッジ61に作用する回転力に対して、その押圧荷重で対向してキャリッジ61の姿勢が傾くことを抑制することができる。それによって、キャリッジ61の首振り現象を低減させることができるので、その首振り現象に起因した記録精度の低下を低減させることができる。
【0060】
このとき、インクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kのインクの増減等によってキャリッジ61の重量が変動すると、キャリッジ61の重心回りの慣性モーメントも変動する。そのため、この首振り現象を抑制するために必要な押圧荷重も変動することになる。第1実施例におけるキャリッジ61は、このキャリッジ61の重量の変動に応じて押圧部材68による押圧加重が自動的に変動する構成を有している。
【0061】
より具体的には、押圧部材68は、符号Bで示した方向へ変位可能にキャリッジ61に支持されている。押圧部材68は、一端側に設けられた押圧板681がキャリッジガイド軸56の外周面と係合し、他端側に設けられた斜面682がインクカートリッジホルダ66の斜面661と面接触して係合する。インクカートリッジホルダ66は、インクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kのインク残量の増減によって符号Aで示した方向へ変位し、それによって、押圧部材68は、符号Bで示した方向へ変位する。
【0062】
すなわち、インクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kのインク残量の増減によるキャリッジ61の重量の変動に応じて、押圧部材68による押圧荷重が変動する。例えば、インクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kのインクが消費されて減少すれば、キャリッジ61の全体の重量が減少し、それに応じて押圧部材68による押圧荷重は小さくなる。また、例えば、インクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kのいずれかを新品に交換すれば、キャリッジ61の全体の重量が増加し、それに応じて押圧部材68による押圧荷重は大きくなる。
【0063】
このようにして、第1実施例におけるキャリッジ61は、キャリッジ61の重心回りにおける慣性モーメントの変動に応じて、首振り現象を抑制するために必要な押圧部材68による押圧荷重を適正な荷重に自動設定することができる。したがって、必要以上の押圧荷重でキャリッジ61の軸受部69がキャリッジガイド軸56に押圧された状態となることを未然に防止することができるので、キャリッジガイド軸56をキャリッジ61の軸受部69に押圧することに伴う動負荷の増加を最小限に止めることができる。それによって、キャリッジ61の首振り現象を抑制しつつ、キャリッジ61を駆動するCRモータ63の消費電力を低減させることができる。
【0064】
尚、インクカートリッジホルダ66と押圧部材68との係合構造は、上記の斜面661と斜面682との斜面同士の面接触構造に特に限定されるものではないことは言うまでもない。例えば、インクカートリッジホルダ66と押圧部材68とを公知のラックピニオン機構等で係合させて実現しても良く、インクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kの自重の変動によって符号Aで示した方向へインクカートリッジホルダ66が変位し、それによって、押圧部材68が符号Bで示した方向へ変位する係合構造であれば、どのような係合構造であっても本発明の実施は可能である。
【0065】
<本発明の第2実施例>
つづいて、本発明の第2実施例について、図6を参照しながら説明する。
【0066】
図6は、本発明に係るインクジェットプリンタ50の要部を模式的に図示した正面図である。尚、第2実施例におけるインクジェットプリンタ50の構成は、前述した通りであり、キャリッジ61の構成は、第1実施例と全く同じであるため、共通する部分については、第2実施例の説明に必要な部分のみ説明する。
【0067】
まず、図5を参照しながら説明する。
前記のように、キャリッジ61において、押圧部材68は、インクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kの自重の変動によってインクカートリッジホルダ66が符号Aで示した方向へ変位し、それによって、符号Bで示した方向へ変位する(図5)。つまり、押圧部材68は、キャリッジガイド軸56とインクカートリッジホルダ66との間に挟持された状態となる。そのため、押圧部材68は、その押圧部材68の斜面682とインクカートリッジホルダ66の斜面661との接触面における摩擦抵抗等で、キャリッジガイド軸56とインクカートリッジホルダ66との間に引っ掛かったような状態になってしまう虞がある。そうなってしまうと、インクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kの重量が減少しても、その重量の減少に応じてインクカートリッジホルダ66が変位できない状態となり、押圧部材68による押圧荷重が過荷重となってしまう虞が生ずる。
【0068】
このようなことを防止するために、第2実施例におけるインクジェットプリンタ50は、キャリッジガイド軸56から押圧部材68を離間させる方向の力が作用するようにキャリッジ61を変位させる「キャリッジ変位機構」を備えている。以下、図6を参照しながら説明する。
【0069】
キャリッジ61は、インクジェットプリンタ50の筐体フレームを構成する左サイドフレーム11Lと右サイドフレーム11Rとの間に配設されたキャリッジガイド軸56に支持されている。第2実施例の「キャリッジ変位機構」は、第1変位部材12と第2変位部材13とで構成されている。第1変位部材12は、略円筒体形状の部材であり、キャリッジガイド軸56が挿通された状態で、左サイドフレーム11Lに固着されている。第2変位部材13は、同様に略円筒体形状の部材であり、キャリッジガイド軸56が挿通された状態で、キャリッジ61に固着されている。
【0070】
第1変位部材12には、図示の如く、傾斜面を有する突起部121が複数設けられており、第2変位部材13には、突起部121の傾斜面に対応する傾斜面を有する突起部131が複数設けられている。キャリッジ61を符号XLで示した方向へ移動させ、第1変位部材12の突起部121と第2変位部材13の突起部131とを係合させると、第1変位部材12の突起部121の傾斜面と第2変位部材13の傾斜面とが当接する。そこから、さらにキャリッジ61を符号XLで示した方向へ移動させると、突起部121の傾斜面に沿って、キャリッジガイド軸56を中心とする回転方向(符号Fで示した方向)へ第2変位部材13を回転させる力が作用する。その結果、キャリッジ61は、キャリッジガイド軸56を中心として上方向Dへ揺動することとなる。
【0071】
キャリッジガイド軸56とインクカートリッジホルダ66との間に引っ掛かったような状態にある押圧部材68には、キャリッジ61が上方向Dへ揺動することによって、押圧部材68の傾斜面682からインクカートリッジホルダ66の傾斜面661を離間させようとする方向の力が一時的に作用することになる。それによって、キャリッジガイド軸56とインクカートリッジホルダ66とによる押圧部材68の挟持力を一時的に減少させることができる。したがって、上記動作を適宜行うことによって、キャリッジガイド軸56とインクカートリッジホルダ66との間に押圧部材68が引っ掛かった状態を適宜解消することができる。
【0072】
このように、本発明に係るキャリッジ61を備えたインクジェットプリンタ50は、「キャリッジ変位機構」を設けるのが好ましい。それによって、キャリッジガイド軸56とインクカートリッジホルダ66との間に押圧部材68が引っ掛かった状態が生じてしまっても適宜解消することができる。それによって、その引っ掛かり状態に起因して押圧部材68による押圧荷重が過荷重となってしまう虞を低減させることができる。
【0073】
<本発明の第3実施例>
つづいて、本発明の第3実施例について、図7を参照しながら説明する。
【0074】
図7は、本発明に係るインクジェットプリンタ50の要部を模式的に図示した側断面図である。尚、第3実施例におけるインクジェットプリンタ50の構成は、前述した通りであり、キャリッジ61の構成は、第1実施例及び第2実施例と全く同じであるため、共通する部分については、第3実施例の説明に必要な部分のみ説明する。
【0075】
第3実施例におけるインクジェットプリンタ50は、「記録ヘッド保守装置」として公知のキャッピング装置57(図1)が「キャリッジ変位機構」を兼ねている。キャッピング装置57は、記録を実行しないときに記録ヘッド62の保守を行うための装置である。キャッピング装置57は、記録を実行しないときに記録ヘッド62のヘッド面を封止するキャップCP(封止部材)と、キャップCPを変位させる図示していない変位機構(封止部材変位機構)とを有している。尚、公知のキャッピング装置57は、これ以外にキャップCPで封止した記録ヘッド62のヘッド面を吸引する手段や記録ヘッド62のヘッド面のワイピング機構等を有しているが、図示及び説明は省略する。
【0076】
図7(a)は、記録ヘッド62のヘッド面をキャップCPで封止していない状態を図示したものであり、記録紙Pへの記録を実行可能な状態である。図7(b)は、ホームポジションHP(図1)でキャリッジ61を停止させ、キャップCPを符号Cで示した方向へ変位させて、キャップCPで記録ヘッド62のヘッド面を封止した状態である。そして、キャップCPで記録ヘッド62のヘッド面を封止した状態から、キャップCPをさらに符号Cで示した方向へ変位させる。それによって、キャリッジ61は、前記の第3実施例と同様に、キャリッジガイド軸56を中心として上方向Dへ揺動する。
【0077】
したがって、上記動作を適宜行うことによって、前記の第3実施例と同様に、キャリッジガイド軸56とインクカートリッジホルダ66との間に押圧部材68が引っ掛かった状態を適宜解消することができる。このように、既存のキャッピング装置57を「キャリッジ変位機構」として利用することによって、「キャリッジ変位機構」を別個に設ける必要がなくなるので、本発明に係るインクジェットプリンタ50をより低コストに実現することができる。
【0078】
尚、「キャリッジ変位機構」の他の実施例としては、例えばキャッピング装置57のキャップCPに突起部を設け、キャリッジ61の底部の対応する部分に孔を設け、キャップCPで記録ヘッド62のヘッド面を封止した状態で、キャップ57に設けた前記突起部がキャリッジ61内のインクカートリッジホルダ66を直接押動して上方(符号Eで示した方向)へ変位させるようにすることもできる。
【0079】
<本発明の第4実施例>
つづいて、本発明の第4実施例について、図8を参照しながら説明する。
【0080】
図8は、本発明に係るインクジェットプリンタ50を模式的に図示した側断面図である。尚、インクジェットプリンタ50の構成は、前述した通りであるため、共通する部分については、第4実施例の説明に必要な部分のみ説明する。
【0081】
第4実施例のインクジェットプリンタ50は、キャリッジ61にモータの駆動力を利用した「押圧装置」が設けられている。この「押圧装置」は、押圧部材68、雌ねじ部683、雄ねじ部684及び押圧用のモータ685を有している。雌ねじ部683は、押圧部材68の他端側に設けられている。雌ねじ部683に螺合する雄ねじ部684は、キャリッジ61に固設されたモータ685の回転軸に設けられている。
【0082】
押圧部材68は、モータ685の双方向への回転(符号Gで示した方向の回転)によって、符号Bで示した方向へ変位する。モータ685は、記録制御部100によって制御される。記録制御部100は、キャリッジ61の重量の変動に応じてモータ685の回転位置を調整して、押圧部材68による押圧荷重を変動させる。また、第4実施例においては、第1実施例のキャリッジ61と異なり、インクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kは、キャリッジ61にそのまま装着されている。
【0083】
尚、押圧部材68による押圧荷重は、例えば、モータ685の制御量(制御デューティ等)から特定するようにしても良いし、押圧部材68の位置を検出する公知のリニアエンコーダ等を設け、検出した押圧部材68の位置から特定するようにしても良い。
【0084】
記録制御部100は、キャリッジ61の動負荷から推算したキャリッジ61の重量の変動に応じて「押圧装置」の押圧荷重を変動させる制御を実行する。このキャリッジ61を往復動させる際の動負荷は、キャリッジ61の重量の変動に応じて変動する。つまり、キャリッジ61の重量が増減すれば、それに応じてキャリッジ61が往復動する際の摺動抵抗が増減するので、キャリッジ61の動負荷もそれに応じて増減することになる。したがって、キャリッジ61の重量の変動は、キャリッジ61の動負荷の変動から推算することができる。
【0085】
前記の通り、記録制御部100は、リニアエンコーダ32のリニアスケールセンサ322の出力信号からキャリッジ61の移動量及び移動速度を演算し、その演算したキャリッジ61の移動量及び移動速度に基づいてCRモータ63の制御信号を生成して、フィードバック制御によるキャリッジ61の往復動制御を実行する。キャリッジ61を往復動させる際の動負荷は、このキャリッジ61を往復動させる際のCRモータ63に対する制御量(制御デューティ等)とリニアスケールセンサ322の出力信号に基づくキャリッジ61の実際の移動速度との関係から導出することができる。
【0086】
尚、「押圧装置」の押圧荷重を変動させると、それに伴ってキャリッジ61の動負荷も変動することから、動負荷に基づいてキャリッジ61の重量を推算する際には、「押圧装置」の押圧荷重を常に一定の基準となる押圧荷重に設定した状態で動負荷を測定するのが好ましい。
【0087】
<本発明の第5実施例>
つづいて、本発明の第5実施例について、引き続き図8を参照しながら説明する。尚、インクジェットプリンタ50の構成は、前述した通りであるため、共通する部分については、第5実施例の説明に必要な部分のみ説明する。
【0088】
前記の通り、記録制御部100は、記録データ等に基づいて記録ヘッド62のインク噴射制御信号を生成して、記録ヘッド62へ出力し、記録紙Pの記録面にドットを形成する制御を実行する。このとき、インクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kのインク消費量は、このインク噴射制御信号から推測することができる。また、インクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kには、公知のCSIC621がそれぞれ設けられている。CSIC621は、不揮発性のメモリを有しており、インク残量に関する情報が記憶されている。記録制御部100は、各CSIC621からインク残量に関する情報を取得してインクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kのインク残量を把握するとともに、記録実行時のインク噴射制御信号から推測したインク消費量に基づいて、各CSIC621に記憶されているインク残量に関する情報を所定のタイミングで更新する。
【0089】
キャリッジ61の重量は、キャリッジ61に搭載されたインクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kのインクが消費されていくことによって減少していく。また、空になったインクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kを新品に交換すれば、キャリッジ61の重量は増加することになる。つまり、キャリッジ61の重量は、インクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kのインク残量から推測することができる。記録制御部100は、このCSIC621から取得したインク残量に関する情報から特定したインクカートリッジ62Y、62M、62C、62Kのインク残量に基づいて、キャリッジ61の重量を推算し、そのキャリッジ61の重量の変動に応じて「押圧装置」の押圧荷重を変動させる制御を実行する。
【0090】
さらに、記録制御部100においては、この推算したキャリッジ61の重量の変動に応じて、キャリッジ61の速度制御曲線を変更する制御も実行するのが好ましい。キャリッジ61の重量の変動に応じてキャリッジ61の速度制御曲線を変更することによって、キャリッジ61の重量の変動に応じて常にキャリッジ61の往復動時間を最短にすることが可能になるからである。すなわち、キャリッジ61の重量の変動に応じて、キャリッジ61の往復動時間が最短になる最適な速度制御曲線を設定してキャリッジ61の往復動制御を実行することができるので、インクジェットプリンタ50における記録実行時間を短縮してスループットを向上させることができる。
【0091】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】インクジェットプリンタの概略の平面図。
【図2】インクジェットプリンタの概略の側面図。
【図3】インクジェットプリンタの概略のブロック図。
【図4】キャリッジの駆動機構を模式的に図示したブロック図。
【図5】本発明に係るキャリッジの構造を模式的に図示した側断面図。
【図6】本発明に係るインクジェットプリンタの要部を図示した正面図。
【図7】本発明に係るインクジェットプリンタの要部を図示した側断面図。
【図8】本発明に係るインクジェットプリンタの要部を図示した側断面図。
【符号の説明】
【0093】
12 第1変位部材、13 第2変位部材、31 ロータリエンコーダ、32 リニアエンコーダ、50 インクジェットプリンタ、51 搬送駆動ローラ、52 搬送従動ローラ、53 プラテン、54 排出駆動ローラ、55 排出従動ローラ、56 キャリッジガイド軸、57 キャッピング装置、61 キャリッジ、62 記録ヘッド、62Y、62M、62C、62K インクカートリッジ、63 CRモータ、64 駆動プーリ、65 無端ベルト、66 インクカートリッジホルダ、67 ばね、68 押圧部材、681 押圧板、682 斜面、683 雌ねじ部、684 雄ねじ部、685 モータ、69 軸受部、100 記録制御部、CP キャップ、X 主走査方向、Y 副走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の往復動方向へ往復動可能に支持部材に支持され、駆動装置により往復動されるキャリッジであって、
被記録材の記録面に記録材料でドットを形成する記録ヘッドと、
自重の変動に応じて変位可能に前記キャリッジに支持され、前記記録ヘッドへ記録材料を供給する記録材料収容部と、
前記支持部材に摺接する被支持部と、
前記支持部材を前記被支持部に押圧する押圧部材とを備え、
前記押圧部材は、前記記録材料収容部が変位することによって前記支持部材を前記被支持部に押圧する荷重が変動する方向へ変位するように前記記録材料収容部と係合している、ことを特徴としたキャリッジ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャリッジと、
前記キャリッジの被支持部に摺接して前記キャリッジを所定の往復動方向へ往復動可能に支持する支持部材と、
前記キャリッジを往復動させる駆動装置と、を備えた記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記録装置において、前記支持部材から前記押圧部材を離間させる方向の力が作用するように前記キャリッジを変位させるキャリッジ変位機構を備えている、ことを特徴とした記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の記録装置において、前記記録ヘッドのヘッド面を封止する封止部材と、前記封止部材を変位させる封止部材変位機構とを有し、記録を実行しないときに前記記録ヘッドの保守を行う記録ヘッド保守装置を備え、
前記封止部材変位機構が前記キャリッジ変位機構を兼ねている、ことを特徴とした記録装置。
【請求項5】
キャリッジと、
前記キャリッジの被支持部に摺接して前記キャリッジを所定の往復動方向へ往復動可能に支持する支持部材と、
前記キャリッジを往復動させる駆動装置と、
前記支持部材を前記被支持部に押圧する押圧装置と、
前記駆動装置及び前記押圧装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記キャリッジの重量の変動に応じて前記押圧装置の押圧荷重を変動させる、ことを特徴としたキャリッジ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のキャリッジ装置において、前記制御装置は、フィードバック制御による前記駆動装置の駆動力源の制御を実行するとともに、前記キャリッジの動負荷から推測した前記キャリッジの重量の変動に応じて前記押圧装置の押圧荷重を変動させる、ことを特徴としたキャリッジ装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のキャリッジ装置と、
前記キャリッジに搭載され、被記録材の記録面に記録材料でドットを形成する記録ヘッドと、
前記キャリッジに搭載され、前記記録ヘッドへ記録材料を供給する記録材料収容部と、を備えた記録装置。
【請求項8】
請求項5に記載のキャリッジ装置と、
前記キャリッジに搭載され、被記録材の記録面に記録材料でドットを形成する記録ヘッドと、
前記キャリッジに搭載され、前記記録ヘッドへ記録材料を供給する記録材料収容部と、を備え、
前記制御装置は、前記記録ヘッドを制御して被記録材の記録面にドットを形成する制御を実行するとともに、前記記録材料収容部の記録材料の消費量を前記記録ヘッドの制御内容に基づいて推測し、推測した記録材料の消費量から算出した前記キャリッジの重量の変動に応じて前記押圧装置の押圧荷重を変動させる、ことを特徴とした記録装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の記録装置において、前記制御装置は、前記キャリッジの重量の変動に応じて、前記キャリッジの速度制御曲線を変更する、ことを特徴とした記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−172948(P2009−172948A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16108(P2008−16108)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】