説明

キャリーバッグ及びシルバーカーのハンドル持ち手

【課題】 バッグの背面側に上下方向にスライドするハンドルを取付けて路面を転がして持運ぶことが出来るキャリーバッグを持ち上げた際に、バッグの背面側下端部が体に接しないようにバランスよく持ち上げることが出来る持ち手の提供。
【解決手段】 持ち手5はハンドル上端に設けられ、該持ち手5から所定の間隔をおいてハンドル上端には正面側に補助握り部8を平行に設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は旅行用のキャリーバッグ及びシルバーカーに取付けられる持ち手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シルバーカーとは老人が道を歩く時、又は散歩する時に、歩行を補助する為の手押し車である。シルバーカーにもその型式は色々あるが、しかし基本的には金属製パイプにて構成したフレームの前後に4輪を備え、ハンドルを押すことで安定した走行が出来る構造と成っている。そして、フレームには小荷物を収容することが出来ず布製のバッグが取付けられている。
【0003】
一方、キャリーバッグとは旅行に行く際に荷物を収容して持ち歩く為のバッグである。従って、該キャリーバッグは伸縮するハンドルを備え、バッグ背面側下端には車輪を取付けている。従って、通常はハンドルを持って転がして持運ぶことが出来、しかし、階段の上り下りの際にはハンドルの持ち手を握って手で持ち上げて運ぶことが出来る。キャリーバッグのバッグは金属製、樹脂製、又は布製とし、その形状は概略直方体をしている。
【0004】
特開平11−43046号に係る「シルバーカー」は、折畳み及び拡開作業が簡単で、直立状態の安定性に優れている。
すなわち、押棒と後脚の上端とがひじ掛けレバーによって互いに枢動可能に連結され、押棒には枢動レバーと枢動連結レバーの一端が枢着され、該枢動レバーの他端には座部パイプの端部が枢着され、該枢動連結レバーの端部には後脚折り込みレバーの一端が枢着され、該後脚折り込みレバーの他端には前脚折り込みレバーの一端が枢着され、該前脚折り込みレバーの他端が前脚へ枢着され、前記座部パイプには前脚の上端が枢着され、更に該座部パイプには、前脚の枢着位置と枢動レバーの枢着位置との間において引き込みレバーの一端が枢着され、該引き込みレバーの他端が後脚折り込みレバーへ枢着されている。
【0005】
特開平11−115763号に係る「手押し車」は、前後方向及び幅方向の双方向に折り込み可能なように構成している。
前脚と、後脚と、押棒と、一端を後脚へ中間部を前脚へ枢着手段によって枢着されている座杆と、一端が左右の前脚に対して枢動可能に装着されている前脚連結部材と、一端が左右の後脚に対して枢動可能に装着されている後脚連結部材と、下端部が前記前脚連結部材の各剛性部材の中心位置よりも枢着手段側に近い部分に枢着され上端部が前記座杆の前記枢着手段と枢着手段の間に枢着されている牽引杆と、下端部が一方の後脚へ枢着され上端部が他方の後脚へ枢着され概ねX形状に配置される開閉杆と、から構成されており、前記後脚の上端部が前脚に対してスライダー部材を介して滑動する状態に配置されている。
【0006】
特開2004−73534号に係る「ハンガー機能つきキャリーバッグ」は、ハンガー機能を付加することにより、上着や手提げ袋類などを掛けて一緒に運べるようにしている。
本体の上部に設けられ、主体枠に固定又はスライド可能に結合されていて、下向きコの字形の平行垂直部に挟まれる中央部分を握り手とする運搬把手部と、運搬把手部の上部付近から前記平行垂直部の外側に向かって突き出させることができるハンガー突出部を含む構成とする。ハンガー突出部は、一対の振り出し棒で、握り手内部、又はそれに平行な筒状の部分に収納可能としてもよい。また、一対の棒状又は板状で、運搬把手部平行垂直部に沿う姿勢から略90度回転して外方向に突き出すようにしてもよい。
【0007】
これらの他にも色々なシルバーカー及びキャリーバッグが知られている。しかし、シルバーカーとキャリーバッグとはその目的が違っている為に、その基本的な形態及び構造は違っている。ところで、シルバーカーには手押しする為のハンドルが取付けられ、該ハンドル上端には握り部を設けている。またキャリーバッグにもバッグ下端に取付けた車輪を転がして持運ぶ為のハンドルを有し、該ハンドル上端には持ち手を備えている。
【0008】
シルバーカーの握り部はハンドル上端にて両側へ延び、キャリーバッグの持ち手は片手で握ることが出来るようにハンドル上端に設けられている。シルバーカーの場合には老人が歩行する際の補助車であるために、手で持ち上げる必要はないが、キャリーバッグとしての機能を兼ね備えたシルバーカーであれば、階段の上り下りの際には手で持ち上げる必要がある。
【0009】
ところで、キャリーバッグには引手となるハンドルが伸縮可能な状態で取付けられているが、該ハンドルの位置はバッグの背面側である。すなわち、バッグ内部空間には荷物を収容しなくてはならない為に、ハンドルが内部空間に配置したのでは邪魔になる為に、必然的にバッグの背面側に取付けられる。そこで、背面側に取付けたハンドル上端の持ち手を握ってバッグを持ち上げると重心がハンドルより正面側に位置する為に、持ち上げられたバッグは傾いて下端部が体に接してしまう。
【0010】
その為に、ハンドル上端の持ち手の他にバッグを持ち上げる際の補助握り部をバッグ上端に取付けている。前記特開2004−73534号に係る「ハンガー機能つきキャリーバッグ」の場合も、スライドするハンドル上端の握り手の他に補助握り部を取付けている。このことは、キャリーバッグの機能を兼ね備えたシルバーカーの場合には同じような問題が生じる。
【特許文献1】特開平11−43046号に係る「シルバーカー」
【特許文献2】特開平11−115763号に係る「手押し車」
【特許文献3】特開2004−73534号に係る「ハンガー機能つきキャリーバッグ」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように従来のキャリーバッグ及びキャリーバッグとしての機能を兼ね備えたシルバーカーの持ち手には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、バッグを手で持ち上げた場合に、重心とのバランスが取れて持ち易くしたキャリーバッグ及びシルバーカーの持ち手を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るキャリーバッグ及びシルバーカーの持ち手は、装着しているバッグの重心を考慮し、持ち手を握って持ち上げた際に体にバッグが当らないようにしている。そこで、本発明に係る持ち手は持ち手の他に補助握り部を設けている。補助握り部は持ち手に対してバッグの正面側に位置し、共にハンドル上端に取付けられ、ハンドルのスライドに伴って上下動することが出来る。
【0013】
持ち手と補助握り部は所定の間隔をおいて互いに平行を成し、持ち手は補助握り部を中心として両側へ延ばす場合もある。そして、持ち手の長さは伸縮可能とすることも出来る。ただし、キャリーバッグの場合には一般にバッグ中央にて互いに平行を成す持ち手と補助握り部を同じ長さとし、さらには持ち手を持たないでハンドル上端から正面側へ湾曲したアームを介してバッグ重心付近の面内に補助握り部を設けることも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の持ち手はバッグ正面側に互いに平行を成す補助握り部を設けたものであり、両者を使い分けることが出来る。キャリーバッグの場合には、普通はバッグ背面側に位置している持ち手を握って引くことが出来、階段の上り下りの際には補助握り部を握ってバッグを持ち上げることが出来る。補助握り部はバッグ正面側に位置していることで、持ち上げたバッグは傾いて下端部背面が体に接することはなく、安定した持ち方が出来る。
【0015】
一方、シルバーカーの場合には、ハンドル両側へ延びる持ち手を握って該シルバーカーを押すことが出来る。そして、該シルバーカーをキャリーバッグとして使用する場合には、バッグ正面側の補助握り部を握って持ち上げることで、バッグ下端部背面側が体に接することはない。このように、引いたり押したりする場合の持ち手と、持ち上げる際の補助握り部を別々に設けることで、バッグを持ち易くなる。
【0016】
そして、持ち手及び補助握り部は共にハンドル上端に取付けられることで、共に上下動することが出来、バッグ上端に直接取付けた場合とは異なり、補助握り部の高さ調整が可能となる。そして、特開2004−73534号に係る「ハンガー機能つきキャリーバッグ」の場合のようにバッグ上端に直接補助握り部を取付けないことで、該バッグの形態並びに構造には何ら制約されない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】シルバーカーの外観図。
【図2】椅子を引き出した場合のシルバーカー。
【図3】椅子の取付け構造。
【図4】バッグの蓋を開き、椅子を引き出している状態のシルバーカー。
【図5】ハンドルをスライドして持ち手が降下した場合の正面側外観図。
【図6】ハンドルをスライドして持ち手が降下した場合の背面側外観図。
【図7】椅子を引出してハンドルを縮小した背面側斜視図。
【図8】ハンドルのスライド機構を示す全体図。
【図9】ハンドルの上下スライド機構。
【図10】ハンドル上端の持ち手に取付けたロック解除操作部。
【図11】後輪に取付けた制動機構。
【図12】制動機構を作動するワイヤーと外ケースとの関係。
【図13】下端に後輪を取付けた脚。
【図14】キャリーバッグの実施例。
【図15】キャリーバッグの持ち手及び補助握り部を示す拡大図。
【図16】キャリーバッグの持ち手を示す他の実施例。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明に係るキャリーバッグの機能を備えたシルバーカーの1形態を示す実施例である。同図の1はバッグ、2a,2bは前輪、3a,3bは後輪、4はハンドルをそれぞれ表している。同図に示しているシルバーカーはハンドル4を引上げて走行可能な状態を示し、ハンドル4はその高さを自由に調整することが出来、ハンドル4の上端には両手で握ることが出来る持ち手5a,5bを両側へ延ばしている。そして、持ち手5a,5bはその長さの調整が出来るように伸縮可能と成っている。
【0019】
前輪2a,2bはバッグ1の正面両側下端に取付けられ、しかもその向きを変えることが出来るように軸支されている。又、後輪3a,3bはバッグ1ではなく、バッグ1の背面側に取付けて斜め後方へ傾斜して延びる脚6a,6bの先端(下端)に取付けられている。従って、前輪2a,2bと後輪3a,3b間の距離は大きくなり、シルバーカーとして安定した走行を行うことが出来る。
【0020】
従来の一般的なシルバーカーは金属製のパイプでフレームを構成し、このフレームに前輪及び後輪を取付け、さらに該フレームに小荷物を入れる為のバッグ又はボックスを装着している。これに対して、本発明では金属製パイプを組立てたフレームを用いることなく、金属製又は樹脂製などのモノコック型バッグ自体をフレームとして機能させ、該バッグに前輪2a,2b及び後輪3a,3bを取付けている。しかし、バッグ1の前後下端に前輪2a,2bと後輪3a,3bを取付けたのでは、前後輪2,3間の距離が小さくて安定しない為に、後輪3a,3bはバッグ背面側から斜めに傾斜して延びる脚6a,6bの先端に取付けている。
【0021】
図2はバッグ背面に取付けた椅子7を引き出した場合である。本発明のシルバーカーには椅子7が取付けられ、該椅子7はバッグ1の背面に収納されている。そして必要な時に図2に示すように引出すことが出来、この椅子7を利用して腰掛て一時的に休むことが出来る。本発明のシルバーカーは斜め後方に傾斜して延びる脚6a,6bを有し、この脚先端に後輪3a,3bを取付けると同時に、椅子7も該脚6a,6bによって支持されることで安定することが出来る。
【0022】
図3は脚6aに取付けた椅子7の取付け構造を示している。勿論、他方の脚6bにも同じような構造で取付けられるが、脚6aの内側には軸10が水平に突出し、該軸10にはリンク11が連結している。そして椅子7の片側下面には2個のリブ12a,12bが設けられ、上記リンク11の他端はリブ12aと軸13を介して連結している。
【0023】
また、脚6aの内側にはガイド溝14が長手方向に設けられ、該ガイド溝14にはリブ12bに取付けた軸15が遊嵌している。従って、椅子7に上方から荷重が作用した場合、リブ12bに設けた軸15はガイド溝14の下端に位置していることで、リンク11が回転することはない。従って、椅子7に腰掛けて休むことが出来る。そして、椅子7が不要な時にはリブ12bの軸15をガイド溝14に沿って上方へスライドさせるならば、椅子7は脚6aと平行になり、しかも、脚6aを折り畳むならば、椅子7も該脚6aと共にバッグ1の背面側に収納される。同図の軸16は脚6aの取付け軸である。
【0024】
図4はバッグ1の蓋41を開いた状態を示している。バッグ1には開閉することが出来る蓋41が取付けられ、同図に示すように表面側へ傾斜して開くことが出来る。蓋41を開くならば、バッグ1は開口して内部空間9に荷物を収容することが出来、キャリーバッグとして機能することが出来る。勿論、キャリーバッグとして使用する場合には、椅子7を折畳み、又脚6a,6bを折り畳んで収納し、前輪2a,2bを浮かせて後輪3a,3bを路面が転がって引くことが出来る。
【0025】
図5はハンドル4が縮小して持ち手5a,5bはバッグ1の上端に位置し、両脚6a,6bは折り畳まれてバッグ背面に形成した溝に収納している。従って、同図はキャリーバッグとして使用される場合を表している。そして、該キャリーバッグは持ち手を握って持ち上げることが出来る。図6は図5の背面側を示しているように、両脚6a,6bは溝に収容され、後輪3a,3bはバッグ1の背面側下端に位置している。
【0026】
そして、持ち手5a,5bには補助握り部8が設けられ、図5、図6に示す状態でバッグ1を持ち上げる場合には上記補助握り部8を使用することが出来る。補助握り部8は両持ち手5a,5bの中間位置であって、しかもバッグ1の正面側に位置している。両持ち手5a,5bはバッグ1の背面側に取付けで上下方向にスライドするハンドル4とほぼ同一面内に設けられ、この持ち手5a,5bの位置でバッグ1を持ち上げるならば、バッグ1の重心が正面側になることで、持ち上げられたバッグ1は傾いて背面下端部が体に接する。その為に、該バッグ1を持って歩き難くなる。
【0027】
正面側に位置している補助握り部8はバッグ1の重心部位を通る面内に位置することで、該補助握り部8を握って持ち上げたバッグ1は傾斜することなく、体に当ることはない。従って、バッグ1を持ち易く、しかも歩き易い。キャリーバッグとして使用する場合には、一般に後輪3a,3bが路面を転がって引くことが出来る。しかし、階段を上り下りする場合には該バッグ1を持ち上げなくてはならず、上記補助握り部8を持つことでバッグ1は傾くことなく安定する。
【0028】
図7はバッグ1の背面側を示しているが、バッグ1の背面側にはハンドル4が取付けられている。図8はハンドル4の上下スライド機構を示す具体例であり、同図に示すハンドル4は無段階で上下スライドすることが出来る。該ハンドル4は長方形断面のパイプから成り、このハンドル4は外ケース17に嵌って取付けられ、そして該外ケース17に沿って上下方向にスライドすることが出来る。
【0029】
外ケース17の下端は軸支されて前後方向に揺動することが出来る。そして、外ケース17の下端には心棒18が固定され、該心棒18は上方へ延びている。上記ハンドル4の内部にはジグザグに屈曲したチェーンが配置され、該心棒18をロックしている。ジグザグ状チェーンは所定の間隔をおいて上下位置に取付けられ、外ケース17に固定した心棒18にロックされることで、ハンドル4の上下方向スライドが阻止される。すなわち、ジグザグ状チェーンに形成される貫通穴に心棒18が挿通している。
【0030】
図9はジグザグ状チェーンを用いたロック機構を示す具体例であり、同図の19は上側ジグザグ状チェーン、20は下側ジグザグ状チェーンを示し、上側ジグザグ状チェーン19の上端は固定端21となってハンドル側に固定され、同じく下側ジグザグ状チェーン20の下端は固定端22と成ってハンドル側に固定されている。ジグザグ状チェーン19,20は複数のリンクをピンによって連結し、これをノコ歯状に屈曲してジグザグ形状としたものであり、ジグザグ形状に屈曲することで貫通した穴が形成され、この穴に心棒18が挿通している。
【0031】
従って、ハンドル4を上方へスライドして引き伸ばそうとする場合、上端に固定端21を持つ上側ジグザグ状チェーン19の各ピンが心棒18と係合してロックする。また、ハンドル4を下側へスライドして縮めようとする場合、下端に固定端22を持つ下側ジグザグ状チェーン20の各ピンが心棒18と係合してロックする。このように、ハンドル4の上下方向スライドは、上記上側ジグザグ状チェーン19及び下側ジグザグ状チェーン20によってロックされる。
【0032】
そこで、ハンドル4の上下スライドを行なう為には上側ジグザグ状チェーン19及び下側ジグザグ状チェーン20のロックを解除しなくてはならない。同図の23はロック解除プレートを示している。このロック解除プレート23はその上端がブロック24に固定され、該ブロック24は連結パイプ25の下端に取着されている。そして、該連結パイプ25の上端は、ハンドル4の上端部まで延び、ロック解除操作部26と連結している。
ところで、上側ジグザグ状チェーン19及び下側ジグザグ状チェーン20にはバネ力が付勢されて引き伸ばすように作用している。すなわち、各ピンが心棒18に常時接することが出来る状態と成っている。特に、下側ジグザグ状チェーン20の自由端28が自重にて降下し、ロック解除を操作する以外にピンが心棒18から離れないようにしている。
【0033】
図10はハンドル4の上端に取付けている持ち手5を示し、この持ち手5にはロック解除操作部26を取付けている。同図のロック解除操作部26は持ち上げた状態であって、このロック解除操作部26が持ち上げられるならば、連結パイプ25は上昇し、上記ロック解除プレート23も上昇する。その結果、ロック解除プレート23によって上側ジグザグ状チェーン19の自由端27が持ち上げられ、上側ジグザグ状チェーン19の各ピンは心棒18との係合が解かれ、ハンドル4を上方へスライドさせることが出来る。すなわち、ハンドル4を引き伸ばすことが出来る。
【0034】
逆に、ロック解除操作部26を押下げるならば連結パイプ25は降下し、連結パイプ25の下端に連結しているロック解除プレート23の降下によって下側ジグザグ状チェーン20の自由端28が押下げられる。その結果、下側ジグザグ状チェーン20の各ピンは心棒18との係合が解かれてハンドル4を下方へスライドさせることが出来る。すなわち、ハンドル4を縮めることが出来る。そこで、上記ロック解除操作部26を中間位置に配置するならば、ハンドル4は上昇することも降下することも出来ない。
【0035】
このように、ハンドル4は上下方向にスライドして伸縮することが出来るように成っているが、実施例で説明した上側ジグザグ状チェーン19及び下側ジグザグ状チェーン20を用いた無段階伸縮機構は単なる1具体例に過ぎない。ラチェットを用いた有段階の伸縮機構を採用することも出来る。ハンドル上端に設けている持ち手5の高さは、ハンドル4の上下スライドによって老人の体型に合うように調整可能としている。
【0036】
そして、このシルバーカーのハンドル4は上下スライドの他に前後方向に揺動することが出来、この前後揺動に連動してブレーキが作動するように成っている。すなわち、シルバーカーとして手押しする場合、両持ち手5a,5bを握って押圧するが、該押圧力によってハンドル4は前方へ傾斜する。このハンドル4の傾斜に連動して後輪3a,3bに取付けている制動機構が作動し、ブレーキを解除する。すなわち、後輪3a,3bは抵抗なく自由に回転することが出来る。
【0037】
しかし、持ち手5a,5bから手を離すならば、又はシルバーカーが坂道に差し掛かったところで、シルバーカーが独りでに先へ進もうとする場合、ハンドル4は後方(背面側)へ傾斜する。これは、ハンドル4にバネ力が常時付勢されている為に、持ち手5a,5bへの押圧力がなくなると後方へ押戻されるように傾斜する。従って、ハンドル4の後方への傾斜に連動して制動機構が作動してブレーキが掛かり、後輪3a,3bの回転が阻止されてシルバーカーは停止する。
【0038】
図11は後輪3a,3bの制動機構を示す具体例である。車軸29を中心に同心を成すリブ30が設けられ、このリブ30にジグザグ状チェーン31が取付けられている。このジグザグ状チェーン31は複数のリンクがピンを介して連結され、そして、リンクを中心として両側へ延びたピンにはローラ32a,32a・・・、32b,32b・・・が取着されている。これら複数のローラ32a,32a・・・、32b,32b・・・によって上記リブ30が挟み込まれており、一方のピンには軸側に固定した連結リンク33と連結・固定されている。
【0039】
ここで、リブ30の内径側に位置するローラ32bの径は小さく、外径側に位置するローラ32aの径は大きく成っており、シルバーカーを押すと後輪3は反時計方向に回転する。しかし、上記ジグザグ状チェーン31の各ローラ32a,32a・・・、32b,32b・・・がリブ30に係合することで、リブ30の回転、すなわち後輪3の回転が阻止される。ところで、車軸29に取付けた解除ブロック34が時計方向に回転して先端が上昇し、ジグザグ状チェーン31の先端に当るならばジグザグ状チェーン31は圧縮されて各ローラ32a,32a・・・、32b,32b・・・はリブ30との係合が解除される。
【0040】
上記解除ブロック34の車軸29にはトーションバネ(図示なし)が取付けられ、解除ブロック34の先端が上記ジグザグ状チェーン31の先端(自由端)に当らないようにバネ力を付勢している。このバネ力が付勢されている解除ブロック34と上記ハンドル4を取付けている外ケース17とがワイヤー35を介して連結している。ところで、該ジグザグ状チェーン31の各ローラ32a,32a・・・、32b,32b・・・が常にリブ30と係合状態にあるように、すなわち、解除ブロック34が先端に当って圧縮する時以外は係合するように、ジグザグ状チェーン31を引き伸ばす方向にバネ力を付勢している。ただし、具体的な手段は限定しないが、例えば、先端を弱いコイルバネで引張ることもでもよい。
【0041】
図12はハンドル4が嵌って取付けられている外ケース17の上端を示しているように、外ケース上端に取着した金具36にはワイヤー35が連結している。そして、このワイヤー35は上記解除ブロック34と連結している。そこで、ハンドル4が前方へ傾く場合、すなわち、シルバーカーのハンドル持ち手5a,5bに手を掛けて押すならば、ハンドル4は前方へ傾き、同時に外ケース17も傾いてワイヤー35を引張ることになる。
【0042】
そして、このワイヤー35は脚6の内部を通過して下端に取付けている後輪3へ導かれ、そして後輪3に取付けている解除ブロック34に連結している。解除ブロック34は時計方向に回転して先端がジグザグ状チェーン31の自由端に当ってロックが解除される。その結果、後輪3は反時計方向に回転してシルバーカーは前進することが出来る。図13は制動機構を設けた後輪3を脚先端に取付けた場合を示している。
【0043】
そして、シルバーカーのハンドル持ち手5a,5bから手を離すならば、車軸29に取付けたトーションバネによって解除ブロック34は反時計方向に回転して先端はジグザグ状チェーン31の自由端から離れる。その結果、リブ30にジグザグ状チェーン31の各ローラ32a,32a・・・、32b,32b・・・が係合して後輪3の回転をロックすることが出来る。そして、解除ブロック34を反時計方向に回転するトーションバネによって、ワイヤー35が引き戻されてハンドル4は後方側へ傾くことになる。
【0044】
同図に示す後輪3は正面キャップを取外した状態であり、正面キャップにも同心を成す同じ径のリブ30が設けられ、正面キャップを取付けることで該リブ30にもジグザグ状チェーン31の各ローラ32a,32a・・・、32b,32b・・・が係合することが出来る。正面キャップは同心を成して車軸29に嵌ると共に、回転しないようにピン37,37・・・が外周に設けたピン穴に嵌って取り付けられる。
【0045】
ところで、後輪3の制動機構は上記実施例に限定するものではない。車両のブレーキ装置として多用されているドラム式ブレーキ、又はディスクブレーキを用いることも出来る。そして、この場合も、ハンドル4の揺動と連動してブレーキが働くように構成できる。ドラム式ブレーキの場合、バネ力を付勢して常時ブレーキが働くようにしておき、ハンドル4を前方へ傾くことでドラムブレーキが解除されるように構成できる。勿論、ディスクブレーキの場合も同じように機能させることが可能である。
【0046】
図14は本発明に係る補助握り部8を備えた持ち手5を有すキャリーバッグを示す具体例である。バッグ1の正面側下端及び背面側下端にはキャスター38,38・・・が取付けられ、4個のキャスター38,38・・・にてキャリーバッグは垂直に起立している。これら各キャスター38,38・・・は前記実施例で説明したシルバーカーの車輪2,3に比較して小さく、持ち手5を引いて路面を転がることが出来る程度の大きさとしている。
【0047】
そして、バッグ1の背面側にはスライドするハンドル4が取付けられ、このハンドル4の上端には持ち手5を有している。そして、ハンドル上端にて正面側へアーム39,39が延び、該アーム先端に補助握り部8を設けている。持ち手5と補助握り部8とは所定の間隔を隔てて互いに平行とし、持ち手5又は補助握り部8を自由に握ることが出来る程度の間隔と成っている。そこで、キャリーバッグは背面側のキャスター38,38を路面に転がして引くことが出来るが、この際、持ち手5を握っても、又は補助握り部8を握ることが出来、何れを握るかは自由である。
【0048】
ただし、階段を上り下りする際には補助握り部8を持ってバッグ1を持ち上げる。持ち手5を持ってバッグ1を持ち上げる場合、バッグ1の重心が通る平面との間に距離があり、バッグ1は傾いてその背面側下端部は体に接して歩き難くなる。補助握り部8はバッグ1の重心を通る平面付近に設けられ、その為に、補助握り部8を持ってバッグ1を持ち上げる際には、該バッグ1が傾くことはない。
【0049】
図15は持ち手5及び補助握り部8の拡大図を示している。2本のハンドル4a,4bはバッグ背面に設けたガイドに拘束されて上下方向にスライドすることが出来、アーム39a,39bはハンドル4a,4bの上端に取付けられている。勿論、ハンドル4aとアーム39a、及びハンドル4bとアーム39bを連続して成形することも可能である。そして、両アーム39a,39bの基部と先端には持ち手5と補助握り部8とが跨って取付けられている。
【0050】
図16は本発明の他の実施例であり、持ち手40はハンドル4a,4bと同一面ではなく、上端部にて正面側へ湾曲したアーム39a,39bを連続して形成している。そして、アーム39a,39bの先端に持ち手40を取付けている。すなわち、前記図15で説明した実施例の持ち手5を省略した形態である。キャリーバッグの場合、シルバーカーのように押し転がす必要はない為に、図1に示すようにハンドルの両側へ延びる持ち手5a,5bは必要なく、中央部に位置する持ち手40のみで十分機能することが出来る。
【0051】
しかも、図15のように補助握り部8と平行を成す持ち手5がなくても、該バッグ1の正面側に位置する持ち手40を持ってキャリーバッグをひくことも可能である。そして、階段の上り下りの際には該持ち手40を握って持ち上げることが出来る。勿論、持ち手40の位置は両アーム39a,39bを湾曲してバッグ正面側へ延ばし、該バッグ1の重心を含む平面付近に位置している。
【符号の説明】
【0052】
1 バッグ
2 前輪
3 後輪
4 ハンドル
5 持ち手
6 脚
7 椅子
8 補助握り部
9 内部空間
10 軸
11 リンク
12 リブ
13 軸
14 ガイド溝
15 軸
16 軸
17 外ケース
18 心棒
19 上側ジグザグ状チェーン
20 下側ジグザグ状チェーン
21 固定端
22 固定端
23 ロック解除プレート
24 ブロック
25 連結パイプ
26 ロック解除操作部
27 自由端
28 自由端
29 車軸
30 リブ
31 ジグザグ状チェーン
32 ローラ
33 連結リンク
34 解除ブロック
35 ワイヤー
36 金具
37 ピン
38 キャスター
39 アーム
40 持ち手
41 蓋





















【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッグの背面側に上下方向にスライドするハンドルを取付けて路面を転がして持運ぶことが出来るキャリーバッグの上記ハンドル上端に設けた持ち手において、該持ち手から所定の間隔をおいてハンドル上端には正面側に補助握り部を平行に設けたことを特徴とするキャリーバッグの持ち手。
【請求項2】
バッグの背面側に上下方向にスライドするハンドルを取付けて路面を転がして持運ぶことが出来るキャリーバッグの上記ハンドル上端に設けた持ち手において、該持ち手はハンドル上端から正面側に位置ズレして設けたことを特徴とするキャリーバッグの持ち手。
【請求項3】
荷物を収容するバッグを有してキャリーバッグとしての機能を備えたシルバーカーであって、バッグの正面側下端には前輪を取付けると共にその向きを自由に変えることが出来る取付け構造とし、そしてバッグ背面側には2本の脚を斜め下方に傾斜して取付けて該脚先端には後輪を取付け、脚は折畳まれることで背面に設けた溝に収容され、又、バッグ背面側には上下方向にスライドするバンドルを取付け、このハンドル上端には両側へ延びる持ち手を設け、該持ち手から所定の間隔をおいてハンドル上端には正面側に補助握り部を平行に設けたことを特徴とするキャリーバッグの持ち手。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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