説明

キュプレドキシンを用いたエフリン信号伝達に関する症状を治療するための組成物および方法

本発明は、哺乳類細胞においてエフリン信号伝達系を妨害するキュプレドキシン、およびキュプレドキシンの変異体、誘導体または構造的均等物の組成物、および使用方法に関する。特に、本発明は、哺乳類における癌を治療するために、アズリン、ラスチシアニンおよびプラストシアニン、並びにその変異体、誘導体および構造的均等物のようなキュプレドキシンを使用する組成物および方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2006年2月3日に提出された米国仮特許出願第60/764,749号、2005年5月20日に提出された米国仮特許出願第60/682,812号、および2005年10月6日に提出された米国特許出願第11/244,105号について、米国特許法第119条および第120条下の優先権を主張する;この最後の基礎出願は、2004年10月7日に提出された米国仮特許出願第60/616,782号、および2005年5月13日に提出された米国仮特許出願第60/680,500号の優先権を主張し、且つ2003年11月11日に提出された米国特許出願第10/720,603号の一部継続出願であり、該親出願は2003年8月15日に提出された米国仮特許出願第60/414,550の優先権を主張し、且つ2002年1月15日に提出された米国特許出願第10/047,710号の一部継続出願であり、該親出願は2001年2月15日に提出された米国仮特許出願第60/269,133号の優先権を主張する。これら先の出願の全ての内容を、本願明細書の一部として援用する。
【政府の利益の陳述】
【0002】
この出願の主題は、アメリカ合衆国メリーランド州ベテスダの国立衛生研究所(NIH)からの研究助成金により支援されてきた(助成金番号AI 16790-21、ES 04050-16、AI 45541、CA09432およびN01-CM97567)。政府は、この発明において一定の権利を有し得る。
【発明の分野】
【0003】
本発明は、キュプレドキシン、並びにエフリンおよびエフリン受容体を含む細胞機能の調節におけるその使用に関する。本発明はまた、エフリン関連症状を治療する方法に関する。特に、本発明は、癌細胞の増殖および転移ならびに病理学的状態、特にエフリン/エフリン受容体信号伝達に関連した状態を遅延させる方法、並びにエフリン/エフリン受容体信号伝達に関連した他の治療的方法における、実質的に純粋なキュプレドキシンの使用に関する。本発明はまた、細胞におけるエフリン信号伝達系を干渉する能力を保持するキュプレドキシンの変異体、誘導体および構造的均等物に関する。
【背景】
【0004】
エフリン受容体(Eph受容体)は、エフリンと称されるリガンドのファミリーに結合することにより、発生中および成人の組織において多数のプロセスを調節する受容体チロシンキナーゼの大きなファミリーである。Eph受容体は、エフリンリガンドと共に、A型またはB型に分類される。現在、既知の9種のA型メンバー(EphA1-8およびEphA10)、並びに4種の既知のB型メンバー(EphB1-4およびEphB6)が存在する。一般に、A分類の受容体は優先的にA型リガンドに結合する一方、B分類の受容体は優先的にB型リガンドに結合する。Eph受容体は、単一の膜貫通ドメイン、免疫グロブリン様モチーフを備えたリガンド結合ドメインを具備するグリコシル化された細胞外領域、システインに富む領域、および二つのフィブロネクチンIII型反復については、他のチロシンキナーゼ受容体と同様である。(Surawska et al., Cytokine & Growth Factor Reviews 15:419-433 (2004))。これらのエフリンリガンドは、それらの配列保存に基づいてA分類およびB分類に分けられる。エフリンAリガンドは、通常はEph-A型受容体によって固定および結合されるグリコシルホスファチジルイノシトールであるのに対して、エフリンBリガンドは、膜貫通ドメインおよび短い細胞質領域を含んでおり、通常はEphB型受容体によって結合される。(上記と同じ文献参照)。
【0005】
信号伝達プロセスは、Eph受容体がエフリンリガンドと共に二量体化して、該受容体がリン酸化されるに至るときに開始される。高次のクラスタ化によって、エフリン-Eph受容体複合体の凝集物が形成される。受容体の活性化は、多量体化の程度に依存すると思われるが、受容体のリン酸化は低次形態および高次形態の両者において観察されるので、四量体形態には限定されないと思われる。多量体化の状態に応じて、異なるEph受容体複合体が生物学的効果を誘導できる。Eph受容体を通して受容体発現細胞への「順方向」信号伝達に加えて、エフリンを通してエフリン発現細胞への「逆方向」信号伝達も存在する。例えば、B-エフリン上の細胞質テールは、リン酸化されて、エフリン信号伝達細胞内において信号伝達エフェクタの動員および信号伝達カスケードを導くに至ることができる。(上記と同じ文献参照)。
【0006】
現在、エフリンは、軸索経路探索、神経細胞マイグレーション、および血管内皮細胞および特殊化された上皮における相互作用を含む、多くの細胞/細胞相互作用において役割を有することが知られている。(Flanagan & Vanderhaeghen, Annu. Rev. Neurosci. 21:309-345 (1998); Frisen et al., EMBO J. 18:5159-5165 (1999))。Eph受容体はまた、腫瘍の進行、血管新生の病理学的形態、組織損傷後の慢性疼痛、脊椎傷害後の神経変性阻害、およびヒトの先天的奇形を含む種々の病理学的プロセスに関係しているとされてきた。(Koolpe et al., J Biol Chem. 280:17301-17311 (2005))。Eph受容体はまた、肝細胞自己再生 v.s. 細胞の運命決定および分化のバランスにおいて、役割を果たすことが報告されている(同上参照)
Eph受容体およびエフリンの過剰発現は、腫瘍形成をもたらす可能性があり、また肺癌、乳癌および前立腺癌を含む多くの種類のヒトの癌、並びにメラノーマおよび白血病において、血管新生および転移に関連している。(Surawska et al., Cytokine & Growth Factor Reviews 15:419-433 (2004))。Eph受容体の過剰発現は細胞の増殖に影響することはないが、その浸潤挙動を変化させると思われる。一つの理論に従えば、EphA2が高レベルにある悪性細胞では該受容体が局在化を誤り、それらのエフリンリガンドを結合できず、従ってリン酸化されずに、増大した細胞外マトリックス付着および高い転移能力をもたらす。(Ruoslahti, Adv. Cancer Res. 76:1-20 (1999))。血管新生は、既に存在する血管からの新たな血管および毛細血管の形成であり、腫瘍が生存および増殖するために必須のプロセスである。腫瘍の血管浸潤の際の、Eph受容体/エフリンのアップレギュレーションを示す証拠が存在する。A型エフリンは特に腫瘍血管新生に関連しており、EphA2-FcおよびEphA3-Fc融合タンパク質は腫瘍の血管密度、腫瘍体積および細胞増殖を減少させ、またアポトーシスを増大させた。(Brantley et al., Oncogene 21:7011-7026 (2002))。
【0007】
EphB2受容体-エフリンB2複合体の結晶構造は、エフリンB2折り畳みトポロジーの外部ドメインが、通常のギリシャ鍵6バレル折り畳みの変形である8鎖のバレルであり、銅結合性タンパク質のキュブレドキシン科との顕著な相同性を共有するが、エフリンB2は銅を結合しないことを示している。エフリンおよびキュプレドキシン折り畳みタンパク質間の主要な相違は、エフリンG-HLおよびC-DLループの異常な長さであり、これらはそれぞれ二量体化および四量体化リガンド受容体インターフェースの一部である。
【0008】
結晶化の研究によって更に、G-HLループが受容体結合に関与することが示された。(Himanen et al., Nature 414:933-938 (2001))。マウス・エフリンB2の細胞外ドメインもまた、植物のノジュリンおよびフィトシアニンに対するトポロジー的類似性を有する。(Toth et al., Developmental Cell, 1:83-92 (2001))。
【0009】
微生物病原体に感染したヒトおよび動物における癌の退化に関する報告は、100年以上も前に遡り、Coleyによる最初の報告(Clin. Orthop. Relat. Res. 262:3-12 (1891))を端緒とするものである。その後の幾つかの報告によって、微生物病原体が腫瘍部位において低酸素条件下で複製し、感染の間に宿主の免疫系を刺激して、癌の進行阻害を導くことが示されている。(Alexandrof et al., Lancet 353:1689-1694 (1999); Paglia & Guzman, Cancer Immunol. Immunother. 46:88-92 (1998); Pawelek et al., Cancer Res. 57:4537-4544 (1997))。シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)および他の多くの細菌病原体は、細菌が宿主の防御を逃れて疾患を引起すことを可能にする或る範囲の毒性因子を産生する。(Tang et al., Infect. Immun. 64:37-43 (1996); Clark and Bavoil, Methods in Enzymology, vol. 235, Bacterial Pathogenesis, Academic Press, Inc. San Diego Calif. (1994);Salyers and Whitt, Bacterial Pathogenesis: A Molecular Approach, ASM Press, Washington D.C. (1994))。幾つかの毒性因子は、マクロファージのような食細胞におけるアポトーシスを誘導して、宿主の防御を弱体化させる。(Monack et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:10385-10390 (1997); Zychlinsky and Sansonetti, J. Clin. Investig. 100:493-495 (1997))。
【0010】
P. aeruginosaによって産生される二つの酸化還元タンパク質、即ち、キュプレドキシン・アズリンおよびチトクロムc551(Cyt c551)は、両者ともにJ774細胞に侵入し、正常細胞に比較したときにヒト癌細胞に対して顕著な細胞障害活性を示す。(Zaborina et al., Microbiology 146: 2521-2530 (2000))。アズリンはまた、ヒトメラノーマUISO-Mel-2細胞またはヒト乳癌MCF-7細胞にも侵入することができる。(Yamada et al., PNAS 99:14098-14103 (2002); Punj et al., Oncogene 23:2367-2378 (2004); Yamada et al., Cell. Biol. 7:14181431 (2005))。加えて、P. aeruginosa由来のアズリンは、J774マウス細網細胞肉腫細胞に優先的に侵入し、腫瘍抑制タンパク質p53との複合体を形成してこれを安定化させ、p53の細胞内濃度を高めてアポトーシスを誘導する。(Yamada et al., Infection and Immunity, 70:7054-7062 (2002))。アズリンはまた、非癌性細胞に比較して、ヒト骨肉種細胞中におけるアポトーシスの顕著な増大を引起す。(Ye et al., Ai Zheng 24:298-304 (2003))。
【0011】
P. aeruginosa由来のチトクロムC551(Cyt C551)は、腫瘍抑制タンパク質p16Ink4aのレベルを高め、J774細胞における細胞サイクルの進行を阻害する。(Hiraoka et al., PNAS 101:6427-6432 (2004))。しかし、HCT 116細胞のような大腸癌細胞、またはp53-ゼロの肺癌H1299細胞が野生型アズリンまたは野生型チトクロムc551の存在下で3日間増殖されたときに、それらは、H1299細胞(>20 μg/ml)よりも遥かに低濃度でHCT 116細胞の増殖を阻害した(IC50 = 17 μg/ml for azurin; 12 μg/ml for Cyt C)。上記文献参照。
【0012】
癌は、潜在的に無限の増殖性をもった悪性腫瘍である。それは主に、ヒトの身体に見られる種々の細胞型における病原性の複製(正常な調節制御の喪失)である。この疾患の初期治療は、手術、放射線治療、またはこれら治療の組合せであることが多いが、局所的再発および転移性疾患が頻発する。幾つかの癌については化学療法が利用可能であるが、これらは長期に亘る寛解を殆ど誘導しない。従って、それらは治癒的でないことが多い。一般に、腫瘍およびその転移は、多剤耐性の発生として知られる場合のように、化学療法に対して耐性になる。多くの場合、腫瘍はある種の化学療法剤に対して本来的に耐性である。加えて、このような治療は非癌性細胞を脅かし、ヒトの身体に対してストレスを加えるものであり、多くの副作用を生じる。従って、癌細胞の広がりを防止するために改善された薬剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、キュプレドキシン、並びに哺乳類細胞においてエフリン信号伝達系を妨害するキュプレドキシンの変異体、誘導体および構造的均等物の組成物、およびその使用方法に関する。詳細に言えば、本発明は、哺乳類における癌を治療するために、アズリンおよびプラストシアニンのようなキュプレドキシン、並びにその変異体、誘導体および構造的均等物を使用する組成物および方法に関する。
【0014】
本発明の一つの側面は、キュプレドキシンの変異体、誘導体または構造的均等物であり、且つ哺乳類の細胞または組織における癌の増殖を阻害できる単離されたペプチドに関する。このペプチドは、アズリン、プラストシアニン、シュードアズリン、プラストシアニン、ラスチシアニン、またはオーレシアニン、特に、アズリン、プラストシアニンおよびラスチシアニンであってよい。幾つかの実施形態において、該キュプレドキシンは、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、チオバチルス・フェロオキシダンス(Thiobacillus ferrooxidans)、フォルミジウム・ラミノスム(Phormidium laminosum)、アルカリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)、アクロモバクター・キシロソキシダン(Achromobacter xylosoxidan)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、メチロモナス・sp.(Methylomonas sp.)、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)、ナイセリア・ゴノロエアエ(Neisseria gonorrhoeae)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、キシレラ・ファスチジオサ(Xylella fastidiosa)、ククミス・サチブス(Cucumis sativus)、クロロフレクスス・オーランチアクス(Chloroflexus aurantiacus)、ビブリオ・パラヘモリチクス(Vibrio parahaemolyticus) またはウルバ・ペルツサ(Ulva pertusa)、特にPseudomonas aeruginosa、Thiobacillus ferrooxidans、Phormidium laminosumまたはUlva pertusaに由来するものである。この単離されたペプチドは、配列番号1〜17および22〜23の一部であってよい。加えて、配列番号1〜17および22〜23は、当該ペプチドに対して少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有してよい。
【0015】
幾つかの実施形態において、当該単離されたペプチドは、キュプレドキシンの短縮型であってよい。特定の実施形態において、当該ペプチドは、約10残基以上かつ100残基以下である。当該ペプチドは、P. aeruginosaアズリン残基96〜113、P. aeruginosaアズリン残基88〜113、Ulva pertusaプラストシアニン残基70〜84、Ulva pertusa 残基57〜98、または配列番号22〜30を含んでなるものでよく、或いはこれらからなるものであってよい。幾つかの実施形態において、単離されたペプチドは、P. aeruginosaアズリン残基96〜113、P. aeruginosaアズリン残基88〜113、Ulva pertusa プラストシアニン残基70〜84、Ulva pertusa残基57〜98、または配列番号22〜30からなる群から選択された目的キュプレドキシンの領域として、対象のキュプレドキシンの均等な残基を含んでいる
本発明のもう一つの側面は、少なくとも一つのキュプレドキシン、または医薬組成物中において哺乳類の細胞もしくは組織における癌の増殖を阻害できるキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を含んでなる組成物である。幾つかの実施形態において、当該医薬組成物は静脈内投与のために処方される。キュプレドキシンは、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、チオバチルス・フェロオキシダンス(Thiobacillus ferrooxidans)、フォルミジウム・ラミノスム(Phormidium laminosum)、アルカリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)、アクロモバクター・キシロソキシダン(Achromobacter xylosoxidan)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、メチロモナス・sp.(Methylomonas sp.)、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)、ナイセリア・ゴノロエアエ(Neisseria gonorrhoeae)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、キシレラ・ファスチジオサ(Xylella fastidiosa)、ククミス・サチブス(Cucumis sativus)、クロロフレクスス・オーランチアクス(Chloroflexus aurantiacus)、ビブリオ・パラヘモリチクス(Vibrio parahaemolyticus) またはウルバ・ペルツサ(Ulva pertusa)に由来するものであってよい。幾つかの実施形態において、該キュプレドキシンは、配列番号1〜17および22〜23のものであってよい。
【0016】
本発明のもう一つの側面は、エフリン信号伝達系に関連した病理学的状態に罹患した、または癌に罹患した哺乳類患者を治療する方法であって、前記患者に対して、医薬組成物中に少なくとも一つのキュプレドキシン、またはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を含んでなる治療的に有効な量の組成物を投与することを含んでなる方法である。幾つかの実施形態において、前記患者は間質性膀胱炎(IC)、炎症性腸疾患に付随する病巣、HIV感染、心臓血管系疾患、中枢神経系障害、抹消意見間疾患、ウイルス性疾患、中枢神経系の変性(Christopher Reeve氏病)、またはアルツハイマー病に罹患している。他の実施形態において、前記患者は癌、例えば乳癌、肝癌、胃腸癌、神経芽細胞腫、神経癌、白血病、リンパ腫、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、メラノーマ、卵巣癌、子宮内膜腫瘍、絨毛癌、奇形癌腫、甲状腺癌、軟組織および骨から生じるものを含む全ての肉腫、腎癌、類表皮癌、または非小細胞性肺癌に罹患している。幾つかの実施形態において、前記患者はヒトである。
【0017】
本発明のもう一つの側面は、哺乳類の細胞もしくは組織において癌の増殖を阻害できるキュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物である少なくとも二つの単離されたポリペプチドを含有する組成物である。幾つかの実施形態において、当該組成物は医薬組成物の形態である。
【0018】
本発明のもう一つの側面は、バイアル中の医薬組成物の形態で、少なくとも一つのキュプレドキシン、またはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を備えた組成物を含んでなるキットである。該キットは、静脈内投与のために設計されてよい。
【0019】
本発明のもう一つの側面は、哺乳類癌細胞を、キュプレドキシンまたはその変異体、誘導体もしくは構造的均等物に接触させることと;前記癌細胞の増殖を測定することとを含んでなる方法である。この癌細胞は乳癌、肝癌、胃腸癌、神経芽細胞腫、神経癌、白血病、リンパ腫、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、メラノーマ、卵巣癌、子宮内膜腫瘍、絨毛癌、奇形癌腫、甲状腺癌、軟組織および骨から生じるものを含む全ての肉腫、腎癌、類表皮癌、または非小細胞性肺癌であってよい。幾つかの実施形態において、当該癌細胞はインビボのものである。
【0020】
本発明のもう一つの側面は、哺乳類の細胞または組織において癌の増殖を阻害できるキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物をコードする発現ベクターである。
【0021】
本発明のもう一つの側面は、キュプレドキシンの変異体、誘導体、もしくは構造的均等物であり;且つエフリン受容体、例えばEphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA6、EphA7、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB4およびEphB6に結合できる単離されたペプチドである。幾つかの実施形態において、当該ペプチドはまた、エフリン、例えばエフリンA1、エフリンA2、エフリンA3、エフリンA4、エフリンA5、エフリンB1、エフリンB2、エフリンB3およびエフリンB4に結合することができる。他の実施形態において、当該単離されたペプチドは、エフリンおよびその受容体、特にエフリン2BおよびEph2Bに結合する。関連の側面において、単離されたペプチドはキュプレドキシンの変異体、誘導体または構造的均等物であり;且つエフリン、例えばエフリンA1、エフリンA2、エフリンA3、エフリンA4、エフリンA5、エフリンB1、エフリンB2、エフリンB3およびエフリンB4に結合することができる。
【0022】
本発明のもう一つの側面は、哺乳類患者において血管の成長を案内するために、少なくとも一つのキュプレドキシンまたは本発明のペプチドを、前記患者に投与することを含んでなる方法である。
【0023】
本発明のもう一つの側面は、哺乳類患者において血管の増殖を減少させるために、少なくとも一つのキュプレドキシンまたは本発明のペプチドを含有する医薬組成物を、前記患者に投与することを含んでなる方法である。
【0024】
本発明のもう一つの側面は、哺乳類患者において神経の成長を案内するために、少なくとも一つのキュプレドキシンまたは本発明のペプチドを含有する医薬組成物を、前記患者に投与することを含んでなる方法である。本発明のもう一つの側面は、哺乳類患者において骨形成を促進するために、少なくとも一つのキュプレドキシンまたは本発明のペプチドを含有する医薬組成物を、前記患者に投与することを含んでなる方法である。
【0025】
本発明のもう一つの側面は、エフリンの使用を必要とする治療方法において、エフリンの代わりに、少なくとも一つのキュプレドキシンまたは本発明のペプチドの有効量を哺乳類患者に対して用いることを含んでなる方法である。
【0026】
本発明のもう一つの側面は、哺乳類細胞に付随するエフリン受容体の活性を阻害するために、少なくとも一つのキュプレドキシンまたは本発明のペプチドを含有する医薬組成物を、前記哺乳類細胞に投与することを含んでなる方法である。
【0027】
本発明のもう一つの側面は、前記細胞に付随したエフリン受容体の活性を増大させるために、少なくとも一つのキュブレドキシンまたは本発明のペプチドを含有する医薬組成物を投与することを含んでなる方法である。本発明のもう一つの側面は、エフリン受容体を発現している組織を有するヒト患者に対して、医薬物質に融合された少なくとも一つのキュプレドキシン、またはキュプレドキシンの誘導体、変異体、誘導体もしくは構造的均等物を含んでなる本発明のペプチドを含有する医薬組成物を投与することを含んでなる方法である。幾つかの実施形態において、前記エフリン受容体を発現する組織は癌である。
【0028】
本発明のもう一つの側面は、エフリン受容体を備えた組織を検出する方法であって、ヒト患者に対して、検出可能なプローブに融合された少なくとも一つのキュプレドキシンまたは本発明のペプチドを含有する医薬組成物を投与するステップと、前記患者内におけるプローブの分布を検出するステップとを有する方法である。
【0029】
本発明のこれら及び他の側面、利点および特徴は、以下の特定の実施形態例の図面および詳細な説明から明らかになるであろう。
【0030】
<配列の簡単な説明>
配列番号1:Pseudomonas aeruginosa由来のアズリンのアミノ酸配列
配列番号2:Phormidium laminosum.由来のプラストシアニンのアミノ酸配列。
【0031】
配列番号3:Thiobacillus ferrooxidans由来のラスチシアニンのアミノ酸配列。
【0032】
配列番号4:Achromobacter cycloclastes由来のシュードアズリンのアミノ酸配列。
【0033】
配列番号5:Alcaligenes faecalis由来のアズリンのアミノ酸配列。
【0034】
配列番号6:Achromobacter xylosoxidans ssp.denitrificans I.由来のアズリンのアミノ酸配列。
【0035】
配列番号7:Bordetella bronchiseptica由来のアズリンのアミノ酸配列。
【0036】
配列番号8:Methylomonas sp. J.由来のアズリンのアミノ酸配列。
【0037】
配列番号9:Neisseria meningitidis Z2491由来のアズリンのアミノ酸配列。
【0038】
配列番号10:Neisseria gonorrhoeae由来のアズリンのアミノ酸配列。
【0039】
配列番号11:Pseudomonas fluorescens由来のアズリンのアミノ酸配列。
【0040】
配列番号12:Pseudomonas chlororaphis由来のアズリンのアミノ酸配列。
【0041】
配列番号13:Xylella fastidiosa 9a5c由来のアズリンのアミノ酸配列。
【0042】
配列番号14:Cucumis sativus由来のステラシアニンのアミノ酸配列。
【0043】
配列番号15:Chloroflexus aurantiacus由来のオーラシアニンAのアミノ酸配列。
【0044】
配列番号16:Chloroflexus aurantiacus由来のオーラシアニンBのアミノ酸配列。
【0045】
配列番号17:Cucumis sativus由来のキュウリ塩基性タンパク質のアミノ酸配列。
【0046】
配列番号18:18量体アズリンペプチド、即ち、Pseudomonas aeruginosaアズリン残基96〜113のアミノ酸配列。
【0047】
配列番号19:Pseudomonas aeruginosaアズリン残基88〜113のアミノ酸配列。
【0048】
配列番号20:Ulva pertusa plastocyaninプラストシアニン残基88〜113のアミノ酸配列。
【0049】
配列番号21:Vibrio parahaemolyticusアズリンのアミノ酸配列。
【0050】
配列番号22:Ulva pertusa plastocyaninのアミノ酸配列。
【0051】
配列番号23:ヒト由来のエフリンB2外部ドメインのアミノ酸配列。
【0052】
配列番号24:ヒトエフリンB2のG-Hループ領域のアミノ酸配列。
【0053】
配列番号25:エフリンB2のG-Hループ領域に構造的に類似したP. aeruginosaアズリンのアミノ酸配列。
【0054】
配列番号26:エフリンB2のG-Hループ領域に構造的に類似したThiobacillus (Acidithiobacillus) ferrooxidansラスチシアニン領域のアミノ酸配列。
【0055】
配列番号27:エフリンB2のG-Hループ領域に構造的に類似したChloroflexus aurantiacusオーラシアニンB領域のアミノ酸配列。
【0056】
配列番号28:エフリンB2のG-Hループ領域に構造的に類似したUlva pertusaプラストシアニン領域のアミノ酸配列。
【0057】
配列番号29:エフリンB2のG-Hループ領域に構造的に類似したCucumis sativus キュウリ塩基性タンパク質領域のアミノ酸配列。
【0058】
配列番号30:エフリンB2のG-Hループ領域に構造的に類似したCucumis sativus ステラシアニン領域のアミノ酸配列。
【0059】
配列番号31:ヒトエフリンB2領域残基69〜138のアミノ酸配列。
【0060】
配列番号32:Ulva pertusa プラストシアニン残基57〜98のアミノ酸配列。
【0061】
配列番号33:ヒト・エフリンB2領域残基68〜138のアミノ酸配列。
【0062】
配列番号34:P. aeruginosaアズリン残基76〜128のアミノ酸配列。
【発明の詳細な説明】
【0063】
<定義>
ここで使用する「細胞」の用語は、特に「単一の細胞」と記載しない限り、一つまたは複数の該用語を含むものである。
【0064】
ここで使用する「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」の用語は、アミノ酸残基のポリマーを意味するために互換的に使用される。この用語は、1以上のアミノ酸残基が天然に存在するアミノ酸の人工の化学的類似体であるアミノ酸ポリマーに適用される。「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」にはまた、グリコシル化、脂質結合、硫酸化、グルタミン酸残基のγ-カルボキシル化、ヒドロキシル化、およびADP-リボシル化(これらに限定されない)を含む修飾も含まれるものである。ポリペプチドは、全体が常に直線状ではない旨が理解されるであろう。例えば、ポリペプチドはユビキチン結合の結果として分岐する可能性があり、また一般的には、天然のプロセッシング現象および天然には生じないヒトの操作によりもたらされる事象を含む翻訳後事象の結果として、環状(分岐を伴い、または伴わずに)である可能性がある。環状、分岐状、および分岐環状のポリペプチドは、非翻訳天然プロセスによって、また全合成法によっても同様に合成され得る。本発明は更に、本発明のタンパク質の、メチオニン含有およびメチオニン非含有の両方のアミノ末端変異体の使用を想定している。
【0065】
ここで使用する「病理学的状態」の用語は、生きた動物またはその部分の一つの正常な状態の機能障害を構成する、正常な状態からの解剖学的および生理学的偏向を含んでおり、該障害は身体機能の特性を妨害または変更するものであり、また種々の因子(栄養不良、産業的危険、または気候)に対する、特定の感染物質(虫、寄生プロトゾア、細菌、またはウイルス)に対する、生物の固有の欠陥(遺伝子異常)に対する、またはこれら因子の組合せに対する応答である可能性がある。
【0066】
ここで使用する「状態」の用語は、正常な状態からの解剖学的および生理学的な偏向を含むものであり、該障害は、生きた動物またはその部分の一つの正常な状態の機能障害を構成し、身体機能の特性を妨害または変更するものである。
【0067】
ここで使用する「細胞増殖を阻害する」の用語は、細胞分裂および/または細胞増殖を遅くし、または停止させることを意味する。この用語はまた、細胞発育の阻害、または細胞死を増大させることを含む。
【0068】
ここで使用する「…に罹患した」の用語は、病理学的状態の症候群を現在提示していること、観察可能な症候群を伴わない病理学的状態を有すること、病理的状態からの回復過程にあること、病理学的状態から回復したことを含むものである。
【0069】
ここで使用する「治療」の用語は、治療される状態に関連した状態または症候群の進行または重篤度を防止、低下、停止または反転させることを含むものである。従って、「治療」には、医学的、治療的、および/または予防的投与が適宜含まれる。
【0070】
「治療的に有効な量」は、治療されている患者の特定の状態において存在する症状の発生を防止または遅延させ、または部分的もしくは全体的に緩和するために有効な量である。治療的有効量の決定は、充分に当業者の能力の範囲内である。
【0071】
ここで使用する「p53腫瘍抑制遺伝子の発現不足」の用語は、不活性化され、変異を受け、喪失もしくは過少産生されるp53腫瘍抑制遺伝子をもった細胞を意味する。例えば、このような不足は、p53遺伝子内における遺伝的異常の結果として、または後成的な理由によって、例えば当該腫瘍抑制遺伝子の上流のCGアイランドにおけるC残基のハイパーメチル化もしくはウイルス性および細胞性の発ガン遺伝子との相互作用の結果として生じる可能性がある。
【0072】
ここで使用する「実質的に純粋な」の用語は、「キュプレドキシン」の用語を修飾するために使用されるときは、キュプレドキシン、例えば、増殖培地もしくは細胞内容物から単離された、他のタンパク質および/または活性な阻害性化合物を実質的に含まない、またはこれらが混入していないキュプレドキシンを意味する。「実質的に純粋な」の用語は、単離された画分の乾燥重量で少なくとも約75%、または少なくとも「75%の実質的に純粋な」因子を意味する。より詳細に言えば、「実質的に純粋な」の用語は、乾燥重量で少なくとも約85%の活性化合物、または少なくとも「85%の実質的に純粋な」化合物を意味する。最も詳細に言えば、「実質的に純粋な」の用語は、乾燥重量で少なくとも約95%の活性化合物、または少なくとも「95%の実質的に純粋な」化合物を意味する。実質的に純粋なキュプレドキシンは、1以上の他の実質的に純粋な化合物または単離されたキュプレドキシンと組み合わせて使用することができる。
【0073】
「単離された」、「純粋な」または「生物学的に純粋な」の語句は、当該物質が天然の状態で存在するときに、該物質に普通に付随する成分を実質的または本質的に含まない物質を意味する。従って、本発明に従う単離されたペプチドは、好ましくは、通常そのインサイチュー環境で当該ペプチドに付随する物質を含んでいない。「単離された」領域は、当該領域が由来するポリペプチドの全ての配列を含んでいない領域を意味する。「単離された」核酸、タンパク質、またはそのそれぞれの断片は、限定されるものではないが、核酸配列決定、制限分解、部位特異的突然変異誘発、および核酸断片のための発現ベクターへのサブクローニング、並びに実質的に純粋な量で当該タンパク質もしくはタンパク質断片を得ることのような、当業者によって操作され得る等のように、それが当業者によって操作され得るように、それらのインビボ環境から実質的に除去されている。
【0074】
ペプチドに関してここで使用する「変異体」の用語は、野生型ポリペプチドに比較したときに、アミノ酸が置換、欠失または挿入されていてよいアミノ酸配列変異体を意味する。変異体は、野生型ペプチドの短縮型であってもよい。従って、変異体ペプチドは、当該ポリペプチドをコードする遺伝子の操作によって製造されてよい。変異体は、当該ポリペプチドの塩基組成または特徴を変化させるが、その基本的活性の少なくとも幾つかは変化させないことによって作製されてよい。例えば、アズリンの「変異体」は、その哺乳類癌細胞の増殖を阻害する能力を保持する突然変異されたアズリンであることができる。幾つかの場合に、変異体ペプチドは、ε-(3,5-ジニトロベンゾイル)-Lys残基のような非天然アミノ酸を用いて合成される。(Ghadiri & Fernholz, J. Am. Chem. Soc., 112:9633-9635 (1990))。幾つかの実施形態において、該変異体は野生型ペプチドと比較して20、19、18、17または16個以下のアミノ酸が置換され、欠失され、または挿入されている。幾つかの実施形態において、該変異体は野生型ペプチドと比較して15、14、13、12または11個以下のアミノ酸が置換され、欠失され、または挿入されている。幾つかの実施形態において、該変異体は野生型ペプチドと比較して10、9、8、または7個以下のアミノ酸が置換され、欠失され、または挿入されている。幾つかの実施形態では、該変異体は野生型ペプチドと比較して6個以下のアミノ酸が置換され、欠失され、または挿入されている。
【0075】
ここで使用する「アミノ酸」の用語は、何れかの天然に存在するアミノ酸または天然に存在しないもしくは合成のアミノ酸残基を含んでなるアミノ酸部分、即ち、一つ、二つまたは三つ以上の炭素原子、典型的には一つの(α)炭素原子によって直接結合された少なくとも一つのカルボニル残基および少なくとも一つのアミノ酸残基を含んでなる何れかの部分を意味する。
【0076】
ペプチドに関してここで使用する「誘導体」の用語は、対象のペプチドから誘導されるペプチドを意味する。誘導体化は、当該ペプチドが未だその基本的活性の幾つかを保持するような、ペプチドの化学的修飾を含んでいる。例えば、アズリンの「誘導体」は、その哺乳類癌細胞の増殖を阻害する能力を保持する化学的に修飾されたアズリンであることができる。興味ある化学的修飾には、限定されるものではないが、当該ペプチドのアミド化、アセチル化、硫酸化、ポリエチレングリコール(PEG)修飾、ホスホリル化またはグリコシル化が含まれる。加えて、誘導体ペプチドは、限定されるものではないが、もう一つのペプチド、薬物分子、他の治療的もしくは医薬的物質または検出可能なプローブのような化学的化合物への、ポリペプチドまたはその断片の融合体であってよい。
【0077】
「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」の用語は、二つの配列を整列させたときに、候補配列におけるアミノ酸残基と同一である、ポリペプチド中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。%アミノ酸同一性を決定するために、配列は整列され、必要であれば、最大%配列同一性を達成するためにギャップが導入され;保存性置換は配列同一性の一部とは看做されない。パーセント同一性を決定するためのアミノ酸配列の整列手順は、当業者に周知である。屡々、公的に入手可能なコンピュータソフトウエア、例えばBLAST、BLAST2、ALIGN2またはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアが、ペプチド配列を整列させるために使用される。特定の実施形態では、長い複雑性フィルタのデフォルトパラメータ(期待値10、ワードサイズ3、存在11、および拡張1)を使用して、Blastp(メリーランド州ベテスダの国立バイオテクノロジー情報センターから入手可能)が使用される。
【0078】
アミノ酸配列が整列されるときに、所定のアミノ酸配列Aの、所定のアミノ酸配列Bに対する%アミノ酸配列同一性(或いは、これは所定のアミノ酸配列Bに対して一定の%アミノ酸配列同一性を有し、または含んでなる所定のアミノ酸配列Aと呼ぶことができる)は、下記のように計算することができる:
%アミノ酸配列同一性=X/Y*100
ここで、
・Xは、配列整列プログラムまたはアルゴリズムの、配列AおよびBの整列によって同一の文字列として評価されたアミノ酸残基の数であり、
・Yは、Bにおけるアミノ酸残基の合計数である。
【0079】
アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しければ、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性に等しくはない。
【0080】
より長い配列をより短い配列と比較するときには、より短い配列が「B」配列になるであろう。例えば、短縮型ペプチドを野生型ポリペプチドに比較するときは、短縮型ペプチドが「B」配列になるであろう。
【0081】
<一般>
本発明の幾つかの側面は、種々の哺乳類の細胞および組織においてエフリン信号伝達系を妨害するため、また哺乳類癌細胞の増殖を阻害するために、エフリンに対する構造的類似性を有するキュプレドキシンを使用する組成物および方法を提供する。即ち、本発明は、インビトロおよびインビボで、種々の哺乳類細胞および組織においてエフリン信号伝達系を妨害するため、また哺乳類癌細胞の増殖を阻害するために、キュプレドキシン、およびその変異体、誘導体および構造的均等物を使用する組成物および方法を提供する。
【0082】
発明者等は、以前、病原性微生物が、ATP-非依存性の細胞障害性因子、例えばP. aeruginosa由来のアズリンのような酸化還元タンパク質を分泌すること、およびこのような因子は、特に癌細胞においてアポトーシスによりJ774細胞の死を生じることを発見した。また、アズリンは約アミノ酸残基50〜77のドメインを有し、これは該タンパク質が癌細胞の中に優先的に侵入して、細胞毒性を誘導することを促進する。
【0083】
驚くべきことに、発明者は今回、アズリンおよび他のキュプレドキシンの中に、エフリンに対する構造的類似性を示すC末端ドメインが存在することを発見した。例えば、実験例2、実験例5および実験例9を参照されたい。また、アズリンおよびプラストシアニン、並びにこれらペプチドの特別な領域は、エフリンG-Hループに対して構造的に相同性であり、エフリン受容体に対して1:1の比率で競争的に結合することも分かった。実験例6〜8参照。特に、P. aeruginosaアズリンは、エフリン受容体EphB2およびEphA6に結合する。実験例6参照。Phormidium laminosum プラストシアニンは、エフリン受容体EphA1、A3およびB2、並びにまたより低い程度ではエフリン受容体EphA2およびA6を結合することについて特異性を示す。例えば実験例6参照。最後に、ラスチシアニンはエフリン受容体EphA8およびB1に対して弱い結合性を示す。実験例6参照。また、今では、エフリンG-Hループ領域に対する構造的相同性を含むアズリン領域のアミノ酸残基88〜113が、エフリン受容体EphB2に結合することが知られている。実験例7参照。最後に、今では、アズリンおよびアズリンの88〜113領域がエフリンB2ならびにエフリン受容体EphB2に結合し、エフリン受容体EphB2についてエフリンB2と競合できることが知られている。実験例8参照。
【0084】
発明者等はまた、エフリンG-H領域に対して構造的類似性を有する領域を備えたキュプレドキシンが、インビトロにおいて哺乳類癌細胞の増殖を阻害することを発見した。一般に、Phormidium laminosumプラストシアニン、Thiobacillus ferrooxidansラスチシアニン、およびP. aeruginosa アズリンは、トリパン青アッセイにおいて、Mel-2ヒトメラノーマ細胞およびMCF-7ヒト乳癌細胞のインビトロ増殖を阻害する。実験例4参照。更に、アズリンの88〜113残基領域は、今や、MCF-7乳癌細胞の細胞増殖を阻害することが知られている。実験例10参照。最後に、エフリンB2のG-Hループ領域に対する構造的類似性の領域に対応する18量体アズリンペプチドおよび15量体Ulva pertusaプラストシアニンペプチドは、今や、MCF-7ヒト乳癌細胞、CCF-STTG1脳腫瘍星細胞腫およびLN-229グリア芽細胞腫の細胞の増殖をインビトロで阻害することが知られている。実験例3および実験例9参照。
【0085】
驚くべきことに、エフリンB2のG-Hループに対する構造的類似性を備えたキュプレドキシンはまた、インビボでのエフリン関連の発生にも影響する。今や、C. elegansでのエフリンに関連した発生のインビボ研究から、キュプレドキシン・ラスチシアニンが尾筋肉形成を妨害する一方、キュプレドキシン・アズリンは胚形成を妨げることが知られているが、両者共にエフリン関連発生プロセスである。実験例1参照。
【0086】
アズリンに加えて、キュプレドキシン、ラスチシアニンおよびプラストシアニンもまた、エフリンB2のGおよびH領域との構造的相同性を共有している。実験例2および実験例5参照。更に、アズリンおよびフィトシアニン、ステラシアニンおよびキュウリ塩基性タンパク質もまた、エフリンとの顕著な構造的相同性を共有している。一般的にキュプレドキシン科のタンパク質における構造の保存の故に、他の多くのキュプレドキシンおよびキュプレドキシン様タンパク質もまた、エフリンに対する顕著な構造的相同性を呈する。実験例2参照。従って、一般にキュプレドキシン科のタンパク質は、本発明の組成物および方位方を使用して、エフリン信号伝達に関連する状態および癌を治療するために使用することができると考えられる。興味ある特別なキュプレドキシンには、アズリン、ラスチシアニン、プラストシアニン、ステラシアニン、オーラシアニン、シュードアズリンおよびキュウリ塩基性タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。タンパク質配列の例は、プラストシアニン(配列番号2および22)、ラスチシアニン(配列番号3)、シュードアズリン(配列番号4)、ステラシアニン(配列番号14)、オーラシアニン(配列番号15および16)、並びにキュウリ塩基性タンパク質(配列番号17)としてここに見出される。ここで使用される「キュプレドキシン」の用語は、Neisseria由来のLazのようなキュプレドキシン様タンパク質を含む、キュプレドキシン科のタンパク質の何れかの構成員を意味する。
【0087】
アズリンは特別に特異的であり、これらキュプレドキシンのタンパク質配列がここに見られ、限定されるものではないが、下記から単離されたもの等である:Pseudomonas aeruginosa (配列番号1);Alcaligenes faecalis(配列番号5);Achromobacter xylosoxidans ssp.denitrificans I(配列番号6);Bordetella bronchiseptica(配列番号7);Methylomonas sp. J(配列番号8);Neisseria meningitidis(配列番号9);Neisseria gonnorrhoeae(配列番号10)、Pseudomonas fluorescens(配列番号11);Pseudomonas chlororaphis(配列番号12);Xylella fastidiosa 9a5c(配列番号13)およびVibrio parahaemolyticus(配列番号21)。最も具体的な実施形態において、アズリンはPseudomonas aeruginosa由来のものである。他の具体的な実施形態において、キュプレドキシンは、プラストシアニン(配列番号2および22)、ラスチシアニン(配列番号3)、シュードアズリン(配列番号4)、ステラシアニン(配列番号14)、オーラシアニン(配列番号15および16)、およびキュウリ塩基性タンパク質(配列番号17)である。
【0088】
幾つかの実施形態において、キュプレドキシンはギリシャ鍵ベータバレル構造を有する。このギリシャ鍵ベータバレル構造は、周知のタンパク質折り畳みである。例えば、Zhang & Kim (Proteins 40:409-419 (2000))を参照されたい。ギリシャ鍵トポロジーは、ギリシャ陶器に共通のパターンの後に命名される。それは、ヘアピンにより結合された三つの上向きおよび下向きベータ鎖を有しており、その後に第四のベータ鎖に対する長い連結が続き、これは前記第一のベータ鎖に隣接して存在する。特定の実施形態において、キュプレドキシン、およびキュプレドキシンの変異体、誘導体および構造的均等物は、少なくとも一つのギリシャ鍵ベータバレル構造を具備している。もう一つの特定の実施形態において、キュプレドキシン、並びにキュプレドキシンの変異体、誘導体および構造的均等物は、少なくとも4ベータ鎖のギリシャ鍵構造を含んでいる。もう一つの更に特定の実施形態において、キュプレドキシン、並びにキュプレドキシンの変異体、誘導体および構造的均等物は、2以上のギリシャ鍵ベータバレル構造を含んでいる。
【0089】
<本発明の組成物>
本発明は、キュプレドキシンの変異体、誘導体または構造的均等物であるペプチドを提供する。幾つかの実施形態において、該ペプチドは実質的に純粋である。他の実施形態において、該ペプチドは組成物の形態であり、この組成物は該ペプチドを含んでなるか、該ペプチドからなるか、または実質的に該ペプチドからなるものである。他の実施形態において、該ペプチドは単離されている。幾つかの実施形態において、該ペプチドは全長キュプレドキシンよりも小さく、キュプレドキシンの機能的特徴の幾つかを保持している。幾つかの実施形態において、該ペプチドは、哺乳類細胞および組織においてエフリンの信号伝達を妨げ、および/または哺乳類癌細胞の増殖を阻害する能力を保持している。もう一つの特別な実施形態において、該ペプチドは哺乳類、特にヒトにおいて免疫応答を生じない。
【0090】
本発明はまた、少なくとも一つ、少なくとも二つ、または少なくとも三つのキュプレドキシン、またはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を含有する組成物を提供する。本発明はまた、医薬組成物中に少なくとも一つ、少なくとも二つ、または少なくとも三つのキュプレドキシン、またはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を含有する組成物を提供する。
【0091】
キュプレドキシン間の高い構造的相同性のために、他のキュプレドキシンのファミリーがエフリン信号伝達を妨害でき、また哺乳類の細胞および組織における癌の増殖を特異的に阻害できるであろうことが想定される。
【0092】
幾つかの実施形態において、キュプレドキシンは、限定されるものではないが、アズリン、シュードアズリン、プラストシアニン、シュードアズリン、ラスチシアニン、またはオーラシアニンである。特に特殊な実施形態において、アズリンはシュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、アルカリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)、アクロモバクター・キシロソキシダン(Achromobacter xylosoxidan ssp)、デニトリフィカンスI(denitrificans I)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、メチロモナス・sp.(Methylomonas sp.)、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)、ナイセリア・ゴノロエアエ(Neisseria gonorrhoeae)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、キシレラ・ファスチジオサ9a5(Xylella fastidios 9a5a)、またはビブリオ・パラヘモリチクス(Vibrio parahaemolyticus)に由来するものである。非常に特殊な実施形態において、アズリンはPseudomonas aeruginosaに由来するものである。他の特殊な実施形態において、キュプレドキシン はプラストシアニンであり、更に詳細には、Phormidium laminosum またはUlva pertusa由来のプラストシアニンである。他の特殊な実施形態において、キュプレドキシンはラスチシアニンであり、更に詳細には、Thiobacillus ferrooxidans由来のラスチシアニンである。他の特殊な実施形態において、キュプレドキシンは、配列番号1〜17、21〜22のアミノ酸配列を含んでなるものである。
【0093】
本発明は、野生型のポリペプチドに比較して、置換、欠失または挿入されたアミノ酸を有する、キュプレドキシンのアミノ酸配列変異体を提供する。本発明の変異体は、野生型ポリペプチドの短縮型であってよい。ここで用いるポリペプチドの「短縮型」は、ポリペプチド配列の少なくとも一端から、少なくとも一つのアミノ酸残基を除去することにより生じるペプチドである。幾つかの実施形態において、短縮型ペプチドは、ポリペプチド配列の一端または両端から、合計で少なくとも1アミノ酸残基、少なくとも5アミノ酸残基、少なくとも10アミノ酸残基、少なくとも50アミノ酸残基、または少なくとも100アミノ酸残基の除去から生じる。幾つかの実施形態において、該組成物は、野生型ポリペプチドの全長よりも小さいキュプレドキシン領域からなるペプチドを含んでなるものである。幾つかの実施形態において、該組成物は、約10残基超、約15残基超、または約20残基超の短縮型キュプレドキシンからなるペプチドを含んでなるものである。幾つかの実施形態において、該組成物は、約100残基以下、約50残基以下、約40残基以下、または約30残基以下の短縮型キュプレドキシンからなるペプチドを含んでなるものである。幾つかの実施形態において、前記変異体は、これに対してキュプレドキシン、より詳細には配列番号1〜17、21〜22が、少なくとも90%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約91%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するペプチドである。
【0094】
特定の実施形態において、キュプレドキシンの変異体は、P. aeruginosaのアズリン残基96-113(配列番号18)、88〜113(配列番号19)または配列番号25を含んでなるものである。他の実施形態において、キュプレドキシンの変異体は、Ulva pertusaの残基70-84(配列番号20)、Ulva pertusaの残基57-98(配列番号32)、またはUlva pertusaの配列番号28を含んでなるものである。他の特定の実施形態において、キュプレドキシンの変異体は、Ulva pertusa の残基70-84(配列番号20)、Ulva pertusaの残基57-98(配列番号32)、またはUlva pertusa 配列番号28からなるものである。他の特定の実施形態において、キュプレドキシンの変異体は、Thiobacillus ferrooxidansのラスチシアニン配列(配列番号26)、Chloroflexus aurantiacusのオーラシアニン(配列番号27)、Cucumis sativusの配列(配列番号29および30)からなるものである。他の特定の実施形態において、キュプレドキシンの変異体はThiobacillus ferrooxidansのラスチシアニン配列(配列番号26)、Chloroflexus aurantiacusのオーラシアニン(配列番号27)、Cucumis sativus配列(配列番号29および30)からなる。他の特定の実施形態において、該変異体は、もう一つのキュプレドキシンからの上記短縮型配列に対する均等配列からなるものである。他のキュプレドキシン変異体は、上記の変異体の何れかに対して、類似の活性を有するように設計できることが想定される。これを行うために、主題のキュプレドキシンのアミノ酸配列は、BLAST、BLAST2、ALIGN2またはMegalign(DNASTAR)を使用して、上記の短縮型変異体を含む目的のキュプレドキシン配列、目的キュプレドキシン配列上に位置する短縮型変異体の関連残基、および主題キュプレドキシン配列上に見られる均等残基、およびこうして設計された均等な短縮は変異体に対して整列されるであろう。
【0095】
この変異体はまた、天然には存在しない合成アミノ酸を用いて製造されたペプチドを含むものである。例えば、天然に存在しないアミノ酸は、血流中における当該組成物の半減期を延長または最適化するために、該変異体ペプチドの中に組込むことができる。このような変異体には、D,L-ペプチド(ジアステレオマー)(Futaki et al., J. Biol. Chem. 276(8):5836-40 (2001);Papo et al., Cancer Res. 64(16):5779-86 (2004);Miller et al, Biochem. Pharmacol. 36(1):169-76, (1987));異常なアミノ酸を含むペプチド(Lee et al., J. Pept. Res. 63(2):69-84 (2004))、およびオレフィン含有の非天然アミノ酸に続く炭化水素ステープリング(Schafmeister et al., J. Am. Chem. Soc. 122:5891-5892 (2000); Walenski et al., Science 305:1466-1470 (2004))、およびε-(3,5-ジニトロベンゾイル)-Lys残基が含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
他の実施形態において、本発明のペプチドは、キュプレドキシンの誘導体である。このキュプレドキシンの誘導体は、該ペプチドが未だその基本的活性の幾つかを保持するような、当該ペプチドの化学修飾体である。例えば、アズリンの「誘導体」は、エフリンの信号伝達を妨げ、哺乳類の細胞および組織において癌の増殖を特異的に阻害する能力を保持した、化学的に修飾されたアズリンであることができる。興味ある化学的修飾には、ペプチドのアミド化、アセチル化、硫酸化、ポリエチレングリコール(PEG)修飾、リン酸化およびグリコシル化が含まれるが、これらに限定されない。加えて、誘導体ペプチドは、キュプレドキシン、またはその変異体、誘導体もしくは構造的均等物の、化学的化合物(限定するものではないが、例えばもう一つのペプチド、薬物分子または他の治療的もしくは医薬物質または検出可能なプローブ)に対する融合体であってよい。興味ある誘導体には、例えば当業者に周知の幾つかの方法による、本発明のペプチドおよび組成物の血流中での半減期が延長または最適化される化学的修飾が含まれ、前記方法には、環化されたペプチド(Monk et al., BioDrugs 19(4):261-78, (2005); DeFreest et al., J. Pept. Res. 63(5):409-19 (2004))、N末端およびC末端修飾(Labrie et al., Clin. Invest. Med. 13(5):275-8, (1990))、およびオレフィン含有非天然アミノ酸に続く炭化水素ステープリング(Schafmeister et al., J. Am. Chem. Soc. 122:5891-5892 (2000); Walenski et al., Science 305:1466-1470 (2004))が含まれるがこれらに限定されない。
【0097】
当該ペプチドの発明は、キュプレドキシンの変異体、誘導体および/または構造的均等物であってよいことが想定される。例えば、該ペプチドは、PEG化されているアズリンの短縮型(従って、これは変異体および誘導体の両方である)であってよい。一つの実施形態において、本発明のペプチドは、αオレフィンを含有するテザーを含むα二置換非天然アミノ酸に続く、ルテニウム触媒オレフィン副分解による全炭化水素「ステープル」を用いて合成される。(Scharmeister et al., J. Am. Chem. Soc. 122:5891-5892 (2000); Walensky et al., Science 305:1466-1470 (2004))。加えて、アズリンの構造的均等物であるペプチドは他のペプチドに融合されてよく、構造的均等物および誘導体の両方であるペプチドを作製してもよい。これらの例は、本発明を単に例示するものに過ぎず、本発明を限定するものではない。キュプレドキシンの誘導体または構造的均等物は、銅に結合してもよく、結合しなくてもよい。
【0098】
もう一つの実施形態において、該ペプチドはキュプレドキシンの構造的均等物である。キュプレドキシンと他のタンパク質の間の有意な構造的相同性を決定する研究の例には、Toth et al.(Developmental Cell 1:82-92 (2001))が含まれる。即ち、キュプレドキシンおよび該構造的均等物の間の有意な相同性は、VASTアルゴリズムを使用して決定される。(Gibrat et al., Curr Opin Struct Biol 6:377-385 (1996); Madej et al., Proteins 23:356-3690 (1995))。特定の実施形態において、当該構造的均等物に対するキュプレドキシンの構造比較からのVASTのP値は、約10-3未満、約10-5未満、または約10-7未満である。他の実施形態において、キュプレドキシンと該構造的均等物の間の顕著な構造的相同性は、DALIアルゴリズム(Holm & Sander, J. Mol. Biol. 233:123-138 (1993))を用いて決定される。特定の実施形態において、1対毎の構造比較のためのDALI Zスコアは、少なくとも約3.5、少なくとも約7.0、または少なくとも約10.0である。これら決定の例は、実施例2および9に見られる。
【0099】
幾つかの実施形態において、キュプレドキシン、またはその変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、P. aeruginosaアズリン、Ulva pertusaプラストシアニン、Phormidium laminosumプラストシアニン、またはThiobacillus ferrooxidans ラスチシアニンの機能的特徴の幾つかを有する。特定の実施形態において、キュプレドキシン、またはその変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、エフリン信号伝達系の干渉を阻害し、および/または哺乳類細胞および組織における癌の増殖を阻害する。哺乳類癌の細胞または組織の増殖阻害は、キュプレドキシン、またはその変異体、誘導体もしくは構造的均等物によるエフリン信号伝達系の何れかの干渉に関係しているかも知れず、または関係しないかもしれない。キュプレドキシン、またはその変異体、誘導体もしくは構造的均等物がエフリン信号系に干渉するかどうかを決定する方法は、当該技術において周知であり、キュプレドキシン、またはその変異体、誘導体もしくは構造的均等物がエフリン信号伝達経路の成分(限定されるものではないが、例えばエフリンおよび/またはエフリン受容体)に結合するかどうかを決定することを含んでいる。エフリン信号伝達系は、最も広義において、エフリンおよび関連のエフリン受容体、並びに信号を逆方向および順方向に伝達するために必要とされる何らかの分子(または「成分」)を含むものである。より狭い範囲において、エフリン信号伝達系は、該信号伝達の原因であるエフリンおよび関連のエフリン受容体のみを含む。「干渉」の用語は、エフリン信号伝達系の関連において使用されるときには、関連のエフリン信号伝達を、「順方向」および「逆方向」の何れかまたは両方で、増大または減少の何れかをもたらすことができる。エフリン信号伝達系における干渉を測定する方法は、当該技術において周知である。エフリン信号伝達の干渉を決定する一つの方法は、エフリンまたはエフリン受容体、或いは例6〜8に示すようなエフリン信号伝達系の他の成分との、ペプチドの結合または競合である。線虫(C. elegans)のようなインビボ系を使用することができ、ここでは今や、実施例1に記載するようにキュプレドキシンがエフリン信号伝達を妨げて、尾筋肉の形成および胚発生を変化させることが知られている。他の方法には、Himanen et al.(Nat. Neurosci. 7:501-509 (2004))、およびKoolpe et al. (J. Biol. Chem. 280:17301-17311 (2005))におけるEph受容体リン酸化アッセイが含まれるが、これに限定されない。
【0100】
今やキュプレドキシン、およびキュプレドキシンの変異体は、特にエフリン信号伝達を妨げ、また哺乳類の細胞および組織における癌の増殖を阻害することが知られているので、例えばこの活性を維持するキュプレドキシンの変異体、誘導体および構造的均等物を設計することが可能である。このような変異体、誘導体および構造的均等物は、例えば、種々の変異体、誘導体および構造的均等物の「ライブラリー」を作製し、次いで、例えば実施例3,9および10における例示的方法のような当該技術で知られた多くの方法の一つを使用して、各々を抗癌活性について試験することにより製造することができる。得られた抗癌活性を備えたキュプレドキシンの変異体、誘導体および構造的均等物は、本発明の方法において、キュプレドキシンの代わりに、またはそれに加えて使用することができる。
【0101】
他の実施形態において、キュプレドキシン、またはその変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、エフリンとの有意な構造的祖同姓を有する可能性がある。特定の実施形態において、キュプレドキシン、並びにキュプレドキシンの変異体および誘導体は、エフリンのG-Hループ領域の周りの顕著な構造的相同性を有する。キュプレドキシンおよびエフリンの間の有意な構造的相同性を決定する研究の例には、Toth et al.(Developmental Cell 1:82-92 (2001))、およびここでの実施例2が含まれる。より詳細に言えば、キュプレドキシンおよびエフリンの間の有意な構造的相同性は、VASTアルゴリズム(Gibrat et al., Curr Opin Struct Biol 6:377-385 (1996); Madej et al., Proteins 23:356-3690 (1995))を使用して決定される。特定の実施形態において、キュプレドキシンのエフリンに対する構造的比較に由来するVASTのP値は、 約10-3未満、約10-5未満、または約10-7未満である。他の実施形態において、キュプレドキシンおよびエフリンの間の有意な構造的相同性は、DALIアルゴリズム(Holm & Sander, J. Mol. Biol. 233:123-138 (1993))を使用して決定される。特定の実施形態において、1対毎の構造比較のためのDALI Zスコアは、少なくとも約3.5、少なくとも約7.0、または少なくとも約10.0である。
【0102】
もう一つの実施形態において、キュプレドキシン、またはその変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、エフリンおよび/またはEph受容体の何れかに結合する。今や、幾つかのキュプレドキシンが、エフリンB2外部ドメインに構造的に類似したC末端領域を有することが知られている。実施例2、5および9を参照されたい。特定の実施形態において、キュプレドキシン、またはその変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、エフリンに結合する。特に具体的な実施形態において、エフリンは、これらに限定されるものではないが、エフリンA1、エフリンA2、エフリンA3、エフリンA4、エフリンA5、エフリンB1、エフリンB2、エフリンB3およびエフリンB4である。特に具体的な実施形態において、エフリンは、これらに限定されるものではないが、エフリンB1、エフリンB2、エフリンB3およびエフリンB4である。もう一つの特定の実施形態において、キュプレドキシン、またはその変異体、誘導体もしくは構造的等価物は、Eph受容体に結合する。特に具体的な実施形態において、Eph受容体は、限定されるものではないが、EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA6、EphA7、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB4およびEphB6である。幾つかの実施形態において、キュプレドキシン、またはその変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、エフリンおよびエフリン受容体に結合する。幾つかの実施形態において、キュプレドキシン、またはその変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、エフリンおよび受容体、特にエフリンB2およびEphB2に結合する。タンパク質の他のタンパク質に対する結合を決定する方法は、当該技術において周知である。Eph受容体に対する結合を決定する方法の例には、実施例6〜8、並びにKoolpe et al.(J. Biol. Chem. 280:17301-17311 (2005))、およびHimanen et al.(Nat. Neurosci. 7:501-509 (2004))が含まれる。
【0103】
幾つかの特定の実施形態において、キュプレドキシン、またはその変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、哺乳類癌細胞、更に詳細にはJ774細胞におけるアポトーシスを誘導する。アポトーシスを誘導するキュプレドキシンまたは他のポリペプチドの能力は、MITOSENSORTM APOLERTTMミトコンドリア膜センサキット(Clontech Laboratories, Inc., Palo Alto, California, U.S.A.)を使用した有糸分裂センサのApoAlert共焦点顕微鏡によって;Zou et al.(J. Biol. Chem. 274: 11549-11556 (1999))に記載された方法を使用して、カスパーゼ8、カスパーゼ9およびカスパーゼ3の活性を測定することによって;および、例えばAPOLERTTMDNA分解キット(Clontech Laboratories, Inc., Palo Alto, California, U.S.A.)を使用してアポトーシスに誘導された核DNA分解を検出することによって、観察されてよい。
【0104】
もう一つの特定の実施形態において、キュプレドキシン、またはその変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、哺乳類癌細胞、更に詳細にいえばJ774細胞において細胞増殖の停止を誘導する。細胞増殖の停止は、例えばYamada et al.(PNAS 101:4770-4775 (2004))に見られる方法によって、細胞周期進行の阻害の範囲を測定することによって決定することができる。もう一つの特定の実施形態において、キュプレドキシン、またはその変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、哺乳類癌細胞、より詳細にはJ774細胞において細胞周期の進行を阻害する。
【0105】
<キュプレドキシン>
これらの小さい青色銅タンパク質(キュプレドキシン)は、細菌の電子移動連鎖に関与し、または未知の機能をもった電子移動タンパク質(10-20 kDa)である。銅イオンは、単独でタンパク質マトリックスによって結合されている。銅の回りの二つのヒスチジンリガンドおよび一つのシステインリガンドに対する特別の歪んだ三角形の平面的構成は、金属部位の非常に奇妙な電子的性質および強い青色を生じる。多くのキュプレドキシンが、並みの解像度から高解像度で結晶学的に特徴付けられてきた。
【0106】
キュプレドキシンは、一般に低い配列相同性を有するが、高い構造的相同性を有する。(Gough & Clothia, Structure 12:917-925 (2004); De Rienzo et al., Protein Science 9:1439-1454 (2000))。例えば、アズリンのアミノ酸配列は、オーラシアニンBの配列に対して31%、ラスチシアニンの配列に対して16.3%、プラストシアニンの配列に対して20.3%、シュードアズリンの配列に対して17.3%の同一性を有している。表1参照。しかし、これらタンパク質の構造的類似性は更に顕著である。アズリンのオーラシアニンBに対する構造比較についてのVASTのP値は10-7.4であり、アズリンのラスチシアニンに対する比較値は10-5であり、アズリンのプラストシアニンに対する比較値は10-5.6であり、アズリンのシュードアズリンに対する比較値は10-4.1である。
【0107】
全てのキュプレドキシンは、八本鎖のギリシャ鍵ベータバレルまたはベータサンドイッチ折畳みを有しており、また高度に保存された部位構造を有する。(De Rienzo et al., Protein Science 9:1439-1454 (2000))。顕著に疎水性のパッチは、メチオニンおよびロイシンのような多くの長鎖脂肪族残基に起因して、アズリン、アミシアニン、シアノ細菌プラストシアニン、キュウリ塩基性タンパク質、および程度は低いがシュードアズリン、および真核性プラストシアニンにおける銅の周りに存在する。出典同じ。疎水性パッチはまた、より低い程度で、ステラシアニンおよびラスチシアニンの銅部位にも見られるが、異なった特徴を有する。出典同じ。
【表1】

【0108】
1整列長さ:二つの構造の間に重ねあわされたC-アルファ原子の同等対の数、即ち、如何に多くの残基が3D重ね合わせを計算するために使用されたか。
【0109】
2P-VAL:VASTのp値は、確率として表された比較の有意差の尺度である。例えば、p値が0.001であれば、純粋な機会によるこの品質の合致を見ることに対する可能性は1000:1である。VASTからのp値は、MMDBデータベースには500の独立かつ無関係の種類のドメインが存在するとの仮定を使用して、多重比較の効果について調節される。示されたp値は、従って、500で除算された、各ドメイン対の1対ごとの比較についてのp値に対応する。
【0110】
3スコア:VAST構造類似性スコア。この数字は、重ねられた二次的構造要素の数、および当該重ね合わせの質に関連する。より高いVASTスコアは、より高い類似性と関連する。
【0111】
4RMSD:オングストロームでの二乗平均平方根重なり残余。この数は、二つの構造の最適重なりの後に、同等のC-アルファ原子の間の二乗平均距離の平方根として計算される。なお、RMSD値は構造整列の範囲と比例すること、また全体の構造類似性の記述子としてRMSDを使用するときは、このサイズを考慮しなければならないことに留意すべきである。
【0112】
5C. elegans主要精子タンパク質は、卵母細胞成熟におけるエフリンアンタゴニストであることが証明された(Kuwabara, 2003 “The multifaceted C. elegans major sperm protein: an エフリン signalling antagonist in oocyte maturation” Genes and Development, 17:155-161)。
【0113】
<アズリン>
アズリンは、一定の細菌において電子移動に関与するキュプレドキシン科に属する、123アミノ酸残基の銅含有タンパク質である。該アズリンには、P. aeruginosa(PA)由来のもの(配列番号1)、A. xylosoxidans、およびA. denitrificansに由来するものが含まれる。(Murphy et al., J. Mol. Biol. 315:859-871 (2002))。アズリン類の間でのアミノ酸配列同一性は、60〜90%の間で変化し、これらのタンパク質は強い構造的相同性を示した。全てのアズリン類は、ギリシャ鍵モチーフを伴った特徴的なβ−サンドイッチを有し、また銅原子は常に該タンパク質の同じ領域に位置する。加えて、アズリン類は、銅部位を取り囲む本質的に中性の疎水性パッチを有している。出典同じ。
【0114】
<プラストシアニン>
プラストシアニンは、シアノ細菌、藻類、および植物の可溶性タンパク質であり、1分子当たり1分子の銅を含有し、かつその酸化形態において青色である。それらは葉緑体に存在し、そこでは電子キャリアとして機能する。1978年の極性プラストシアニンの構造決定以来、藻類(Scenedesmus, Enteromorpha, Chlamydomonas)および植物(インゲンマメ)のプラストシアニンの構造が、結晶学的方法またはNMR法により決定されており、該ポプラ構造は1.33Å分解能にまで精製された。配列番号2は、好熱性シアノバクテリウムであるPhormidium laminosum由来のプラストシアニンのアミノ酸配列を示している。配列番号22は、Ulva petrusa由来のプラストシアニンのアミノ酸配列を示している。
【0115】
藻類および維管束植物のプラストシアニン類間での配列の多様性(例えば、Chlamydomonasおよびポプラタンパク質間での62%配列同一性)にも拘わらず、三次元構造は保存される(例えば、Chlamydomonasおよびポプラタンパク質間での、Cアルファ位における0.76Årmsの偏位)。構造的特徴には、8本鎖逆平衡βバレルの一端における捩れた四面体銅結合部位、顕著な負のパッチ、および平坦な疎水性表面が含まれる。銅部位は、その電子移動機能のために最適化され、また負および疎水性のパッチは生理学的反応相手の認識に関与していることが提案されている。化学的修飾、架橋、および部位特異的突然変異誘発実験は、チトクロームfとの結合性相互作用における負の疎水性パッチの重要さを確認し、またプラストシアニンを含む二つの機能的に重要な電子移動経路のモデルを実証した。一つの推定電子移動経路は、比較的短く(約4Å)、また疎水性パッチにおける溶媒露出された銅リガンドHis-87を含む一方、他方はより長く(約12〜15Å)、負のパッチの中にほぼ保存された残基Tyr-83を含んでいる。(Redinbo et al., J. Bioenerg. Biomembr. 26:49-66 (1994))。
【0116】
<ラスチシアニン>
ラスチシアニンは、Thiobacillus(今はAcidithiobacillusと呼ばれる)から得られた青色銅を含有する単鎖ポリペプチドである。極めて安定で且つ高度に酸化性のキュプレドキシンであるThiobacillus ferrooxidans由来のラスチシアニン(配列番号3)は、多重波長の異常回折によって決定され、1.9Åの分解能まで精製された。該ラスチシアニンは、6本鎖および7本鎖のβシートで構成されるコアベータサンドイッチ折畳みで構成される。他のキュプレドキシンと同様に、銅イオンは、捩れた四面体状に配置された四つの保存された残基(His 85、Cys138、His143、Met148)のクラスタによって配位される。(Walter et al., J. Mol. Biol. 263:730-51 (1996))。
【0117】
<シュードアズリン>
シュードアズリン類は、青色銅を含有する単鎖ポリペプチドの科である。Achromobacter cycloclastesから得られたシュードアズリンのアミノ酸配列が、配列番号4に示されている。シュードアズリンのX線構造分析によって、それはアズリンに対する類似した構造を有するが、これらタンパク質間には低い配列相同性しか存在しないことが示された。シュードアズリンおよびアズリンの全体構造の間には、二つの主要な相違が存在する。シュードアズリンには、アズリンに比較して、二つのアルファへリックスからなるカルボキシ末端延長部が存在する。中間ペプチド領域において、アズリンは延長されたループを含み、これはシュードアズリンでは短縮されていて、短いαへリックスを含むフラップを形成する。銅原子部位における唯一の主要な差は、MET側鎖のコンホメーションおよびMet-S銅結合長さであり、これはアズリンにおけるよりもシュードアズリンにおいて顕著に短い。
【0118】
<フィトシアニン>
フィトシアニンとして同定可能なタンパク質には、キュウリ塩基性タンパク質、ステラシアニン、マビシアニン、ウメシアニン、キュウリ剥離キュプレドキシン、エンドウ莢における推定の青色銅タンパク質、およびArabidopsis thaliana由来の青色銅タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。キュウリ塩基性タンパク質およびエンドウ莢タンパク質を除く全部において、普通は青色銅部位に見出される軸メチオニンリガンドがグルタミンで置換される。
【0119】
<オーラシアニン>
オーラシアニンA、オーラシアニンB-1、およびオーラシアニンB-2と称する三つの小さな青色銅タンパク質は、好熱性の緑色滑走光合成細菌であるChloroflexus aurantiacusから単離された。二つのB型は糖タンパク質であり、相互に殆ど同一の性質を有しているが、A型とは異なる。ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、見掛けのモノマー分子量が14 kDa(A)、18 kDa(B-2)および22 kDa(B-1)であることが示された。
【0120】
オーラシアニンAのアミノ酸配列が決定され、オーラシアニンAは139残基のポリペプチドであることが示された。(Van Dreissche et al;. Protein Science 8:947-957 (1999))。His58、Cys123、His128、およびMet132は、それらが既知の小さい銅タンパク質のプラストシアニンおよびアズリンにおけるような進化的に保存された金属リガンドであれば、予想される方法で離間される。二次構造の予測はまた、オーラシアニンが、Pseudomonas aeruginosa由来のアズリンおよびポプラ葉由来のプラストシアニンに類似した、一般のベータバレル構造を有することを示している。しかし、オーラシアニンは、両方の小さい銅タンパク質配列分類の配列特徴を有するように思える。アズリンのコンセンサス配列との全体的な類似性は、プラストシアニンのコンセンサス配列との類似性、即ち30.5%と大略同じである。オーラシアニンのN末端配列領域1〜18は、グリシンおよびヒドロキシアミノ酸に顕著に富んでいる。出典同じ。Chloroflexus aurantiacus由来のオーラシアニン(NCBI タンパク質データバンクアクセス番号No. AAM12874)のA鎖については、例示のアミノ酸配列(配列番号15)を参照されたい。
【0121】
オーラシアニンB分子は、標準のキュプレドキシン折畳みを有している。Chloroflexus aurantiacus由来のオーラシアニンBの結晶構造が研究されている。(Bond et al., J. Mol. Biol. 306:47-67 (2001);その内容を全ての目的で本明細書の一部として援用する)。追加のN末端鎖を除き、当該分子は、細菌のキュプレドキシンであるアズリンのそれと非常に類似している。他のキュプレドキシンにおけると同様に、Cuリガンドの一つは、ポリペプチドの鎖4にあり、他の三つは鎖7および8の間の大きなループに沿って存在する。Cu部位の幾何学的位置関係については、後者の三つのリガンドの間のアミノ酸間隔を参照して述べる。結晶学的に特徴付けられたオーラシアニンBのCu結合ドメインは、恐らく、幾つかの他の膜関連電子移動タンパク質における既知のテザーとの顕著な配列同一性を示すN末端尾部によって、細胞質膜の周辺質側に係留される。B型のアミノ酸配列は、McManus et al.(J Biol Chem. 267:6531-6540 (1992))に提示されている。Chloroflexus aurantiacus由来のオーラシアニン(NCBIタンパク質データバンクアクセス番号No. 1QHQA)のB鎖については、例示アミノ酸配列(配列番号16)を参照されたい。
【0122】
<ステラシアニン>
ステラシアニンは、植物キュプレドキシンの普遍的科であるフィトシアニンの副分類である。ステラシアニンの例示配列は、ここに配列番号14として含まれている。ウメシアニン、西洋わさび根由来のステラシアニン(Koch et al., J. Am. Chem. Soc. 127:158-166 (2005))、およびキュウリステラシアニン(Hart el al., Protein Science 5:2175-2183 (1996))の結晶構造も知られている。該タンパク質は、他のフィトシアニンに類似した全体の折畳みを有している。エフリンB2タンパク質外部ドメインの三次構造は、ステラシアニンに対する顕著な類似性を有している。(Toth et al., Developmental Cell 1:83-92 (2001))。ステラシアニンの例示アミノ酸配列は、国立バイオテクノロジー情報センター・タンパク質データバンクのアクセス番号1JER(配列番号14)に見られる。
【0123】
<キュウリ塩基性タンパク質>
キュウリ塩基性タンパク質由来の例示アミノ酸配列は、配列番号17としてここに含められている。キュウリ塩基性タンパク質(CBP)、即ち、1型の青色銅タンパク質の結晶構造は、1.8Åの分解能で精製されている。この分子は、ギリシャ鍵ベータバレル構造を有する点において他の青色銅タンパク質と類似しているが、このバレルは一方の側が開いているので、「ベータサンドイッチ」または「ベータタコス」として更に良好記述される。(Guss et al., J. Mol. Biol. 262:686-705 (1996))。このエフリンB2タンパク質外部ドメインの三次構造は、キュウリ塩基性タンパク質に対する高い類似性(50のα炭素について1.5Åのrms偏位)を有している。(Toth et al., Developmental Cell 1:83-92 (2001))。
【0124】
Cu原子は、結合長さがCu-N(His39)=1.93Å、Cu-S(Cys79)=2.16Å、Cu-N(His84)=1.95Å、Cu-S(Met89)=2.61Åの、正常な青色の銅NNSS'配位を有している。ジスルフィド結合の(Cys52)-S-S-(Cys85)は、この分子構造を安定化する上で重要な役割を果たしていると思われる。該ポリペプチドの折畳みは、青色銅タンパク質(フィトシアニン)の副科、並びにCBPが高度の配列同一性を有する、非金属結合タンパク質、ブタクサアレルゲンRa3に典型的なものである。フィトシアニンとして現在同定可能なタンパク質は、CBP、ステラシアニン、マビシアニン(mavicyanin)、ウメシアニン、キュウリ剥離キュプレドキシン、エンドウ莢における推定青色銅タンパク質、およびArabidopsis thaliana由来の青色銅タンパク質である。CBPおよびエンドウ莢タンパク質以外の全てにおいて、青色銅部位に通常見られる軸メチオニンリガンドは、グルタミンによって置換される。キュウリ塩基性タンパク質の例示配列は、NCBIタンパク質データバンクアクセス番号2CBP(配列番号17)に見られる。
【0125】
<本発明の方法>
本発明のもう一つの側面は、病的状態に罹患している哺乳動物患者を治療する方法における1つまたは複数のキュプレドキシン、並びにこれらの変異体、誘導体および構造的均等物の使用に関する。より具体的には、当該状態は、エフリン信号伝達系に関連がある。加えて、哺乳動物患者は、癌に罹患していてもよい。
【0126】
一般に、キュプレドキシン、並びにこれらの変異体、誘導体および構造的均等物は、細胞または組織におけるエフリン信号伝達系の活性を妨げることが現時点で知られている。加えて、キュプレドキシン、並びにこれらの変異体、誘導体および構造的均等物は、細胞および組織における癌の増殖を阻害することが現時点で知られている。具体的態様において、細胞または組織は、哺乳動物である。より具体的態様において、細胞は、ヒトである。一部の態様において、細胞は、ヒトではない。一つの態様において、キュプレドキシン、並びにこれらの変異体、誘導体および構造的均等物は、細胞表面上のエフリン受容体の活性を阻害するために細胞に投与される。もう一つの態様において、キュプレドキシン、並びにこれらの変異体、誘導体および構造的均等物は、細胞表面上のエフリン受容体の活性を増加させるために投与される。その他の具体的態様において、キュプレドキシン、並びにキュプレドキシンの変異体および誘導体は、エフリンシグナリングの前方および/または後方を阻害し、および/または増大させる。さらに、たとえば、前方シグナルを阻害し、一方で後方シグナルを増大させることが可能性である。
【0127】
哺乳動物患者が罹患する病的状態は、具体的には、エフリン信号伝達系の活性に関連しているものである。キュプレドキシンは、エフリンに対する一定の構造相同性を含み、エフリン信号伝達系に関して、インビボにおいてエフリンのように作用することができることも現在認識されている。キュプレドキシンは、エフリン信号伝達系に関連がある病的状態を治療するために使用することができると考えられる。具体的態様において、病的状態には、エフリン信号伝達系の成分の通常よりも高いか、または通常よりも低い濃度を伴う。その他の具体的態様において、病的状態は、エフリン信号伝達系の成分の過剰発現または過小発現により生じる。その他の具体的態様において、病的状態は、エフリン信号伝達系の成分の過剰な代謝回転または代謝回転の欠如により生じる。その他の具体的態様において、病的状態は、エフリン信号伝達系の成分の過剰発現または過小発現を生じさせる。もう一つの具体的態様において、病的状態は、エフリン信号伝達系の成分の過剰な代謝回転または代謝回転の欠如を生じさせる。エフリン信号伝達系の「成分」には、エフリン受容体に対するエフリン結合によって生じるシグナルを伝達するか、伝達されるようにする何れの分子も含む。より具体的態様において、成分は、エフリンまたはエフリン受容体である。
【0128】
加えて、病的状態は、エフリン信号伝達系の成分の細胞内の、細胞間の、または組織特異的な異常分布を伴い得る。具体的態様において、エフリン受容体は、細胞または細胞表面上により高濃度で見いだされる。より具体的態様において、エフリン受容体は、組織においてアップレギュレートされ、またはダウンレギュレートされる。もう一つのより具体的態様において、エフリンは、組織においてアップレギュレートされ、またはダウンレギュレートされる。
【0129】
本発明のもう一つの側面において、キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、癌である患者(patent)に投与される。一部の態様において、患者は、哺乳動物、特にヒトである。その他の態様において、患者は、ヒトではない。本治療方法の作用機序を限定することはないが、多くの癌は、エフリン信号伝達系の成分の濃度の増減と関連する。多くのエフリンおよびEph受容体は、腫瘍において、特に腫瘍進行のより攻撃的段階において、アップレギュレートされ、またはダウンレギュレートされることが示されている。たとえば、EphA2は、乳癌、肝臓癌および前立腺癌、並びにグリア芽細胞腫、食道扁平細胞癌、卵巣癌および黒色腫においてアップレギュレートされる。具体的態様において、癌は、EphA2受容体のアップレギュレートと関連する。しかし、多くの癌において、エフリン信号伝達系の種々の成分、特にエフリンおよびEph受容体がアップレギュレートされるか、またはダウンレギュレートされることが公知である。種々の腫瘍におけるエフリンおよびエフリン受容体の異常な発現の例が当該技術分野において周知であり、Surawska et al. (Cytokine & Growth Factor Reviews 15:419-433 (2004))に記述されている。その他の態様において、癌は、エフリン信号伝達系の成分の異常な量または活性と関連していない。具体的態様において、癌は、乳癌、肝臓癌、胃腸癌、神経芽細胞腫、神経癌、白血病、リンパ腫、前立腺(prostrate)癌、膵癌、肺癌、黒色腫、卵巣癌、子宮内膜腫瘍、絨毛癌、奇形癌腫、甲状腺癌、軟部組織および骨から生じるものを含む全ての肉腫、腎癌、扁平上皮癌、並びに肺非小細胞癌であるが、限定されない。具体的態様において、癌は、p53腫瘍抑制遺伝子の発現が欠損している。
【0130】
その他の態様において、癌は、腫瘍成長の段階に関連した種々の性状を有する。腫瘍発症における初期段階は、血管新生であり、動脈が補充されて腫瘍に血液を供給する。作動メカニズムを何れか1つの手段に限定することはないが、エフリン信号伝達系は、血管形成に関連していることが知られている。一つの態様において、癌は、血管形成が関連したものである。腫瘍発症のもう一つの段階は、原発腫瘍での非連続的腫瘍移植として定義される転移であり、腫瘍が転移を形成する。作動メカニズムを何れか1つの手段に限定することはないが、転移は、エフリン信号伝達系にも関連があると考えられる。一つの態様において、癌は、前転移性である。もう一つの態様において、癌は、転移性である。血管形成に対する化合物の効果を測定する方法は、当該技術分野において周知である。血管形成を測定するための具体的方法には、以下の論文において見いだされるアッセイ法を含むが、限定されず、これらの内容は、参照によりすべての目的のために援用される:Daniel et al., Kidney Int. Suppl. 57: S73-S81 (1996); Myers et al., J.Cell Biol. 148:343-351 (2000); Pandey et al., Science 268:567-569 (1995); Brantley et al., Oncogene 21:7011-7026 (2002)。
【0131】
腫瘍に加えて、エフリンシグナリング経路と関連する多くの病的状態がある。たとえば、血管形成の病理学的形態(Adams & Klein, Trends Cardiov. Medicine 10:183-188 (2000); Brantley-Sieders & Chen, Angiogenesis 7:17-28 (2004); Noren et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:5583-558 (2004).)、組織損傷後の慢性痛(Battaglia et al., Nat Neurosci. 6:339-340 (2003))、脊椎損傷後の神経再生の阻害(Goldscmit et al., J. Neurosci. 6:339-340 (2003))およびヒト先天性奇形(Twigg et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:8652-8657 (2004); Wieland et al., Am. J. Hum. Genet. 74:1209-1215 (2004))、並びに本発明の具体的態様では、これらの病的状態を治療するために、キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を使用する。具体的態様において、病的状態は、間質性膀胱炎(IC)炎症性腸疾患(IBD)と関連した病変、HIV感染症、心臓血管疾患、中枢神経系障害、末梢血管疾患、ウイルス疾患、中枢神経系の退化(クリストファーリーヴ疾患)およびアルツハイマー病である。間質性膀胱炎および炎症性腸疾患である患者の治療に関連した方法論については、たとえば米国特許出願公開第20050049176号(2005年3月3日に公開され、その内容は、この参照によって全ての目的のために援用される)を参照されたい。血管形成の阻害または刺激に関連した方法論については、たとえば米国特許出願公開第20040136983号(2004年7月15日に公開され、その内容は、この参照によってすべての目的のために援用される)を参照されたい。骨形成のための療法に関連した方法論については、たとえば、米国特許出願公開第20040265808号(2004年7月15日公開され、その内容は、この参照によってすべての目的のために援用される)を参照されたい。
【0132】
キュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、当業者に周知であろう多くの経路によって、および多くの処方計画で患者に投与することができる。具体的態様において、キュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体もしくは誘導体は、静脈内に、筋肉内に、皮下に、または腫瘍への注射によって投与される。具体的態様において、キュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、静脈内に投与される。特に具体的な態様において、キュプレドキシンまたはこれらの変異体もしくは誘導体は、癌であるか、または癌から回復する患者に対する化学療法で投与される。
【0133】
病的状態に加えて、キュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、患者が罹患しているその他の状態に関連した治療方法に使用することができる。このような状態は、神経または血管系にダメージを与える事故、外科手術などのその他の療法からの回復、とりわけ老年に関連した状態の結果であり得る。一つの態様において、患者は、血管の成長または再成長が必要であり、キュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、血管の成長を導くために投与される。もう一つの態様において、患者は、血管の成長の減少を必要とし、キュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、血管の成長を阻害するために投与される。もう一つの態様において、キュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、ニューロン発生または再生を必要とする患者に対して、ニューロンの成長を導くために投与される。もう一つの態様において、キュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、骨形成を促進するために患者に投与される。
【0134】
本発明のもう一つの側面は、インビボにおいて特異的エフリン受容体を示す細胞を検出する方法である。キュプレドキシンは、エフリンB2およびその他のエフリンに対して高い構造相同性の領域を含むこと、並びにキュプレドキシンは、インビトロにおいてエフリン受容体に特異的に結合することができることが現在公知である。従って、キュプレドキシンは、エフリン受容体を発現する細胞の表面に局在化するであろう。従って、一部の態様において、キュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、非Eph受容体を発現する細胞および組織の中で、これらのEph受容体を発現する細胞または組織の位置を決めるために使用することができる。加えて、特定の種類のEph受容体の結合優先度を示すキュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、その種類のEph受容体を特異的に発現する細胞または組織の位置を決めるために使用することができる。一つの態様において、キュプレドキシンまたはこれらの変異体もしくは誘導体を検出可能プローブに連結してヒト患者に投与し、検出可能プローブの局在化を患者において測定してEph受容体を発現する細胞または組織の位置が決定される。特に具体的な態様において、細胞は、癌細胞である。検出可能プローブは、当該技術分野の多くの現在公知のものであってもよい。特に関心がもたれるプローブには、蛍光プローブ、放射性プローブ、並びにヨウ素、ガドリニウムおよび金を含むが、限定されない。
【0135】
本発明のもう一つの態様において、Eph受容体を発現する細胞または組織に薬物を送達するために、キュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を薬物に連結して、ヒト患者に投与する。もう一つの具体的態様において、組織は、腫瘍である。特に具体的な態様において、細胞は、癌細胞である。薬物は、Eph受容体を発現する細胞に対して効果を有する何れの種類の化学物質であってもよい。薬物には、ペプチド、DNA分子、RNA分子、医薬組成物およびこれらの何れかの誘導体を含むが、限定されない、有機または無機化合物であってもよい。具体的態様において、薬物は、シュードモナス属(Pseudomonas)外毒素AドメインIIIなどの毒素またはタキソールなどの化学物質または癌細胞を死滅させるその他の薬物である。
【0136】
キュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、所望のヒト患者の細胞または組織に発現されるプロモーター領域に作動可能に連結されたキュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物をコードするコード領域を含むDNAを投与することにより、細胞またはヒト患者に投与することができる。具体的態様において、キュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物をコードするDNAは、キュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物での治療を受け入れられる状態を治療するために、患者に投与される。細胞およびヒト患者にこれらを投与するための適切なベクターおよび方法は、当該技術分野において周知である。ヒト被験者において外来タンパク質を発現する方法論は、当該技術分野において周知であり、患者においてキュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を発現するために適応させることができる。例示的プロトコルは、数ある供与源の中で、以下の米国特許に見いだされ:2002年1月15日に発行された米国特許第6,339,068号;2005年3月15日に発行された米国特許第6,867,000号;2004年11月23日に発行された米国特許第6,821,957号;2004年11月23日に発行された米国特許第6,821,955号;2003年5月13日に発行された米国特許第6,562,376号;これらの全ての内容は、この参照により全ての目的のために援用される。より具体的態様において、キュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物をコードするDNAは、癌に罹患している患者の腫瘍に注射される。より具体的態様において、キュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物をコードするDNAは、癌に罹患している患者の腫瘍に注射される。
【0137】
一部の態様において、医薬組成物は、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、吸入法、局所的投与、経皮パッチ、坐薬または経口、および特に静脈内注射によって患者に投与される。医薬組成物は、エフリンシグナリングまたは癌に関連した特定の病的状態を治療することが公知の別の薬物の投与と同時に、または1分〜1週以上以内に患者に投与してもよい。医薬組成物は、別の抗癌剤とほぼ同じ時間に投与してもよい。
【0138】
キュプレドキシン並びにキュプレドキシンの変異体、誘導体および構造的均等物を含む医薬組成物
少なくとも1つのキュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を含む医薬組成物は、何れの従来の様式でも、たとえば従来の混合方法、溶解方法、顆粒化方法、ドラゼー作製方法、乳化方法、カプセル化方法、封入方法または凍結乾燥方法によって製造することができる。実質的に純粋なキュプレドキシンまたはキュプレドキシンの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、当該技術分野において周知の薬学的に許容される担体と容易に組み合わせることができる。このような担体により、製剤を錠剤、丸剤、ドラゼー、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液、その他として処方することができる。また、適切な賦形剤には、たとえば充填剤およびセルロース製剤を含むことができる。その他賦形剤には、たとえば香料、着色剤、非粘着付与剤、増粘剤およびその他の許容される添加物、アジュバントまたは結合剤を含むことができる。医薬品の剤形についての一般的方法論は、Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (Lippencott Williams & Wilkins, Baltimore MD (1999))において見いだされる。
【0139】
本発明に使用されるキュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を含む組成物は、注射により(たとえば、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、その他)、吸入法により、局所的投与により、坐薬により、経皮パッチを使用することにより、または口によるものを含む、さまざまな方法で投与してもよい。薬物送達システムについての一般的情報は、Ansel et al.,同上において見いだすことができる。幾つかの態様において、キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を含む組成物は、とりわけ皮下および静脈内注射のために、製剤化すること、および注射剤(injectibles)として直接使用することができる。また、キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を含む組成物は、ポリプロピレングリコールまたは同様のコーティング薬などの保護剤と混合した後に経口的に摂取させることができる。
【0140】
投与が注射によるときは、キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、水溶液中に、特にハンクス液、リンゲル液または生理食塩水緩衝液などの生理的に適合性の緩衝液中に製剤化してもよい。溶液には、薬剤を懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化剤(formulatory agent)を含んでいてもよい。あるいは、キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、使用前に適切な媒体、たとえば無菌の発熱性物質を含まない水で構成するための粉末形態であってもよい。一部の態様において、医薬組成物は、アジュバントまたはペプチドによって刺激される免疫応答を増強するために添加されるその他のいかなる物質も含まない。一部の態様において、医薬組成物は、ペプチドに対する免疫応答を阻害する物質を含む。
【0141】
投与が静脈内補液によるときは、キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物の投与に使用するための静脈内補液は、クリスタロイドまたはコロイドで構成されていてもよい。本明細書で使用されるクリスタロイドは、ミネラル塩またはその他の水溶性分子の水溶液である。本明細書で使用されるコロイドは、ゼラチンなどのより大きな不溶性分子を含む。静脈内補液は、無菌であってもよい。静脈内投与のために使用してもよいクリスタロイド液体には、表2に記載されているように、通常の生理食塩水(0.9%の濃度の塩化ナトリウムの溶液)、リンゲル乳酸塩またはリンゲル液および時にD5Wを呼ばれる5%のデキストロースの水溶液を含むが、限定されない。
【表2】

*リンゲル乳酸塩は、28mmol/lの乳酸塩、4mmol/lのK+および3mmol/lのCa2+も有する。
【0142】
投与が吸入法によるときは、キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、適切な噴霧剤、たとえばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、二酸化炭素またはその他の適切なガスを用いて加圧パックまたは噴霧器からエアゾールスプレーの形態で送達してもよい。加圧エアゾルの場合、その用量単位を計量導入のためのバルブを設けることによって決定してもよい。たとえば吸入器または通気器に使用するためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、タンパク質と乳糖またはデンプンなどの適切な粉末基材との粉末混合物を含めて製剤化してもよい。
【0143】
投与が局所的投与によるときは、キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、当該技術分野において周知であるとおり、溶液、ゲル、軟膏、クリーム、ゼリー、懸濁液、その他として製剤化してもよい。一部の態様において、投与は、経皮パッチによる。投与が坐薬(たとえば経直腸または経膣)によるあるときは、キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体および構造的均等物の組成物は、従来の坐剤基剤を含む組成物中に製剤化してもよい。
【0144】
投与が経口のときは、キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を公知技術の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって、容易に製剤化することができる。マンニトール、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、その他などの固体キャリアを使用してもよく;このような担体により、治療される被験体による経口摂取のために、キュプレドキシン並びにこれらの変異体、誘導体および構造的均等物を錠剤、丸剤、ドラゼー、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液その他として製剤化することができる。たとえば、粉末、カプセルおよび錠剤などの経口固体の製剤については、適切な賦形剤には、糖、セルロース標品、造粒剤、結合剤などの充填剤を含む。
【0145】
また、その他の便利な担体には、当該技術分野において周知の様に、細菌莢膜多糖などの多価の担体、デキストランまたは遺伝的に操作されたベクターを含む。加えて、キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を含む徐放性製剤により、長期間にわたってキュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物の放出が可能になり、持効性製剤を伴わなければ、キュプレドキシンまたはこれらの変異体誘導体もしくは構造的均等物が治療効果を誘発し、または増強する前に、被験体の系から消去され、および/または、たとえばプロテアーゼおよび単純な加水分解によって分解されるであろう。
【0146】
本発明の組成物の血流における半減期は、ペプチドの環状化(Monk et al., BioDrugs 19(4):261-78, (2005); DeFreest et al., J. Pept. Res. 63(5):409-19 (2004))、D,L-ペプチド(ジアステレオマー)((Futaki et al., J. Biol. Chem. Feb 23;276(8):5836-40 (2001); Papo et al., Cancer Res. 64(16):5779-86 (2004); Miller et al., Biochem. Pharmacol. 36(1):169-76, (1987))、異常アミノ酸を含むペプチド(Lee et al., J. Pept. Res. 63(2):69-84 (2004))、N-およびC末端修飾(Labrie et al., Clin. Invest. Med. 13(5):275-8, (1990))および炭化水素ステープリング(Schafmeister et al., J. Am. Chem. Soc. 122:5891-5892 (2000); Walenski et al., Science 305:1466-1470 (2004))を含むが、限定されない当業者に周知の幾つかの方法によって延長し、または最適化することができる。d-異性化(置換)およびD-置換またはL-アミノ酸置換を経たペプチド安定性の修飾は、特に興味がもたれる。
【0147】
種々の態様において、医薬組成物は、担体および賦形剤(グリシン、抗酸化剤、静菌薬、キレート薬、懸濁剤、糊料および/または防腐剤などの緩衝液、炭水化物、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはアミノ酸を含むが、これらに限定されない)、水、油、食塩水、デキストロース水溶液、並びに緩衝剤、張性を調整する薬剤、湿潤剤、その他などのグリセリン溶液、生理学的条件近くに必要とされるその他の薬学的に許容される補助物質を含む。当業者に公知の何れの適切な担体も、本発明の組成物を投与するために使用してもよいが、担体のタイプは、投与様式に応じて変化することが認識されるであろう。また、化合物は、周知の技術を使用してリポソーム内にカプセル化してもよい。また、生体分解性微粒子を本発明の医薬組成物のための担体として使用してもよい。適切な生体分解性微粒子は、たとえば米国特許第4,897,268号;第5,075,109号;第5,928,647号;第5,811,128号;第5,820,883号;第5,853,763号;第5,814,344号および第5,942,252号に開示されている。
【0148】
医薬組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌してもよく、または滅菌濾過してもよい。生じる水性溶液は、そのまま使用するために包装してもよく、または凍結乾燥して、凍結乾燥された標品を投与前に無菌液と合わせてもよい。
【0149】
キュプレドキシンの投与
キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくはこれらの構造的均等物は、医薬組成物として製剤化されたものを投与することができ、また何れの適切な経路によっても、たとえば経口、頬側、舌下、経直腸、経膣、経尿道、経鼻、局所的、皮膚を通して、すなわち経皮的または非経口的(経静脈、筋肉内、皮下および冠内を含む)投与によって投与することができる。これらの医薬品製剤は、その意図された目的を達成するために有効な何れの量で投与することもできる。より具体的には、組成物は、治療上有効な量で投与される。具体的態様において、治療上有効な量は、一般に体重の約0.01〜20mg/日/kgである。
【0150】
キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を含む化合物は、哺乳動物細胞および組織におけるエフリン-シグナリングに関連した状態または癌を、単独で、またはその他の活性な薬剤と組み合わせて治療するために有用である。もちろん、適切な投薬量は、たとえば使用されるキュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物の化合物、宿主、投与様式、並びに治療される状態の性質および重症度に応じて変更される。しかし、一般に、ヒトにおける満足な結果は、約0.01〜20mg/kg体重の1日の投薬量にて得られることが示される。ヒトにおいて示された1日の投薬量は、約0.7mg〜約1400mgの範囲のキュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物の化合物で、都合よくは、たとえば1日量、1週量、1月量および/または連続的投薬で投与される。1日量は、、1日あたり1〜12回までの別々の投薬量であることができる。あるいは、用量は、1日おきに、3日ごとに、4日ごとに、5日ごとに、6日ごとに、1週ごとに投与することができ、および31日以上までで1日の増分にて同様である。あるいは、投薬は、連用パッチ、i.v.投与、その他であることができる。
【0151】
キュプレドキシンおよび/またはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を患者に導入する方法は、一部の態様において、エフリンシグナリングに関連した特定の病的状態または癌またはその他の状態もしくは疾患を治療するための公知の他剤との同時投与である。このような方法は、当該技術分野において周知である。具体的態様において、キュプレドキシンおよび/またはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、エフリンシグナリングに関連したその他の病的状態もしくは癌を含むか、もしくはこれらと一緒のカクテルの一部であるか、または同時投薬する。関心対象の薬物には、炎症性腸疾患、HIV感染症、ウイルス疾患、心臓血管疾患、末梢血管疾患、中枢神経系障害、中枢神経の退化系およびアルツハイマー病を治療するために使用されるものを含む。
【0152】
炎症性腸疾患を治療するための薬物には、スルファサラジン(アズルフィジン(azulfidine)(登録商標)、オキサラジン(ジペンタム(Dipentum)(登録商標))、メサラミン(アサコール(登録商標)、ペンタサ(登録商標))およびバルサラジド(コラザール(登録商標))などのアミノサリチラート;(プレドニゾン、メドロール(登録商標)、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、ブデソニド(エントコートEC)などの副腎皮質ステロイド;アザチオプリン(イムラン(登録商標))、6-メルカプトプリン(6-MP、プリナソール(登録商標))およびシクロスポリンA(サンディミュン(登録商標)、ネオラル(登録商標))などの免疫調節物質、;メトロニダゾール(フラギル(登録商標))およびシプロフロキサシン(シプロ(登録商標))などの抗生物質;インフリキシマブ(レミケード(登録商標))などの生物学的療法;並びにタクロリムス(FK506)およびミコフェノール酸モフェチルなどの種々の療法を含むが、限定されない。
【0153】
HIV感染症を治療するための薬物には、逆転写酵素阻害剤:AXT(ジドブジン[レトロビル(登録商標)])、ddC(ザルシタビン[ヒビド(Hivid)(登録商標)]ジデオキシイノシン)、d4T(スタブジン[ゼリット(登録商標)])および3TC(ラミブジン[エピビル(登録商標)])、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTIS)):デラビルジン(レスクリプター(登録商標))およびネビラピン(ビラミュン(登録商標))(プロテアーゼ阻害剤):リトナビル(ノルビル(登録商標))、ロピナビルおよびリトナビル併用(カレトラ(登録商標))、サキナビル(インビラーゼ(登録商標))、硫酸インジナビル(クリキシバン(登録商標))、アンプレナビル(アゲネラーゼ(登録商標))およびネルフィナビル、(ビラセプト(登録商標))を含むが、限定されない。ウイルス疾患を治療するための薬物には、アシクロビル、水痘帯状疱疹免疫グロブリン(VZIG(登録商標))、ペグインターフェロン(リバビリン)、アシクロビル(ゾビラックス(登録商標))、バラシクロビル(バルトレックス(登録商標))ファムシクロビル(ファムビル(登録商標))アマンタジン、リマンタジン、ザナミビル、オセルタミビルおよびαインターフェロンを含むが、限定されない。
【0154】
心臓血管疾患障害を治療するための薬物には、血液凝固阻止剤、抗血小板剤、血小板溶解薬、アドレナリン作動性遮断薬、アドレナリン作動性刺激薬、α/βアドレナリン作動性遮断薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、カルシウムチャンネル遮断薬を伴うアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、利尿剤を伴うアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、カルシウムチャンネル遮断薬、利尿剤(炭酸アンヒドラーゼ阻害剤、ループ利尿薬、カリウム保持性利尿剤、チアジドおよび関連した利尿剤、血管拡張薬、血圧上昇因子、その他を含む)を含むが、限定されない。
【0155】
末梢血管疾患を治療するための薬物には、ペントキシフィリン(トレンタール(登録商標))、経口メチルキサンチン誘導体およびシロスタゾール、(プレタール(登録商標))ホスホジエステラーゼIII阻害剤;アスピリンなどの抗血小板/抗血栓治療薬;ヘパリンおよびワルファリン(登録商標)(クマジン(登録商標))などの血液凝固阻止剤;ナイアシン、スタチン、フィブラート、ロピッド(登録商標)錠剤)(ゲムフィブロジル;Parke-Davis)などのコレステロール血症治療薬;トリコール(tricor)錠(フェノフィブラート;Abbott)、胆汁酸隔離剤、コレスチド(Colestid)(登録商標)錠(微粒状塩酸コレスチポール;PharmaciaおよびUpjohn);ウェルコール(welchol)(登録商標)錠(塩酸コレセベラム;Sankyo);カルシウムチャンネル遮断薬;葉酸塩、B-6、B-12、L-アルギニンおよびオメガ-3脂肪酸などのビタミンおよび栄養補助食品;並びにアドビコール(登録商標)錠、(ナイアシン/ロバスタチン;Kos)などのHMG-COA レダクターゼ阻害剤;アルトコール(登録商標)徐放錠(ロバスタチン;Andryx labs);レスコール(登録商標)カプセル(フルバスタチン・ナトリウム;Novartis&Reliant);リピトール(登録商標)錠(アトルバスタチン;Parke-Davis and Pfizer);メバコール登録商標)錠(ロバスタチン;Merck);プラバコール(登録商標)錠(プラバスタチンナトリウム;Bristol-Myers Squibb)、プラビガード(pravigard)(登録商標)PAC錠(緩衝化アスピリンおよびプラバスタチンナトリウム;Bristol-Myers Squibb);ゾコール(登録商標)錠(シンバスタチン;Merck);アドビコール(登録商標)錠(ナイアシン/ロバスタチン;Kos(HMG-COAレダクターゼ阻害剤としても収載))などのニコチン酸薬;ニアスパン(niaspan)(登録商標)(ナイアシン;Kos);並びにゼチア(登録商標)錠(エゼチミベ;Merck/Schering Plough)などの種々の薬剤を含むが、限定されない。
【0156】
中枢神経系障害を治療するための薬物には、種々のベンゾジアゼピン製剤および組み合わせなどの精神治療薬、抗不安薬、抗うつ薬(モノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAO阻害薬)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、三環系抗うつ薬を含む)、抗躁薬、抗パニック薬、精神病薬、覚醒剤および強迫性障害管理薬;βアドレナリン効果抑制剤、イソメテプテンおよびセロトニン受容体作動薬などの片頭痛製剤、並びにデパコテ(登録商標)(ジバルプロエクスナトリウム;Abbott)およびエキセドリン(登録商標)片頭痛錠(アセトアミノフェン;BMS Products)の活性成分を含む種々の片頭痛製剤;鎮静剤および催眠薬;抗痙攣薬;並びにピモジド(登録商標)を含むが、限定されない。パーキンソン病を治療するための薬物には、抗コリン作用薬、カテコール-o-メチルトランスフェラーゼ阻害剤、ドーパミン薬およびモノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤を含むが、限定されない。
【0157】
CNS退化障害を治療するための薬物には、以下を含む:多発性硬化症を治療するための薬物には、アボネックス(登録商標)(インターフェロンβ-1a;Biogen Neurology)の活性成分;SC注射用ベタセロン(登録商標)(インターフェロンβ-1bの修飾形態;Berlex);注射用コパキソン(登録商標)(酢酸グラチラマー;Teva Neuroscience);デポ・メドロール(登録商標)注射剤懸濁液(酢酸メチルプレドニゾロン;Pharmacia & Upjohn);注射濃縮物用ノバントロン(登録商標)(塩酸ミトキサントロンとして供給されるミトキサントロン;Serono);オラプレド(Orapred)(登録商標)経口液剤(リン酸プレドニゾロンナトリウム経口液剤;Ascent);およびRebif(登録商標)注射剤(インターフェロンβ-1a;Pfizer & Serono)を含むが、限定されない。ハンチントン病を治療するための薬物には、クロナゼパム(クロノピン(登録商標)などのトランキライザ;ハロペリドール(ハルドール(登録商標))およびクロザピン(クロザリル(登録商標)などの抗精神病薬);フルオキセチン(プロザック(登録商標)、サラフェム(登録商標))、セルトラリン(ゾロフト(登録商標))、ノルトリプチリン(アベンチル(Aventyl)(登録商標)、パメロール(登録商標))およびリチウム(エスカリス(登録商標)、リトビド(Lithobid)(登録商標))を含むが、限定されない。
【0158】
アルツハイマー病を治療するための薬物には、アリセプト(登録商標)錠(塩酸ドネペジル;エーザイまたはPfizer);エキセロン(登録商標)カプセル(リバスチグミン(酒石酸水素塩塩として);Novartis);エキセロン(登録商標)経口液剤(酒石酸リバスチグミン;Novartis);レミニール(登録商標)経口液剤(臭化水素酸ガランタミン;Janssen)またはレミニール(登録商標)錠(臭化水素酸ガランタミン;Janssen)を含むが、限定されない。
【0159】
キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を含む化合物を患者に導入する方法は、一部の態様において、癌を治療するために公知の他剤の同時投与である。このような方法は、当該技術分野において周知である。具体的態様において、キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を含む化合物は、癌を治療するための他剤含む、またはと共に、カクテルまたは同時投薬の一部である。このような薬物には、たとえば本明細書に収載されたもの、具体的には5-フルオロウラシル;インターフェロンα;メトトレキセート;タモキシフェン;およびビンクリンスチンを含む。上記の例は、例証のみのために提供され、多数のその他のこのような化合物が当業者に公知である。
【0160】
癌を治療するために適した他剤には、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホナート、ニトロソ尿素、エチレンイミンおよびトリアゼンなどのアルキル化薬;葉酸アンタゴニスト、プリン類似体およびピリミジン類似体などの抗代謝剤;アントラサイクリン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ダクチノマイシンおよびプリカマイシンなどの抗生物質;L-アスパラギナーゼなどの酵素;ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;5α-レダクターゼ阻害剤;17β-水酸化ステロイドデヒドロゲナーゼ3型の阻害剤;糖質コルチコイド、エストロゲン/抗エストロゲン、アンドロゲン/抗アンドロゲン、プロゲスチンおよび黄体形成ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト、オクトレオチドアセテートなどのホルモン剤;エクテイナシジンまたはこれらの類似体および誘導体などの微小管攪乱薬;タキサン、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))およびこれらの類似体、並びにエポシロンA-Fなどのエポシロンおよびこれらの類似体などの微小管-安定化剤;ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、タキサンなどの植物由来産物;並びにトポイソメラーゼ(topiosomerase)阻害剤;プレニル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;並びにヒドロキシ尿素、プロカルバジン、ミトタン、ヘキサメチルメラミン、シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金配位化合物などの種々の薬剤;並びに生体応答調節剤、成長因子などの抗癌剤および細胞障害薬として使用されるその他の薬剤;免疫変調成分およびモノクローナル抗体を含むが、限定されない。また、本発明の化合物は、放射線療法および外科手術と組み合わせて使用してもよい。
【0161】
抗癌剤および細胞障害薬のこれらのクラスの代表例には、塩酸メクロレタミン、シクロホスファミド、、クロランブシル、メルファラン、イホスファミド、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、チオテパ、ダカルバジン、メトトレキセート、チオグアニン、メルカプトプリン、フルダラビン、ペンタスタチン、クラドリビン、シタラビン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、硫酸ブレオマイシン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、サフラシン、サフラマイシン、キノカルシン(quinocarcins)、ディスコデルモライド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、酒石酸ビノレルビン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、パクリタキセル、タモキシフェン、エストラムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、フルタミド、ブセレリン、ロイプロリド、プテリジン、ジイネーゼ(diyneses)、レバミゾール、アフラコン(aflacon)、インターフェロン、インターロイキン、アルデスロイキン、フィルグラスチム、サルグラモスチム、リツキシマブ、BCG、トレチノイン、塩酸イリノテカン、ベタメタゾン(betamethosone)、塩酸ゲムシタビン、アルトレタミンおよびトポテカン(topoteca)並びにこれらの何れかの類似体または誘導体を含むが、限定されない。
【0162】
これらのクラスの好ましいメンバーには、パクリタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、カルミノマイシン、ダウノルビシン、アミノプテリン、メトトレキセート、メトプテリン、マイトマイシンC、エクテイナシジン743またはポフィロマイシン(pofiromycin)、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド、ポドフィロトキシンまたはエトポシド、リン酸エトポシドもしくはテニポシドなどのポドフィロトキシン誘導体、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ロイロシジン(leurosidine)、ビンデシンおよびロイロシンを含むが、限定されない。
【0163】
本発明の組成物と共に同時投与するために有用なその他の抗癌剤および細胞障害薬の例には、以下を含む:ドイツ特許第4138042.8号;国際公開第97/19086号、国際公開第98/22461号、国際公開第98/25929号、国際公開第98/38192号、国際公開第99/01124号、国際公開第99/02224号、国際公開第99/02514号、国際公開第99/03848号、国際公開第99/07692号、国際公開第99/27890号、国際公開第99/28324号、国際公開第99/43653号、国際公開第99/54330号、国際公開第99/54318号、国際公開第99/54319号、国際公開第99/65913号、国際公開第99/67252号、国際公開第99/67253号および国際公開第00/00485号に見いだされるようなエポシロン誘導体;国際公開第99/24416号(また、米国特許第6,040,321号を参照されたい)に見いだされるようなサイクリン依存性キナーゼ阻害剤;並びに国際公開第97/30992号および国際公開第98/54966号に見いだされるようなプレニル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;並びに米国特許第6,011,029号に一般的および具体的に記述されたものなどの薬剤(該米国特許の化合物は、ARモジュレーター、ERモジュレーターなどの任意のNHRモジュレーター(本発明のものを含むが、限定されない)と共に、LHRHモジュレーターと共に、または外科的技術と共に、特に癌の治療において、使用することができる)。
【0164】
正確な製剤、投与の経路および投薬量は、患者の状態を考慮して、主治医によって決定される。投薬量および間隔は、治療効果を維持するために十分である活性キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物の血漿レベルを提供するように、個々に調整することができる。一般に、所望のキュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、意図した投与経路および標準的薬務を考慮して選択した薬剤担体と共に混合物で投与される。
【0165】
一つの側面において、キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物は、インサイチューでポリペプチドが産生されるようにDNAとして送達される。一つの態様において、DNAは、たとえばUlmer et al., (Science 259:1745-1749 (1993)).に記述され、Cohen (Science 259:1691-1692 (1993))によって概説されたように「裸」である。裸のDNAの摂取は、担体、例えば生体分解性ビーズに対してDNAをコーティングすることによって増大させてもよく、次いでこれが細胞に効率的に輸送される。このような方法において、DNAは、核酸発現系、細菌、およびウイルスの発現系を含む当業者に公知の種々の送達系の何れの中に存在していてもよい。DNAをこのような発現系に組み込むための技術は、当業者に周知である。たとえば、国際公開第90/11092号、国際公開第93/24640号、国際公開第93/17706号および米国特許第5,736,524号を参照されたい。
【0166】
生物体間で遺伝物質を移動させるために使用されるベクターは、2つの一般的分類に分けることができ:クローニングベクターは、適切な宿主細胞内での伝播のために必須な領域をもち、その中に外来性DNAを挿入することができる、複製するプラスミドまたはファージであり;外来性DNAは、あたかもそれがベクターの成分であるかのように複製され、伝播される。発現ベクター(プラスミド、酵母または動物ウイルスゲノムなど)は、キュプレドキシンのDNAなどの外来性DNAを転写し、および翻訳するために、外来性遺伝物質を宿主細胞または組織内に導入するために使用される。発現ベクターにおいて、導入されたDNAは、宿主細胞にシグナルを伝達して挿入されたDNAを高度に転写するプロモーターなどのエレメントに作動可能に連結される。特定の因子に応答して遺伝子転写を制御する誘導性プロモーターなどの、幾つかのプロモーターもことのほか有用である。キュプレドキシンおよびこれらの変異体、誘導体または構造的均等物ポリヌクレオチドを誘導性プロモーターに作動可能に連結することにより、特定の因子に応答してキュプレドキシンおよび/またはチトクロームc並びにこれらの変異体および誘導体の発現を制御することができる。古典的な誘導性プロモーターの例には、α-インターフェロン、熱ショック、重金属イオンおよび糖質コルチコイドなどのステロイド並びにテトラサイクリンに応答するものを含む。その他の望ましい誘導性プロモーターには、構築物が導入される細胞に対して内因性ではないが、誘導薬が外因的に供給さると、これらの細胞において応答性であるものを含む。一般に、有用な発現ベクターは、プラスミドであることが多い。しかし、ウイルスベクター(たとえば、複製欠陥のあるレトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)などのその他の発現ベクターの形態も想定される。
【0167】
ベクター選択は、使用される生物体または細胞および望まれるベクターの運命によって要求される。一般に、ベクターは、シグナル配列、複製開始点、マーカー遺伝子、ポリリンカー部位、エンハンサーエレメント、プロモーターおよび転写終結配列を含む。
【0168】
キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を含むキット
一つの側面において、本発明は、パッケージまたは容器内に以下の1つまたは複数を含むキットを提供する:(1)少なくとも1つのキュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物を含む生物学的に活性な組成物;(2)同時投与される薬物を含む生物学的に活性な組成物;(3)薬学的に許容される賦形剤;(4)注射器などの投与のための媒体;(5)投与のための説明書。構成要素(1)〜(5)の2つ以上が同じパッケージングまたは容器内に見いだされる態様も想定される。同時投与される薬物は、以前に言及したものから選択してもよい。
【0169】
キットが供給されるときに、構成要素のうちの異なる構成要素は、別々の容器に包装して、使用直前に混合してもよい。構成要素のこのようなパッケージングは、別々に、活性成分の機能を失うことのなく、長期貯蔵させてもよい。
【0170】
キットに含まれる試薬は、異なる構成要素の寿命が保たれて、容器の材料によって吸着されないか、または変化しないような、何れの種類の容器内にも供給することができる。たとえば、密封されたガラスアンプルに、凍結乾燥されたキュプレドキシンおよびこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物、または窒素などの中性の非反応性ガス下でパックされた緩衝を液含んでいてもよい。アンプルは、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレン、その他などの有機ポリマー、セラミック、金属または典型的には同様の試薬を保持するために使用されるその他の何れかの材料などの、何れの適切な材料からなっていてもよい。適切な容器のその他の例には、アンプルとして同様の物質から製造されるであろう単純な瓶およびアルミニウムまたは合金などのホイルを並べた内部を含むであろうエンベロープを含む。その他の容器には、試験管、バイアル、フラスコ、瓶、注射器またはその他を含む。容器は、皮下注射針によって突き通すことができるストッパーを有する瓶などの無菌アクセス口を有してもよい。その他の容器は、取り除くことによって成分を容易に混合することができる着脱可能な膜によって分離された2つの区画を有してもよい。着脱可能な膜は、ガラス、プラスチック、ゴム、その他でもよい。
【0171】
また、キットは、説明材料と共に供給してもよい。説明書は、紙またはその他の基体に印刷されていてもよく、および/またはフロッピー(登録商標)ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ジップディスク、ビデオテープ、録音テープ、フラッシュメモリ装置、その他などの電子読み込み可能な媒体として供給してもよい。詳細な説明書は、物理的にキットに付随していなくてもよいが;その代わりに、使用者には、キットの製造業者または発売元によって特定されるか、または電子メールとして供給されるインターネットウェブサイトを教えてもよい。
【0172】
キュプレドキシンおよびこれらの変異体、誘導体もしくは構造的均等物の修飾
キュプレドキシンまたはこれらの変異体、誘導体もしくはこれらの構造的均等物は、前述したように変異体および誘導体を産生するために、化学的に修飾されていても、または遺伝子改変されていてもよい。このような変異体および誘導体は、標準的技術によって合成してもよい。
【0173】
キュプレドキシンの天然に存在する対立遺伝子変異体に加えて、キュプレドキシンがエフリンシグナリングを妨げるか、または癌の増殖を阻害する能力を有意に変化させずに、コードされるキュプレドキシンのアミノ酸配列が変化を受けるキュプレドキシンコード配列内の突然変異によって変化を導入することができる。「非必須」アミノ酸残基は、生物活性を変化させることなく、キュプレドキシンの野生型配列から変化させることができる残基であるが、「必須」アミノ酸残基は、このような生物活性のために必要とされる。たとえば、キュプレドキシン間で保存されたアミノ酸残基は、特に変化を受け入れられず、したがって「必須」であることが予測される。
【0174】
ポリペプチドの活性を変化させない保存的置換を行うことができるアミノ酸は、当該技術分野において周知である。有用な保存的置換を表3「好ましい置換」に示してある。1種類のアミノ酸が、同一形式の別のアミノ酸で置換されることによる保存的置換は、置換が化合物の生物活性を具体的に変化させない限り、本発明の範囲内に入る。
【表3】

(1)β-シートまたはαらせん高次構造などのポリペプチドバックボーンの構造、(2)電荷、(3)疎水性または(4)標的部位の側鎖のかさに影響を及ぼす非保存的置換は、細胞障害性因子機能を修飾することができる。残基は、表4に示したように、共通の側鎖特性に基づいてグループに分けられる。非保存的置換では、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスに交換することを必要とする。置換は、保存的置換部位に、またはより具体的には非保存的部位に導入されてもよい。
【表4】

変種ポリペプチドは、オリゴヌクレオチドを媒介した(部位特異的)突然変異誘発、アラニン走査およびPCR突然変異誘発などの当該技術分野において公知の方法を使用して作製することができる。部位特異的変異誘発、カセット突然変異誘発(制限選択突然変異誘発))またはその他の公知の技術をクローン化DNAに対して行って、キュプレドキシン変異体DNAを産生することができる。
【0175】
また、本発明の方法において使用される変異体キュプレドキシンを作製するために、キュプレドキシンの公知の突然変異を使用することもできる。たとえば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)アズリンのC112DおよびM44KM64E突然変異体は、天然のアズリンとは異なる細胞障害能および増殖抑制活性を有することが公知であり、このような変化された活性は、本発明の治療方法に有用であり得る。本発明の方法の一つの態様では、哺乳動物細胞においてエフリンシグナリングを妨げるか、または癌の増殖を阻害する能力を保持しているキュプレドキシン並びにこれらの変異体および誘導体を利用する。もう一つの態様において、本発明の方法は、細胞の増殖停止を生じさせる能力を有するM44KM64E突然変異体などのキュプレドキシン変異体を利用する。
【0176】
本発明のより完全な理解は、以下の具体的実施例を参照することによって得ることができる。実施例は、単に例証のみのために記述してあり、本発明の範囲を限定することは意図されない。状況により示唆され、または好都合になるように、形の変更および均等物の置き換えが想定される。本明細書において具体的用語を使用したが、このような用語は、記述的意味のものであり、限定のためのものではないことが意図される。先に記載したとおりの本発明の修正変更は、これらの趣旨および範囲から逸脱することなく、行うことができ、従って、添付の請求の範囲によって示されたような限定のみが、課されるべきである。
【実施例】
【0177】
例1:線虫(C.elefans)の発生のインビボ試験
線虫(Caenorhabditis elegans)において、幾つかのエフリンは尾筋肉形成および胚形成に関与することが知られている。我々の予備実験では、ラスチシアニンが尾筋肉形成を阻害する(尾の麻痺を引き起こす)一方で、アズリンは子孫の誕生(胚形成)を阻害することが示されている。これらの実験において、アズリンおよびラスチシアニンの遺伝子は、大腸菌において過剰発現された。アズリンまたはラスチシアニン遺伝子を含まない対照の大腸菌が維持された。線虫に3日間まで対照の大腸菌が与えられた場合、それらは健常であり、子孫を生んだ。線虫にアズリンを発現している大腸菌が与えられた場合、それらは健常に見えたが、子孫をほとんど生まなかった。線虫にラスチシアニンを発現している大腸菌が与えられた場合、約30%がその頭または体の上部を動かすことができるに過ぎず、尾または体の下部は動かすことができずに麻痺を示した。
【0178】
例2:アズリンの構造的に類似する近隣物質の分析
タンパク質構造的な近隣物質の分析は、ベクターアラインメントサーチツール(VAST)アルゴリズムを用いて、分子モデリングデータベースにおいて3次元のタンパク質構造を直接比較することにより決定された(Gibrat et al., Curr Opin Struct Biol 6:377-385 (1996); .Madej et al., Proteins 23:356-3690 (1995))。前記分子モデリングデータベースには、結晶学的構造決定およびNMR構造決定が含まれ、国立バイオテクノロジー情報センター(べテスダ, MD, USA)により維持されている。VASTタンパク質構造隣接分析を行うプログラムは、国立バイオテクノロジー情報センターを介して入手可能である。
【0179】
アズリンは、MMDB(分子モデリングデータベース)エントリー1 KGY E(EphB2-エフリンB複合体の結晶構造)を用いて、有意な(Vast P 値: 10 e -4.6; アラインメント長さ: 90 aa; %同一性: 6)を示し(図1)構造的重ね合わせを示した。前記結晶構造を用いたアズリンの重ね合わせアラインメントは、鎖E(138aa)、エフリン(エフリン-B2)と呼ばれるタンパク質に関連がある。計算的な分析は、Himanen et al. (Nature, vol 414: 933-938 (2001))において公表されている構造的なデータに従う。
【0180】
さらなるVAST分析は、キュプレドキシンであるラスチシアニン、オーラシアニン、プラストシアニン、キュウリ塩基性タンパク質、およびステラシアニンが、G-Hループ領域におけるエフリンB2に対して有意な構造的相同性を有することを示す(図2)。
【0181】
例3:アズリンおよびプラストシアニンに由来する合成ペプチドの有効性
ヒトエフリンB-2 G-Hループと構造的に類似する、アズリンおよびプラストシアニンに由来する合成ペプチドの有効性が分析された。以下の配列を有する18-merアズリンペプチドが、標準的な技術により合成された:
TFDVSKLKEGEQYMFFCT 配列番号18。
【0182】
MCF-7乳癌細胞は、5および50μg/mlの18-mer アズリンペプチドと共に、16ウェルプレートにおいて、0、24、48、および72時間インキュベートした。50μg/mlの場合のペプチドは、48〜72時間において、合成ペプチドで処理しない細胞と比較して、MCF-7細胞の増殖を50%阻害することが見られた。細胞増殖阻害の程度は、5μg/mlの18-mer 合成ぺプチドにおいて、処理していない対照と比較して約25%であった。この実験は、単にB-2エフリンに対する構造的な相同性に基づいて構築された合成ペプチドが、実際に、B-2エフリンにより促進される癌細胞の発達を阻害することを示す。
【0183】
例4:Mel-2およびMCF-7細胞の増殖におけるキュプレドキシンの効果のインビトロ測定
キュプレドキシンで処理された細胞の増殖は、16ウェルプレートを用いて測定した。Mel-2またはMCF-7細胞(各ウェル当り5×105の細胞)を24時間、マルチウェル(この例においては16ウェル)プレートに付着させた。付着の後、培地を吸い出した。PBS (リン酸緩衝食塩水)または種々のキュプレドキシン/シトクロムをPBS中における0.1〜10μMの濃度で、新鮮培地を含有するウェルに加え、癌細胞の増殖を24、48、および72時間観察した。インキュベーションの後、トリパンブルーを培地に加え、死んで浮遊している細胞の数をカウントした。生きている細胞および死んで浮遊している細胞は共に、種々のキュプレドキシン用量におけるIC50を決定するためにカウントされた。IC50は、細胞培養増殖を50%阻害するタンパク質の濃度である。
【0184】
ウェル当り500,000の細胞の24時間の培養において、再現性のあるカウントに対して十分な細胞が存在した。キュプレドキシン(−)の対照細胞培養において、細胞が増殖するにつれてウェルの底に付着するためのスペースが減少し、死に始め、浮遊細胞になった。プラストシアニン処理またはラスチシアニン処理された細胞培養において、細胞はウェルの表面に過増殖し、死んで浮遊し始めたが、その数は対照よりも少なかった。しかしながら、アズリン処理された細胞培養において、Mel-2およびMCF-7の細胞株の培養は、浮遊細胞の発生をほとんど示さなかった。
【0185】
例5:エフリンB2とキュプレドキシンとの間の構造的な類似性
エフリンB2外部ドメインとキュプレドキシンとの間の構造的な類似性は、VASTおよびDALIアルゴリズム(Holm and Sander, J. Mol. Biol. 233:123-138 (1993); Gibrat et al., Curr. Opin. Biol. 6”377-385 (1996))を用いて決定され、それぞれUS国立衛生研究所およびヨーロッパ生命情報科学研究を通して入手可能である。構造に基づく1対毎の配列アラインメントは、VASTアルゴリズムを用いて計算された。タンパク質の構造ダイアグラムは、TOPS(タンパク質構造のトポロジー)漫画を用いて、2次元で行われる (Torrance et al., Bioinformatics 21:2537-2538 (2005))。構造の評価は、プログラムMol Molを用いて行われた(Koradi et al., J. Mol. Graphics 14:51-55 (1996))。
【0186】
幾つかの相同性が2つのプログラムを用いて見いだされ(データは示していない)、モノマーのキュプレドキシンタンパク質である、プラストシアニン、アズリン、およびラスチシアニンの小さなサブセットが含まれる。特に、エフリンB2外部ドメインとこれら3つのキュプレドキシン(キュプレドキシンファミリーの代表的なタンパク質として選択される)との間の構造比較は、VASTおよびDALIアラインメントにより有意且つ相当な類似性スコアが提供され、それぞれ11.0〜9.7 (最大可能性15.7の外)および6.7〜6.4の範囲であった。DALI Zスコア<2.0は、構造的に非類似である(表5)。最も注目すべき構造保存は、エフリンB2外部ドメインとプラストシアニンとの間に存在し、1.8オングストロームの2乗平均偏差(r.m.s.d.)を用いて重ねあわされた(67の構造的に等価なCα原子全部を計算)(表5)。対照的に、アズリン、プラストシアニン、およびラスチシアニンは、エフリンB2外部ドメインに対して低い一次配列同一性(10%未満)を示す(表5)。
【表5】

【0187】
a-VASTスコア-VAST構造類似性スコア;この数字は、重ね合わされた二次構造要素の数および重ね合わせの質に関する。より高いVASTスコアは、より高い類似性と相関する。
【0188】
b-DALI Zスコア-Zスコアは、DALIデータベースにおいて、エフリン外部ドメインと他の構造との1対毎の比較を用いて計算される。Zスコアが高いほど、3D構造間の類似性がランダムである可能性が低い(Z<2.0のペアは構造的に非類似である)。
【0189】
c-RMSD-構造対のアラインされたペア間の、オングストロームでの基幹残基の2乗平均偏差。
【0190】
図3は、エフリンB2外部ドメインのTOPS漫画(A)およびMolMol写真(B)を示す。形態上の記述は、タンパク質が、ギリシャ鍵折りたたみ構造のコアに由来する2つのβシートのサンドイッチの形をとり、βストランドの数および配向の点において顕著な構造的類似性を有することを示した;1KGY_E (エフリンB2)、1IUZ (プラストシアニン)、および1JZG_A (アズリン) (図3)。比較すると、α-ヘリックスの数および配置の保存はずっと少ない。JZG Aにおいては、ここで示した他のタンパク質と比較してらせん構造が特徴的である。異なるサイズを有するタンパク質について期待されるように、二次構造の要素を連結するループは、長さおよび高次構造において相違を示した。1RCY (ラスチシアニン)は、最も低い構造的な相同性を示し、共有の二次構造要素(SSEs)の長さにおいて実質的な相違を有し、非共有のSSEsが存在する。
【0191】
例6:表面プラズモン共鳴によるEph-Fc受容体-キュプレドキシン相互作用の分析
キュプレドキシンとEph受容体との特異的な相互作用は、表面プラズモン共鳴(SPR)分析により測定した。ヒト星状細胞腫CCF-STTG1、グリア芽細胞腫LN 229、およびMCF-7 (乳癌)細胞を、2 mM L-グルタミン、10 mM ヘペス、10% (vol/vol) 熱不活化FBS、100 ユニット/ml ペニシリン、および100μg/ml ストレプトマイシンを含有するRPMI培地1640において、37℃で、上述したように5%のCO2と共に加湿インキュベーター中で培養した (Yamada et al., Cell Microbiol. 7:1418-1431 (2005); Hiraoka et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101: 6427-6432 (2004))。UISO-Mel-2のヒト黒色腫細胞 (Yamada et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:14098-14103 (2002))は、10%FBSが補充されたHank’sの培地を有するMEMにおいて培養された。大腸菌JM109およびBL21 (DE3)は、アズリン、ラスチシアニン、およびプラストシアニンに対する宿主株として使用された。アズリンおよびラスチシアニンは、上述したように精製された(Yamada et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:14098-14103 (2002); Yamada et al., Cell Cycle 3:1182-1187 (2004))。GST-アズリン融合誘導体の構築および精製は、以前に報告されている(Yamada et al., Cell Microbiol. 7:1418-1431 (2005))。フォルミジウム・ラミノサム(Phormidium laminosum)に由来するプラストシアニンの精製および発現は、大腸菌株BL21(DE3)Cd+(RIL)がBL21(DE3)の代わりに使用されたことを除いて、本質的に、前に述べたように実施された。完全に酸化されたタンパク質の濃度は、4700 M-1cm-1の吸光係数を用いて、598 nmで分光光度的に測定された。
【0192】
Eph外部ドメインFc融合タンパク質およびエフリンは、R & D システムズ, ミネアポリス, MNから、凍結乾燥粉末として購入した。表面プラズモン共鳴および増殖実験のために使用される全ての他の化学物質は、ビアコア(Biacore) AB インターナショナルまたはシグマ社から購入し、高い分析用のグレードであった。キュプレドキシンまたはGST-ペプチドとEph-FcまたはエフリンB2-Fcとの間の直接的なタンパク質-タンパク質相互作用は、表面プラズモン共鳴(SPR)技術に基づくビアコアXバイオセンサーシステム(ビアコアAB)を用いて測定された。
【0193】
最初のスクリーニング実験において、アズリン、ラスチシアニン、またはプラストシアニンのCM5センサーチップ上の単一チャネルへの固定化は、アミンカップリング法を用いて達成された。N-ヒドロキシスクシンイミド/N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド(0.05M/0.2M, 35μL)、キュプレドキシンタンパク質(255μM, 50μL)、1M エタノールアミン(50μL, pH 8.8)、および100 mM NaOH (10μL)の経時的な注入により、300RUの共鳴シグナルにおける増加を伴って、タンパク質がCM5センサーチップに共有結合的に結合した。結合性試験は、センサー表面に、流速5および30μ1/分で2.3分間(70μl注入)、キュプレドキシン-CM5表面を再生するために100 mM NaOH (10μL パルス)を中間投与することと共に、HBS-EPランニングバッファー(0.01 M ヘペス, pH 7.4, 0.15 M NaCl, 3 mM EDTA, 0.005% v/v サーファクタント P20)中100 nMのEph-Fcタンパク質を逐次的に投与することにより行われた。全ての結合性試験は、非特異的な結合を補正するために、むき出しのAu CM5センサー表面(負のチャネル)に対して行われた。
【0194】
結合性スクリーニングは、キュプレドキシンで修飾されたセンサーにおいて、100nMのEph-Fc 受容体の流速30μL/分、2.3分間の逐次的な注入により行われた。カーブは、Eph-Fcとアズリン、プラストシアニン、およびラスチシアニンとの相互作用に対する会合相の開始を意味する。相対的な結合親和性は、飽和共鳴の関数(Req)として表され、ラスチシアニンのEphB1-FcまたはEphA8-Fcに対する結合性についての79 RUからアズリンのEphB2-Fc に対する結合性についての1248 RUまで変化した。特異的なEphAおよびEphB受容体タンパク質に対するキュプレドキシンの交差選択性の結合は、キュプレドキシンとEphBとの間に生じる最もよい相互作用と共に注目すべきである。
【0195】
固定化されたキュプレドキシンのEph-Fcに対する結合性についてのSPRセンサーグラムは、これらタンパク質の2つのサブセット間で選択的な認識を示した。(図4A-C)。これらの測定において、Eph-Fc濃度は100nMで一定に維持され、Reqで表される会合の程度における違いは、Eph-Fc受容体タンパク質とキュプレドキシンとの間の親和性における違いを示す。アズリンは、EphB2-FcおよびA6に対して最も高い親和性を示し、A4およびA7とも堅く結合した(図4A)。一方、プラストシアニンはEphA1-Fc、A3、およびB2に対して選択性を示し、より低い程度でA2およびA6に対しても示した(図4B)。最後に、ラスチシアニンはEphA8-Fcを認識し、B1も弱く認識した(図4C)。アズリンとEphB2-FcおよびEphA6-Fcとの会合相互作用は最も高く、Req値はそれぞれ1248および1200 RUであった。
【0196】
例7:EphB2-Fc-SPR結合性測定を用いたアズリンおよびGST-Azuの結合親和性の分析
EphB2-Fc -SPR 結合性測定を用いたアズリンおよびGST-azuペプチドの結合親和性は、全長アズリンまたはその種々のドメインのEphB2-Fc受容体に対する相対的な結合親和性を評価するために、固定化されたEphB2-Fcを用いて、アズリンまたはGST-アズリンについて行われた。アズリンまたはGST-Azuペプチドは、濃度を増大させて(0.05〜100 nM)EphB2-FcまたはエフリンB2-Fc固定化CM5チップに、注入の間は100 mM NaOH パルスを用いて注入した。データは、ラングミューアー(1:1) 結合モデル[Req = Rmax/(1 + Kd/C)]に適合し、外挿して平衡結合定数(Kd)を求めた。
【0197】
アズリンのEphB2-Fc に対する結合性の構造的な決定因子を解明するための実験戦略は、図5に示されており、前に述べたように、アズリンおよびGST-Azu構築物の一次/二次構造パラメーターの図を示す (Yamada et al., Cell Microbiol. 7:1418-1431 (2005))。特に、GST-Azu 88-113は、エフリンB2のGHループ領域(天然リガンド)と完全に一致し、それ故、そのEphB2-Fcとの結合力は特に興味深かった。EphB2-Fcに対するアズリンおよび種々のGST-Azu構築物(全て100nM)の最初の結合性測定は、それらの相対的な結合親和性を明らかにした: すなわち、アズリン>GST-Azu 88-113>GST-Azu 36-128>エフリンB2-Fc>GST-Azu 36-89>>GST (図6A)。アズリンおよびGST-標識化アズリンは、同等の親和性を示した (データは示していない)。結合親和性を定量するために、アズリンまたはGST-Azuに対する飽和反応値(Req)をそれらの濃度の関数として(0-100 nM)測定した(図6B)。結合性データは、単純ラングミューアー(1:1)結合式に適合し、平衡解離定数(Kd)を決定した。特に、アズリン(Kd=6 nM)およびGST-Azu 88-113 (Kd=12 nM)は、EphB2-Fcに対して、天然エフリンB2-Fcリガンド(Kd=30 nM)よりもそれぞれ5および2.5倍高い親和性を示した。また、GST-Azu 36-128 (表6)は、エフリンB2-Fc (Kd=30 nM)よりもわずかに高い親和性(Kd=23 nM)を示した。対照的に、GST-Azu 36-89およびGSTは、ごくわずかな親和性であった(表6)。これらのデータは、高親和性EphB2-Fc相互作用に対するアズリンのAzu 88-113領域の有意性を示す。Azu 88-113領域は、エフリンB2に見られるGHループに対して構造的に相同性であるGHループドメインからなる。
【表6】

【0198】
アズリンおよびGST-Azu構築物とEphB2-Fcとの相対的な結合長さは、SPR結合性滴定試験により測定され、外挿されたデータセットが集計され、天然のエフリンB2-FcリガンドおよびGSTの結合性と比較される。最初のスクリーニング実験に由来するデータは、100nMの検体の注入により生じ、飽和シグナル(Req)は共鳴単位で表に表される。結合性における飽和は、図6bに示される結合曲線における各滴定ポイントにおいて達成され、[検体]に対してプロットされたこれらの値は、平衡解離定数(Kd)を計算するために使用された。アズリンおよびGST-Azuの相互作用に対するKd 値が6〜61nMの範囲である一方で、天然リガンドを有するEphB2-Fcは、この範囲内の中間の結合親和性を有していた。
【0199】
例8:アズリン/GST-AzuおよびエフリンB2-FcとEphB2-Fcとの競合結合性試験の分析
高い親和性のアズリン- EphB2-Fc結合性に対する生理学的な効果をより理解するために、我々はさらなる結合性測定を行った。競合結合性滴定は、エフリンB2-Fc (246 nM)+競合相手[アズリンまたはGST-Azu (0-1020 nM)]がEphB2-Fc CM5センサー表面に注入されることを除いて、結合定数試験と同様に行った。
【0200】
アズリン+エフリンB2-Fcサンプルは、異なるアズリン濃度(0〜1020 nM, [エフリンB2-Fc]は246 nM)でセンサー表面に添加され、データは共鳴の割合、%全反応[Req (アズリン+エフリンB2-Fc)/(Req/(エフリンB2-Fc))]としてプロットされた。GST-Azu 88-113およびGST-Azu 36-89は、エフリンB2-Fcと共に固定化されたEphB2-Fcに滴定され、同様の方法で分析された。競合データは、アズリンおよびGST-Azu 88-113と固定化されたEphB2-Fcとの間の結合性の1: 1化学量論を示す。
【0201】
我々は、初めに、アズリンおよびGST-Azu構築物とEphB2-FcリガンドであるエフリンB2-Fcとの結合性を測定した。図7Aは、アズリンは実際に高い親和性(Kd=8.5+0.8 nM)でエフリンB2-Fcと結合することを示し、これら2つのタンパク質間の構造的な類似性を示す(表5)。エフリンB2-Fcに対するGST-Azu 88-113の相対的に高い結合性(Kd=39+6.5 nM)は、88と113との間の領域がエフリンB2-Fcに対する結合性の原因であることを示す。対照的に、GSTおよびGST-Azu 36-89はエフリンB2-Fcとの有意な相互作用を示さなかった。まとめると、これらのデータは、アズリンはGHループ(88-113)領域を介して、EphB2-FcおよびエフリンB2-Fcの両方と高い親和性で結合し得ることを示す。
【0202】
この見解をさらに試験するために、我々は、エフリンB2-Fcが種々の濃度のアズリンおよびGST-Azu構築物とともにインキュベートされた後で、CM5センサーチップに固定化されたEphB2-Fcに対するエフリンB2-Fcの結合性のSPR分析を行った。図7Bは、それぞれ0〜1020 nMのアズリン、GST-Azu 88-113、およびGST-Azu 36-89による、EphB2-Fcに対するエフリンB2-Fc ([エフリンB2-Fc]=246 nM)の結合の阻害を示す。この阻害は、%全反応(=[R eq (アズリン+エフリンB2-Fc) / Req (エフリンB2-Fc 単独)]*100)で表される。この阻害プロフィールは、エフリンB2-FcがアズリンまたはGST-Azu 88-113と共にインキュベートされた場合に、固定化されたEphB2-Fc に対する全タンパク質の結合が減少することを示し、アズリンは、GST-Azu 88-113より強力な阻害剤である。アズリンまたはGST-Azu 88-113とエフリンB2-Fcとのプレインキュベーションは、表面に結合する全タンパク質を60%まで減少させる。一方、GST-Azu 36-89は、全タンパク質の結合性に影響を与えず(図7B)、これは、エフリンB2-FcまたはEphB2-Fcに対する弱い結合性と一致している。最大の阻害がエフリンB2-Fcとアズリン(またはGST-Azu 88-113)の1:1の割合で達成されるため、アズリン(またはGST-Azu 88-113)はエフリンB2-Fcと化学量論的な複合体を形成すると考えられる。アズリンまたはGST-Azu 88-113による阻害が40〜50%で一様になるという事実は、推定上のアズリン-エフリンB2-Fc複合体がEphB2-Fc受容体に対していくらか親和性を有することを示す。一括して、これらの結合性データは、アズリンがエフリンB2-FcおよびEphB2-Fcの両方に対して高い親和性を有すること、ならびにリガンド隔離および受容体占有の二重のメカニズムによりエフリンB2-Fc-EphB2-Fc結合を阻害できることを示す。
【0203】
例9:Azu 96-113およびPlc70-84合成ペプチドおよびGST-Azu融合誘導体の、種々の癌細胞株に対する細胞毒性活性の分析
アズリンおよびプラストシアニンとヒトエフリンB2外部ドメインとの構造に基づく配列アラインメントに基づいて、我々はエフリンB2のG-Hループ領域に対応するペプチド(Azu 96-113 (配列番号18)およびPlc 70-84 (配列番号20))を構築し、その主な領域は、エフリンのEph受容体に対する高い結合性を媒介する(Himanen et al., Nature 414:933-938 (2001); Toth et al., Dev. Cell. 1:83-92 (2001))。図8において、エフリンB2外部ドメイン、アズリン、およびプラストシアニンのC末端セグメントの構造的な重なりが見られる。アズリンおよびプラストシアニンとヒトエフリンB2外部ドメインとの構造に基づく配列アラインメントは、エフリンB2のEphB2受容体に対する高い親和性の結合を媒介する領域に基づくペプチドを構築するために使用され(エフリンB2-Fcの外部ドメインのGストランド-ループ-Hストランド)、アズリンの場合はAzu 96-113 (96-TFDVSKLKEGEQYMFFCT -113)であり、プラストシアニンの場合はPlc 70-84 (70-VRKLSTPGVYGVYCE-84)である(図8)。前記ペプチドは、GenScriptコーポレーション(Piscataway, NJ)から、99%の純度で購入した。それらは、逆相高圧液体クロマトグラフィーにより精製され、それらの同一性は質量分析により検証された。ペプチドはリン酸緩衝食塩水(PBS)(1×)に溶解され、使用するまで−20℃で一定分量を貯蔵した。
【0204】
そのようなアズリンのドメインが癌の進行においてEph情報伝達に対するアンタゴニストとしての役割を果たすかどうかを見るために、我々は、通常過剰発現EphB受容体/エフリンリガンドとして知られる多数の癌細胞株について定量的なMTT分析を行った。37℃での24時間のインキュベーションの間、75μMのアズリンおよびプラストシアニンG-Hループペプチドは、脳腫瘍星状細胞腫CCF-STTG1およびグリア芽細胞腫LN-229において細胞死の誘発を示した(図9A)。プラストシアニンペプチドPlc 70-84は、アズリンペプチドAzu 96-113よりもいくらか高い細胞毒性活性を示した。そのような細胞毒性が他の癌細胞に依存し、有効であるかどうかを決定するために、我々は、幾つかの濃度のこれらのペプチドの黒色腫(図9B)またはグリア芽細胞腫細胞(図9C)に対する影響を評価した。両方の場合において、ペプチド濃度の増大は細胞毒性の増大を導いた(図9Bおよび9C)。
【0205】
例10:乳癌MCF-7細胞において細胞死を引き起こすためのGST-Azu融合タンパク質の能力の分析
我々は、乳癌MCF-7細胞において細胞死を引き起こすためのGST-Azu融合タンパク質の能力を試験した。アズリンおよびプラストシアニン合成タンパク質の細胞毒性の測定に対して、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド) (MTT) (シグマ社製)分析(Mosmann, J. Immunol. Methods 65:55-63 (1983))が行われた。約2×104細胞/ウェルが、100μlのRPMI 1640 培地が入った96ウェル培養プレートに蒔かれた。一晩の培養の後、上清が除去され、アズリンまたはプラストシアニン合成タンパク質が種々の特定の濃度で含まれる新しい培地を付着した細胞に加えた。24または48時間の処理の後、10μlの5 mg/ml MTT溶液が培地に加えられ、37℃で1時間培養された。MTT反応は、イソプロパノール中の40 mM HClの添加により終結させた。形成されたMTTホルマザンは、前に述べたように、分光光度的に測定された(Mosmann, 1983)。処理されていない対照細胞は、生存度を測定し、それにより細胞毒性の測定を行うために、処理された細胞と比較された。
【0206】
対照(タンパク質処理していない)と同様に、GSTまたはGST-Azu 36-89によりトリガーされた細胞毒性はほとんどなかった(図10)。しかしながら、エフリンB2/EphB2結合を阻害することができるアズリンの領域を有するGST-Azu 36-128またはGST-Azu 88-113は、用量依存性に有意な細胞毒性を示し、MCF-7細胞死をトリガーすることにおけるAzu 88-113の役割を確認した。
【0207】
例11:エフリン情報伝達に関する病態に罹患している患者の治療
キュプレドキシン組成物(治験薬)の相I/II臨床試験を、癌に罹患している患者で行った。特に、キュプレドキシン化合物はPlc 70-84 (配列番号20)である。
【0208】
臨床的およびX線写真として進行を示すか、または現在有用なFDAに承認された化学療法剤および措置により適切な治療を受けた後での再発を示す、組織学的に乳癌、大腸癌、および黒色腫であると確認された49人の成人患者は、治験薬を投与するオープンラベルの前向き試験に登録されている。試験における登録に対して適格であるために、全ての患者は、化学療法の承認された過程を終了した後に測定可能な腫瘍の容積が増大を示す。持続性転移性の沈着物および/または大きさおよび容積の継続的な増大の証拠は、組織学的に確立されなければならない。この組織学的な証拠は、細針吸引生検により得ることができる。
【0209】
治療計画は、イリノイ州シカゴの大学の治験審査委員会およびFDA従って全ての患者からインフォームドコンセントが得られた後で開始される。患者は、提唱された治療の効果の適切な評価を妨害する他の悪性疾患、悪性疾患の既往歴、血液疾患、インスリン依存性糖尿病または他の重篤な循環器病のような併発の疾患を有していない。治療の開始前に、肝機能試験(LFT)が含まれるベースラインの血液検査(全血球計算値[CBC]および血清化学)が行われた。全ての適格な患者は、治験の期間、何れの癌化学療法も同時に受けるべきではない。
【0210】
治験薬は、治験薬の薬学的に許容可能な製剤の毎日の静脈内注射により12週間投与され、対象は、毒性を制限する何れかの用量について観察される。10 mg/kg/日から開始して5 mg/kg/日ずつ増加させ、最大50 mg/kg/日の用量までの7つの用量レベルがある。核用量レベルの効果は、進行性の測定可能な癌(乳癌、大腸癌、および黒色腫)を有する7人の患者において記録される。
【0211】
反応は、二次元で測定可能な腫瘍を測定することにより評価される(aおよびb)。1)標的の転移性の腫瘍の完全な消滅は、完全な反応と考えられ(CR);2)75%の減少は、非常によい部分的な反応と考えられ(PR)、3)良好な反応(PR)は、治療後の50%の大きさの減少であり、4)25%の大きさの減少は、安定性の疾患(SD)と考えられ、5)25%未満は反応なしと考えられる(NR)。疾患の進行を示す患者は、そのような治療を中断するが、さらに12週間経過観察する。
【0212】
完全な消滅および標的の転移性の腫瘍の大きさにおけるいくらかの減少は、アズリン治療が癌治療に有効であるということを示す。Plc 70-84治療が有効であるという他の示唆は、新しい転移性の腫瘍の発生の速度を減少させること、および腫瘍に付随する脈管形成を減少させることである。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】図1は、アズリンとエフリンB2との構造的アラインメントを描いている。エフリンB2のG-Hループ(EphB受容体との高親和性相互作用を媒介する領域)は、ボックスで示されている。1JZG_Aは、Pseudomonas aeruginosa由来アズリンのアミノ酸配列(配列番号1)である。1KGY_Eは、ヒト由来のエフリンB2外部ドメインのアミノ酸配列(配列番号23)である。
【図2】図2は、キュプレドキシンとエフリンB2との構造的アラインメントを描いている。ボックスは、Eph受容体結合に関与するエフリンB2のG-Hループ(15 aa)を示している。保存された残基は、太字および下線で示されている。大文字は重なり位置を示している。ダッシュは、アラインメントの存在しない場所である。エフリンB2 G-Hループ領域は、配列番号24である。エフリンB2のG-Hループ領域に類似したP. aeruginosaアズリン領域は、配列番号25である。エフリンB2のG-Hループ領域に類似したThiobacillus (Acidithiobacillus) ferrooxidansラスチシアニン領域は、配列番号26である。エフリンB2のG-Hループ領域に類似したChloroflexus aurantiacusオーラシアニン領域は、配列番号27である。エフリンB2のG-Hループ領域に類似したPhormidium laminosum プラストシアニン領域は、配列番号28である。エフリンB2のG-Hループ領域に類似したCucumis sativusキュウリ塩基性タンパク質は、配列番号29である。エフリンB2のG-Hループ領域に類似したCucumis sativusステラシアニン領域は、配列番号30である。
【図3】図3は、ヒト由来のエフリンB2外部ドメイン(1kgy_E)、Ulva pertusa由来のプラストシアニン(1iuz)、Pseudomonas aeruginosa由来のアズリン(1jzg_A)、およびThiobacillus (Acidithiobacillus) ferrooxidans由来のラスチシアニン(1rcy)の構造の間の比較を描いている。図3には、TOPS漫画を使用して、各タンパク質のトポロジー示されている。TOPS漫画は、当該構造を二次構造要素の配列(SSEs)として表している:即ち、β鎖(三角形として描かれている)および螺旋(αおよび310)(円で表されている)、それらが如何にしてアミノ末端からカルボキシ末端への配列で結合されているか、およびそれらの相対的空間位置および配向である。これら要素の向きは、連結線から推測することができる。「上向き」の鎖は上方に尖った三角形で示され、また「下向き」の鎖は下方に尖った三角形によって示される。図3Bの絵は、MolMloプログラム(Koradi et al., J. Mol. Graphics 14:51-55 (1996))を使用して描いたものである。
【図4】図4は、キュプレドキシンと結合型Eph-Fcとの結合についての表面ズラズモン共鳴センサ図を描いている。EphA-FcおよびEphB-Fcタンパク質との、アズリン(図4A)、プラストシアニン(図4B)、およびラスチシアニン(図4C)の選択的結合が表されている。
【図5】図5は、全長アズリン(配列番号1)から誘導された種々の短縮型アズリン構築物の概略図を表している。二次構造要素は、βシートについては矢印で、また螺旋(αおよび310)については長方形で示されている。128アミノ酸のアズリンをコードする遺伝子の種々の切片が、gst遺伝子(グルタミンSトランスフェラーゼをコードする)の3'-末端にインフレームで融合され、E. coliの中にクローニングされ、過剰発現され、先に記載されたようにして当該融合タンパク質が精製される(Yamada et al., Cell Micro. 7:1418-1431 (2005))。
【図6】図6は、表面プラズモン共鳴研究で決定されたEphB2-Fcについての、アズリンおよび選択的に構築されたGST-Azu融合の相対的な結合親和性を描いている。図6Aにおいては、アズリンまたはGST-Azuの相対的結合強度を決定するために、初期のスクリーニング実験が行われ、ここではキュプレドキシン(100 nM)のEphB2-Fc-修飾されたCM5センサチップ上への注入の後に、SPRとレースが記録された。とりわけ、アズリン、GST-Azu 88-113、およびGST-Azu 36-128は、EphB2-Fcに対する天然のリガンド(エフリンB2-Fc)よりも強く結合する。図6Bには、キュプレドキシン濃度を増大させて(0.05〜100 nM)滴定した後の、固定されたEphB2−Fcに対するアズリン、GST-Azu 88-113、エフリンB2-Fc、およびGST-Azu 36-89の相互作用についての結合親和性曲線が示されている。これらの曲線を構築するために、平衡共鳴信号(Req)は個々のセンサ図から外挿された。結合解離常数(Kd)は、式Req = Rmax/(1 + Kd/C)を用いて該データをラングミュア(1:1)の結合モデルに適合させた後に計算され(表6)、また滴定曲線におけるデータ点を結合する曲線適合が示されている。定量的データの組は、初期結合スクリーンからのものと一致している。
【図7】図7は、結合滴定および拮抗試験において決定された、アズリンおよびGST-AzuのエフリンB2-FcおよびEphB2-Fcとの結合性相互作用を描いている。図7Aでは、その結合親和性が先に記載したようにして決定された、アズリンおよびGST-AzuのエフリンB2-Fcとの相互作用についてのSPR結合曲線が示されている。図7Bには、CM5センサチップ上に固定されたEphB2-Fcを用いたSPR結合性拮抗実験結果が記載されている。
【図8】図8は、VASTアルゴリズムによってコンピュータ処理したときの、Ulva pertusa(1IUZ)由来のプラストシアニンおよびP. aeruginosa(1JZG_A)由来のアズリンのC末端(それぞれ図8Aおよび図8B)と、ヒト・エフリンB2外部ドメイン(1KGY_E)とを含んでなる構造的アラインメントを描いている。重ねられた二次構造要素は、太字の大文字によって示されている。ダッシュおよび下方ケース文字(lower-case lettering)は、アラインメントの存在しない場所である。この構造に従う二次構造要素は、βシートについての矢印および310螺旋についての白地の長方形として示されている。同一のアミノ酸は星印で示されている。エフリンB2配列において暗い灰色および明るい灰色で強調されたアミノ酸は、エフリンB2およびEphB2受容体の間の相互作用、並びにリガンド二量体化に関与する残基をそれぞれ示している(Himanen et al., Nature 414:933-938 (2001); Toth et al., Dev. Cell. 1:83-92 (2001))。エフリンB2のG-Hループ領域に対応するプラストシアニンおよびアズリンペプチド(それぞれPlc 70−84(配列番号20)およびAzu 96-113(配列番号18と呼ばれる)は、Eph受容体に対するエフリンの高親和性結合を媒介する主要な領域であり、ボックスで囲み且つ各アラインメントの下に提示されている。GおよびHループ領域は、エフリンB2のアミノ酸配列の頂部に太い矢印でマークされている。1KGY_E残基69〜138および68〜138が、それぞれ配列番号31および33に見られる。1IUZ残基57〜98は配列番号32に見られる。1JZG_A残基76〜128は配列番号34に見られる。
【図9】図9は、癌細胞の生存に対するキュプレドキシンペプチドの影響を描いている。図9Aには、星細胞腫CCF-STTG1およびグリア芽細胞腫LN-229癌細胞株の生存に対する、アズリン(Azu 96-113)およびプラストシアニン(Plc 70-84)合成ペプチドの影響が示されている。図9Bには、メラノーマUISO-Mel-2細胞の生存に対する異なる濃度のプラストシアニン(Plc 70-84)合成ペプチドの効果が示されている。細胞の生存は、実施例10に記載のMTTアッセイによって決定された。癌細胞(96穴ウエルにおいてウエル当たり2×104細胞)を、37℃で24時間、異なる濃度の合成ペプチドで処理した。データは、未処理対照(100%生存)と比較したときの細胞生存のパーセンテージとして提示される。図9Cには、芽細胞腫に対するグリアAzu 96−113合成ペプチドの細胞障害活性が示されている。細胞障害性効果は、MTTアッセイによって決定された。癌(96穴ウエルにおいてウエル当たり2×104細胞)を、37℃で24時間、種々の濃度のAzu 96-113(10、25、50、75、100μM)で処理した。データは、未処理対照(100%生存)と比較したときの細胞生存のパーセンテージとして提示される。パーセント細胞障害性は、未処理対照(0%細胞障害性)の場合と比較した細胞死のパーセンテージとして表される。
【図10】MCF-7細胞の細胞生存性に対するGST-Azu 36-128およびGST-Azu 88-113の効果。GST-Azuペプチドを、ウエル当たり8×103癌細胞を含む96ウエルのプレートに、濃度を増大させながら添加し(1.25、6.25および12.5μM)、37℃で48時間インキュベートし、その後にMTTアッセイを使用して分析した。対照として、同じ濃度で且つ未処理のGSTおよびGST-Azu 36-89細胞についても、GST-Azu 36-128およびGST-Azu 88-113と平行して実験した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キュプレドキシンの変異体、誘導体または構造的均等物であり、且つ哺乳類癌細胞の増殖を阻害できる単離されたペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載の単離されたペプチドであって、前記キュプレドキシンは、アズリン、プラストシアニン、シュードアズリン、プラストシアニン、ラスチシアニン及びオーレシアニンからなる群から選択される単離されたペプチド。
【請求項3】
請求項2に記載の単離されたペプチドであって、前記キュプレドキシンが、アズリン、プラストシアニンおよびラスチシアニンからなる群から選択される単離されたペプチド。
【請求項4】
請求項1に記載の単離されたペプチドであって、前記キュプレドキシンは、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、チオバチルス・フェロオキシダンス(Thiobacillus ferrooxidans)、フォルミジウム・ラミノスム(Phormidium laminosum)、アルカリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)、アクロモバクター・キシロソキシダン(Achromobacter xylosoxidan)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、メチロモナス・sp.(Methylomonas sp.)、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)、ナイセリア・ゴノロエアエ(Neisseria gonorrhoeae)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、キシレラ・ファスチジオサ(Xylella fastidiosa)、ククミス・サチブス(Cucumis sativus)、クロロフレクスス・オーランチアクス(Chloroflexus aurantiacus)、ビブリオ・パラヘモリチクス(Vibrio parahaemolyticus)およびウルバ・ペルツサ(Ulva pertusa)からなる群から選択される微生物由来のものである単離されたペプチド。
【請求項5】
請求項4に記載の単離されたペプチドであって、Pseudomonas aeruginosa、Thiobacillus ferrooxidans、Phormidium laminosumおよびUlva pertusaからなる群から選択された微生物由来のものである単離されたペプチド。
【請求項6】
請求項1に記載の単離されたペプチドであって、配列番号1〜17および22〜23からなる群から選択されるペプチドの一部である単離されたペプチド。
【請求項7】
請求項1に記載の単離されたペプチドであって、該ペプチドに対して、配列番号1〜17および22〜23からなる群から選択されるペプチドが少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有する単離されたペプチド。
【請求項8】
請求項1に記載の単離されたペプチドであって、キュプレドキシンの短縮型である単離されたペプチド。
【請求項9】
請求項1に記載の単離されたペプチドであって、該ペプチドは約10残基以上で且つ約100残基以下である単離されたペプチド。
【請求項10】
請求項9に記載の単離されたペプチドであって、該ペプチドは、P. aeruginosaアズリン残基96〜113、P. aeruginosaアズリン残基88〜113、Ulva pertusaプラストシアニン残基70〜84、Ulva pertusa残基57〜98、および配列番号22〜30からなる群から選択されるキュプレドキシンの領域を含んでなる単離されたペプチド。
【請求項11】
請求項10に記載の単離されたペプチドであって、該ペプチドは、P. aeruginosaアズリン残基96〜113、P. aeruginosaアズリン残基88〜113、Ulva pertusa プラストシアニン残基70〜84、Ulva pertusa残基57〜98、および配列番号22〜30からなる群から選択されるキュプレドキシンの領域からなる単離されたペプチド。
【請求項12】
請求項1に記載の単離されたペプチドであって、該ペプチドは、P. aeruginosaアズリン残基96〜113、P. aeruginosaアズリン残基88〜113、Ulva pertusaプラストシアニン残基70〜84、Ulva pertusa残基57〜98、および配列番号22〜30からなる群から選択された目的キュプレドキシンの領域として、対象のキュプレドキシンの均等残基を含んでなるペプチド。
【請求項13】
医薬組成物の中に、少なくとも一つのキュプレドキシン、または請求項1のペプチドを含有してなる組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の組成物であって、前記医薬組成物が静脈内投与のために処方される組成物。
【請求項15】
請求項13に記載の組成物であって、前記キュプレドキシンは、Pseudomonas aeruginosa、Thiobacillus ferrooxidans、Phormidium laminosum、Alcaligenes faecalis、Achromobacter xylosoxidan、Bordetella bronchiseptica、Methylomonas sp.、Neisseria meningitidis、Neisseria gonorrhoeae、Pseudomonas fluorescens、 Pseudomonas chlororaphis、Xylella fastidiosa、Cucumis sativus、Chloroflexus aurantiacus、Vibrio parahaemolyticus およびUlva pertusaからなる群から選択される微生物由来のものである組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の組成物であって、前記キュプレドキシンが、Pseudomonas aeruginosa、Thiobacillus ferrooxidans、Phormidium laminosum およびUlva pertusaからなる群から選択された微生物由来のものである組成物。
【請求項17】
請求項13に記載の組成物であって、前記キュプレドキシンが、配列番号1〜17および22〜23からなる群から選択される組成物。
【請求項18】
エフリン信号伝達系に関連する病理学的症状に罹患し、または癌に罹患した哺乳類患者を治療するための方法であって、前記患者に対して、治療的に有効な量の請求項13の組成物を投与することを含んでなる方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記患者は、間質性膀胱炎(IC)、炎症性腸疾患(IBD)に伴う病巣、HIV感染、心血管系疾患、中枢神経系疾患(IBD)、抹消血管疾患、ウイルス疾患、中枢神経系の変性(クリストファー・リーブ氏病)およびアルツハイマー病からなる群から選択される病理学的障害に罹患している方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記患者は、乳癌、肝癌、胃腸癌、神経芽細胞腫、神経癌、白血病、リンパ腫、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、メラノーマ、卵巣癌、子宮内膜腫瘍、絨毛癌、奇形癌腫、甲状腺癌、軟組織および骨から生じるものを含む全ての肉腫、腎癌、類表皮癌、または非小細胞性肺癌に罹患している
【請求項21】
請求項18に記載の方法であって、前記患者がヒトである方法。
【請求項22】
請求項18に記載の方法であって、前記組成物が静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、吸入、局所投与、経皮パッチ、座薬、および経口からなる群から選択されるモードにより投与される方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記投与モードが静脈内注射によるものである方法。
【請求項24】
請求項18に記載の方法であって、前記組成物は、前記病理学的状態または癌を治療することが知られているもう一つの薬物の投与の0分〜1週間以内に投与される方法。
【請求項25】
請求項14に記載の方法であって、前記組成物は、もう一つの抗癌薬とほぼ同時に投与される方法。
【請求項26】
キュプレドキシン、および請求項1に記載の単離されたペプチドからなる群から選択された、少なくとも二つの単離されたポリペプチドを含有してなる組成物。
【請求項27】
医薬組成物中の、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
バイアル瓶の中に、請求項13に記載の組成物を含んでなるキット。
【請求項29】
請求項28に記載のキットであって、該キットは静脈内投与のために設計されるキット。
【請求項30】
哺乳類癌細胞を請求項13の組成物と接触させることと;該癌細胞の増殖を測定することとを含んでなる方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、前記癌細胞が、乳癌、肝癌、胃腸癌、神経芽細胞腫、神経癌、白血病、リンパ腫、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、メラノーマ、卵巣癌、子宮内膜腫瘍、絨毛癌、奇形癌腫、甲状腺癌、軟組織および骨から生じるものを含む全ての肉腫、腎癌、類表皮癌、または非小細胞性肺癌からなる群から選択される方法。
【請求項32】
請求項30に記載の方法であって、前記癌細胞がインビボのものである方法。
【請求項33】
請求項1のペプチドをコードする発現ベクター。
【請求項34】
キュプレドキシンの変異体、誘導体または構造的均等物であり、且つエフリン受容体に結合する単離されたペプチド。
【請求項35】
請求項34に記載の単離されたペプチドであって、前記エフリン受容体が、EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA6、EphA7、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB4およびEphB6からなる群から選択される単離されたペプチド。
【請求項36】
請求項35に記載の単離されたペプチドであって、エフリンにも結合する単離されたペプチド。
【請求項37】
請求項36に記載の単離されたペプチドであって、前記エフリンが、エフリンA1、エフリンA2、エフリンA3、エフリンA4、エフリンA5、エフリンB1、エフリンB2、エフリンB3およびエフリンB4からなる群から選択される単離されたペプチド
【請求項38】
請求項36に記載の単離されたペプチドであって、エフリンおよびその受容体に結合する単離されたペプチド。
【請求項39】
請求項38に記載の単離されたペプチドであって、エフリン2BおよびEph2Bに結合するペプチド。
【請求項40】
キュプレドキシンの変異体、誘導体または構造的均等物であり、且つエフリンA1、エフリンA2、エフリンA3、エフリンA4、エフリンA5、エフリンB1、エフリンB2、エフリンB3およびエフリンB4からなる群から選択されたエフリンに結合する単離されたペプチド。
【請求項41】
患者において血管の成長を案内するために、請求項13に記載の組成物を哺乳類患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項42】
患者において血管の成長を低下させるために、請求項13に記載の組成物を哺乳類患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項43】
患者においてニューロンの成長へと案内するために、請求項13に記載の組成物を哺乳類患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項44】
患者において骨形成を促進するために、請求項13に記載の組成物を哺乳類患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項45】
エフリンの使用を必要とする治療方法において、エフリンの代わりに、有効量の請求項13に記載の組成物を哺乳類患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項46】
細胞に付随したエフリン受容体の活性を阻害するために、有効量の請求項13に記載の組成物を哺乳類患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項47】
細胞に付随したエフリン受容体の活性を増大させるために、有効量の請求項13に記載の組成物を哺乳類患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項48】
エフリン受容体を発現している組織を有するヒト患者に対して、医薬物質に融合された少なくとも一つのキュプレドキシン、またはキュプレドキシンの誘導体、変異体、誘導体もしくは構造的均等物を含んでなる本発明のペプチドを含有する医薬組成物を投与することを含んでなる方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法であって、前記組織が癌である方法。
【請求項50】
哺乳類患者においてエフリン受容体を備えた組織を検出する方法であって:
(a)ヒト患者に対して、検出可能なプローブに融合された少なくとも一つのキュプレドキシンまたは本発明のペプチドを含有する医薬組成物を投与するステップと;
(b)前記患者内におけるプローブの分布を検出するステップ
を有する方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−539795(P2008−539795A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512587(P2008−512587)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/019684
【国際公開番号】WO2007/018671
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(500106802)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・イリノイ (15)
【Fターム(参考)】