説明

キーボード装置

【課題】 大型キートップなどの複合型キートップの周縁部を押圧操作しても、その押圧操作された箇所に近接する接点押圧部を確実にキー動作させることができ、キー動作の信頼性を高めることができるキーボード装置を提供する。
【解決手段】 複数のキー表示にそれぞれ対応する複数の部分を有する大型キートップ8の周囲に対応する箇所におけるキー接点シート11に、大型キートップ8の周縁部が押圧操作された際に、その押圧力を、大型キートップ8に対応する複数の接点押圧部11bのうち、最も近い接点押圧部11bに導いて、その最も近い接点押圧部11bを押圧動作させるための押圧誘導部15を設けた。従って、大型キートップ8の周縁部を押圧操作しても、押圧誘導部15によって、その押圧操作された箇所に近接する接点押圧部11bを確実にキー動作させることができ、これによりキー動作の信頼性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯情報端末機(PDA:パーソナル・デジタル・アシスタント)、携帯電話機、電子辞書などの電子機器に用いられるキーボード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話機に用いられているキーボード装置においては、特許文献1に記載されているように、文字キーなどのような1つのキー表示に対応する部分を有する複数の単一キートップと、カーソルキーやセンターキーなどのような複数のキー表示にそれぞれ対応する複数の部分を有して単一キートップの大きさよりも大きい複合型キートップと、これら複数の単一キートップおよび複合型キートップがそれぞれ独立して配置されるキー接点シートとを備えた構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−296275号公報
【0004】
このようなキーボード装置のキー接点シートは、ゴムなどの弾性材料からなり、複数の単一キートップおよび複合型キートップがそれぞれ独立して配置される複数の膨出部が、それぞれドーム形状に形成され、この複数の膨出部内に、複数の単一キートップおよび複合型キートップにおける各キー表示の各部分にそれぞれ対応する各接点押圧部が設けられた構成になっている。
【0005】
このようなキーボード装置では、複数の単一キートップおよび複合型キートップのうち、例えば、文字キーなどのような1つのキー表示に対応する部分を有する複数の単一キートップが押圧操作されると、その下側に配置されたキー接点シートの膨出部が弾性変形し、この弾性変形した膨出部内の接点押圧部が押し下げられてスイッチ基板の接点部を押圧動作する。
【0006】
また、カーソルキーやセンターキーなどの複数のキー表示にそれぞれ対応する複数の部分を有する複合型キートップが押圧操作されると、その下側に配置されたキー接点シートの膨出部が弾性変形し、この弾性変形した膨出部内に設けられた複数の接点押圧部のうち、押圧操作された箇所のキー表示の部分に対応する接点押圧部が押し下げられてスイッチ基板の接点部を押圧動作する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のキーボード装置では、複数のキー表示にそれぞれ対応する複数の部分を有する複合型キートップを押圧操作する際に、この複合大型キートップの周縁部を押圧操作すると、これに隣接する単一キートップが配置されたキー接点シートが引っ張られるため、複合型キートップと共に単一キートップも押圧動作することがある。
【0008】
このような場合には、複合型キートップに対応するキー接点シートの膨出部内に設けられた複数の接点押圧部のうち、押圧操作された箇所に最も接近する接点押圧部のみを確実に押圧動作させることができないことがあり、キー動作の信頼性に欠けるという問題がある。
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、複合型キートップの周縁部を押圧操作しても、その押圧操作された箇所に近接する接点押圧部を確実にキー動作させることができ、キー動作の信頼性を高めることができるキーボード装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、1つのキー表示に対応する部分を有する複数の単一キートップと、複数のキー表示にそれぞれ対応する複数の部分を有して前記単一キートップの大きさよりも大きい複合型キートップと、前記複数の単一キートップおよび前記複合型キートップがそれぞれ独立して配置される複数の膨出部を有し、この複数の膨出部内に、前記複数の単一キートップおよび前記複合型キートップの各キー表示の各部分にそれぞれ対応する各接点押圧部が設けられた弾力を有するキー接点シートとを備え、前記複数の単一キートップおよび前記複合型キートップが押圧操作された際に、前記キー接点シートの前記各膨出部が弾性変形して前記各接点押圧部が押圧動作するキーボード装置であって、
前記複合型キートップの周囲に対応する箇所における前記キー接点シートには、前記複合型キートップの周縁部が押圧操作された際に、その押圧力を前記複合型キートップに対応する前記各接点押圧部のうちの最も近い接点押圧部に導いて、その最も近い接点押圧部を押圧動作させるための押圧誘導部が設けられていることを特徴とするキーボード装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のキーボード装置において、前記押圧誘導部は、前記複合型キートップとこれに隣接する前記単一キートップとの境界部に対応する箇所における前記キー接点シートに設けられた緩衝部と、前記複合型キートップに対応する前記キー接点シートの前記膨出部内において前記緩衝部に隣接する箇所に位置する前記キー接点シートに設けられた誘導支点部とを備えていることを特徴とするキーボード装置である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のキーボード装置において、前記緩衝部は、前記複合型キートップとこれに隣接する前記単一キートップとの境界部に位置する前記キー接点シートをたるみによって分離させる形状に形成されていることを特徴とするキーボード装置である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のキーボード装置において、前記誘導支点部は、前記複合型キートップの周縁部が押圧された際に、その押圧力を受け止めて、前記複合型キートップが対応する前記キー接点シートの前記膨出部内に位置する最も近い接点押圧部が押し下げられる方向に向けて、前記複合型キートップを回転させて傾ける形状に形成されていることを特徴とするキーボード装置である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれに記載のキーボード装置において、前記キー接点シートの上面には、前記複数の単一キートップおよび前記複合型キートップにそれぞれ対応する前記各膨出部が挿入して上方に露出させるための複数の開口部が設けられた補強板が配置されていることを特徴とするキーボード装置である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、複合型キートップの周縁部を押圧操作した際に、キー接点シートに設けられた押圧誘導部によって、その押圧操作された押圧力を複合型キートップに対応する複数の接点押圧部のうちの最も近い接点押圧部に導いて、その最も近い接点押圧部を押圧動作させることができる。このため、複合型キートップの周縁部を押圧操作しても、その押圧操作された箇所に近接する接点押圧部のみを確実にキー動作させることができ、これによりキー動作の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明を携帯情報端末機に適用した一実施形態を示した正面図である。
【図2】図1に示された携帯情報端末機のA−A矢視における要部の拡大断面図である。
【図3】図1に示された携帯情報端末機において、上部ケースとキーボード装置とを分解して示した要部の拡大斜視図である。
【図4】図3に示されたキーボード装置の一部を分解して示した拡大斜視図である。
【図5】図4に示されたキー接点シートを裏面側から見た拡大斜視図である。
【図6】図3に示されたキーボード装置のB−B矢視における要部を示した拡大断面図である。
【図7】図6に示されたキーボード装置における動作状態を示し、(a)は大型キートップの周縁部を押圧操作した際に、大型キートップが傾いた状態を示した拡大断面図、(b)は押圧操作された大型キートップが傾いてキー接点シートの接点押圧部がドーム板のドーム部を押し下げた状態を示した拡大断面図である。
【図8】図3に示されたキーボード装置を上部ケースに位置決め冶具によって組み付ける状態を示した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜図8を参照して、この発明を携帯情報端末機に適用した一実施形態について説明する。
この携帯情報端末機は、図1に示すように、機器ケース1を備えている。この機器ケース1は、図2に示すように、上部ケース2と下部ケース3とからなり、これらの内部に入力表示部4およびキーボード装置5が上部ケース1の上側に露出した状態で設けられた構成になっている。
【0018】
入力表示部4は、透明なタッチパネルと表示パネルとを備えている。透明なタッチパネルは、その表面をタッチ操作することにより、情報が入力されるように構成されている。表示パネルは、液晶表示パネルやEL(エレクトロルミネッセンス)表示パネルなどの平面型の表示パネルからなり、情報処理に伴う各種の情報を電気光学的に表示するように構成されている。
【0019】
この入力表示部4は、透明なタッチパネルの下側に表示パネルが配置され、この状態で上部ケース2内に組み込まれている。これにより、この入力表示部4は、透明なタッチパネルが上部ケース2の表示開口部2aから上側に露出し、表示パネルに表示された情報が透明タッチパネルを通して上方から見え、この表示パネルに表示された情報を見ながら透明なタッチパネルをタッチ操作するように構成されている。
【0020】
キーボード装置5は、図1および図3に示すように、文字キー、カーソルキー、ファンクションキー、センターキーなどの情報処理に必要な各種のキーを備え、図2に示すように、上部ケース2内に組み込まれて、上面が上部ケース2のキー開口部2bから上方に露出するように構成されている。
【0021】
このキーボード装置5は、図2、図4および図6に示すように、各種のキートップ6〜8、補強板10、キー接点シート11、ドーム板12、およびスイッチ基板13を、その順で重ね合わせた構成になっている。各種のキートップ6〜8とは、図1および図3に示すように、文字キーなどの複数の単一キートップ6、カーソルキーなどの中型キートップ7、センターキーなどの大型キートップ8であり、中型キートップ7と大型キートップ8とを総称して複合型キートップと称する。
【0022】
この場合、キートップ6〜8は、それぞれポリカーボネート(PC)、ABS樹脂、塩化ビニルなどの合成樹脂によってそれぞれ独立して形成されている。文字キーなどの複数の単一キートップ6は、その上面に1つのキー表示に対応する部分を有するものである。この実施形態で言うキー表示に対応する部分とは、キー表示が表示されている場合には、そのキー表示部分のことであり、キー表示が表示されていない場合には、本来キー表示が表示される部分のことである。
【0023】
また、カーソルキーなどの中型キートップ7は、その上面に2〜5つのキー表示にそれぞれ対応する複数の部分を有するものであり、単一キートップ6よりもキー表示に対応する部分の数だけ大きく形成されている。センターキーなどの大型キートップ8は、その上面に6以上のキー表示にそれぞれ対応する複数の部分を有するものであり、単一キートップ6よりもキー表示に対応する部分の数だけ大きく、且つ中型キートップ7よりも大きく形成されている。
【0024】
この大型キートップ8は、図3および図4に示すように、全体がほぼ楕円形状に形成されている。この場合、大型キートップ8の周囲には、堤防形状の外側盛上り部8aが形成されており、その中央部には、ほぼ楕円板形状の内側盛上り部8bが形成されている。また、この内側盛上り部8bと外側盛上り部8aとの間には、谷部8cが形成されている。この大型キートップ8は、内側盛上り部8bの上面に3つのキー表示にそれぞれ対応する複数の部分を有し、外側盛上り部8aの上面に4つのキー表示にそれぞれ対応する複数の部分を有する構成になっている。
【0025】
一方、キー接点シート11は、シリコーンゴムやエラストマなどの弾性を有する合成樹脂からなり、図4に示すように、複数の単一キートップ6、中型キートップ7、および大型キートップ8がそれぞれ独立して配置される複数の膨出部11aが上側に向けてドーム形状に突出して設けられ、この複数の膨出部11a内に、図5に示すように、複数の単一キートップ6、中型キートップ7、および大型キートップ8における各キー表示の各部分にそれぞれ対応する各接点押圧部11bが設けられた構成になっている。
【0026】
この場合、キー接点シート11の各膨出部11aのうち、大型キートップ8が配置される膨出部11aの内面には、図5に示すように、仕切り部11dが大型キートップ8の内側盛上り部8bの外周に沿って設けられている。また、この大型キートップ8が配置される膨出部11aの上面には、図4に示すように、溝部11eが仕切り部11dに対応して設けられている。
【0027】
また、このキー接点シート11の各膨出部11aの上面には、複数の単一キートップ6、中型キートップ7、および大型キートップ8がそれぞれ独立した状態で、接着剤によって貼り付けられている。また、このキー接点シート11の周縁部は、図2〜図5に示すように、厚みの厚い取付部11cが全周に沿って連続して設けられている。この取付部11cは、図2に示すように、その上面が上部ケース2のキー開口部2bにおける内周縁の下面に粘着テープ14によって接着されるように構成されている。
【0028】
これにより、キー接点シート11は、各膨出部11aの上面が上部ケース2のキー開口部2b内に配置された状態で、上部ケース2に取り付けられるように構成されている。また、このキー接点シート11の下面における所定箇所には、図4に示すように、複数の支持足11fが取付部11cの下面と同じ高さで設けられている
【0029】
補強板10は、ステンレスなどの薄い金属板からなり、図3および図4に示すように、キー接点シート11の各膨出部11aがそれぞれ挿入して上側に突出する複数の開口部10aが、単一キートップ6、中型キートップ7、および大型キートップ8ごとに、それぞれ異なる大きさで設けられている。
【0030】
この補強板10は、図2および図4に示すように、その外形がキー接点シート11の取付部11cの内周よりも少し小さく形成されていると共に、その厚みがキー接点シート11の取付部11cとキー接点シート11の上面との段差に対応する厚みとほぼ同じ厚み(約0.3mm)に形成されている。
【0031】
この補強板10は、複数の開口部10a内にキー接点シート11の各膨出部11aがそれぞれ挿入して上側に突出した状態で、キー接点シート11に複数個所が接着剤によって接着されるように構成されている。この場合、補強板10は、その外周面がキー接点シート11の取付部11cの内周面との間に隙間をもって配置されている。
【0032】
一方、ドーム板12は、ステンレスなどの薄い金属板からなり、図2および図6に示すように、弾性可能な各ドーム部12aがキー接点シート11の各接点押圧部11bにそれぞれ対応して設けられた構成になっている。このドーム板12は、キー接点シート11の下側に位置してスイッチ基板13上に配置され、この状態で各ドーム部12aが各接点押圧部11bによって押された際に、それぞれ弾性変形するように構成されている。
【0033】
スイッチ基板13は、図2および図6に示すように、その上面に各固定接点13aがドーム板12の各ドーム部12aにそれぞれ対応して設けられ、このドーム板12の上面がキー接点シート11の取付部11cおよび複数の支持足11fの各下面に接触して配置された状態で、上部ケース2内に組み付けられるように構成されている。
【0034】
このスイッチ基板13は、図2および図6に示すように、各ドーム部12aがキー接点シート11の各接点押圧部11bによって押されてそれぞれ弾性変形した際に、この弾性変形した各ドーム部12aが各固定接点13aに接離可能に接触することにより、それぞれキー信号が得られるように構成されている。
【0035】
この場合、ドーム板12は、図2に示すように、スイッチ基板13と共にキー接点シート11の取付部11cおよび複数の支持足11fの各下面に接触して配置された状態で上部ケース2内に組み込まれた際に、各ドーム部12aの上端部がキー接点シート11の各接点押圧部11bの下面にそれぞれ接近または接触するように構成されている。
【0036】
ところで、大型キートップ8の周囲に対応する箇所におけるキー接点シート11には、図6および図7に示すように、大型キートップ8の周縁部が押圧操作された際に、その押圧力を、大型キートップ8に対応するキー接点シート11の膨出部11a内に設けられた複数の接点押圧部11bのうち、最も近い接点押圧部11bに導いて、その最も近い接点押圧部11bを押圧動作させるための押圧誘導部15が設けられている。
【0037】
この押圧誘導部15は、図6および図7に示すように、大型キートップ8とこれに隣接する単一キートップ6または中型キートップ7との境界部に対応する箇所におけるキー接点シート11に設けられた緩衝部16と、大型キートップ8に対応するキー接点シート11の膨出部11a内において緩衝部16に隣接する箇所に位置するキー接点シート11に設けられた誘導支点部17とを備えている。
【0038】
緩衝部16は、図6および図7に示すように、大型キートップ8とこれに隣接する単一キートップ6との境界部に位置するキー接点シート11を弛みによって分離させる形状、例えばV字形状に形成されている。誘導支点部17は、大型キートップ8の周縁部が押圧された際に、その押圧力を受け止めて、大型キートップ8が対応するキー接点シート11の膨出部11a内に位置する最も近い接点押圧部11bが押し下げられる方向に向けて、大型キートップ8を回転させて傾ける突起形状に形成されている。
【0039】
この場合、誘導支点部17は、図6に示すように、その上下方向の長さ(高さ)が緩衝部16の上下方向の長さ(高さ)よりも少し長く形成されている。これにより、誘導支点部17は、図7(a)および図7(b)に示すように、大型キートップ8が押圧操作された際に、緩衝部16が伸びるように変形しても、この緩衝部16がドーム板12に到達せずに浮いた状態で、ドーム板12に当接するように構成されている。
【0040】
また、この誘導支点部17は、大型キートップ8を傾け易くするために、その下端部が円弧形状に形成されていることが望ましい。さらに、押圧誘導部15の緩衝部16と誘導支点部17とは、大型キートップ8に対応するキー接点シート11の膨出部11aの周囲に沿って連続して形成されていることが望ましいが、必ずしも膨出部11aの周囲に沿って連続して形成されている必要はない。
【0041】
次に、このようなキーボード装置5を上部ケース2内に組み付ける場合について説明する。
この場合には、まず、キー接点シート11上に補強板10を取り付ける。このときには、キー接点シート11の各膨出部11aをそれぞれ補強板10の各開口部10aに下側から挿入させ、補強板10の外周面とキー接点シート11の外周に形成された取付部11cの内周面との間に隙間をもって対応させる。この状態で、補強板10の下面とキー接点シート11の上面との複数箇所を接着剤によって接着する。
【0042】
これにより、キー接点シート11の各膨出部11aが補強板10の上方に突出した状態で、補強板10がキー接点シート11上に取り付けられる。この状態では、キー接点シート11が弾性を有する合成樹脂で形成されていても、補強板10によってキー接点シート11の剛性が確保される。この後、補強板10の上方に突出したキー接点シート11の各膨出部11aの上面に、複数の単一キートップ6、中型キートップ7、および大型キートップ8をそれぞれ独立させて接着剤によって接着する。
【0043】
次いで、このように補強板10、複数の単一キートップ6、中型キートップ7、および大型キートップ8が取り付けられたキー接点シート11を上部ケース2内に組み付ける。このときには、図8に示すように、上部ケース2のキー開口部2b内に位置決め冶具18を上方から挿入して配置する。この場合、位置決め冶具18は、上部ケース2のキー開口部2bの内周面に密接する厚みの薄い枠状に形成されている。
【0044】
この位置決め冶具18を上部ケース2のキー開口部2b内に挿入した状態で、上部ケース2の下側からキー接点シート11を位置決め冶具18によって位置決めする。このときには、図2に2点鎖線で示すように、キー接点シート11の取付部11cの内周面と補強板10の外周面との間の隙間に位置決め冶具18の下端部を挿入させる。
【0045】
この状態で、キー接点シート11を押し上げて、キー接点シート11の取付部11cの上面を粘着テープ14によって上部ケース2のキー開口部2bにおける縁部の下面に接着する。このときにも、キー接点シート11が弾性を有する合成樹脂で形成されていても、補強板10によってキー接点シート11の剛性が確保されているため、位置決め冶具18によるキー接点シート11の位置決め作業がし易いばかりか、上部ケース2に対するキー接点シート11の貼り付け作業がし易い。
【0046】
この後、位置決め冶具18を上部ケース2のキー開口部2b内から上方に引き抜いて、キー接点シート11の下面に、ドーム板12を搭載したスイッチ基板13を配置する。このときには、予め、スイッチ基板13上にドーム板12を配置して、スイッチ基板13の各固定接点13aとドーム板12のドーム部12aとを対応させておく。
【0047】
この状態で、スイッチ基板13をドーム板12と共に上部ケース2内に固定する。このときには、ドーム板12の上面がキー接点シート11の外周に設けられた取付部11cおよび複数の支持足11fの各下面に当接することにより、図2および図6に示すように、キー接点シート11とドーム板12との間に隙間が設けられる。
【0048】
これにより、図2および図6に示すように、ドーム板12の各ドーム部12aおよびスイッチ基板13の各固定接点13aがキー接点シート11の各接点押圧b11bにそれぞれ対応した状態で、上部ケース2内にドーム板12およびスイッチ基板13が組み付けられる。
【0049】
次に、このような携帯情報端末機のキーボード装置5の作用について説明する。
複数の単一キートップ6、中型キートップ7、および大型キートップ8のうち、文字キーなどのような1つのキー表示に対応する部分を有する複数の単一キートップ6を押圧操作した際には、その押圧操作された単一のキートップ6が配置されたキー接点シート11の膨出部11aが弾性変形する。
【0050】
すると、この弾性変形したキー接点シート11の膨出部11a内に設けられた接点押圧部11bが押し下げられる。この押し下げられた接点押圧部11bがドーム板12のドーム部12aを押圧して弾性変形させ、この弾性変形したドーム部12aがスイッチ基板13の固定接点13aに接触する。これにより、単一キートップ6のキー信号が得られる。
【0051】
また、カーソルキーなどのような複数のキー表示にそれぞれ対応する複数の部分を有する中型キートップ7、およびセンターキーなどのような複数のキー表示にそれぞれ対応する複数の部分を有する大型キートップ8を押圧操作した際には、その押圧操作された中型キートップ7および大型キートップ8が配置されたキー接点シート11の膨出部11aが弾性変形して、その内部の複数の接点押圧部11bのうち、押圧操作された箇所に対応する接点押圧部11bのみが押し下げられる。
【0052】
これにより、押圧操作された箇所のキー表示の部分に対応する接点押圧部11bのみが、単一キートップ6の場合と同様、ドーム板12のドーム部12aを弾性変形させ、この弾性変形したドーム部12aがスイッチ基板13の固定接点13aに接触する。これにより、中型キートップ7および大型キートップ8のうち、押圧操作されたキー表示の部分に対応するキー信号が得られる。
【0053】
ところで、このような大型キートップ8の周縁部を押圧操作した際には、図7(a)および図7(b)に示すように、キー接点シート11に設けられた押圧誘導部15によって、その押圧操作された押圧力を、大型キートップ8に対応するキー接点シート11の複数の接点押圧部11bのうち、最も近い接点押圧部11bに導いて、その最も近い接点押圧部11bを押圧動作させる。
【0054】
このときには、大型キートップ8とこれに隣接する単一キートップ6または中型キートップ7との境界部に対応する箇所におけるキー接点シート11に設けられた押圧誘導部15の緩衝部16が、キー接点シート11を弛みによって分離させる形状に形成されていることにより、図7(a)および図7(b)に示すように、大型キートップ8の周縁部が押圧操作されても、隣接する単一キートップ6または中型キートップ7に対応する箇所のキー接点シート11が引っ張られて押し下げられることがなく、押圧操作された大型キートップ8の周縁部のみが押し下げられる。
【0055】
また、このときには、図7(a)および図7(b)に示すように、大型キートップ8に対応するキー接点シート11の膨出部11a内において緩衝部16に隣接する箇所に位置するキー接点シート11に設けられた押圧誘導部15の誘導支点部17が、大型キートップ8の周縁部の押圧操作に伴って、少し押し下げられてスイッチ基板13上のドーム板12に当接する。これにより、大型キートップ8の周縁部の押圧操作に伴う押圧力を誘導支点部17で受け止める。
【0056】
すると、誘導支点部17を支点として、図7(b)に示すように、大型キートップ8が、これに対応する複数の接点押圧部11bのうちの最も近い接点押圧部11bを押し下げる方向に向けて、回転して傾き、この大型キートップ8の傾きによって、最も近い接点押圧部11bが押し下げられる。これにより、押圧操作された大型キートップ8の周縁部に最も近い接点押圧部11bがドーム板12のドーム部12aを弾性変形させ、この弾性変形したドーム部12aがスイッチ基板13の固定接点13aに接触する。
【0057】
このため、図7(b)に示すように、押圧操作された大型キートップ8に隣接する単一キートップ6または中型キートップ7に影響を及ぼすことがなく、大型キートップ8の複数のキー表示にそれぞれ対応する複数の部分のうち、押圧操作された大型キートップ8の周縁部に最も近いキー表示の部分のみに対応するキー信号が得られる。
【0058】
このように、この携帯情報端末機のキーボード装置5によれば、複数のキー表示にそれぞれ対応する部分を有する大型キートップ8の周囲に対応する箇所におけるキー接点シート11に、大型キートップ8の周縁部が押圧操作された際に、その押圧力を大型キートップ8に対応する複数の接点押圧部11bのうちの最も近い接点押圧部11bに導いて、その最も近い接点押圧部11bを押圧動作させるための押圧誘導部15を設けた構成であるから、大型キートップ8の周縁部を押圧操作しても、その押圧操作された箇所に近接する接点押圧部11bを確実にキー動作させることができ、これによりキー動作の信頼性を高めることができる。
【0059】
すなわち、このキーボード装置5では、大型キートップ8の周縁部を押圧操作した際に、キー接点シート11に設けられた押圧誘導部15によって、その押圧操作された押圧力を大型キートップ8に対応するキー接点シート11の複数の接点押圧部11bのうちの最も近い接点押圧部11bに導いて、その最も近い接点押圧部11bを押圧動作させることができる。このため、大型キートップ8の周縁部を押圧操作しても、その押圧操作された箇所に最も近接する接点押圧部11bを確実に且つ良好にキー動作させることができ、これによりキー動作の信頼性を高めることができると共に、大型キートップ8の更なる大型化が可能になる。
【0060】
この場合、押圧誘導部15は、大型キートップ8とこれに隣接する単一キートップ6または中型キートップ7との境界部に対応する箇所におけるキー接点シート11に設けられた緩衝部16と、大型キートップ8に対応するキー接点シート11の膨出部11a内において緩衝部6に隣接する箇所に位置するキー接点シート11に設けられた誘導支点部17とを備えていることにより、大型キートップ8の周縁部を押圧操作した際に、これに隣接する単一キートップ6または中型キートップ7に影響を与えることなく、押圧操作された大型キートップ8の周縁部に最も近接するキー接点シート11の接点押圧部11bのみを確実にキー動作させることができ、これによってもキー動作の信頼性を高めることができる。
【0061】
すなわち、押圧誘導部15の緩衝部16は、大型キートップ8とこれに隣接する単一キートップ6または中型キートップ7との境界部に位置するキー接点シート11を弛みによって分離させる形状に形成されていることにより、大型キートップ8の周縁部が押圧操作された際に、隣接する単一キートップ6または中型キートップ7に対応するキー接点シート11を引っ張って押し下げることがないので、隣接する単一キートップ6または中型キートップ7に影響を及ぼすことなく、押圧操作された大型キートップ8の周縁部のみを確実に且つ良好に押し下げることができる。
【0062】
また、この押圧誘導部15の誘導支点部17は、大型キートップ8の周縁部が押圧された際に、その押圧力を受け止めて、大型キートップ8に対応するキー接点シート11の最も近い接点押圧部11bが押し下げられる方向に向けて、大型キートップ8を回転させて傾ける形状に形成されていることにより、大型キートップ8の周縁部が押圧操作されると、誘導支点部17が少し押し下げられてスイッチ基板13上のドーム板12に支持され、この状態で誘導支点部17を支点として、この誘導支点部17に最も近い接点押圧部11bが押し下げられる方向に向けて、大型キートップ8を回転させて傾けることができ、これにより支点としての誘導支点部17に最も近い接点押圧部11bを確実に且つ良好に押し下げることができる。
【0063】
また、この携帯情報端末機のキーボード装置5によれば、キー接点シート11の上面に、複数の単一キートップ6、中型キートップ7、および大型キートップ8にそれぞれ対応する各膨出部11aが挿入して上方に露出させるための複数の開口部10aが設けられた補強板10が配置されているので、この補強板10によってキー接点シート11の剛性を確保することができ、これによりキー接点シート11を上部ケース2に組み付け易くすることができる。
【0064】
この場合、補強板10は、ステンレスなどの薄い金属板からなり、その複数箇所を接着剤でキー接点シート11に接着するだけで、簡単に補強板10をキー接点シート11に取り付けることができる。また、この補強板10は、その外形がキー接点シート11の取付部11cの内周よりも少し小さく形成されていることにより、この補強板10の周囲を位置決め冶具18によって位置決めすることができ、この状態でキー接点シート11を上部ケース2に組み付けることができる。
【0065】
このため、この補強板10によって弾力を有するキー接点シート11を上部ケース2に対して正確に位置決めして取り付けることができると共に、補強板10によってキー接点シート11の剛性が確保されているので、簡単に且つ容易にキー接点シート11を上部ケース2に粘着テープ14によって貼り付けることができ、これにより組み立て作業性の向上を図ることができると共に、キー接点シート11が上部ケース2に粘着テープ14によって貼り付けられていることにより、防水性をも確保することができる。
【0066】
さらに、この携帯情報端末機のキーボード装置5では、単一キートップ6、中型キートップ7、大型キートップ8のうち、大型キートップ8に対応するキー接点シート11の膨出部11aの上面にその外周側と内周側とに分ける溝部11eが設けられ、且つその膨出部11aの内面に仕切り部11dが設けられているので、大型キートップ8をキー接点シート11の膨出部11a上に接着する際に、その膨出部11aの接着面積が大きくても、大型キートップ8を膨出部11aの上面に確実に且つ良好に接着することができる。
【0067】
なお、上述した実施形態では、大型キートップ8とこれに隣接する複数の単一キートップまたは中型キートップ7との境界部分に対応するキー接点シート11に押圧誘導部15を設けた場合について述べたが、これに限らず、例えば中型キートップ7とこれに隣接する複数の単一キートップまたは大型キートップ8との境界部分に対応するキー接点シート11に押圧誘導部15を設けても良い。
【0068】
また、上述した実施形態では、携帯情報端末機に適用した場合について述べたが、必ずしも携帯情報端末機である必要はなく、例えば携帯電話機、電子辞書、小型電子式計算機(電卓)などの各種の電子機器に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 機器ケース
2 上部ケース
2a キー開口部
4 入力表示部
5 キーボード装置
6 単一キートップ
7 中型キートップ
8 大型キートップ
10 補強板
10a 開口部
11 キー接点シート
11a 膨出部
11b 接点押圧部
11c 取付部
12 ドーム板
12a ドーム部
13 スイッチ基板
13a 固定接点
14 粘着テープ
15 押圧誘導部
16 緩衝部
17 誘導支点部
18 位置決め冶具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのキー表示に対応する部分を有する複数の単一キートップと、複数のキー表示にそれぞれ対応する複数の部分を有して前記単一キートップの大きさよりも大きい複合型キートップと、前記複数の単一キートップおよび前記複合型キートップがそれぞれ独立して配置される複数の膨出部を有し、この複数の膨出部内に、前記複数の単一キートップおよび前記複合型キートップの各キー表示の各部分にそれぞれ対応する各接点押圧部が設けられた弾力を有するキー接点シートとを備え、前記複数の単一キートップおよび前記複合型キートップが押圧操作された際に、前記キー接点シートの前記各膨出部が弾性変形して前記各接点押圧部が押圧動作するキーボード装置であって、
前記複合型キートップの周囲に対応する箇所における前記キー接点シートには、前記複合型キートップの周縁部が押圧操作された際に、その押圧力を前記複合型キートップに対応する前記各接点押圧部のうちの最も近い接点押圧部に導いて、その最も近い接点押圧部を押圧動作させるための押圧誘導部が設けられていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項2】
請求項1に記載のキーボード装置において、前記押圧誘導部は、前記複合型キートップとこれに隣接する前記単一キートップとの境界部に対応する箇所における前記キー接点シートに設けられた緩衝部と、前記複合型キートップに対応する前記キー接点シートの前記膨出部内において前記緩衝部に隣接する箇所に位置する前記キー接点シートに設けられた誘導支点部とを備えていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項3】
請求項2に記載のキーボード装置において、前記緩衝部は、前記複合型キートップとこれに隣接する前記単一キートップとの境界部に位置する前記キー接点シートをたるみによって分離させる形状に形成されていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項4】
請求項2に記載のキーボード装置において、前記誘導支点部は、前記複合型キートップの周縁部が押圧された際に、その押圧力を受け止めて、前記複合型キートップが対応する前記キー接点シートの前記膨出部内に位置する最も近い接点押圧部が押し下げられる方向に向けて、前記複合型キートップを回転させて傾ける形状に形成されていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれに記載のキーボード装置において、前記キー接点シートの上面には、前記複数の単一キートップおよび前記複合型キートップにそれぞれ対応する前記各膨出部が挿入して上方に露出させるための複数の開口部が設けられた補強板が配置されていることを特徴とするキーボード装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−138237(P2012−138237A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289290(P2010−289290)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】