説明

キーレスエントリー装置

【課題】携帯機が車内外のいずれに存在するかを精度よく判別することのできるキーレスエントリー装置を提供する。
【解決手段】メモリに、所定境界面の片方側に沿わせて携帯機を位置させ、複数の送信アンテナ15a〜15fから送信される信号を携帯機が受信して得られる複数の強度情報を所定境界面の片方側データとし、所定境界面の他方側に沿わせて携帯機を位置させ、複数の送信アンテナ15a〜15fから送信される信号を携帯機が受信して得られる複数の強度情報を所定境界面の他方側データとして、片方側データと他方側データから作成されるニューラルネットワークモデルを格納し、車両側制御部は、実際に携帯機が得た強度情報を、メモリに格納されたニューラルネットワークモデルに入力して得られた出力から、携帯機が所定境界面のいずれの側に存在するかを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側装置と携帯機の間で無線通信を行うことで車両のドアをロック・アンロックするキーレスエントリー装置に関し、特に携帯機が所定境界面内外のいずれにあるかを精度よく判別することのできるキーレスエントリー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に設けられた車両側装置と使用者が携帯する携帯機の間で無線通信を行い、車両のドアをロック・アンロックするキーレスエントリー装置が知られている。また近年、携帯機が車両に近づくと、車両側装置と携帯機の間で自動的に通信が行われ、個々の携帯機に一義的に設定されているIDの認証がなされれば車両のドアをロック・アンロック動作を行うパッシブ・キーレスエントリー装置も知られている。このようなキーレスエントリー装置としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【特許文献1】特開2002−77972号公報
【0003】
特に、パッシブ・キーレスエントリー装置においては、携帯機が車両の外側にあるか内側にあるかを判別できることが重要である。このために、車両側装置には、車両の各所に複数の送信アンテナが設けられ、携帯機が車内側の送信アンテナからの電波を受信した場合には車内に携帯機があると判別し、車外側の送信アンテナからの電波を受信した場合には車外に携帯機があると判別するようにしていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のキーレスエントリー装置では、携帯機の位置の判別精度が充分とは言えなかった。例えば、車内側の送信アンテナからの電波が車外にまで漏れていると、携帯機が車外側にあっても車内側にあるものと誤判別する場合がある。逆に、車外側の送信アンテナからの電波が車内に漏れることにより、携帯機が車内側にあっても車外側にあるものと誤判定する場合がある。電波の漏れを防ぐために送信アンテナからの電波の送信電力を下げると、携帯機が車内にあっても電波を受信できない場合があり、これも誤判定の原因となる。
【0005】
特許文献1には、車両の複数の送信アンテナ毎に受信強度を検出し、それらを対比することで携帯機の存在するエリアの判定を行うことが開示されている。しかし、この場合においても、誤判定は避けられず、充分な精度を有するものではなかった。
【0006】
また、携帯機の位置判別は車両内外の判別だけではなく、ドアから所定距離離れた位置の外側か内側かを判別するといったことも行われている。この場合には、例えばドアに対し携帯機が所定距離以下まで近づいたことを判別した際にランプを点灯するなどの動作を行わせることができる。このため、車両内外境界面に限らず、携帯機が所定境界面のいずれの側に存在するかを精度よく判別できるキーレスエントリー装置が望まれている。
【0007】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、携帯機が車両内外境界面その他所定境界面のいずれの側に存在するかを精度よく判別することのできるキーレスエントリー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るキーレスエントリー装置は、車両に設けられリクエスト信号を送信する複数の送信アンテナを有する車両側送信部と、アンサー信号を受信する車両側受信部とを備えた車両側装置と、上記リクエスト信号を受信する携帯機受信部と、アンサー信号を送信する携帯機送信部とを備えた携帯機とを有したキーレスエントリー装置において、
上記車両側装置は上記携帯機からのアンサー信号を認証すると所定の制御を行う車両側制御部を備え、上記携帯機は上記車両側装置の複数の送信アンテナから送信される信号の各強度を検出する携帯機制御部を備え、
上記車両側制御部または携帯機制御部はデータが記憶されるメモリを備え、
上記メモリには、上記車両を基準とした所定境界面の片方側に沿わせて上記携帯機を位置させた際において、上記複数の送信アンテナから送信される信号を上記携帯機が受信して得られる複数の強度情報を上記所定境界面の片方側データとし、上記車両を基準とした所定境界面の他方側に沿わせて上記携帯機を位置させた際において、上記複数の送信アンテナから送信される信号を上記携帯機が受信して得られる複数の強度情報を上記所定境界面の他方側データとして、上記片方側データと他方側データから作成されるニューラルネットワークモデルが格納され、
上記メモリを備える車両側制御部または携帯機制御部は、実際に上記携帯機が得た強度情報を、上記メモリに格納されたニューラルネットワークモデルに入力して得られた出力から、上記携帯機が上記所定境界面のいずれの側に存在するかを判別することを特徴として構成されている。
【0009】
また、本発明に係るキーレスエントリー装置は、車両に設けられリクエスト信号を送信する車両側送信部と、アンサー信号を受信する複数の受信アンテナを有する車両側受信部とを備えた車両側装置と、上記リクエスト信号を受信する携帯機受信部と、アンサー信号を送信する携帯機送信部とを備えた携帯機とを有したキーレスエントリー装置において、
上記車両側装置は上記携帯機からのアンサー信号を認証すると所定の制御を行う車両側制御部を備え、該車両側制御部は上記複数の受信アンテナで受信した上記携帯機から送信される信号の各強度を検出可能とされ、
上記車両側制御部はデータが記憶されるメモリを備え、
上記メモリには、上記車両を基準とした所定境界面の片方側に沿わせて上記携帯機を位置させた際において、上記携帯機から送信される信号を上記複数の受信アンテナが受信して得られる複数の強度情報を上記所定境界面の片方側データとし、上記車両を基準とした所定境界面の他方側に沿わせて上記携帯機を位置させた際において、上記携帯機から送信される信号を上記複数の受信アンテナが受信して得られる複数の強度情報を上記所定境界面の他方側データとして、上記片方側データと他方側データから作成されるニューラルネットワークモデルが格納され、
上記車両側制御部は、実際に上記車両側装置が得た強度情報を、上記メモリに格納されたニューラルネットワークモデルに入力して得られた出力から、上記携帯機が上記所定境界面のいずれの側に存在するかを判別することを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るキーレスエントリー装置によれば、メモリに、所定境界面の片方側に沿わせて携帯機を位置させ、複数の送信アンテナから送信される信号を携帯機が受信して得られる複数の強度情報を所定境界面の片方側データとし、所定境界面の他方側に沿わせて携帯機を位置させ、複数の送信アンテナから送信される信号を携帯機が受信して得られる複数の強度情報を所定境界面の他方側データとして、片方側データと他方側データから作成されるニューラルネットワークモデルを格納し、車両側制御部または携帯機制御部は、実際に携帯機が得た強度情報を、メモリに格納されたニューラルネットワークモデルに入力して得られた出力から、携帯機が所定境界面のいずれの側に存在するかを判別することにより、携帯機が受信した信号の強度情報から車両の内側にあるか外側にあるかをニューラルネットワークによって判別することができるので、精度よく位置判別を行うことができる。
【0011】
また、本発明に係るキーレスエントリー装置によれば、メモリに、所定境界面の片方側に沿わせて携帯機を位置させ、携帯機から送信される信号を複数の受信アンテナが受信して得られる複数の強度情報を所定境界面の片方側データとし、所定境界面の他方側に沿わせて携帯機を位置させ、携帯機から送信される信号を複数の受信アンテナが受信して得られる複数の強度情報を所定境界面の他方側データとして、片方側データと他方側データから作成されるニューラルネットワークモデルを格納し、車両側制御部は、実際に車両側装置が得た強度情報を、メモリに格納されたニューラルネットワークモデルに入力して得られた出力から、携帯機が所定境界面のいずれの側に存在するかを判別することによっても同様に、ニューラルネットワークによる精度よい位置判別を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態におけるキーレスエントリー装置の概要図を示している。本実施形態におけるキーレスエントリー装置は、車両1のドア1aをロックまたはアンロックするものであり、車両1側には車両側装置2が設けられ、使用者は携帯機3を携帯し、車両側装置2と携帯機3の間で無線通信を行って認証やロック・アンロックの指令等をなすものである。車両側装置2は、車両1の各所に複数の送信アンテナ15を有しており、各送信アンテナ15から携帯機3に対してリクエスト信号が送信される。なお、リクエスト信号は低周波信号からなっている。
【0013】
以下、使用者が車両1に近づいて、ドア1aをアンロックする場合について主に説明する。本実施形態では、携帯機3を持った使用者がドア1aをアンロックするには、ドア1aのドアノブ1b近傍に設けられたリクエストスイッチ16を押すことを必要としている。リクエストスイッチ16が押されると、車両側装置2と携帯機3との間で認証等の通信が行われ、認証がなされた場合に車両側装置2はドア1aのロックを解除する。
【0014】
次に、車両側装置2及び携帯機3の構成について説明する。図2にはキーレスエントリー装置のブロック図を示している。この図に示すように、車両側装置2は、携帯機3からのアンサー信号を受信する車両側受信部10と、携帯機3に対してリクエスト信号を送信する車両側送信部11と、アンサー信号を受信した際やリクエストスイッチ16が押された際に各種制御を行う車両側制御部12とを有している。
【0015】
また、車両側制御部12には、車固有の識別符号であるV−ID(Vhicle−ID)や1台の車両を操作可能な複数の携帯機のIDなど制御に必要な情報を記憶するメモリ13と、上述したリクエストスイッチ16が接続されている。さらに、車両側受信部10にはアンサー信号を受信するための受信アンテナ14が接続され、車両側送信部11にはリクエスト信号を送信するための複数の送信アンテナ15、15が接続される。複数の送信アンテナ15、15は、それぞれ車両1の内外各所に設けられる。
【0016】
図3には、車両1における受信アンテナ14及び送信アンテナ15の配置について示している。受信アンテナ14は、車両1内に1か所設けられており、一方で送信アンテナ15は、送信アンテナ15a〜15fまで車両1の内外に複数設けられている。本実施形態においては、送信アンテナ15a〜15cまでの3つが車両1の内側に、送信アンテナ15d〜15fまでの3つが車両1の外側に、それぞれ設けられている。
【0017】
図2に示すように、携帯機3は、車両側装置2からのリクエスト信号を受信する携帯機受信部20と、車両側装置2に対してアンサー信号を送信する携帯機送信部21と、リクエスト信号を受信した際に各種制御を行う携帯機制御部22と、自機に設定されているID及びV−ID等を記憶したメモリ24とを有している。また、携帯機受信部20と携帯機送信部21には、リクエスト信号やアンサー信号の送受信を行う三軸アンテナ23が接続される。この三軸アンテナ23は、互いに直行する方向の指向特性を有している。
【0018】
携帯機制御部22は、携帯機受信部20で受信する車両側装置2からのリクエスト信号に含まれるウェークアップ信号によって、消費電力が略ゼロの状態であるスリープ状態から通常状態に切り替わる。また、携帯機制御部22は、リクエスト信号に含まれるコマンドに基づいて各種動作を行う。さらに、携帯機制御部22は、三軸アンテナ23によって受信した信号の強度を検出することができる。
【0019】
車両側装置2のメモリ13には、携帯機3の認証に必要なIDと、携帯機3の位置を判別するためのニューラルネットワークモデルが格納されている。本実施形態では、携帯機3が車両1の内側か外側のいずれに位置しているかを判別するために、車両側制御部12は、携帯機3が受信した信号の強度情報をメモリ13に格納されたニューラルネットワークモデルに入力し、そこから出力を得て判定する処理を行う。以下、メモリ13に記憶されるニューラルネットワークモデルについて説明する。
【0020】
まず、ニューラルネットワークモデルの学習に必要なデータの取得が予め行われる。図4には、車両1の周辺におけるデータの取得について表した概要的な平面図を示している。本実施形態では、車両1のボディ自体を所定の境界面とし、この所定境界面の片方側である車外側に沿わせて携帯機3を位置させた際において、複数の送信アンテナ15から送信される信号を携帯機3が受信して得られる強度情報を複数取得して片方側データとする。片方側データは、車両1のボディから外側に10cm離れた曲面上に沿って取得したデータ(以下片方第1データという)と、車両1のボディから外側に15cm離れた曲面上に沿って取得したデータ(以下片方第2データという)とを有している。
【0021】
また、所定境界面の他方側である車内側に沿わせて携帯機3を位置させた際において、複数の送信アンテナ15から送信される信号を携帯機3が受信して得られる強度情報を複数取得して他方側データとする。他方側データは、車両1のボディから内側に0cm離れた(すなわち、携帯機3が車両1のボディに室内側から接するように位置させる)曲面上に沿って取得したデータ(以下他方第1データという)と、車両1のボディから内側に5cm離れた曲面上に沿って取得したデータ(以下他方第2データという)とを有している。
【0022】
片方側データと他方側データの各データは、携帯機3で得られる電波強度の情報を送信アンテナ15毎に有している。このようなデータを、あらかじめ車両1内外の略全周に渡って多数取得しておく。これらのデータの取得は、製品の開発時に、携帯機3あるいは強度測定装置を用いて実際の車両1について行う。または、製造ラインにおいてデータの取得を行うこともできる。
【0023】
次に、片方側データと他方側データの各データに対して、スコアを割り当てる。ここで割り当てられるスコアは、後述するニューラルネットワークモデルの学習の際に出力層に入力されるものである。具体的には、片方第1データの全データにはスコア50を、片方第2データの全データにはスコア100を、他方第1データの全データにはスコア−40を、他方第2データの全データにはスコア−100を、それぞれ割り当てる。なお、ここでのスコアの割当ては一例であって、スコアの数値は適宜設定することができる。
【0024】
続いて、片方側データと他方側データによってニューラルネットワークモデルを学習させる。ここで採用するモデルは、入力層、中間層、及び出力層から構成した多層構造ニューラルネットワークモデルであり、学習方法は誤差逆伝搬学習法とする。
【0025】
図5には、本実施形態で用いるニューラルネットワークモデルの概略図を示している。図中の丸はニューロンを表し、矢印はニューロン同士の結合を表している。この図に示す多層構造ニューラルネットワークモデルは、入力層から出力層に向かう一方向の結合のみからなるモデルである。また、この図では簡略化のため中間層が一列で表されているが、実際には複数列を有するものとし、中間層を構成するニューロンの個数及び配置は、プログラムによって一義的に定められ、ニューラルネットワークモデルの形成過程においては変わらないものとする。
【0026】
片方側データと他方側データの各データには、前述のように各送信アンテナ15で受信した信号の強度情報が含まれると共に、特定のスコアが割り当てられている。これら一つ一つのデータについて、入力層に強度情報を入力すると共に、出力層にスコアを入力することで学習を行う。入力層には、送信アンテナ15の数(本実施形態では6個)のニューロンが配置されており、各ニューロンにはそれに対応した送信アンテナ15の強度情報が入力される。また、出力層には、入力したデータについて割り当てられたスコアが入力される。
【0027】
このように特定のデータについて入力がなされると、ニューロン間の結合荷重の初期値が誤差逆伝搬法によって計算される。具体的には、初期結合荷重とシグモイド関数などの関数でスコアが計算され、入力したスコアとの誤差が求められて、誤差逆伝搬学習法によって結合荷重を見直す処理が行われる。他のデータについても順次入力がなされて結合荷重が修正される。片方側データと他方側データの各データを順次ニューラルネットワークモデルに入力することにより、最終的に車両1の内外における強度情報についてのニューラルネットワークモデルが形成される。ここで得られたニューラルネットワークモデルについて、各ニューロンにおける計算に必要な結合荷重等のパラメータがメモリ13に記憶されることで、ニューラルネットワークモデルがメモリ13に格納される。学習がなされたニューラルネットワークモデルの入力層に対して、実際に携帯機3が得た強度情報を入力することで、ニューラルネットワークモデルの出力層にて携帯機3の位置に応じた出力値(スコア)を得ることができる。
【0028】
次に、キーレスエントリー装置の動作について説明する。図6には、ドアをアンロックする際の動作についてのフローチャートを示している。また、図7には、図6のフローにおいて車両側装置2と携帯機3からそれぞれ送信される信号のチャート図を示している。本実施形態のキーレスエントリー装置は、車両1に設けられたリクエストスイッチ16が押されることで、車両側装置2と携帯機3との間で無線通信がなされ、ドアのアンロックがされるものである。したがって、まず使用者が車両1のリクエストスイッチ16を押すことでフローが開始する(S1)。
【0029】
リクエストスイッチ16が押されると、車両側制御部12は車両側送信部11にリクエスト信号LF1を送信させる(S2)。図7に示すように、リクエスト信号LF1は、ウェークアップ信号を含む信号Aと、コマンド信号CMDとからなっている。コマンド信号CMDには、車固有の識別符号であるV−ID(Vhicle−ID)の情報が含まれている。
【0030】
携帯機3は、携帯機受信部20でリクエスト信号LF1を受信すると、携帯機制御部22がウェークアップ信号によりスリープ状態から通常状態となり、リクエスト信号LF1に含まれるV−IDが、自機が保持するV−IDと一致するか否かを判定する。ここでV−IDが一致しなければ、そこでフローは終了する。V−IDが一致すれば、携帯機制御部22は携帯機送信部21にアンサー信号RF1を送信させる(S5)。
【0031】
車両側受信部10がアンサー信号RF1を受信すると(S6)、車両側制御部12は車両側送信部11に位置確認信号LF2を送信させる。位置確認信号LF2は、図7に示すようにリクエスト信号LF1と同様にウェークアップ信号を含むと共に、携帯機のIDを含む信号Aと、コマンド信号CMDを含む信号及び各送信アンテナ15a〜15fから順に送信される複数のRssi測定用信号とからなっている。
【0032】
各送信アンテナ15a〜15fから送信されるRssi測定用信号は、図6に示すように所定強度を有し所定時間に渡って継続するパルス状の信号であり、携帯機3側で受信強度を測定するために用いられる。各Rssi測定用信号は、携帯機からのRF1信号を受信後に所定の時間経過して後、車両側送信部11によって各送信アンテナ15a〜15fから所定の順序かつ所定の時間間隔で送信される。携帯機3は、車両側でRF1の信号受信からどのタイミングでどのアンテナからの信号が送信されるかの情報を記憶しており、また、RF1の信号を受信した時間からタイマーを起動させて受信時間を測定する。そして、両者を比較することでどの送信アンテナ15からのRssi測定用信号であるかを識別することができる。
【0033】
各送信アンテナ15a〜15fから送信されたRssi測定用信号を含む位置確認信号LF2は、携帯機3の携帯機受信部20によって受信される(S8)。携帯機制御部22は、上述のように各Rssi測定用信号の強度を三軸アンテナ23で測定し、その三軸アンテナ23から求めた送信アンテナ毎の強度情報をアンサー信号RF2として車両側装置2に送信する(S9)。またこの際、アンサー信号RF2には、個々の携帯機に一義的に設定されているIDであるHU−IDも含めて送信される。なお、信号の強度測定は、車両1側からRssi測定用信号を送信して、携帯機3側でその強度を測定するものには限られず、車両1側から送信されるリクエスト信号そのものの強度を測定するものであってもよい。
【0034】
車両側装置2の車両側送信部11は、携帯機3からのアンサー信号RF2を受信する(S10)。アンサー信号RF2を受信したら、車両側制御部12はそれに含まれるHU−IDについて、車両に登録されたものと一致するか否かを判別する(S11)。ここでHU−IDが車両に登録されたものと一致しない場合には、そこでフローを終了する。一方、HU−IDが車両に登録されたものと一致する場合には、次に携帯機3の位置を判別する(S12)。
【0035】
リクエスト信号LF1の送受信時においては、当該リクエスト信号LF1を送信してから各携帯機3毎に異なる時間の後にアンサー信号RF1を送信し、この時間を測定することによって複数の携帯機3のうちどれから応答があるかによって迅速かつ簡易に携帯機3を特定する。リクエスト信号LF2の送受信時には、リクエスト信号LF1において検出した携帯機3に対して最初により情報量の大きい携帯機の個別IDを用いた正確な認証と位置の確認を行う。そして、認証ができなかった場合にはそれぞれの携帯機3に対して同様の動作を行う。なお、リクエスト信号LF1での携帯機3の特定を省略して、ここの携帯機3の認証のみを行う、あるいは個々の携帯機3の認証をRssi測定信号の送信の後に行うようにすることもできる。
【0036】
S12において、実際に携帯機3が得た強度情報から携帯機3の位置判別を行う際、車両側制御部12は、強度情報をメモリ13に格納されたニューラルネットワークモデルの入力層に入力し、出力層で出力値を得る。その出力値を予め定めた閾値によって判定し、携帯機3が車内にあるか車外にあるかを判別する。本実施形態では片方側データ及び他方側データについて、上述のようにスコアを割り当てて学習したことにより、閾値は0と設定される。すなわち、実際の強度情報を入力した際に、出力値が0以上の場合には車外と、出力値が0より小さい場合には車内と、それぞれ判別する。
【0037】
車両側制御部12は、携帯機3が車両1内にあるか、車両1外にあるかによってその後、異なる制御を行う(S13)。携帯機3の位置が車両1外にない、すなわち携帯機3が車両1内にあると判別した場合には、そのままフローを終了する。
【0038】
リクエストスイッチ16を押してドアをアンロックさせる際には、携帯機3は車両1外にあるはずであって、使用者と共に携帯機3が車両1内にある場合にドアをアンロックさせると、携帯機3を持っていない人でもリクエストスイッチ16を押してドアをアンロックさせることができてしまう。これを防ぐために、携帯機3が車両1内にある場合には、ドアをアンロックしないようにしている。一方、携帯機3の位置が車両1外にあると判別した場合には、ドアの施錠装置(図示しない)に対してアンロックの指令信号を出力し、ドアをアンロックする(S14)。
【0039】
ここではリクエストスイッチ16を押してドアをアンロックする動作について示したが、ドアをロックする動作についても同様に携帯機3の位置判別を行って、その結果に応じた制御を行うことができる。また、ドアのロック・アンロック動作に限らず、携帯機3の位置に応じてエンジンを起動させるなどの動作についても、同様に携帯機3の位置判別を行って、その結果に応じて動作させることができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用はこれら実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。例えば、これまで説明した実施形態では、送信アンテナを特定する方法として、Rssi測定用信号を各送信アンテナから所定の順序かつ所定の時間間隔で送信し、携帯機では受信時間を測定することでどの送信アンテナであるかを判定しているが、各送信アンテナの識別情報を付してRssi1〜6を送信する、あるいはRssiを携帯機で受信後、直ちに車両側に強度データを返信し、車両側で識別する等の方法を用いても良い。また、本実施形態では、図4に示すように送信アンテナ15を車両1内外にそれぞれ3つずつ設けているが、送信アンテナ15の数と配置はこれに限られず、車両1に全部で2本以上あればよい。ただし、送信アンテナ15は複数あった方がより精度よく位置を判別することができる。
【0041】
また、携帯機3の位置判別を行う所定境界面については、車両1のボディには限られず、車両1を基準とした車内側あるいは車外側の面であってもよい。例えば、車両1のボディから10cm車内側の面を所定境界面とし、当該境界面を基準に車内外の判定を行うこととしてもよいし、また車両1のボディから1.5m車外側の面を所定境界面とし、携帯機3を携帯した人が車両1まで1.5mの地点まで接近した時点で、車両1内のライトが点灯する機能を実現する際の判別に用いてもよい。さらには、車内において携帯機3を携帯した人が運転席にいるか否かを判別するには、運転席と隣り合う座席との間を所定境界面として設定する。
【0042】
さらに、本実施形態では携帯機3から強度情報が車両1側に送信され、車両側制御部12でニューラルネットワークモデルを用いた位置判別を行っているが、携帯機3のメモリ24にニューラルネットワークモデルを格納しておき、携帯機制御部22で位置判別を行った上で、その情報を車両1側に送信するようにしてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、車両側装置2に複数の送信アンテナ15を設け、携帯機3で複数のRssi測定信号の強度を測定し、それを基に携帯機3の位置判別を行っているが、車両側装置2には複数の受信アンテナ14を設け、携帯機3からの信号をそれら複数の受信アンテナ14で受信して強度を測定し、それを基に車両側制御部12で携帯機3の位置判別を行うこともできる。この際、携帯機3からの信号には、アンサー信号と共に強度測定用の信号も含まれることとなる。またこの場合、ニューラルネットワークモデルを学習させるための片方側データは、携帯機3を車両1の外側に沿わせた際に、携帯機3から送信される信号を複数の受信アンテナ14が受信して得られる強度情報を多数有するものとなり、また他方側データは、携帯機3を車両1の内側に沿わせた際に、携帯機3から送信される信号を複数の受信アンテナ14が受信して得られる強度情報を多数有するものとなる。これらのデータを基にニューラルネットワークモデルを学習させ、実際に受信アンテナ14で得た強度情報を、ニューラルネットワークモデルに入力して得られた出力から、携帯機3の位置判別を行う点については、同様である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態におけるキーレスエントリー装置の概要図である。
【図2】キーレスエントリー装置のブロック図である。
【図3】車両に設けられるアンテナの位置を示した図である。
【図4】車両の周辺におけるデータの取得について表した概要的な平面図である。
【図5】ニューラルネットワークモデルの概略図である。
【図6】アンロック動作の際のフローチャートである。
【図7】車両側装置と携帯機からの信号のチャート図である。
【符号の説明】
【0045】
1 車両
2 車両側装置
3 携帯機
10 車両側受信部
11 車両側送信部
12 車両側制御部
13 メモリ
14 受信アンテナ
15 送信アンテナ
16 リクエストスイッチ
20 携帯機受信部
21 携帯機送信部
22 携帯機制御部
23 三軸アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられリクエスト信号を送信する複数の送信アンテナを有する車両側送信部と、アンサー信号を受信する車両側受信部とを備えた車両側装置と、上記リクエスト信号を受信する携帯機受信部と、アンサー信号を送信する携帯機送信部とを備えた携帯機とを有したキーレスエントリー装置において、
上記車両側装置は上記携帯機からのアンサー信号を認証すると所定の制御を行う車両側制御部を備え、上記携帯機は上記車両側装置の複数の送信アンテナから送信される信号の各強度を検出する携帯機制御部を備え、
上記車両側制御部または携帯機制御部はデータが記憶されるメモリを備え、
上記メモリには、上記車両を基準とした所定境界面の片方側に沿わせて上記携帯機を位置させた際において、上記複数の送信アンテナから送信される信号を上記携帯機が受信して得られる複数の強度情報を上記所定境界面の片方側データとし、上記車両を基準とした所定境界面の他方側に沿わせて上記携帯機を位置させた際において、上記複数の送信アンテナから送信される信号を上記携帯機が受信して得られる複数の強度情報を上記所定境界面の他方側データとして、上記片方側データと他方側データから作成されるニューラルネットワークモデルが格納され、
上記メモリを備える車両側制御部または携帯機制御部は、実際に上記携帯機が得た強度情報を、上記メモリに格納されたニューラルネットワークモデルに入力して得られた出力から、上記携帯機が上記所定境界面のいずれの側に存在するかを判別することを特徴とするキーレスエントリー装置。
【請求項2】
車両に設けられリクエスト信号を送信する車両側送信部と、アンサー信号を受信する複数の受信アンテナを有する車両側受信部とを備えた車両側装置と、上記リクエスト信号を受信する携帯機受信部と、アンサー信号を送信する携帯機送信部とを備えた携帯機とを有したキーレスエントリー装置において、
上記車両側装置は上記携帯機からのアンサー信号を認証すると所定の制御を行う車両側制御部を備え、該車両側制御部は上記複数の受信アンテナで受信した上記携帯機から送信される信号の各強度を検出可能とされ、
上記車両側制御部はデータが記憶されるメモリを備え、
上記メモリには、上記車両を基準とした所定境界面の片方側に沿わせて上記携帯機を位置させた際において、上記携帯機から送信される信号を上記複数の受信アンテナが受信して得られる複数の強度情報を上記所定境界面の片方側データとし、上記車両を基準とした所定境界面の他方側に沿わせて上記携帯機を位置させた際において、上記携帯機から送信される信号を上記複数の受信アンテナが受信して得られる複数の強度情報を上記所定境界面の他方側データとして、上記片方側データと他方側データから作成されるニューラルネットワークモデルが格納され、
上記車両側制御部は、実際に上記車両側装置が得た強度情報を、上記メモリに格納されたニューラルネットワークモデルに入力して得られた出力から、上記携帯機が上記所定境界面のいずれの側に存在するかを判別することを特徴とするキーレスエントリー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−138463(P2008−138463A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326670(P2006−326670)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】