説明

キーレス認証システム及びキーレス認証システム付き車両

【課題】複数の携帯機が存在しても認証の成功率が高く、認証が速やかに行われるキーレス認証システム及びキーレス認証システム付き車両を提供する
【解決手段】固有の識別番号をそれぞれ有する複数の携帯機(14)と、携帯機(14)の優先順位に関する優先順位データを記憶する記憶装置(36)と、携帯機(14)のいずれかを保持する保持者が、外部機器に対して携帯機(14)のうち自身が保有する携帯機(14)の認証の成功が予め必要な行為を行おうとするとき、優先順位データに従って順々に携帯機(14)と通信を行い、識別番号を利用した認証を行う固定ユニット(12)とを備える。優先順位は、携帯機(14)の位置に関する情報に応じて規定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキーレス認証システム及びキーレス認証システム付き車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のキーレスエントリー装置は、車両に取り付けられる機器(固定ユニット)と、車両の利用者が携帯する複数の携帯機とを備える。各携帯機は固有の識別番号を有し、固定ユニットには、組みをなす携帯機の識別番号が登録されている。
キーレスエントリー装置には、携帯機の保持者がドアに近付くのみで、固定ユニットが携帯機と通信を行うものがある。この通信では、識別番号を用いて携帯機の認証が行われ、認証に成功すれば、固定ユニットは、ドアロック装置にロック解除の実行を許容する。
【0003】
また、キーレスエントリー装置には、ドアに取り付けられたリクエストボタンを備えるものがあり、利用者がリクエストボタンを押したときに、固定ユニットは携帯機と通信を行い、識別番号を用いて携帯機の認証を行う。認証に成功すれば、固定ユニットは、先と同様にドアロック装置にロック解除の実行を許容する。
更に、キーレスエントリー装置には、エンジンの始動スイッチをロックするものがあり、利用者が始動スイッチをオンにしようとしたときにも、固定ユニットは同様にして携帯機の認証を行う。認証に成功すれば、固定ユニットは、エンジン始動スイッチのロックを解除する。
【0004】
なお、固定ユニットに複数の携帯機が登録されている場合には、固定ユニットは、適当な順序にて携帯機と1つずつ通信を行い、認証が成立するまで通信を繰り返す。
この種のキーレスエントリー装置においては、認証の正確性と速度が、車両動作に影響する。特に、固定ユニットに複数の携帯機が登録されている場合、認証成功率が低下して認証速度が低下し、なかなかドアが開けられないとか、すばやくエンジンを起動できないなどの不都合が生じてしまう。
【0005】
そこで従来技術では、認証するたびに、認証に成功した携帯機の識別番号を記憶しておき、次の認証に際しては、最後に認証に成功した識別番号の携帯機に対し最優先に認証を試みるという方法が採用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。この方法は、認証を行なおうとする対象の携帯機は、過去に認証に成功した携帯機の中で、より最近認証に成功した携帯機と同一である可能性が高い、という思想に基づく。この方法によれば、確かに認証の成功率が高くなり、結果として認証速度(応答時間)が速くなるものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−150836号公報
【特許文献2】特開2004−84254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術の方法にあっては、認証を行った携帯機の識別番号のみを用いて、通信を行う携帯機の順番を決定しているため、認証の成功率が十分に高いとはいえず、応答時間が長くなるという問題があった。
本発明は上記した事情に鑑みてなされ、その目的とするところは、複数の携帯機が存在しても認証の成功率が高く、認証が速やかに行われるキーレス認証システム及びキーレス認証システム付き車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者達は、従来技術の方法にあっては、通信を行う優先順位が、携帯機の存在位置に関わらずに設定されているため、認証の失敗が起き易いことを見出した。そこで、上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
【0009】
解決手段1:本発明の一態様によれば、固有の識別番号をそれぞれ有する複数の携帯機と、前記携帯機の優先順位に関する優先順位データを記憶する記憶装置と、前記携帯機のいずれかを保持する保持者が、外部機器に対して前記携帯機のうち自身が保有する携帯機の認証の成功が予め必要な行為を行おうとするとき、前記優先順位データに従って順々に前記携帯機と通信を行い、前記識別番号を利用した認証を行う固定ユニットとを備えたキーレス認証システムにおいて、前記優先順位は、前記携帯機の位置に関する情報に応じて規定されることを特徴とするキーレス認証システムが提供される。
【0010】
解決手段1のキーレス認証システムでは、携帯機の位置に関する情報に応じて優先順位が規定されていることにより、固定ユニットは、複数の携帯機が登録されていても、保持者の携帯機に対して最初に的確に通信を行う。この結果として、このキーレス認証システムによれば、認証成功率が向上し、認証速度が速くなる。
【0011】
解決手段2:好ましくは、前記優先順位データは、認証に成功したときの前記携帯機の位置に関する情報別の複数のデータ要素群によって構成され、前記データ群では前記携帯機の位置に関する情報別に最後に認証に成功した携帯機の優先順位が最高位に設定される。
【0012】
解決手段2のキーレス認証システムでは、固定ユニットが、位置に関する情報別に、複数のデータ要素群を使い分け且つ各データ要素群において最後に認証に成功した携帯機の優先順位を最高位に設定することによって、複数の携帯機が登録されていても、保持者の携帯機に対して最初に的確に通信を行う。この結果として、このキーレス認証システムによれば、認証成功率が向上し、認証速度が速くなる。
【0013】
解決手段3:本発明の一態様によれば、解決手段2に記載のキーレス認証システムを備えたキーレス認証システム付き車両であって、前記位置に関する情報は、認証に成功した携帯機が車内にあるか車外にあるかという情報であり、前記記憶手段は、前記優先順位データの前記データ要素群として、車内用データ要素群及び車外用データ要素群を記憶し、前記固定ユニットは、前記保持者が車両のドアを開けようとしたときに、前記車外用データ要素群に従って順々に前記携帯機と通信を行うとともに、前記車外用データ要素群において前記認証が成功した携帯機の優先順位を最高位に設定する一方、前記保持者が車両のエンジンを始動しようとしたときに前記車内用データ要素群に従って順々に前記携帯機と通信を行うとともに、前記車内用データ要素群において前記認証が成功した携帯機の優先順位を最高位に設定することを特徴とするキーレス認証システム付き車両が提供される。
【0014】
解決手段3のキーレス認証システム付き車両では、携帯機の位置に関する情報が、認証に成功した携帯機が車内にあるか車外にあるかという情報であるため、固定ユニットは、複数の携帯機が登録されていても、所定の行為を行おうとする保持者の携帯機に対して最初に的確に通信を行う。この結果として、このキーレス認証システム付き車両によれば、認証成功率が向上し、認証速度が速くなる。
【0015】
解決手段4:好ましくは、前記携帯機の保持者が前記車両のドアを開けるのに先立ち操作するドア解錠リクエストボタンと、前記携帯機の保持者が前記車両のエンジンを始動するのに先立ち操作するエンジン始動リクエストボタンとを更に備え、前記固定ユニットは、前記ドア解錠リクエストボタン及び前記エンジン始動リクエストボタンのうち一方が操作されたときに、前記携帯機との認証のための通信を開始する。
【0016】
解決手段4のキーレス認証システム付き車両では、固定ユニットが、ドア解錠リクエストボタン及びエンジン始動リクエストボタンのうち一方が操作されたときに、携帯機との認証のための通信を開始したとしても、保持者の携帯機に対して最初に的確に通信を行う。この結果として、このキーレス認証システム付き車両によれば、認証成功率が向上し、認証速度が速くなる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明のキーレス認証システム及びキーレス認証システム付き車両では、認証成功率が向上し、認証速度が速くなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一実施形態のキーレス認証システム付き車両の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1中の固定機が実行するメインプログラムを示すフローチャートである。
【図3】図1のキーレス認証システム付き車両における、車両の利用者の行動と車内用小テーブル及び車外用小テーブルの変化とを時系列的に説明するための図である。
【図4】従来のキーレス認証システム付き車両における、車両の利用者の行動と優先順位テーブルの変化とを時系列的に説明するための図である。
【図5】変形例に係るテーブル更新ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
〔第一実施形態〕
図1は、第一実施形態のキーレス認証システム付き車両の概要的な構成を示している。
キーレス認証システムは、車両10に取り付けられる車載ユニット(固定ユニット)12と、車両10の利用者が携行可能な複数の携帯機14とを有する。ただし、図1中には、携帯機14が1つのみ示されている。
【0020】
車載ユニット12には、例えば、車両10のエンジン制御装置16及びドアロック装置18が電気的に接続されている。この車両10では、携帯機14を所持する利用者(保持者)は、鍵を用いずとも、携帯機14が車載ユニット12によって認証されることによって、車両10のドアの解錠及びエンジンの始動を実行可能である。つまり、保持者が、予め携帯機14の認証が必要な行為を行おうとするときに、車載ユニット12は、携帯機14の認証を行い、携帯機14の認証に成功したときに、外部機器であるエンジン制御装置16及びドアロック装置18を、利用者の行為を許可するよう制御する。
【0021】
〔車載ユニット〕
より詳しくは、車載ユニット12は、車載機(固定機)20、複数の送信アンテナ22、受信アンテナ24、エンジン始動リクエストボタン26、及び、ドア解錠リクエストボタン28を有し、車載機20に対し、送信アンテナ22、受信アンテナ24、エンジン始動リクエストボタン26、及び、ドア解錠リクエストボタン28がそれぞれ電気的に接続されている。
なお、送信アンテナ22は、携帯機14が車外のドア近傍にあるとき、及び、携帯機14が車内の運転席近傍にあるとき、車載ユニット12及び携帯機14が相互に通信可能なように設けられている。このために、例えば、各送信アンテナ22の通信可能距離が適当に制限されている。
【0022】
〔入力装置〕
エンジン始動リクエストボタン26、及び、ドア解錠リクエストボタン28は、利用者からの命令を受けるための入力装置である。
具体的には、例えばブレーキペダルが、エンジン始動リクエストボタン26を兼ねることができる。利用者は、ブレーキペダルを踏むことで、エンジン始動リクエストボタン26とは別に設けられたエンジン始動スイッチを操作することが可能になり、エンジンを始動させることができる。
なおエンジン始動スイッチは、車内のダッシュボードやステアリングコラムに設けることができる。
【0023】
ドア解錠リクエストボタン28は、例えば、車外のドアノブと一体に設けられるか、又は、ドアノブの近傍に設けられる。利用者がドア解錠リクエストボタン28に触れることによって、ドアの解錠命令が車載機20に入力される。
【0024】
〔車載機〕
車載機20は、例えばCPU(中央演算装置)からなる車載機制御部30、入力部32、出力部34、車載機メモリ36、送信部38、及び、受信部40を有し、車載機制御部30に対して、入力部32、出力部34、車載機メモリ36、送信部38、及び、受信部40がそれぞれ電気的に接続されている。
【0025】
入力部32は、エンジン始動リクエストボタン26及びドア解錠リクエストボタン28が利用者から受けた命令を車載機制御部30に入力する。車載機制御部30は、入力部32から命令が入力されたときに、認証要求信号の発信を送信部38及び送信アンテナ22に行わせる。認証要求信号には、認証のための通信を行う対象の携帯機14を特定するためのコードと、携帯機14に応答させるためのコードとが含まれている。
【0026】
通信対象の携帯機14は認証要求信号を受信すると、自身の固有の識別番号に相当するコードを含む応答信号を発信する。受信部40は、受信アンテナ24を介して応答信号を受信し、そして、受信した応答信号に含まれる識別番号を車載機制御部30に入力する。
車載機制御部30は、応答信号に含まれる携帯機14の固有の識別番号を、車載機メモリ36に記憶された識別番号と照らし合わせ、これらが相互に一致したときに、携帯機14の認証が成功する。
【0027】
認証が成功すると、車載機制御部30は、出力部34を介して利用者からの命令を外部機器、即ち、エンジン制御装置16又はドアロック装置18に伝達し、エンジン制御装置16又はドアロック装置18が利用者の命令を実行することを許容する。
【0028】
〔携帯機〕
携帯機14は、携帯機制御部42、送受信アンテナ44、送受信部46、携帯機メモリ48、及び、必要に応じて携帯機ボタン50を有する。携帯機制御部42に対して、送受信部46、携帯機ボタン50、及び、携帯機メモリ48が電気的に接続され、送受信部46に送受信アンテナ44が電気的に接続されている。
携帯機制御部42は、送受信アンテナ44及び送受信部46を介して、認証要求信号を受信し、認証要求信号への応答として、応答信号を送信する。応答信号に含ませるための各携帯機14に固有の識別番号は、携帯機メモリ48に記憶されている。
【0029】
携帯機ボタン50は、利用者が車両10から離れているときに、ドアロック装置18にドアの解錠又は施錠を命令するためのボタンである。携帯機14は、携帯機ボタン50が例えば押下されると、識別番号を含む命令信号を発信し、車載ユニット12が命令信号を受信する。そして、車載機制御部30は、命令信号に含まれる識別番号の認証に成功すると、ドアロック装置18に命令の実行を許容する。
【0030】
〔優先順位データ〕
ここで、キーレス認証システム付き車両は、複数の携帯機14を有するため、車載ユニット12は、所定の順序に従って1つずつ順々に、認証のための通信を携帯機14と行う。そのために、本実施形態では、利用者が実行する命令の種類に応じて、車内用優先順位小テーブル(以下、車内用小テーブルともいう)及び車外用小テーブル優先順位小テーブル(以下、車外用小テーブルともいう)が車載機メモリ36に記憶されている。
【0031】
車内用小テーブル及び車外用小テーブルには、通信を行うときの携帯機14の優先順位がそれぞれ規定されており、車載機制御部30は、記憶された車内用小テーブル及び車外用小テーブルを読み込み、命令の種類に応じて車内用小テーブル又は車外用小テーブルに従って携帯機14と順々に通信を行う。
その上、車載機制御部30は、所定の場合、記憶された車内用小テーブル及び車外用小テーブルに変更を加え、上書き保存(更新)することができる。
【0032】
具体的には、車載機制御部30は、ドア解錠リクエストボタン28を介しドアの解錠の命令を受けて携帯機14の認証に成功したとき、認証に成功した携帯機14の優先順位が最高位になるように車外用小テーブルを更新する。
一方、車載機制御部30は、エンジン始動リクエストボタン26を介しエンジン始動の命令を受けて携帯機14の認証に成功したとき、認証に成功した携帯機14の優先順位が最高位になるように車内用小テーブルを更新する。
【0033】
なお車載機メモリ36は、車内用小テーブル及び車外用小テーブルを記憶することによって、認証に成功した携帯機14が車内にあったか車外にあったかという携帯機14の位置に関する情報別に、携帯機14の優先順位を記憶しているということができる。
【0034】
〔メインプログラム〕
以下、図2を参照して、上述した車載機制御部30が実行するメインプログラムを説明する。
メインプログラムが実行されると、初期設定として、車外用小テーブル及び車内用小テーブルが読み込まれ、繰り返し番号nが1に設定される(ステップS10)。それから、ドア解錠リクエストボタン28及びエンジン始動リクエストボタン26を介して、命令が入力されたか否かが判定される(ステップS12)。
【0035】
ドア解錠命令が入力された場合、車載ユニット12は、車外用小テーブルにおいて繰り返し番号nに対応する優先順位の携帯機14に対して、認証要求信号を送信する(ステップS20)。なお、ステップS20が初めて行われる場合、繰り返し番号nは1であるので、車外用小テーブルの優先順位1番目の携帯機14に対して、認証要求信号が送信される。
【0036】
ステップS20が行われた後、認証が成功したか否かが判定される(ステップS22)。ステップS22では、優先順位1番目の携帯機14が、認証要求信号を受信可能な範囲内にあれば、認証は成功する。つまり、優先順位1番目の携帯機14が応答信号を発信し、車載ユニット12が、この応答信号を受信して認証を行ない、認証が成功する。一方、優先順位1番目の携帯機14が、認証要求信号を受信可能な範囲内になければ、認証は失敗する。つまり、優先順位1番目の携帯機14は応答信号を発信することはなく、車載ユニット12は認証を行なうことができない。
【0037】
認証が失敗した場合、即ち、応答信号を受信することなく所定の応答待ち時間が経過した場合、繰り返し数nが1つ増大(インクリメント)される(ステップS24)。インクリメント後の繰り返し数nは、携帯機14の総数Nと比較され(ステップS26)、繰り返し数nが総数Nを超えていなければ、再びステップS20が実行される。つまり、認証に成功するまで、車外用小テーブルの優先順位に従って、1つずつ順々に携帯機14との認証のための通信が行われる。
【0038】
ステップS22で認証に成功した場合、車載機20は、ドアロック装置18にドアの解錠を許可し(ステップS28)、この結果としてドアの解錠が行われる。
そして、ステップS28の後、認証に成功した携帯機14の車外用小テーブルでの優先順位が1番に更新される(ステップS30)。例えば、優先順位が2番目又はそれ以下の携帯機14の認証が成功した場合、認証に成功した携帯機14の優先順位が1番に設定され、それまで1番であった携帯機14の優先順位は2番に設定される。なお、優先順位1番目の携帯機14の認証が成功した場合、車外用小テーブルにおける優先順位の変更はない。
【0039】
一方、ステップS12において、エンジン始動命令が入力された場合、車載ユニット12は、車内用小テーブルにおいて繰り返し番号nに対応する優先順位の携帯機14に対して、認証要求信号を送信する(ステップS40)。なお、ステップS40が初めて行われる場合、繰り返し番号nは1であるので、車外用小テーブルの優先順位1番目の携帯機14に対して、認証要求信号が送信される。
【0040】
ステップS40が行われた後、認証が成功したか否かが判定される(ステップS42)。ステップS42では、優先順位1番目の携帯機14が、認証要求信号を受信可能な範囲内にあれば、即ち車室内の運転席近傍にあれば、認証は成功する。つまり、優先順位1番目の携帯機14が応答信号を発信し、車載ユニット12が、この応答信号を受信して認証を行ない、認証が成功する。一方、優先順位1番目の携帯機14が、車室内の運転席近傍になければ、認証は失敗する。つまり、優先順位1番目の携帯機14は応答信号を発信することはなく、車載ユニット12は認証を行なうことができない。
【0041】
認証が失敗した場合、即ち、応答信号を受信することなく所定の応答待ち時間が経過した場合、繰り返し数nが1つ増大(インクリメント)される(ステップS44)。インクリメント後の繰り返し数nは、携帯機14の総数Nと比較され(ステップS46)、繰り返し数nが総数Nを超えていなければ、再びステップS40が実行される。つまり、認証に成功するまで、車内用小テーブルの優先順位に従って、1つずつ順々に携帯機14との認証のための通信が行われる。
【0042】
ステップS42で認証に成功した場合、車載機20は、エンジン制御装置16にエンジン始動を許可し(ステップS48)、エンジン始動スイッチをオンにすることが可能になる。
そして、ステップS48の後、認証に成功した携帯機14の車内用小テーブルでの優先順位が1番に更新される(ステップS50)。例えば、優先順位が2番目又はそれ以下の携帯機14の認証が成功した場合、認証に成功した携帯機14の優先順位が1番に設定され、それまで1番であった携帯機14の優先順位は2番に設定される。なお、優先順位1番目の携帯機14の認証が成功した場合、車外用小テーブルにおける優先順位の変更はない。
【0043】
図3は、上述した第一実施形態のキーレス認証システム付き車両の動作を時系列的に例示している。
この例では、登録された4つの携帯機A〜Dのうち、X氏が携帯機Aを所持し、Y氏が携帯機Bを所持している。Y氏がドア解錠リクエストボタン28を操作すると、車外用小テーブルに規定された優先順位に従って、車載ユニット12は、まず優先順位1番目の携帯機Aに認証要求信号を送信する。しかし、X氏は車両10のドア近傍にいないため、携帯機Aの認証は成功しない。
【0044】
車載ユニット12は、次に優先順位2番目の携帯機Aに認証要求信号を送信する。Y氏は車両10のドア近傍にいるため、携帯機Bの認証が成功し、ドアの解錠が行われる。また、車外用小テーブルにおける認証に成功した携帯機Bの優先順位が1番に更新される。
ドアの解錠後、Y氏が例えば助手席に座り、X氏が運転席に座る。X氏がエンジン始動リクエストボタン26を操作すると、車内用小テーブルに規定された優先順位に従って、車載ユニット12は、まず優先順位1番目の携帯機Aに認証要求信号を送信する。このとき、X氏は車内の運転席にいるため、携帯機Aの認証は成功する。従って、X氏はエンジン始動スイッチをオンにすることが可能になる。
【0045】
一方、図4は、従来技術のキーレス認証システム付き車両の動作を時系列的に例示している。
従来技術では、携帯機の位置を全く考慮しない優先順位テーブル(以下、従来テーブルともいう)を使用していたので、図3の例と同じようにY氏がドアの解錠を行った後、従来テーブルでの携帯機Bの優先順位が1番に設定される。そして、X氏がエンジン始動リクエストボタン26を操作したときに、車載ユニット12は、従来テーブルに規定された優先順位に従って、携帯機Bに対して認証要求信号を送信する。
【0046】
このとき、Y氏は助手席にいるので、携帯機Bは運転席近傍にはなく、認証に失敗する。このため次に、車載ユニット12は、優先順位が2番の携帯機Aに認証要求信号を送信し、携帯機Aは運転席近傍にあるので認証が成功する。従って、一度認証に失敗した後、X氏はエンジン始動スイッチをオンにすることが可能になる。
【0047】
上述したように、第一実施形態のキーレス認証システム付き車両によれば、携帯機14の位置に関する情報に応じて優先順位が規定されていることにより、車載ユニット12は、複数の携帯機14が登録されていても、保持者の携帯機14に対して最初に的確に通信を行う。この結果として、このキーレス認証システム付き車両によれば、認証成功率が向上し、認証速度が速くなる。
【0048】
また、第一実施形態のキーレス認証システム付き車両では、車載ユニット12が、位置に関する情報別に、複数の小テーブル、則ち車内用小テーブル及び車外用小テーブルを使い分け且つ各小テーブルにおいて最後に認証に成功した携帯機14の優先順位を最高位に設定することによって、複数の携帯機14が登録されていても、保持者の携帯機14に対して最初に的確に通信を行う。この結果として、このキーレス認証システム付き車両によれば、認証成功率が向上し、認証速度が速くなる。
【0049】
更に、第一実施形態のキーレス認証システム付き車両では、携帯機14の位置に関する情報が、認証に成功した携帯機14が車内にあるか車外にあるかという情報であるため、車載ユニット12は、複数の携帯機14が登録されていても、所定の行為を行おうとする保持者の携帯機14に対して最初に的確に通信を行う。この結果として、このキーレス認証システム付き車両によれば、認証成功率が向上し、認証速度が速くなる。
【0050】
また更に、第一実施形態のキーレス認証システム付き車両では、車載ユニット12が、ドア解錠リクエストボタン28及びエンジン始動リクエストボタン26のうち一方が操作されたときに、携帯機14との認証のための通信を開始したとしても、保持者の携帯機14に対して最初に的確に通信を行う。この結果として、このキーレス認証システム付き車両によれば、認証成功率が向上し、認証速度が速くなる。
【0051】
本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、種々の変形が可能である。
例えば第一実施形態では、車載機メモリ36に車内用小テーブル及び車外用小テーブルが記憶されていたけれども、これら車内用小テーブル及び車外用小テーブルは電子情報であり、必ずしも2つの小テーブルが実在する必要はない。要は、車載ユニット12が、携帯機14の位置に応じて優先順位を規定するマップデータとしての優先順位データを有していればよく、優先順位データのフォーマットは特に限定されることはない。優先順位データ全体からみれば、車内用小テーブル及び車外用小テーブルは、優先順位データを構成するそれぞれ1つのデータ要素群とみなすことができる。
【0052】
第一実施形態では、送信アンテナ22の通信可能領域を制限することによって、携帯機14が車外のドア近傍にある場合、及び、携帯機14が車内の運転席近傍にある場合に、車載ユニット12及び携帯機14が相互に通信可能になるようにしたが、車載ユニット12が、携帯機14の絶対的な位置を検出し、検出した位置に応じて、優先順位テーブルを更新するようにしてもよい。つまり、携帯機14の位置に関する情報は、携帯機14の大まかな存在位置又は存在範囲の情報であってもよく、より詳細な位置情報であってもよい。そして、位置に関する情報の取得方法も特に限定されることはない。
【0053】
第一実施形態では、ドア解錠リクエストボタン28及びエンジン始動リクエストボタン26を操作することがトリガとなって、車載ユニット12が通信を開始したけれども、定期又は不定期にて、車載ユニット12が通信を開始してもよい。つまり、携帯機14の保持者がドアに近付くのみで、又は、携帯機14の保持者が車内の運転席に居るのみで、車載ユニット12が通信を開始してもよい。
【0054】
このような場合、ドア解錠リクエストボタン28及びエンジン始動リクエストボタン26は、必ずしも必要ではなく、例えば、図5に示したようなテーブル更新ルーチンを定期又は不定期に実行すればよい。
図5のテーブル更新ルーチンでは、携帯機14の位置が定期又は不定期に実行される(ステップS70)。それから、ステップS70の結果が判定され(ステップS72)、車外のドア近傍で携帯機14が検出されれば、車外用小テーブルにおいて、認証に成功した携帯機14の優先順位が最高位に設定される(ステップS74)。一方、車内の運転席近傍で携帯機14が検出されれば、車内用小テーブルにおいて、認証に成功した携帯機14の優先順位が最高位に設定される(ステップS76)。
【0055】
第一実施形態では、車載ユニット12と携帯機14とが認証のために通信を行うが、通信の方式は特に限定されることはない。
第一実施形態では、キーレス認証システムが、ドアの解錠及びエンジンの始動に適用されていたが、ハンドルロック等の他の機能のセキュリティ確保にも適用可能である。
最後に、本発明のキーレス認証システムは、例えば住宅のドア等、車両以外の輸送機械や建造物にも適用可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
10 車両
12 車載ユニット(固定ユニット)
14 携帯機
16 エンジン制御装置
18 ドアロック装置
22 送信アンテナ
24 受信アンテナ
26 エンジン始動リクエストボタン(入力装置)
28 ドア解錠リクエストボタン(入力装置)
30 車載機制御部(固定機制御部)
36 車載機メモリ(記憶装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有の識別番号をそれぞれ有する複数の携帯機と、
前記携帯機の優先順位に関する優先順位データを記憶する記憶装置と、
前記携帯機のいずれかを保持する保持者が、外部機器に対して前記携帯機のうち自身が保有する携帯機の認証の成功が予め必要な行為を行おうとするとき、前記優先順位データに従って順々に前記携帯機と通信を行い、前記識別番号を利用した認証を行う固定ユニットとを備えたキーレス認証システムにおいて、
前記優先順位は、前記携帯機の位置に関する情報に応じて規定されることを特徴とするキーレス認証システム。
【請求項2】
請求項1に記載のキーレス認証システムにおいて、
前記優先順位データは、認証に成功したときの前記携帯機の位置に関する情報別の複数のデータ要素群によって構成され、前記データ群では前記携帯機の位置に関する情報別に最後に認証に成功した携帯機の優先順位が最高位に設定される
ことを特徴とするキーレス認証システム。
【請求項3】
請求項2に記載のキーレス認証システムを備えたキーレス認証システム付き車両であって、
前記位置に関する情報は、認証に成功した携帯機が車内にあるか車外にあるかという情報であり、
前記記憶手段は、前記優先順位データの前記データ要素群として、車内用データ要素群及び車外用データ要素群を記憶し、
前記固定ユニットは、前記保持者が車両のドアを開けようとしたときに、前記車外用データ要素群に従って順々に前記携帯機と通信を行うとともに、前記車外用データ要素群において前記認証が成功した携帯機の優先順位を最高位に設定する一方、前記保持者が車両のエンジンを始動しようとしたときに前記車内用データ要素群に従って順々に前記携帯機と通信を行うとともに、前記車内用データ要素群において前記認証が成功した携帯機の優先順位を最高位に設定することを特徴とするキーレス認証システム付き車両。
【請求項4】
請求項3に記載のキーレス認証システム付き車両において、
前記携帯機の保持者が前記車両のドアを開けるのに先立ち操作するドア解錠リクエストボタンと、
前記携帯機の保持者が前記車両のエンジンを始動するのに先立ち操作するエンジン始動リクエストボタンと
を更に備え、
前記固定ユニットは、前記ドア解錠リクエストボタン及び前記エンジン始動リクエストボタンのうち一方が操作されたときに、前記携帯機との認証のための通信を開始する
ことを特徴とするキーレス認証システム付き車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−222898(P2010−222898A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73213(P2009−73213)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】