説明

ギャップ検出装置およびレーザ加工機

【課題】ノズルとワークとの接触による測定系の発熱を抑制しつつ、ノズルとワークとの間のギャップをその間の静電容量の値から検出すること。
【解決手段】静電容量測定部21は、ノズル15側の中心電極とワークWとの間に形成される静電容量を測定し、ギャップ算出部22は、静電容量測定部21にて測定された静電容量に基づいて、ノズル15とワークWとの間のギャップdを算出し、接触判定部23は、ノズル15とワークWとの接触状態を判定し、追従信号印加部24は、ノズル15とワークWとの接触状態の判定結果に基づいて、ノズル15側の中心電極の電位に追従する追従信号をケーブルCbの外被Cb2に印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はギャップ検出装置およびレーザ加工機に関し、特に、ノズルとワークとが接触した時のギャップ測定回路の保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工機では、ワークに対してレーザが最適な強度で照射されるように、レーザを出射するノズルとワークとの間のギャップが所望の値になるように制御される。このノズルとワークとの間のギャップを測定する方法として、ノズルとワークとの間に形成される静電容量を検出する方法がある。この方法では、測定箇所の未知インピーダンスに既知の参照抵抗が直列接続されるように構成し、その未知インピーダンスに測定信号を印加し、未知インピーダンスと既知の参照抵抗の間にある分岐点から分電圧を取り出して、測定箇所のギャップによる静電容量の値からギャップを求めることができる(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−234903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術によれば、ノズルとワークとが接触すると、測定信号が発振するようになる。そのため、測定回路に過電流が流れ、測定回路が発熱することから、測定系の特性が変動したり、測定系が破壊されたりするという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ノズルとワークとの接触による測定系の発熱を抑制しつつ、ノズルとワークとの間のギャップをその間の静電容量の値から検出することが可能なギャップ検出装置およびレーザ加工機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、レーザ加工機の加工ヘッドに設けられたノズル側の中心電極とケーブルを介して接続されることで、前記ノズルとワークとの間のギャップを検出するギャップ検出装置において、前記中心電極と前記ワークとの間に形成される静電容量を測定する静電容量測定部と、前記静電容量測定部にて測定された静電容量に基づいて、前記ノズルとワークとの間のギャップを算出するギャップ算出部と、前記ノズルと前記ワークとの接触状態を判定する接触判定部と、前記ノズルと前記ワークとの接触状態の判定結果に基づいて、前記中心電極の電位に追従する追従信号を前記ケーブルの外被に印加する追従信号印加部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、ノズルとワークとの接触による測定系の発熱を抑制しつつ、ノズルとワークとの間のギャップをその間の静電容量の値から検出することが可能という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明に係るギャップ検出装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0009】
(実施の形態1)
図1は、本発明に係るギャップ検出装置の実施の形態1が適用されるレーザ加工機の概略構成を示すブロック図である。図1において、ワークWをレーザ加工するレーザ加工機10には、レーザ光を発生させるレーザ発振器11、レーザ光の出射位置を設定する加工ヘッド13、レーザ発振器11の動作や加工ヘッド13の位置などを制御する加工機コントローラ12が設けられている。ここで、加工ヘッド13には、レーザ光をワークW上に出射するノズル15およびノズル15の近傍に絶縁配置されたガード電極14が設けられている。なお、ノズル15自体を、ワークWとの間で静電容量を形成する中心電極として機能させるようにしてもよいし、ワークWとの間で静電容量を形成する中心電極をノズル15とは別に設けるようにしてもよい。
【0010】
そして、レーザ加工機10には、ケーブルCbを介してギャップ検出装置20が接続されている。ここで、ギャップ検出装置20は、ノズル15とワークWとの間に形成される静電容量を測定することで、ノズル15とワークWとの接触状態を判定し、ノズル15とワークWとの間のギャップdを検出することができる。すなわち、ギャップ検出装置20には、静電容量測定部21、ギャップ算出部22、接触判定部23および追従信号印加部24が設けられ、静電容量測定部21は、ケーブルCbの芯線Cb1を介してノズル15側の中心電極と接続され、追従信号印加部24はケーブルCbの外被Cb2を介してガード電極14と接続されている。なお、ケーブルCbの外被Cb2としては、同軸ケーブルの外部導体、測定ケーブルの金属シースなどを挙げることができる。
【0011】
そして、静電容量測定部21は、ノズル15側の中心電極とワークWとの間に形成される静電容量を測定することができる。ギャップ算出部22は、静電容量測定部21にて測定された静電容量に基づいて、ノズル15とワークWとの間のギャップdを算出することができる。接触判定部23は、ノズル15とワークWとの接触状態を判定することができる。なお、接触判定部23は、ギャップ算出部22にて算出されたノズル15とワークWとの間のギャップdからノズル15とワークWとの接触状態を判定するようにしてもよいし、ノズル15とワークWとの接触状態を検出する接触センサを別途設け、その接触センサの出力からノズル15とワークWとの接触状態を判定するようにしてもよい。追従信号印加部24は、ノズル15とワークWとの接触状態の判定結果に基づいて、ノズル15側の中心電極の電位に追従する追従信号をケーブルCbの外被Cb2に印加することができる。なお、この追従信号としては、ケーブルCbの芯線Cb1の電圧と同相かつ同振幅の電圧を用いることができる。
【0012】
そして、接触判定部23は、ノズル15とワークWとの接触状態を判定し、その判定結果を追従信号印加部24に出力する。そして、追従信号印加部24は、ノズル15とワークWとが接触していると判定された場合、ケーブルCbの外被Cb2に追従信号を印加しないようにする。一方、追従信号印加部24は、ノズル15とワークWとが接触していないと判定された場合、ケーブルCbの外被Cb2に追従信号を印加する。そして、静電容量測定部21は、ケーブルCbの芯線Cb1を介して電気信号をやり取りすることで、ノズル15側の中心電極とワークWとの間に形成される静電容量を測定し、その測定結果をギャップ算出部22に出力する。ここで、ケーブルCbの外被Cb2に追従信号が印加された状態で、ノズル15側の中心電極とワークWとの間に形成される静電容量を測定することで、ケーブルCbに形成される浮遊容量や、ノズル15側の中心電極とガード電極14との間に形成される浮遊容量の影響を除去することができ、ノズル15側の中心電極とワークWとの間に形成される静電容量の測定精度を向上させることができる。そして、ギャップ算出部22は、静電容量測定部21にて測定された静電容量に基づいて、ノズル15とワークWとの間のギャップdを算出し、接触判定部23および加工機コントローラ12に出力する。
【0013】
そして、加工機コントローラ12は、ノズル15とワークWとの間のギャップdに基づいて、レーザ光の焦点位置が所定の位置にくるようにノズル15の位置を制御し、レーザ光を適正な強度でワークWに照射させながら、ワークWの加工を行わせる。
【0014】
ここで、追従信号印加部24は、ノズル15とワークWとが接触していると判定された場合、ケーブルCbの外被Cb2に追従信号を印加しないようにすることで、測定信号が発振するのを防止することが可能となる。このため、ノズル15とワークWとが接触している場合においても、測定回路に過電流が流れるのを防止することができ、測定回路の発熱を防止することが可能となることから、測定系の特性が変動したり、測定系が破壊されたりするのを防止することができる。また、測定回路に過電流が流れるのを防止することで、ギャップ検出装置20の消費電力を低減することが可能となるとともに、ギャップ検出装置20の長寿命化を図ることができる。
【0015】
(実施の形態2)
図2は、本発明に係るギャップ検出装置の実施の形態2の概略構成を示すブロック図である。図2において、図1のノズル15とワークWとの間に形成される静電容量をコンデンサ31でモデル化すると、コンデンサ31は、ノズル15側の電極31aとワークW側の電極31bにて構成することができる。また、レーザ光がワークWに照射されると、加工条件によってはノズル15とワークWとの間にプラズマPが発生することがあり、コンデンサ31には、このプラズマPによるプラズマインピーダンス32が並列接続される。
【0016】
そして、ギャップ検出装置40には、ノズル15とワークWとの間に形成される静電容量を測定する測定信号を発生する測定信号発生部41、プラズマインピーダンス32をモデル化する基準インピーダンスを提供するリファレンス素子42、中心電極の分電圧を検出するバッファ43、バッファ43の出力をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ44、バッファ43の出力とケーブルCbの外被Cb2との間の開閉を行う切り替え部45、ギャップ検出装置40の周囲の環境温度を検出する温度検出部46、温度検出部46の出力をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ47、A/Dコンバータ44から出力された中心電極の分電圧に基づいてノズル15とワークWとの間のギャップ値を算出する信号処理部48、信号処理部48にて算出されたギャップ値をアナログ信号に変換するD/Aコンバータ49が設けられている。
【0017】
なお、D/Aコンバータ49は必ずしも設ける必要はなく、信号処理部48にて算出されたギャップ値をデジタル信号のまま出力してもよい。また、信号処理部48は、例えば、マイクロコンピュータなどで構成することができる。また、リファレンス素子42としては、例えば、抵抗素子を用いることができ、バッファ43としては、例えば、オペアンプを用いることができ、切り替え部45としては、例えば、スイッチまたはマルチプレクサを用いることができ、温度検出部46としては、例えば、熱電対またはサーミスタを用いることができる。
【0018】
そして、ノズル15とワークWとの間のギャップ値を算出する場合、信号処理部48は、切り替え部45をオンさせることにより、バッファ43の出力とケーブルCbの外被Cb2との間を導通状態にするとともに、測定信号発生部41を動作させる。そして、測定信号発生部41にて発生された測定信号は、リファレンス素子42を通った後、分岐点B1にて分圧され、ケーブルCbの芯線Cb1を介してコンデンサ31およびプラズマインピーダンス32に印加される。なお、測定信号発生部41にて発生される測定信号は、ノズル15とワークWとの間に形成される静電容量の変化に対してシステムゲインが感度よく変化する周波数に設定することができ、例えば、測定系の共振周波数の近傍に設定することができる。
【0019】
そして、ケーブルCbの芯線Cb1上に発生した中心電極の信号はバッファ43を経た後、分岐点B2にて分岐され、A/Dコンバータ44および切り替え部45に入力される。そして、バッファ43から出力された中心電極の信号が切り替え部45に入力されると、切り替え部45を介してケーブルCbの外被Cb2に印加され、さらにケーブルCbの外被Cb2を伝わってガード電極14に印加される。ここで、ケーブルCbの芯線Cb1上に発生した中心電極の信号をケーブルCbの外被Cb2に印加することで、ケーブルCbの芯線Cb1の電圧を、ケーブルCbの外被Cb2の電圧やガード電極14の電圧と同相かつ同振幅に保つことができ、ケーブルCbに形成される浮遊容量や、ノズル15側の中心電極とガード電極14との間に形成される浮遊容量の影響を除去することが可能となることから、ノズル15側の中心電極とワークWとの間に形成されるコンデンサ31の静電容量の測定精度を向上させることができる。また、バッファ43から出力された中心電極の信号がA/Dコンバータ44に入力されると、その中心電極の信号がデジタル信号に変換され、信号処理部48に入力される。また、温度検出部46にて検出された環境温度は、A/Dコンバータ47に入力され、デジタル信号に変換された後、信号処理部48に入力される。
【0020】
そして、信号処理部48は、A/Dコンバータ44を介して中心電極の信号を受け取ると、その中心電極の信号からコンデンサ31の静電容量を算出する。そして、コンデンサ31の静電容量に基づいて、ノズル15とワークWとの間のギャップ値を算出し、D/Aコンバータ49を介して外部に出力することができる。なお、信号処理部48は、ノズル15とワークWとの間のギャップ値を算出するに当たって、プラズマインピーダンス32の値を算出し、そのプラズマインピーダンス32の影響を除去することができる。また、この際に、温度検出部46にて検出された環境温度に基づいて、ノズル15とワークWとの間のギャップ値を補正することができる。また、信号処理部48は、ノズル15とワークWとの間のギャップ値を算出すると、そのギャップ値に基づいてノズル15とワークWとが接触しているかどうかを判定する。そして、ノズル15とワークWとが接触している場合、信号処理部48は、切り替え部45をオフさせることにより、バッファ43の出力とケーブルCbの外被Cb2との間を遮断状態にする。
【0021】
なお、信号処理部48は、ノズル15とワークWとが接触していると判定した場合、バッファ43の出力とケーブルCbの外被Cb2との間を断続的に導通状態にすることにより、ケーブルCbの外被Cb2およびガード電極14に中心電極の信号を印加させながら、ノズル15とワークWとの間のギャップ値を算出することができる。
【0022】
図3は、図2のギャップ検出装置におけるガード電極へのループの開閉処理を示すフローチャート、図4は、図2のギャップ検出装置におけるガード電極へのループの開閉処理を示すタイミングチャートである。図3において、図2の信号処理部48は、中心電極の信号を受け取ると、今回サンプリングした中心電極の分電圧からノズル15とワークWとの間のギャップ値を計算する(ステップS1)。そして、ノズル15とワークWとの間のギャップ値に基づいて、ノズル15とワークWとが接触しているかどうかを判断し(ステップS2)、ノズル15とワークWとが接触していない場合は、ステップS1に戻り、ギャップ値の計算を繰り返す。
【0023】
一方、ノズル15とワークWとが接触している場合、信号処理部48は、切り替え部45をオフさせることにより、バッファ43の出力とケーブルCbの外被Cb2との間を遮断状態に移行させる(ガード電極14へのループオープン)(ステップS3)。そして、信号処理部48は、所定時間だけ待機した後(ステップS4)、切り替え部45をオンさせることにより、バッファ43の出力とケーブルCbの外被Cb2との間を導通状態に移行させ(ガード電極14へのループクローズ)(ステップS5)、ステップS1に戻ることで、今回サンプリングした中心電極の分電圧からギャップ値の計算を行う。
【0024】
なお、図4に示すように、図3のステップS4の待機時間TSは、例えば、数10msecに設定することができ、ループオープン中にループクローズを断続的に繰り返すことにより、継続的な信号発振を防止しつつ、ノズル15とワークWとの接触が継続しているかどうかを判断することが可能となる。そして、ノズル15とワークWとの接触が解除された場合には、ループクローズ状態に移行させることで、ギャップ値の計算を連続して行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上のように本発明に係るギャップ検出装置は、レーザ加工機とギャップ検出装置とを接続するケーブルの浮遊容量をキャンセルさせながら、ノズルとワークの間の静電容量に基づいて、レーザ加工機のノズルとワークの間のギャップ値を算出する方法に適している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るギャップ検出装置の実施の形態1が適用されるレーザ加工機の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るギャップ検出装置の実施の形態2の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図2のギャップ検出装置におけるガード電極へのループの開閉処理を示すフローチャートである。
【図4】図2のギャップ検出装置におけるガード電極へのループの開閉処理を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0027】
10 レーザ加工機
11 レーザ発振器
12 加工機コントローラ
13 加工ヘッド
14 ガード電極
15 ノズル
20、40 ギャップ検出装置
21 静電容量測定部
22 ギャップ算出部
23 接触判定部
24 追従信号印加部
31 コンデンサ
31a、31b 電極
32 プラズマインピーダンス
41 測定信号発生部
42 リファレンス素子
43 バッファ
44、47 A/Dコンバータ
45 切り替え部
46 温度検出部
48 信号処理部
49 D/Aコンバータ
W ワーク
Cb ケーブル
Cb1 芯線
Cb2 外被

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工機の加工ヘッドに設けられたノズル側の中心電極とケーブルを介して接続されることで、前記ノズルとワークとの間のギャップを検出するギャップ検出装置において、
前記中心電極と前記ワークとの間に形成される静電容量を測定する静電容量測定部と、
前記静電容量測定部にて測定された静電容量に基づいて、前記ノズルとワークとの間のギャップを算出するギャップ算出部と、
前記ノズルと前記ワークとの接触状態を判定する接触判定部と、
前記ノズルと前記ワークとの接触状態の判定結果に基づいて、前記中心電極の電位に追従する追従信号を前記ケーブルの外被に印加する追従信号印加部とを備えることを特徴とするギャップ検出装置。
【請求項2】
前記追従信号印加部は、前記ケーブルの外被を介し、前記中心電極の近傍に絶縁配置されたガード電極に前記追従信号を印加することを特徴とする請求項1に記載のギャップ検出装置。
【請求項3】
前記追従信号印加部は、前記ケーブルの芯線の電圧と同相かつ同振幅の電圧を前記ケーブルの外被に印加することを特徴とする請求項1または2に記載のギャップ検出装置。
【請求項4】
前記接触判定部は、前記追従信号を前記ケーブルの外被に断続的に印加させながら、前記ノズルと前記ワークとの接触状態を判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のギャップ検出装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のギャップ検出装置と、
レーザ光を出射するノズルおよび前記ノズルの近傍に絶縁配置されたガード電極を移動自在に保持する加工ヘッドと、
前記ノズルから出射されるレーザ光を発生させるレーザ発振器と、
前記ギャップ検出装置にて検出されたギャップの検出結果に基づいて、前記ノズルの位置を制御する加工機コントローラとを備えることを特徴とするレーザ加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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