説明

ギヤボックスのシミュレーション用テストベンチ

本発明は、ギヤボックスの性能を再現するテストベンチに関する。本発明は、リニアモータ(12)、モータ(12)の線形運動をギヤシフトシャフト(5)の回転運動への転換に使用できる回転ボールジョイント(14)、及びギヤシフトシャフト(5)に印加される力の測定に使用できる力センサ(17)を備える少なくとも1つのギヤシフトモジュール(2)から構成される。本発明の特定の実施形態では、本テストベンチは、垂直線形選択モジュール又は水平選択モジュールを更に備える。利用されるこのモジュールは、ギヤボックスを再現するように、変換及び選択位置の関数として力をシミュレートするのに使用できる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明の技術分野は、車両のギヤボックス等のギヤボックスのシミュレーションを行うテストベンチの分野である。
テストベンチが利用される分野では、ギヤボックスのシミュレーションが必要となる場合があり、これはギヤボックスを外部から制御する場合に使用されるテストベンチの場合特に当てはまる。
【0002】
現在、空気圧縮ラムを用いたテストベンチが、ギヤボックスのシミュレーションを行うテストベンチの分野で既知である。
このような装置は、空気圧縮ラムの使用により、精度不足と、応答性及びダイナミックレンジの点で性能に限界があるという大きな欠点を有する。
【0003】
本発明は、実際のギヤボックスに相当する負荷を生成することを可能にし、且つパラメータ化されるギヤボックスの種類に応じて動作の様々な面を再現する、ギヤボックスのシミュレーションを行うテストベンチを提案することにより、上記の欠点を克服する。
【0004】
本発明の主題は、ギヤボックスの動作を再現する種類のテストベンチであって、リニアモータ、モータの線形運動をギヤシフトシャフトの回転運動に転換することができるボールジョイント、及びギヤシフトシャフトに印加される負荷を測定できる負荷センサから構成される少なくとも1つのギヤシフトモジュールを備えることを特徴とする。
本発明の1つの特徴によれば、リニアモータは水平な軸に沿ってスライドウェイ上を並進運動し、ギヤシフトシャフトは実質的に垂直な軸を中心に回転する。
【0005】
本発明の別の特徴によれば、本テストベンチは、リニアモータ、モータの線形運動を選択シャフトの回転運動に転換できるボールジョイント、及び選択シャフトに印加される負荷を測定できる負荷センサから構成される水平な選択モジュールを備える。
本発明の別の特徴によれば、本リニアモータは水平な軸に沿ってスライドウェイ上を運動し、選択シャフトは実質的に垂直な軸を中心に回転する。
【0006】
本発明の別の特徴によれば、本テストベンチは、リニアモータ、伸長/圧縮負荷センサ及び補償手段から構成される垂直な選択モジュールを備える。
本発明の別の特徴によれば、本リニアモータが垂直な軸に沿ってスライドウェイ上を運動することにより、ギヤシフトシャフトがその実質的に垂直な軸に沿って並進運動する。
【0007】
本発明による装置の1つの利点は、異なる種類のギヤボックスの動作を再現できることである。
本発明による装置の別の利点は、外部からの制御を起動するときの速さ及び精度にある。
【0008】
本発明による装置の別の利点は、互いに独立の、容易に運動させることができるモジュールを使用する事実にある。
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、添付図面を参照して説明する後述の詳細な説明により更に明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明が製造を提案するテストベンチは、ギヤボックスのシミュレーションを行うテストベンチである。具体的には、このテストベンチは、異なる種類のギヤボックスに応じた様々な動作の態様を再現しなければならない。このテストベンチは特にギヤボックスの外部からの制御を目的とする。
従来使用されるギヤボックスは、自動ボックス又は手動ボックスの形態である。
【0010】
図1aは、本発明によるシミュレーションが行われる第1の種類のギヤボックスを表わす。この種類のギヤボックスは自動ギヤボックスの種類40である。機械的に制御された自動ギヤボックス40は、従来、縦方向に伸びる部分41に沿って動くレバー8を備えた外部制御7によって作動される。従って、レバー8には、モードP、R、N又はDを選択することが可能であり、手動でギヤチェンジすることができる(M+又はM−)。この場合、ギヤシフトモジュールだけが使用される。この種類のボックスでは、実質的に垂直な軸を中心とするトルクに対応するギヤシフトモードのシミュレーションだけを、レバー8に接続するギヤシフトシャフト5を作動するギヤシフトモジュール2を使用して行えばよい。
【0011】
図1bは、本発明によるシミュレーションが行われる第2の種類のギヤボックスを表わす。この種類のギヤボックスは、ギヤ選択とギヤシフトとを組み合わせを有する手動ギヤボックスの種類42である。ギヤ選択とギヤシフトとの組み合わせを有する手動ギヤボックスは、従来、「H」の文字を2つ組み合わせた形状のゲートに沿って動くレバーにより実行される外部制御7により作動される。ゲートの水平なバー44は、ニュートラルの位置に対応する(係合しているギヤがない)。ギヤシフトのためのギヤ選択を行うレバー8の動きは、ゲートの水平な軸44に沿った水平な選択運動と、ゲートの3つの垂直な軸41a、41b、41cのうちの1つに沿ったギヤシフト運動とに分類される。レバー8の下端は、相互接続モジュール47を作動させる2つのケーブル45及び46に接続されている。水平な軸44に沿った動きは第1のケーブル45を駆動し、ギヤシフトは第2のケーブル46を駆動する。相互接続モジュール47(従来は連結ロッドの組み合わせの形態で具体化されている)は、これら2つのケーブル45、46の動きを垂直方向の負荷と垂直な軸を中心とするトルクとに変換することができる。
従って、ギヤボックスの制御は、垂直な選択の制御とギヤシフト制御とを組み合わせた制御である。これら2つの制御は、単一の構成要素5(例えばケーブル又はシャフト)によってボックスに伝えられる。この種類のギヤボックスでは、実質的に垂直な軸に沿った負荷に対応する垂直な選択モード、及び実質的に垂直な軸を中心とするトルクに対応するギヤシフトモードを、同じシャフト5に作用する垂直な選択モジュール4及びギヤシフトモジュール2を使用してシミュレーションする必要がある。
【0012】
図1cは、ギヤ選択とギヤシフトが分離している手動ギヤボックスの種類の、第3の種類のギヤボックス43を表わす。ギヤの選択とシフトが別々に行われる手動ギヤボックスは、従来、「H」の文字を2つ組み合わせた形状のゲートに沿って動くレバーによって実行される外部制御7により作動される。ゲートの水平なバー44はニュートラルな位置に対応する(係合しているギヤがない)。ギヤシフトのためのギヤ選択を行うレバー8の動きは、ゲートの水平な軸44に沿った水平な選択運動と、ゲートの3つの垂直な軸41a、41b、41cのうちの1つに沿ったギヤシフト運動とに分類される。従って、ギヤボックスの制御は、水平方向の選択の制御とギヤシフト制御とを組み合わせた制御である。これらの制御は、シャフト5及び6に作用する2つの別個のケーブル48、49によって、別々にギヤボックスに伝えられる。この種類のギヤボックスでは、実質的に水平な軸を中心とするトルクに対応する水平な選択モード、及び実質的に垂直な軸を中心とするトルクに対応するギヤシフトモードを、2つの別個の構成要素(シャフト又はケーブル)に作用する水平な選択モジュール3及びギヤシフトモジュール2を使用してシミュレーションする必要がある。
本発明によるテストベンチにより、これら3つの種類のギヤボックスを、ギヤシフトモジュール2、水平な選択モジュール3及び垂直な選択モジュール4を使用してシミュレーションすることができる。
【0013】
図2は、ギヤシフトモジュール2の一実施形態の斜視図である。この実施形態のギヤシフトモジュール2は、テストベンチのフレームに固定されたプレート10(詳細には示さない)、プレート10に固定された水平なスライドウェイ11、スライドウェイ11に沿って水平軸上を運動できるリニアモータ12、及びボールジョイント13によりアーム15を支持するサポート13から構成されている。アーム15はコントロールシャフト5の軸Zに実質的に垂直な軸によって旋回する旋回接続によりコントロールシャフト5に固定されている。プレート10に固定されたガイド装置18は、例えば転がり軸受けにより、コントロールシャフト5がその実質的に垂直な軸Zを中心に回転するのをガイドする。ギヤシフトモジュール2はまた、ギヤシフトシャフト5に印加される負荷の測定を可能にする負荷センサ17を備えている。例えば、アームサポート13とボールジョイント14の間に配置される伸長/圧縮センサ17を使用することができる。
このようにギヤシフトモジュール2を実現することにより、モータ12の水平方向の線形運動をシャフト5の回転運動に変換することが可能となる。
【0014】
水平なリニアモータを使用することは、このようなモータが、モータの自重により生じる力によって乱れることがなく、非常に高速で正確に動作することができ、よってギヤシフトシャフト5の高速で精密な回転運動が可能になるので特に有利である。このような精度は、ラムを用いて実現される回転モータ又は装置を使用した場合には達成できない。
【0015】
図3は、水平選択モジュール3の一実施形態の斜視図である。この実施形態の水平選択モジュール3は、テストベンチのフレームに固定されたユニット20、ユニット20に固定されたスライドウェイ21、スライドウェイ21に沿って水平軸上を運動できるリニアモータ22、及びボールジョイント24によって実質的に垂直なアーム25を支持するアームサポート23から構成されている。アーム25は水平選択ギヤ選択シャフト6に固定されている。ユニット20に固定された転がり軸受け28は、ギヤ選択シャフト6がその軸を中心に自由に回転できるように、ギヤ選択シャフト6を支持している。水平選択モジュール3はまた、選択シャフト6に印加される負荷の測定を可能にする負荷センサ27を備えている。例えば、アームサポート23とボールジョイント24の間に配置される伸長/圧縮センサ27を使用することができる。
水平選択モジュール3をこのように実現することにより、モータ22の水平な線形運動をギヤ選択シャフト6の水平軸を中心とする回転運動に変換することができる。
【0016】
図4は、垂直な選択モジュール4の一実施形態を示す側面図である。この実施形態の垂直選択モジュール4は、テストベンチのフレームに固定されたユニット30、ユニット30に固定されたスライドウェイ31、スライドウェイ31に沿って垂直軸上を運動できる垂直リニアモータ32、及びボールジョイント34により実質的に垂直な接続ロッド35を支持する接続ロッドサポート33から構成されている。接続ロッド35はコントロールシャフト5に固定されている。ユニット30に固定されたスリーブ38は、シャフト5がその軸Zを中心に自由に回転し、且つ軸Zに沿って並進運動できるように、シャフト5を支持する。例えばサポート33とボールジョイント34の間に配置される、伸長/圧縮負荷センサ37により、ギヤシフトシャフト5に印加される垂直方向の負荷を測定することができる。
垂直選択モジュール4をこのように実現することにより、モータ32の垂直な線形運動をシャフト5に伝えると同時に、補償手段となる接続ロッド35を用いて全ての差異を補償することができる。この例示的な実施形態はまた、ギヤシフトモジュール2のアーム15を示している。この特定の実施形態のギヤシフトシャフト5は、プレート10に固定されたガイド装置18(これら2つの構成要素は図2に示す)によってガイドされず、ユニット30に固定されたスリーブ38によってガイドされる。スリーブ38は、その実質的に垂直な軸Zに沿った並進運動及び軸Zを中心とした回転に関してコントロールシャフト5をガイドする。
【0017】
本発明のこの実施形態の垂直選択モジュール4は、ギヤ選択とギヤシフトが組み合わされたギヤボックスのシミュレーションを行う状況において、ギヤシフトモジュール2と組み合わせて使用される。従って、これら2つのモジュール2及び4により、コントロールシャフト5にはその軸Zに沿った負荷及び軸Zを中心とするトルクをかけることができる。
有利には、本モジュール2、3及び4は互いに独立であり、よって再現されるギヤボックスの種類に応じてテストベンチ上に配置したり、テストベンチから除去したりすることができる。使用されるこれらのモジュールにより、ギヤボックスの動作を表すように、ギヤ選択及びギヤシフトの間の位置の関数として負荷のシミュレーションを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】a〜cは、本発明によるテストベンチの用例を示す機能的線図である。
【図2】ギヤシフトモジュール2の一実施形態の斜視図である。
【図3】水平選択モジュール3の一実施形態の斜視図である。
【図4】垂直選択モジュール4の一実施形態の側面図である。
【図1a】

【図1b】

【図1c】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤボックスの動作を再現する種類のテストベンチ(1)であって、リニアモータ(12)、該モータ(12)の線形運動をギヤシフトシャフト(5)の回転運動に変換することを可能にするボールジョイント(14)、及び該ギヤシフトシャフト(5)に印加される負荷の測定を可能にする負荷センサ(17)から構成される少なくとも1つのギヤシフトモジュール(2)を備えることを特徴とするテストベンチ。
【請求項2】
該リニアモータ(12)がスライドウェイ(11)上を水平軸に沿って並進運動できること、及び該ギヤシフトシャフト(5)が実質的に垂直な軸(Z)を中心に旋回することを特徴とする、請求項1に記載のテストベンチ。
【請求項3】
リニアモータ(22)、該モータ(22)の線形運動を選択シャフト(6)の回転運動に変換することを可能にするボールジョイント(24)、及び該選択シャフト(6)に印加される負荷の測定を可能にする負荷センサ(27)から構成される水平選択モジュール(3)を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のテストベンチ。
【請求項4】
該リニアモータ(22)がスライドウェイ(21)上を水平軸に沿って並進運動できること、及び該選択シャフト(6)がその実質的に水平な軸を中心に旋回することを特徴とする、請求項3に記載のテストベンチ。
【請求項5】
リニアモータ(32)、伸長/圧縮負荷センサ(37)及び補償手段(35)から構成される垂直選択モジュール(4)を備えることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のテストベンチ。
【請求項6】
該リニアモータ(32)がスライドウェイ(31)上を垂直軸に沿って並進運動することにより、該ギヤシフトシャフト(5)をその実質的に垂直な軸に沿って並進運動させることができることを特徴とする、請求項5に記載のテストベンチ。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−532848(P2008−532848A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501382(P2008−501382)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050213
【国際公開番号】WO2006/097655
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)
【Fターム(参考)】