説明

クッション材

【課題】耐久性が高く、かつ体臭等の臭気の付着・堆積を効果的に抑制できる枕などのクッション材の提供。
【解決手段】枕1は、通気性袋2中に、エチレンビニルアルコール共重合樹脂の粒状体からなる芯材3を封入してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクッション材に関する。本発明において「クッション材」とは、寝具用、家具用、車両内装用などのクッション材であって、例えば、枕、敷布団、掛け布団、座布団、クッション、ソファー、ベッド、マット、椅子、ぬいぐるみなど、通気性袋中に芯材が封入されたものを総称していう。
【背景技術】
【0002】
従来、枕等のクッション材に封入される芯材として、綿、小豆、蕎麦殻、もみ殻等の天然物や、合成繊維、パイプ状の合成樹脂が一般に使用されている。このようなクッション材では、睡眠中の発汗等によって、体臭等の臭気が付着・堆積することが多い。そこで、特許文献1には、そば殻等の天然の充填材と炭とを混合することで、臭気を炭で吸着することが記載されている。また、特許文献2には、繊維を主たる構成材料としてなる寝装類において、光触媒剤を繊維表面に付着させることにより、臭気成分を光触媒剤で分解することが記載されている。
【特許文献1】特開2003−135237号公報
【特許文献2】特開2001−238777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の方法では、繰り返し洗濯することにより炭が劣化するので、耐久性の低下が認められる。また、特許文献2の方法では、耐久性はあるものの、芯材への臭気の付着・堆積は避けられず、結果的に大きな消臭・防臭効果は得られない。
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、耐久性が高く、かつ体臭等の臭気の付着・堆積を効果的に抑制できるクッション材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、エチレンビニルアルコール共重合樹脂が臭気の吸着量が少なく、かつ耐久性が高いことを見出し、さらに鋭意研究の結果、本発明を完成させるに至った。また、芯材をパイプ状にすることによって、通気性や感触が良好となり、枕として特に好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明のクッション材は、通気性袋中に、エチレンビニルアルコール共重合樹脂の粒状体からなる芯材を封入してなることを特徴とし、好ましくは、前記粒状体がパイプ状である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、臭気の吸着量が少ないエチレンビニルアルコール共重合樹脂をクッション材用芯材として用いるので、体臭等の臭気の吸着を抑えることができる。また、エチレンビニルアルコール共重合樹脂は耐久性が高いので、洗濯を繰り返しても、吸着抑制効果が長期に渡って持続する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態では、クッション材としての枕を例にして説明するが、本発明は敷布団、掛け布団、座布団、クッション、ソファー、ベッド、マット、椅子、ぬいぐるみなどの他のクッション材についても適用することができる。
【0009】
図1は、本実施形態の枕の一部断面を模式的に示す部分断面図である。本実施形態の枕1は、通気性袋2と、通気性袋2内に封入された芯材3とを有する。通気性袋2として、綿、麻等の天然繊維またはポリエステル、ナイロン等の合成繊維からなる織布、不織布またはネット類を使用することができる。
【0010】
芯材3は、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(以下、EVOHともいう。)の粒状体、言い換えれば酢酸ビニルとエチレンとの共重合体をケン化(加水分解)したケン化物の粒状体である。用いるEVOHは特に制限されないが、典型的には、エチレン含有率が通常10〜60mol%、好ましくは20〜60mol%、ケン化度が90〜100mol%、好ましくは99〜100mol%、重合度が通常200〜700、メルトフローレート(210℃、荷重2160g)が通常3〜45g/10min、好ましくは3〜20g/10minの特性を有するEVOHが用いられる。EVOHは、他のモノマーが少量だけ共重合した共重合品でも良く、ケン化後に官能基を置換した後変性物でも良い。芯材3は、EVOHのほかに、成形助剤(滑剤や熱安定剤など)、抗菌剤、防カビ剤、香料を含んでいても良い。
【0011】
芯材3の形状は、粒状であれば特に限定されないが、典型的には、パイプ状やビーズ状、俵状、円筒状あるいは円柱状などの形状が挙げられる。本発明におけるパイプ状は、断面(長手方向に対してほぼ直交する方向に切断したときの断面、以下同じ)が正円のリング状である場合のみならず、断面が楕円のリング状である場合も包含する。通気性袋2内に封入される芯材3は、それぞれが同じ形状のものでも良く、二種以上の異なる形状のものでも良い。例えば、断面が正円のパイプ状、断面が楕円のパイプ状、ビーズ状の3種の形状の芯材3を組み合わせて用いてもよい。粒状の芯材3の大きさは、その形状における最大径が通常1〜20mm、好ましくは1〜10mmである。このとき、最大径とは、芯材3を平面投影機により投影した場合に得られる影の最大長さをいう。
【0012】
芯材3の形状は、上記の中でも、感触に優れるパイプ状が好ましい。パイプ状とすることにより、中実の円柱状のものよりもクッション性が付与され、パイプ状の芯材3を封入したクッション材、特に枕は、頭部を載せた際に良好な感触を得ることができる。また、中空により通気性が良好となり、後頭部の蒸れが改善される。
【0013】
パイプ状の芯材3の大きさは、特に限定されないが、使用時の良好な感触を得るには、長さが通常3〜8mm、特に4〜6mm、外径が通常2〜8mm、特に3〜5mm、内径が通常1〜7mm、特に2〜4.5mm、さらに2.5〜4.5mm、肉厚が通常0.1〜5mm、特に0.3〜5mm、さらに0.2〜3mm、さらに特に0.5〜3mmが好ましい。
【0014】
なお、パイプ状芯材3の長さ/外径の値は、通常0.5〜3.5、好ましくは1〜3である。長さ/外径の値とは、芯材50個について測定した場合の長さ/外径の平均値をいう。
【0015】
また、パイプ状芯材3の硬さも特に限定されないが、島津製作所製”オートグラフAGS-H”(23℃、50%RH:試験速度10mm/min)にて径方向に圧縮して測定した場合、通常0.05〜0.2MPa、好ましくは0.05〜0.15MPaである。
【0016】
EVOHの製造方法は特に限定されず、例えば公知の方法を採用することができる。また、EVOHを含む粒状体(芯材3)の製造方法も特に限定されず、例えば公知の溶融成形法が採用される。このとき、成形温度は通常190〜230℃、樹脂圧力は通常60〜80kg/cm2である。芯材3が例えばパイプ状の場合は、溶融押出成形により製造することができ、例えば、溶融樹脂をパイプ状に押し出して、この成形物を長手方向に対してほぼ直交する方向に一定間隔で切断して、パイプ状芯材3を製造することができる。
【0017】
本発明のクッション材は、通気性袋の伸縮性、芯材の封入率(充填率)を変更することによって、クッションの柔らかさやホールド性などが変化するので、最終製品の種類や目的に応じて通気性袋の伸縮性や芯材の封入率を選択することが望ましい。充填率は通常3〜10個/cm3、好ましくは5〜10個/cm3、特に好ましくは4〜8個/cm3、さらに好ましくは6〜8個/cm3である。
【0018】
本発明のクッション材は、通常、上記EVOH芯材を主体とするものであるが、エチレンビニルアルコール共重合樹脂以外の樹脂(例えばポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等)からなる粒状体や天然物(綿、小豆、蕎麦殻、もみ殻等)が芯材として封入されていても良い。EVOH芯材以外の他の芯材の混入率は、本発明の効果を損なわない程度であれば特に限定するものではないが、通常30重量%以下、特に20重量%以下が好ましい。
【0019】
本発明のクッション材は、通常、敷布団、掛け布団、座布団、クッション、ソファー、ベッド、マット、椅子、ぬいぐるみなどに適用することができ、特に、毎日使用し臭気の吸着が多い枕に適用するのが好ましい。
【0020】
本実施形態の枕1によれば、芯材3として臭気の吸着量が少ないEVOHが使用され、またEVOHは耐久性が高いから、洗濯が繰り返されても、吸着抑制効果が長期に渡って持続する。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
綿布製の袋(容積14,000ml)に、長さ6mm、外径4.14mm、内径3.74mmのパイプ状に形成された、EVOH(エチレン含量:44mol%、ケン化度99.5モル%、メルトフローレート:3.5g/10min(210℃、荷重2160g))の芯材1,000g(見かけの体積10,500ml)を充填し、密封した枕(充填率6〜8個/cm3)を4個製作した。これらを4名の被験者が使用したところ、いずれも硬さは良好であり、枕として適したものであった。
【0023】
芯材0.75gをサンプリングし、これを22mlの密閉型ガラス容器に、cis−6−ノネナール1μlとともに密封した。HSオートサンプラー(PERKIN ELMER社製;HS40XL)を用いて40℃で30分保温した後、上記密封型ガラス容器中へHeガスを圧力25psi、加圧時間4分、注入時間0.03分にて注入し、引き抜き時間0.2分にて得られた気体をガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)にかけて、密封型ガラス容器中のcis−6−ノネナールの存在量を測定した。なお、cis−6−ノネナールの吸着率は、ブランク実験の面積値に対する割合から求めた。
【0024】
<ガスクロマトグラフ質量分析計条件>
ガスクロマトグラフ(”6890N”Agilent Technologies社製)
カラム :DB−1MS
カラム長 :25m
内径 :0.2mm
液層 :0.3μm(ポリジメチルシロキサン)
注入口温度 :150℃
初期温度 :40℃(ホールド5分)
昇温温度 :10℃/分
到達温度 :250℃(ホールド5分)
【0025】
質量分析計(”5973”Agilent Technologies社製)
トランスファーライン
イオン源 :230℃
4重極 :150℃
【0026】
また、芯材(サンプル数10個)の硬さを、島津製作所製”オートグラフAGS-H”(23℃、50%RH:試験速度10mm/min)にて圧縮したときの平均値として求めた。得られた結果を表1に示す。
【0027】
(比較例)
公知のポリエチレンを用いて、実施例1の芯材と同じサイズの芯材を製造し、実施例1と同様にして、密封型ガラス容器中のcis−6−ノネナールの存在量および芯材の硬さを測定した。得られた結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
上記結果から、実施例1の芯材は、体温付近の温度において、加齢臭の指標となるcis−6−ノネナールの吸着量が従来のポリエチレン製のものに対し大幅に低いことが判る。したがって、本発明の芯材を通気性袋の中に封入した枕等のクッション材は、体臭等の臭気が付着・堆積し難く、その効果が長期に渡って持続する。
【0030】
(実施例2)
綿布製の袋(容積24,381ml)に、長さ5mm、外径4.50mm、内径4.28mmのパイプ状に形成された、EVOH(エチレン含量:44mol%、ケン化度99.5モル%、メルトフローレート:3.5g/10min(210℃、荷重2160g))の芯材1,100g(見かけの体積9700ml)を充填し、密封した枕(充填率4〜8個/cm3)を製作した。なお、実施例1と同様にして、芯材(サンプル数10個)の硬さを求めたところ、0.18MPaであった。
【0031】
<寝心地評価>
そば殻、 ウレタンフォーム、 綿、 羽毛、 PE製パイプ等の従来の芯材を封入してなる枕を普段使用している65名の被験者に対して、上記で製作した枕の1ケ月間使用を依頼し、普段使用している枕と比較した寝心地評価のモニターを行なった。寝心地を下記の基準で評価し、その結果を表2に示す。
【0032】
普段使用している枕よりも寝心地が良い・・・◎
普段使用している枕と同等である(本実施例の枕を継続的に使用しても良い)・・・○
普段使用している枕の方が寝心地が良い・・・×
【0033】
【表2】

【0034】
寝心地評価のモニター結果から、被験者の80%(52名)がEVOHを芯材とする本実施例の枕の寝心地が普段使用している枕と同等もしくはより良好であると評価し、特に被験者の約42%(27名)が本実施例の枕の寝心地が普段使用している枕よりも良好であると評価したことが分かる。
【0035】
実施例1,2の結果から、EVOHを芯材とする枕は従来の枕よりも臭気が付着・堆積し難く、かつ硬さが枕に適したものであることから、総合評価としての寝心地評価においても従来の枕よりも優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態の枕の一部断面を模式的に示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 枕
2 通気性袋
3 芯材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性袋中に、エチレンビニルアルコール共重合樹脂の粒状体からなる芯材を封入してなることを特徴とするクッション材。

【図1】
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