説明

クマリン誘導体、この化合物を含有する液晶組成物およびこの液晶組成物を含有する液晶表示素子

【課題】
化合物に必要な一般的物性、小さな粘度、適切な光学異方性、適切な誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物およびそれを含有する液晶組成物、液晶表示素子を提供する。
【解決手段】 一般式(1)


で表される化合物およびそれを含有する液晶組成物、液晶表示素子。(式中、Rは水素または炭素数1〜20のアルキル基;A1、A2、およびA3は互いに独立して1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン等であり;Xは水素、フッ素、塩素等であり;Gは酸素または硫黄;Z1、Z2、およびZ3は独立して単結合、−(CH22−、−CH2O−等;nおよびmは独立して0、1、または2である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子に関する。さらに詳しくはクマリン誘導体、これを含有し、そしてネマチック相を有する液晶組成物およびこの組成物を含有する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において、液晶の動作モードに基づいた分類は、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、BTN(Bistable twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(optically compensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)などである。素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PM(passive matrix)はスタティック(static)とマルチプレックス(multiplex)などに分類され、AMはTFT(thin film transistor)、MIM(metal insulator metal)などに分類される。
【0003】
これらの素子は、適切な物性を有する組成物を含有する。素子の特性を向上させるには、この組成物が適切な物性を有するのが好ましい。組成物の成分である化合物に必要な一般的物性は、次のとおりである。(1)化学的な安定性と物理的な安定性。(2)高い透明点。透明点は、液晶相−等方相の転移温度である。(3)液晶相の低い下限温度。液晶相は、ネマチック相、スメクチック相などを意味する。(4)小さな粘度。(5)適切な光学異方性。(6)適切な誘電率異方性。大きな誘電率異方性を有する化合物は、大きな粘度を有することが多い。(7)大きな比抵抗。
【0004】
組成物は多くの化合物を混合して調製される。したがって、化合物は他の化合物とよく混和するのが好ましい。素子を氷点下の温度で使うこともあるので、低い温度で良好な相溶性を有する化合物が好ましい。高い透明点または液晶相の低い下限温度を有する化合物は、組成物におけるネマチック相の広い温度範囲に寄与する。好ましい組成物は、小さな粘度と素子のモードに適した光学異方性を有する。化合物の大きな誘電率異方性は、組成物の低いしきい値電圧に寄与する。このような組成物によって、使用できる温度範囲が広い、応答時間が短い、コントラスト比が大きい、駆動電圧が小さい、消費電力が小さい、電圧保持率が大きいなどの特性を有する素子を得ることができる。
【0005】
従来、クマリン誘導体を液晶表示素子として応用した例はほとんど知られていない。これらの化合物の液晶としての特性、物性等については全く明らかでない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の1つは、例えば、化合物に必要な一般的物性、小さな粘度、適切な光学異方性、適切な誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物を提供することである。本発明の他の目的は、例えば、この化合物を含有し、ネマチック相の広い温度範囲、小さな粘度、適切な光学異方性、および低いしきい値電圧を有する液晶組成物を提供することである。本発明の他の目的は、例えば、これらの液晶組成物を含有し、短い応答時間、小さな消費電力、大きなコントラスト、および高い電圧保持率を有する液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような化合物、液晶組成物、および液晶組成物を含有する液晶表示素子等を提供する。また、以下に、化合物(1)における末端基、環および結合基に関して好ましい例も述べる。
【0008】
[1] 一般式(1)
【化10】

で表される化合物
(式中、Rは水素または炭素数1〜20のアルキル基であり、このアルキル基において任意の−CH2−は、−O−、−S−、−CO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよく;
1、A2、およびA3は互いに独立して1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、3−フルオロピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイルまたはピリダジン−2,5−ジイルであり、任意の−CH2−は、−O−、−S−または−CO−で置き換えられてもよく、任意の−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素、塩素、−CN、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fで置き換えられてもよく;
Xは水素、フッ素、塩素、−CN、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fであり;
Gは酸素または硫黄であり;
1、Z2、およびZ3は独立して単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−(CH24−、−O(CH22O−、−(CH22CF2O−、−(CH22OCF2−、−CF2O(CH22−、−OCF2(CH22−、−CH=CH−CH2O−、または−OCH2−CH=CH−であり;
nおよびmは独立して0、1、または2である。)
【0009】
[2] 一般式(1)
【化11】

で表される化合物。
(式中、Rは水素または炭素数1〜15のアルキル、炭素数1〜15のアルコキシ、炭素数2〜15のアルケニル、または炭素数2〜15のアルキニルであり;
1、A2およびA3は互いに独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、フッ素化1,4−フェニレンまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;
Xはフッ素または水素であり;
Gは酸素または硫黄であり;
1,Z2およびZ3は互いに独立して単結合、−(CH22−、−CH2O−、または−OCH2−であり;
nおよびmは互いに独立して0または1である。)
[3] Z1,Z2およびZ3が単結合である、[2]に記載の化合物。
[4] A1、A2およびA3が独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、またはフッ素化1,4−フェニレンである、[2]または「3」のいずれかに記載の化合物。
[5] A1、A2およびA3のいずれか1つがフッ素化1,4−フェニレンである、[2]〜[4]のいずれか1つに記載の化合物。
[6] A1、A2およびA3のいずれか1つが1,4−シクロへキシレンである、[2]〜[4]のいずれか1つに記載の化合物。
[7] Rが水素または炭素数1〜15のアルキルである、[2]〜[5]のいずれかに記載の化合物。
[8] Rが水素または炭素数2〜15のアルケニルである、[2]〜[7]のいずれかに記載の化合物。
[9] Z1,Z2およびZ3のいずれか1つが−CH2O−または−OCH2−である、[2]に記載の化合物。
[10] A1、A2およびA3が独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、またはフッ素化1,4−フェニレンである、[9]に記載の化合物。
[11] Rが水素または炭素数1〜15のアルキルである、[9]または[10]に記載の化合物。
[12] Z1,Z2およびZ3のいずれか1つが−CH2CH2−である、[2]に記載の化合物。
[13] A1、A2およびA3が独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、またはフッ素化1,4−フェニレンである、[12]に記載の化合物。
[14] A1、A2およびA3のいずれか1つがフッ素化1,4−フェニレンである、[12]または[13]に記載の化合物。
[15] Rが水素または炭素数1〜15のアルキルである、[12]〜[14]のいずれかに記載の化合物。
[16] Rが水素または炭素数2〜15のアルケニルである、[12]〜[15]のいずれかに記載の化合物。
【0010】
[17] 式(1a)〜式(1m)のいずれか1つで表される、[2]に記載の化合物。
【化12】


(式中、Rは炭素数1〜15のアルキル、炭素数1〜15のアルコキシ、または炭素数2〜15のアルケニルであり、Y1〜Y5は独立して水素またはフッ素である。)
[18] 一般式(1)で示される化合物:
【化13】

Rは水素または炭素数1〜15のアルキル、炭素数1〜15のアルコキシ、または炭素数2〜15のアルケニルであり;
1、A2およびA3は互いに独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、フッ素化1,4−フェニレンまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;
Xはフッ素または水素であり;
Gは硫黄であり;
1,Z2およびZ3は互いに独立して単結合、−(CH22−、−CH2O−、または−OCH2−であり;
nおよびmは互いに独立して0または1である。
【0011】
[19] [1]〜「18」のいずれか1つに記載の化合物を少なくとも一つ含有し、少なくとも2つ以上の化合物からなる液晶組成物。
[20] 式(2)、式(3)および式(4)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、[19]に記載の液晶組成物。
【化14】

(式中、R1は炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−もしくは−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;X1はフッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2または−OCF2CHFCF3であり;環Bおよび環Dは独立して1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり、環Eは1,4−シクロヘキシレンまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;Z4およびZ5は独立して−(CH22−、−(CH24−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−または単結合であり;L1およびL2は独立して水素またはフッ素である。)
[21] 式(5)および(6)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する、[20]に記載の液晶組成物。
【化15】

(式中、R2およびR3は独立して炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;X2は−CNまたは−C≡C−CNであり;環Gは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;環Jは1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイルまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;環Kは1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Z6は−(CH22−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、または単結合であり;L3、L4およびL5は独立して水素またはフッ素であり;b、cおよびdは独立して0または1である。)
[22] 式(7)、式(8)、式(9)、式(10)および式(11)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する[20]に記載の液晶組成物。
【化16】

(式中、R4は炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;R5はフッ素または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;環Mおよび環Pは独立して1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレンまたはデカヒドロ−2,6−ナフチレンであり;Z7およびZ8は独立して−(CH22−、−COO−または単結合であり;L6およびL7は独立して水素またはフッ素であって、L6とL7の少なくとも1つはフッ素である。)
[23] 式(12)、式(13)および式(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する[19]〜[22]のいずれかに記載の液晶組成物。
【化17】

(式中、R6およびR7は独立して炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;環Q、環Tおよび環Uは独立して1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2、5−ジイル、または任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;Z9およびZ10は独立して−C≡C−、−COO−、−(CH22−、−CH=CH−、または単結合である。)
[24] 式(5)および式(6)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、[20]に記載の液晶組成物。
【化18】

(式中、R2およびR3は独立して炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;X2は−CNまたは−C≡C−CNであり;環Gは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;環Jは1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイルまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;環Kは1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Z6は−(CH22−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、または単結合であり;L3、L4およびL5は独立して水素またはフッ素であり;b、cおよびdは独立して0または1である。)
[25] 少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有する、[19]〜[24]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[26] [19]〜[25]のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【0012】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶性化合物は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶性化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と略すことがある。液晶表示素子は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。ネマチック相の上限温度はネマチック相−等方相の相転移温度であり、そして単に上限温度と略すことがある。ネマチック相の下限温度を単に下限温度と略すことがある。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と略すことがある。この略記は式(2)などで表される化合物にも適用することがある。式(2)から式(14)において、六角形で囲んだB、D、Eなどの記号はそれぞれ環B、環D、環Eなどに対応する。百分率で表した化合物の量は組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。以下に本発明をさらに説明する。
【0013】
「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意であることを示すが、個数が0である場合を含まない。任意のAがB、CまたはDで置き換えられてもよいという表現は、任意のAがBで置き換えられる場合、任意のAがCで置き換えられる場合および任意のAがDで置き換えられる場合に加えて、複数のAがB〜Dの少なくとも2つで置き換えられる場合をも含むことを意味する。例えば、任意の−CH2−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルなどが含まれる。なお、本発明においては、連続する2つの−CH2−が−O−または−S−で置き換えられて、−O−O−、−O−S−または−S−S−になることは好ましくない。そして、アルキルにおける末端の−CH2−が−O−または−S−で置き換えられることも好ましくない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の化合物は、例えば、化合物に必要な一般的物性、熱、光などに対する安定性、適切な光学異方性、適切な誘電率異方性、他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する。本発明の液晶組成物は、例えば、これらの化合物の少なくとも一つを含有し、そしてネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、低いしきい値電圧を有する。また、本発明の液晶表示素子は、例えば、この組成物を含有し、そして使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きなコントラスト比、低い駆動電圧を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
1−1 本発明の化合物 本発明の第1の態様は、式(1)で表される化合物に関する。
【化19】

【0016】
式(1)においてRは水素または炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15のアルキル基であり、このアルキル基において任意の−CH2−は、−O−、−S−、−CO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよい。例えば、CH3(CH23−において任意の−CH2−を−O−、−S−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えた基の例は、CH3(CH22O−、CH3−O−(CH22−、CH3−O−CH2−O−、CH3(CH22S−、CH3−S−(CH22−、CH3−S−CH2−S−、CH2=CH−(CH23−、CH3−CH=CH−(CH22−、CH3−CH=CH−CH2O−、CH3−CH≡CH−(CH22−などである。
【0017】
このようなRの例は、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アルキルチオ、アルキルチオアルコキシ、アシル、アシルアルキル、アシルオキシ、アシルオキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルキニル、アルキニルオキシ等である。これらの基において分岐よりも直鎖の方が好ましい。Rが分岐の基であっても光学活性であるときは好ましい。アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH3、−CH=CHC25、−CH=CHC37、−CH=CHC49、−C24CH=CHCH3、および−C24CH=CHC25のような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。−CH2CH=CHCH3、−CH2CH=CHC25、および−CH2CH=CHC37のような偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。
アルキルとしては、直鎖、分枝鎖、環状のいずれでもよく、アルキルの具体的な例は、−CH3、−C25、−C37、−C49、−C511、−C613、−C715、−C817、−C919および−C1021である。アルコキシの具体的な例は、−OCH3、−OC25、−OC37、−OC49、−OC511、−OC613、および−OC715である。アルコキシアルキルとしては、直鎖でも分枝鎖でもよく、アルコキシアルキルの具体的な例は、−CH2OCH3、−CH2OC25、−CH2OC37、−(CH22OCH3、−(CH22OC25、−(CH22OC37、−(CH23OCH3、−(CH24OCH3、および−(CH25OCH3である。アルケニルとしては、直鎖でも分枝鎖でもよく、アルケニルの具体的な例は、−CH=CH2、−CH=CHCH3、−CH2CH=CH2、−CH=CHC25、−CH2CH=CHCH3、−(CH22CH=CH2、−CH=CHC37、−CH2CH=CHC25、−(CH22CH=CHCH3、および−(CH23CH=CH2である。アルケニルオキシとしては、直鎖でも分枝鎖でもよく、アルケニルオキシの具体的な例は、−OCH2CH=CH2、−OCH2CH=CHCH3、および−OCH2CH=CHC25である。アルキニルとしては、直鎖でも分枝鎖でもよく、アルキニルの具体的な例は、−C≡CCH3および−C≡CC37である。
【0018】
Rは、炭素数1〜15のアルキル、炭素数1〜15のアルコキシ、炭素数2〜15のアルコキシアルキル、炭素数2〜15のアルケニルが好ましく、−CH3、−C25、−C37、−C49、−C511、−C613、−OCH3、−OC25、−OC37、−CH2OCH3、−CH=CH2、−CH=CHCH3、−(CH22CH=CH2、および−(CH22CH=CHCH3であることがさらに好ましい。
【0019】
式(1)におけるA1、A2、およびA3は、互いに独立して1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、3−フルオロピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイルまたはピリダジン−2,5−ジイルであり、任意の−CH2−は、−O−、−S−または−CO−で置き換えられてもよく、任意の−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素、塩素、−CN、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fで置き換えられてもよい。
【0020】
具体的には、A1、A2、およびA3の好ましい例は、下記の式(15−1)〜式(15−22)である。さらに好ましい例は、式(15−1)〜式(15−5)、および式(15−14)〜式(15−18)である。
【化20】

【0021】
上記の定義による範囲に含まれるA1、A2、およびA3において、任意の水素はフッ素、塩素、−CN、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fで置き換えられてもよい。任意の水素がフッ素、塩素、−CN、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fで置き換えられたA1、A2、およびA3の例は、下記の式(16−1)〜式(16−37)である。さらに好ましい例は、式(16−1)〜式(16−4)、式(16−6)、式(16−10)〜式(16−14)、および式(16−35)である。
【化21】

【0022】
1、A2またはA3の好ましい例は、1,4−シクロヘキシレン(15−1)、1,4−シクロヘキセニレン(15−14)、(15−15)、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル(15−4)、(15−5)、1,4−フェニレン(15−16)、2−フルオロ−1,4−フェニレン(16−1)(16−2)、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン(16−3)、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン(16−5)、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン(16−4)(16−6)、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン(16−7)(16−8)、ピリジン−2,5−ジイル(15−17)(15−21)、3−フルオロピリジン−2,5−ジイル16−36)(16−37)、ピリミジン−2,5−ジイル(15−18)(15−22)およびピリダジン−2,5−ジイル(15−20)である。1,4−シクロヘキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はシスよりもトランスが好ましい。1,3−ジオキサン−2,5−ジイルは、4,6−ジオキサン−2,5−ジイルと構造的に同一であるので、後者は例示しなかった。この規則は、2−フルオロ−1,4−フェニレンと2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンの関係などにも適用される。
1、A2またはA3の最も好ましい例は、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、およびピリミジン−2,5−ジイルである。
【0023】
式(1)におけるZ1、Z2、およびZ3は独立して単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−(CH24−、−O(CH22O−、−(CH22CF2O−、−(CH22OCF2−、−CF2O(CH22−、−OCF2(CH22−、−CH=CH−CH2O−、または−OCH2−CH=CH−である。また、Z1、Z2またはZ3は、単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−および−CH=CH−がさらに好ましい。
これらの結合において、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH=CH−CH2O−、および−OCH2−CH=CH−のような結合基の二重結合に関する立体配置はシスよりもトランスが好ましい。
【0024】
式(1)におけるXは水素、フッ素、塩素、−CN、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fである。これらの中でも、水素、フッ素が好ましい。
【0025】
式(1)におけるGは酸素または硫黄である。また、nおよびmは独立して0、1、または2である。
【0026】
1−2 本発明の化合物の性質およびその調整方法
本発明の化合物(1)をさらに詳細に説明する。
なお、本明細書において、縮合環であるクマリン環は一環と数える。化合物(1)はクマリン環を有する二環、三環および四環の化合物である。この化合物は、素子が通常使用される条件下において物理的および化学的に極めて安定であり、そして他の液晶性化合物との相溶性がある。この化合物を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で安定である。この組成物を低い温度で保管しても、この化合物が結晶(またはスメクチック相)として析出することがない。この化合物は、化合物に必要な一般的物性、適切な光学異方性、そして適切な誘電率異方性を有する。また、化合物(1)は、誘電率異方性が正に大きい。大きな誘電率異方性を有する化合物は、組成物のしきい値電圧を下げるための成分として有用である。
【0027】
化合物(1)のR、A1、A2、およびA3、Z1、Z2、およびZ3を適切に選択することによって、光学異方性、誘電率異方性などの物性を任意に調整することが可能である。R、A1、A2、A3、Z1、Z2、およびZ3の種類が、化合物(1)の物性に与える影響を以下に説明する。
【0028】
式(1)におけるRが直鎖であるときは液晶相の温度範囲が広くそして粘度が小さい。Rが分岐鎖であるときは他の液晶性化合物との相溶性がよい。Rが光学活性基である化合物は、キラルドーパントとして有用である。この化合物を組成物に添加することによって、素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(Reverse twisted domain)を防止することができる。Rが光学活性基でない化合物は組成物の成分として有用である。Rがアルケニルであるとき、好ましい立体配置は二重結合の位置に依存する。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327に詳細な説明がある。
【0029】
式(1)におけるA1、A2およびA3が、任意の水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイルまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであるときは誘電率異方性が大きい。A1、A2およびA3が、任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、またはピリダジン−3,6−ジイルであるときは光学異方性が大きい。A1、A2およびA3が、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレンまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであるときは光学異方性が小さい。
【0030】
少なくとも二つの環が1,4−シクロヘキシレンであるときは、上限温度が高く、光学異方性が小さく、そして粘度が小さい。少なくとも一つのA1、A2およびA3が1,4−フェニレンのときは、光学異方性が比較的大きく、そして配向秩序パラメーター(orientational order parameter)が大きい。少なくとも二つのA1、A2およびA3が1,4−フェニレンであるときは、光学異方性が大きく、液晶相の温度範囲が広く、そして上限温度が高い。
【0031】
1、Z2、またはZ3が単結合、−(CH22−、−CH2O−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−CF=CF−、または−(CH24−であるときは粘度が小さい。Z1、Z2、またはZ3が単結合、−(CH22−、−OCF2−、−CF2O−、または−CH=CH−であるときは粘度がより小さい。Z1、Z2、またはZ3が−CH=CH−であるときは液晶相の温度範囲が広く、そして弾性定数比K33/K11(K33:ベンド弾性定数、K11:スプレイ弾性定数)が大きい。Z1、Z2、またはZ3が−C≡C−のときは光学異方性が大きい。Z1、Z2、またはZ3が単結合、−(CH22−、−CH2O−、−CF2O−、−OCF2−、−(CH24−であるときは化学的に安定であって劣化をおこしにくい。
【0032】
化合物(1)が二環または三環を有するときは粘度が小さい。化合物(1)が三環または四環を有するときは上限温度が高い。以上のように、R、A1、A2、A3、Z1、Z2、およびZ3の種類、環の数を適当に選択することにより目的の物性を有する化合物を得ることができる。したがって、化合物(1)はPC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VAなどの素子に用いられる組成物の成分として有用である。
【0033】
1−3 化合物(1)の具体例
化合物(1)の好ましい例は、上記式(1−a)〜(1−m)である。より具体的な例は、下記の化合物(1−1)〜(1−24)である。
【化22】

【化23】

(上記化合物(1−1)〜(1−24)の式中、Rは水素または炭素数1〜15のアルキル、炭素数1〜15のアルコキシ、または炭素数2〜15のアルケニルである。)
【0034】
1−4 化合物(1)の合成
次に、化合物(1)の合成について説明する。化合物(1)は有機合成化学における手法を適切に組み合わせることにより合成できる。出発物に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、オーガニックシンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載されている。
【0035】
1−4−1 結合基Z1、Z2またはZ3を生成する方法
化合物(1)における結合基Z1、Z2またはZ3を生成する方法の一例は下記のスキームの通りである。このスキームにおいて、MSG1またはMSG2は少なくとも一つの環を有する1価の有機基である。スキームで用いた複数のMSG1(またはMSG2)は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)から(1K)は化合物(1)に相当する。

【化24】

【化25】

【化26】

【0036】
次に、化合物(1)におけるZ1、Z2またはZ3における、各種の結合の生成方法について、以下の(I)〜(XI)項で説明する。
【0037】
(I)単結合の生成
アリールホウ酸(21)と公知の方法で合成される化合物(22)とを、炭酸塩水溶液とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成される化合物(23)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で化合物(22)を反応させることによっても合成される。
【0038】
(II)−COO−と−OCO−の生成
化合物(23)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸(24)を得る。化合物(24)と、公知の方法で合成されるフェノール(25)とをDDC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて−COO−を有する化合物(1B)を合成する。この方法によって−OCO−を有する化合物も合成する。
【0039】
(III)−CF2O−と−OCF2−の生成
化合物(1B)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理して化合物(26)を得る。化合物(26)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、−CF2O−を有する化合物(1C)を合成する。M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照。化合物(1C)は化合物(26)を(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(DAST)でフッ素化しても合成される。W. H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照。この方法によって−OCF2−を有する化合物も合成する。Peer. Kirsch et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1480.に記載の方法によってこれらの結合基を生成させることも可能である。
【0040】
(IV)−CH=CH−の生成
化合物(23)をn−ブチルリチウムで処理した後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのホルムアミドと反応させてアルデヒド(28)を得る。公知の方法で合成されるホスホニウム塩(27)をカリウムtert−ブトキシドのような塩基で処理して発生させたリンイリドを、アルデヒド(28)に反応させて化合物(1D)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0041】
(V)−(CH22−の生成
化合物(1D)をパラジウム炭素のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1E)を合成する。
【0042】
(VI)−(CH24−の生成
ホスホニウム塩(27)の代わりにホスホニウム塩(29)を用い、項(IV)の方法に従って−(CH22−CH=CH−を有する化合物を得る。これを接触水素化して化合物(1F)を合成する。
【0043】
(VII)−C≡C−の生成
ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下で、化合物(23)に2−メチル−3−ブチン−2−オールを反応させたのち、塩基性条件下で脱保護して化合物(30)を得る。ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(30)を化合物(22)と反応させて、化合物(1G)を合成する。
【0044】
(VIII)−CF=CF−の生成
化合物(23)をn−ブチルリチウムで処理したあと、テトラフルオロエチレンを反応させて化合物(31)を得る。化合物(22)をn−ブチルリチウムで処理したあと化合物(31)と反応させて化合物(1H)を合成する。
【0045】
(IX)−CH2O−または−OCH2−の生成
化合物(28)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元して化合物(32)を得る。これを臭化水素酸などでハロゲン化して化合物(33)を得る。炭酸カリウムなどの存在下で、化合物(33)を化合物(25)と反応させて化合物(1J)を合成する。
【0046】
(X)−(CH23O−または−O(CH23−の生成
化合物(32)の代わりに化合物(34)を用いて、項(IX)の方法に従って化合物(1K)を合成する。
【0047】
(XI)−(CF22−の生成
J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 5414.に記載された方法に従い、ジケトン(−COCO−)をフッ化水素触媒の存在下、四フッ化硫黄でフッ素化して−(CF22−を有する化合物を得る。
【0048】
1−4−2 式(1)で表される化合物を合成する方法
次に式(1)で表される化合物を合成する方法の具体例を以下のスキーム1〜6に示す。また、Xがフッ素である中間体を合成する方法の具体例を以下のスキーム7に示す。
以下の各スキーム1から7における化合物式中Rは水素または炭素数1〜20のアルキル基であり、このアルキル基において任意の−CH2−は、−O−、−S−、−CO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよく;A1、A2、およびA3は互いに独立して1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、3−フルオロピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイルまたはピリダジン−2,5−ジイルであり、任意の−CH2−は、−O−、−S−または−CO−で置き換えられてもよく、任意の−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素、塩素、−CN、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fで置き換えられてもよく;Gは酸素または硫黄であり;Z1、Z2、およびZ3は独立して単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−(CH24−、−O(CH22O−、−(CH22CF2O−、−(CH22OCF2−、−CF2O(CH22−、−OCF2(CH22−、−CH=CH−CH2O−、または−OCH2−CH=CH−であり;nおよびmは独立して0、1、または2である。
また、X、R’、R”の意味は図中に示した。
【0049】
1−4−2−1 式(1)で表されるクマリン誘導体のスキーム1に基づく合成方法
式(1)においてGが酸素であるクマリン誘導体は、フェノール骨格を有する合成中間体(36)を出発物質とした以下のスキーム1に基づいて合成することができる。
【化27】

上記スキーム1において、出発物質であるフェノール(36)類は市販されているか、DE4137401A1などに記載の方法によって合成される。(36)はトリフルオロ酢酸等の溶媒中、ヘキサメチレンテトラミンを作用させることによって容易に化合物(39)へと変換できる。この場合の反応温度は室温から溶媒の沸点程度が好ましい。得られた(39)は酢酸セシウム存在下に無水酢酸と反応させることで式(1)で表されるクマリン誘導体へと変換される。この反応において無水酢酸は溶媒としても使用される。この反応の好ましい反応温度は室温から溶媒の還流する領域であればよい。
【0050】
1−4−2−2 式(1)で表されるクマリン誘導体のスキーム2に基づく合成方法
式(1)においてGが酸素であるクマリン誘導体は、フェノール骨格を有する合成中間体(36)を出発物質とした以下のスキーム1に基づいて合成することができる。

【化28】

上記スキーム2において、化合物(37)は、化合物(36)とハロゲン化物(R’X)と塩基を作用させることによって得られる。R’は保護基として使用するため後の操作で適宜除去できるものを選択して使用する。保護基の具体的種類、反応条件等はProtective Groups in Organic Synthesis 3rd ed., T.W. Green and P.G.M.Wuts, John Wiley & Sons, New York, NY, (1999)などの文献に記載の方法から適宜選択して用いる。臭素化物(38)は化合物(37)と臭素との反応によって合成する。これらの反応は好ましくは無溶媒または塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒中、−80℃から溶媒の沸点までの間の温度で行う。得られた化合物(38)をTHF等の非プロトン性極性溶媒中、ブチルリチウム、水素化カリウム等の塩基で処理した後、ジメチルホルムアミド、N−ホルミルピペリジン等のホルミル化剤と反応させることにより(39)のベンズアルデヒド誘導体を得る。あるいは化合物(39)は化合物(37)をTHF、ジエチルエーテル等の溶媒中、−100℃から室温の領域でブチルリチウム等の塩基を用いて処理した後に−100℃から室温の領域でジメチルホルムアミド、N−ホルミルピペリジン等のホルミル化剤と反応させることによって化合物(38)を経ずに直接合成することもできる。得られた化合物(39)はB.E.Maryanoff et al., Chem. Rev.,89,863(1989)などの文献に記載の方法に従ってTHF、ジエチルエーテル等の溶媒中でトリエチルホスホノアセテートおよび水素化ナトリウム、カリウムtert−ブトキシド、水酸化カルシウム等の試薬と反応させることによって桂皮酸エステル誘導体(40)に変換できる。化合物(40)はスキームの初期に導入された保護機R‘を除去することにより化合物(41)へと変換される。この場合の除去条件はProtective Groups in Organic Synthesis 3rd ed., T.W. Green and P.G.M.Wuts, John Wiley & Sons, New York, NY, (1999)等に従う。化合物(41)はパラトルエンスルホン酸、硫酸等の酸触媒存在下、トルエン等の非極性溶媒中、加熱環流することにより環化し目的とする化合物(1)へ変換される。
【0051】
1−4−2−3 式(1)で表される化合物のスキーム3に基づく合成方法
式(1)で表される化合物においてnが0、mが0でZ1が単結合であり、A1が1,4−フェニレン;nが1、mが0でZ2が単結合でA2が1,4−フェニレン;nが1、mが1でZ3が単結合でありA2が1,4−フェニレンである化合物はスキーム3−1によっても合成できる。
【化29】

具体的には、R’がハロゲンである化合物(43)は、クマリンを直接単体ハロゲンまたはハロゲン化剤と反応させることによって合成する。これらの反応は、好ましくは無溶媒または塩化メチレン、またはクロロホルムなどの溶媒中、−75℃から溶媒の沸点までの間の温度で行う。R’がトリフルオロメタンスルホニル、またはトルエンスルホニルである化合物(43)は、後述する化合物(42)をトリフルオロメタンスルホニルクロリド、無水トリフルオロメタンスルホン酸またはトルエンスルホニルクロリド等のスルホニル化剤と反応させることによって合成する。これらの反応は、好ましくは無溶媒または塩化メチレン、またはクロロホルムなどの溶媒中、−75℃から溶媒の沸点までの間の温度で行う。化合物(1)は、化合物(43)をホウ酸エステル化合物(44)と反応させることによって合成する。これらの反応は、好ましくはトルエン等の芳香族系炭化水素、エタノール等のアルコール系炭化水素、またはエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系炭化水素、またはこれらと水との混合液などの溶媒中、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの塩基の存在下、金属触媒を用いて室温から溶媒の沸点までの間の温度で行う。金属触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウム−カーボンなどが用いられる。
【0052】
また、化合物(1)は、上記スキーム3−2に基づいて次のような方法でも合成できる。すなわち化合物(45)を削り状マグネシウム、リチウム金属、あるいは亜鉛末等と反応させるか、THF等の溶媒中ブチルリチウム等で処理した後、ハロゲン化亜鉛溶液を加えて化合物(46)の溶液を調整する。この化合物(46)の溶液をTHF,エーテル、ジオキサン等の溶媒中、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムまたはジクロロジフェニルホスフィノフェロセンパラジウム等の金属触媒存在下に化合物(47)と反応させることによっても合成できる。
【0053】
1−4−2−4 式(1)で表される化合物のスキーム4に基づく合成方法
式(1)で表される化合物においてnが0、mが0でZ1が−(CH22−、;nが1、mが0でZ2が−(CH22−;nが1、mが1でZ3が−(CH22−である化合物はスキーム4−1によって合成できる。
【化30】

化合物(49)は、化合物(46)をアルデヒド(48)と反応させることによって合成する。これらの反応は、好ましくはテトラヒドロフランなどの溶媒中、−100℃から溶媒の沸点までの間の温度で行う。化合物(50)は、化合物(49)をp−トルエンスルホン酸、硫酸等の酸を用いて脱水することによって合成する。これらの反応は、好ましくはトルエンなどの溶媒中、室温から溶媒の沸点までの間の温度で行う。化合物(1)は、化合物(48)をラネーニッケル、パラジウム−カーボン等の触媒を用いて水素添加することによって合成する。これらの反応は、好ましくはメタノール、エタノールなどのアルコール系炭化水素、トルエンなどの芳香族系炭化水素、ヘプタンなどの脂肪族系炭化水素またはこれらの混合液などの溶媒中、室温から溶媒の沸点までの間の温度で行う。水素圧は常圧〜10気圧が好ましい。
あるいは化合物(1)は化合物(49)をトリフルオロ酢酸溶媒中または塩化メチレン中、四塩化チタン存在下にトリエチルシラン等のヒドロシランを作用させることによっても合成できる。この反応において反応温度は−50℃から室温程度が好ましい。
【0054】
また、 式(1)で表されるクマリン誘導体においてnが0、mが0でZ1が単結合であり、A1が1,4−シクロヘキシレン;nが1、mが0でZ2が単結合でA2が1,4−シクロヘキシレン;nが1、mが1でZ3が単結合でありA2が1,4−シクロヘキシレンである化合物はスキーム4−2によって合成できる。
化合物(52)は、化合物(46)とシクロヘキサノン(51)と反応させることによって合成する。これらの反応は、好ましくはテトラヒドロフランなどの溶媒中、−100℃から溶媒の沸点までの間の温度で行う。化合物(52)は、化合物(51)をp−トルエンスルホン酸、硫酸等の酸を用いて脱水することによって合成する。これらの反応は、好ましくはトルエンなどの溶媒中、室温から溶媒の沸点までの間の温度で行う。化合物(1)は、化合物(53)をラネーニッケル、パラジウム−カーボン等の触媒を用いて水素添加することによって合成する。これらの反応は、好ましくはメタノール、エタノールなどのアルコール系炭化水素、トルエンなどの芳香族系炭化水素、ヘプタンなどの脂肪族系炭化水素またはこれらの混合液などの溶媒中、室温から溶媒の沸点までの間の温度で行う。水素圧は常圧〜10気圧が好ましい。水素添加後の化合物(1)はシス体とトランス体の異性体混合物として得られるが、再結晶によりトランス体を主成分として得ることができる。あるいは化合物(1)は化合物(52)をトリフルオロ酢酸溶媒または塩化メチレン中、四塩化チタン存在下にトリエチルシラン等のヒドロシランを作用させることによっても合成できる。この反応において反応温度は−50℃から室温程度が好ましい。
【0055】
1−4−2−5 式(1)で表される化合物のスキーム5に基づく合成方法
式(1)で表される化合物においてRがアルケニルである化合物(IV)はスキーム5によって合成できる。

【化31】

既述のいずれかの方法で合成される化合物(54)を酸触媒存在下にケタールを開裂して化合物(55)を得る。化合物(55)をメトキシメチリデントリフェニルホスホランと反応させてメチルビニルエーテルとした後に希塩酸等の酸性条件下に脱保護して化合物(55)より1炭素伸長したアルデヒド(56)を得る。この方法を必要回数繰り返し、所望の炭素鎖を有する合成中間体である化合物(56)とした後、所望の鎖長を有するアルキリデントリフェニルホスホランと反応させることによって化合物(1)を得る。これらの反応は、好ましくはテトラヒドロフランなどの溶媒中、−75℃から溶媒の沸点までの間の温度で行う。化合物(1)は、通常立体異性体の混合物として得られるが、必要に応じてベンゼンスルフィン酸、ヨウ素等を用いて異性化を行うか再結晶によって所望の立体のみを単離することもできる。または化合物(55)を、式(57)で示される炭素鎖伸長の為のホスホニウム塩とカリウム−tert-ブトキシド、水素化ナトリウム、ブチルリチウム等の塩基と反応させて発生するアルキリデンホスホランと反応させて生じる中間体を水素化し、酸で処理してケタールを開裂させることによって合成される化合物(56)にアルキルトリフェニルホスホニウム塩から発生されるアルキリデンホスホランを反応させることによっても製造できる。この場合も化合物(1)は、通常立体異性体の混合物として得られるが、必要に応じてベンゼンスルフィン酸、ヨウ素等を用いて異性化を行うか再結晶によって所望の立体のみを単離することもできる。
【0056】
1−4−2−6 式(1)で表される化合物のスキーム6に基づく合成方法
式(1)で表される化合物においてGが硫黄である化合物、Xがフッ素である化合物は、それぞれスキーム6−1、スキーム6−2によって合成できる。
【化32】

【0057】
Gが硫黄である化合物(1)は、スキーム6−1に示すように、Gが酸素である化合物(1)をローソン試薬等を用いて酸素を硫黄に変換することによって得られる。本反応はトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素等の溶媒中室温から溶媒の沸点の領域で行うことが好ましい。必要な場合には封管、オートクレーブ等の加圧装置中で行うこともできる。
【0058】
Xがフッ素である化合物(1)は、スキーム6−2に示すように、Xが水素である化合物(1)をMEC試薬、(PhSO2)NF等のフッ素化剤を用いて直接フッ素化することによって合成できる。この反応は塩化メチレン、THF等の溶媒存在下に−100℃から溶媒の沸点の領域で行われる。
【0059】
1−4−2−7 Xがフッ素である合成中間体である化合物(47)のスキーム7に基づく合成方法

【化33】

すなわち市販の3−フルオロ−4−ブロモフェノールを塩化メチレン等の溶媒中、トリアルキルシリルクロリド等の保護化試薬とイミダゾール等の適当な塩基存在下に水酸基をトリアルキルシリル基等で保護して化合物(58)とし、これをブチルリチウム等で金属試薬に変換した後、ホウ酸トリアルキル等を用いてホウ酸エステル誘導体(59)とする、この反応はTHF、エーテル等の溶媒中−100℃から溶媒の沸点領域にて行われる。得られた化合物(59)は塩基性条件下に過酸化水素と反応させて化合物(60)へ変換する。この反応は通常、水酸化ナトリウム水溶液中に実施される。得られた化合物(60)はProtective Groups in Organic Synthesis 3rd ed., T.W. Green and P.G.M.Wuts, John Wiley & Sons, New York, NY, (1999)に記載の適当な保護機、例えばベンジル基、ベンゾイル基等で保護して化合物(61)とし、さらに無溶媒または塩化メチレン等の溶媒中臭素をもちいて臭素化して化合物(62)へと変換する。化合物(62)はDMF、NMP等の溶媒中、シアン化銅等のシアノ化剤を用いてシアノ化して化合物(63)へと変換した後、DIBAL等の還元剤を用いて還元してアルデヒド(64)とし、さらにアルコキシカルボニルメチルトリフェニルホスホニウムブロミドと水素化ナトリウム等の塩基を用いて桂皮酸エステル(65)へと変換する。化合物(67)はR’を残したままR”を除去できる条件を適用させて反応させる。たとえばR’がトリメチルシリル基であり、R”がベンジル基の場合水素添加条件にてベンジル基だけを除去することができる。化合物(68)は化合物(67)をトルエンスルホン酸等の酸で処理することにより得られる。化合物(42)は化合物(68)のR’基をProtective Groups in Organic Synthesis 3rd ed., T.W. Green and P.G.M.Wuts, John Wiley & Sons, New York, NY, (1999)に記載の方法にて除去することによって得られる。
【0060】
2 本発明の組成物
本発明の第2の態様は、式(1)で表される化合物を含む組成物であり、好ましくは、液晶材料に用いることのできる液晶組成物である。この組成物の成分は化合物(1)から選ばれた複数の化合物のみであってもよいが、化合物(1)から選択された少なくとも一つの化合物を1〜99%の割合で含有することが好ましい。この組成物は化合物(1)以外に、さらに化合物(2)〜(14)の群から選択された成分を含有することが好ましい。本発明の組成物を調製するときには、化合物(1)の誘電率異方性を考慮して成分を選択することが好ましい。
【0061】
誘電率異方性が正で比較的大きい化合物(1)を含有する好ましい組成物は化合物(2)、(3)および(4)の群から選択された少なくとも一つの化合物を含有する。別の好ましい組成物は、化合物(5)および(6)の群から選択された少なくとも一つの化合物を含有する。別の好ましい組成物は、このような二つの群のそれぞれから選択された少なくとも二つの化合物を含有する。これらの組成物は、液晶相の温度範囲、粘度、光学異方性、誘電率異方性、しきい値電圧などを調整する目的で、化合物(12)、(13)および(14)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。これらの組成物は、さらに物性を調整する目的で、化合物(7)〜(11)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。また、これらの組成物は、AM−TN素子、STN素子などに適合させる目的で、その他の液晶性化合物、添加物などの化合物をさらに含有してもよい。
【0062】
誘電率異方性が比較的小さい化合物(1)を含有する好ましい組成物は化合物(2)、(3)および(4)の群から選択された少なくとも一つの化合物を含有する。別の好ましい組成物は、化合物(5)および(6)の群から選択された少なくとも一つの化合物を含有する。別の好ましい組成物は、このような二つの群のそれぞれから選択された少なくとも二つの化合物を含有する。これらの組成物は、液晶相の温度範囲、粘度、光学異方性、誘電率異方性、しきい値電圧などを調整する目的で、化合物(12)、(13)および(14)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。この組成物は、さらに物性を調整する目的で、化合物(7)〜(11)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。また、この組成物は、AM−TN素子、STN素子などに適合させる目的で、その他の液晶性化合物、添加物などの化合物をさらに含有してもよい。
別の好ましい組成物は、化合物(7)〜(11)の群から選択された少なくとも一つの化合物を含有する。この組成物は、化合物(12)、(13)および(14)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。この組成物は、物性をさらに調整する目的で、化合物(2)〜(6)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。この組成物は、VA素子などに適合させる目的で、その他の液晶性化合物、添加物などの化合物をさらに含有してもよい。
【0063】
化合物(2)、(3)および(4)は、誘電率異方性が正で比較的大きいので、主としてAM−TN素子用の組成物に用いられる。この組成物において、化合物(2)、(3)および(4)の量の合計が1〜99%であることが好ましく、10〜97%であることがさらに好ましい。また、当該範囲が40〜95%であることが特に好ましい。この組成物に化合物(12)、(13)または(14)をさらに添加する場合、これらの化合物(12)、(13)または(14)の好ましい添加量は60%以下であり、40%以下がさらに好ましい。
【0064】
化合物(5)および(6)は、誘電率異方性が正で非常に大きいので、主としてSTN素子用の組成物に用いられる。この組成物において、化合物(5)および(6)の量の合計が1〜99%であることが好ましく、10〜97%であることがさらに好ましい。また、当該範囲が40〜95%であることが特に好ましい。この組成物に化合物(12)、(13)または(14)をさらに添加する場合、この化合物の好ましい添加量は60%以下であり、40%以下がさらに好ましい。
【0065】
化合物(7)、(8)、(9)、(10)、および(11)は、誘電率異方性が負であるので、主としてVA素子用の組成物に用いられる。これらの化合物(7)、(8)、(9)、(10)、および(11)の合計が80%以下であることが好ましく、40〜80%であることがさらに好ましい。この組成物に化合物(12)、(13)または(14)をさらに添加する場合、これらの化合物(12)、(13)または(14)の好ましい添加量は60%以下であり、40%以下がさらに好ましい。
【0066】
化合物(12)、(13)および(14)の誘電率異方性は比較的小さい。また、化合物(12)は粘度または光学異方性を調整する目的で主に使用される。化合物(13)および(14)は上限温度を上げて液晶相の温度範囲を広げる、または光学異方性を調整する目的で主に使用される。
化合物(12)、(13)および(14)の量を増加させると組成物のしきい値電圧が高くなり、粘度が小さくなる。したがって、組成物のしきい値電圧の要求値を満たすかぎり多量に使用してもよい。
【0067】
化合物(2)〜(14)における好ましい化合物の具体例は、それぞれ化合物(2−1)〜(2−9)、化合物(3−1)〜(3−97)、化合物(4−1)〜(4−33)、化合物(5−1)〜(5−56)、化合物(6−1)〜(6−3)、化合物(7−1)〜(7−4)、化合物(8−1)〜(8−6)、化合物(9−1)〜(9−4)、化合物(10−1)、化合物(11−1)、化合物(12−1)〜(12−11)、化合物(13−1)〜(13−21)、および化合物(14−1)〜(14−6)である。これらの化合物において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、X1、およびX2の記号の意味は、上述した各化合物(2)〜(14)におけるこれらの記号の意味と同一である。
【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【化45】

【化46】

【化47】

【化48】

【化49】

【化50】

【0068】
化合物(1)を含有する本発明の組成物は公知の方法によって調製される。例えば、所定の成分である化合物を混合し、加熱することによって互いに溶解させて調整できる。また、組成物に適当な添加物を加えて組成物の物性を調整してもよい。このような添加物は当業者によく知られている。メロシアニン、スチリル、アゾ、アゾメチン、アゾキシ、キノフタロン、アントラキノン、テトラジンなどの化合物である二色性色素を添加してGH素子用の組成物を調製してもよい。一方、液晶のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与える目的でキラルドーパントが添加される。キラルドーパントの例は上記の光学活性化合物(Op−1)〜(Op−13)である。
【0069】
本発明の組成物にキラルドーパントを添加してねじれのピッチを調整することができる。TN素子およびTN−TFT素子用の好ましいピッチは40〜200μmの範囲である。STN素子用の好ましいピッチは6〜20μmの範囲である。BTN素子用の好ましいピッチは1.5〜4μmの範囲である。これらの各種の素子の好ましいピッチ範囲に適用できるように、キラルドーパントを添加できる。一般的には、PC素子の用途では本発明の組成物にはキラルドーパントを比較的多量に添加する。また、ピッチの温度依存性を調整する目的で少なくとも二つのキラルドーパントを添加してもよい。
【0070】
本発明の組成物は、PC、TN、STN、BTN,ECB、OCB、IPS、VAなどの素子に使用できる。これらの素子は駆動方式がPMであってもよいし、またはAMであってもよい。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)素子、例えばPN(polymer network)素子にも使用できる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によって制限されない。No.1などの化合物番号は、後の表で示した化合物のそれと対応する。また、得られた化合物は核磁気共鳴スペクトル、質量スペクトルなどで構造を同定した。

[実施例1]6−(4−ペンチルシクロヘキシル)クロマン(No.14)の合成
4−(4−ペンチルシクロヘキシル)フェノール(2.8g)、ヘキサメチレンテトラミン(1.6g)をトリフルオロ酢酸(2.5g)に溶解し、15時間還流した。氷水(80ml)に投じ、溶液が塩基性を示すまで炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。目的物をトルエンで抽出後、炭酸ナトリウム水溶液、水、食塩水で洗浄し有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過により除去し、溶媒を留去して得られた残渣を、シリカゲルカラムを用いて(展開溶媒はクロロホルム)生成し2−ヒドロキシ−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)ベンズアルデヒド(1.9g)を得た。
【0072】
得られた化合物の物理化学性状を以下に示す。

m.p.32℃
IR(KBr)1664cm-1
1H−NMR(270MHz、CDCl3、ppm)δ0.90(3H,t,J=6.9Hz)、0.98−1.49(13H,m),1.86−1.91(4H,m),2.46(1H,m),6.91(1H,d,J=8.2Hz)、7.36−7.41(2H,m)、9.87(1H,s),10.84(1H,s)
【0073】
次に、上述の2−ヒドロキシ−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)ベンズアルデヒド(1.4g)と酢酸セシウム(1.1g)を無水酢酸(1.5g)に溶解し、8時間還流した。反応終了後、反応液に適量の水(100ml)を加えた。この溶液をトルエンで抽出し、有機層を水洗、炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で順次洗浄した後無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムロマトグラフィーを用いて精製したのちエタノールから再結晶して6−(4−ペンチルシクロヘキシル)クロマン(No.14)(0.8g)を得た。
【0074】
得られた化合物の物理化学性状を以下に示す。

m.p.84℃
IR(KBr)1736cm-1
1H−NMR(270MHz、CDCl3、ppm)δ0.90(3H,t,J=7.0Hz)、0.99−1.52(13H,m),1.88−1.91(4H,m),2.52(1H,tt、J=12.2、3.0Hz),6.91(1H,d,J=9.4Hz)、7.26(1H,d,J=8.5Hz)、7.29(1H,d、J=2.0)、7.39(1H,dd、J=8.5,2.0Hz)、7.68(1H,d,J=9.4Hz)
【0075】
実施例1に記載した合成法に基づいて、本発明の化合物(1)の実施例である化合物No.1〜No.193を合成する。上限温度、粘度、光学異方性および誘電率異方性の測定手順は後述の組成物例で説明する。
【化51】

【化52】

【化53】

【化54】

【化55】

【化56】

【化57】

【化58】

【化59】

【化60】

【化61】

【化62】

【化63】

【0076】
次に、本発明の代表的な組成物例を以下に示す。物性値の測定方法は後述する方法に従った。
[組成物例1]
4つの化合物を混合して、ネマチック相を有する組成物A(母液晶)を調製した。4つの化合物は、
4−(4−プロピルシクロヘキシル)ベンゾニトリル、(24%)
4−(4−ペンチルシクロヘキシル)ベンゾニトリル(36%)、
4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)ベンゾニトリル(25%)、および
4−(4−ペンチルシクロヘキシル)−4’−シアノビフェニル(15%)である。
組成物Aの物性値は次のとおりであった。上限温度(NI)=71.7℃;粘度(η20)=27.0mPa・s;光学異方性(Δn)=0.137;誘電率異方性(Δε)=11.0。
この組成物Aに実施例1に記載の6−(4−ペンチルシクロヘキシル)クマリンを10重量%添加して本発明の組成物例1を合成し、その物性値を測定した。その結果、上限温度(NI)=66.2℃;光学異方性(Δn)=0.134;誘電率異方性(Δε)=12.1であった。
【0077】
[組成物例2〜14]
さらに、本発明の代表的な組成物例2〜14について、組成物の成分である化合物とその量(重量%)、および、物性値を示した。
各組成物例に含まれる化合物は表1の取り決めに従い、左末端基、結合基、環構造、および右末端基の記号によって表示した。1,4−シクロヘキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はトランスである。末端基の記号がない場合は、末端基が水素であることを意味する。
【表1】

また、各組成物例の物性値を測定して示した。具体的には、ネマチック相の上限温度(NI;℃)、ネマチック相の下限温度(TC;℃)、化合物の相溶性、粘度(η;20℃で測定;mPa・s)、光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定)、誘電率異方性(Δε;25℃で測定)およびしきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)を測定して示した。物性値の測定は、日本電子機械工業規格(Standard of Electronic Industries Association of Japan)、EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法に従い、具体的には以下のように測定した。
【0078】
ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0079】
ネマチック相の下限温度(TC;℃):ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶(またはスメクチック相)に変化したとき、TCを<−20℃と記載する。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0080】
化合物の相溶性:類似の構造を有する幾つかの化合物を混合してネマチック相を有する母液晶を調製した。測定する化合物とこの母液晶とを混合した組成物を得た。混合する割合の一例は、15%の化合物と85%の母液晶である。この組成物を−20℃、−30℃のような低い温度で30日間保管した。この組成物の一部が結晶(またはスメクチック相)に変化したか否かを観察した。必要に応じて混合する割合と保管温度とを変更した。このようにして測定した結果から、結晶(またはスメクチック相)が析出する条件および結晶(またはスメクチック相)が析出しない条件を求めた。これらの条件が相溶性の尺度である。
【0081】
粘度(η;20℃で測定;mPa・s):粘度の測定にはE型粘度計を用いた。
【0082】
光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビング(rubbing)したあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n‖は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。試料が組成物のときはこの方法によって光学異方性を測定した。試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあと光学異方性を測定した。化合物の光学異方性は外挿値である。
【0083】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定):試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあと誘電率異方性を測定した。化合物の誘電率異方性は外挿値である。
1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ツイスト角が80度の液晶セルに試料を入れた。このセルに20ボルトを印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。0.5ボルトを印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
2)誘電率異方性が負である組成物:ホメオトロピック配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε‖)を測定した。ホモジニアス配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0084】
しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあとしきい値電圧を測定した。化合物のしきい値電圧は外挿値である。
1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が(0.5/Δn)μmであり、ツイスト角が80度である、ノーマリーホワイトモード(normally white mode)の液晶表示素子に試料を入れた。Δnは上記の方法で測定した光学異方性の値である。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率が90%になったときの電圧の値を測定した。
2)誘電率異方性が負である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μmであり、ホメオトロピック配向に処理したノーマリーブラックモード(normally black mode)の液晶表示素子に試料を入れた。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率10%になったときの電圧の値を測定した。
【0085】
(組成物例2)
5−HCma=O 6%

2−BEB(F)−C 5%
3−BEB(F)−C 4%
4−BEB(F)−C 12%
1V2−BEB(F,F)−C 16%
3−HB−O2 4%
3−HH−4 3%
3−HHB−F 3%
3−HHB−1 8%
3−HHB−O1 4%
3−HBEB−F 4%
3−HHEB−F 7%
5−HHEB−F 7%
3−H2BTB−2 4%
3−H2BTB−3 4%
3−H2BTB−4 4%
3−HB(F)TB−2 5%
NI=89.9℃;Δn=0.146;Δε=29.0;Vth=1.01V.
【0086】
(組成物例3)
5−HHCma=O 5%
5−HBCma=O 4%

2−HB−C 5%
3−HB−C 12%
3−HB−O2 15%
2−BTB−1 3%
3−HHB−F 4%
3−HHB−1 8%
3−HHB−O1 5%
3−HHB−3 14%
3−HHEB−F 4%
5−HHEB−F 4%
2−HHB(F)−F 4%
3−HHB(F)−F 4%
5−HHB(F)−F 4%
3−HHB(F,F)−F 5%
【0087】
(組成物例4)
5−BBCma(F)=O 4%
5−BB(F,F)Cma(F)=O 4%

3−BEB(F)−C 8%
3−HB−C 8%
V−HB−C 8%
1V−HB−C 8%
3−HB−O2 3%
3−HH−2V 10%
3−HH−2V1 7%
V2−HHB−1 11%
3−HHB−1 5%
3−HHEB−F 7%
3−H2BTB−2 6%
3−H2BTB−3 6%
3−H2BTB−4 5%
【0088】
(組成物例5)
5−HCma=O 5%
5−HHCma=O 3%
5−HBCma=O 3%

5−BEB(F)−C 5%
V−HB−C 8%
5−PyB−C 6%
4−BB−3 11%
3−HH−2V 10%
5−HH−V 11%
V−HHB−1 7%
V2−HHB−1 7%
3−HHB−1 9%
1V2−HBB−2 10%
3−HHEBH−3 5%
【0089】
(組成物例6)
5−HCma=O 4%
5−BBCma(F)=O 3%
5−BB(F,F)Cma(F)=O 3%

1V2−BEB(F,F)−C 6%
3−HB−C 18%
2−BTB−1 10%
5−HH−VFF 20%
3−HHB−1 4%
VFF−HHB−1 8%
VFF2−HHB−1 11%
3−H2BTB−2 5%
3−H2BTB−3 4%
3−H2BTB−4 4%
【0090】
(組成物例7)
5−HCma=O 7%

5−HB−CL 16%
3−HH−4 12%
3−HH−5 4%
3−HHB−F 4%
3−HHB−CL 3%
4−HHB−CL 4%
3−HHB(F)−F 8%
4−HHB(F)−F 8%
5−HHB(F)−F 7%
7−HHB(F)−F 6%
5−HBB(F)−F 4%
1O1−HBBH−5 3%
3−HHBB(F,F)−F 2%
4−HHBB(F,F)−F 3%
5−HHBB(F,F)−F 3%
3−HH2BB(F,F)−F 3%
4−HH2BB(F,F)−F 3%
NI=109.9℃;Δn=0.094;Δε=4.4;Vth=2.63V.
上記組成物100部にOp05を0.25部添加したときのピッチは60.0μmであった
【0091】
(組成物例8)
5−HHCma=O 5%
5−BBCma(F)=O 3%

3−HHB(F,F)−F 9%
3−H2HB(F,F)−F 8%
4−H2HB(F,F)−F 8%
5−H2HB(F,F)−F 8%
3−HBB(F,F)−F 17%
5−HBB(F,F)−F 16%
3−H2BB(F,F)−F 10%
5−HHBB(F,F)−F 3%
5−HHEBB−F 3%
3−HH2BB(F,F)−F 2%
1O1−HBBH−4 4%
1O1−HBBH−5 4%
【0092】
(組成物例9)
5−HBCma=O 5%
5−BB(F,F)Cma(F)=O 3%

5−HB−F 12%
6−HB−F 9%
7−HB−F 7%
2−HHB−OCF3 7%
3−HHB−OCF3 7%
4−HHB−OCF3 7%
5−HHB−OCF3 5%
3−HH2B−OCF3 4%
5−HH2B−OCF3 4%
3−HHB(F,F)−OCF2H 4%
3−HHB(F,F)−OCF3 5%
3−HH2B(F)−F 3%
3−HBB(F)−F 6%
5−HBB(F)−F 6%
5−HBBH−3 3%
3−HB(F)BH−3 3%
【0093】
(組成物例10)
5−HHCma=O 6%
5−BB(F,F)Cma(F)=O 4%

5−HB−CL 11%
3−HH−4 8%
3−HHB−1 5%
3−HHB(F,F)−F 8%
3−HBB(F,F)−F 15%
5−HBB(F,F)−F 10%
3−HHEB(F,F)−F 10%
4−HHEB(F,F)−F 3%
5−HHEB(F,F)−F 3%
2−HBEB(F,F)−F 3%
3−HBEB(F,F)−F 5%
5−HBEB(F,F)−F 3%
3−HHBB(F,F)−F 6%
【0094】
(組成物例11)
5−HBCma=O 3%
5−BBCma(F)=O 3%

3−HB−CL 6%
5−HB−CL 4%
3−HHB−OCF3 5%
3−H2HB−OCF3 5%
5−H4HB−OCF3 15%
V−HHB(F)−F 5%
3−HHB(F)−F 5%
5−HHB(F)−F 5%
3−H4HB(F,F)−CF3 8%
5−H4HB(F,F)−CF3 10%
5−H2HB(F,F)−F 5%
5−H4HB(F,F)−F 7%
2−H2BB(F)−F 3%
3−H2BB(F)−F 6%
3−HBEB(F,F)−F 5%
【0095】
(組成物例12)
5−HCma=O 4%
5−HBCma=O 4%

5−HB−CL 17%
7−HB(F,F)−F 3%
3−HH−4 10%
3−HH−5 5%
3−HB−O2 11%
3−HHB−1 8%
3−HHB−O1 5%
2−HHB(F)−F 5%
3−HHB(F)−F 7%
5−HHB(F)−F 5%
3−HHB(F,F)−F 6%
3−H2HB(F,F)−F 5%
4−H2HB(F,F)−F 5%
【0096】
(組成物例13)
5−HHCma=O 3%
5−BBCma(F)=O 3%
5−BB(F,F)Cma(F)=O 3%

5−HB−CL 3%
7−HB(F)−F 7%
3−HH−4 9%
3−HH−EMe 14%
3−HHEB−F 8%
5−HHEB−F 8%
3−HHEB(F,F)−F 10%
4−HHEB(F,F)−F 5%
4−HGB(F,F)−F 5%
5−HGB(F,F)−F 6%
2−H2GB(F,F)−F 4%
3−H2GB(F,F)−F 5%
5−GHB(F,F)−F 7%
【0097】
(組成物例14)
5−HCma=O 5%
5−BB(F,F)Cma(F)=O 4%

3−HH−4 8%
3−HHB−1 6%
3−HHB(F,F)−F 10%
3−H2HB(F,F)−F 9%
3−HBB(F,F)−F 15%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F 26%
1O1−HBBH−5 7%
2−HHBB(F,F)−F 3%
3−HHBB(F,F)−F 3%
3−HH2BB(F,F)−F 4%
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の化合物、および、当該化合物を含む組成物を液晶表示組成物として用いることで、広い温度範囲、短い応答時間、大きなコントラスト比および低い駆動電圧の液晶表示素子を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

で表される化合物
(式中、Rは水素または炭素数1〜20のアルキル基であり、このアルキル基において任意の−CH2−は、−O−、−S−、−CO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよく;
1、A2、およびA3は互いに独立して1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、3−フルオロピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイルまたはピリダジン−2,5−ジイルであり、任意の−CH2−は、−O−、−S−または−CO−で置き換えられてもよく、任意の−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素、塩素、−CN、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fで置き換えられてもよく;
Xは水素、フッ素、塩素、−CN、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fであり;
Gは酸素または硫黄であり;
1、Z2、およびZ3は独立して単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−(CH24−、−O(CH22O−、−(CH22CF2O−、−(CH22OCF2−、−CF2O(CH22−、−OCF2(CH22−、−CH=CH−CH2O−、または−OCH2−CH=CH−であり;
nおよびmは独立して0、1、または2である。)
【請求項2】
一般式(1)
【化2】

で表される化合物。
(式中、Rは水素または炭素数1〜15のアルキル、炭素数1〜15のアルコキシ、炭素数2〜15のアルケニル、または炭素数2〜15のアルキニルであり;
1、A2およびA3は互いに独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、フッ素化1,4−フェニレンまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;
Xはフッ素または水素であり;
Gは酸素または硫黄であり;
1,Z2およびZ3は互いに独立して単結合、−(CH22−、−CH2O−、または−OCH2−であり;
nおよびmは互いに独立して0または1である。)
【請求項3】
1,Z2およびZ3が単結合である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
1、A2およびA3が独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、またはフッ素化1,4−フェニレンである、請求項2または3に記載の化合物。
【請求項5】
1、A2およびA3のいずれか1つがフッ素化1,4−フェニレンである、請求項2〜4のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項6】
1、A2およびA3のいずれか1つが1,4−シクロへキシレンである、請求項2〜4のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項7】
Rが水素または炭素数1〜15のアルキルである、請求項2〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
Rが水素または炭素数2〜15のアルケニルである、請求項2〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
1,Z2およびZ3のいずれか1つが−CH2O−または−OCH2−である、請求項2に記載の化合物。
【請求項10】
1、A2およびA3が独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、またはフッ素化1,4−フェニレンである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Rが水素または炭素数1〜15のアルキルである、請求項9または10に記載の化合物。
【請求項12】
1,Z2およびZ3のいずれか1つが−CH2CH2−である、請求項2に記載の化合物。
【請求項13】
1、A2およびA3が独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、またはフッ素化1,4−フェニレンである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
1、A2およびA3のいずれか1つがフッ素化1,4−フェニレンである、請求項12または13に記載の化合物。
【請求項15】
Rが水素または炭素数1〜15のアルキルである、請求項12〜14のいずれかに記載の化合物。
【請求項16】
Rが水素または炭素数2〜15のアルケニルである、請求項12〜15のいずれかに記載の化合物。
【請求項17】
式(1a)〜式(1m)のいずれか1つで表される、請求項2に記載の化合物。
【化3】

(式中、Rは炭素数1〜15のアルキル、炭素数1〜15のアルコキシ、または炭素数2〜15のアルケニルであり、Y1〜Y5は独立して水素またはフッ素である。)
【請求項18】
一般式(1)で示される化合物:
【化4】

Rは水素または炭素数1〜15のアルキル、炭素数1〜15のアルコキシ、または炭素数2〜15のアルケニルであり;
1、A2およびA3は互いに独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、フッ素化1,4−フェニレンまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;
Xはフッ素または水素であり;
Gは硫黄であり;
1,Z2およびZ3は互いに独立して単結合、−(CH22−、−CH2O−、または−OCH2−であり;
nおよびmは互いに独立して0または1である。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1つに記載の化合物を少なくとも一つ含有し、少なくとも2つ以上の化合物からなる液晶組成物。
【請求項20】
式(2)、式(3)および式(4)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項19に記載の液晶組成物。
【化5】

(式中、R1は炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−もしくは−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;X1はフッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2または−OCF2CHFCF3であり;環Bおよび環Dは独立して1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり、環Eは1,4−シクロヘキシレンまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;Z4およびZ5は独立して−(CH22−、−(CH24−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−または単結合であり;L1およびL2は独立して水素またはフッ素である。)
【請求項21】
式(5)および(6)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する、請求項20に記載の液晶組成物。
【化6】

(式中、R2およびR3は独立して炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;X2は−CNまたは−C≡C−CNであり;環Gは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;環Jは1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイルまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;環Kは1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Z6は−(CH22−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、または単結合であり;L3、L4およびL5は独立して水素またはフッ素であり;b、cおよびdは独立して0または1である。)
【請求項22】
式(7)、式(8)、式(9)、式(10)および式(11)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する請求項20に記載の液晶組成物。
【化7】

(式中、R4は炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;R5はフッ素または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;環Mおよび環Pは独立して1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレンまたはデカヒドロ−2,6−ナフチレンであり;Z7およびZ8は独立して−(CH22−、−COO−または単結合であり;L6およびL7は独立して水素またはフッ素であって、L6とL7の少なくとも1つはフッ素である。)
【請求項23】
式(12)、式(13)および式(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する請求項19〜22のいずれかに記載の液晶組成物。
【化8】

(式中、R6およびR7は独立して炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;環Q、環Tおよび環Uは独立して1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2、5−ジイル、または任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;Z9およびZ10は独立して−C≡C−、−COO−、−(CH22−、−CH=CH−、または単結合である。)
【請求項24】
式(5)および式(6)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項20に記載の液晶組成物。
【化9】

(式中、R2およびR3は独立して炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;X2は−CNまたは−C≡C−CNであり;環Gは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;環Jは1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイルまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;環Kは1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Z6は−(CH22−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、または単結合であり;L3、L4およびL5は独立して水素またはフッ素であり;b、cおよびdは独立して0または1である。)
【請求項25】
少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有する、請求項19〜24のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項26】
請求項19〜25のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。

【公開番号】特開2006−232727(P2006−232727A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49555(P2005−49555)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】