説明

クメンヒドロペルオキシドからビスフェノールAを製造するための統合プロセス

CHPをBPAに転化させるための方法の第一及び第二の段階に特定の組合せの触媒を使用すれば、中間精製段階の必要なしに高いBPA収率及び低い不純物収率が得られる。第一の段階では、酸処理モンモリロナイトクレーのような酸処理クレーの存在下でCHPを開裂してフェノール及びアセトンを生じさせる。第二の段階では、生成したフェノール及びアセトンを、好ましくは中間精製なしに、陽イオン交換樹脂及びメルカプタン又はメルカプトアルカン酸助触媒を含む陽イオン交換樹脂触媒の存在下で反応させてBPAを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、クメンヒドロペルオキシド(CHP)からビスフェノールA(BPA)を製造するための統合プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールAは、ポリカーボネート樹脂の製造に使用される重要な反応体である。公知のBPA製造方法では、CHPを接触分解してフェノール及びアセトンにし、次いで酸性触媒存在下でフェノールとアセトンを反応させてBPAを製造する。これら2つの段階の各々に使用するために各種の触媒が知られている。
【0003】
硫酸のような均一触媒によるCHPの開裂が広く実施されている。また、各種の固体酸触媒上でのCHPの不均一開裂も報告されている。例えば、米国特許第5824622号には、過フッ素化イオン交換ポリマーと金属酸化物の多孔質ミクロ複合体、シリカの網状構造、及び金属とシリカの網状構造が触媒として開示され、これらは例えば脂肪族又は芳香族炭化水素のアルキル化用、CHPのような有機ヒドロペルオキシドの分解用、有機化合物のスルホン化又はニトロ化用、及びヒドロキシル基化合物のオキシアルキル化用の触媒として使用できることが示されている。国際公開第03/002499号には、同様な触媒が言及されていて、触媒粒度の低下(したがって触媒表面積の増大)がCHP分解の反応速度を高めるという意外でない結果が実証されると共に、CHP分解及びBPA合成の両方に同一の触媒を使用することが示唆されている。CHPの開裂に使用できる他の触媒には、米国特許第4490565号に記載のゼオライトベータ、米国特許第4490566号に記載のZSM−5のような拘束係数(Constraint Index)1〜12のゼオライト、欧州特許出願公開第492807号に記載のフォージャサイト、米国特許第4870217号に記載のメクタイトクレー、並びに米国特許第4898995号及び同第4898987号に記載のシリカ、アルミナ、チタニア及びジルコニアのような不活性担体上にスルホン酸官能基又はヘテロポリ酸(例えば、12−タングストリン酸)を有するイオン交換樹脂がある。追加の固体酸触媒には、米国特許第6169216号に記載の硫酸化ジルコニアのような硫酸化遷移金属酸化物を鉄の酸化物又は鉄及びマンガンの酸化物と共に含むもの、並びに米国特許第6297406号に記載のセリウム及び第IVB族金属(例えば、ジルコニウム)の混合酸化物を含むものがある。他の公知固体酸触媒には、米国特許第6169215号に開示されているように、酸化物化学種を400℃以上の温度でか焼することにより、第IVB金属の酸化物を第VIB族金属のオキシアニオン又は酸化物で改質したものがある。第VIB族金属のオキシアニオンによる第IVB金属酸化物の改質は、この物質に酸官能基を付与する。第VIB族金属オキシアニオン(特にタングステン酸イオン)による第IVB金属酸化物(特にジルコニア)の改質は、米国特許第5113034号及びK.Arata and M.Hinoの論文(Proceedings of 9th International Congress on Catalysis,Volume 4,pages 1727−1735(1988))に記載されている。使用されるマクロ孔質酸性イオン交換樹脂はスルホン酸基の存在によって代表され、例えば、Amberlyst−15、Amberlyst XN−1005、Amberlyst XN−1010、Amberlyst XN−1011、Amberlyst XN−1008及びAmberlite 200として商業的に入手できるもののようなスルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー交換樹脂である。
【0004】
フェノール及びアセトンからのBPA生成に対する触媒作用を得るためには、多数の情報源が陽イオン交換樹脂触媒の使用を開示している。例えば、米国特許第5315042号には、この目的のためにスルホン化ポリスチレン又はスルホン化ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)樹脂のようなイオン交換樹脂触媒が開示されている。また、反応速度を高めるためにメルカプタンのような二価硫黄化合物及びグリコール酸を使用することも示されている。スルホン酸基の一部をメルカプタン官能基に転化させたスルホン化ポリスチレン−ジビニルベンゼンイオン交換樹脂は、未改質樹脂より良好な触媒であることが判明した(米国特許第3172916号及び米国特許第3394089号)。120〜180℃でメルカプトアミンで被覆したゼオライトの使用も報告されている(特公昭49−20565号)。Singh(Catal.Lett.,27(1992)431)は、H−ZSM−5、H−モルデン沸石、H−Y及びRE−Yのようなゼオライト触媒上でのBPA合成をAmberlyst−15と比べて詳しく検討し、この方法に関しては開口の大きいゼオライトほど選択性が高いが、イオン交換樹脂はゼオライトより活性が高いことを示している。しかし、一般的な傾向としては、改質イオン交換樹脂が最適のビスフェノールA収率を与えるという理由で世界的に使用されている触媒である。BPAの合成のため、フリーデル・クラフツ触媒を用いてハロゲン化プロペニルをフェノールでアルキル化することが報告されている(フランス特許出願公開第2646418号、1990)。上述の方法では60%程度の転化率が得られる。若干のモノグラフには、ビスフェノールAの合成のために市販の酸処理クレーを使用することが言及されている(Preparative Chemistry using Supported Reagents,Academic Press,San Diego,CA.,1987、Solid Supports and Catalysts in Organic Synthesis,Ellis Horwood,Chechester,U.K.,1992)。Scriabineら(米国特許第2923744号)は、基礎仕込量の0.1〜5重量%のレベルのメルカプトアルカンスルホン酸又は塩或いは対応するスルホン酸エステルからなる促進剤を硫酸と共に用いてビスフェノールAを製造しており、この促進剤は全仕込量を基準にして0.1〜5重量%の量で使用した場合にアセトン及びフェノールの縮合を触媒する。硫酸は、アセトン1モル当たり約2モルの量で使用される。反応はハロゲン化炭化水素溶剤中で実施できる。Bottenbruchら(米国特許第4996373号)は、スルホン酸樹脂を含む各種の触媒の存在下において、高圧下でカルボニル化合物及びフェノール類からジヒドロキシアリール化合物を製造する方法を提唱している。このような用途のため、チオール官能基を含む触媒(例えば、メルカプト化合物で処理したイオン交換樹脂)が開示されている。Meyerら(米国特許第4387251号)は、芳香族スルホン酸を縮合剤として用いた4,4′−ジヒドロキシジフェニルアルカンの製造方法を提唱している。Jansen(米国特許第2468982号)は、無水塩化水素と共に、(メルカプトールとケトンとの反応によって現場で生成できる)メルカプトアルカン酸を縮合剤として用いたビスフェノールの製法を提唱している。Knebelら(米国特許第4931594号)は、未結合の3−メルカプトプロピオン酸と混合した多量のスルホン酸樹脂を用いて縮合を起こさせることを開示している。英国特許第1185223号には、ビスフェノールを製造するために不溶性樹脂の混合物(一方はスルホン酸樹脂であり、他方はメルカプト基を含む樹脂である)を用いることが提唱されている。Randolphら(米国特許第5212206号)は、スルホン化イオン交換樹脂をジアルキルアミノメルカプタンで処理することで製造される触媒を開示している。スルホン酸イオン交換樹脂の改質に関する参考文献を代表する他の参考文献には、Wagner(米国特許第3172916号)、McNuttら(米国特許第3394089号)、Falerら(米国特許第4455409号、同第4294995号及び同第4396728号)、Heydenrichら(米国特許第4369293号)、Bergら(米国特許第5302774号)並びにMakiら(米国特許第4423252号)がある。反応性触媒は、一般に、スルホンアミド又はスルホン酸アンモニウムの形でスルホン酸基に結合したメルカプト官能基を含んでいる。
【特許文献1】米国特許第5824622号明細書
【特許文献2】国際公開第03/002499号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4490565号明細書
【特許文献4】米国特許第4490566号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第492807号明細書
【特許文献6】米国特許第4870217号明細書
【特許文献7】米国特許第4898995号明細書
【特許文献8】米国特許第4898987号明細書
【特許文献9】米国特許第6169216号明細書
【特許文献10】米国特許第6297406号明細書
【特許文献11】米国特許第6169215号明細書
【特許文献12】米国特許第5113034号明細書
【特許文献13】米国特許第5315042号明細書
【特許文献14】米国特許第3172916号明細書
【特許文献15】米国特許第3394089号明細書
【特許文献16】特公昭49−20565号公報
【特許文献17】米国特許第2923744号明細書
【特許文献18】米国特許第4996373号明細書
【特許文献19】米国特許第4387251号明細書
【特許文献20】米国特許第2468982号明細書
【特許文献21】米国特許第4931594号明細書
【特許文献22】英国特許第1185223号明細書
【特許文献23】米国特許第5212206号明細書
【特許文献24】米国特許第3172916号明細書
【特許文献25】米国特許第3394089号明細書
【特許文献26】米国特許第4455409号明細書
【特許文献27】米国特許第4294995号明細書
【特許文献28】米国特許第4396728号明細書
【特許文献29】米国特許第4369293号明細書
【特許文献30】米国特許第5302774号明細書
【特許文献31】米国特許第4423252号明細書
【特許文献32】欧州特許出願公開第0367408号明細書
【特許文献33】フランス特許出願公開第2646418号明細書
【非特許文献1】K.Arata and M.Hino,Proceedings of 9th International Congress on Catalysis,Volume 4,pages 1727−1735(1988).
【非特許文献2】Singh,Catal.Lett.,27(1992)431.
【非特許文献3】Preparative Chemistry using Supported Reagents,Academic Press,San Diego,CA.,1987.
【非特許文献4】Solid Supports and Catalysts in Organic Synthesis,Ellis Horwood,Chechester,U.K.,1992.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はCHPをBPAに転化させるための方法の第一及び第二の段階用の特定の組合せの触媒を提供し、かかる触媒の組合せは中間精製段階の必要なしに高いBPA収率及び低い不純物収率を与える。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の方法では、
(a)酸処理クレー触媒の存在下でCHPを開裂してフェノール及びアセトンを生成させる段階と、
(b)好ましくは中間精製なしに、段階(a)で生成したフェノール及びアセトンを陽イオン交換樹脂触媒の存在下で反応させてBPAを製造する段階と
を含んでなる方法によって、CHPからBPAを製造する。
【0007】
図面の簡単な説明
図1は、本発明によるBPA製造用設備の第一の実施形態の略図を示す。
【0008】
図2は、本発明によるBPA製造用設備の第二の実施形態の略図を示す。
【0009】
図3は、本発明の方法を用いて製造したBPAを精製するための分離セクションの略図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本願の明細書及び特許請求の範囲中では、数値は整数値として表されている。これらの整数値と同じ桁数の有効数字で表した場合の値は整数値に等しいことが認められよう。
【0011】
本発明は、CHPから出発してBPAを製造するための方法を提供する。従来の方法と異なり、本発明で使用する触媒の組合せは、時間及び費用のかかる中間精製段階を必要とせずにCHP開裂体からBPAを直接に合成することを可能にする。加えて、生成物中におけるp,p−ビスフェノールとo,p−ビスフェノールとの比は触媒のp,p−生成物にとって極めて有利であり、その選択率は90%を超える。
【0012】
本発明の方法における第一の段階は、酸処理クレー触媒の存在下でCHPを開裂して、フェノール及びアセトンを含む開裂体を生成させることである。この開裂体は、ヒドロキシアセトンを実質的に含んでいない。本発明で使用するクレー触媒は、酸処理モンモリロナイトクレーである。化学的には、クレーは主としてケイ素、アルミニウム及び酸素からなり、場合によっては少量のマグネシウム及び鉄を含んでいる。これらの成分の比率及びその結晶格子構成の違いに応じ、各々独自の特徴的な性質を有する約50種の独立したクレーを生じる。本発明のタイプとしてはスメクタイトクレーが重要である。三層シート型のスメクタイトクレーには、モンモリロナイト、ハーミキュライト及びある種の雲母がある。本発明では、これらのモンモリロナイトクレーを酸性型として使用するのが最もよい。酸は、八面体層中の構造陽イオンを攻撃して可溶化することでモンモリロナイトを活性化する。これはクレー構造を切り開いて表面積を増大させる。かかる種類の酸処理モンモリロナイトクレーは、(例えば、Engelhard社から供給されるFiltrol−24のように)商業的に入手でき、また米国特許第4898987号(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)に開示されている。クメンの酸化で得られるCHP(工業用CHP)は一般に約80%のCHPを含み、残部はジメチルベンジルアルコール(DMBA)、α−メチルスチレン(AMS)、クメン及びアセトフェノンである。この物質或いは同等以上の純度のCHP組成物を、CHPの量に対して10〜100重量%のアセトンと共に、酸処理クレー触媒を含む反応器に添加する。反応器は、バッチ反応器、半連続反応器又は連続反応器であり得る。好適な触媒装填量レベルは、供給材料の全重量を基準にして2〜8重量%(例えば、5重量%)である。温度は、45〜85℃、好ましくは55〜65℃の範囲内に維持される。反応は、CHPをフェノール及びアセトンに実質的に転化させるのに十分な時間にわたって進行させる。当業者には自明の通り、具体的な時間は反応器内の容積及び触媒表面積、温度並びに他の装置固有パラメーターに依存する。同様に、連続プロセスでは、反応時間は反応器容積及び流量によって決定されることが認められよう。本明細書中で使用する「実質的に転化させる」という用語は、CHPからフェノール及びアセトンへの転化率が90%以上、好ましくは95%以上であることを意味する。
【0013】
本発明の方法における第二の段階は、CHPの開裂で生成したフェノール及びアセトンを陽イオン交換樹脂触媒の存在下で反応させてビスフェノールAを生成させることである。陽イオン交換樹脂触媒は、陽イオン交換樹脂と、メルカプタン促進剤又はバルク助触媒としてのメルカプトアルカン酸助触媒とを含んでいる。
【0014】
好適な陽イオン交換樹脂には、特に限定されないが、Amberlyst−15、Amberlyst XN−1005、Amberlyst XN−1010、Amberlyst XN−1011、Amberlyst XN−1008及びAmberlite 200として商業的に入手できるもののようなスルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー樹脂がある。好ましくは、陽イオン交換樹脂は架橋(例えば、1〜25%の架橋)を受けている。後記実施例で使用した特定の陽イオン交換樹脂は、ミクロ網状ゲル型樹脂のAmberlyst XE−760(XE−760)(Rohm & Haas社)である。
【0015】
陽イオン交換樹脂触媒のメルカプタン部分は、好適には、同一譲受人に譲渡された米国特許第6534686号(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)に記載されているようなピリジルエチルメルカプタン(PEM)又は他のメルカプタン助触媒である。メルカプタンは、20〜70重量%、好ましくは35〜60重量%、さらに好ましくは40〜55重量%の添加量で触媒に添加される。
【0016】
第二の段階では、開裂体の組成は、好適にはアセトン及びフェノールが1:32〜1:10、さらに好ましくは1:20〜1:10、最も好ましくは1:13のモル比で存在するように調整される。開裂体は、陽イオン交換樹脂触媒を含む第二の反応器に導入される。これはバッチ反応器、半連続反応器又は連続反応器であり得る。第二の反応器は、(開裂体中の制限反応体である)アセトンをビスフェノールAに実質的に転化させるのに十分な時間にわたり、好適には40〜100℃、さらに好ましくは60〜85℃、最も好ましくは75℃の温度に維持される。当業者には自明の通り、具体的な時間は反応器内の容積及び触媒表面積、温度並びに他の装置固有パラメーターに依存する。本明細書中で使用する「実質的に転化させる」という用語は、アセトンからBPAへの転化率が90%以上、好ましくは95%以上であることを意味する。本方法の第二の段階における触媒装填量は、好適には全供給材料を基準にして1〜10重量%、好ましくは3〜7重量%、最も好ましくは約5重量%である。
【0017】
本発明の方法は、好適には本発明に係るプラント又は設備で実施できる。図1及び2は、かかる設備の2つの代替実施形態の略図を示す。図1及び2に示すように、CHP及びアセトンを含む貯留器10が管路11を介して反応器12に連結されている。反応器12は、酸性クレー触媒からなる触媒層13を含んでいる。反応器12からの生成物は管路14を通して回収され、アセトン:フェノールモル比を所望レベルに調整するための系に通される。図1では、この系は追加のフェノールを供給する補給管路15である。図2では、この系は、反応器12で生成した開裂体からアセトンを除去して所望のアセトン:フェノールモル比を達成するフラッシュ蒸留塔である。アセトン:フェノールモル比を調整するための系を通過した後、開裂体は管路16を通して輸送され、陽イオン交換樹脂触媒18を含む第二の反応器17に達する。第二の反応器17から管路19を通して粗BPAが回収され、所望ならばさらに精製することができる。
【0018】
図3は、粗BPAをさらに精製するために適した分離セクションを示す。図示の通り、粗BPAは連続した蒸留塔31、32、33及び34に供給される。第一の塔31では、メシチルオキシド、アルデヒド、アセトンなどの高揮発性不純物が除去される。第二の塔32では、フェノール及びクメンが回収され、所望に応じて再循環させることができる。第三の塔33では、粗p−クミルフェノール(PCP)及びα−メチルスチレンの二量体が除去される。最後の塔34では、留分はBPAである。留出したBPAは溶融晶出装置35に供給され、そこから管路36を通して純BPAが回収される。
【実施例】
【0019】
次に、以下の非限定的実施例に関連して本発明をさらに例証する。
【0020】
実施例1
55℃で、16.33mlのアセトンと1.9gのFiltrol−24(Engelhard社)酸処理モンモリロナイトクレーとの混合物に25.3gの工業用80%CHP(81%CHP、8.7%DMBA、1.36%α−メチルスチレン、0.7%アセトフェノン及び7.2%クメンからなるものとして分析されるもの)をゆっくりと添加した。添加は、反応温度を65℃以下に維持するように制御した。CHP添加の完了後、混合物を55℃でさらに30分間攪拌し、ガスクロマトグラフィーを用いて完結状態を分析した。CHPを基準にして95%の収率でフェノールを得た。
【0021】
75℃で、55.188gmのフェノール(アセトン/フェノールモル比を1:13に調整するため)と3gの40%PEM添加XE−760陽イオン交換樹脂との混合物に、5gの上記反応混合物を添加した。反応混合物をこの温度に12時間維持し、GCで分析した。得られたp,p−BPAのモル収率は(CHPを基準にして)89.3%であり、BPAのp−p/o−p比は97.3%であった。
【0022】
比較例1
酸性クレー触媒の代わりに2gのXE−760(Rohm and Haas社)をCHP開裂触媒として使用し、第二のBPA合成段階では40%PEM添加XE−760の代わりに3gmのXE−760を使用した点を除き、実施例1の実験を繰り返した。得られたp,p−BPAのモル収率は(CHPを基準にして)50.9%であり、そのp−p/o−p比は88.97%であった。
【0023】
比較例2
酸性クレー触媒の代わりに硫酸(300ppm)をCHP開裂触媒として使用した点を除き、実施例1の実験を繰り返した。同等な選択率が得られたが、p,p−BPAの収率はCHPを基準にして18.45%にすぎなかった。
【0024】
比較例3
同じ作業条件下で実施例1の方法を繰り返したが、今回はCHP開裂のための触媒として2.0gのAmberlyst XE−760(Rohm and Haas社)を使用した。フェノールの収率は95%であった一方、得られたp,p−BPAのモル収率は(CHPを基準にして)85.4%であり、BPAのp−p/o−p比は97.3%であった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるBPA製造用設備の第一の実施形態の略図。
【図2】本発明によるBPA製造用設備の第二の実施形態の略図。
【図3】本発明の方法を用いて製造したBPAを精製するための分離セクションの略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールAの製造方法であって、
(a)酸性クレー触媒の存在下でクメンヒドロペルオキシドを開裂して、クメンヒドロペルオキシドをフェノールとアセトンを含む開裂体に実質的に転化させる段階と、
(b)陽イオン交換樹脂及びメルカプタン又はメルカプトアルカン酸助触媒を含む陽イオン交換樹脂触媒の存在下で開裂体を反応させて、開裂体中のフェノール及びアセトンをビスフェノールAに実質的に転化させる段階と
を含んでなる方法。
【請求項2】
段階(a)で生成した開裂体を、中間精製なしに段階(b)で反応させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
クメンヒドロペルオキシドを開裂する段階が55〜65℃の温度で実施される、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
さらに、段階(a)で生成した開裂体にフェノールを添加するか又は開裂体からアセトンを除去することで、1:20〜1:10のアセトン:フェノールモル比を得る段階を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
得られるアセトン:フェノールモル比が1:13である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
段階(b)が40〜100℃の温度で実施される、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
陽イオン交換樹脂触媒が助触媒としてピリジルエチルメルカプタンを含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ピリジルエチルメルカプタンが20〜70重量%の量で陽イオン交換樹脂触媒に添加される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
ピリジルエチルメルカプタンが40重量%の量で陽イオン交換樹脂触媒に添加される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
触媒が酸処理したモンモリロナイトクレーである、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−526625(P2006−526625A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509906(P2006−509906)
【出願日】平成16年4月12日(2004.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/011144
【国際公開番号】WO2004/108640
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】